説明

光回路

【課題】一方の光回路要素から他方の光回路要素への位置合わせを容易にする。
【解決手段】第1主光導波路18に設けられた第1光回路要素20と、第1主光導波路の一端に接続され、第1主光導波路を伝搬する光を第1副光導波路24及び第2副光導波路26に等分配する第1光カプラ22と、第1副光導波路及び第2副光導波路の間に設けられた第1戻し構造部とを含む第1サブ光回路16、及び、第2主光導波路32に設けられた第2光回路要素34と、第2主光導波路の一端に接続され、第3副光導波路38及び第4副光導波路40を伝搬する光を合成して第2主光導波路に送る第2光カプラ36と、第3副光導波路及び第4副光導波路の間に設けられた第2戻し構造部とを含む第2サブ光回路30、を備え、第1戻し構造部及び第2戻し構造部が近接配置されて、光結合部Cとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異なる光回路間で容易に光の結合を行うことができる光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光回路の小型化と量産化を目的として、Siを導波路材料として用いる技術が注目を集めている。Si細線光導波路では、Siのコアの全周囲を、SiOのクラッドで被覆した構造が用いられる。Si細線光導波路は、コアとクラッドの屈折率差が非常に大きいために、光を強くコアに閉じ込めることが可能である。また、Si細線光導波路では、この大きな屈折率差を利用して、光を1μm程度の小さい曲率半径で曲げる曲線導波路を実現することができる。さらに、Si細線光導波路では、Si電子デバイスでの加工技術が利用できるために、きわめて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、Si細線光導波路によれば、他の構造では不可能な、Si電子デバイスと同サイズの光回路を実現可能であるので、Si細線光導波路は、光と電子とをチップ上で融合する有力な技術として注目されている。
【0003】
Si細線光導波路を応用した光回路の例として、外部共振器が知られている(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。この外部共振器は、屈折率の制御が容易であることからSi細線光導波路で形成してある。そして、この外部共振器に、光の増幅を行うIII−V族化合物半導体を利用した半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を付加することで、波長可変レーザダイオードが形成される。
【0004】
より詳細には、外部共振器を構成するSi細線光導波路は、Si支持基板とSiO層とSi層とがこの順序で積層されたSOI(Si On Insulator)基板のSi層を利用して形成される。そして、このSOI基板の端面に露出したSi細線光導波路の光入出力端面に、SOAの一方の光導波路端面を位置合わせして固定することにより、SOAと外部共振器とを光学的に接続する。この波長可変レーザダイオードからの光の取り出しは、SOAの他方の光導波路端面から行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−200091号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Opto Electronics and Communication Conference,paper 9E2−1,July,2010,Sapporo
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1及び特許文献1に開示された外部共振器では、取り出された光の利用に困難が伴う。すなわち、外部共振器で波長選択された光を他の光回路要素で利用するためには、SOAの他方の光導波路端面を他の光回路の光入力端に精密に位置合わせする必要がある。つまり、外部共振器と他の光回路要素とに介在するSOAの2つの光導波路端面をμmオーダで位置合わせする必要がある。
【0008】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、一方の光回路要素から他方の光回路要素に光を結合するに当たり、位置合わせを容易にした光回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、一方の光回路と他方の光回路とを光結合可能に近接配置して方向性結合器を形成することで上述した課題を解決できることに想到した。従って、この発明の光回路は、第1サブ光回路と第2サブ光回路とを備えている。
【0010】
ここで、第1サブ光回路は、第1主光導波路、第1副光導波路及び第2副光導波路と、第1主光導波路に設けられた第1光回路要素と、第1主光導波路の一端に接続され、第1主光導波路を伝搬する光を第1副光導波路及び第2副光導波路に等分配する第1光カプラと、第1副光導波路及び第2副光導波路の間に設けられた、光導波路を有する第1戻し構造部とを含んでいる。
【0011】
また、第2サブ光回路は、第2主光導波路、第3副光導波路及び第4副光導波路と、第2主光導波路に設けられた第2光回路要素と、第2主光導波路の一端に接続され、第3副光導波路及び第4副光導波路を伝搬する光を合成して第2主光導波路に送る第2光カプラと、第3副光導波路及び第4副光導波路の間に設けられた、光導波路を有する第2戻し構造部とを含んでいる。
【0012】
そして、第1戻し構造部及び第2戻し構造部が近接配置されて、光結合部として機能する。
【発明の効果】
【0013】
この発明の光回路によれば、第1光回路要素を含む第1サブ光回路から、第2光回路要素を含む第2サブ光回路に光を結合するに当たり、第1及び第2戻し構造部の光導波路同士の近接配置を利用するので、第1光回路要素と第2光回路要素との位置合わせに高い精度が要求されず、位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図2】実施形態1の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【図3】実施形態1の光回路の動作特性を示す特性図である。
【図4】実施形態2の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図5】実施形態2の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【図6】実施形態2の光回路の動作特性を示す特性図である。
【図7】実施形態3の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図8】実施形態3の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【図9】実施形態3の光回路の動作特性を示す特性図である。
【図10】実施形態4の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図11】実施形態4の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【図12】実施形態5の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図13】実施形態5の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【図14】実施形態6の光回路の概略構成を示す模式図である。
【図15】実施形態6の光回路の動作の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0016】
(実施形態1)
以下、図1〜図3を参照して、実施形態1の光回路について説明する。図1は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図2は、光回路の動作の説明に供する模式図であり、図3は、光回路の動作特性を示す特性図である。なお、図1において、第1サブ光回路と第2サブ光回路はSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0017】
(構造)
図1を参照すると、光回路10は、例えばSOI基板を用いて構成される。
【0018】
光回路10は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路16と、第2サブ光回路30とを備えている。また、光回路10は任意的な構成要素として、III−V族化合物半導体製の光増幅器44を備えている。
【0019】
第1サブ光回路16は、第1主光導波路18と、第1光回路要素20と、第1光カプラ22と、第1副光導波路24と、第2副光導波路26と、第1戻し構造部として第1湾曲光導波路28とを備えている。
【0020】
