光増感(PHOTOSENSITISATION)の使用
光増感剤およびバクテリオファージの複合体を含む組成物を提供する。該複合体は、ターゲットにする光線力学治療法において、細菌、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAを殺すために使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感剤と、バクテリオファージ、特にスタフィロファージ(staphylophage)として知られているスタフィロコッカル バクテリオファージとの複合体を含む組成物に関する。本発明はまた感染症のための光線力学治療方法における該複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染に対抗するための抗菌剤の使用は、多くの種の病原菌の中での抗生物質に対する耐性の急速な出現により次第に効果がなくなっている。ひとつのそのような病原菌がStaphylococcus aureus(S. aureus)であり、感染性にきび、やけどおよび 創傷同様、おでき、吹き出ものおよび膿痂疹のような皮膚感染を特徴的に生じさせる。もし感染した微生物が有毒株であれば、そのような感染、または定着させたタンポンは、毒素性ショック症候群として知られている命を脅かす毒素血症(toxaemia)を引き起こし得る。該微生物はまた感染部からまたは静脈カテーテルのような異物から血流へ進入し、それから心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎および肺炎のようなほかの部位での感染を引き起こし得る。
【0003】
例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Staphylococcus aureus、連鎖球菌、Corynebacterium spp.、E. coli、Klebsiella aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Propionibacterium acnes、Bacteroides spp.、Pseudomonas aeruginosapおよびPeptostreptococcus spp.のような多くの細菌は、皮膚および創傷の感染の原因である。次第に、これらの細菌は抗生物質による治療に対して耐性を示している。
【0004】
特に、S. aureusの耐性菌が出現している。メチシリン耐性S. aureus(MRSA)は、1961年に初めて報告され(Jevons, M.(1961) British Medical Journal, 1,124-5)、そしてこれらの菌株は、多くの老人ホームやレジデンシャルホームにおいて流行っているのと同様、今や世界中の院内感染の最大の原因である。これは毎年イギリスで何百人もの患者の重大な感染および罹患率をもたらし、ヘルスケアーに対して警鐘を提起する難問である(Ayliffe et al, J Hosp Infect (1988), 39,253-90)。
【0005】
MRSAの最初の報告から、これらの微生物は、エリスロマイシン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、トリメトプリム、スルホンアミドおよびクロラムフェニコールが挙げられる抗生物質の広範囲に対して耐性を示している。MRSA菌株は臨床的に利用できる抗生物質のひとつのクラス:バンコマイシンおよびテイコプラニンのようなグリコペプチドに対して唯一感受性であることが明らかになっている。しかしながら、バンコマイシンに対して耐性をもつ菌が現在報告されているので (Hiramatsu, K. (1998) American Journal of Medicine, 104,7S-10S)、耐性はこれらに至るまで広がっている。
【0006】
これらの菌は、VRSA(バンコマイシン耐性Staphylococcus aureus)およびhetero-VRSA (ハイレベルのバンコマイシンにさらされることから生じる耐性菌)としてさまざまに知られている。現在MRSAに感染している患者の管理は、たいていは抗菌剤の投与を伴い、それで再び、使用された多くの薬剤に対する耐性菌が発生するという証拠がある。
実際上すべての現在利用できる抗菌剤に対して耐性を示す菌株の出現により、MRSAは今や健康に対する重大な脅威である。用語MRSA自体が、今や、メチシリンおよび多くの抗菌剤に耐性を示すS. aureusに対してより正確にあてはまる。
【0007】
MRSAのある菌株は病院内だけではなく病院間で急速に広がることが発見されている。これらの菌株は流行性MRSA(EMRSA)と称されている。初めのEMRSA菌株(EMRSA-1)が1981年に報告されてから、17の異なるEMRSA菌が同定された。それらのすべては多くの抗菌剤に耐性を示す。最近では、二つの最も流行している菌株はEMRSA-15および-16であり、報告されている30000のMRSAの臨床分離株の60-70%の割合を占める(Livermore, D (2000) Int. J. Antimicrobial Agents, 16, S3-S10)。重大なことには、MRSAの菌株(市井獲得MRSA(CA-MRSA)として知られている)は、市井においてもまた、すなわち入院していない個人の間で広がり始めている。
細菌感染、特にMRSAの感染に対抗する代わりの方法が緊急に求められていることは上記から明らかである。
【0008】
ひとつのアプローチが微生物の致死の光増感を達成するための光活性化剤の採用である。これは適した波長の光での照射の際に、細胞毒性種を産生させ、溶菌を生じる光活性化可能な化合物(光増感剤)で微生物を処理することを包含する。この技術は、in vitroで光増感剤としてトルイジンブルーO(toluidine blue O)(TBO)およびアルミニウム2スルホン化フタロシアニン(aluminium disulphonated phthalocyanin)(AlPcS2)を使用して、S. aureusおよびMRSA菌株を含む広範囲の細菌を殺すことを達成するために使用されている。光増感剤もレーザー光も単独では殺菌効果を発揮しなかった(Wilson et al, (1994) J Antimicrob Chemother 33,619-24)。その後の研究において、16のEMRSAの菌株は、AlPcS2の存在下で赤色光(674 nm)の低用量による殺傷に感受性であることが発見された(Griffiths et al, (1997) J Antimicrob Chemother, 40,873-6)。より高い光線量では、100%の死が達成された。
【0009】
光線力学療法(PDT)は、病気の治療へのそのようなアプローチの応用である。それは、癌の治療においては確立された方法であり、血液製剤の殺菌の手段の基礎を形成する。感染症の治療に対してPDTの適用が評価されてきたのはごく最近である。例えば、アルゴンレーザーと組み合わせたヘマトポルフィリン(haematoporphyrin)は、神経手術後の感染および脳膿瘍の治療のために使用されている (Lombard et al, (1985),Photodynamic Therapy of Tumours and other Diseases, Ed. Jori & Perria)。
【0010】
感染症のPDTに関連したひとつの潜在的な問題は、その特異性の欠如である。従って、光増感剤がターゲットの微生物同様、宿主細胞に結合または宿主細胞により取り込まれたなら、その後の照射は、宿主細胞の死をももたらすかもしれない。これを克服する方法は、標的化化合物の使用によるもの、すなわち病原菌の表面に特異的に結合できるいずれかの化合物の使用によるものである。
【0011】
数個の標的化化合物は、それらが光増感剤に結合している場合に、特定の細菌の菌株を排除することに成功していることがすでに示されている。例えば、イムノグロブリン(IgG)は、S. aureusプロテインA(Gross et al (1997), Photochemistry and Photobiology, 66,872-8)を標的にするために、Porphyromonas gingivalis リポ多糖類に対してモノクローナル抗体(Bhatti et al (2000), Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 44,2615-8)ならびにP. gingivalisおよびActinomyces viscosus に対してポリ−L−リジンペプチド(Soukos et al (1998), Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 42,2595-2601)が使用されている。光増感剤であるティン(IV)クロリンe6(SnCe6)にデキストラン鎖を介して結合しているモノクローナル抗体は、630nmの光にさらした場合に、S. aureus に影響を与えないで、選択的にP. aeruginosa を殺した(Friedberg et al (1991), Ann N Y Acad Sci, 618,383-393)。
【0012】
本願の発明者は、EMRSA菌株1、3、15および16を標的にするために、SnCe6に結合したIgGを使用し(Embleton et al (2002), J Antimicrob Chemother, 50,857- 864)、光増感剤単独よりもより高い殺菌レベルを達成し、Streptococcus sanguisとの混合物中のEMRSA菌株を選択的に殺した。しかしながら、IgGの限界はプロテインAを発現するS. aureusの菌株のみを標的にし得ることである。従って、いずれのS. aureus菌株をも標的にし得る代わりの標的化物質が望まれる。
【0013】
バクテリオファージは、ある種の細菌に感染するウイルスであり、しばしば細菌を溶解し、その結果細胞死をもたらしている。バクテリオファージは、それ自身の本来の状態において抗菌剤として提案されている。しかしながら、 S. aureus疾患の治療において、スタフィロコッカル バクテリオファージ (スタフィロファージと称する)の使用に伴う問題の1つは、それらの制限された宿主範囲である。多くのS. aureus菌株を溶解し得る多価のスタフィロファージがあるとしても、他の菌株は耐性を示し、そのためバクテリオファージ単独はS. aureusのすべての菌株を殺す有効な方法を提供できなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかのバクテリオファージは、単に限られた範囲の細菌を殺すとはいえ、より広い範囲の細菌に結合するであろうことは公知である。本願の発明者は、いくつかのバクテリオファージが、光増感剤のための有効な標的化デリバリーシステムとして作用し得ることを現在見出した。
【0015】
本願の発明者は、バクテリオファージが光増感剤に結合した場合に、形成された光増感剤-バクテリオファージ複合体が、適切な波長の光で照射した場合に細菌を殺す際に高度に有効であることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
バクテリオファージ-光増感剤複合体は、広範囲の細菌性皮膚および創傷感染症の治療または予防に使用し得る。皮膚および創傷感染症から最もしばしば単離される微生物は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、S. aureus、連鎖球菌(streptococci)、例えばStreptoccocus pyogenes、Corynebacterium spp.、E coli、Klebsiella aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Propionibacterium acnes、Bacteroides spp.、Pseudomonas aeruginosaおよびPeptostreptococcus spp.である。
【0017】
特に、光増感剤およびスタフィロファージ(staphylophage)の複合体は、Staphylococci spp.菌株に対して、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAおよびCA-MRSAに対する光線力学療法において使用され得る。
【0018】
本発明は、光増感剤-バクテリオファージ複合体を形成するためにバクテリオファージに結合した光増感用化合物(光増感剤)を含む組成物を提供する。バクテリオファージは、スタフィロコッカルファージであり得、好ましくはStaphylococcus aureus、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAに結合しうるスタフィロファージである。この組成物は光線力学治療方法において使用し得る。
【0019】
バクテリオファージは、好ましくは共有結合を用いて光増感剤に結合される。光増感剤および/またはバクテリオファージは、例えばチオール-チオール架橋結合、アミン-アミン架橋結合、アミン-チオール架橋結合、アミン-カルボン酸架橋結合、チオール-カルボン酸架橋結合、ヒドロキシル-カルボン酸架橋結合、ヒドロキシル-チオール架橋結合およびそれらの組合せなどの架橋された結合を作るために、化学または光反応性の試薬を使用して共有結合的に架橋され得る基を含み、または含むように修飾され得る。
