説明

光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器

【課題】内部気密性を良好に維持できる光学フィルターデバイス、及び光学モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】光学フィルターデバイス600は、固定基板51、可動基板52、固定反射膜、及び可動反射膜を備えた波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を内部に収納する筐体601と、を具備する。筐体601は、ベース基板610と、当該ベース基板610に接合され、当該ベース基板610との間に内部空間650を形成するリッド620と、リッド620に設けられた光通過孔621を閉塞するリッド側ガラス基板640とを備える。そして、リッド側ガラス基板640は、基板端縁641が、光通過孔621の外周縁よりも外側に位置し、光通過孔621の外周縁から基板端縁641までの領域が、リッド620に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した干渉フィルターが知られている。また、このような干渉フィルターを筐体内に収納した光学フィルターデバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の光学フィルターデバイスは、板状の台座、及び円筒状のキャップを有するパッケージ(筐体)を備えている。この筐体は、台座の周縁部分と、キャップの円筒一端部とが溶接または接着されて接続されており、台座部とギャップとの間に、干渉フィルターを収納する空間が設けられる。また、キャップは、台座部に対向する上面に孔が設けられ、この孔に、光を通過させる窓部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−70163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1には、窓部を設ける方法について、キャップの上面に設けられた孔に窓部が嵌め込まれた構成が開示されている(図6等)が、その他の具体的な構成は開示されていない。一方、特許文献1の図6に開示された構成では、窓部と孔との間の気密性を十分に確保することができないという課題がある。例えば缶パッケージ内部を減圧状態に維持する場合、窓部と孔との間の隙間から空気が侵入し、減圧状態を維持できないことがある。また、例えば窓部と孔との間の隙間から、例えば帯電粒子や水粒子等の異物が侵入する可能性も高くなる。
【0006】
本発明は、内部気密性を良好に維持できる光学フィルターデバイス、及び光学モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学フィルターデバイスは、第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、前記干渉フィルターを収納する筐体と、を具備し、前記筐体は、ベース基板と、前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合されたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、光学フィルターデバイスは、干渉フィルターと、当該干渉フィルターを収納する筐体を備えている。そして、筐体は、ベース基板と、リッドとを備え、ベース基板とリッドとが接合されることで、波長可変干渉フィルターを収納する内部空間が構成される。
また、ベース基板及びリッドの少なくともいずれか一方には、干渉フィルターに光を導くための光通過孔が設けられている。ここで、干渉フィルターが多重干渉により取り出された光を光入射側に反射させる反射型フィルターである場合は、光通過孔は、ベース基板及びリッドのうち、いずれか一方にのみ設けられていればよい。一方、干渉フィルターが多重干渉により取り出された光を光入射側とは反対側に透過させる透過型フィルターである場合は、ベース基板及びリッドの双方に光通過孔を設ける。
そして、本発明では、透光基板がこの光通過孔を覆うことで、前記内部空間の気密性が維持される。ここで、透光基板は、光通過孔より大きく形成され、透光基板の基板端縁から光通過孔の外周縁までの領域が、光通過孔が設けられるベース基板又はリッドに接合される。つまり、本発明において、「透光基板がこの光通過孔を覆う」とは、前記平面視において、透光基板が光通過孔に重なって設けられ、かつ、光通過孔の周囲が当該透光基板に接している状態となる。このため、透光基板と光通過孔との間には、隙間が生じず、内部空間の気密性が確保された状態となる。
このような構成では、例えば光通過孔に透光基板を嵌め込む構成等と比べて、透光基板の接合領域が大きく、隙間が生じにくくなり、光学フィルターデバイスの内部気密性を良好に維持できる。したがって、筐体内部への水粒子や、帯電粒子の侵入を確実に防止できる。これにより、例えば水粒子によって第一反射膜や第二反射膜が劣化する不都合や、帯電粒子により第一反射膜や第二反射膜が帯電し、クーロン力の影響により反射膜間ギャップが変動する不都合を防止することができる。
【0009】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記リッドは、前記ベース基板に接合されるリッド接合部と、前記リッド接合部に連続し、前記ベース基板に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、前記側壁部に連続し、前記ベース基板に対向する天面部と、を備えることが好ましい。
本発明では、リッドのリッド接合部がベース基板に接合され、このリッド接合部に連続して、ベース基板の基板面に対して交差する方向に立ち上がる側壁部が設けられる。つまり、側壁部は、リッド接合部から、ベース基板から離れる方向に延出される。そして、この側壁部に連続して、ベース基板に対向する天面部が設けられる。このような本発明によれば、ベース基板にリッドを接合することで、リッドの側壁部、天面部、及びベース基板により前記内部空間を形成することができる。
【0010】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記透光基板は、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板又は前記リッドの前記干渉フィルターに対向する面とは反対の外面側に接合されていることが好ましい。
透光基板が内部空間側に接合される場合、内部空間の体積が透光基板の厚み寸法分だけ圧迫されることとなり、干渉フィルターの配置スペースが狭くなる。この場合、干渉フィルターの配置スペースを確保するために、筐体を大型化する必要が生じる場合がある。これに対して、本発明では、透光基板がベース基板又はリッドの内部空間とは反対側となる外面側に接合されている。このため、内部空間の空間体積を十分に確保でき、筐体の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて前記光通過孔は、前記ベース基板及び前記リッドの双方に設けられ、前記透光基板は、2つの前記光通過孔に対してそれぞれ設けられていることが好ましい。
本発明では、特に、干渉フィルターとして、光入射側とは反対側に多重干渉により取り出された光を透過させる透過型フィルターを用いる場合に適用することができる。このような光学フィルターデバイスでは、干渉フィルターを透過した光を、光通過孔からそのまま外部に射出することができる。
また、反射型フィルターを用いる場合、光入射側に反射された光を検出ための検出部を光入射側に配置する必要があり、入射光が検出部に入射してしまう不都合等が考えられる。これに対して、透過型フィルターを用い、上述のように、ベース基板及びリッドの双方に光通過孔を設ける構成では、検出部での入射光の検出を抑制でき、より正確な検出処理を実施することができる。
【0012】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記内部空間の気圧は、大気圧よりも低いことが好ましい。
本発明によれば、内部空間が減圧されている。このため、例えば干渉フィルターが、第一基板及び第二基板のうちいずれか一方を撓ませることで、反射膜間ギャップを変更可能な構成である場合、基板を撓ませる際の空気抵抗が低減されて、応答性を良好にできる。また、例えば、温度変化が大きい環境下で光学フィルターデバイスを利用する場合でも、内部空間の圧力の増大による透光基板の変形や干渉フィルターの変形を抑制できる。
【0013】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記光通過孔の外周縁上の二点を結ぶ直線と、前記透光基板の基板端縁との2交点を基板端点とし、前記光通過孔の外周縁上の二点間の距離を「d」、前記基板端点間の距離を「a」とした場合、a/d≧1.6の関係を満たしていることが好ましい。
【0014】
内部空間が減圧されている場合、特に真空状態や真空に近い状態では、透光基板は、当該透光基板を内部空間側に撓ませようとする応力を受ける。光入射側の光通過孔に対して設けられた透光基板では、上記のような応力により撓みが発生すると、入射光は、透光基板で屈折され、放射状に拡がって干渉フィルターに入射する。この場合、干渉フィルターに入射する光の角度によって、反射膜間ギャップで多重干渉する光の光路長が変化する。このため、干渉フィルターにより取り出される光として、目的波長以外の光成分が多く含まれることとなり、半値幅が拡がって分解能が低下するという課題がある。
これに対して、本発明では、光通過孔の外周縁上の二点間の距離「d」と、透光基板における基板端点間の距離「a」とが、a/d≧1.6を満たすように、光通過孔及び透光基板のサイズが設定されている。
