説明

光学アセンブリ

【課題】光学アセンブリにおけるビーム経路に交換可能な光学部品を十分な精度と再現性を持って配置すること。交換機構及び交換可能な光学部品から妨害的な振動が光学アセンブリに伝わるのを防ぐこと。交換機構によって生成される粒子によって、光学アセンブリ又はそれに備わるそれぞれの光学部品の汚染を防止すること。
【解決手段】複数の光学部品(2)を有する光学アセンブリ(1)に関し、少なくとも1つの光学部品(2’,2”)は光学アセンブリ(1)から可動的に分離された構造体(5)に接続され、これによって上記光学部品(2’、2”)はその他の光学部品(2)及び光学アセンブリ(1)からも十分に可動的に分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学部品を有する光学アセンブリに関する。本発明は、更にこのようなアセンブリを有する投影露光機に関する。
【0002】
対物レンズ、照射システム及びこの類の光学アセンブリは、それに備わる例えば鏡などの光学部品の相互に関連した動作及びそれぞれが取り付けられる構造体に関連した動作の両方に非常に敏感である。
【背景技術】
【0003】
とりわけEULV(極紫外線リソグラフィ)分野における半導体部品を製造するためのミクロリソグラフィにおける投影露光機に用いられる投影レンズは、一例として欧州特許第1178356A2号に開示されている。この類の投影レンズに振動が伝わると、収差の生成及び/又は投影レンズの撮像性能の大幅な低下につながり、この類のレンズには高精度が要求されるために、複雑な収差補正を行うことが必要となる。
【0004】
振動によって誘発される収差を補正する可能性は、ドイツ特許第10204465A1号において開示されている。
【0005】
干渉する振動の伝達を出来る限り抑えるために、光学アセンブリ、とりわけ投影レンズは、振動から隔離される。
【0006】
更に、アセンブリ内のそれぞれの部品は、通常は低周波数である余分な振動の励起を受けると剛体として相互に対応して動くように、(高い固有周波数で)相互に堅固に接続される。
【0007】
光学アセンブリにおいて、その他の光学部品に対する位置付けにさほど厳重な条件のない光学部品は、適切であれば作動装置やモーター等の類によって操作することができるため、これらの光学部品によって妨害的な振動が伝わる可能性がある場合には大抵いつでも、可動的に分離又は振動的に分離されることが有利である。
【0008】
更に、例えば異なる光学的性質に変更したり、又は他の部品と交換したりできるように、ある特定の光学部品を交換可能に設計することも考慮される。それゆえに、光学部品を交換可能にするべく、光学アセンブリに交換機構の類を備えることも考えられる。
【0009】
しかし、この場合、上記のような交換機構を用いて、光学アセンブリにおけるビーム経路に交換可能な光学部品を十分な精度と再現性を持って配置するには困難が生じるといった特定の問題が発生する。
【0010】
上記を行う目的は、交換機構及び交換可能な光学部品から妨害的な振動が光学アセンブリに伝わるのを防ぐためであるが、更なる問題は、交換機構によって生成される粒子によって、光学アセンブリ又はそれに備わるそれぞれの光学部品が汚染されるという事である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、本発明の更なる目的は、その他の光学部品のうち少なくとも1つの光学部品と、光学撮像装置とが少なくとも可動的にほぼ分離され、この工程で少なくともおおよそ正確に配置されることが可能となるような、冒頭で記載した類の光学撮像装置及び投影露光機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明によると請求項1に記載されている特徴によって達成できる。更に、光学部品は交換機構によって交換可能となる。干渉となる振動の伝達は、光学アセンブリから光学部品又は交換機構が可動的に分離されることによって防ぐことができ、すなわち光学アセンブリ又はアセンブリ内の光学部品に対する望ましくない動作が伝達されることが防がれる。より正確に配置する必要のある光学部品の場合には、加えて振動的にも少なくとも概ね分離されることを保証する保持装置を更に備えることも可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による方法によって、簡単且つ有利なやり方で、モーターや作動装置等によって伝達される振動が光学アセンブリにおける他の光学部品に影響しないように、特にビーム経路において他の光学部品に対して正確に配置されることがさほど重要ではない、例えば絞り等のような光学部品が、単純な方法で可動的に分離可能となる光学アセンブリを創出することができる。可動的に分離された光学部品が、他の光学部品及び/又は光学アセンブリに対してより正確に配置される必要がある場合は、該要件はセンサーを用いることで達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】可動的に分離される光学部品を有する本発明による光学アセンブリを示した図である。
【図2a】標準的なビーム経路と回転式円板絞りスタックとが描かれた、EUVL(極紫外線リソグラフィ)分野におけるミクロリソグラフィのための投影レンズの詳細を示した図である。
【図2b】図2aで示される投影レンズに適応する回転式円板絞りを上から見た平面図を示す。
【図3】昇降装置、保持装置、及び係止部となるバネ部品を有する絞り装置を示した図である。