【0020】
光増感剤は、ポルフィリン(例えばヘマトポルフィリン誘導体、ジュウテロポルフィリン)、フタロシアニン(例えば亜鉛、シリコンおよびアルミニウムフタロシアニン)、クロリン(例えばティンクロリンe6、ティンクロリンe6のポリ−リジン誘導体、m-テトラヒドロキシフェニルクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ティンエチオプルプリン(tin etiopurpurin))、バクテリオクロリン、フェノチアジニウム(例えば、トルイジンブルー(toluidine blue)、メチレンブルー、ジメチルメチレンブルー)、フェナジン(例えばニュートラルレッド)、アクリジン(例えばアクリフラビン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アミナクリン)、テキサフィリン、シアニン(例えばメロシアニン540)、アントラサイクリン(例えばアドリアマイシンおよびエピルビシン)、フェオホルバイド、サフィリン、フラーレン、ハロゲン化キサンテン(例えばローズベンガル)、ペリレンキノノイド顔料(例えばヒペリシン、ハイポクレリン(hypocrellin))、ギルボカルシン、ターチオフェン、ベンゾフェナントリジン、ソラレンおよびリボフラビンから適宜選ばれる。
【0021】
本発明は上記に述べた複合体を使用して細菌を殺すことに関する。複合体中で用いられるバクテリオファージは、特定の感染した細菌に対して最も効く複合体に到達するために、殺すべき特定の微生物に従って選択し得る。ひとつの好ましい態様において、感染した細菌はMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAであり、複合体はスタフィロコッカルファージ75またはファージφ11を含む。
【0022】
さらに多くの例が存在するが、下表1は、細菌−バクテリオファージペアーのいくつかの例を示す。さらなる新規なバクテリオファージは、単離および/または標的細菌へ適合し得る。治療の特異性は、1価のバクテリオファージ、多価のバクテリオファージ、あるいは1価のバクテリオファージの組合せまたは1価と多価のバクテリオファージの組合せの使用によって、必要とされるように修飾し得る。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明の組成物は、少なくとも0.01μg/ml、好ましくは少なくとも0.02μg/ml、より好ましくは少なくとも 0.05μg/mlから200μg/mlまで、好ましくは100μg/mlまで、より好ましくは50μg/mlまでの光増感剤を適当に含む。組成物中のバクテリオファージの量は、適切には1x105〜1xl010pfu、好ましくは1x106〜1x109pfu、さらに好ましくは1x106〜1x108pfuである。
【0025】
本発明の組成物はさらに2価のイオン源、例えばCa2+またはMg2+、好ましくはCa2+をさらに含んでもよい。例として塩化カルシウム、炭酸カルシウムおよび塩化マグネシウムが挙げられる。イオンは、5〜200mM、好ましくは5〜15mM、さらに好ましくは約10mMの量で適当に存在する。
【0026】
組成物は、さらにバッファー、張度を調製するための塩、酸化防止剤、保存料、ゲル化剤およびミネラル質再付加剤(remineralisation agents)から選択される1以上の成分を含んでもよい。
【0027】
本発明は、さらに(a)エリア中のいずれの細菌も光増感剤-バクテリオファージ複合体に結合するように、本発明の組成物と処理されるエリアとを接触させ、そして
(b)光増感剤により吸収される波長での光を該エリアに照射することを含む
細菌を殺す方法を提供する。
【0028】
細菌は適宜上記表1に示される通りであり、好ましくはStaphylococcus aureus、さらに好ましくはMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAである。
【0029】
本発明の方法において、適切な波長の光を放つどんな光源も使用し得る。光の波長は、光増感剤の最大吸収に相当し、光増感剤を活性化するために十分なエネルギーを有するように選択される。光源は、単色または多色の光を生み出すことができるいずれの装置または生物学的システムであり得る。例として、レーザー、発光ダイオード、アークランプ、ハロゲンランプ、白熱ランプあるいは生物発光または化学発光のエミッターが挙げられる。ある種の環境においては、太陽光が適切であり得る。好ましくは、光源から放たれる光の波長は200〜1060nmであり、好ましくは400〜750nmであり得る。適切なレーザーは、1〜100mWの出力および1〜10mmのビーム直径を有し得る。レーザー照射のための光線量は、レーザー光のために適切には5〜333Jcm-2、好ましくは5〜30Jcm-2である。白色光照射のためには、適切な量は0.01〜100kJ/cm2、好ましくは0.1〜20kJc/m2、より好ましくは3〜10kJ/cm2である。
【0030】
照射時間は、適切には1秒〜15分、好ましくは1〜5分である。
【0031】
次の光源は本発明において使用に適し得る:
ヘリウムネオン(HeNe)ガスレーザー(633nm)
アルゴン励起色素レーザー(500-700nm、5W出力)
銅蒸気励起色素レーザー(600-800nm)
エキシマー励起色素レーザー(400-700nm)
金蒸気レーザー(628nm、10W出力)
可変固体レーザー(532-1060nm)、Sd:YAGを含む
発光ダイオード(LED)(400-800nm)
ダイオードレーザー(630-850nm、25W出力)、例えば、ガリウム セレニウム ヒ化物
タングステンフィラメントランプ
ハロゲン冷光源
蛍光灯。
【0032】
本発明の方法において、組成物は、適切には薬学的に許容可能な水性担体中の溶液または懸濁物の形態であるが、粉またはゲル、軟膏またはクリームのような固体の形態であってもよい。組成物はペインティング、スプレッディング、スプレーイングまたはほかのいずれの従来技術によって感染のエリアに適用し得る。
【0033】
本発明はさらにヒトまたは動物の生体の治療のための組成物の使用を提供する。適切には、組成物は、特にブドウ球菌、とりわけMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAによる細菌感染から生じる状態の治療においての使用のために提供される。
【0034】
本発明は、特にブドウ球菌、とりわけMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAによる細菌感染を治療するためにおでき、吹き出もの、乳腺炎および膿痂疹のような皮膚感染を治療または予防するために、にきび、やけどまたは創傷の感染を治療または予防するために、あるいは細菌感染の結果として生じる心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎および肺炎を治療または予防するために、カテーテル、インプラントまたは他の医療装置の使用から生じる感染を治療または予防するために、あるいは帝王切開のような手術後の感染を予防するために使用し得る。
【0035】
本発明は、もしあったとしてもわずかの徴候を彼ら自身が示すキャリアーによる細菌の運搬の予防にもまた使用し得る。
【実施例】
【0036】
材料および方法
以下の培地を調製した。
【0037】
ニュートリエントブロス2(NB2)培地
ニュートリエントブロス2(Oxoid)(10.0g/l Lab-Lemco パウダー、10.0g/lペプトン、5.0g/l NaCl)25gを1リットルの脱イオン化した蒸留水に加えて1リットルの培地を作製した。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0038】
トリプトンソーヤイーストブロス(Tryptone Soya Yeast Broth)(TSY)
トリプトンソーヤブロス(Oxoid)(17.0g/lカゼインの膵液消化物(pancreatic digest of casein)、3.0g/l大豆ミールのパパイン消化物(papaic digest)、2.5g/lグルコース、2.5g/lリン酸水素二カリウム、5.0g/l NaCl)39gおよび酵母抽出液(9.8g/l全窒素、5.1g/lアミノ窒素、0.3g/l NaCl)0.5%を脱イオン化した蒸留水1リットルに加えて1リットルの培地を作製した。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0039】
ニュートリエントブロス2上部寒天
0.35 % (w/v)培地用寒天(Agar Bacteriological)(Agar No. 1、Oxoid)をNB2培地に加えた。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0040】
ニュートリエントブロス2底部寒天
0.7% (w/v) 培地用寒天(Agar Bacteriological)をNB2培地に加えた。オートクレーブ後、10mM CaCl2を加えた(NB2 1リットル中に10ml 1M CaCl2)。
【0041】
コロンビア血液寒天(CBA)
コロンビア寒天基礎(Oxoid)(23.0g/lスペシャルペプトン、1.0g/lスターチ、5.0g/l NaCl、10.0g/l寒天)37.1gを脱イオン化した蒸留水1リットルに加えた。オートクレーブ後、液体寒天は、取り扱うために十分冷めるまで室温で冷却するため放置した。その後5%(v/v)脱繊維素ウマ血液(E&O Laboratories、スコットランド)を加えた。
【0042】
マンニトール塩寒天(Mannitol Salt Agar)(MSA)
マンニトール塩寒天(Oxoid)(75.0g/l NaCl,10.0g/lマンニトール、1.0g/l Lab-lemcoパウダー、10.0 g/lペプトン、0.025 g/lフェノールレッド、15.0g/l寒天)111gを脱イオン化した蒸留水1リットルに加えた。
すべての混合物は121℃で15分間オートクレーブした。その後液体寒天をプレートに注ぎカバーをして一晩冷却するため放置した。
【0043】
標的微生物
実施例で使用された微生物は次のように、名前およびNCTC(National Collection of Type Cultures, UK)またはATCC (American Type Culture Collection, USA)番号として与えた:
流行性メチシリン耐性S. aureus (EMRSA)-1 (NCTC 11939)
EMRSA-3 (NCTC 13130)
EMRSA-15 (NCTC 13142)
EMRSA-16 (NCTC 13143)
Mu3(ATCC 700698)は、異種的にバンコマイシン耐性Staphylococcus aureus(hetero-VRSA)(Hanaki et al (1998). J. Antimicrob. Chemother. 42: 199-209)と規定されたバンコマイシンに対する異種耐性を伴うメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)菌株である。
Mu50は、原型的なVRSA菌株(Hiramatsu et al (1997). J. Antimicrob. Chemother. 40: 135-136)である。
MW2は市井獲得MRSA菌株である。市井獲得MRSA菌株(CA-MRSA)は、ゲノム上のブドウ球菌カセット染色体mec(SCCmec)タイプIVの存在を共有し、しばしば伝染力が強く、主に皮膚および軟組織の感染を生じさせる。典型的なCA-MRSA菌株であるMW2のゲノム配列は、他のS. aureus菌株においては普通存在しない、さらなる病原性ファクターの存在を明らかにした(Baba et al (2002), Lancet. 25; 359 (9320):1819-27)。
【0044】
Staphylococcus epidermidis (NCTC 11047)
Streptococcus pyogenes (ATCC 12202)
Propionibacterium acnes (ATCC 29399)
Staphyloccus aureus 8324-5 (Novick (1967) Virology 33; 156-166)
すべてはCBA上で毎週継代培養により維持した。
【0045】
バクテリオファージ
ファージ75 (Public Health Laboratory Service, UK)は、 EMRSA-16、EMRSA-3に感染でき、また弱くEMRSA-15に感染できる血清型Fスタフィロコッカルファージである。
【0046】
バクテリオファージφ11(Iandolo et al, (2002), Gene 289 (1-2); 109-118)は、血清学的グループBのテンペレートバクテリオファージである。φ11は低溶原化頻度(low lysogenisation frequency)を伴う、形質導入ファージである。それは、多くのヒトおよび動物の病原菌を含むS. aureus 溶菌グループIII菌株に感染する。
【0047】
バクテリオファージ増殖