第1主光導波路18は、光回路10の長手方向に沿って延在するチャネル型光導波路である。
【0021】
第1光回路要素20は、第1主光導波路18を伝搬する光に対して種々の処理を行う光回路要素である。第1光回路要素20としては、例えば、光波長フィルタ、光変調器、波長変換素子又は光スイッチを用いることができる。
【0022】
第1光カプラ22は、第1主光導波路18の一端18aに接続されていて、第1主光導波路18を伝搬する光を第1副光導波路24と第2副光導波路26とに等分配する、いわゆる3dBカプラである。第1光カプラ22は、例えばMMI(Multi−Mode Interference)導波路又は方向性結合器を用いて形成される。
【0023】
第1副光導波路24及び第2副光導波路26は、一端部が第1光カプラ22に接続されていて、他端部が第1湾曲光導波路28に接続されている、湾曲したチャネル型光導波路である。
【0024】
第1湾曲光導波路28は、第1副光導波路24及び第2副光導波路26の他端部同士を接続するチャネル型光導波路である。第1湾曲光導波路28と、第1副光導波路24及び第2副光導波路26と、第1光カプラ22とは、略円環状の光導波路構造体を構成する。
【0025】
第2サブ光回路30は、第2主光導波路32と、第2光回路要素34と、第2光カプラ36と、第3副光導波路38と、第4副光導波路40と、第2戻し構造部として第2湾曲光導波路42とを備えている。
【0026】
第2主光導波路32は、光回路10の長手方向に沿って延在するチャネル型光導波路である。
【0027】
第2光回路要素34は、第2主光導波路32を伝搬する光に対して種々の処理を行う光回路要素である。第2光回路要素34としては、例えば、光波長フィルタ、光変調器、波長変換素子又は光スイッチを用いることができる。なお、第2光回路要素34は、第1光回路要素20と同じ種類の光回路要素を用いてもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
第2光カプラ36は、第2主光導波路32の一端32aに接続された3dBカプラであり、第3副光導波路38及び第4副光導波路40を伝搬する光を合成して、第2主光導波路32に送る機能を有する。第2光カプラ36は、第1光カプラ22と構造が等しい。
【0029】
第3副光導波路38及び第4副光導波路40は、一端部が第2光カプラ36に接続されていて、他端部が第2湾曲光導波路42に接続されている湾曲したチャネル型光導波路である。
【0030】
第2湾曲光導波路42は、第3副光導波路38及び第4副光導波路40の他端部同士を接続するチャネル型光導波路である。第2湾曲光導波路42と、第3副光導波路38及び第4副光導波路40と、第2光カプラ36とは、略円環状の光導波路構造体を構成する。
【0031】
そして、光回路10では、第1湾曲光導波路28及び第2湾曲光導波路42が光結合可能な距離に近接配置されていて、これら第1及び第2湾曲光導波路28及び42が光結合部Cとして機能する。より詳細には、第1湾曲光導波路28と第2湾曲光導波路42とを光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0032】
光増幅器44は、第1主光導波路18の第1光カプラ22が接続されていない他端18b側に配置されている。より詳細には、光増幅器44を、例えば、III−V族の化合物半導体とする。光増幅器44は、光出射端を第1主光導波路18の他端18bである光入出力端面に位置決めして、Si支持基板12の主面12aに固定されている。なお、光回路10にとって、光増幅器44は、必須の構成要素ではなく、例えば、第1主光導波路18の他端18bには、他の光回路が接続されていてもよい。なお、光増幅器44は、第2主光導波路32の他端32b側に配置してもよい。
【0033】
(動作)
続いて、図1及び図2を参照して、光回路10の動作について説明する。
【0034】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路24及び第2副光導波路26に等分配される。ここで、第1副光導波路24を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路26を伝搬する光をL3とする。
【0035】
光L2は、第1副光導波路24から第1湾曲光導波路28及び第2副光導波路26を経て第1光カプラ22に戻る。一方、光L3は、光L2とは逆に、第2副光導波路26から第1湾曲光導波路28及び第1副光導波路24を経て第1光カプラ22に戻る。第1光カプラ22に戻った光L2及びL3の位相は等しいので、光L2とL3とは、第1光カプラ22で合成されて光L4として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0036】
ところで、第1サブ光回路16と第2サブ光回路30との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路16から第2サブ光回路30への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、第1湾曲光導波路28と第2湾曲光導波路42とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、第1湾曲光導波路28を伝搬する光L2は、光L2と伝搬方向が等しい光L5を第2湾曲光導波路42に励起する。同様に、光L3は、光L3と伝搬方向が等しい光L6を第2湾曲光導波路42に励起する。
【0037】
光L5は、第2湾曲光導波路42及び第4副光導波路40を経て第2光カプラ36に至る。同様に光L6は、第2湾曲光導波路42及び第3副光導波路38を経て第2光カプラ36に至る。第2光カプラ36に至った光L5及びL6の位相と強度比率は、光L2及びL3と等しくなる。その結果、光L5及びL6は、第2光カプラ36で合成されて、光L7として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L7は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0038】
以上のように、実施形態1の光回路10は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路10は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【0039】
(シミュレーション)
続いて、図3を参照して、実施形態1の光回路10について行ったシミュレーション結果を説明する。
【0040】
図3の縦軸は、光の強度割合(無次元)及び方向性結合器の結合効率(無次元)を示し、横軸は、光の波長(μm)を示す。
【0041】
シミュレーションは2次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法により行った。シミュレーションにおいて、第1及び第2主光導波路18及び32と、第1、第2、第3及び第4副光導波路24,26,38及び40と、第1及び第2湾曲光導波路28及び42は、等価屈折率が3.00のSi製光導波路であり、屈折率が1.45の石英に埋め込まれて存在しているとした。また、これらの光導波路の光伝搬方向に直交する横断面寸法を、幅約440nm及び厚さ約220nmとした。
【0042】
また、第1及び第2光カプラ22及び36を、MMI導波路とし、光伝搬方向に沿った全長を約2.2μm及び幅約1.6μmとした。また、第1光カプラ22(第2光カプラ36)に、第1及び第2副光導波路24及び26(第3及び第4副光導波路38及び40)が、0.8μm間隔で接続されているとした。また、第1及び第2副光導波路24及び26と、第1湾曲光導波路28と、第3及び第4副光導波路38及び40と、第2湾曲光導波路42の曲率半径を約2μmとした。
【0043】
図3には、4本の曲線が描かれている。曲線I及びIIIは、方向性結合器の結合効率を示す。曲線II及びIVは、第1主光導波路18へと入力された光のうち、第2主光導波路32から出力された光の割合を示す。また、曲線Iと曲線IIは、第1湾曲光導波路28と第2湾曲光導波路42との間の導波路中心間距離が600nmの場合に対応する。また、曲線IIIと曲線IVは、第1湾曲光導波路28と第2湾曲光導波路42との間の導波路中心間距離が800nmの場合に対応する。
【0044】
図3によれば、光結合部Cとしての方向性結合器の結合効率(曲線I及びIII)と略同等の割合の光が、第2主光導波路32から出力されていることがわかる。曲線II及びIVの方が曲線I及びIIIよりも僅かに低い値を示すのは、第1及び第2カプラ22及び36の挿入損失による。また、曲線II及びIVが波長と共に若干、波を打つ挙動を示すのは、第1及び第2カプラ22及び36の波長依存性のためである。
【0045】
(実施形態2)