ここで、a/d<1.6となる場合、透光基板の湾曲量が大きくなり、干渉フィルターによる分解能が著しく低下してしまう。一方、本発明のように、a/d≧1.6の関係を満たす場合、透光基板の湾曲量が最小限に抑えられ、干渉フィルターの分解能の低下を抑制することができる。特にa/d≧2以上となる場合では、透光基板の撓みがほぼなくなり、干渉フィルターの分解能低下をより確実に防止することができる。
【0015】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記干渉フィルターは、電極部を備え、前記ベース基板は、前記リッドに対向するリッド対向面に設けられ前記電極部と電気的に接続される内面端子部と、前記リッド対向面とは反対側のベース外側面に設けられ前記内面端子部と電気的に接続される外面端子部と、を備えていることが好ましい。
【0016】
なお、電極部としては、例えば、反射膜間ギャップを変更させるための電力駆動アクチュエーターに電力を供給するための電極や、反射膜間ギャップの大きさを測定するための静電容量電極の電荷を検出するための電極等が挙げられる。
本発明によれば、ベース基板のリッド対向面上に設けられた内面端子部と、ベース外側面上に設けられた外面端子部とが電気的に接続され、干渉フィルターの電極部と内面端子部とが電気的に接続されている。このため、ベース基板のベース外側面側に形成された外面端子部に対して配線を実施することで、内部空間に収納された干渉フィルターに対して電気信号を送受信することができる。
また、ベース基板の一面側であるベース外側面に外側端子部を纏められるので、光学フィルターデバイスに対する配線作業を簡略化できる。
【0017】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記ベース基板は、前記リッド対向面から前記ベース外側面に亘って設けられる貫通孔と、前記貫通孔に充填される導電性部材と、を備え、前記内面端子部及び前記外面端子部は、前記導電性部材を介して電気的に接続されていることが好ましい。
本発明では、貫通孔に導電性部材が充填されることで、内部空間の気密性を維持したまま内面端子部と外面端子部とを接続することができる。この時、導電性部材を直接内面端子部及び外面端子部に接触接続させることで、配線信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記ベース基板及び前記リッドの少なくともいずれか一方には、前記ベース基板及び前記リッドの少なくともいずれか一方を貫通する1又は複数の孔部と、前記孔部を封止する封止部材と、が設けられたことが好ましい。
本発明では、ベース基板及びリッドには、孔部が設けられているので、透光基板とリッドとの接合を実施した後に、この孔部から、内部空間の空気を抜くことで、内部空間の気圧を大気圧よりも低い状態に設定することができる。したがって、透光基板とリッドとの接合を減圧環境下や真空環境下で実施する必要がなく、例えば半田付け等、接合作業を人が実施する場合、作業性を向上させることができる。
【0019】
本発明の光学フィルターデバイスにおいて、前記干渉フィルターは、前記光通過孔を通過した光が入射する光入射面に、環状の非透光性部材を備えることが好ましい。
本発明では、非透光性部材の環状に形成されているため、その内周縁をアパーチャとして機能させることができる。これにより光通過孔から光学フィルターデバイスに入射する光の角度規定ができ、迷光を防止して精度の高い分光特性を得ることができる。また、干渉フィルターに非透光性部材を設けることで、前記有効範囲の第一反射膜や第二反射膜とのアライメント調整精度も高めることができる。
【0020】
本発明の光学モジュールは、第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、前記干渉フィルターを収納する筐体と、前記干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、を具備し、前記筐体は、ベース基板と、前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくとも一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合されたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、上記発明と同様に、筐体内部の内部空間の気密性が良好であり、水粒子や帯電粒子の侵入を防止できる、したがって、これら粒子の侵入による反射膜の劣化等がなく、干渉フィルターにより目的波長の光を高分解能で取り出すことができ、干渉フィルターと検出部とを一体で制御することにより、正確な光量検出を実施することができる。
【0022】
本発明の電子機器は、第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、前記干渉フィルターを収納する筐体と、を具備し、前記筐体は、ベース基板と、前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくとも一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合されたことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、上記発明と同様に、筐体内部の内部空間の気密性が良好であり、水粒子や帯電粒子の侵入を防止できる。したがって、これら粒子の侵入による反射膜の劣化等がなく、干渉フィルターにより目的波長の光を高分解能で取り出すことができ、取り出された光により、精度の高い電子処理(例えば色度測定や成分分析等)を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る第一実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す斜視図。
【図2】第一実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図3】第一実施形態の光学フィルターデバイスに収納された干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図4】第一実施形態の干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図5】リッド側ガラス基板が真空応力により撓んだ場合における入射光の経路を示す図。
【図6】(A)リッド側ガラス基板のサイズ設定を説明するための図。(B)光通過孔の形状が楕円の場合のリッド側ガラス基板のサイズ設定を説明するための図。
【図7】光学フィルターデバイスの製造工程を示す工程図。
【図8】第二実施形態における測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図9】変形例の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図10】本発明の光学フィルターデバイスを備えたガス検出装置を示す概略図。
【図11】図10のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図12】本発明の光学フィルターデバイスを備えた食物分析装置の概略構成を示す図。
【図13】本発明の光学フィルターデバイスを備えた分光カメラの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
[1.光学フィルターデバイスの構成]
図1は、本発明に係る第一実施形態の光学フィルターデバイス600の概略構成を示す斜視図である。図2は、光学フィルターデバイス600の断面図である。
光学フィルターデバイス600は、入射した検査対象光から、所定の目的波長の光を取り出して射出させる装置であり、筐体601と、筐体601の内部に収納される波長可変干渉フィルター5(図2参照)を備えている。このような光学フィルターデバイス600は、例えば測色センサー等の光学モジュールや、測色装置やガス分析装置等の電子機器に組み込むことができる。なお、光学フィルターデバイス600を備えた光学モジュールや電子機器の構成については、後述の第二実施形態において説明する。
【0026】
[2.波長可変干渉フィルターの構成]
波長可変干渉フィルター5は、本発明の干渉フィルターを構成する。図3は、光学フィルターデバイス600に設けられた波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図であり、図4は、図3におけるIV−IV線を断面した際の波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、例えば矩形板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、本発明の第一基板である固定基板51、および本発明の第二基板である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53(第一接合膜531及び第二接合膜532)により接合されることで、一体的に構成されている。
なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0027】
固定基板51には、本発明の第一反射膜を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜を構成する可動反射膜55が設けられている。これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1を介して対向配置されている。そして、波長可変干渉フィルター5には、この反射膜間ギャップG1の距離(寸法)を調整するのに用いられる静電アクチュエーター56が設けられている。この静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた固定電極561と、可動基板52に設けられた可動電極562とにより構成されている。これらの固定電極561,可動電極562は、電極間ギャップG2(G2>G1)を介して対向する。ここで、これらの電極561,562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。
