説明

光学シート、バックライトユニットおよびディスプレイ装置

【課題】、光学性能を低下せず、かつ大幅なコストアップを伴うことなく、大型化に求められる十分な信頼性を有するバックライトユニットを提供可能な光学シート、及びその光学シートを使用したバックライトユニット、およびディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】曲げ弾性率の異なる2種以上の樹脂を積層した光学シートを作成することで、厚みを増すことなく、光学シートの剛性を高めることができる。曲げ弾性率の差を500MPa以上とすることで薄く、且つたわみが少ない光学シートを得ることができ、大型化に伴う十分な信頼性を有する光学シートの作成が可能となり、液晶表示用バックライト部材のコストダウンと信頼性の両方を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素単位での透過/非透過のレンズシートおよびディスプレイ用光学シート、あるいは透明状態/散乱状態に応じて表示パターンが規定される表示素子が配置された液晶パネルを、背面側から照明するバックライトユニット、ディスプレイ装置、及びそれに使用される光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT型液晶パネルやSTN型液晶パネルを使用した液晶表示装置は、主としてOA分野のカラーノートPC(パーソナルコンピュータ)を中心に商品化されている。
このような液晶表示装置においては、液晶パネルの背面側(観察者側)に光源を配置し、この光源からの光で液晶パネルを照明する方式、いわゆる、バックライト方式が採用されている。
【0003】
この種のバックライト方式に採用されているバックライトユニットとしては、大別して冷陰極管(CCFT)等の光源ランプを、光透過性に優れたアクリル樹脂等からなる平板状の導光板内で多重反射させる「導光板ライトガイド方式」(いわゆる、エッジライト方式)と、導光板を用いない「直下型方式」とがある。
導光板ライトガイド方式のバックライトユニットが搭載された液晶表示装置としては、例えば、図6に示すものが一般に知られている。
【0004】
これは、上部に偏光板71、73に挟まれた液晶パネル72が設けられ、その下面側に、略長方形板状のPMMA(ポリメチルメタクリレート)やアクリル等の透明な基材からなる導光板79が設置されており、該導光板の上面(光射出側)に拡散フィルム(拡散層)78が設けられている。
さらに、この導光板79の下面に、導光板79に導入された光を効率よく上記液晶パネル72方向に均一となるように散乱して反射されるための散乱反射パターン部が印刷などによって設けられる(図示せず)と共に、散乱反射パターン部下方に反射フィルム(反射層)77が設けられている。
【0005】
また、上記導光板79には、側端部に光源ランプ76が取り付けられており、さらに、光源ランプ76の光を効率よく導光板79中に入射させるべく、光源ランプ76の背面側を覆うようにして高反射率のランプリフレクター81が設けられている。上記散乱反射パターン部は、白色である二酸化チタン(TiO)粉末を透明な接着剤等の溶液に混合した混合物を、所定パターン、例えばドットパターンにて印刷し乾燥、形成したものであり、導光板79内に入射した光に指向性を付与し、光射出面側へと導くようになっており、高輝度化を図るための工夫である。
【0006】
さらに、最近では、光利用効率をアップして高輝度化を図るべく、図7に示すように、拡散フィルム78と液晶パネル72との間に、光集光機能を備えたプリズムフィルム(プリズム層)74、75を設けることが提案されている。このプリズムフィルム74、75は導光板79の光射出面から射出され、拡散フィルム78で拡散された光を、高効率で液晶パネル72の有効表示エリアに集光させるものである。
【0007】
しかしながら、図6に例示した装置では、視野角の制御は、拡散フィルム78の拡散性のみに委ねられており、その制御は難しく、ディスプレイの正面方向の中心部は明るく、周辺部に行くほど暗くなる特性は避けられない。そのため、液晶画面を横から見たときの輝度の低下が大きく、光の利用効率の低下を招いていた。
さらに、図7に例示したプリズムフィルムを用いる装置では、1枚のプリズムフィルムだけで希望の視野角を得ることが難しく、拡散フィルムを使用しなくてはならないため、バックライトユニットに搭載する光学シートの枚数が2枚以上必要となる。このため、フィルムの吸収による光量の低下が大きいだけでなく、部材数の増加によりコストが上昇する原因にもなっていた。
【0008】
一方、直下型方式のバックライトユニットが搭載された液晶表示装置としては、図8に示すものが一般に知られている。
これにおいては、上部に偏光板71、73に挟まれた液晶パネル72が設けられ、その下面側に、蛍光管等からなる光源51から射出され、拡散フィルム82のような光学シートで拡散された光を、高効率で液晶パネル72の有効表示エリアに集光させるものである。光源51からの光を効率よく照明光として利用するために、光源51の背面には、リフレター52が配置されている。
【0009】
しかしながら、図8に例示する装置でも、視野角の制御は、拡散フィルム82の拡散性のみに委ねられており、その制御は難しく、ディスプレイの正面方向の中心部は明るく、周辺部に行くほど暗くなる特性は避けられない。そのため、希望する輝度と視野角特性を得るためにプリズムフィルムと拡散フィルムの2枚以上の光学シートを使用しなくてはならない状態であり、コストダウンが求められるなか、光学シートのコストダウンはなかなか進んでいない。
【0010】