対数増殖中期(Mid-exponential)EMRSA-16(300μl)を15ml Falconチューブに加えた。ファージ75の約105pfuをチューブに加え、ファージを細菌に感染させるために室温で30分間インキュベートした。冷めた溶けたNB2寒天上部(10mM CaCl2を含む)9mlをチューブに加え、 混合物を乾燥していないNB2基礎寒天プレートに注いだ。プレートは37℃一晩インキュベートした。
翌朝、10mM CaCl2 と一緒にNB2 1mlを各プレートに加え、液体培地と一緒に上部寒天を小遠心分離管にこすりとった。その後集めた寒天を4℃で15分間、遠心分離機で15000 rpmで高速回転した。上清を集めていずれの細菌細胞も除去するために0.45μm(Nalgene)フィルターに通した。得られたファージ75の溶液は4℃で保存した。
【0048】
バクテリオファージ沈殿
増殖後NB2培地からファージ75を精製するためにファージの沈殿を行った。NB2中のファージ75の5mlに、5M NaCl (最終濃度1M)1.3 mlおよび1xリン酸緩衝食塩水(PBS) (8.0g/l NaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l Na2HPO4、0.2g/l KH2PO4)0.2mlを加え、そして20% PEG(polyethylene glycol 8000、Sigma)を溶液に加え、完全に溶解するまで一晩ゆっくりと撹拌した。その後溶液を氷中に一晩置き、翌朝溶液を4℃で20分間8000rpmで遠心分離した。上清を除去し、残ったペレットは1x PBS 2.5mlに再懸濁して、0.45μmフィルターに通してろ過した。
【0049】
光増感剤
使用した光増感剤は633 nmで光活性化可能なティン(IV)クロリンe6(SnCe6)(Frontier Scientific, Lancashire, UK)であった。
【0050】
複合体の調製
SnCe6 2mgを活性化バッファー(0.1M MES(2-(N-モルホリン(エタンスルホン酸)(Sigma))、0.5M NaCl、pH 5.5)800μl中に撹拌して溶解した。EDC (1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)(Sigma)溶液(活性化バッファー1ml中4mg)およびS-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)(Fluka)溶液(活性化バッファー250μl中2.7mg)を作製した。
【0051】
溶解したSnCe6に、溶解したEDCおよびS-NHS 200μlを加え、混合物を室温で1〜4時間撹拌しながら放置して安定したアミン-反応性中間体を得た。SnCe6が光に敏感な試薬なので、混合物はアルミニウムホイルで覆った。反応をβ‐メルカプトエタノール(Sigma)1.4μlを加えて止めた。
【0052】
実験は、SnCe6:EDC:S-NHSのモル比が1:1:2.5の試薬を使用して行った。
反応性SnCe6混合物のpHを、1M NaOH 0.7mlを加えて7.0に中和した。その後ファージ上のアミノ基がSnCe6のカルボキシル基と反応するように、ファージ75 1.5mlをアミン-反応性溶液に加え、その後4〜16時間混合した。反応をエタノールアミン(Sigma)2.5μlで止めた。
【0053】
バクテリオファージ沈殿において上記に記載したように、結合させた後、PS-ファージを2度沈殿させて、光増感剤-ファージ複合体(PS-ファージ)を、遊離PSから分離した。PS-ファージはそれからPBSで透析した。
【0054】
下記の例において、ファージ75の濃度は、7.3x106pfu/mlであり、SnCe6/バクテリオファージ-SnCe6の濃度は、1.5μg/mlである。
【0055】
レーザー
使用したレーザーは、35mWの出力を有するモデル 127 スタビライト(Stabilite)ヘリウム-ネオン(He/Ne)レーザー(Spectra Physics, USA)であった。レーザーは、633nmの波長を有する、直径1.25mmの平行ビームで照射線を発した。
【0056】
実施例1
対数増殖中期段階でのEMRSA-16の培養物は、1x1O7cfu/mlに希釈した。それから、希釈した細菌のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレート(Nunc)のウェルに入れた。
上記調製したファージ75-SnCe6複合体100μlと最終濃度が10mMになるように塩化カルシウム(CaCl2)を細菌に加えた。ウェルの内容物を撹拌しながら室温で5分間インキュベートした。コントロールは細菌に1xPBS 100μlを加えて行い、実験サンプルのための参考として使用した。実験は2回行った。
【0057】
インキュベーション後、ウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が21J/cm2に相当するレーザー光に、5分間直接露光した。
いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールはレーザー照射なしで行った。
【0058】
レーザーに露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中のTSY 1ml中に順次10-1〜10-4に希釈した。
次に、各希釈物の50μlの分取量をCBAプレートの半分に置いて広げた。プレートを37℃インキュベーターに一晩放置した。翌朝生存数を数え、4組の間の平均をとり、適切な希釈ファクターを乗じ、そしてグラフで分析した。
【0059】
7.3x106pfu/mlのファージ
1.5μg/mlのSnCe6/ファージ
99.9%をこえるEMRSA-16が死んだことが認められた。
【0060】
実施例2
EMRSA-16の代わりにEMRSA-1を用いて実施例1を繰り返した。99.98%の細菌が死んだことが認められた。
【0061】
実施例3
EMRSA-16の代わりにEMRSA-3を用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0062】
実施例4
EMRSA-16の代わりにEMRSA-15を用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0063】
実施例5
EMRSA-16の代わりにS. epidermidisを用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0064】
実施例1〜5の結果を図1に示す。
【0065】
実施例6
EMRSA-16の20μlサンプルの代わりに、EMRSA-16およびS. epidermidisを各10μlを用いて実施例1を繰り返した。サンプルは計数のためにMBAプレートにおいた。
【0066】
7.3xlO6pfu/mlのファージ
1.5μg/mlのSnCe6/ファージ
21J/cm2 レーザー光
混合培養において99.99%をこえる両方の細菌株が死んだことが認められた。
【0067】
比較例
最初は複合体なし、レーザー光の露光なしで、2番目にSnCe6光増感剤およびレーザー光の露光を伴って、3番目にファージ75を用いレーザー光への露光なしで、実施例6を繰り返した。
実施例6および比較例の結果は図2に示す。
【0068】
実施例は、複合体が試験されたEMRSA菌株のすべてを殺す際に極めて効果的であることを示す。ファージ75が唯一EMRSA-15およびEMRSA-16に感染できるので、このことは、該ファージが首尾よく菌株に結合でき、感染不能にし、このように効果的な標的化物質として働くことを示唆する。その後、ついている光増感剤がレーザー照射の際に死滅をもたらした。
【0069】
有意な死滅は、またS. epidermidis単独およびMRSAとの混合物中のどちらにおいても得られ、このファージがまた非関連ブドウ球菌株に結合することを示唆している。ファージ75-SnCe6複合体は、さまざまなブドウ球菌感染に有用である。
【0070】
実施例7
Staphvlococcus aureusに対してのφ11-SnCe6複合体およびレーザー光源を用いる標的化光線力学療法
バクテリオファージφ11を、S aureus菌株8325-4を増殖菌株として使用した以外は、ファージ75のために上記で記載されているように増殖および沈殿させた。ティンクロリンe6(SnCe6)を上記に記載した方法を用いてStaphylococcusファージφ11に結合させ、4.7 x107pfu.ml-1のファージφ11を伴って2.3および3.5μg ml-1SnCe6の結合濃度を達成した。これらのφ11-SnCe6 複合体はその後Staphylococcus aureusのさまざまな菌株と一緒にインキュベートして、35mW HeNeレーザー(21J/cm2)からの633nmのレーザー光に5分間露光した。結合されたSnCe6の最終濃度は1.15μg ml-1であった。
【0071】
5分の露光後にφ11-SnCe6 複合体は、S. aureus 8325-4の92.33%死(リン酸緩衝食塩水中のコントロールカウントに比べて)を達成し、一方対応する濃度(1.15μml-1)でのSnCe6はいずれの死も達成しなかったという結果を示す。結果は図3に示す。
【0072】
我々はまた、φ11がストリンジェントな最適条件下で微生物のメチシリン耐性菌株(EMRSA-16)に唯一感染するにしても、φ11-SnCe6複合体はこの菌株に対して有効で、88.11%死を達成することを示した。コントロール実験の範囲;光増感剤なしの光(L+S-)、光なしの光増感剤(L-S+)および1x107pfu ml-1での共役結合していないファージ(L-S-);などは有意な死をもたらさなかった。結果は図4に示す。
【0073】
カルシウム(10mM)の存在下で10分まで光線量を増加することにより、我々は、現在、φ11‐SnCe6 複合体(1.75μg ml-1)を用いてS. aureus 8325-4に対して 99.88%死を達成している。結果は図5に示す。
【0074】
図3〜5に関して、光増感剤(SnCe6またはφ11-SnCe6のいずれか)を最終濃度が1.15μg ml-1(SnCe6に対して)を与えるように加えた。光源は35mWヘリウム/ネオンレーザーであり、照射(使用時)は図3および4のケースでは5分、図5のケースでは10分であった。
【0075】
SnCe6-ファージφ11複合体で得られる致死数に対する光線量の変化の効果を検討した。実験は、細菌の懸濁液をヘリウム/ネオンレーザーからの光に、異なる期間−1、5、10、20および30分間露光する以外は上記に記載したように行った。各ケースにおいて、φ11-SnCe6複合体の濃度(SnCe6 3.5μg ml-1に相当する最終濃度)は、同じであった。
【0076】
φ11-SnCe6複合体と一緒に微生物を60分まで暗所でインキュベートすることは生菌数に有意な効果を有しなかった。しかしながら生菌数において有意な減少は、懸濁液をφ11-SnCe6複合体の存在下においてレーザー光に露光した場合に得られ、露光時間を長くすればするほどより大きな致死が得られた。30分の露光時間を用いると、約99.9999%の生菌数における減少を得た。
【0077】
φ11-SnCe6を最終濃度3.5μg ml-1 (SnCe6に対して)を与えるように使用した。光源は35mWヘリウム/ネオンレーザーであり照射(使用時)は、1、5、10、20または30分間であった。結果は図6に示す。
【0078】
図3〜6において
SnCe6=ティンクロリンe6
φ11-SnCe6=バクテリオファージφ11に共役したティンクロリンe6
PBS=リン酸緩衝食塩水
L+S+=複合体の存在下において照射された細菌
L+S-=複合体の不存在下において照射された細菌
L-S+=光の不存在下において複合体にさらされた細菌
L-S-=光にも複合体にもさらされていない細菌
【0079】
実施例8
ファージ75-ティン(IV)クロリンe6複合体および白色光源を使用するStaphylcoccus aureusの致死光増感
細菌菌株: S. aureus 8325-4
EMRSA-16
光源: KL200(Schott) これは20ワットハロゲン冷光源である。それに取り付けられている光ガイドは、5cmの距離で96穴プレートに方向づけられたフレキシブルな光ファイバーバンドルである。4ウェルの正方形は光源の中央に置かれる。
【0080】
おおよその光度=44,000luxまたは470μW/nm
ファージ75を、上記に述べたようにSnCe6に共役させた。ファージは、1x107pfu/mlの濃度で使用した。
【0081】
ニュートリエントブロス中で増殖したS. aureusの一晩の培養物を遠心分離し、PBSで再懸濁し、それからODを600nmで0.05に調整した(おおむね4x107cfu/ml)
細菌の培養物の50μlを96穴プレートに分取し、そしてそのウェルに、以下の溶液の1つの50μlを加えた:
1)PBS中3.5μg/ml SnCe6-ファージ75(最終濃度1.75μg/ml、1x106pfu/ウェル)
2)PBS中1.75μg/ml SnCe6-ファージ75(最終濃度0.875μg/ml、5x105pfu/ウェル)
3)PBS中3.5μg/ml SnCe6 (最終濃度1.75μg/ml)
4)PBS中1.75μg/ml SnCe6 (最終濃度0.875μg/ml)
5)PBS