なお、本実施形態では、反射膜間ギャップG1が電極間ギャップG2よりも小さく形成される構成を例示するが、例えば波長可変干渉フィルター5により透過させる波長域によっては、反射膜間ギャップG1を電極間ギャップG2よりも大きく形成してもよい。
【0028】
フィルター平面視において、固定基板51の一辺側(例えば、図3における頂点C1−頂点C2間の辺)は、可動基板52よりも外側に突出する。この突出部分のうち、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た際に露出する面は、第一電装面514を構成する。
また、フィルター平面視において、可動基板52の辺のうち、第一電装面514に対向する一辺側(頂点C3−頂点C4間の辺)は、固定基板51よりも外側に突出する。この突出部分のうち、波長可変干渉フィルター5を固定基板51側から見た際に露出する面は、第二電装面524を構成する。
【0029】
(2−1.固定基板の構成)
固定基板51は、厚みが例えば500μmに形成されたガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図4に示すように、固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511および反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
【0030】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、波長可変干渉フィルター5の中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成されている。ここで、電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、第一電装面514及び第二電装面524に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0031】
電極配置溝511の電極設置面511Aには、固定電極561が設けられている。この固定電極561は、電極設置面511Aのうち、後述する可動部521の可動電極562に対向する領域に設けられている。また、固定電極561上に、固定電極561及び可動電極562の間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。
そして、固定基板51には、固定電極561の外周縁から、電極引出溝511Bを通り、第一電装面514まで延出する固定引出電極563が設けられている。この固定引出電極563の延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、第一電装面514において固定電極パッド563Pを構成する。
なお、本実施形態では、電極設置面511Aに1つの固定電極561が設けられる構成を示すが、例えば、平面中心点Oを中心とした同心円となる2つの電極が設けられる構成(二重電極構成)などとしてもよい。
【0032】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aを備えている。
この反射膜設置部512には、図4に示すように、固定反射膜54が設置されている。この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。さらに、誘電体多層膜上に金属膜(又は合金膜)を積層した反射膜や、金属膜(又は合金膜)上に誘電体多層膜を積層した反射膜、単層の屈折層(TiOやSiO等)と金属膜(又は合金膜)とを積層した反射膜などを用いてもよい。
【0033】
また、固定基板51の光入射面51A(固定反射膜54が設けられない面)には、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
更に、固定基板51の光入射面51Aには、例えばCr等により形成される非透光性部材515が設けられる。この非透光性部材515は、環状に形成され、好ましくは円環状に形成される。そして、非透光性部材515の環内周径は、固定反射膜54及び可動反射膜55により光干渉させるための有効径に設定されている。これにより、非透光性部材515は、光学フィルターデバイス600に入射した入射光を絞るアパーチャーとして機能する。
【0034】
そして、固定基板51の可動基板52に対向する面のうち、エッチングにより、電極配置溝511、反射膜設置部512、及び電極引出溝511Bが形成されない面は、第一接合部513を構成する。この第一接合部513には、第一接合膜531が設けられ、この第一接合膜531が、可動基板52に設けられた第二接合膜532に接合されることで、上述したように、固定基板51及び可動基板52が接合される。
【0035】
(2−2.可動基板の構成)
可動基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材を加工することで形成されている。
具体的には、可動基板52は、図3に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521の外側に設けられ、可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
【0036】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置面512Aの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562及び可動反射膜55が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0037】
可動電極562は、電極間ギャップG2を介して固定電極561に対向し、固定電極561と同一形状となる環状に形成されている。また、可動基板52には、可動電極562の外周縁から第二電装面524に向かって延出する可動引出電極564を備えている。この可動引出電極564の延出先端部(可動基板52の頂点C1に位置する部分)は、第二電装面524において可動電極パッド564Pを構成する。
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
【0038】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。
このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が起こらない。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも生じず、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0039】
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面は、第一接合部513に対向する第二接合部523を備えている。そして、この第二接合部523には、第二接合膜532が設けられ、上述したように、第二接合膜532が第一接合膜531に接合されることで、固定基板51及び可動基板52が接合されている。
【0040】
[3.筐体の構成]
図1及び図2に戻り、筐体601は、ベース基板610と、リッド620と、ベース側ガラス基板630(透光基板)と、リッド側ガラス基板640(透光基板)と、を備える。
【0041】
ベース基板610は、例えば単層セラミック基板により構成される。このベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の可動基板52が設置される。ベース基板610への可動基板52の設置としては、例えば接着層等を介して配置されるものであってもよく、他の固定部材等に嵌合等されることで配置されるものであってもよい。
ベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の反射膜(固定反射膜54,可動反射膜55)に対向する領域に、光通過孔611が開口形成されている。
【0042】
このベース基板610のリッド620に対向するベース内側面612(リッド対向面)には、波長可変干渉フィルター5の第一電装面514、第二電装面524上の各電極パッド563P,564Pと接続される内側端子部615が設けられている。なお、各電極パッド563P,564Pと内側端子部615との接続は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)615Aを用いることができ、例えばAgペースト、ACF(Anisotropic Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)等により接合する。なお、内部空間650を真空状態に維持するためにデガス(ガスの放出)が少ないAgペーストを用いることが好ましい。なお、FPC615Aによる接続に限られず、例えばワイヤーボンディング等による配線接続を実施してもよい。
また、ベース基板610は、各内側端子部615が設けられる位置に対応して、貫通孔614が形成されており、各内側端子部615は、貫通孔614を介して、ベース基板610のベース内側面612とは反対側のベース外側面613に設けられた外側端子部616に接続されている。ここで、貫通孔614には、内側端子部615及び外側端子部616を接続する金属部材(例えばAgペースト等)が充填され、筐体601の内部空間650の気密性が維持される。