また現在は、市場からコストダウンとともに低消費電力の要望も非常に強い。直下型方式のバックライトユニットの場合、目標の低消費電力を達成するためには光源の数を削減する方法が最も効果的である。しかし、光源51間の間隔が広すぎると、画面上に隣接する光源との間に輝度の明暗差が生じ、ムラとなる課題が生じる。輝度ムラを解決するには拡散性の強い光学シートを採用する方法があるが、高い拡散性を得るには光学シートの枚数を増やす必要があり、結果的にはバックライトユニットのコスト削減の根本的な解決になっていない。
【0011】
つまり、このような液晶表示装置では、軽量、低消費電力、高輝度、薄型化であることが市場ニーズとして強く要請されており、それに伴い、液晶表示装置に搭載されるバックライトユニットも、軽量、低消費電力、高輝度であることが要求されている。しかしながら、上述したように従来の装置では、高輝度、低消費電力の要請に充分に応えられているとは言いがたく、ユーザーからは、低価格、高輝度、高表示品位で、かつ低消費電力の液晶表示装置を実現できるバックライトユニットの開発が待ち望まれている。
【0012】
そして、バックライトユニットに用いられる複数の光学シートの機能を、より少ない枚数の光学シートで実現しようとする試みがなされている。現在、そのうちのひとつとして集光と拡散の機能をあわせ持った光学シートの開発が盛んに行われている。しかし、少なからず集光機能をもった光学シートがパネル側最表面に位置すると、輝度の明暗差が発生し易くなり、表示品位が低下する問題が発生する。これは高温や高湿などの周囲の環境の変化、また光源の点灯、消灯を切り替えることによりバックライト内の温度が変化することで、光学シートのわずかなしわやたわみにより輝度の明暗として認識されるためである。
以上のように、1枚の光学シートで輝度向上と面内の輝度ムラ解消の2つの効果を発揮する光学シートが市場では求められているが、実際には環境特性や表示品位、輝度向上、および輝度ムラの観点から拡散板または導光板を含め3枚以上の光学部材を組み合わせて使用している現状がある。
【0013】
また、現在、液晶表示装置は大型化が進められており、輝度向上および面内の輝度ムラ解消などの性能アップのみではなく、大型化に耐え得る信頼性を有する廉価な光学シートが求められている。しかし、現状では小型サイズと同様の構成を大型サイズに展開した場合、大型化によるバックライト内の温度分布の増加やしわの発生を許容できず、信頼性を得ることができていない。そのため大型化には光学シート自体の厚みを増加させてしわの発生を低減させたり、更に拡散性の高い光学シートを追加することで、それぞれの光学シートのしわ視認性を低下させ表示品位を維持している。しかし光学シートの厚みを厚くしたり、使用する光学シートの枚数の増加はコストアップにつながっており、大型化に対応可能なバックライト部材のコストダウンも、市場から求められている大きな課題である。
【0014】
ここで、これまで述べた光学シートの厚みを増やし改善する方法、及び光学シートの積層枚数を増加し改善する方法以外のバックライトユニットにおける光学シートの環境特性向上の方法について、次に詳細に説明する。
特許文献1には、使用する複数の光学シートについて線膨張係数を近似させることで、バックライトから発生する熱によるシートの挙動を近似させて、光学シートのしわの発生を低減させる方法が提案されている。線膨張係数は使用する樹脂そのものでほぼ決まる値であり、自由に変化させることが難しい。また光学シートは拡散シートやプリズムシート、再帰反射シートなどそれぞれ表面形状や構成が異なるシートを組み合わせて使用するが、それらすべての形状や構成を容易に作製できる材料は少なく、選定が難しい。そのためコストダウンが強く求められる光学シートにおいて、材料を自由に設定できないという大きな課題が発生する。
【0015】
また特許文献2には、光学シートの短辺側に突起部を設けてバックライトユニットに設置することで、光学シートのしわ発生を防止する方法が提案されている。この方法は、光学シート自体の剛性が不足する場合でも、突起部を設けたことにより、振動による光学シートのがたつきや熱による光学シートの伸縮による筐体内での光学シートの動きが抑制される結果、光学シートの信頼性を向上させるものである。しかし、光学シートに突起部を設けるこの方法の場合、バックライトユニットのサイズやバックライトユニットの設計により、最適な突起部の位置やサイズ、個数が異なってくる。そのため各バックライトユニットごとに光学シートの形状を変えなければならず、その煩雑性が新たな課題として生じる。
【0016】
以上のように、複数枚の光学シートを使用するにあたり、コストダウンと光学性能を両立しながら充分な信頼性を有するための具体的な解決策はない。このため、出射側最前面に光学性能を犠牲にしてもしわ視認性を低下させる効果を発揮する拡散シートを積載して使用したり、光学シートの厚みを持たせて信頼性を確保したりしている状況がある。特に現状として液晶バックライト部材の大型化の必要が迫られているため、光学性能と信頼性(表示品位)を有しながらコストダウンを実現するための根本的な解決方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−50802号公報
【特許文献2】特開2008−84811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述の通り、大型化が進むにつれて光学シートに求められる信頼性の課題は難しくなる。現在では、前述したように小型サイズで使用している光学シートの積層枚数を増やす、特に最も出射面側にしわの目隠しに有効な拡散性能を有するシートを追加することで対応している。また、筐体形状を変更し、光学シートの支持方法を変更する。光学シートの厚みを増やし、光学シート自体の剛性を高める方法が一般的である。
【0019】
しかし、前述したように、光学シートの線膨張係数を近似させるには、光学シートの材料を幅広い選択肢から選定する必要があるが、光学シートに求められる透明性、屈折率性、透過率性の観点から自由に選定することが難しい。