6)PBS中5x105または1x106pfu/ウェルの濃度のファージ75
【0082】
ウェルを白色光 (一度に4ウェル)に露光するかティンホイルで覆い暗所で保存した。
さまざまの露光時間の後、各ウェルから少量をとり、段階的に希釈し、コロンビア血液寒天上に広げた。寒天プレートは、一晩37℃でインキュベートし翌日カウントした。
【0083】
結果
【0084】
【表2】
【0085】
%死−これはPBSでインキュベートし、暗所で保存した細菌と比較して計算した
すべての結果は反復実験の平均である。
【0086】
コントロールは白色光に露光しないでSnCe6、ファージ75-SnCe6およびファージ75とインキュベートした細菌を含んでいた。
すべてのコントロールは、光増感剤を加えないで照射しないコントロールの懸濁液に対して有意に異なっていない細菌カウントを有した。
【0087】
実施例9
さらなる試験は、S. aureus菌株Mu3、Mu50およびMW2において実施された。Staphylococcus aureusのバンコマイシン耐性菌株(Mu3およびMu50)またはMRSAの市井獲得菌株(MW2)の懸濁液に、生理食塩水、ファージ75、SnCe6またはファージ75-SnCe6を加え、そしてサンプルを35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に露光した。
使用したSnCe6の濃度は1.5μg/mlであり、ファージ濃度は5.1x107プラーク−形成ユニット(plaque-forming unit)/mlであり、光エネルギー量は21J/cm2であった。バーの上の数は生理食塩水のみ加えたサンプルに対する微生物の%死を示している。結果は図7に示す。
【0088】
実施例10
ティンクロリンe6(SnCe6)を使用するStreptococcus pyogenesの致死光増感
Streptococcus pyogenes ATCC 12202を、空気中5%CO2からなる雰囲気下で37℃でブレインハートインフュージョンブロス(Brain Heart Infusion broth)中で増殖させた。細胞は遠心分離により採り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、PBSで1x107cfu/mlまで希釈した。次に、希釈した細菌の懸濁液のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレートのウェルに入れた。PBS中の異なる濃度(1-50μg/ml)のSnCe6 100μlを細菌懸濁液に加えた。コントロールは 100μl PBSを細菌に加え、照射 (L+S-)または暗所で保存(L-S-)のいずれかで実施した。実験は2回行った。
【0089】
インキュベーション後、いくつかのウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が42J/cm2に相当する、633nmの波長を有する光を放つ35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に10分間露光した。いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールのウェルはレーザー光で照射しなかった。
レーザー光に露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中のTSY 1mlに順次10-1〜10-5に希釈した。
その後、各希釈物の2つの50μlの分取量をCBAプレート上の半分に広げた。プレートを37℃インキュベーターに48時間まで置き、得られたコロニーを生存している微生物の数を計算するためにカウントした。
【0090】
SnCe6の濃度の増加に伴って、暗所での微生物のインキュベーションは、生菌数に対する有意な効果を有しなかった。光増感剤の不存在下で、レーザー光で微生物の投射をしたものも同様であった。しかしながら、SnCe6の存在下の微生物の投射は、生菌数において濃度依存的に減少をもたらした。50μg/mlの濃度の光増感剤を使用して、微生物の99.9997%死を得た。結果は図8に示す。
図8において
L+(オープンバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下においてレーザー光で照射した培養物;
L- (影付きバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下暗所でインキュベートした培養物
【0091】
実施例11
ティンクロリンe6 (SnCe6)を使用するPropionibacterium acnesの致死光増感.
Propionibacterium acnes ATCC 29399を、37℃嫌気性雰囲気下で予め還元したブレインハートインフュージョンブロス(Brain Heart Infusion broth)中で増殖させた。細胞は遠心分離により採り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、PBSで1x108cfu/mlまで希釈した。その後、希釈した細菌の懸濁液のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレートのウェルに入れた。PBS中異なる濃度(1-50μg/ml)のSnCe6 100μlを細菌懸濁液に加えた。コントロールはPBS 100μlを細菌に加え、照射(L+S-)または暗所で保存(L-S-)のいずれかで実施した。実験は2回行った。
【0092】
インキュベーション後、いくつかのウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が42J/cm2に相当する、633nmの波長を有する光を放つ35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に10分間露光した。いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールのウェルはレーザー光で照射しなかった。
【0093】
レーザー光に露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中の予め還元したTSY 1mlに順次10-1〜10-5に希釈した。
その後各希釈物の2つの50μlの分取量をCBAプレート上の半分に広げた。プレートを37℃で嫌気的にインキュベートし、得られたコロニーを生存している微生物の数を計算するためにカウントした。
【0094】
SnCe6の濃度の増加に伴って、暗所での微生物のインキュベーションは、生菌数に対する有意な効果を有しなかった。光増感剤の不存在下で、レーザー光で微生物の投射をしたものも同様であった。しかしながら、SnCe6の存在下での微生物の投射は、生菌数において濃度依存的に減少をもたらした。50μg/mlの濃度の光増感剤を使用して、微生物の100%死を得た。結果は図9に示す。図9において
L+(オープンバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下においてレーザー光で投射した培養物;
L-(影付きバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下暗所でインキュベートした培養物
【0095】
実施例12
TBOおよびバクテリオファージの複合体の調製
トルイジンブルーO(toluidine blue O)(TBO)lmgをEDC 0.4mgおよびS-NHS 0.6mgおよびファージ(5x107pfu/ml)200μlと一緒に活性化バッファー(0.1M MES、0.5M NaCl pH5.5)800μlに溶解した。15〜30分間撹拌して反応を進行させ、その後2-メルカプトエタノール1.4μlを加えてEDCを中和した。さらに2〜4時間反応を進行させ、その後ヒドロキシルアミンを最終濃度10mMまで加え反応を止めた。
TBO-ファージ複合体は、2回のファージ沈殿に続くPBSに対する透析により遊離TBOから分離した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、異なるEMRSA菌株におけるファージ75-SnCe6複合体の効果を示す。
【図2】図2は複合体、複合体なし、光増感剤単独またはファージ単独ならびに投射の有無の、EMRSA-16およびS. epidermidisに対する効果を示す。
【図3】図3は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図4】図4は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図5】図5は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図6】図6はEMRSA-16に対する、φ11-SnCe6複合体の固定された濃度を用いた光線量の効果を示す。
【図7】図7はVRSA (Mu3)、hetero-VRSA(Mu50)およびCA-MRSA (MW2)の菌株に対する本発明の効果を示す。
【図8】図8はStreptococcus pyogenesに対する本発明の効果を示す。
【図9】図9はPropionibacterium acnesに対する本発明の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増感剤と、バクテリオファージ、特にスタフィロファージ(staphylophage)として知られているスタフィロコッカル バクテリオファージとの複合体を含む組成物に関する。本発明はまた感染症のための光線力学治療方法における該複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌感染に対抗するための抗菌剤の使用は、多くの種の病原菌の中での抗生物質に対する耐性の急速な出現により次第に効果がなくなっている。ひとつのそのような病原菌がStaphylococcus aureus(S. aureus)であり、感染性にきび、やけどおよび 創傷同様、おでき、吹き出ものおよび膿痂疹のような皮膚感染を特徴的に生じさせる。もし感染した微生物が有毒株であれば、そのような感染、または定着させたタンポンは、毒素性ショック症候群として知られている命を脅かす毒素血症(toxaemia)を引き起こし得る。該微生物はまた感染部からまたは静脈カテーテルのような異物から血流へ進入し、それから心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎および肺炎のようなほかの部位での感染を引き起こし得る。
【0003】
例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Staphylococcus aureus、連鎖球菌、Corynebacterium spp.、E. coli、Klebsiella aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Propionibacterium acnes、Bacteroides spp.、Pseudomonas aeruginosapおよびPeptostreptococcus spp.のような多くの細菌は、皮膚および創傷の感染の原因である。次第に、これらの細菌は抗生物質による治療に対して耐性を示している。
【0004】
特に、S. aureusの耐性菌が出現している。メチシリン耐性S. aureus(MRSA)は、1961年に初めて報告され(Jevons, M.(1961) British Medical Journal, 1,124-5)、そしてこれらの菌株は、多くの老人ホームやレジデンシャルホームにおいて流行っているのと同様、今や世界中の院内感染の最大の原因である。これは毎年イギリスで何百人もの患者の重大な感染および罹患率をもたらし、ヘルスケアーに対して警鐘を提起する難問である(Ayliffe et al, J Hosp Infect (1988), 39,253-90)。
【0005】
MRSAの最初の報告から、これらの微生物は、エリスロマイシン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、トリメトプリム、スルホンアミドおよびクロラムフェニコールが挙げられる抗生物質の広範囲に対して耐性を示している。MRSA菌株は臨床的に利用できる抗生物質のひとつのクラス:バンコマイシンおよびテイコプラニンのようなグリコペプチドに対して唯一感受性であることが明らかになっている。しかしながら、バンコマイシンに対して耐性をもつ菌が現在報告されているので (Hiramatsu, K. (1998) American Journal of Medicine, 104,7S-10S)、耐性はこれらに至るまで広がっている。
【0006】
これらの菌は、VRSA(バンコマイシン耐性Staphylococcus aureus)およびhetero-VRSA (ハイレベルのバンコマイシンにさらされることから生じる耐性菌)としてさまざまに知られている。現在MRSAに感染している患者の管理は、たいていは抗菌剤の投与を伴い、それで再び、使用された多くの薬剤に対する耐性菌が発生するという証拠がある。