【図4】光源、照射システム及び投影レンズを有するEUV(極紫外線)投影露光機の構造を原則的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、光学部品として、ハウジング1aを有する対物レンズ1が示される。上記で既に記載したように、対物レンズ1はそれぞれの光学部品2の相互に対する動き及びそれぞれが取り付けられた構造体に対する動きに非常に敏感である。干渉となる振動の伝達を最小限に抑えるために、対物レンズ1は振動から隔離される。これは、本模範具体案においては装置3を介して行われるが、これについては本件においてこれ以上詳細に説明しない。
【0016】
操作可能な光学部品2’は、操作または反作用力によって生じる振動がこの別個の構造体5を介して床に放散されるように、対物レンズ1から可動的に分離された別個の構造体5に作動装置モジュールを介して接続される。このように、光学部品2’は対物レンズ1及びその他の光学部品2から効果的に可動的に分離される。光学部品2’と構造体5のこのような接続を可能にするために、対物レンズ1には開口部7が設けられる。
【0017】
光学部品2’の対物レンズ1に対する正確な配置は、センサー8を用いた更なる位置特定によって行われる。
【0018】
更に対物レンズ1は、とりわけモーター駆動によって引き起こされる振動を放散し、対物レンズ1から光学部品2”を可動的に分離する別個の構造体5に連結部4’を介して同様に接続され、モーター(図示なし)によってその絞り開口部が調整可能なアイリス絞りを光学部品2”として有する。
【0019】
その他の模範具体案においては、光学アセンブリは照射システムやその類であってもよい。
【0020】
図2aには、点線で描かれた対物レンズ10におけるハウジング10aに配置された光学部品としての鏡12と、目標面13(図4にてより詳細に説明される)との間における標準的なビーム経路11が示された、EUVL(極紫外線リソグラフィ)分野において用いられる投影レンズの詳細が示されている。ビーム経路11には、その作動位置15(点線で示す)において、絞り開口部14を有する更なる光学部品としての絞り12’が、投影レンズ10の光線を絞るために配置される。
【0021】
一目瞭然であるように、この場合、絞り12’の性質及び設置位置に最も重要な条件が課される。この結果、図2bで描かれるように、絞り開口部14は中心から外れて設けられる必要がある。絞り12’におけるこのような絞り開口部14の必須的な配置だけでなく、投影レンズ10内における狭小な設置スペースによって、例えばこのような投影レンズ10において、とりわけEUVL分野において波長を操作する上で、羽根によって連続的に調整可能となる従来のアイリス絞りの使用を困難にする。
【0022】
結果として、絞り装置17として設計された交換機構が上記のような連続的に調整可能な絞りの代わりに備えられ、固定された絞りの配置を投影レンズ10におけるビーム経路11の作動位置15まで移動させ、また元の配置まで戻す。投影レンズ10における、例えば鏡等のその他の光学部品に対応する絞り12’の相対的な配置は、概してさほど重要ではない。
【0023】
絞り装置17は、図2bで描かれるように固定された配置をしてなる回転式円板絞りとして設計された個別の絞り12’が、相互に垂直に積み重ねられた回転式円板絞りスタック17aを有する。絞り開口部14は、描かれているような円形の形状以外にも楕円形やその他の形状であってもよい。回転式円板絞り12’は、好適には矢印16で示される方向を経て、投影レンズ10のビーム経路11における作動位置15に達するまで移動される。図2bを参照すると分かるように、回転式円板絞り12’ は、光線が近接する側においては周縁が幅狭に形成され、その他の円周部分においては周縁が幅広に形成されてなる。
【0024】
投影レンズ10は、振動から隔離される。更に、投影レンズ内におけるそれぞれの光学部品12は、通常は低周波数である残留振動によって励起されると剛体として相互と共に動くように、(高い固有周波数で)相互に対して堅固に接続される。
【0025】
移動しなければならない部分が比較的大きく、更に設置スペースが制限されているため、十分に高い固有周波数を有する全体的な絞り装置17の具体案を創出することは複雑な作業である。この結果、可動的な動作(振動)が絞り装置17から投影レンズ10全体に伝達されてしまう。
【0026】
この問題に対する可能な解決案は、絞り装置17全体を投影レンズ10から可動的に分離された別個の構造体に取り付けることである。
【0027】
改良を加えた解決案は、投影レンズ10に保持装置18’(図3を参照)が備わってなることを前提として、選択された回転式円板絞り12’を残りの絞り装置17から離し、別の構造体に配置することにある。残りの絞り装置17は、別個の可動的に分離された構造体19に取り付けられる。この可能な解決法は、図3において本質的に描写されている。
【0028】
更なる可能な解決案は、残りの絞り装置17を別個の構造体に取り付けつつ、保持装置18と昇降機構20の両方を投影レンズ10に固定することにある(図示なし)。
【0029】
図3から見受けられるように、回転式円板絞りスタック17aは、それぞれ個別の差込みユニット21に収納された複数の回転式円板絞り12’を有する。回転式円板絞り12’が1つずつ順番に外側に回転された後、投影レンズ10のビーム経路11において作動位置15に達するまで持ち上げられるように、それぞれの差込みユニット21は、全ての差込みユニット21に共通する連結部(図示なし)を介して1つ1つ外側に回転することができる。
【0030】
