説明

光学フィルタ用の亜鉛系薄膜の扱い

光学フィルタは、金属層(106、107、108、109)と、少なくとも1つの誘電体層が2つ以上の亜鉛系薄膜(112、114、118,120)により定められている誘電体層(101、102、103、104、105)とを含む積層体から形成される。これらの亜鉛系薄膜は、亜鉛割合が異なっている。これらの割合の選択は、この誘電体層中の薄膜の位置に基づいている。金属層の形成の直前の亜鉛系薄膜が、80パーセント〜100パーセントの範囲内の亜鉛割合を持っている場合には、予想以上に小さいシート抵抗が得られる。下部の亜鉛系薄膜の割合を50パーセントに近づける(25〜75パーセント)ことで、工程安定化と製造コストが実現される。工程安定化は、金属層に隣接して誘電体層中にインジウム系薄膜(110と116)を与えることで、さらに高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して光学的配列を提供することに関し、さらに具体的に言えば、目標の光学的性質と小さいシート抵抗とを有するコストパフォーマンスの高い光学フィルタを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタの目標とする光学的性質の選択は、目的の用途に応じてかなり変わる。例えば、本特許書類の譲渡人に譲渡されたHood氏らの米国特許第5,071,206号は、自動車、住宅、オフィスの窓に使用できるフィルタを記載している。このHood氏らの特許は、層の配列が、色補正、熱反射性、赤外線反射性をもたらすことを記載している。これに対して、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)用の皮膜の所望の性質は、いくらか異なる。同様に本特許書類の譲渡人に譲渡されているLairson氏らの米国特許出願公開第2006/0055308号は、PDP用の光学フィルタの設計において考慮される要素を記載している。これらの特定される要素は、送信される色の中立度、反射光のレベル、視聴者の入射角の変化による色ズレ並びに赤外線及び電気機械放射線の透過レベルである。残念なことに、窓の被覆用又はPDPの被覆用の光学フィルタのいずれを設計するにしても、異なる要素の間の兼ね合いがある。したがって、フィルタを修正して、一方の所望の性質に関して条件を向上させることと、他方の性質に関して目標レベルを維持することとは両立しない場合がある。
【0003】
図1は、1の構成単位又は別の板ガラス10を含むプラズマ・ディスプレイ・パネル用のフィルタを提供する1つの可能な層配列である。最初に、エタロン・フィルタ12がポリエチレン・テレフタレート(PET)基材14に形成され、次にPET基材14が、接着剤層16により板ガラスに付けられる。プラズマ・ディスプレイは、赤外線及び電磁妨害(EMI)を発生させ、これらは法制化された規定に従って抑制されなければならないので、フィルタ層12は、ディスプレイからの赤外線及びEMIを減らすことを目的とされている。複数の銀層を基にしたエタロン・フィルタは、赤外線波長及び電磁波を遮蔽するために使用される。隣接する銀層間の干渉は、所望の遮蔽を実現しながら、可視領域内で共振透過を起こすように調整することができる。上記の参照されたHood氏らの特許は、適切な層の順序を説明している。
【0004】
図1はまた、もともと第2のPET基材20上に形成された反射防止(AR)積層体18も含む。反射防止積層体は、当技術分野においてよく知られている。第2の接着剤層22は、PET基材20を図1の他の要素に固定する。
【0005】
PDPフィルタ12は、ディスプレイからの赤外線透過及びEMIを減らす一方で、フィルタはまた、外見上受け入れられなければならず、また表示された映像を見る上で優れた忠実度を得られなければならない。したがって、このフィルタの透過率は、光スペクトルの可視領域内で高くあるべきであり、またプラズマ・ディスプレイの演色を変えないように相対的に無色であるべきである。さらに、ディスプレイは反射率が低くあるべきであり、そして反射された色は、青みがかかった色からわずかに赤みがかかった色であるべきであるという一般的な期待がある。
【0006】
色は、様々なやり方で表現できる。上記の引用されたHood氏らの特許では、色は、CIE La**1976の色座標系、特にASTM 308−85法で表現される。この方法を使用すると、性質は、0の近くのa*及びb*に対する値で示される。一般に、消費者は、コンピュータのディスプレイは、色が中間色であるか、あるいはわずかに青みがかかっているように見えると予想する。図2に示されるLa**の座標系を簡単に参照すると、これは、一般に反射されたa*(すなわちRa*)が−2〜約10の範囲内にあり、また反射されたb*(すなわちRb*)が−40〜約2の範囲内にあるという予想をもたらす。このような予想は、破線23で示される。