実際上すべての現在利用できる抗菌剤に対して耐性を示す菌株の出現により、MRSAは今や健康に対する重大な脅威である。用語MRSA自体が、今や、メチシリンおよび多くの抗菌剤に耐性を示すS. aureusに対してより正確にあてはまる。
【0007】
MRSAのある菌株は病院内だけではなく病院間で急速に広がることが発見されている。これらの菌株は流行性MRSA(EMRSA)と称されている。初めのEMRSA菌株(EMRSA-1)が1981年に報告されてから、17の異なるEMRSA菌が同定された。それらのすべては多くの抗菌剤に耐性を示す。最近では、二つの最も流行している菌株はEMRSA-15および-16であり、報告されている30000のMRSAの臨床分離株の60-70%の割合を占める(Livermore, D (2000) Int. J. Antimicrobial Agents, 16, S3-S10)。重大なことには、MRSAの菌株(市井獲得MRSA(CA-MRSA)として知られている)は、市井においてもまた、すなわち入院していない個人の間で広がり始めている。
細菌感染、特にMRSAの感染に対抗する代わりの方法が緊急に求められていることは上記から明らかである。
【0008】
ひとつのアプローチが微生物の致死の光増感を達成するための光活性化剤の採用である。これは適した波長の光での照射の際に、細胞毒性種を産生させ、溶菌を生じる光活性化可能な化合物(光増感剤)で微生物を処理することを包含する。この技術は、in vitroで光増感剤としてトルイジンブルーO(toluidine blue O)(TBO)およびアルミニウム2スルホン化フタロシアニン(aluminium disulphonated phthalocyanin)(AlPcS2)を使用して、S. aureusおよびMRSA菌株を含む広範囲の細菌を殺すことを達成するために使用されている。光増感剤もレーザー光も単独では殺菌効果を発揮しなかった(Wilson et al, (1994) J Antimicrob Chemother 33,619-24)。その後の研究において、16のEMRSAの菌株は、AlPcS2の存在下で赤色光(674 nm)の低用量による殺傷に感受性であることが発見された(Griffiths et al, (1997) J Antimicrob Chemother, 40,873-6)。より高い光線量では、100%の死が達成された。
【0009】
光線力学療法(PDT)は、病気の治療へのそのようなアプローチの応用である。それは、癌の治療においては確立された方法であり、血液製剤の殺菌の手段の基礎を形成する。感染症の治療に対してPDTの適用が評価されてきたのはごく最近である。例えば、アルゴンレーザーと組み合わせたヘマトポルフィリン(haematoporphyrin)は、神経手術後の感染および脳膿瘍の治療のために使用されている (Lombard et al, (1985),Photodynamic Therapy of Tumours and other Diseases, Ed. Jori & Perria)。
【0010】
感染症のPDTに関連したひとつの潜在的な問題は、その特異性の欠如である。従って、光増感剤がターゲットの微生物同様、宿主細胞に結合または宿主細胞により取り込まれたなら、その後の照射は、宿主細胞の死をももたらすかもしれない。これを克服する方法は、標的化化合物の使用によるもの、すなわち病原菌の表面に特異的に結合できるいずれかの化合物の使用によるものである。
【0011】
数個の標的化化合物は、それらが光増感剤に結合している場合に、特定の細菌の菌株を排除することに成功していることがすでに示されている。例えば、イムノグロブリン(IgG)は、S. aureusプロテインA(Gross et al (1997), Photochemistry and Photobiology, 66,872-8)を標的にするために、Porphyromonas gingivalis リポ多糖類に対してモノクローナル抗体(Bhatti et al (2000), Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 44,2615-8)ならびにP. gingivalisおよびActinomyces viscosus に対してポリ−L−リジンペプチド(Soukos et al (1998), Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 42,2595-2601)が使用されている。光増感剤であるティン(IV)クロリンe6(SnCe6)にデキストラン鎖を介して結合しているモノクローナル抗体は、630nmの光にさらした場合に、S. aureus に影響を与えないで、選択的にP. aeruginosa を殺した(Friedberg et al (1991), Ann N Y Acad Sci, 618,383-393)。
【0012】
本願の発明者は、EMRSA菌株1、3、15および16を標的にするために、SnCe6に結合したIgGを使用し(Embleton et al (2002), J Antimicrob Chemother, 50,857- 864)、光増感剤単独よりもより高い殺菌レベルを達成し、Streptococcus sanguisとの混合物中のEMRSA菌株を選択的に殺した。しかしながら、IgGの限界はプロテインAを発現するS. aureusの菌株のみを標的にし得ることである。従って、いずれのS. aureus菌株をも標的にし得る代わりの標的化物質が望まれる。
【0013】
バクテリオファージは、ある種の細菌に感染するウイルスであり、しばしば細菌を溶解し、その結果細胞死をもたらしている。バクテリオファージは、それ自身の本来の状態において抗菌剤として提案されている。しかしながら、 S. aureus疾患の治療において、スタフィロコッカル バクテリオファージ (スタフィロファージと称する)の使用に伴う問題の1つは、それらの制限された宿主範囲である。多くのS. aureus菌株を溶解し得る多価のスタフィロファージがあるとしても、他の菌株は耐性を示し、そのためバクテリオファージ単独はS. aureusのすべての菌株を殺す有効な方法を提供できなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかのバクテリオファージは、単に限られた範囲の細菌を殺すとはいえ、より広い範囲の細菌に結合するであろうことは公知である。本願の発明者は、いくつかのバクテリオファージが、光増感剤のための有効な標的化デリバリーシステムとして作用し得ることを現在見出した。
【0015】
本願の発明者は、バクテリオファージが光増感剤に結合した場合に、形成された光増感剤-バクテリオファージ複合体が、適切な波長の光で照射した場合に細菌を殺す際に高度に有効であることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
バクテリオファージ-光増感剤複合体は、広範囲の細菌性皮膚および創傷感染症の治療または予防に使用し得る。皮膚および創傷感染症から最もしばしば単離される微生物は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、S. aureus、連鎖球菌(streptococci)、例えばStreptoccocus pyogenes、Corynebacterium spp.、E coli、Klebsiella aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Enterobacter aerogenes、Propionibacterium acnes、Bacteroides spp.、Pseudomonas aeruginosaおよびPeptostreptococcus spp.である。
【0017】
特に、光増感剤およびスタフィロファージ(staphylophage)の複合体は、Staphylococci spp.菌株に対して、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAおよびCA-MRSAに対する光線力学療法において使用され得る。
【0018】
本発明は、光増感剤-バクテリオファージ複合体を形成するためにバクテリオファージに結合した光増感用化合物(光増感剤)を含む組成物を提供する。バクテリオファージは、スタフィロコッカルファージであり得、好ましくはStaphylococcus aureus、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAに結合しうるスタフィロファージである。この組成物は光線力学治療方法において使用し得る。
【0019】
バクテリオファージは、好ましくは共有結合を用いて光増感剤に結合される。光増感剤および/またはバクテリオファージは、例えばチオール-チオール架橋結合、アミン-アミン架橋結合、アミン-チオール架橋結合、アミン-カルボン酸架橋結合、チオール-カルボン酸架橋結合、ヒドロキシル-カルボン酸架橋結合、ヒドロキシル-チオール架橋結合およびそれらの組合せなどの架橋された結合を作るために、化学または光反応性の試薬を使用して共有結合的に架橋され得る基を含み、または含むように修飾され得る。
【0020】
光増感剤は、ポルフィリン(例えばヘマトポルフィリン誘導体、ジュウテロポルフィリン)、フタロシアニン(例えば亜鉛、シリコンおよびアルミニウムフタロシアニン)、クロリン(例えばティンクロリンe6、ティンクロリンe6のポリ−リジン誘導体、m-テトラヒドロキシフェニルクロリン、ベンゾポルフィリン誘導体、ティンエチオプルプリン(tin etiopurpurin))、バクテリオクロリン、フェノチアジニウム(例えば、トルイジンブルー(toluidine blue)、メチレンブルー、ジメチルメチレンブルー)、フェナジン(例えばニュートラルレッド)、アクリジン(例えばアクリフラビン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アミナクリン)、テキサフィリン、シアニン(例えばメロシアニン540)、アントラサイクリン(例えばアドリアマイシンおよびエピルビシン)、フェオホルバイド、サフィリン、フラーレン、ハロゲン化キサンテン(例えばローズベンガル)、ペリレンキノノイド顔料(例えばヒペリシン、ハイポクレリン(hypocrellin))、ギルボカルシン、ターチオフェン、ベンゾフェナントリジン、ソラレンおよびリボフラビンから適宜選ばれる。
【0021】
本発明は上記に述べた複合体を使用して細菌を殺すことに関する。複合体中で用いられるバクテリオファージは、特定の感染した細菌に対して最も効く複合体に到達するために、殺すべき特定の微生物に従って選択し得る。ひとつの好ましい態様において、感染した細菌はMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAであり、複合体はスタフィロコッカルファージ75またはファージφ11を含む。
【0022】
さらに多くの例が存在するが、下表1は、細菌−バクテリオファージペアーのいくつかの例を示す。さらなる新規なバクテリオファージは、単離および/または標的細菌へ適合し得る。治療の特異性は、1価のバクテリオファージ、多価のバクテリオファージ、あるいは1価のバクテリオファージの組合せまたは1価と多価のバクテリオファージの組合せの使用によって、必要とされるように修飾し得る。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明の組成物は、少なくとも0.01μg/ml、好ましくは少なくとも0.02μg/ml、より好ましくは少なくとも 0.05μg/mlから200μg/mlまで、好ましくは100μg/mlまで、より好ましくは50μg/mlまでの光増感剤を適当に含む。組成物中のバクテリオファージの量は、適切には1x105〜1xl010pfu、好ましくは1x106〜1x109pfu、さらに好ましくは1x106〜1x108pfuである。
【0025】
本発明の組成物はさらに2価のイオン源、例えばCa2+またはMg2+、好ましくはCa2+をさらに含んでもよい。例として塩化カルシウム、炭酸カルシウムおよび塩化マグネシウムが挙げられる。イオンは、5〜200mM、好ましくは5〜15mM、さらに好ましくは約10mMの量で適当に存在する。
【0026】
組成物は、さらにバッファー、張度を調製するための塩、酸化防止剤、保存料、ゲル化剤およびミネラル質再付加剤(remineralisation agents)から選択される1以上の成分を含んでもよい。
【0027】
本発明は、さらに(a)エリア中のいずれの細菌も光増感剤-バクテリオファージ複合体に結合するように、本発明の組成物と処理されるエリアとを接触させ、そして
(b)光増感剤により吸収される波長での光を該エリアに照射することを含む
細菌を殺す方法を提供する。
【0028】
細菌は適宜上記表1に示される通りであり、好ましくはStaphylococcus aureus、さらに好ましくはMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAである。
【0029】