また、光学シートの支持方法の検討は、これにより光学シートのしわ低減効果は確認できるが、支持方法はバックライトユニットの設計によって変更しないといけない場合が多数ある。また、光学シート自体がある程度の剛性を持っていないと、支持方法だけでは信頼性は解決できないことを確認している。
【0020】
以上のように、これまでの光学シートの信頼性の向上は光学シート自体のしわ発生の根本的な対策ではなく、視認性を低下させてしまう対策が多い。このため、さらに信頼性の条件が厳しくなる液晶表示用バックライトの大型化にはコストアップが伴ってしまっている事実がある。
そこで本発明は、光学性能を低下せず、かつ大幅なコストアップを伴うことなく、大型化に求められる十分な信頼性を有するバックライトユニットを提供可能な光学シート、及びその光学シートを使用したバックライトユニット、およびディスプレイ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明者らは、複数枚の光学シートの信頼性に影響する光学シートの弾性率、厚み、線膨張率を調整することにより、光学性能を低下せず、かつ大幅なコストアップを伴うことなく大型化に求められる十分な信頼性を有する複数枚以上の光学シートを有する液晶表示用バックライトユニットを提供することを図った。そして、本発明では、特に使用される複数の光学シートの曲げ弾性率と厚みを制御し、目的とする線膨張率に基づく樹脂選定を実施することで、厚みを増加させることなくしわが発生しない大型サイズの液晶表示用バックライトユニットの光学シートを作成することを可能とした。
【0022】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、 透光性基材の少なくとも片面に、光学要素を構成する凹凸形状を形成した光学シートであって、
前記透光性基材は、2種以上の異なる樹脂を積層してなる複数の樹脂層から構成され、前記複数の樹脂層のうち、最も曲げ弾性率が高い樹脂層と、最も曲げ弾性率が低い樹脂層との曲げ弾性率の差が500[MPa]以上であることを特徴とする。
【0023】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、前記複数の樹脂層のうち、最も入射面側に積層されている樹脂層の線膨張係数と、最も出射面側に積層されている樹脂層の線膨張係数との差が5×10−5[/℃]以下であることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 前記複数の樹脂層は3層以上であることを特徴とする。
【0024】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し、前記複数の樹脂層のうち、最も入射面側に積層されている樹脂層と、最も出射側に積層されている樹脂層とは同じ樹脂からなることを特徴とする。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載に対し、最も入射面側に積層されている樹脂層と最も出射面側に積層されている樹脂層は、その内部に積層されているその他の樹脂層よりも耐熱温度が高いことを特徴とする。
【0025】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、前記光学シートは、共押出工程で作製されたことを特徴とする。
次に、請求項7に記載した発明は、表示画像を規定する画像表示素子の背面側に、少なくとも光源と前記請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した光学シートとを備えることを特徴とするバックライトユニットを提供するものである。
【0026】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した構成に対し、前記光源が冷陰極管、LED、ELもしくは半導体レーザーであることを特徴とする。
次に、請求項9に記載した発明は、画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、請求項7又は請求項8に記載されたバックライトユニットとを備えることを特徴とするディスプレイ装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
複数枚の光学シートを積載して用いる場合、それぞれの光学シートの剛性を強くすることで信頼性を得ることができるが、そうなると大型サイズになるにつれて厚みを持たせたり、剛性の強い材料を用いなくてはならない。また厚さは変化させなくてもしわの目隠し効果を発揮する光学シートを追加するなどの対策が必要となるが、どちらにしてもバックライト部材全体のコストアップは免れない。
これに対し、本発明では、例えば剛性の高いこしのある樹脂と、弾性の高い割れにくい樹脂を積層することで、光学シートの厚みを大幅に厚くすることなく、割れにくく且つこしのある環境特性の高い光学シートを得ることが可能となり、液晶表示用バックライト部材のコストダウンと信頼性の両方を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る光学シートを含むディスプレイ装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る別の光学シートを含む他のディスプレイ装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る光学シートの説明図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る光学シートの説明図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係る光学シートを作製する際の押出法の説明図である。