【0007】
大量情報ディスプレイのユーザーは、一般に、視野角が変化しても反射色の変化が最小限にとどめられることを期待する。近距離からディスプレイを見ると、どんな色変化も気を散らすものであり、そこではディスプレイの色は、その表面の全域で変化するように見える。プラズマ・ディスプレイ・パネルは、画像化に必要な多数のピクセルと大きなピクセル・サイズとにより本質的に大きいので、視野角と共に色の移動を少なくする必要性が高くなる。これは特に、色の「赤−緑」成分Ra*が、角度とともに大幅に変化する場合に好ましくない。他方の座標軸Rb*に関する変化は、このディスプレイが垂直入射で大きな反射−Rb*(すなわち、強い青反射色)を持つときには、一般的に問題が少ない。
【0008】
前述の通り、PDPフィルタの設計に関する異なる要素は、相反することがある。同じことが、窓用のフィルタの設計にも当てはまる。一般に、反射色を調整することは、EM遮蔽能力と競合する。代表的な銀エタロン・フィルタは、主として赤外線を反射することで赤外線を遮蔽する働きをする。赤外線は、波長が比較的赤に近く、それゆえ効果的に調整することが困難であると同時に、スペクトルの赤領域(すなわち、620〜700nm)内で低反射を得る。この問題は、プラズマ・ディスプレイでは特に深刻であり、そこではスペクトルの赤領域内で高い透過率を維持しながら、820nmと880nmにてXeの放出から保護することが望ましい。
【0009】
PDPフィルタ12に小さいシート抵抗を必要とすることで、光スペクトルの赤領域内で反射を調整することがさらに一層困難になる。赤透過を最大にする目標と、シート抵抗を最小にする目標とのバランスを取ろうとする試みがなされている。オカムラ氏らの米国特許第6,102,530号は、プラズマ・ディスプレイ用の光学フィルタについて記載しており、そこではフィルタが3オーム/スクウェアよりも小さいシート抵抗を有している。一般に、PDPセットが最大の発光効率を有している場合でも、米国連邦通信委員会(FCC)のクラスB基準を満たすために、1.5オーム/スクウェアよりも小さいシート抵抗が要求される。1.4オーム/スクウェアよりも小さいシート抵抗が好ましい。クラスBの適合性を実現するために、0.1オーム/スクウェア〜0.2オーム/スクウェアのシート抵抗を有する銅線メッシュPDP EMIフィルタが使用されることが多い。
【0010】
より小さいシート抵抗の要件では、エタロンEMIフィルタに関する色の問題が増大する。フィルタの導電層が厚くなるにつれてフィルタの透過帯域幅が狭くなり、その結果、赤反射の増加及び透過における色帯域幅の低下の両方がもたらされる。
【0011】
エタロン・フィルタが異なる視野角にて赤反射を示す傾向と、一般的に期待される消費者製品の外観との間には、相反するものがある。これは、自動車フロントガラスの設計から知られおり、そこでは不快な「紫色」の外観は、いくつかのフロントガラスでの雲の反射によりもたらされる。この不快な反射は、そのようなフィルタに使用される導電層の厚さを制限する。
【0012】
図2は、4銀層皮膜がPDP用に設計されることが困難であることを示している。プロット24は、垂直入射から60度までの視野角の関数として色を示している。4銀層皮膜は、許容できるシート抵抗を持ち、また垂直入射で許容できる発色を提供するために、全銀層の厚さ45nmを有する。しかし、この図で示されるように、この4銀層皮膜を60度の角度で見ると、その反射光は約30のRa*で、強く赤になる。さらに、入射角とともに大きな色ズレがあり、それにより、近距離で見られる大画面に関して、その画面全域に明らかな色差を引き起こす。したがって、この4銀層皮膜はいくつかのクラスBのEMI用途に適しているにもかかわらず、外見上受け入れられないと考えられることがある。
【0013】
上記で引用されたLairson氏らの参照文献は、従来技術に優るいくつかの利点を持つフィルタを記載している。このフィルタは、誘電体層により互いに隔てられている、例えば銀層又は銀合金層のような少なくとも5層の金属層を含む。5層の金属層と6層の誘電体層にすることができる。この参照文献は、これらの誘電体層が酸化インジウム、又は酸化インジウムと酸化チタンとの化合物であることを述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