以下、図4〜図6を参照して、実施形態2の光回路について説明する。図4は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図5は、光回路の動作の説明に供する模式図であり、図6は、光回路の動作特性を示す特性図である。なお、図4において、図1と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。また、図4において、第1サブ光回路と第2サブ光回路はSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0046】
(構造)
図4を参照すると、光回路50は、実施形態1の光回路10と同様に、SOI基板を用いて構成される。
【0047】
光回路50は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路52と、第2サブ光回路31とを備えている。また、光回路50は、任意的な構成要素として光増幅器44を備えている。なお、光増幅器44は実施形態1と同様に構成されている。
【0048】
第1サブ光回路52は、第1主光導波路18と、第1光回路要素20と、第1光カプラ22と、第1副光導波路54と、第2副光導波路56と、第1戻し構造部としてリング状光導波路58とを備えている。
【0049】
第1主光導波路18、第1光回路要素20及び第1光カプラ22は、実施形態1と同様に構成されている。
【0050】
第1副光導波路54及び第2副光導波路56は、第1主光導波路18の中心線を対称軸として線対称に形成されたチャネル型光導波路である。第1及び第2副光導波路54及び56は、一端部が第1光カプラ22に接続されていて、他端部は無反射構造が形成された自由端とされている。第1及び第2副光導波路54及び56は、第1光カプラ22から他端部に向かうに従って導波路間の距離が広がり、その後、一定距離を保つように配置されている。
【0051】
リング状光導波路58は、第1副光導波路54と第2副光導波路56との間に介在された楕円形のチャネル型光導波路である。つまり、リング状光導波路58は、その円周の2部分において、それぞれ第1副光導波路54及び第2副光導波路56と光結合可能に近接配置されて、方向性結合器を構成している。ここで、リング状光導波路58と第1副光導波路54との間で形成された方向性結合器を第1サブ光結合部C1と称し、及びリング状光導波路58と第2副光導波路56と間で形成された方向性結合器を第2サブ光結合部C2と称する。
【0052】
第2サブ光回路31は、第2主光導波路32と、第2光回路要素34と、第2光カプラ36と、第3副光導波路38と、第4副光導波路40と、第2戻し構造部として湾曲光導波路41とを備えている。第2サブ光回路31の構成は、図1を参照して説明した実施形態1のサブ光回路30と同様であるので、その説明を省略する。
【0053】
そして、光回路50では、リング状光導波路58及び湾曲光導波路41が光結合可能な距離に近接配置されていて、これらリング状光導波路58及び湾曲光導波路41が光結合部Cとして機能する。より詳細には、リング状光導波路58と湾曲光導波路41とを光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0054】
(動作)
続いて、図4及び図5を参照して、光回路50の動作について説明する。
【0055】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路54及び第2副光導波路56に等分配される。ここで、第1副光導波路54を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路56を伝搬する光をL3とする。
【0056】
光L2は、第1副光導波路54を伝搬し、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、リング状光導波路58に、時計回りに伝搬する光L4を励起する。リング状光導波路58では、リング状光導波路58を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L4のみが蓄積していく。リング状光導波路58内で充分な強度となった光L4は、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2副光導波路56に第1光カプラ22に向かう光L5を励起する。この光L5は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0057】
光L3は、第2副光導波路56を伝搬し、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、リング状光導波路58に、反時計回りに伝搬する光L6を励起する。リング状光導波路58では、リング状光導波路58を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L6のみが蓄積していく。リング状光導波路58内で充分な強度となった光L6は、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1副光導波路54に第1光カプラ22に向かう光L7を励起する。この光L7は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0058】
第1光カプラ22に戻った光L5及びL7の位相は等しいので、光L5とL7とは、第1光カプラ22で合成されて光L8として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0059】
ところで、第1サブ光回路52と第2サブ光回路31との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路52から第2サブ光回路31への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、リング状光導波路58と湾曲光導波路41とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、リング状光導波路58を伝搬する光L4は、光L4と伝搬方向が等しい光L9を湾曲光導波路41に励起する。同様に、光L6は、光L6と伝搬方向が等しい光L10を湾曲光導波路41に励起する。
【0060】
光L9は、湾曲光導波路41及び第4副光導波路40を経て第2光カプラ36に至る。同様に光L10は、湾曲光導波路41及び第3副光導波路38を経て第2光カプラ36に至る。第2光カプラ36に至った光L9及びL10の位相と強度比率は、光L5及びL7と等しくなる。その結果、光L9及びL10は、第2光カプラ36で合成されて、光L11として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L11は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0061】
以上のように、実施形態2の光回路50は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路50は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【0062】
(シミュレーション)
続いて、図6を参照して、実施形態2の光回路50について行ったシミュレーション結果を説明する。
【0063】
図6の縦軸は、光の強度(任意単位)を示し、横軸は、光の波長(μm)を示す。
【0064】
シミュレーションは2次元FDTD法により行った。シミュレーションにおいて、第1及び第2主光導波路18及び32と、第1、第2、第3及び第4副光導波路54,56,38及び40と、リング状光導波路58と、湾曲光導波路41は、等価屈折率が3.00のSi製光導波路であり、屈折率が1.45の石英に埋め込まれて存在しているとした。また、これらの光導波路の光伝搬方向に直交する横断面寸法を、幅約440nm及び厚さ約220nmとした。
【0065】
また、第1及び第2光カプラ22及び36をMMI導波路とし、及び光伝搬方向に沿った全長を約2.2μm及び幅約1.6μmとした。また、第1光カプラ22(第2光カプラ36)に、第1及び第2副光導波路54及び56(第3及び第4副光導波路38及び40)が、0.8μm間隔で接続されているとした。
【0066】
また、リング状光導波路58を曲率半径が3.8μmの楕円形とした。また、第1及び第2副光導波路54及び56と、第3及び第4副光導波路38及び40と、湾曲光導波路41の曲がり部の曲率半径を約2μmとした。さらに、光結合部Cにおけるリング状光導波路58と湾曲光導波路41との中心間距離を0.6μmとした。
【0067】
図6には、2本の曲線が描かれている。曲線Iは、第1主光導波路18から入力された光のうち、第1主光導波路18の他端18bから出力された光の強度を示す。曲線IIは、第1主光導波路18から入力された光のうち、第2主光導波路32の他端32bから出力された光の強度を示す。