【図6】従来技術による導光板ライトガイド方式によるディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
【図7】従来技術による他の導光板ライトガイド方式によるディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
【図8】従来技術による他の導光板ライトガイド方式によるディスプレイ装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の形態について図を参照しながら詳細に説明する。
「第1のディスプレイ装置」
図1は、本発明に基づく光学シートを含んだディスプレイ装置の実施形態を示した概略図である。
このディスプレイ装置1は、図1に示すように、バックライトユニット2と画像表示素子としての液晶パネル(液晶表示素子)3とを備えている。バックライトユニット2は、ランプハウス6、拡散板7、及び本発明に基づく光学シート12を備える。符号13、14は他の光学シートである。液晶パネル(液晶表示素子)3は、液晶素子10と、その液晶素子10を挟んで配置された一対の偏光板9とを備える。
【0030】
ランプハウス6は、例えば所定間隔で配列された冷陰極管(CCFL)からなる複数の光源4と、光源4の背面に配設されていて背面側の出射光を反射させる反射板5とで構成される。光源4は、冷陰極管に限定されることなく、EL、LED、半導体レーザー等を採用することができる。
拡散板7は、光源4の光照射方向前方側に配置され、光源4から進入する光を拡散する光拡散層として配設される。本発明に基づく光学シート12、及び他の光学シート13、14は、拡散板7と液晶パネル3との間に配置される。本発明に基づく光学シート12は、拡散板7を透過する光を集光及び拡散する。
【0031】
ここで光学シートは、本発明に基づく光学シート12を含めすべて同じ光学シートを組み合わせることもできるが、すべて異なる光学シートを組み合わせることもできる。また、他の光学シート13、14のみ同じ光学シートを使用することもできる。このように使用される光学シートの種類や積載順序は限定されることはない。しかし、本発明に基づく光学シート12は、従来の光学シートよりも剛性を高くしたわみ量を減少させている。そのためプリズムシートや拡散シート、マイクロレンズシートなど、通常の基材が1種類の樹脂からなる光学シートと組み合わせる場合、これらの剛性の低い光学シートよりも出射面側に配置するとその他の光学シートのしわの抑制にもつながり、バックライトユニット全体の信頼性向上に効果的である。
なお、本実施形態では、ディスプレイ装置1として液晶表示装置を例示するが、これに限らず、投射スクリーン装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置など、画像を光により表示する表示装置であればディスプレイ装置の種類は問わない。
【0032】
「第2のディスプレイ装置」
また、図2は、本発明に基づく光学シート12を含んだディスプレイ装置の他の実施形態を示した概略図である。
このディスプレイ装置15では、バックライトユニット2の光源の配置方式が、第1のディスプレイ装置と異なる。すなわち、拡散板7の側方に光源4を配置して、側方から光照射を行う方式を採用している。
その他の基本構成は、上記ディスプレイ装置1と同様である。
【0033】
「光学シート」
次に本発明に基づく光学シート12について詳細に説明する。
図3は本発明に基づく光学シート12の構造を模式的に表した図である。
光学シート12は、透光性基材の片面(図3の上面(出射面))に凹凸形状を付与した構造である。前記凹凸形状は、複数の光学要素が、前記透明基材の面に沿って一方向に向けて、若しくは二方向に向けて配列して形成される。前記透光性基材は、2種以上の異なる樹脂が積層して構成され、前記2種以上の異なる樹脂のうち、最も曲げ弾性率が高い樹脂と、最も曲げ弾性率が低い樹脂との曲げ弾性率の差が500[MPa]以上となっている。
図3では、光学シート12の出射面に光学要素21としてプリズム形状が付与されており、この光学シート12は、出射面側にある樹脂層22と入射面側にある樹脂層23の2層から構成されている。ここで出射面側にある樹脂層22と入射面側にある樹脂層23は異なる樹脂が使用されている。
【0034】
図4に別の構成からなる光学シート12を示す。
図4(a)は、樹脂層が3層からなる光学シート12である。この樹脂層の積層数は限定されるものでなく、2層以上であれば何層でもよい。また樹脂層の厚みは一定である必要はなく、図4(b)のように、面方向に沿って一定の周期をもって変化したり、図4(c)のように、面方向に沿って不定期に変化していてもよく、樹脂層の界面の状態は限定されない。
【0035】
そして、光学シート12を構成する樹脂層の樹脂を選定し、2層以上樹脂を積層させることで通常の単層からなる光学シートでは得られない大幅に環境特性を改善した光学シートを得ることができる。
通常、光学シートを作製する場合、光学シートの厚みは加工性、成形性、取扱い性により樹脂によって作製できる厚みが限定される。ここで、使用する樹脂の例としてアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を挙げて説明する。
【0036】