光学フィルタを提供する従来技術の手法は、所望の性質に関する目標レベルの達成において継続的な向上を示しているとはいえ、さらなる向上が求められている。理想的には、このような向上は、同時にコストを削減しながら達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一の実施形態では、光学フィルタは、積層体が、金属層と、少なくとも1つの誘電体層が2つ以上の亜鉛系薄膜によって定められる誘電体層とを含むようにして、上記積層体を基材上に形成することで提供される。この実施形態では、これらの亜鉛系薄膜は亜鉛割合が異なっており、またこれらの割合の選択は、異なる要素に基づいている。本発明の他の実施形態では、光学フィルタは透明な基材上のいくつかの層から形成され、その少なくとも1層は、亜鉛割合が意図的に100パーセントよりも少なく、かつ80パーセントよりも大きい亜鉛系薄膜である。ここで使用される「層」という語は、特定の屈折率を実現するなど、所望の性質を示す1又は複数の薄膜として定義される。金属層と誘電体層の「交互のパターン」中の「誘電体層」は、屈折率が1.0よりも大きい層として、ここでは定義されている。亜鉛系薄膜に関して、屈折率は、好ましくは亜鉛系の材料で得ることのできる最大の屈折率である。
【0016】
亜鉛系薄膜を使用して誘電体層を形成することで、インジウム系誘電体層の形成と比較して、コストが大幅に削減される。さらに、1の層を形成する異なる亜鉛系薄膜中の亜鉛割合を調整することで、性能の利点が得られる。第1の実施形態により1又は複数の誘電体層を形成することによる1つの驚くべき結果は、上記で引用された手法と比較して、視野角の関数としての色の変化がさらに小さいことである。別の驚くべき結果は、シート抵抗が少なくなることである。例えば、1.25オーム/スクウェアのシート抵抗が得られている。誘電体薄膜の形成では、堆積された第1の亜鉛系薄膜は、工程安定化を含む要素に基づいて選択される亜鉛割合を有している。この層の好ましい範囲は、25パーセント〜75パーセントであるが、この範囲は、さらに好ましくは約50パーセント(±5パーセント)である。次に形成される亜鉛系薄膜中の亜鉛割合の選択は、その次に形成される金属層用のシード層の設定目標の性質を含む要素に基づいている。この第2の亜鉛割合は意図的に第1の亜鉛割合よりも大きい。第2の亜鉛割合は、80パーセント〜100パーセントの範囲内にあり、好ましくは約90パーセントである。
【0017】
これらの亜鉛系薄膜は亜鉛・スズ(ZnSn)とすることができるが、他の材料も選択できる。この亜鉛とスズとは、スパッタ堆積される。このスパッタ堆積する実施形態では、「パーセント」という語と「割合」という語は、その目標材料の組成への言及として、ここでは定義されている。この層が誘電体層であることを確実にするために、この製造は酸化を可能にする。したがって、ZnSnの実施形態では、ZnOとSnO2が形成される。しかし、それぞれの誘電体層の亜鉛系薄膜の一方又は両方は、ZnSnに代わるものであり得る。例えば、堆積した第1の亜鉛系薄膜は、工程中での安定性のためにZnSnにする一方で、第2の亜鉛系薄膜は、銀及び銀合金用のシード層として優れているために、Zn/アルミニウムにすることができる。
【0018】
さらなる向上として、この誘電体層は、InOxなどインジウム系である初期の薄膜から形成されることができる。この初期の薄膜は、前に形成された金属層を保護するために使用されることができる。このインジウム系薄膜を、水素含有量の高い流れで形成することで、下にある銀層が酸化から保護されて、その工程が安定する。
【0019】
したがって、本発明の第1の実施形態は、これらの誘電体層が、2つ以上の薄膜によって形成された「合成層」であり、この2つ以上の薄膜は、合成誘電体層中のこれらの薄膜の位置に基づいて選択される化学的性質を有する。本発明の第2の実施形態では、該当する薄膜は、例えばZnSnのような、亜鉛割合が80パーセント〜100パーセントの範囲内にある亜鉛系薄膜である。このような薄膜は、銀用のシード層に特に適しており、そこではそのシート抵抗が最終製品にとって重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図3を参照すると、フレキシブル高分子基材100上に、交互する層パターンが形成されている。高分子基材100は、厚さが25〜100マイクロメートルであるPETにすることができる。図3には示されてないが、基材の交互する層パターンと反対の側は、接着剤の層と剥離片を含むことがある。この剥離片は接着剤から容易に除去され、それによりこの接着剤層を使用すれば、フィルタをすることが要望される部材に基材及びその層を結合することができる。例えば、このフィルタを、プラズマ・ディスプレイ・パネル又は窓に接着することができる。他の実施形態では、上記交互する層パターンは、フィルタすることが要望される部材上に直に形成される。例えば、このプラズマ・ディスプレイ・パネルをスパッタ室に通して、これらの層を形成する材料を堆積させることが必要である。
【0021】