本発明の方法において、適切な波長の光を放つどんな光源も使用し得る。光の波長は、光増感剤の最大吸収に相当し、光増感剤を活性化するために十分なエネルギーを有するように選択される。光源は、単色または多色の光を生み出すことができるいずれの装置または生物学的システムであり得る。例として、レーザー、発光ダイオード、アークランプ、ハロゲンランプ、白熱ランプあるいは生物発光または化学発光のエミッターが挙げられる。ある種の環境においては、太陽光が適切であり得る。好ましくは、光源から放たれる光の波長は200〜1060nmであり、好ましくは400〜750nmであり得る。適切なレーザーは、1〜100mWの出力および1〜10mmのビーム直径を有し得る。レーザー照射のための光線量は、レーザー光のために適切には5〜333Jcm-2、好ましくは5〜30Jcm-2である。白色光照射のためには、適切な量は0.01〜100kJ/cm2、好ましくは0.1〜20kJc/m2、より好ましくは3〜10kJ/cm2である。
【0030】
照射時間は、適切には1秒〜15分、好ましくは1〜5分である。
【0031】
次の光源は本発明において使用に適し得る:
ヘリウムネオン(HeNe)ガスレーザー(633nm)
アルゴン励起色素レーザー(500-700nm、5W出力)
銅蒸気励起色素レーザー(600-800nm)
エキシマー励起色素レーザー(400-700nm)
金蒸気レーザー(628nm、10W出力)
可変固体レーザー(532-1060nm)、Sd:YAGを含む
発光ダイオード(LED)(400-800nm)
ダイオードレーザー(630-850nm、25W出力)、例えば、ガリウム セレニウム ヒ化物
タングステンフィラメントランプ
ハロゲン冷光源
蛍光灯。
【0032】
本発明の方法において、組成物は、適切には薬学的に許容可能な水性担体中の溶液または懸濁物の形態であるが、粉またはゲル、軟膏またはクリームのような固体の形態であってもよい。組成物はペインティング、スプレッディング、スプレーイングまたはほかのいずれの従来技術によって感染のエリアに適用し得る。
【0033】
本発明はさらにヒトまたは動物の生体の治療のための組成物の使用を提供する。適切には、組成物は、特にブドウ球菌、とりわけMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAによる細菌感染から生じる状態の治療においての使用のために提供される。
【0034】
本発明は、特にブドウ球菌、とりわけMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAによる細菌感染を治療するためにおでき、吹き出もの、乳腺炎および膿痂疹のような皮膚感染を治療または予防するために、にきび、やけどまたは創傷の感染を治療または予防するために、あるいは細菌感染の結果として生じる心内膜炎、骨髄炎、髄膜炎および肺炎を治療または予防するために、カテーテル、インプラントまたは他の医療装置の使用から生じる感染を治療または予防するために、あるいは帝王切開のような手術後の感染を予防するために使用し得る。
【0035】
本発明は、もしあったとしてもわずかの徴候を彼ら自身が示すキャリアーによる細菌の運搬の予防にもまた使用し得る。
【実施例】
【0036】
材料および方法
以下の培地を調製した。
【0037】
ニュートリエントブロス2(NB2)培地
ニュートリエントブロス2(Oxoid)(10.0g/l Lab-Lemco パウダー、10.0g/lペプトン、5.0g/l NaCl)25gを1リットルの脱イオン化した蒸留水に加えて1リットルの培地を作製した。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0038】
トリプトンソーヤイーストブロス(Tryptone Soya Yeast Broth)(TSY)
トリプトンソーヤブロス(Oxoid)(17.0g/lカゼインの膵液消化物(pancreatic digest of casein)、3.0g/l大豆ミールのパパイン消化物(papaic digest)、2.5g/lグルコース、2.5g/lリン酸水素二カリウム、5.0g/l NaCl)39gおよび酵母抽出液(9.8g/l全窒素、5.1g/lアミノ窒素、0.3g/l NaCl)0.5%を脱イオン化した蒸留水1リットルに加えて1リットルの培地を作製した。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0039】
ニュートリエントブロス2上部寒天
0.35 % (w/v)培地用寒天(Agar Bacteriological)(Agar No. 1、Oxoid)をNB2培地に加えた。混合後、培地を121℃で15分間オートクレーブした。
【0040】
ニュートリエントブロス2底部寒天
0.7% (w/v) 培地用寒天(Agar Bacteriological)をNB2培地に加えた。オートクレーブ後、10mM CaCl2を加えた(NB2 1リットル中に10ml 1M CaCl2)。
【0041】
コロンビア血液寒天(CBA)
コロンビア寒天基礎(Oxoid)(23.0g/lスペシャルペプトン、1.0g/lスターチ、5.0g/l NaCl、10.0g/l寒天)37.1gを脱イオン化した蒸留水1リットルに加えた。オートクレーブ後、液体寒天は、取り扱うために十分冷めるまで室温で冷却するため放置した。その後5%(v/v)脱繊維素ウマ血液(E&O Laboratories、スコットランド)を加えた。
【0042】
マンニトール塩寒天(Mannitol Salt Agar)(MSA)
マンニトール塩寒天(Oxoid)(75.0g/l NaCl,10.0g/lマンニトール、1.0g/l Lab-lemcoパウダー、10.0 g/lペプトン、0.025 g/lフェノールレッド、15.0g/l寒天)111gを脱イオン化した蒸留水1リットルに加えた。
すべての混合物は121℃で15分間オートクレーブした。その後液体寒天をプレートに注ぎカバーをして一晩冷却するため放置した。
【0043】
標的微生物
実施例で使用された微生物は次のように、名前およびNCTC(National Collection of Type Cultures, UK)またはATCC (American Type Culture Collection, USA)番号として与えた:
流行性メチシリン耐性S. aureus (EMRSA)-1 (NCTC 11939)
EMRSA-3 (NCTC 13130)
EMRSA-15 (NCTC 13142)
EMRSA-16 (NCTC 13143)
Mu3(ATCC 700698)は、異種的にバンコマイシン耐性Staphylococcus aureus(hetero-VRSA)(Hanaki et al (1998). J. Antimicrob. Chemother. 42: 199-209)と規定されたバンコマイシンに対する異種耐性を伴うメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)菌株である。
Mu50は、原型的なVRSA菌株(Hiramatsu et al (1997). J. Antimicrob. Chemother. 40: 135-136)である。
MW2は市井獲得MRSA菌株である。市井獲得MRSA菌株(CA-MRSA)は、ゲノム上のブドウ球菌カセット染色体mec(SCCmec)タイプIVの存在を共有し、しばしば伝染力が強く、主に皮膚および軟組織の感染を生じさせる。典型的なCA-MRSA菌株であるMW2のゲノム配列は、他のS. aureus菌株においては普通存在しない、さらなる病原性ファクターの存在を明らかにした(Baba et al (2002), Lancet. 25; 359 (9320):1819-27)。
【0044】
Staphylococcus epidermidis (NCTC 11047)
Streptococcus pyogenes (ATCC 12202)
Propionibacterium acnes (ATCC 29399)
Staphyloccus aureus 8324-5 (Novick (1967) Virology 33; 156-166)
すべてはCBA上で毎週継代培養により維持した。
【0045】
バクテリオファージ
ファージ75 (Public Health Laboratory Service, UK)は、 EMRSA-16、EMRSA-3に感染でき、また弱くEMRSA-15に感染できる血清型Fスタフィロコッカルファージである。
【0046】
バクテリオファージφ11(Iandolo et al, (2002), Gene 289 (1-2); 109-118)は、血清学的グループBのテンペレートバクテリオファージである。φ11は低溶原化頻度(low lysogenisation frequency)を伴う、形質導入ファージである。それは、多くのヒトおよび動物の病原菌を含むS. aureus 溶菌グループIII菌株に感染する。
【0047】
バクテリオファージ増殖
対数増殖中期(Mid-exponential)EMRSA-16(300μl)を15ml Falconチューブに加えた。ファージ75の約105pfuをチューブに加え、ファージを細菌に感染させるために室温で30分間インキュベートした。冷めた溶けたNB2寒天上部(10mM CaCl2を含む)9mlをチューブに加え、 混合物を乾燥していないNB2基礎寒天プレートに注いだ。プレートは37℃一晩インキュベートした。
翌朝、10mM CaCl2 と一緒にNB2 1mlを各プレートに加え、液体培地と一緒に上部寒天を小遠心分離管にこすりとった。その後集めた寒天を4℃で15分間、遠心分離機で15000 rpmで高速回転した。上清を集めていずれの細菌細胞も除去するために0.45μm(Nalgene)フィルターに通した。得られたファージ75の溶液は4℃で保存した。
【0048】
バクテリオファージ沈殿
増殖後NB2培地からファージ75を精製するためにファージの沈殿を行った。NB2中のファージ75の5mlに、5M NaCl (最終濃度1M)1.3 mlおよび1xリン酸緩衝食塩水(PBS) (8.0g/l NaCl、0.2g/l KCl、1.15g/l Na2HPO4、0.2g/l KH2PO4)0.2mlを加え、そして20% PEG(polyethylene glycol 8000、Sigma)を溶液に加え、完全に溶解するまで一晩ゆっくりと撹拌した。その後溶液を氷中に一晩置き、翌朝溶液を4℃で20分間8000rpmで遠心分離した。上清を除去し、残ったペレットは1x PBS 2.5mlに再懸濁して、0.45μmフィルターに通してろ過した。
【0049】
光増感剤
使用した光増感剤は633 nmで光活性化可能なティン(IV)クロリンe6(SnCe6)(Frontier Scientific, Lancashire, UK)であった。
【0050】
複合体の調製
SnCe6 2mgを活性化バッファー(0.1M MES(2-(N-モルホリン(エタンスルホン酸)(Sigma))、0.5M NaCl、pH 5.5)800μl中に撹拌して溶解した。EDC (1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)(Sigma)溶液(活性化バッファー1ml中4mg)およびS-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)(Fluka)溶液(活性化バッファー250μl中2.7mg)を作製した。
【0051】
溶解したSnCe6に、溶解したEDCおよびS-NHS 200μlを加え、混合物を室温で1〜4時間撹拌しながら放置して安定したアミン-反応性中間体を得た。SnCe6が光に敏感な試薬なので、混合物はアルミニウムホイルで覆った。反応をβ‐メルカプトエタノール(Sigma)1.4μlを加えて止めた。
【0052】
実験は、SnCe6:EDC:S-NHSのモル比が1:1:2.5の試薬を使用して行った。
反応性SnCe6混合物のpHを、1M NaOH 0.7mlを加えて7.0に中和した。その後ファージ上のアミノ基がSnCe6のカルボキシル基と反応するように、ファージ75 1.5mlをアミン-反応性溶液に加え、その後4〜16時間混合した。反応をエタノールアミン(Sigma)2.5μlで止めた。
【0053】
バクテリオファージ沈殿において上記に記載したように、結合させた後、PS-ファージを2度沈殿させて、光増感剤-ファージ複合体(PS-ファージ)を、遊離PSから分離した。PS-ファージはそれからPBSで透析した。
【0054】
下記の例において、ファージ75の濃度は、7.3x106pfu/mlであり、SnCe6/バクテリオファージ-SnCe6の濃度は、1.5μg/mlである。
【0055】
レーザー
使用したレーザーは、35mWの出力を有するモデル 127 スタビライト(Stabilite)ヘリウム-ネオン(He/Ne)レーザー(Spectra Physics, USA)であった。レーザーは、633nmの波長を有する、直径1.25mmの平行ビームで照射線を発した。
【0056】
実施例1
対数増殖中期段階でのEMRSA-16の培養物は、1x1O7cfu/mlに希釈した。それから、希釈した細菌のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレート(Nunc)のウェルに入れた。
上記調製したファージ75-SnCe6複合体100μlと最終濃度が10mMになるように塩化カルシウム(CaCl2)を細菌に加えた。ウェルの内容物を撹拌しながら室温で5分間インキュベートした。コントロールは細菌に1xPBS 100μlを加えて行い、実験サンプルのための参考として使用した。実験は2回行った。