【0068】
リング状光導波路58の作用により、第1主光導波路18の他端18bに戻された光(曲線I)と、第2主光導波路32の他端32bから出力された光(曲線II)の両者は、波長分布がよく一致しており、等波長間隔で鋭いピークを有している。
【0069】
(実施形態3)
以下、図7〜図9を参照して、実施形態3の光回路について説明する。図7は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図8は、光回路の動作の説明に供する模式図であり、図9は、光回路の動作特性を示す特性図である。なお、図7において、図1と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。また、図7において、第1サブ光回路と第2サブ光回路はSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0070】
(構造)
図7を参照すると、光回路60は、実施形態1の光回路10と同様にSOI基板を用いて構成される。
【0071】
光回路60は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路62と、第2サブ光回路31とを備えている。また光回路60は、任意的な構成要素として光増幅器44を備えている。なお、第2サブ光回路31及び光増幅器44は実施形態2と同様に構成されている。
【0072】
第1サブ光回路62は、第1主光導波路18と、第1光回路要素20と、第1光カプラ22と、第1副光導波路64と、第2副光導波路66と、第1リング状光導波路68と、第2リング状光導波路70と、直線状光導波路72とを備えている。ここで、第1リング状光導波路68と、第2リング状光導波路70と、直線状光導波路72とは第1戻し構造部を構成する。
【0073】
第1主光導波路18、第1光回路要素20及び第1光カプラ22は、実施形態1と同様に構成されている。
【0074】
第1副光導波路64及び第2副光導波路66は、第1主光導波路18の中心線を対称軸として線対称に形成されたチャネル型光導波路である。第1及び第2副光導波路64及び66は、一端部が第1光カプラ22に接続されていて、他端部は無反射コーティングが施された自由端とされている。第1及び第2副光導波路64及び66は、第1光カプラ22から他端部に向かうに従って、導波路間の距離が広がるような略「ハ」字状に配置されている。
【0075】
第1リング状光導波路68は、第1副光導波路64と後述する直線状光導波路72との間に介在された円形のチャネル型光導波路である。第1リング状光導波路68は、第1副光導波路64に光結合可能な距離に近接配置されており、これにより、方向性結合器として第1サブ光結合部C1が形成されている。
【0076】
第2リング状光導波路70は、第2副光導波路66と直線状光導波路72との間に介在された円形のチャネル型光導波路である。第2リング状光導波路70は、第2副光導波路66に光結合可能な距離に近接配置されており、これにより、方向性結合器として第2サブ光結合部C2が形成されている。
【0077】
直線状光導波路72は、両端部が自由端とされた直線状のチャネル型光導波路である。直線状光導波路72の両端部には、無反射構造が形成されている。直線状光導波路72は、第1及び第2リング状光導波路68及び70と、光結合可能な距離に近接配置されている。その結果、第1リング状光導波路68と直線状光導波路72との間に方向性結合器として第3サブ光結合部C3が形成されている。また、第2リング状光導波路70と直線状光導波路72との間に方向性結合器として第4サブ光結合部C4が形成されている。
【0078】
そして、光回路60では、直線状光導波路72及び湾曲光導波路41が光結合可能な距離に近接配置されていて、これら直線状光導波路72及び湾曲光導波路41が光結合部Cとして機能する。より詳細には、直線状光導波路72と湾曲光導波路41とを光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0079】
(動作)
続いて、図7及び図8を参照して、光回路60の動作について説明する。
【0080】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路64及び第2副光導波路66に等分配される。ここで、第1副光導波路64を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路66を伝搬する光をL3とする。
【0081】
光L2は、第1副光導波路64を伝搬し、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路68に、時計回りに伝搬する光L4を励起する。第1リング状光導波路68では、第1リング状光導波路68を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L4のみが蓄積していく。第1リング状光導波路68内で充分な強度となった光L4は、第3サブ光結合部C3の方向性結合器の作用により、直線状光導波路72に第2リング状光導波路70方向に伝搬する光L5を励起する。
【0082】
この光L5は、直線状光導波路72を伝搬し、第4サブ光結合部C4の方向性結合器の作用により、第2リング状光導波路70に時計回りに伝搬する光L6を励起する。第2リング状光導波路70では、第2リング状光導波路70を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L6のみが蓄積していく。第2リング状光導波路70内で充分な強度となった光L6は、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2副光導波路66に第1光カプラ22に向かう光L7を励起する。この光L7は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0083】
光L3は、第2副光導波路66を伝搬し、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2リング状光導波路70に、反時計回りに伝搬する光L8を励起する。第2リング状光導波路70では、第2リング状光導波路70を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L8のみが蓄積していく。第2リング状光導波路70内で充分な強度となった光L8は、第4サブ光結合部C4の方向性結合器の作用により、直線状光導波路72に第1リング状光導波路68方向に伝搬する光L9を励起する。
【0084】
この光L9は、直線状光導波路72を伝搬し、第3サブ光結合部C3の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路68に反時計回りに伝搬する光L10を励起する。第1リング状光導波路68では、第1リング状光導波路68を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L10のみが蓄積していく。第1リング状光導波路68内で充分な強度となった光L10は、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1副光導波路64に第1光カプラ22に向かう光L11を励起する。この光L11は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0085】
第1光カプラ22に戻った光L7及びL11の位相は等しいので、光L7とL11とは、第1光カプラ22で合成されて光L12として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0086】
ところで、第1サブ光回路62と第2サブ光回路31との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路62から第2サブ光回路31への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、直線状光導波路72と湾曲光導波路41とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、直線状光導波路72を伝搬する光L5は、光L5と伝搬方向が等しい光L13を湾曲光導波路41に励起する。同様に、光L9は、光L9と伝搬方向が等しい光L14を湾曲光導波路41に励起する。
【0087】