アクリル樹脂によりシートを作製する場合、アクリル樹脂は一般的にプラスチックの中で強度はあるが脆性が高いために薄膜化が困難であり、1mm以下のシートを作製することが難しい。そのため通常はアクリル樹脂のなかにゴムなどの弾性を向上させる効果のある添加剤等を加え、シートの割れを防ぐ必要がある。一方、ポリカーボネート樹脂は一般的に非常に弾性が高く、割れにくい樹脂であることから添加剤等を加える必要がなく数μmから数mmまでの様々な厚みでのシート加工が可能な樹脂である。しかし、樹脂の弾性率が低いためにシートのこしが弱く、わずかな負荷でもシートが大きくたわんでしまう。そのため一般的な光学シートとしての厚み100μmから500μm程度の厚みでは大型化が進むバックライトユニットに搭載する場合に信頼性を十分に確保することができない。
【0037】
しかしアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を積層させてなる光学シート12の場合、ポリカーボネート樹脂の割れにくい性質により、アクリル樹脂が積層されていても数十μmのシート厚みでも割れが発生せず、シート加工をすることが可能となる。またポリカーボネート樹脂の単層では、数百μm程度の厚みではシートのこしが弱く特に大型サイズになると充分な信頼性が得られていなかったが、アクリル樹脂と積層することで、アクリル樹脂が持つ高い剛性の性質により光学シート全体の剛性が増し、信頼性を確保することができる。すなわち、本発明に基づく光学シート12として、少なくともアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を積層させた構造を一例として挙げることが出来る。
このように曲げ弾性率の異なる樹脂を組み合わせることでシートの通常の単層のシートでは得られない高い信頼性および環境特性を得ることが可能となる。
【0038】
また、このとき樹脂は、最も曲げ弾性率の高い樹脂と、最も低い曲げ弾性率の樹脂の曲げ弾性率の差が500[MPa]以上でなくてはならない。本発明の光学シート12は、薄物化が可能で、且つたわみ量が少なく高い剛性を有する光学シートに関するものである。そして、曲げ弾性率の差が500[MPa]未満の樹脂を積層した場合、その両方の効果を得ることが難しいため、曲げ弾性率の差が500[MPa]以上の樹脂を積層する。例として、ポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂の積層構成の場合、割れにくく薄膜化は可能であるが数百μm程度の厚みではたわみ量が大きく剛性が不十分である。またアクリル樹脂とポリスチレン樹脂の2種を積層した場合、どちらも剛性の高い樹脂であるためこしが強く、たわみ量を少なくすることが可能であるが、どちらも脆性が高いため積層しても光学シートの薄膜化が困難であり、シートの割れを防ぐ効果がない。よって曲げ弾性率の近い樹脂を積層すると、薄膜化と高い剛性という2つの性能を獲得することができず、どちらか一方の性能に突出することになる。
【0039】
光学シート12を成型する材料としては、光源部から出射される光の波長に対して光透過性を有するものが使用され、例えば、光学用部材に使用可能なプラスチック材料を使用することができる。
この材料の例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS(アクリルとスチレンの共重合体)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂、あるいはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー又はアクリレート系等からなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が挙げられる。また、用途により、透明樹脂中に微粒子を分散させて使用してもよい。
【0040】
また積層される樹脂層を形成するための樹脂の組み合わせも、例として述べたアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂のみに限定されるものではなく、曲げ弾性率の差が500[MPa]以上の樹脂の積層であればどの樹脂を組み合わせても構わない。
また本発明に基づく光学シート12は、最も入射面側に積層されている樹脂と最も出射面側に積層されている樹脂(下面及び上面の各最表面側に位置する樹脂)の線膨張率の差が5×10−5[/℃]以下でなければならない。最も出射面側にある樹脂と最も入射面側にある樹脂の線膨張率の差が非常に大きいと、バックライトユニットに搭載した場合、光源や設置場所による周囲の環境温度により反りが発生し、光学シートの環境特性を著しく低下させる。特に近年バックライトユニットは大型化が進んでおり、それに伴い光学シートのサイズも大きくなっている。そして、サイズが大きいほど表裏の線膨張率の差が光学シートに及ぼす影響も大きくなり、結果として反り量が大幅に増加する。反りは光学シートの平面性を損なう大きな低下する要因であり、そのため光学シートの信頼性向上のためには反りを防ぐことが必要である。そのためには、光学シートの表裏の線膨張係数を5×10−5[/℃]以下に抑える必要がある。
【0041】
また、曲げ弾性率の差が500[MPa]以上あり、且つ線膨張係数が5×10−5[/℃]以下の樹脂選定が困難な場合、対策として光学シートを3層以上の積層構造にする方法が挙げられる。3層以上の積層構造であれば、最も入射面側にある層に使用する樹脂と、最も出射面側にある層に使用する樹脂は、線膨張係数の関係からだけで選定し、それ以外の内側(内層側)にある層は曲げ弾性率の値のみで選定することができる。最も入射面側に使用する樹脂と最も出射面側に使用する樹脂の線膨張係数を近似させる最も効果的な方法は、最も入射面側に使用する樹脂と最も出射面側に使用する樹脂を同じにすることである。
【0042】