図3は、5層の誘電体層101、102、103、104、105と4層の金属層106、107、108、109がある好ましい実施形態を示している。この好ましい実施形態では、これらの金属層は、銀又は銀合金の層である。銀合金の層は、最初に銀をスパッタし、次に薄いチタン・キャップ層をスパッタし、その後でこのチタン・キャップ層にアニール処理と酸化とをすることで形成される。この金属層をアニール処理することで、この層のシート抵抗は0.8オーム/スクウェアに下げられることが明らかになっている。受け入れられる銀合金は、AgAu及びAgPdを含む。特にガラスを被覆するときに、小さい割合のPdの添加が知られている。
【0022】
それぞれの誘電体層101、102、103、104、105は、「合成層」である。図示された実施形態では、第1の誘電体層101は、3つの薄膜110、112、114から形成されている。第1の誘電体層101は、その金属層106との組合せで図4にも示される。同様に、第2の誘電体層102、第3の誘電体層103、第4の誘電体層104、第5の誘電体層105はそれぞれ、3つの薄膜116、118、120から形成されている。これらの薄膜及び層は、寸法に合わせた比率では示されてない。金属層106、107、108、109は、5nm〜15nmの範囲内の厚さを有するが、ただし他の可能性も考慮される。誘電体層を形成する3つの薄膜の全厚は、50nm〜100nmの範囲内であるが、ただしそれ以外も可能である。
【0023】
誘電体層101、102、103、104、105は、異なる酸化膜110、112、114、116、118、120から形成されていて、この誘電体層の異なる部分が、異なる性質を実現するように調整されている。基材100にもっとも近い薄膜は、下にある層を保護するために、水素含有量の高い流れで形成されるInOxである。これは、下にある銀層106、107、108、109を酸化から保護するため、上部の誘電体層102、103、104、105では特に有用である。さらに、インジウム系層の形成は、スパッタ堆積において安定する。好ましい実施形態では、これらの層及び薄膜は、スパッタ堆積される。しかし、第1の誘電体層101は、コストを削減するためにInOxなしに堆積されることもあり、好ましくは下にあるAg層を保護する要件がないときに、第1の誘電体層101は、InOxの代わりにZn系合金を用いて堆積される。薄膜114は、1番目の3つの薄膜120と同様に、Ag層での最適な核形成条件のために選択されるべきである。
【0024】
インジウム系薄膜110及び116は、利点を提供するとはいえ、このような薄膜は比較的高価である。したがって、それぞれの誘電体層101、102、103、104、105の第2の薄膜112及び118は、亜鉛系である。図示された実施形態では、これらの層はZnSnである。図3及び図4は、亜鉛割合を50パーセントとして示している。これは好ましい実施形態であり、その範囲は、25パーセント〜75パーセントにし得る。このような割合を選択するための目標要素には、コストと工程安定化が含まれる。第3の薄膜114及び120は、重量基準でさらに高い亜鉛含有量を有している。図3はさらに、この薄膜をZnSnとして示している。しかし、この薄膜を選択するための要素は、インジウム系薄膜110及び116に対するコストと、後に形成される金属層106、107、108、109用のシード層としての品質である。ZnSnに加えて、この亜鉛系薄膜は、亜鉛とアルミニウムから形成されることがある。これは、そのような層が、銀用のシード層を与えることになるからである。図示された実施形態に示される亜鉛割合は、90重量パーセントであるが、ただしこの割合は、80パーセント〜100パーセントよりもわずかに少ないパーセントまでの範囲内で変化する。これは、ZnAlの薄膜にも当てはまる。
【0025】
図3の光学フィルタを形成する1つの可能な工程を、図5を参照して説明する。しかし、当業者であれば、本発明から逸脱せずに他の形態が利用できることを分かるであろう。例えば、使用されるカソード(陰極)を少なくすることがある。図5では、一対のロール126及び128の時計回りの回転と反時計回りの回転とにより、フレキシブル基材100の編物を、ドラム122と124の周りに移動させる。ロール126は、本発明を説明するために供給ロールであると考える。図示された実施形態では、図3の様々な層101〜120は、化学反応を伴って及び化学反応を伴わずに基材上にスパッタ堆積される。
【0026】
始めの段階では、この基材は、銀堆積工程132とチタン堆積工程134を通り過ぎて進むが、これらの工程は休止状態のままである。それゆえ、インジウム工程136は、構成要素の第1の薄膜をこの基材上に提供する。実際には、この基材上にプライマー層が形成されることがあるが、このプライマー層は本発明には重要でなく、図3には示されない。前述の通り、このインジウムは、水素含有量の高い流れを持つ環境において堆積される。これは、下にある銀層を保護するように意図されている。したがって、第1の段階では、酸化インジウムの薄膜は、第2の段階よりも重要でない。しかし、第1の誘電体層101は、図3に示されるように、3つの薄膜すべてを含む。