【0057】
インキュベーション後、ウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が21J/cm2に相当するレーザー光に、5分間直接露光した。
いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールはレーザー照射なしで行った。
【0058】
レーザーに露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中のTSY 1ml中に順次10-1〜10-4に希釈した。
次に、各希釈物の50μlの分取量をCBAプレートの半分に置いて広げた。プレートを37℃インキュベーターに一晩放置した。翌朝生存数を数え、4組の間の平均をとり、適切な希釈ファクターを乗じ、そしてグラフで分析した。
【0059】
7.3x106pfu/mlのファージ
1.5μg/mlのSnCe6/ファージ
99.9%をこえるEMRSA-16が死んだことが認められた。
【0060】
実施例2
EMRSA-16の代わりにEMRSA-1を用いて実施例1を繰り返した。99.98%の細菌が死んだことが認められた。
【0061】
実施例3
EMRSA-16の代わりにEMRSA-3を用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0062】
実施例4
EMRSA-16の代わりにEMRSA-15を用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0063】
実施例5
EMRSA-16の代わりにS. epidermidisを用いて実施例1を繰り返した。99.99%をこえる細菌が死んだことが認められた。
【0064】
実施例1〜5の結果を図1に示す。
【0065】
実施例6
EMRSA-16の20μlサンプルの代わりに、EMRSA-16およびS. epidermidisを各10μlを用いて実施例1を繰り返した。サンプルは計数のためにMBAプレートにおいた。
【0066】
7.3xlO6pfu/mlのファージ
1.5μg/mlのSnCe6/ファージ
21J/cm2 レーザー光
混合培養において99.99%をこえる両方の細菌株が死んだことが認められた。
【0067】
比較例
最初は複合体なし、レーザー光の露光なしで、2番目にSnCe6光増感剤およびレーザー光の露光を伴って、3番目にファージ75を用いレーザー光への露光なしで、実施例6を繰り返した。
実施例6および比較例の結果は図2に示す。
【0068】
実施例は、複合体が試験されたEMRSA菌株のすべてを殺す際に極めて効果的であることを示す。ファージ75が唯一EMRSA-15およびEMRSA-16に感染できるので、このことは、該ファージが首尾よく菌株に結合でき、感染不能にし、このように効果的な標的化物質として働くことを示唆する。その後、ついている光増感剤がレーザー照射の際に死滅をもたらした。
【0069】
有意な死滅は、またS. epidermidis単独およびMRSAとの混合物中のどちらにおいても得られ、このファージがまた非関連ブドウ球菌株に結合することを示唆している。ファージ75-SnCe6複合体は、さまざまなブドウ球菌感染に有用である。
【0070】
実施例7
Staphvlococcus aureusに対してのφ11-SnCe6複合体およびレーザー光源を用いる標的化光線力学療法
バクテリオファージφ11を、S aureus菌株8325-4を増殖菌株として使用した以外は、ファージ75のために上記で記載されているように増殖および沈殿させた。ティンクロリンe6(SnCe6)を上記に記載した方法を用いてStaphylococcusファージφ11に結合させ、4.7 x107pfu.ml-1のファージφ11を伴って2.3および3.5μg ml-1SnCe6の結合濃度を達成した。これらのφ11-SnCe6 複合体はその後Staphylococcus aureusのさまざまな菌株と一緒にインキュベートして、35mW HeNeレーザー(21J/cm2)からの633nmのレーザー光に5分間露光した。結合されたSnCe6の最終濃度は1.15μg ml-1であった。
【0071】
5分の露光後にφ11-SnCe6 複合体は、S. aureus 8325-4の92.33%死(リン酸緩衝食塩水中のコントロールカウントに比べて)を達成し、一方対応する濃度(1.15μml-1)でのSnCe6はいずれの死も達成しなかったという結果を示す。結果は図3に示す。
【0072】
我々はまた、φ11がストリンジェントな最適条件下で微生物のメチシリン耐性菌株(EMRSA-16)に唯一感染するにしても、φ11-SnCe6複合体はこの菌株に対して有効で、88.11%死を達成することを示した。コントロール実験の範囲;光増感剤なしの光(L+S-)、光なしの光増感剤(L-S+)および1x107pfu ml-1での共役結合していないファージ(L-S-);などは有意な死をもたらさなかった。結果は図4に示す。
【0073】
カルシウム(10mM)の存在下で10分まで光線量を増加することにより、我々は、現在、φ11‐SnCe6 複合体(1.75μg ml-1)を用いてS. aureus 8325-4に対して 99.88%死を達成している。結果は図5に示す。
【0074】
図3〜5に関して、光増感剤(SnCe6またはφ11-SnCe6のいずれか)を最終濃度が1.15μg ml-1(SnCe6に対して)を与えるように加えた。光源は35mWヘリウム/ネオンレーザーであり、照射(使用時)は図3および4のケースでは5分、図5のケースでは10分であった。
【0075】
SnCe6-ファージφ11複合体で得られる致死数に対する光線量の変化の効果を検討した。実験は、細菌の懸濁液をヘリウム/ネオンレーザーからの光に、異なる期間−1、5、10、20および30分間露光する以外は上記に記載したように行った。各ケースにおいて、φ11-SnCe6複合体の濃度(SnCe6 3.5μg ml-1に相当する最終濃度)は、同じであった。
【0076】
φ11-SnCe6複合体と一緒に微生物を60分まで暗所でインキュベートすることは生菌数に有意な効果を有しなかった。しかしながら生菌数において有意な減少は、懸濁液をφ11-SnCe6複合体の存在下においてレーザー光に露光した場合に得られ、露光時間を長くすればするほどより大きな致死が得られた。30分の露光時間を用いると、約99.9999%の生菌数における減少を得た。
【0077】
φ11-SnCe6を最終濃度3.5μg ml-1 (SnCe6に対して)を与えるように使用した。光源は35mWヘリウム/ネオンレーザーであり照射(使用時)は、1、5、10、20または30分間であった。結果は図6に示す。
【0078】
図3〜6において
SnCe6=ティンクロリンe6
φ11-SnCe6=バクテリオファージφ11に共役したティンクロリンe6
PBS=リン酸緩衝食塩水
L+S+=複合体の存在下において照射された細菌
L+S-=複合体の不存在下において照射された細菌
L-S+=光の不存在下において複合体にさらされた細菌
L-S-=光にも複合体にもさらされていない細菌
【0079】
実施例8
ファージ75-ティン(IV)クロリンe6複合体および白色光源を使用するStaphylcoccus aureusの致死光増感
細菌菌株: S. aureus 8325-4
EMRSA-16
光源: KL200(Schott) これは20ワットハロゲン冷光源である。それに取り付けられている光ガイドは、5cmの距離で96穴プレートに方向づけられたフレキシブルな光ファイバーバンドルである。4ウェルの正方形は光源の中央に置かれる。
【0080】
おおよその光度=44,000luxまたは470μW/nm
ファージ75を、上記に述べたようにSnCe6に共役させた。ファージは、1x107pfu/mlの濃度で使用した。
【0081】
ニュートリエントブロス中で増殖したS. aureusの一晩の培養物を遠心分離し、PBSで再懸濁し、それからODを600nmで0.05に調整した(おおむね4x107cfu/ml)
細菌の培養物の50μlを96穴プレートに分取し、そしてそのウェルに、以下の溶液の1つの50μlを加えた:
1)PBS中3.5μg/ml SnCe6-ファージ75(最終濃度1.75μg/ml、1x106pfu/ウェル)
2)PBS中1.75μg/ml SnCe6-ファージ75(最終濃度0.875μg/ml、5x105pfu/ウェル)
3)PBS中3.5μg/ml SnCe6 (最終濃度1.75μg/ml)
4)PBS中1.75μg/ml SnCe6 (最終濃度0.875μg/ml)
5)PBS
6)PBS中5x105または1x106pfu/ウェルの濃度のファージ75
【0082】
ウェルを白色光 (一度に4ウェル)に露光するかティンホイルで覆い暗所で保存した。
さまざまの露光時間の後、各ウェルから少量をとり、段階的に希釈し、コロンビア血液寒天上に広げた。寒天プレートは、一晩37℃でインキュベートし翌日カウントした。
【0083】
結果
【0084】
【表2】
【0085】
%死−これはPBSでインキュベートし、暗所で保存した細菌と比較して計算した
すべての結果は反復実験の平均である。
【0086】
コントロールは白色光に露光しないでSnCe6、ファージ75-SnCe6およびファージ75とインキュベートした細菌を含んでいた。
すべてのコントロールは、光増感剤を加えないで照射しないコントロールの懸濁液に対して有意に異なっていない細菌カウントを有した。
【0087】
実施例9
さらなる試験は、S. aureus菌株Mu3、Mu50およびMW2において実施された。Staphylococcus aureusのバンコマイシン耐性菌株(Mu3およびMu50)またはMRSAの市井獲得菌株(MW2)の懸濁液に、生理食塩水、ファージ75、SnCe6またはファージ75-SnCe6を加え、そしてサンプルを35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に露光した。
使用したSnCe6の濃度は1.5μg/mlであり、ファージ濃度は5.1x107プラーク−形成ユニット(plaque-forming unit)/mlであり、光エネルギー量は21J/cm2であった。バーの上の数は生理食塩水のみ加えたサンプルに対する微生物の%死を示している。結果は図7に示す。
【0088】
実施例10
ティンクロリンe6(SnCe6)を使用するStreptococcus pyogenesの致死光増感
Streptococcus pyogenes ATCC 12202を、空気中5%CO2からなる雰囲気下で37℃でブレインハートインフュージョンブロス(Brain Heart Infusion broth)中で増殖させた。細胞は遠心分離により採り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、PBSで1x107cfu/mlまで希釈した。次に、希釈した細菌の懸濁液のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレートのウェルに入れた。PBS中の異なる濃度(1-50μg/ml)のSnCe6 100μlを細菌懸濁液に加えた。コントロールは 100μl PBSを細菌に加え、照射 (L+S-)または暗所で保存(L-S-)のいずれかで実施した。実験は2回行った。
【0089】
インキュベーション後、いくつかのウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が42J/cm2に相当する、633nmの波長を有する光を放つ35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に10分間露光した。いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールのウェルはレーザー光で照射しなかった。
レーザー光に露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中のTSY 1mlに順次10-1〜10-5に希釈した。
その後、各希釈物の2つの50μlの分取量をCBAプレート上の半分に広げた。プレートを37℃インキュベーターに48時間まで置き、得られたコロニーを生存している微生物の数を計算するためにカウントした。
【0090】
SnCe6の濃度の増加に伴って、暗所での微生物のインキュベーションは、生菌数に対する有意な効果を有しなかった。光増感剤の不存在下で、レーザー光で微生物の投射をしたものも同様であった。しかしながら、SnCe6の存在下の微生物の投射は、生菌数において濃度依存的に減少をもたらした。50μg/mlの濃度の光増感剤を使用して、微生物の99.9997%死を得た。結果は図8に示す。
図8において
L+(オープンバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下においてレーザー光で照射した培養物;
L- (影付きバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下暗所でインキュベートした培養物
【0091】
実施例11
ティンクロリンe6 (SnCe6)を使用するPropionibacterium acnesの致死光増感.
Propionibacterium acnes ATCC 29399を、37℃嫌気性雰囲気下で予め還元したブレインハートインフュージョンブロス(Brain Heart Infusion broth)中で増殖させた。細胞は遠心分離により採り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で再懸濁し、PBSで1x108cfu/mlまで希釈した。その後、希釈した細菌の懸濁液のサンプル20μlをマグネットスターラーバーと一緒に96穴プレートのウェルに入れた。PBS中異なる濃度(1-50μg/ml)のSnCe6 100μlを細菌懸濁液に加えた。コントロールはPBS 100μlを細菌に加え、照射(L+S-)または暗所で保存(L-S-)のいずれかで実施した。実験は2回行った。
【0092】
インキュベーション後、いくつかのウェルの内容物を、撹拌しながら、エネルギー密度が42J/cm2に相当する、633nmの波長を有する光を放つ35mWヘリウム/ネオンレーザーからの光に10分間露光した。いずれの漏れたレーザー光がターゲットのウェルに反射して戻るように周囲のウェルにアルミニウムホイルを置いた。コントロールのウェルはレーザー光で照射しなかった。
【0093】
レーザー光に露光後、サンプル100μlをただちに各ウェルから取り出して、1.5mlのエッペンドルフチューブ中の予め還元したTSY 1mlに順次10-1〜10-5に希釈した。
その後各希釈物の2つの50μlの分取量をCBAプレート上の半分に広げた。プレートを37℃で嫌気的にインキュベートし、得られたコロニーを生存している微生物の数を計算するためにカウントした。
【0094】
SnCe6の濃度の増加に伴って、暗所での微生物のインキュベーションは、生菌数に対する有意な効果を有しなかった。光増感剤の不存在下で、レーザー光で微生物の投射をしたものも同様であった。しかしながら、SnCe6の存在下での微生物の投射は、生菌数において濃度依存的に減少をもたらした。50μg/mlの濃度の光増感剤を使用して、微生物の100%死を得た。結果は図9に示す。図9において
L+(オープンバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下においてレーザー光で投射した培養物;
L-(影付きバー)=さまざまな濃度の光増感剤の存在下同様、SnCe6の不存在下暗所でインキュベートした培養物
【0095】
実施例12
TBOおよびバクテリオファージの複合体の調製
トルイジンブルーO(toluidine blue O)(TBO)lmgをEDC 0.4mgおよびS-NHS 0.6mgおよびファージ(5x107pfu/ml)200μlと一緒に活性化バッファー(0.1M MES、0.5M NaCl pH5.5)800μlに溶解した。15〜30分間撹拌して反応を進行させ、その後2-メルカプトエタノール1.4μlを加えてEDCを中和した。さらに2〜4時間反応を進行させ、その後ヒドロキシルアミンを最終濃度10mMまで加え反応を止めた。
TBO-ファージ複合体は、2回のファージ沈殿に続くPBSに対する透析により遊離TBOから分離した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、異なるEMRSA菌株におけるファージ75-SnCe6複合体の効果を示す。
【図2】図2は複合体、複合体なし、光増感剤単独またはファージ単独ならびに投射の有無の、EMRSA-16およびS. epidermidisに対する効果を示す。
【図3】図3は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図4】図4は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図5】図5は光線量を変化させたEMRSA-16およびS.aureus 8325-4に対する本発明の効果を示す。
【図6】図6はEMRSA-16に対する、φ11-SnCe6複合体の固定された濃度を用いた光線量の効果を示す。
【図7】図7はVRSA (Mu3)、hetero-VRSA(Mu50)およびCA-MRSA (MW2)の菌株に対する本発明の効果を示す。
【図8】図8はStreptococcus pyogenesに対する本発明の効果を示す。
【図9】図9はPropionibacterium acnesに対する本発明の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤およびバクテリオファージの複合体を含む組成物。
【請求項2】
バクテリオファージがスタフィロコッカル バクテリオファージである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
光増感剤がバクテリオファージに共有結合されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
光増感剤がポルフィリン(Porphyrin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、クロリン(chlorin)、バクテリオクロリン(bacteriochlorin)、フェノチアジニウム(phenothiazinium)、フェナジン(phenazine)、アクリジン(acridine)、テキサフィリン(texaphyrin)、シアニン(cyanine)、アントラサイクリン(anthracyclin)、 フェオホルバイド(pheophorbide)、サフィリン(sapphyrin)、フラーレン(fullerene)、ハロゲン化キサンテン(halogenated xanthene)、ペリレンキノノイド顔料(perylenequinonoid pigment)、ギルボカルシン(gilvocarcin)、ターチオフェン(terthiophene)、ベンゾフェナントリジン(benzophenanthridine)、ソラレン(psoralen)およびリボフラビン(riboflavin)から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
光増感剤がティン(IV)クロリンe6(SnCe6)である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
バクテリオファージが、ファージ53、75、79、80、83、φ11、φ12、φ13、φ147、φMR11、48、71、φ812、SK311、φ131、SB-I、U16、C1、SF370.1、SP24、SFL、A1、ATCC 12202-B1、f304L、φ304S、φ15、φ16、782、P1c1r1OOKM、P1、T1、T3、T4、T7 MS2、P1、M13、UNL-1、ACQ、UT1、tbalD3、E79、F8、pf20 B3、F116、G101、B86、T7M、ACq、UT1、BLB、PP7、ATCC 29399-B1およびB40-8から選ばれる、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
バクテリオファージがファージ75またはファージφ11である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
光増感剤の濃度が0.01〜200μg/mlである、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
バクテリオファージの濃度が1×105〜1×1010pfu/mlである、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
さらにCa2+ イオン源、好ましくは塩化カルシウムを含む、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
薬学的に許容可能な担体中の溶液の形態である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物がさらに1以上のバッファー、塩、酸化防止剤、保存料、ゲル化剤またはミネラル質再付加剤(remineralisation agent)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(a)存在するいずれの細菌も光増感剤-バクテリオファージ複合体に結合するように、前請求項のいずれか1項に記載の組成物と処理されるエリアとを接触させ、そして
(b)光増感剤により吸収される波長での光を該エリアに照射することを含む
細菌を殺す方法。
【請求項14】
細菌がスタフィロコッカス、特にMRSA、EMRSA VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光がレーザー光または白色光である、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
レーザー光がヘリウムネオンガスレーザー由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
レーザー光が200〜1060nmの波長を有する、請求項15または16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
レーザーが1〜100mWの出力および1〜10mmのビーム直径を有する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レーザー照射の光線量が5〜333Jcm-2である、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
白色光の光線量が0.01〜100kJcm-2である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
照射時間が1秒〜15分である、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が0.00001〜1%w/vの濃度で処理されるエリア内またはエリア上に存在する、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ヒトまたは動物の生体の治療のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
細菌感染の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
細菌感染がS. aureus、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCAMRSAである請求項24記載の使用。
【請求項26】
光線力学療法 (PDT)における標的物質としてのバクテリオファージの使用。
【請求項27】
バクテリオファージがスタフィロコッカルファージである請求項26記載の使用。
【請求項28】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項23〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項1】
光増感剤およびバクテリオファージの複合体を含む組成物。
【請求項2】
バクテリオファージがスタフィロコッカル バクテリオファージである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
光増感剤がバクテリオファージに共有結合されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
光増感剤がポルフィリン(Porphyrin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、クロリン(chlorin)、バクテリオクロリン(bacteriochlorin)、フェノチアジニウム(phenothiazinium)、フェナジン(phenazine)、アクリジン(acridine)、テキサフィリン(texaphyrin)、シアニン(cyanine)、アントラサイクリン(anthracyclin)、 フェオホルバイド(pheophorbide)、サフィリン(sapphyrin)、フラーレン(fullerene)、ハロゲン化キサンテン(halogenated xanthene)、ペリレンキノノイド顔料(perylenequinonoid pigment)、ギルボカルシン(gilvocarcin)、ターチオフェン(terthiophene)、ベンゾフェナントリジン(benzophenanthridine)、ソラレン(psoralen)およびリボフラビン(riboflavin)から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
光増感剤がティン(IV)クロリンe6(SnCe6)である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
バクテリオファージが、ファージ53、75、79、80、83、φ11、φ12、φ13、φ147、φMR11、48、71、φ812、SK311、φ131、SB-I、U16、C1、SF370.1、SP24、SFL、A1、ATCC 12202-B1、f304L、φ304S、φ15、φ16、782、P1c1r1OOKM、P1、T1、T3、T4、T7 MS2、P1、M13、UNL-1、ACQ、UT1、tbalD3、E79、F8、pf20 B3、F116、G101、B86、T7M、ACq、UT1、BLB、PP7、ATCC 29399-B1およびB40-8から選ばれる、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
バクテリオファージがファージ75またはファージφ11である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
光増感剤の濃度が0.01〜200μg/mlである、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
バクテリオファージの濃度が1×105〜1×1010pfu/mlである、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
さらにCa2+ イオン源、好ましくは塩化カルシウムを含む、前請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
薬学的に許容可能な担体中の溶液の形態である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物がさらに1以上のバッファー、塩、酸化防止剤、保存料、ゲル化剤またはミネラル質再付加剤(remineralisation agent)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(a)存在するいずれの細菌も光増感剤-バクテリオファージ複合体に結合するように、前請求項のいずれか1項に記載の組成物と処理されるエリアとを接触させ、そして
(b)光増感剤により吸収される波長での光を該エリアに照射することを含む
細菌を殺す方法。
【請求項14】
細菌がスタフィロコッカス、特にMRSA、EMRSA VRSA、hetero-VRSAまたはCA-MRSAである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
光がレーザー光または白色光である、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
レーザー光がヘリウムネオンガスレーザー由来である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
レーザー光が200〜1060nmの波長を有する、請求項15または16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
レーザーが1〜100mWの出力および1〜10mmのビーム直径を有する、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
レーザー照射の光線量が5〜333Jcm-2である、請求項19に記載の方法。
【請求項20】
白色光の光線量が0.01〜100kJcm-2である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
照射時間が1秒〜15分である、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が0.00001〜1%w/vの濃度で処理されるエリア内またはエリア上に存在する、請求項13〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ヒトまたは動物の生体の治療のための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
細菌感染の治療のための薬剤の製造における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
細菌感染がS. aureus、特にMRSA、EMRSA、VRSA、hetero-VRSAまたはCAMRSAである請求項24記載の使用。
【請求項26】
光線力学療法 (PDT)における標的物質としてのバクテリオファージの使用。
【請求項27】
バクテリオファージがスタフィロコッカルファージである請求項26記載の使用。
【請求項28】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項13〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
実質的には実施例に記載されている通りである請求項23〜27のいずれか1項に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−508285(P2007−508285A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530603(P2006−530603)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004305
【国際公開番号】WO2005/034997
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506119109)ユーシーエル バイオメディカ パブリック リミティッド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004305
【国際公開番号】WO2005/034997
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506119109)ユーシーエル バイオメディカ パブリック リミティッド カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
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