そして、ベース基板610の外周部には、リッド620に接合されるベース接合部617が設けられている。
【0043】
リッド620は、図1及び図2に示すように、ベース基板610のベース接合部617に接合されるリッド接合部624と、リッド接合部624から連続し、ベース基板610から離れる方向に立ち上がる側壁部625と、側壁部625から連続し、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側を覆う天面部626とを備えている。このリッド620は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド620は、リッド接合部624と、ベース基板610のベース接合部617とが、接合されることで、ベース基板610に密着接合されている。
この接合方法としては、例えば、レーザー溶着の他、銀ロウ等を用いた半田付け、共晶合金層を用いた封着、低融点ガラスを用いた溶着、ガラス付着、ガラスフリット接合、エポキシ樹脂による接着等が挙げられる。これらの接合方法は、ベース基板610及びリッド620の素材や、接合環境等により、適宜選択することができる。
本実施形態では、ベース基板610のベース接合部617上に、例えばNiやAu等により構成された接合用パターン617Aを形成し、接合用パターン617A及びリッド接合部624に対して、高出力レーザー(例えばYAGレーザー等)を照射してレーザー接合する。
【0044】
リッド620の天面部626は、ベース基板610に対して平行となる。この天面部626には、波長可変干渉フィルター5の各反射膜54,55に対向する領域に、光通過孔621が開口形成されている。
ここで、本実施形態では、リッド620の光通過孔621から光が入射し、波長可変干渉フィルター5により取り出された光はベース基板610の光通過孔611からか射出される。このような構成では、光通過孔621から入射された光のうち、波長可変干渉フィルター5の光入射面51Aに設けられた非透光性部材515の有効径の光のみが固定反射膜54、可動反射膜55に入射する。特に、波長可変干渉フィルター5の各基板51,52は、エッチングによる形状形成が行われ、エッチング部分はサイドエッチングの影響により曲面部が形成される。このような曲面部に光が入射すると、当該光が迷光となって光通過孔611から射出される場合がある。これに対して、本実施形態では、非透光性部材515によりこのような迷光の発生を防止することができ、所望の目的波長の光を取り出すことが可能となる。
【0045】
ベース側ガラス基板630は、ベース基板610のベース外側面613側に、光通過孔611を覆って接合されるガラス基板である。ベース側ガラス基板630は、光通過孔611よりも大きいサイズに形成され、当該ベース側ガラス基板630の平面中心点Oが光通過孔611の平面中心点Oと一致するように配置される。なお、この平面中心点Oは、波長可変干渉フィルター5の平面中心点Oと一致し、固定反射膜54及び可動反射膜55、非透光性部材515の環内周縁の平面中心点Oと一致する。そして、ベース側ガラス基板630は、光学フィルターデバイス600をベース基板610(ベース側ガラス基板630)の厚み方向から見た平面視において、光通過孔611の外周縁611Aより外側の領域(外周縁611Aからベース側ガラス基板630の基板端縁631までの領域)がベース基板610に接合される。
同様に、リッド側ガラス基板640は、リッド620のベース基板610に対向する光通過孔621とは反対側のリッド内側面622側に、光通過孔621を覆って接合されるガラス基板である。リッド側ガラス基板640は、光通過孔621よりも大きいサイズに形成され、当該リッド側ガラス基板640の平面中心点Oが光通過孔621の平面中心点Oと一致するように配置される。そして、リッド側ガラス基板640は、光学フィルターデバイス600をベース基板610(リッド側ガラス基板640)の厚み方向から見た平面視において、光通過孔621の外周縁621Aより外側の領域(外周縁621Aからリッド側ガラス基板640の基板端縁641までの領域)がリッド620に接合される。
ベース基板610及びベース側ガラス基板630の接合、リッド620及びリッド側ガラス基板640の接合としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合を用いることができる。このようなガラスフリット接合では、接合部分に隙間が生じることがなく、また、デガス(ガス放出)の少ないガラスフリットを用いることで、内部空間650を真空状態に維持することができる。なお、ガラスフリット接合に限られず、低融点ガラスを用いた溶着、ガラス封着などによる接合を行ってもよい。また、内部空間650の真空状態の維持には適さないが、例えば内部空間650への異物の侵入を抑制する目的のみであれば、エポキシ樹脂等による接着を行ってもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態の光学フィルターデバイス600では、筐体601は、ベース基板610及びリッド620の接合、ベース基板610及びベース側ガラス基板630の接合、リッド620及びリッド側ガラス基板640の接合により、筐体601の内部空間650が気密に維持されている。そして、本実施形態では、内部空間650は、真空状態に維持されている。
このように、内部空間650を真空状態に維持することで、波長可変干渉フィルター5の可動部521を移動させる際に、空気抵抗が発生せず、応答性を良好にすることができる。
【0047】
[ベース側ガラス基板630及びリッド側ガラス基板640のサイズ設定]
上述のように、内部空間650を真空状態にすると、ベース側ガラス基板630やリッド側ガラス基板640を内部空間650側に撓ませようとする応力が発生する。
図5は、リッド側ガラス基板640が真空応力により撓んだ場合における入射光の経路を示す図である。
図5に示すように、特に光入射側のリッド側ガラス基板640が応力により曲面状に撓むと、入射光がリッド側ガラス基板640を通過する際に屈折し、波長可変干渉フィルター5への光の進入角度が変化してしまう。この場合、波長可変干渉フィルター5により取り出される光に、目的波長以外の光成分が多く含まれることとなり、分解能が低下してしまうという課題がある。
これに対して、本実施形態では、以下のように、ベース側ガラス基板630及びリッド側ガラス基板640のサイズを決定している。
【0048】
図6(A)は、リッド側ガラス基板640のサイズ設定を説明するための図である。なお、ここでは、リッド側ガラス基板640について説明するが、ベース側ガラス基板630においても同様のサイズに設定されることが好ましい。
図6(A)において、リッド側ガラス基板640の外周縁上の光源装置2点をそれぞれA,Bとし、点A,Bを結ぶ直線と、リッド側ガラス基板640の基板端縁641との交点をC,Dとする。
ここで、AB間の距離を「d」、C,D間の距離を「a」とし、距離「a」を変化させて、波長可変干渉フィルター5の光学特性への影響を判定する実験を行ったところ、以下の表1の結果が得られた。
【0049】
【表1】

【0050】
波長可変干渉フィルター5の光学特性への影響の判定では、通常の分光測定において、測定結果に影響が出ない程度の分解能であるか否かを判定し、具体的には、波長可変干渉フィルター5により得られた分光スペクトルの半値幅が基準に対して10%以上である場合「問題あり」、半値幅が基準に対して10%〜5%の範囲である場合において「許容範囲」、半値幅が基準に対して5%以下である場合において、「問題なし」とした。
上記実験において、表1に示すように、「a/d」の値が1.6を境にし、1.6未満の場合では、リッド側ガラス基板640の最大撓み量が大きく、光学特性への影響が大きく、分解能が著しく低下する。
一方、「a/d」の値が1.6以上の場合、光学特性への影響が小さく、特に、「a/d」の値が2.0を超える場合、リッド側ガラス基板640の撓みによる光学特性への影響が無視できる程度になる。
【0051】
本実施形態では、上記のような実験結果に基づいて、「a/d」の値が2.0を満たすよう、光通過孔611,621、ベース側ガラス基板630、及びリッド側ガラス基板640のサイズが設定されている。このため、内部空間650を真空状態にした場合でも、リッド側ガラス基板640の撓みが無視できる程度に小さく、波長可変干渉フィルター5により、高い分解能で目的波長の光を取り出すことが可能となる。
【0052】
なお、上記例では、平面視において、光通過孔611,621が円形である場合の例を示したが、他の形状である場合も同様である。例えば、図6(B)に示すように、光通過孔611,621の孔形状が楕円である場合、リッド側ガラス基板640(ベース側ガラス基板630)は、楕円の長径方向に対応したリッド側ガラス基板640(ベース側ガラス基板630)の寸法、短径方向に対応したリッド側ガラス基板640(ベース側ガラス基板630)の寸法をそれぞれ「a/d≧1.6」を満たす値に設定すればよい(図6(B)には、短径方向の寸法のみ記載)。
【0053】
また、本実施形態では、光通過孔611の平面中心点O及びベース側ガラス基板630の平面中心点Oを一致させ、光通過孔621の平面中心点O、及びリッド側ガラス基板640の平面中心点Oを一致させたが、これに限定されない。例えばリッド側ガラス基板640が光通過孔621の平面中心点Oに対して偏心して接合されてもよい。ただし、この場合、光通過孔611の外周縁611Aからリッド側ガラス基板640の基板端縁641までの距離が近くなると、リッド側ガラス基板640が撓む恐れがある。この場合では、外周縁611Aから基板端縁641までの距離(はみ出し量)が「0.3d」以上となるようリッド側ガラス基板640のサイズを設定すればよい。
【0054】
[光学フィルターデバイスの製造方法]
次に、上述したような光学フィルターデバイス600の製造方法について図面に基づいて説明する。