光L13は、湾曲光導波路41及び第4副光導波路40を経て第2光カプラ36に至る。同様に光L14は、湾曲光導波路41及び第3副光導波路38を経て第2光カプラ36に至る。第2光カプラ36に至った光L13及びL14の位相と強度比率は、光L7及びL11と等しくなる。その結果、光L13及びL14は、第2光カプラ36で合成されて、光L15として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L15は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0088】
以上のように、実施形態3の光回路60は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路60は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【0089】
(シミュレーション)
続いて、図9を参照して、実施形態3の光回路60について行ったシミュレーション結果を説明する。
【0090】
図9の縦軸は光の強度(任意単位)を示し、横軸は光の波長(μm)を示す。
【0091】
シミュレーションは2次元FDTD法により行った。シミュレーションにおいて、第1及び第2主光導波路18及び32と、第1、第2、第3及び第4副光導波路64,66,38及び40と、第1及び第2リング状光導波路68及び70と、直線状光導波路72と、湾曲光導波路41は、等価屈折率が3.00のSi製光導波路であり、屈折率が1.45の石英に埋め込まれて存在しているとした。また、これらの光導波路の光伝搬方向に直交する横断面寸法を、幅約440nm及び厚さ約220nmとした。
【0092】
また、第1及び第2光カプラ22及び36を、MMI導波路とし、光伝搬方向に沿った全長を約2.2μm及び幅約1.6μmとした。また、第1光カプラ22(第2光カプラ36)に、第1及び第2副光導波路64及び66(第3及び第4副光導波路38及び40)が、0.8μm間隔で接続されているとした。
【0093】
また、第1及び第2リング状光導波路68及び70の曲率半径は互いに等しく、3.8μmとした。また、第1及び第2副光導波路64及び66と、第3及び第4副光導波路38及び40と、湾曲光導波路41の曲がり部の曲率半径は約2μmとした。さらに、第1〜第4サブ光結合部C1〜C4及び光結合部Cを構成する方向性結合器の導波路間の中心間距離は0.6μmとした。
【0094】
図9には、2本の曲線が描かれている。曲線Iは、第1主光導波路18から入力された光のうち、第1主光導波路18の他端18bから出力された光の強度を示す。曲線IIは、第1主光導波路18から入力された光のうち、第2主光導波路32の他端32bから出力された光の強度を示す。
【0095】
第1及び第2リング状光導波路68及び70の作用により、第1主光導波路18の他端18bに戻された光(曲線I)と、第2主光導波路32の他端32bから出力された光(曲線II)の波長分布はよく一致していることがわかる。図9においては、二つのリング状光導波路68及び70を用いているために、ピーク幅が狭く、図6よりも波長選択性が向上していることがわかる。また、曲線Iでは、バックグラウンドが高い値を示しているが、これは、終端部を有する光導波路(例えば、第1及び第2副光導波路64及び66と、直線状光導波路72)の導波路終端からの反射の影響と思われる。
【0096】
(実施形態4)
以下、図10及び図11を参照して、実施形態4の光回路について説明する。図10は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図11は、光回路の動作の説明に供する模式図である。なお、図10において、図1及び図4と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。また、図10において、第1サブ光回路と第2サブ光回路とはSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0097】
(構造)
図10を参照すると、光回路80は、実施形態1の光回路10と同様に、SOI基板を用いて構成される。
【0098】
光回路80は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路51と、第2サブ光回路82とを備えている。また、光回路80は、任意的な構成要素として光増幅器44を備えている。なお、光増幅器44は実施形態1〜3と同様に構成されている。
【0099】
第1サブ光回路51は、第1主光導波路18と、第1光回路要素20と、第1光カプラ22と、第1副光導波路54と、第2副光導波路56と、第1戻し構造部として第1リング状光導波路57とを備えている。第1サブ光回路51の構成は、図4を参照して説明した実施形態2の第1サブ光回路52と同様であるので、その説明を省略する。
【0100】
第2サブ光回路82は、第2主光導波路32と、第2光回路要素34と、第2光カプラ36と、第3副光導波路84と、第4副光導波路86と、第2戻し構造部として第2リング状光導波路88とを備えている。
【0101】
第2主光導波路32、第2光回路要素34及び第2光カプラ36は、実施形態1〜3と同様に構成されている。
【0102】
第3副光導波路84及び第4副光導波路86は、第2主光導波路32の中心線を対称軸として線対称に形成されたチャネル型光導波路である。第3及び第4副光導波路84及び86は、一端部が第2光カプラ36に接続されていて、他端部は無反射構造が形成された自由端とされている。第3及び第4副光導波路84及び86は、第2光カプラ36から他端部に向かうに従って導波路間の距離が広がり、その後、一定距離を保つように配置されている。
【0103】
第2リング状光導波路88は、第3副光導波路84と第4副光導波路86との間に介在された楕円形のチャネル型光導波路である。つまり、第2リング状光導波路88は、その円周の2部分において、それぞれ第3副光導波路84及び第4副光導波路86と光結合可能に近接配置されて、方向性結合器を構成している。ここで、第2リング状光導波路88と第3副光導波路84との間で形成された方向性結合器を第3サブ光結合部C3と称し、及び第2リング状光導波路88と第4副光導波路86と間で形成された方向性結合器を第4サブ光結合部C4と称する。
【0104】
そして、光回路80では、第1リング状光導波路57及び第2リング状光導波路88が光結合可能な距離に近接配置されていて、これら第1及び第2リング状光導波路57及び88が光結合部Cとして機能する。より詳細には、第1リング状光導波路57と第2リング状光導波路88とを光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0105】
(動作)
続いて、図11を参照して、光回路80の動作について説明する。
【0106】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路54及び第2副光導波路56に等分配される。ここで、第1副光導波路54を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路56を伝搬する光をL3とする。
【0107】
光L2は、第1副光導波路54を伝搬し、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路57に、時計回りに伝搬する光L4を励起する。第1リング状光導波路57では、第1リング状光導波路57を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L4のみが蓄積していく。第1リング状光導波路57内で充分な強度となった光L4は、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2副光導波路56に第1光カプラ22に向かう光L5を励起する。この光L5は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0108】
光L3は、第2副光導波路56を伝搬し、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路57に、反時計回りに伝搬する光L6を励起する。第1リング状光導波路57では、第1リング状光導波路57を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L6のみが蓄積していく。第1リング状光導波路57内で充分な強度となった光L6は、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1副光導波路54に第1光カプラ22に向かう光L7を励起する。この光L7は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0109】
第1光カプラ22に戻った光L5及びL7の位相は等しいので、光L5とL7とは、第1光カプラ22で合成されて光L8として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0110】