また、本発明に基づく光学シート12は、3層以上の積層構造の場合、最も入射面側に積層されている樹脂層と、最も出射面側に積層されている樹脂層は、その内部に積層されている樹脂層よりも耐熱温度が高いことが望ましい。光学シートは液晶テレビなどのバックライトユニットに搭載されることが多く、バックライトユニットに設置されている光源や周辺環境による温度変化に耐えるための高い耐熱温度が要求されることが多い。特に近年、液晶テレビの薄型化が進み、光源と光学シートの距離が近くなり、より光源から発生する熱の影響が大きくなってきている。そのため3層以上の積層構造からなる光学シートの場合、最も入射面側に積層されている樹脂層23と、最も出射面側に積層されている樹脂層22に高い耐熱温度を有する樹脂を使用することで、光学シート自体の耐熱性を向上することができる。
【0043】
本発明で述べる光学シート12の凹凸形状の例として出射面形状に、光学要素として円錐状、多角錐状、円柱状、多角柱状の形状が一次元方向(面に沿った一方向)、もしくは二次元方向(面に沿った二方向)に連なるように配列して存在していてもよい。本発明に基づく実施形態を示した図1、および図2では出射面側に90°のプリズム形状が2次元的に2方向(紙面に沿った方向と紙面に直交する方向)に並んでいる状態となっている。特に頂角が90度のプリズム形状は光学特性の中でも特に輝度向上効果が高い形状として知られており、頻繁に用いられている形状である。しかしこの形状は、視野角依存性が高くまた傷つきやすいというデメリットがある。またもう一方でマイクロレンズ形状は遮蔽効果が高く傷つき難いことから頻繁に使用される形状であるが、集光効果が低いため輝度が低いのが一般的である。しかしマイクロレンズ形状の高さと径の比で表されるアスペクト比を調整することで高輝度化が可能であることが確認されている。このように光学シート12の出射面形状(形成する光学要素の形状)は、求める光学性能や信頼性などにより随時変更され、組み合わせて使用されている。
【0044】
これらの光学要素を構成する形状は一種類でも、2種以上の組み合わせであっても良い。例えば、プリズムレンズの対擦傷性向上のためにプリズム先端形状に丸みを持たせたり、マイクロレンズとプリズムレンズの複合レンズなどを採用する。
また、これらの形状は規則的に配置されていても、不規則的に配置されていても良い。規則的に配置した場合、光学シート面全体で均一な光学特性を設けることができる。しかし、規則的に配置することにより、他の光学シートとのモアレや、液晶パネルなどの他の部材とのモアレが発生する可能性が生じるため、規則性に充分考慮する必要がある。
【0045】
一方、形状を不規則的に配置する場合、規則的に設けた場合に最も懸念されるモアレの課題を解決することができるほか、サイズによる考慮も必要なく自由に使用することが可能となる。しかし不規則的にすることで面内での光学性能が不均一となりムラとなってしまうことがあるため不規則性にも充分考慮する必要がある。
また、出射面形状はサンドブラストや腐食により粗面化されていてもよい。これは表面を粗面化することで傷が付いた場合に目立ち難くする効果や、微小凹凸による拡散効果により光学性能が変更する方法がある。
【0046】
「光学シートの製造」
そして、光学シート12は、例えば、このような材料を金型に流し込み凝固されることで成型される。
金型は、金型ロールに対して各種レンズ形状を有するダイヤモンドバイトを用いて、断面形状が三角形状を切削し各種レンズ形状に対応する部分を作製する。
【0047】
また、半球状や楕円球状のレンズ形状に対応する部分を有する金型の成形方法の代表例としては、レーザー方式と切削方式が挙げられる。レーザー方式は、金型ロールに表面にブラック樹脂を均一に塗布し、レーザーを照射後、金型ロール全体を酸溶液につけることでレーザー照射部が腐食され光学突起部に対応する部分を成形する方法である。切削方式は、先端形状が非球面形状であるバイトの中心を金型ロールに断続的に押し当て、光学突起部に対応する部分を作製することができる方法である。
ここで金型の作製方法は切削方式とレーザー方式のどちらを用いてもよく、また両方用いて作製しても良い。またどちらを先に作製しても良い。金型ロールの作製は上記に述べた方法のみに限定されることはなく、形状や精度により方法は適宜選択されるものとする。
【0048】
そして、上記のような金型ロール21を用いて光学シート12を成形する。光学シート12は押出法、キャスト法、もしくはインジェクション法で製造することができる。光学シート12を製作するための板状の部材は、厚みが12μm以上1mm以下のものを使用できる。厚みが12μm未満では上述した製造方法による加工に耐えうる剛性が無く、厚みが1mmを越えると加工に耐えうる柔軟性がない。
【0049】
また、光学シート12はUV硬化法で製造してもよい。
UV硬化法で作製される場合、シート状の基材である基部上にUV硬化性の樹脂を塗布し、所望の形状の金型を押し当て、その後にUV照射して基部と光学突部及び光学要素からなる光学シートを得る。シート状の基材に曲げ弾性率が500[MPa]以上異なる2種以上の積層構造からなるシートを用いていればよい。
【0050】
また、2種以上の異なるレンズ形状を有している場合、それぞれの形状を別体として成型してもよいし、一体として成型してもよい。また各種レンズおよび基部を成型する場合には、内部にフィラーなど拡散剤を分散させ、成型することもできる。
なお、光学シート12についての代表的な作製例を説明してきたが、本実施形態の光学特性を達成することができれば上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して作製することも可能である。
【0051】
また、金型ロールの作製方法としては、レーザー方式や切削方式以外にも、サンドブラストを使用する方法やビーズ分散による成形方法がある。