図7は、光学フィルターデバイス600を製造する成功工程を示す工程図である。
光学フィルターデバイス600の製造では、まず、光学フィルターデバイス600を構成する波長可変干渉フィルター5を製造するフィルター準備工程(S1)、ベース基板準備工程(S2)、リッド準備工程(S3)をそれぞれ実施する。
【0055】
(フィルター準備工程)
S1のフィルター準備工程では、まず、波長可変干渉フィルター5を製造するフィルター形成工程を実施する(S11)。
このS11では、固定基板51及び可動基板52を適宜エッチング処理等により形成する。そして、固定基板51に対しては、固定電極561及び固定引出電極563を成膜した後、非透光性部材515を成膜し、その後、固定反射膜54を成膜する。また、可動基板52に対しては、可動電極562を成膜した後、可動反射膜55を成膜する。
この後、固定基板51及び可動基板52を、接合膜53を介して接合することで波長可変干渉フィルター5が得られる。
【0056】
この後、S11により得られた波長可変干渉フィルター5の固定電極パッド563P,可動電極パッド564Pに対して、FPC615Aを接続するFPC接続工程を実施する(S12)。FPC615Aと各電極パッド563P,564Pとの接続では、デガスが少ないAgペーストを用いる。
【0057】
(ベース基板準備工程)
S2のベース基板準備工程では、まず、ベース外形形成工程を実施する(S21)。このS21では、セラミック基板の形成素材であるシートを積層した焼成前基板を適宜切削等し、光通過孔611を有するベース基板610の形状を成形する。そして、焼成前基板を焼成することで、ベース基板610を形成する。
なお、焼成形成されたベース基板610に対して、例えばYAGレーザー等の高出力レーザーを利用した加工により、光通過孔611を形成してもよい。
次に、ベース基板610に貫通孔614を形成する貫通孔形成工程を実施する(S22)。このS22では、微細な貫通孔614を形成するために、例えばYAGレーザー等を用いたレーザー加工を実施する。また、形成した貫通孔614に、密着性が高い導電性部材を充填する。
【0058】
この後、ベース基板610に内側端子部615,外側端子部616を形成する配線形成工程を実施する(S23)。
このS23では、例えば、Ni/Au等の金属を用いたメッキ加工を実施して、貫通孔614及び内側端子部615を形成する。また、ベース接合部617及びリッド接合部624を、レーザー溶接により接合する場合では、ベース接合部617にNi等のメッキを施し、接合用パターン617Aを形成する。
【0059】
この後、ベース基板610に、光通過孔611を覆うベース側ガラス基板630を接合する光学窓接合工程を実施する(S24)。
S24では、まず、一辺の長さ「a」が、光通過孔611の孔径「d」に対して、a/d≧1.6を満たすガラス基板をベース側ガラス基板630として形成する。そして、ベース側ガラス基板630の平面中心と、光通過孔611の平面中心とが一致するようにアライメント調整を実施し、フリットガラスを用いたフリットガラス接合によりベース側ガラス基板630をベース基板610に接合する。
【0060】
(リッド準備工程)
S3のリッド準備工程では、まず、リッド620を形成するリッド形成工程を実施する(S31)。このS31では、コバール等により構成された金属基板をプレス加工して、光通過孔621を有するリッド620を形成する。
この後、リッド620に、光通過孔621を覆うリッド側ガラス基板640を接合する光学窓接合工程を実施する(S32)。
S32では、S24と同様に、一辺の長さ「a」が、光通過孔621の孔径「d」に対して、a/d≧1.6を満たすガラス基板をベース側ガラス基板630として形成する。そして、リッド側ガラス基板640の平面中心と、光通過孔621の平面中心とが一致するようにアライメント調整を実施し、フリットガラスを用いたフリットガラス接合によりリッド側ガラス基板640をリッド620に接合する。
【0061】
(デバイス組み立て工程)
次に、上記S1〜S3により得られた波長可変干渉フィルター5,ベース基板610,リッド620を接合して光学フィルターデバイス600を形成するデバイス組み立て工程を実施する(S4)。
このS4では、まず、ベース基板610に対して波長可変干渉フィルター5を固定するフィルター固定工程を実施する(S41)。このS41では、固定反射膜54,可動反射膜55の平面中心点Oが、光通過孔611の平面中心点Oに一致するようにアライメント調整を実施する。そして、例えば接着剤等を用いて、可動基板52の基板外周部525をベース基板610に接着固定する。
この後、配線接続工程を実施する(S42)。このS42では、S12により波長可変干渉フィルター5に接続されたFPC615Aの他端部を、ベース基板610の内側端子部615に貼り付けることで、内側端子部615と、固定電極パッド563P及び可動電極パッド564Pとを接続する。この接続においても、デガスの少ないAgペーストを用いることが好ましい。
【0062】
この後、ベース基板610及びリッド620を接合する接合工程を実施する(S43)。このS43では、例えば真空チャンバー装置等において、真空雰囲気に設定された環境下でベース基板610及びリッド620を重ね合わせ、ベース基板610及びリッド620を例えばYAGレーザー等を用いたレーザー接合により接合する。このようなレーザー接合では、接合部のみを局所的に高温化して接合するため、内部空間650の温度上昇を抑制できる。したがって、波長可変干渉フィルター5の各反射膜54,55が高温により劣化する不都合を防止することができる。
以上により、光学フィルターデバイス600が製造される。
【0063】
〔実施形態の作用効果〕
本実施形態では、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5と、当該波長可変干渉フィルター5を収納する筐体601とを備える。この筐体601は、ベース基板610と、ベース基板610に接合されるリッド620と、ベース基板610の光通過孔611を閉塞するベース側ガラス基板630と、リッド620の光通過孔621を閉塞するリッド側ガラス基板640とを備える。そして、ベース側ガラス基板630は、光通過孔611の外周縁611Aから、当該ベース側ガラス基板630の基板端縁631までの領域がベース基板610に接合される。同様に、リッド側ガラス基板640は、光通過孔621の外周縁621Aから、当該リッド側ガラス基板640の基板端縁641までの領域がリッド620に接合される。
このような構成では、例えば光通過孔611(光通過孔621)に対応した形状のガラス部材を、当該光通過孔611(光通過孔621)に嵌め込む構成に比べて、接合領域を大きくでき、接合強度及び、内部空間650の気密性を向上させることができる。したがって、光学フィルターデバイス600の内部に水粒子や帯電粒子等の異物の侵入を防止でき、これらの異物による波長可変干渉フィルター5の光学特性の低下(例えば分解能の低下等)を防止することができる。
【0064】
本実施形態では、ベース側ガラス基板630は、ベース基板610のベース外側面613に接合され、リッド側ガラス基板640は、リッド620のリッド外側面623に接合されている。
このため、例えばベース側ガラス基板630やリッド側ガラス基板640が筐体601の内部側に接合される構成に比べて、内部空間650の空間体積を大きくでき、波長可変干渉フィルター5の収納スペースを十分に確保することができる。したがって、例えば、波長可変干渉フィルター5の収納スペースの確保のために、ベース基板610やリッド620のサイズを大型化する必要がなく、光学フィルターデバイス600の小型化を図れる。
【0065】
本実施形態では、ベース基板610に波長可変干渉フィルター5を透過した光を通過する光通過孔611が設けられ、リッド620に波長可変干渉フィルター5に入射させる光が通過する光通過孔621が設けられる。
このように、ベース基板610及びリッド620の双方に光通過孔が設けられる構成では、波長可変干渉フィルター5として、多重干渉により取り出された目的波長の光を透過させる透過型フィルターを用いることができる。この場合、入射光とは反対側に目的波長の光が透過されるため、透過光に入射光が混ざる等の不都合を回避でき、目的波長の光として、半値幅が狭い高分解能な光を取り出すことができる。
【0066】
本実施形態では、筐体601の内部空間650は、真空状態に維持されている。また、波長可変干渉フィルター5は、固定電極561及び可動電極562に電圧を印加することで、可動部521が固定基板51側に移動して、反射膜間ギャップG1の大きさを変更可能となっている。
このような構成では、内部空間650が真空状態であるため、反射膜間ギャップG1も真空状態となっている。したがって、可動部521を移動させる際に空気抵抗が作用せず、固定電極561及び可動電極562間に電圧を印加した際の応答性を向上させることができる。このため、迅速に反射膜間ギャップG1を所望の大きさに設定することができ、例えば光学フィルターデバイス600を用いた測定処理等の各種処理を実施する場合に、迅速な処理を実施することができる。
【0067】
本実施形態では、光学フィルターデバイス600をベース基板610の厚み方向から見た平面視において、光通過孔611,621が円形状に形成され、リッド側ガラス基板640,ベース側ガラス基板630が正方形状に形成されている。そして、光通過孔611及び光通過孔621の孔径を「d」とし、ベース側ガラス基板630及びリッド側ガラス基板640の一辺の長さを「a」とした場合に、a/d≧1.6の関係を満たしている。
また、ベース側ガラス基板630,リッド側ガラス基板640は、平面中心点Oが光通過孔611,光通過孔621の平面中心点Oと一致するようにアライメント調整されて、それぞれベース基板610、リッド620に接合されている。すなわち、ベース側ガラス基板630の基板端縁631から光通過孔611の外周縁611Aまでの距離、リッド側ガラス基板640の基板端縁641から光通過孔621の外周縁621Aまでの距離は、0.3d以上の寸法に形成されている。