回転式円板絞り12’が作動位置15まで達すると、回転式円板絞り12’は保持装置または係止部18に接続される。保持装置18は、回転式円板絞り12’ のマイクロメートル単位での正確な位置決めを繰り返し行うことを可能にする。これによって、個別の差込みユニット21だけでなく昇降装置20に必要とされる精度要件は軽減される。
【0031】
保持装置18は、回転式円板絞り12’が投影レンズ10に対応して、6つの自由度で正確に配置されることを保証する。更に、重力やその他の干渉する力に逆らって、回転式円板絞り12’を保持装置18に保持または固定する必要がある。粒子が鏡面を汚染するのを防ぐために、回転式円板絞り12’は出来る限りそっと静かに、上記のような状態に固定されなければならない。
【0032】
図3から更に見受けられるように、回転式円板絞りは、移動位置から作動位置15に達するまで、昇降装置20によって運ばれ、保持装置18によってその位置で保持される。図3に描かれる絞り装置17の場合、変換メカニズムと比較して、汚染の原因となる、例えば摩擦力等によって発生する粒子が軽減されるため、回転式円板絞り12’ を配置する上では主に回転メカニズムが用いられる。更に、保持装置18において回転式円板絞り12’を保持するための実質的な一定力は、低い剛性を有するバネ部品23によって簡単で有利な方法で加えられる。回転式円板絞り12’の作動位置15に対して、バネ部品23の圧縮による大きなたわみが生じるのを防ぐために、バネ部品23は予め圧縮されていなければならない。矢印24は、(図において点線で示される)投影レンズ10における個別に取り付けられたハウジング10aと、同様に(図において点線で示される)固定された構造体19に個別に取り付けられた絞り装置17のその他の絞りの可動的分離または振動分離の様子を示している。
【0033】
回転式円板絞り12’を固定または配置するための保持装置18には磁力が用いられる。この方法には、粒子による更なる汚染を引き起こしうる機械的に移動する部品がほんの少ししかない、或いは1つもないという利点がある。
【0034】
更なる模範的具体案において、絞りの代わりとして別の光学部品が、投影レンズ10において前記のように可動的に分離され、取換え可能に配置されることも可能である。光学部品は、取付部またはその類によって支持されてももちろんよい。
【0035】
図4から見受けられるように、EUV投影露光機30は光源31と、パターンが書き込まれたマスクが配置される目標面13のフィールドを照射するためのEUV照射システム32と、半導体部品を製造するために目標面13におけるパターンが書き込まれたマスクを感光基板33に撮像するためのハウジング10a及びビーム経路11を有する投影レンズ10とを備える。投影レンズを絞るための絞り12’は、点線で示される。
【符号の説明】
【0036】
1a ハウジング
1 光学アセンブリ/対物レンズ
2 光学部品
2’ 光学部品
2” 光学部品
3 装置
4 作動装置モジュール
4’ 連結部
5 構造体
6 床
7 開口部
8 センサー
10 投影レンズ
10a ハウジング
11 ビーム経路
12 鏡
12’ 絞り
13 目標面
14 絞り孔
15 作動位置
16 矢印
17 絞り装置
17a 回転円板絞りスタック
18 保持装置
19 構造体
20 昇降装置
21 差込みユニット
22 繰り出し装置
23 バネ部品
24 矢印
30 EUV投影露光機
31 光源
32 EUV照射システム
33 感光基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィの光学アセンブリにおいて、
この光学アセンブリが、
複数の光学部品を固定するとともに交換用光学部品(2”)を受ける受け入れ部(18)を備えた第1の構造体(1、3)と、
前記第1の構造体とは別個の構造体であって、交換用光学部品を保持する第2の構造体(17、19)と、
前記第2の構造体から交換用光学部品を取り出し、第1の構造体の受け入れ部に配置する交換機構であって、交換動作によって生じる粒子によって引き起こされる汚染を防止する回転メカニズムを使用する交換機構(17a、20)と
を備えることを特徴とする光学アセンブリ。
【請求項2】
前記光学アセンブリが、
前記第1の構造体と可動的に分離された第3の構造体であって、作動装置モジュール(4)によって作動されることによって前記光学アセンブリ内で操作可能な光学部品(2’)を保持する第3の構造体(5)
を、更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項3】
前記操作可能な光学部品の他の光学部品に対する位置を決定するセンサ(8)を、更に設けたことを特徴とする請求項2に記載の光学アセンブリ。
【請求項4】
前記受け入れ部(18)は、粒子による汚染を防止するため、交換用光学部品(2”)を磁力によって保持されるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学アセンブリ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−99859(P2012−99859A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23257(P2012−23257)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2005−510713(P2005−510713)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】