ところで、第1サブ光回路51と第2サブ光回路82との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路51から第2サブ光回路82への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、第1リング状光導波路57と第2リング状光導波路88とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、第1リング状光導波路57を伝搬する光L4は、光L4と伝搬方向が等しい光L9を第2リング状光導波路88に励起する。同様に、光L6は、光L6と伝搬方向が等しい光L10を第2リング状光導波路88に励起する。
【0111】
第2リング状光導波路88では、第2リング状光導波路88を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L9及びL10のみが蓄積していく。第2リング状光導波路88内で充分な強度となった光L9及びL10は、第4及び第3サブ光結合部C4及びC3の方向性結合器の作用により、第4及び第3副光導波路86及び84に第2光カプラ36に向かう光L11及びL12を励起する。この光L11及びL12は、第2光カプラ36に向けて伝搬する。
【0112】
第2光カプラ36に至った光L11及びL12の位相と強度比率は、光L5及びL7と等しくなる。その結果、光L11及びL12は、第2光カプラ36で合成されて、光L13として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L13は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0113】
以上のように、実施形態4の光回路80は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路80は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【0114】
(実施形態5)
以下、図12及び図13を参照して、実施形態5の光回路について説明する。図12は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図13は、光回路の動作の説明に供する模式図である。なお、図12において、図1及び図10と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。また、図12において、第1サブ光回路と第2サブ光回路とはSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0115】
(構造)
図12を参照すると、光回路90は、実施形態1の光回路10と同様に、SOI基板を用いて構成される。
【0116】
光回路90は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路51と、第2サブ光回路92とを備えている。また、光回路90は、任意的な構成要素として光増幅器44を備えている。なお、第1サブ光回路51及び光増幅器44は実施形態4と同様に構成されている。
【0117】
第2サブ光回路92は、第2主光導波路32と、第2光回路要素34と、第2光カプラ36と、第3副光導波路94と、第4副光導波路96と、第2リング状光導波路98と、第3リング状光導波路100と、直線状光導波路102とを備えている。ここで、第2リング状光導波路98と、第3リング状光導波路100と、直線状光導波路102とは第2戻し構造部を構成する。
【0118】
第2主光導波路32、第2光回路要素34及び第2光カプラ36は、実施形態1と同様に構成されている。
【0119】
第3副光導波路94及び第4副光導波路96は、第2主光導波路32の中心線を対称軸として線対称に形成されたチャネル型光導波路である。第3及び第4副光導波路94及び96は、一端部が第2光カプラ36に接続されていて、他端部は無反射構造が形成された自由端とされている。第3及び第4副光導波路94及び96は、第2光カプラ36から他端部に向かうに従って、導波路間の距離が広がるような略「ハ」字状に配置されている。
【0120】
第2リング状光導波路98は、第3副光導波路94と後述する直線状光導波路102との間に介在された円形のチャネル型光導波路である。第2リング状光導波路98は、第3副光導波路94に光結合可能な距離に近接配置されており、これにより、方向性結合器として第3サブ光結合部C3が形成されている。
【0121】
第3リング状光導波路100は、第4副光導波路96と直線状光導波路102との間に介在された円形のチャネル型光導波路である。第3リング状光導波路100は、第4副光導波路96に光結合可能な距離に近接配置されており、これにより、方向性結合器として第4サブ光結合部C4が形成されている。
【0122】
直線状光導波路102は、両端部が自由端とされた直線状のチャネル型光導波路である。直線状光導波路102の両端部には、無反射構造が形成されている。直線状光導波路102は、第2及び第3リング状光導波路98及び100と、光結合可能な距離に近接配置されている。その結果、第2リング状光導波路98と直線状光導波路102との間に方向性結合器として第5サブ光結合部C5が形成されている。また、第3リング状光導波路100と直線状光導波路102との間に方向性結合器として第6サブ光結合部C6が形成されている。
【0123】
そして、光回路90では、第1リング状光導波路57及び直線状光導波路102が光結合可能な距離に近接配置されていて、これら第1リング状光導波路57及び直線状光導波路102が光結合部Cとして機能する。より詳細には、第1リング状光導波路57と直線状光導波路102とを、光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0124】
(動作)
続いて、図13を参照して、光回路90の動作について説明する。
【0125】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路54及び第2副光導波路56に等分配される。ここで、第1副光導波路54を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路56を伝搬する光をL3とする。
【0126】
光L2は、第1副光導波路54を伝搬し、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路57に、時計回りに伝搬する光L4を励起する。第1リング状光導波路57では、第1リング状光導波路57を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L4のみが蓄積していく。第1リング状光導波路57内で充分な強度となった光L4は、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2副光導波路56に第1光カプラ22に向かう光L5を励起する。この光L5は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0127】
光L3は、第2副光導波路56を伝搬し、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路57に、反時計回りに伝搬する光L6を励起する。第1リング状光導波路57では、第1リング状光導波路57を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L6のみが蓄積していく。第1リング状光導波路57内で充分な強度となった光L6は、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1副光導波路54に第1光カプラ22に向かう光L7を励起する。この光L7は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0128】
第1光カプラ22に戻った光L5及びL7の位相は等しいので、光L5とL7とは、第1光カプラ22で合成されて光L8として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0129】
ところで、第1サブ光回路51と第2サブ光回路92との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路51から第2サブ光回路92への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、第1リング状光導波路57と直線状光導波路102とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、第1リング状光導波路57を伝搬する光L4は、光L4と伝搬方向が等しい光L9を直線状光導波路102に励起する。同様に、光L6は、光L6と伝搬方向が等しい光L10を直線状光導波路102に励起する。