このような寸法のベース側ガラス基板630,リッド側ガラス基板640を用いることで、当該ベース側ガラス基板630,リッド側ガラス基板640が真空による応力による撓みを測定処理に影響が生じない程度に抑制することができる。したがって、波長可変干渉フィルター5の分解能の低下を抑制でき、所望の目的波長の光を精度よく取り出すことができる。
【0068】
本実施形態では、ベース基板610のベース内側面612に内側端子部615が設けられ、この内側端子部615は、ベース基板610のベース外側面613に設けられる外側端子部616に接続されている。また、波長可変干渉フィルター5の固定電極パッド563P及び可動電極パッド564Pは、それぞれ対応した内側端子部615にFPC615Aにより接続されている。
このような構成では、光学フィルターデバイス600のベース基板610の一面側であるベース外側面613のみに、波長可変干渉フィルター5の各電極561,562に電圧を印加するための端子が形成されることとなり、光学フィルターデバイス600を例えば光学モジュールや電子機器に組み込む際の配線構成を簡略化でき、その配線作業も容易となる。
また、固定電極561に対応した外側端子部616、可動電極562に対応した外側端子部616に対してそれぞれ電圧を印加することで、波長可変干渉フィルター5の反射膜間ギャップG1の大きさを静電引力により、電圧値に応じた大きさに変更することができ、波長可変干渉フィルター5により、所望の目的波長の光を取り出すことができる。
【0069】
本実施形態では、ベース基板610には貫通孔614が形成され、この貫通孔614には内側端子部615及び外側端子部616を接続する導電性部材が充填されている。このように、貫通孔614の隙間を導電性部材により埋めることで、内部空間650の気密性を維持することができ、同時にベース基板610のベース内側面612に設けられた内側端子部615と、ベース外側面613に設けられた外側端子部616とを電気的に接続することができる。また、貫通孔614の導電性部材が直接内側端子部615及び外側端子部616に当接して接続されるため、配線信頼性を向上させることができる。
【0070】
本実施形態では、波長可変干渉フィルター5に光が入射する面である固定基板51の光入射面51Aに環状の非透光性部材515が設けられ、この非透光性部材515の環内周径により、固定反射膜54及び可動反射膜55に光を入射させる有効範囲が設定されている。すなわち、非透光性部材515はアパーチャとして機能している。
一般に固定基板51及び可動基板52の外形形状をエッチングにより加工形成する場合、サイドエッチングの影響によりエッチングされた部分の周縁に沿って曲面部が形成される。このような曲面部に光が入射すると、屈折や反射が起こり迷光の原因となる。このような迷光が、固定反射膜54及び可動反射膜55による多重干渉により取り出された目的波長の光と混ざって透過される場合もあり、この場合、波長可変干渉フィルター5における分解能の低下等、光学特性の低下の原因となる。
これに対して、本実施形態では、アパーチャである非透光性部材515により光が入射する範囲を規定するため、上記のような曲面部への光の入射を防止でき、迷光による光学特性の低下を防止することができる。
また、固定基板51に非透光性部材515が設けられる構成とすることで、例えばリッド側ガラス基板640に非透光性部材515を設ける構成に比べて、固定反射膜54及び可動反射膜55に対するアライメント調整を精度よく実施でき、アパーチャとして機能させる有効径を正確に設定することができる。
【0071】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
第二実施形態では、上記第一実施形態の光学フィルターデバイス600が組み込まれた光学モジュールである測色センサー3、及び光学フィルターデバイス600が組み込まれた電子機器である測色装置1を説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図8は、第一実施形態の測色装置1の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、本発明の電子機器である。この測色装置1は、図8に示すように、検査対象Xに光を射出する光源装置2と、測色センサー3と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Xにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Xの色を分析して測定する装置である。
【0072】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図8には1つのみ記載)を備え、検査対象Xに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Xに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Xが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0073】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、本発明の光学モジュールを構成し、上記第一実施形態の光学フィルターデバイス600を備えている。この測色センサー3は、図8に示すように、光学フィルターデバイス600と、光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光する検出部31と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部32とを備える。
また、測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Xで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、光学フィルターデバイス600内の波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
【0074】
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。ここで、検出部31は、例えば回路基板311を介して、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
また、この回路基板311には、ベース基板610のベース外側面613に形成された外側端子部616が接続されており、回路基板311に形成された回路を介して、電圧制御部32に接続されている。
このような構成では、回路基板311を介して、光学フィルターデバイス600及び検出部31を一体的に構成でき、測色センサー3の構成を簡略化することができる。
【0075】
電圧制御部32は、回路基板311を介して光学フィルターデバイス600の外側端子部616に接続される。そして、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、固定電極パッド563P及び可動電極パッド564P間に所定のステップ電圧を印加することで、静電アクチュエーター56を駆動させる。これにより、電極間ギャップG2に静電引力が発生し、保持部522が撓むことで、可動部521が固定基板51側に変位し、反射膜間ギャップG1を所望の寸法に設定することが可能となる。
【0076】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図8に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、検査対象Xの色度を分析する。
【0077】
〔5.実施形態の作用効果〕
本実施形態の測色装置1は、上記第一実施形態のような光学フィルターデバイス600を備えている。上述したように、光学フィルターデバイス600は、内部空間650の気密性が高く、水粒子等の異物の侵入がないため、これらの異物による波長可変干渉フィルター5の光学特性の変化を防止することができる。したがって、測色センサー3においても、高分解能で取り出された目的波長の光を検出部31により検出することができ、所望の目的波長の光に対する正確な光量を検出することができる。これにより、測色装置1は、検査対象Xの正確な色分析を実施することができる。
【0078】
また、検出部31は、ベース基板610に対向して設けられ、当該検出部31及びベース基板610のベース外側面613に設けられた外側端子部616は、1つの回路基板311に接続されている。すなわち、光学フィルターデバイス600のベース基板610は光射出側に配置されているため、光学フィルターデバイス600から射出された光を検出する検出部31と近接して配置することができる。したがって、上述のように、1つの回路基板311に配線することで、配線構造を簡略化でき、基板数も削減することができる。
また、電圧制御部32を回路基板311上に配置してもよく、この場合、更なる構成の簡略化を図ることができる。
【0079】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記第一実施形態では、真空中でベース基板610及びリッド620を接合することで、内部空間650が真空状態に維持された光学フィルターデバイス600を製造したがこれに限定されない。
図9は、一変形例における光学フィルターデバイスを示す断面図である。