レーザー方式と切削方式は前述した通り、レーザー方式は、金型ロールに表面にブラック樹脂を均一に塗布し、レーザーを照射後、金型ロール全体を酸溶液につけることでレーザー照射部が腐食され光学突起部に対応する部分を成形する方法である。切削方式は、先端形状が非球面形状であるバイトの中心を金型ロールに断続的に押し当て、光学突起部に対応する部分を作製することができる方法である。
【0052】
次にサンドブラスト方式は金型表面に直接ガラスビーズなどを吹きつけ、金型表面に凹凸をつける方法である。またビーズ分散方式は、ガラスビーズを平面状に密に充填させたシートから逆版を作製する方法である。
金型ロールの作製方法は凹凸形状や凹凸の密度、また金型ロールの材料等により適する成形方法が異なるため、求められる表面状態により適宜選択される。金型ロールの作製方法は一方式をのみを採用する必要はなく、2方式以上を採用し作製しても良い。また上記以外の作製方法により作製しても良い。
【0053】
また、これらの光学シート12の入射面および出射面、またはその両方にハードコートや帯電防止層などの付与層があっても良い。ハードコート層は主に光学シート表面の傷つき防止効果を目的として付与されることが多い。しかし特にハードコート層を出射面、もしくは入射面のどちらか一方に設けた場合、線膨張率が異なるために反り等が発生しやすい。特に筐体内では温度差が大きく、反りが発生しやすいため環境特性を充分考慮する必要がある。
【実施例1】
【0054】
以下、実施例について説明する。
(実験1:光学シートの成形性とたわみ量の評価)
ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂とを積層してなる光学シート12を作成した。そして、ポリカーボネート樹脂単層の光学シート、およびアクリル樹脂単層の光学シートと比較した。
【0055】
割れ難さの評価はシート成形性で判断した。シート成形性はシート作成時に現在の液晶テレビの主流である46インチ程度(幅方向1000mm、長さ方向800mm)以上のサイズで割れがなく成形可能かどうかで判断した。また光学シートのたわみ量はプラスチックのヒートサグ試験方法(JIS K7195)により評価した。たわみ量の評価としては現在使われている住友化学製プリズムシートBEFIIIと比較し、たわみ量が同等かそれ以下ではOK(○)、それ以上ではNG(×)とした。
光学シートの厚みは0.05mmから1.0mmまで各種作成した。またこのときの光学シートの出射面の光学要素形状はピッチ30μm、高さ15μmの頂角90°の三角形柱状プリズムレンズ形状であり、入射面は両方ともサンドブラストによるマット形状を付与し、表面に微小な凹凸形状が付いている。
【0056】
(実験1:光学シートの製造方法)
切削方式により金型ロールに頂角が90度の三角形柱状プリズム形状に対応する溝を形成した。精密切削機に金型ロールをセットし、先端にプリズム形状を有するダイヤモンドバイトで切り込むことにより、下地表面に頂角90度のプリズム形状を有する光学シート12を成形するための金型ロールを作製した。
また、出射面用と入射面用としてマットロールを作製した。金型ロールにダイヤモンドビーズを数回吹きつけ、微小凹凸を有する光学シートを成型するための金型ロールを作製した。
【0057】
実験1の光学シートは押出法により作製した。図5に押出機の概略図を示す。
この金型ロールを押出機35に近接して形成ロール36として配置した。熱可塑性ポリカーボネート樹脂を溶融し、押出機35によって成型し、当該熱可塑性ポリカーボネート樹脂シートが冷却されて硬化する前に上金型形成ロール36によってそれぞれ成型し、出射面には頂角が90度のプリズム形状を有するレンズシートをそれぞれ得た。また表面に微小凹凸が形成されている拡散シートの場合は、出射面形状に対応する微小凹凸を有する金型ロールを形成ロール36として配置し、作製した。
【0058】
実験1の光学シートの作成において熱可塑性ポリカーボネート樹脂はすべて帝人化成(株)製パンライトを使用し押出方式により作製している。本発明で使用した熱可塑性ポリカーボネート樹脂の弾性率Eは2400MPaである。一方、実験1の光学シートの作成において熱可塑性アクリル樹脂はすべて三菱レイヨン製アクリペットを使用しており、この樹脂の弾性率は3400MPaである。
【0059】
(実験1:評価結果)
実験1の評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
ポリカーボネート(PC)樹脂の単層の光学シートの場合、ポリカーボネート樹脂の割れにくいという特徴から、厚みが0.05mm〜1.0mでの光学シートを作成することができた。しかしシートの剛性が弱く、ヒートサグ試験を実施したところ、バックライトユニットに搭載したときに充分に環境特性を有するたわみ量を満たすのは厚みが0.8mm以上であった。
【0062】
一方、アクリル(PMMA)樹脂の場合、単層では特に厚みが薄いシートの成形性が悪く、0.8mm未満は光学シートを得ることができなかった。しかし、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂からなる複層構成の光学シートは、0.1mmの厚みからのシーティング加工が可能であり、さらにたわみ量も小さく、0.2mm以上の厚みで環境特性に耐え得る光学シートをえることが可能であることが判明した。
【0063】
(実験2:曲げ弾性率の異なる樹脂の検証)
材料の異なる樹脂を2層からなる複層で押出し、曲げ弾性率の差による割れ難さ(成形性)とたわみの検証を実施した。樹脂は2種のうち1種は帝ポリカーボネート樹脂とし、もう1層の樹脂層を変化させた。今回の実験ではアクリル樹脂のほかに、PBT樹脂、PET樹脂、PS樹脂を使用している。ポリカーボネート樹脂は帝人化成(株)製を使用し、この樹脂の曲げ弾性率は2400MPaである。またアクリル樹脂は三菱レイヨン製アクリペットを使用し、この樹脂の曲げ弾性率は3150MPaである。またPBT樹脂は東レ製トレコンを使用し、この樹脂の曲げ弾性率は2500MPaである。またPS樹脂はPSジャパン製GPPSを使用し、この樹脂の曲げ弾性率は3300MPaである。またPET樹脂は帝人化成PET樹脂を使用し、この樹脂の曲げ弾性率は2000MPaである。