【0130】
光L9は、第6サブ光結合部C6の方向性結合器の作用により、第3リング状光導波路100に反時計回りに伝搬する光L11を励起する。
【0131】
第3リング状光導波路100では、第3リング状光導波路100を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L11のみが蓄積していく。第3リング状光導波路100内で充分な強度となった光L11は、第4サブ光結合部C4の方向性結合器の作用により、第4副光導波路96に第2光カプラ36に向かう光L12を励起する。この光L12は、第2光カプラ36に向けて伝搬する。
【0132】
光L10は、第5サブ光結合部C5の方向性結合器の作用により、第2リング状光導波路98に時計回りに伝搬する光L13を励起する。
【0133】
第2リング状光導波路98では、第2リング状光導波路98を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L13のみが蓄積していく。第2リング状光導波路98内で充分な強度となった光L13は、第3サブ光結合部C3の方向性結合器の作用により、第3副光導波路94に第2光カプラ36に向かう光L14を励起する。この光L14は、第2光カプラ36に向けて伝搬する。
【0134】
第2光カプラ36に至った光L12及びL14の位相と強度比率は、光L5及びL7と等しくなる。その結果、光L12及びL14は、第2光カプラ36で合成されて、光L15として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L15は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0135】
以上のように、実施形態5の光回路90は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路90は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【0136】
(実施形態6)
以下、図14及び図15を参照して、実施形態6の光回路について説明する。図14は、光回路の概略構成を示す模式図であり、図15は、光回路の動作の説明に供する模式図である。なお、図14において、図1と同様の構成要素には、同符号を付して、その説明を省略する。なお、図14において、第1サブ光回路と第2サブ光回路とはSiO層に囲まれて設けられているために、直接目視することはできないが、強調して示すために実線で描いてある。
【0137】
(構造)
図14を参照すると、光回路110は、実施形態1の光回路10と同様に、SOI基板を用いて構成される。
【0138】
光回路110は、Si支持基板12上に積層されたSiO層14中に埋め込まれて設けられたSi製の構造体である第1サブ光回路61と、第2サブ光回路91とを備えている。また、光回路110は、任意的な構成要素として光増幅器44を備えている。なお、光増幅器44は実施形態1〜5と同様に構成されている。
【0139】
第1サブ光回路61は、第1主光導波路18と、第1光回路要素20と、第1光カプラ22と、第1副光導波路64と、第2副光導波路66と、第1リング状光導波路68と、第2リング状光導波路70と、第1直線状光導波路71とを備えている。第1サブ光回路61の構成は、図7を参照して説明した実施形態3の第1サブ光回路62と同様であるので、その説明を省略する。
【0140】
第2サブ光回路91は、第2主光導波路32と、第2光回路要素34と、第2光カプラ36と、第3副光導波路94と、第4副光導波路96と、第3リング状光導波路97と、第4リング状光導波路99と、第2直線状光導波路101とを備えている。また、第2サブ光回路91は、第5サブ光結合部C5と、第6サブ光結合部C6と、第7サブ光結合部C7と、第8サブ光結合部C8とを備えている。第2サブ光回路91の構成は、図12を参照して説明した実施形態5の第2サブ光回路92と同様であるので、その説明を省略する。
【0141】
光回路110では、第1直線状光導波路71及び第2直線状光導波路101が光結合可能な距離に近接配置されていて、第1及び第2直線状光導波路71及び101が光結合部Cとして機能する。より詳細には、第1直線状光導波路71と第2直線状光導波路101とを光結合可能な距離に対向配置、すなわち近接配置することにより方向性結合器を形成し、第1戻し構造部と第2戻し構造部とを光結合部Cとして機能させる。
【0142】
(動作)
続いて、図15を参照して、光回路110の動作について説明する。
【0143】
光増幅器44から出射された光は、第1主光導波路18を伝搬して第1光カプラ22に至る。この光をL1とする。光L1は、第1光カプラ22により第1副光導波路64及び第2副光導波路66に等分配される。ここで、第1副光導波路64を伝搬する光を光L2とし、及び第2副光導波路66を伝搬する光をL3とする。
【0144】
光L2は、第1副光導波路64を伝搬し、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路68に、時計回りに伝搬する光L4を励起する。第1リング状光導波路68では、第1リング状光導波路68を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L4のみが蓄積していく。第1リング状光導波路68内で充分な強度となった光L4は、第3サブ光結合部C3の方向性結合器の作用により、第1直線状光導波路71に第2リング状光導波路70方向に伝搬する光L5を励起する。
【0145】
この光L5は、第1直線状光導波路71を伝搬し、第4サブ光結合部C4の方向性結合器の作用により、第2リング状光導波路70に時計回りに伝搬する光L6を励起する。第2リング状光導波路70では、第2リング状光導波路70を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L6のみが蓄積していく。第2リング状光導波路70内で充分な強度となった光L6は、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2副光導波路66に第1光カプラ22に向かう光L7を励起する。この光L7は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0146】
光L3は、第2副光導波路66を伝搬し、第2サブ光結合部C2の方向性結合器の作用により、第2リング状光導波路70に、反時計回りに伝搬する光L8を励起する。第2リング状光導波路70では、第2リング状光導波路70を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L8のみが蓄積していく。第2リング状光導波路70内で充分な強度となった光L4は、第4サブ光結合部C4の方向性結合器の作用により、第1直線状光導波路71に第1リング状光導波路68方向に伝搬する光L9を励起する。
【0147】
この光L9は、第1直線状光導波路71を伝搬し、第3サブ光結合部C3の方向性結合器の作用により、第1リング状光導波路68に反時計回りに伝搬する光L10を励起する。第1リング状光導波路68では、第1リング状光導波路68を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L10のみが蓄積していく。第1リング状光導波路68内で充分な強度となった光L10は、第1サブ光結合部C1の方向性結合器の作用により、第1副光導波路64に第1光カプラ22に向かう光L11を励起する。この光L11は、第1光カプラ22に向けて伝搬する。
【0148】
第1光カプラ22に戻った光L7及びL11の位相は等しいので、光L7とL11とは、第1光カプラ22で合成されて光L12として、第1主光導波路18を光増幅器44に向けて伝搬する。
【0149】
ところで、第1サブ光回路61と第2サブ光回路91との間の光結合部Cでは、第1サブ光回路61から第2サブ光回路91への光の結合が行われる。より詳細には、光結合部Cでは、第1直線状光導波路71と第2直線状光導波路101とが光結合可能な距離に互いに平行に配置されて方向性結合器が構成されている。その結果、第1直線状光導波路71を伝搬する光L5は、光L5と伝搬方向が等しい光L13を第2直線状光導波路101に励起する。同様に、光L9は、光L9と伝搬方向が等しい光L14を第2直線状光導波路101に励起する。
【0150】
光L13は、第7及び第8サブ光結合部C7及びC8の方向性結合器の作用により、第3及び第4リング状光導波路97及び99に反時計回りに伝搬する光L15及びL16を励起する。第3リング状光導波路97を伝搬する光L15は、第5サブ光結合部C5の方向性結合器の作用により、第3副光導波路94に、第3副光導波路94の自由端に向かう方向に伝搬する光L17を励起する。光L17は、第3副光導波路94の自由端に設けられた無反射構造により吸収される。