図9に示すように、この光学フィルターデバイス600Aは、リッド620の一部に、内部空間650及び外部空間を連通する孔部627を備えている。この孔部627は、少なくともベース外側面613に臨む孔形状が円形に形成されている。そして、この孔部627は、金属球628(封止部材)がベース外側面613側から装着されることで、封止されている。金属球628による封止では、金属球628を孔部627内に嵌入させた後、孔部627内で高温化させて金属球628を孔部627の内壁に溶着させることが好ましい。
【0080】
このような光学フィルターデバイス600Aでは、ベース基板610及びリッド620を接合した後に、内部空間650を真空状態にすることが可能となる。
つまり、第一実施形態の光学フィルターデバイス600では、図7に示すように、S43において、真空環境下でベース基板610及びリッド620を、YAGレーザー等の高出力レーザーを用いたレーザー溶接により接合する。しかしながら、ベース基板610やリッド620の素材や製造環境等により、例えば大気圧下で、半田付けや金属ロウを用いたロウ付けによる接合を行う場合がある。
この場合、上記変形例では、ベース基板610及びリッド620を接合した後、リッド620の孔部627から内部空間650の空気を抜いて真空状態にし、金属球628を装着して封止することで真空状態を維持することができる。
また、上記変形例では、孔部627がリッド620に設けられる構成を示すが、ベース基板610に設けられる構成としてもよく、ベース基板610及びリッド620の双方に設けられる構成としてもよい。また、孔部627の数としても、1つに限定されず、複数の孔部627が設けられる構成としてもよい。例えば、ベース基板610及びリッド620に対してそれぞれ複数の孔部627が設けられる構成としてもよい。この場合であっても、各孔部627をそれぞれ金属球628により封止することで、内部空間650の気密性を確保することができる。
【0081】
また、上記第一実施形態において、光学フィルターデバイス600は、固定電極561及び可動電極562に電圧を印加することで、静電引力により反射膜間ギャップG1の大きさを変更可能な波長可変干渉フィルター5が収納される例を示したがこれに限定されない。例えば、反射膜間ギャップG1を変更するギャップ変更部として、固定電極561の代わりに、第一誘電コイルを配置し、可動電極562の代わりに第二誘電コイルまたは永久磁石を配置した誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
さらに、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、および上部電極層を積層配置させ、下部電極層および上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
【0082】
また、内部空間650に収納する干渉フィルターとして波長可変干渉フィルター5を例示したが、例えば、反射膜間ギャップG1の大きさが固定された干渉フィルターであってもよい。この場合、可動部521を撓ませるための保持部522や、固定電極561を設けるための電極配置溝511等をエッチングにより形成する必要がなく、干渉フィルターの構成を簡略化できる。また、反射膜間ギャップG1の大きさが固定であるため、応答性の問題がなく、内部空間650を真空に維持する必要がなく、構成の簡略化、製造性の向上を図ることができる。ただし、この場合でも、例えば温度変化が大きい場所で光学フィルターデバイス600を使用する場合、内部空間650内の空気の膨張等により、ベース側ガラス基板630やリッド側ガラス基板640が応力を受けて撓む恐れがある。したがって、このような干渉フィルターを用いる場合であっても、内部空間650を真空、または減圧状態に維持することが好ましい。
【0083】
また、リッド620は、リッド接合部624、側壁部625、及び天面部626を備え、天面部626がベース基板610に対して平行となる構成を示したがこれに限定されない。リッド620の形状としては、ベース基板610との間に波長可変干渉フィルター5を収納可能な内部空間650を形成できれば、いかなる形状であってもよく、例えば天面部626が曲面形状に形成されていてもよい。ただし、この場合、内部空間650の気密性を維持するために、リッド620に接合するリッド側ガラス基板640をリッド620に合わせて曲面状に形成し、かつ、光通過孔621を閉塞する部分のみ、屈折等が生じないように平面状に形成する必要がある等、製造が煩雑になることが考えらえる。したがって、上記第一実施形態のように天面部626がベース基板610と平行となるリッド620を用いることが好ましい。
【0084】
上記第一実施形態では、ベース側ガラス基板630及びリッド側ガラス基板640が、筐体601の外面、すなわち、ベース基板610のベース外側面613及びリッド620のリッド外側面623に接合される例を示したが、これに限らない。例えば、筐体601の内部空間650側に接合される構成としてもよい。
【0085】
また、干渉フィルターとして、第一反射膜及び第二反射膜により多重干渉された光を反射させる反射型フィルターを内部空間650に収納する場合では、光通過孔611及びベース側ガラス基板630が設けられない構成であってもよい。
この場合、光学フィルターデバイス600の光通過孔621に対向して、例えばビームスプリッター等を設けることで、光学フィルターデバイス600への入射光と、光学フィルターデバイス600から射出された射出光とを分離する構成とすることで、分離した射出光を検出部で検出させることができる。
【0086】
上記第一実施形態では、内側端子部615及び外側端子部616を、ベース基板610に設けられた貫通孔614内に導電性部材を介して接続する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、ベース基板610の貫通孔614に棒状の端子を圧入し、端子の先端部と、固定電極パッド563Pや可動電極パッド564P等と、を接続する構成としてもよい。
【0087】
上記第一実施形態では、波長可変干渉フィルター5に設けられる本発明の電極部として、静電アクチュエーターを構成する固定電極561及び可動電極562(及びこれらの電極561,562に接続された電極パッド563P,564P)を例示したが、これに限定されない。
本発明の電極の他の例としては、例えば、固定反射膜54及び可動反射膜55の電荷保持量の変化から反射膜間ギャップG1の大きさを測定するための静電容量検出電極や、各基板51,52や、固定反射膜54,可動反射膜55に保持された電荷を逃がし、基板間のクーロン力を除去するための帯電除去電極等が挙げられる。この場合、第一電装面514及び第二電装面524に、上記静電容量検出電極や帯電除去電極等から引き出された引出電極を配置する。そして、このような複数の電極が配置された場合でも、例えばFPC615Aを第一電装面514に貼り付けることで、例えば図7のS12において、各電極に対して個別に接続作業を実施することなく、容易に配線接続を実施することができる。
【0088】
上記第一実施形態において、固定基板51の光入射面に非透光性部材515を設ける構成としたが、例えば、入射側の透光基板であるリッド側ガラス基板640に非透光性部材515を設ける構成などとしてもよい。
また、上記第一実施形態では、リッド620側から入射された光を波長可変干渉フィルター5に多重干渉させ、波長可変干渉フィルター5を透過した光をベース側ガラス基板630から射出する光学フィルターデバイス600を例示したが、例えばベース基板610側から光を入射させる構成としてもよい。この場合、可動基板52にアパーチャとして機能させる非透光性部材を設けてもよく、あるいは、非透光性部材が設けられた固定基板51をベース基板610に固定する構成等としてもよい。
【0089】
また、本発明の電子機器として、第二実施形態において測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の光学フィルターデバイス、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0090】
図10は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図11は、図10のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図10に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、光学フィルターデバイス600、および受光素子137(検出部)等を含む検出装置と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図11に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図11に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0091】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0092】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
【0093】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が光学フィルターデバイス600に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0094】
なお、上記図10及び図11において、ラマン散乱光を光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0095】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0096】