【0064】
(実験2:光学シートの製造方法)
実験1と同様である。
(実験2:実験結果)
実験2の評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
ここでPC樹脂とPMMA樹脂との積層構造では、成形性が改善され、且つたわみ量も小さい光学シートを得ることができた。また同様にPC樹脂とPS樹脂についても成形性が改善され、光学シートの薄膜化が可能となり、且つたわみ量も小さい光学シートを得ることができた。一方PC樹脂とPBT樹脂との積層構造、またPC樹脂とPET樹脂との積層構造は、PC樹脂、PBT樹脂、PET樹脂の曲げ弾性率が比較的近いため、PC樹脂の割れにくい特徴は維持しているが、たわみ量が大きく、光学シートの充分な剛性が得られず目標の信頼性が得られなかった。
【0067】
(実験3:線膨張率の違いによる反りの検証)
2層、および3層の複層構成からなる光学シートを各種作成し、光学シートの反りを検証した。厚みはすべて0.4mmとした。押出工程により作成した光学シートを1000mm×800mmの長方形に切り出し、端部の床面からの高さを反り量として測定した。反りは平面上に光学シートを設置し、60℃95%の環境下に24時間放置し、その後の反り量を測定した。反りは2.0mm以下の場合はOK(○)、2.0mmより大きい場合はNG(×)と判定した。それぞれの樹脂の線膨張率は次の通りである。PC樹脂:6.8×10−5[/℃]、PET樹脂:6.5×10−5[/℃]、PMMA樹脂:7.5×10−5[/℃]、ABS樹脂:13×10−5[/℃]、PMP樹脂:12×10−5[/℃]である。
【0068】
(実験3:光学シートの製造方法)
実験1と同様である。
(実験3:実験結果)
評価結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3に示した通り、ABS樹脂とPC樹脂、PMP樹脂とPC樹脂との2層構造は線膨張率の差が大きく、反り量が大きいためNG(×)だった。入射面の樹脂と出射面の樹脂が5.0×10−5[/℃]以下の3層構造の光学シートは反り量が小さく、反りについての環境特性はOKだった。
【符号の説明】
【0071】
1、30…ディスプレイ装置
2…バックライトユニット
3…液晶パネル
4…光源
5…反射板
6…ランプハウス
7…拡散板
9…偏光板
10…液晶素子
12…光学シート
21…光学要素
22…入射面側樹脂層
23…出射面側樹脂層
35…押出機
36…金型形成ロール
37…金型押圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材の少なくとも片面に、光学要素を構成する凹凸形状を形成した光学シートであって、
前記透光性基材は、2種以上の異なる樹脂を積層してなる複数の樹脂層から構成され、前記複数の樹脂層のうち、最も曲げ弾性率が高い樹脂層と、最も曲げ弾性率が低い樹脂層との曲げ弾性率の差が500[MPa]以上であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記複数の樹脂層のうち、最も入射面側に積層されている樹脂層の線膨張係数と、最も出射面側に積層されている樹脂層の線膨張係数との差が5×10−5[/℃]以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記複数の樹脂層は3層以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記複数の樹脂層のうち、最も入射面側に積層されている樹脂層と、最も出射側に積層されている樹脂層とは同じ樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の光学シート。
【請求項5】
最も入射面側に積層されている樹脂層と最も出射面側に積層されている樹脂層は、その内部に積層されているその他の樹脂層よりも耐熱温度が高いことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記光学シートは、共押出工程で作製されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項7】
表示画像を規定する画像表示素子の背面側に、少なくとも光源と前記請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した光学シートとを備えることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項8】
前記光源が冷陰極管、LED、ELもしくは半導体レーザーであることを特徴とする請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項9】
画素単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する画像表示素子と、請求項7又は請求項8に記載されたバックライトユニットとを備えることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−93647(P2012−93647A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242613(P2010−242613)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】