【0151】
一方、第4リング状光導波路99では、第4リング状光導波路99を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L16のみが蓄積していく。第4リング状光導波路99内で充分な強度となった光L16は、第6サブ光結合部C6の方向性結合器の作用により、第4副光導波路96に第2光カプラ36に向かう光L18を励起する。この光L18は、第2光カプラ36に向けて伝搬する。
【0152】
光L14は、第7及び第8サブ光結合部C7及びC8の方向性結合器の作用により、第3及び第4リング状光導波路97及び99に時計回りに伝搬する光L19及びL20を励起する。第4リング状光導波路99を伝搬する光L20は、第6サブ光結合部C6の方向性結合器の作用により、第4副光導波路96に、第4副光導波路96の自由端に向かう方向に伝搬する光L21を励起する。光L21は、第4副光導波路96の自由端に設けられた無反射構造により吸収される。
【0153】
一方、第3リング状光導波路97では、第3リング状光導波路97を一周したときに位相の揃う、共振条件を満たす光L19のみが蓄積していく。第3リング状光導波路97内で充分な強度となった光L19は、第5サブ光結合部C5の方向性結合器の作用により、第3副光導波路94に第2光カプラ36に向かう光L22を励起する。この光L22は、第2光カプラ36に向けて伝搬する。
【0154】
第2光カプラ36に至った光L18及びL22の位相と強度比率は、光L7及びL11と等しくなる。その結果、光L18及びL22は、第2光カプラ36で合成されて、光L23として第2主光導波路32を伝搬する。そして、光L23は、第2光回路要素34において種々の処理を受け、第2主光導波路32の他端32bから系外に取り出される。
【0155】
以上のように、実施形態6の光回路110は、光結合部Cとして、半導体製造技術を利用して製造できる方向性結合器を用いている。そのため、異なる光回路要素間での位置合わせに当たり、光入射端面と光出射端面とをミクロンオーダの位置精度で位置決めする作業が不要となる。結果として、光回路110は、第1光回路要素20から第2光回路要素34への光の結合を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0156】
10,50,60,80,90,110 光回路
12 Si支持基板
14 SiO
16,51,52,61,62 第1サブ光回路
18 第1主光導波路
18a 一端
18b 他端
20 第1光回路要素
22 第1光カプラ
24,54,64 第1副光導波路
26,56,66 第2副光導波路
28 第1湾曲光導波路
30,31,82,91,92 第2サブ光回路
32 第2主光導波路
32a 一端
32b 他端
34 第2光回路要素
36 第2光カプラ
38,84,94 第3副光導波路
40,86,96 第4副光導波路
41 湾曲光導波路
42 第2湾曲光導波路
44 光増幅器
57,68 第1リング状光導波路
58 リング状光導波路
70,88,98 第2リング状光導波路
71 第1直線状光導波路
72,102 直線状光導波路
98 第2リング状光導波路
97,100 第3リング状光導波路
99 第4リング状光導波路
101 第2直線状光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主光導波路、第1副光導波路及び第2副光導波路と、
前記第1主光導波路に設けられた第1光回路要素と、
前記第1主光導波路の一端に接続され、前記第1主光導波路を伝搬する光を前記第1副光導波路及び前記第2副光導波路に等分配する第1光カプラと、
前記第1副光導波路及び前記第2副光導波路の間に設けられた、光導波路を有する第1戻し構造部と
を含む第1サブ光回路、及び
第2主光導波路、第3副光導波路及び第4副光導波路と、
前記第2主光導波路に設けられた第2光回路要素と、
前記第2主光導波路の一端に接続され、前記第3副光導波路及び前記第4副光導波路を伝搬する光を合成して前記第2主光導波路に送る第2光カプラと、
前記第3副光導波路及び前記第4副光導波路の間に設けられた、光導波路を有する第2戻し構造部と
を含む第2サブ光回路、
を備え、
前記第1戻し構造部及び前記第2戻し構造部が近接配置されて、光結合部として機能することを特徴とする光回路。
【請求項2】
前記第1戻し構造部が有する光導波路が、前記第1及び第2副光導波路を接続する第1湾曲光導波路であり、
前記第2戻し構造部が有する光導波路が、前記第3及び第4副光導波路を接続する第2湾曲光導波路であり、
第1湾曲光導波路及び第2湾曲光導波路が光結合可能な距離に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項3】
前記第1戻し構造部が有する光導波路が、前記第1及び第2副光導波路の両者に光結合可能に近接配置されたリング状光導波路であり、
前記第2戻し構造部が有する光導波路が、前記第3及び第4副光導波路を接続する湾曲光導波路であり、
前記リング状光導波路と前記湾曲光導波路が光結合可能な距離に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項4】
前記第1戻し構造部が、前記第1副光導波路に光結合可能に近接配置された第1リング状光導波路と、前記第2副光導波路に光結合可能に近接配置された第2リング状光導波路と、前記第1及び第2リング状光導波路の両者に光結合可能に近接配置された直線状光導波路を備えて構成されており、
前記第2戻し構造部が有する光導波路が、前記第3及び第4副光導波路を接続する湾曲光導波路であり、
前記直線状光導波路と前記湾曲光導波路とが光結合可能な距離に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項5】
前記第1戻し構造部が有する光導波路が、前記第1及び第2副光導波路の両者に光結合可能に近接配置された第1リング状光導波路であり、
前記第2戻し構造部が有する光導波路が、前記第3及び第4副光導波路の両者に光結合可能に近接配置された第2リング状光導波路であり、
前記第1リング状光導波路と前記第2リング状光導波路とが光結合可能な距離に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項6】
前記第1戻し構造部が有する光導波路が、前記第1及び第2副光導波路の両者に光結合可能に近接配置された第1リング状光導波路であり、
前記第2戻し構造部が、前記第3副光導波路に光結合可能に近接配置された第2リング状光導波路と、前記第4副光導波路に光結合可能に近接配置された第3リング状光導波路と、前記第2及び第3リング状光導波路の両者に光結合可能に近接配置された直線状光導波路を備えて構成されており、
前記第1リング状光導波路と前記直線状光導波路とが光結合可能な距離に近接配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項7】
前記第1戻し構造部が、前記第1副光導波路に光結合可能に近接配置された第1リング状光導波路と、前記第2副光導波路に光結合可能に近接配置された第2リング状光導波路と、前記第1及び第2リング状光導波路の両者に光結合可能に近接配置された第1直線状光導波路を備えて構成されており、
前記第2戻し構造部が、前記第3副光導波路に光結合可能に近接配置された第3リング状光導波路と、前記第4副光導波路に光結合可能に近接配置された第4リング状光導波路と、前記第3及び第4リング状光導波路の両者に光結合可能に近接配置された第2直線状光導波路を備えて構成されており、
前記第1及び第2直線状光導波路が光結合可能な距離に近接配置されていること特徴とする請求項1に記載の光回路。
【請求項8】
前記第1又は第2主光導波路の他端に、光増幅器が設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の光回路。
【請求項9】
前記第1及び第2光回路要素として、光波長フィルタ、光変調器、波長変換素子及び光スイッチからなる群から選ばれた光回路要素を用いることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の光回路。
【請求項10】
前記第1及び第2主光導波路と、前記第1、第2、第3及び第4副光導波路と、前記第1及び第2戻し構造部が有する光導波路とが、Si製であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−212002(P2012−212002A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77356(P2011−77356)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】