図12は、光学フィルターデバイス600を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図12に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する光学フィルターデバイス600と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0097】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って光学フィルターデバイス600に入射する。光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0098】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0099】
また、図12において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0100】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0101】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図13は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図13に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図13に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた光学フィルターデバイス600を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、光学フィルターデバイス600の波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0102】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0103】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0104】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0105】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0106】
1…測色装置(電子機器)、3…測色センサー(光学モジュール)、5…波長可変干渉フィルター、31…検出部、51…固定基板(第一基板)、52…可動基板(第二基板)、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、56…静電アクチュエーター(ギャップ変更部)、100…ガス検出装置(電子機器)、200…食物分析装置(電子機器)、300…分光カメラ(電子機器)、521…可動部、522…保持部、561…固定電極(電極部)、562…可動電極(電極部)、563P…固定電極パッド(電極部)、564P…可動電極パッド(電極部)、600…光学フィルターデバイス、601…筐体、610…ベース基板、611…光通過孔、612…リッド対向面、613…ベース外側面、614…貫通孔、615…内面端子部、616…外面端子部、617…ベース接合部、620…リッド、621…光通過孔、623…リッド外側面、627…孔部、628…金属球(封止部材)、630…ベース側ガラス基板(透光基板)、640…リッド側ガラス基板(透光基板)、650…内部空間、G1…反射膜間ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを収納する筐体と、
を具備し、
前記筐体は、
ベース基板と、
前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、
前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、
前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、
前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、
前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合された
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記リッドは、
前記ベース基板に接合されるリッド接合部と、
前記リッド接合部に連続し、前記ベース基板に対して交差する方向に立ち上がる側壁部と、
前記側壁部に連続し、前記ベース基板に対向する天面部と、を備える
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記透光基板は、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板又は前記リッドの前記干渉フィルターに対向する面とは反対の外面側に接合されている
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記光通過孔は、前記ベース基板及び前記リッドの双方に設けられ、
前記透光基板は、2つの前記光通過孔に対してそれぞれ設けられた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記内部空間の気圧は、大気圧よりも低い
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記光通過孔の外周縁上の二点を結ぶ直線と、前記透光基板の基板端縁との2交点を基板端点とし、前記光通過孔の外周縁上の前記二点間の距離を「d」、前記基板端点間の距離を「a」とした場合、a/d≧1.6の関係を満たした
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記干渉フィルターは、電極部を備え、
前記ベース基板は、前記リッドに対向するリッド対向面に設けられ前記電極部と電気的に接続される内面端子部と、前記リッド対向面とは反対側のベース外側面に設けられ前記内面端子部と電気的に接続される外面端子部と、を備えた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記ベース基板は、前記リッド対向面から前記ベース外側面に亘って設けられる貫通孔と、前記貫通孔に充填される導電性部材と、を備え、
前記内面端子部及び前記外面端子部は、前記導電性部材を介して電気的に接続された
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項9】
請求項5に記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記ベース基板及び前記リッドの少なくともいずれか一方には、前記ベース基板及び前記リッドの少なくともいずれか一方を貫通する1又は複数の孔部と、前記孔部を封止する封止部材と、が設けられた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の光学フィルターデバイスにおいて、
前記干渉フィルターは、前記光通過孔を通過した光が入射する光入射面に、環状の非透光性部材を備える
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項11】
第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを収納する筐体と、
前記干渉フィルターにより取り出された光を検出する検出部と、
を具備し、
前記筐体は、
ベース基板と、
前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、
前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、
前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、
前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、
前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合された
ことを特徴とする光学モジュール。
【請求項12】
第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、及び前記第二基板に設けられて前記第一反射膜に反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜を備えた干渉フィルターと、
前記干渉フィルターを収納する筐体と、
を具備し、
前記筐体は、
ベース基板と、
前記ベース基板に接合され、前記ベース基板との間に前記干渉フィルターを収納可能な内部空間を形成するリッドと、を備え、
前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方には、前記第一反射膜及び前記第二反射膜と対向する領域に、光通過孔が設けられ、
前記筐体は、前記光通過孔を覆う透光基板を備え、
前記透光基板を基板厚み方向から見た平面視において、当該透光基板の基板端縁は、前記光通過孔の外周縁よりも外側に位置し、
前記透光基板は、前記平面視において、前記光通過孔の外周縁から前記基板端縁までの領域が、前記光通過孔が設けられた前記ベース基板及び前記リッドのうち少なくともいずれか一方に接合された
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72981(P2013−72981A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211497(P2011−211497)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】