【0027】
図5は、第1のZnSn薄膜112の含有量を与える5つの異なるZnSn工程を示している。これらの5つのZnSn工程はそれぞれ、薄膜全体が完成するまで薄膜の一部を供する。次に、ZnSn工程148及びZnSn工程150は協働して、ZnSnの90/10薄膜114を形成する。前述の通り、また図3と図4に示される通り、これらの薄膜のそれぞれを酸化させて、低吸収の層を形成する。
【0028】
次に、ロール126とロール128とを交換して、基材100を第2の段階用の位置に配置する。この第2の段階では、銀層106又は銀合金層(例えば、AgAu又はAgPd)は、工程132の活動により堆積される。薄いチタン層(厚さが2nmよりも薄い)は、第2の誘電体層102の堆積の前に、銀層上に堆積される。このチタン層を使用して、酸化から銀層を保護する。
【0029】
第2の誘電体層102は、第1の誘電体層101と同一の方法で形成される。次に、ロール126とロール128とを再び交換して第3の段階を実行し、第2の銀層107を与える。この工程は、所望の数の誘電体層と金属層とを得るまで繰り返される。
【0030】
本発明の一つの利点は、得られる製品が、視野角の変化による色の変化が予想以上に小さいということである。他の予想以上の結果は、シート抵抗が小さいことであった。5層の誘電体層と、Agの全厚が約50nmである4層のAg層を備える皮膜積層体では、1.25オーム/スクウェアのシート抵抗が実現された。さらに、亜鉛系の層の使用と、同様な結果又はそれよりも望ましくない結果をもたらす他の光学フィルタよりも必要とする層が少ないという事実とにより、コストの削減がもたらされる。この工程は安定であり、そして必要とされる製造サイクルの時間は、さらに短い。この種の他のフィルタには必要とされるであろういかなる防食膜も、本最終製品に追加する必要はない。
【0031】
図3のフィルタは、図1の構成材とともに使用されることがある。フレキシブルな編物に形成されるときには、この編物は必要に応じて切断され、そしてガラス又はプラズマ・ディスプレイ・パネルに付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用され得るフィルタの側面図である。
【図2】従来技術での4層の銀層を有する積層体に関する視野角の関数としての色のプロットである。
【図3】本発明の1の可能な実施形態により形成される一連の層の側面図である。
【図4】複数薄膜からなる1の誘電体層と、1の金属層とを示す、図3の層の一部の側面図である。
【図5】図3に示される基材上に一連の層を与える工程の1つの可能な実施形態の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛系薄膜を形成する際における工程安定化を含む要素に基づいて、第1の亜鉛系薄膜での第1の亜鉛割合を選択するステップを含めて、前記第1の亜鉛系薄膜を形成するステップと、
次に形成される金属層用のシード層の設定目標の性質を含む要素に基づいて、前記第1の亜鉛割合よりも意図的に大きい第2の亜鉛系薄膜での第2の亜鉛割合を選択するステップを含めて、前記第1の亜鉛系薄膜の形成の後に前記第2の亜鉛系薄膜を形成するステップと、によって少なくとも1層の誘電体層を定めることを含めて、積層体が複数の前記金属層と複数の前記誘電体層を含むようにして基材上に前記積層体を形成するステップを含む、光学フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1層の誘電体層を定めることが、前記第1の亜鉛系薄膜及び前記第2の亜鉛系薄膜を形成する前であって前記金属層のうちの1層を形成した後でインジウム系薄膜を形成して、前記少なくとも1層の誘電体層が、一連の(a)前記インジウム系薄膜、(b)前記第1の亜鉛系薄膜、及び(c)前記第2の亜鉛系薄膜を含むようにするステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属層が銀を含み、前記インジウム系薄膜が、水素の豊富な状況において酸化インジウムとして形成される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の亜鉛系薄膜及び前記第2の亜鉛系薄膜を、亜鉛・スズ薄膜としてスパッタ堆積して、反応性スパッタ法において低吸収の酸化亜鉛・スズ層を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の亜鉛割合を選択するステップが、25パーセント〜75パーセントの範囲内で選択することを含み、前記第2の亜鉛割合を選択するステップが、80パーセント〜100パーセントの範囲内で選択することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記積層体を形成するステップが、前記誘電体層のうちの1層を前記積層体中において前記基材の最も近くにして、前記誘電体層と前記金属層との交互するパターンを与えるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記積層体を形成するステップが、5層の前記誘電体層と4層の前記金属層を与えるステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属層が銀又は銀合金であり、それぞれの前記誘電体層が、前記誘電体層中において前記基材の最も近くに酸化インジウム薄膜を含んで形成される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基材を、プラズマ・ディスプレイ・パネルで使用されるフレキシブルな透明部材として供給するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
透明な基材と、前記基材上の積層体とを含むフィルタであって、前記積層体が、
第1の金属層と、
前記第1の金属層の両側にある第1の誘電体層及び第2の誘電体層であって、前記第1の誘電体層は、前記第2の誘電体層よりも前記基材の近くにあり、前記誘電体層のそれぞれは、第1の亜鉛系薄膜と、前記第1の金属層の金属用のシード薄膜として機能するように亜鉛割合が前記第1の亜鉛系薄膜よりも大きい第2の亜鉛系薄膜とを含み、前記第1の亜鉛系薄膜は、同じ前記誘電体層での前記第2の亜鉛系薄膜よりも前記基材に近く、前記第2の誘電体層は、前記第1の金属層と前記第1の亜鉛系薄膜との間にインジウム系薄膜を含む、第1の誘電体層及び第2の誘電体層と、
目標シート抵抗を実現するための追加の前記金属層と追加の前記誘電体層との繰返しパターンとを含むフィルタ。
【請求項11】
前記第2の亜鉛系薄膜における前記亜鉛割合が80パーセント〜100パーセントの範囲内である請求項10に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記第1の亜鉛系薄膜中の亜鉛割合が25パーセント〜75パーセントの範囲である請求項11に記載のフィルタ。
【請求項13】
前記第1の金属層及び前記第2の金属層が銀又は銀合金であり、前記第1の亜鉛系薄膜の層及び前記第2の亜鉛系薄膜の層が亜鉛・スズ層である請求項11に記載のフィルタ。
【請求項14】
前記第1の亜鉛系薄膜が、前記基材と前記第1の亜鉛系薄膜との間にインジウム系薄膜を含む請求項10に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記基材がプラズマ・ディスプレイ・パネルに付けられる請求項10に記載のフィルタ。
【請求項16】
全部で4層の前記金属層及び5層の前記誘電体層を有する請求項10に記載のフィルタ。
【請求項17】
亜鉛割合が意図的に100パーセントよりも小さく、80パーセントよりも大きい亜鉛系薄膜を含む少なくとも1層をスパッタ堆積することを含めて、目標の光学的性質を実現するようにして複数の層を透明な基材に形成するステップと、
前記基材をプラズマ・ディスプレイ・パネル又は自動車の窓のいずれかに付けるステップとを含む、光学フィルタを形成する方法。
【請求項18】
前記亜鉛割合が、約90パーセントである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記亜鉛系薄膜が、酸化した亜鉛・スズである請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記亜鉛系薄膜が、酸化したZnAlである請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−533709(P2009−533709A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505350(P2009−505350)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/035667
【国際公開番号】WO2007/120177
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(507324005)サウスウォール テクノロジーズ、 インク. (3)
【氏名又は名称原語表記】SOUTHWALL TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】