説明

光学フィルム、液晶パネル、および液晶表示装置

【課題】全方位において色つきのないニュートラルな表示と高コントラストを与える液晶表示装置を提供できる光学フィルムであってクニック欠陥を抑制した光学フィルム、該光学フィルムを用いた液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルムは、透明保護フィルム、偏光子、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層をこの順に含み、該偏光子と該複屈折層が金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、液晶パネル、および液晶表示装置に関する。より詳細には、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な光学フィルム、該光学フィルムを用いた液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、図5(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。この液晶表示装置900は、液晶セル910と、液晶セル910の外側に配された位相差板920、920’と、位相差板920、920’の外側に配された偏光板930、930’とを備える。代表的には、偏光板930、930’は、その偏光軸が互いに直交するようにして配置されている。液晶セル910は、一対の基板911、911’と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層912とを有する。一方の基板911には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板911’には、カラーフィルターを構成するカラー層913R、913G、913Bと遮光層(ブラックマトリックス層)914とが設けられている。基板911、911’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。
【0003】
上記位相差板は、液晶表示装置の光学補償を目的として用いられている。最適な光学補償(例えば、視野角特性の改善、カラーシフトの改善、コントラストの改善)を得るために、位相差板の光学特性の最適化および/または液晶表示装置における配置について、種々の試みがなされている。従来、上記図5に示すように、位相差板は、液晶セル910と偏光板930、930’との間に1枚ずつ配置される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
近年の液晶表示装置の高精細化および高機能化に伴い、画面の均一性および表示品位のより一層の向上が求められている。しかし、従来の液晶表示装置においては、全方位において色つきのないニュートラルな表示を発現させることは困難であった。
【0005】
さらに、液晶表示装置の小型・携帯化に伴い、薄型化の要求も増大している。薄型化のための一つの手段として、位相差板に偏光子保護フィルムとしての役割を兼ねさせ、位相差板を偏光子に直接に貼り付けることが挙げられる(例えば、特許文献2参照)。しかし、位相差板を偏光子に直接に貼り付けた場合、位相差板と偏光子の界面において局所的な凹凸欠陥であるクニック欠陥(単にクニックと称する場合もある)が発生するという問題がある。クニック欠陥が発生すると、液晶表示装置において表示ムラ等の光学性能低下を引き起こす。
【特許文献1】特開平11−95208号公報
【特許文献2】特許第3807511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、全方位において色つきのないニュートラルな表示と高コントラストを与える液晶表示装置を提供できる光学フィルムであってクニック欠陥を抑制した光学フィルム、該光学フィルムを用いた液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、光学フィルムの積層構成および該積層に用いる接着剤に着目した。そして、光学フィルムとして、偏光子の一方の側に、特定範囲内にあるNz係数を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層を配置するという構成に想到するとともに、該偏光子と該複屈折層との積層に特定の接着剤を用いることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の光学フィルムは、透明保護フィルム、偏光子、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層をこの順に含み、該偏光子と該複屈折層が金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されてなる。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記透明保護フィルムが、セルロース系フィルムまたはアクリル系フィルムのいずれかである。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記偏光子の吸収軸と前記複屈折層の遅相軸とが実質的に直交してなる。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記複屈折層がλ/4板である。
【0012】
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。本発明の液晶パネルは、液晶セルと、該液晶セルの視認側に配置される本発明の光学フィルムとを含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記液晶セルのバックライト側にnx=ny>nzの関係を有する複屈折層が配置されてなる。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記nx=ny>nzの関係を有する複屈折層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドから選択される少なくとも1種の非液晶材料を含む。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記液晶セルが、VAモードまたはOCBモードである。
【0016】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、全方位において色つきのないニュートラルな表示と高コントラストを与える液晶表示装置を提供できる光学フィルムであってクニック欠陥を抑制した光学フィルム、該光学フィルムを用いた液晶パネル、および該液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【0018】
このような効果は、透明保護フィルム、偏光子、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層をこの順に含み、該偏光子と該複屈折層が金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層させて構成した光学フィルムによって、顕著に発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
【0020】
(1)「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸に垂直な方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。また、例えば「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、光学フィルムの全体的な偏光特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
【0021】
(2)「面内位相差Δnd」は、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム(層)面内の位相差値をいう。Δndは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Δnd=(nx−ny)×dによって求められる。
【0022】
(3)厚み方向の位相差Rthは、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rthは、波長590nmにおけるフィルム(層)の遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
【0023】
A.液晶パネルの構成とそれを含む液晶表示装置
図1は、本発明の液晶パネルの好ましい一例を説明する概略断面図である。液晶パネル100は、第1の透明保護フィルム10、第1の偏光子30、第1の複屈折層60、液晶セル40、第2の複屈折層70、第2の透明保護フィルム11、第2の偏光子50、第3の透明保護フィルム12を、この順に有する。上記第1の透明保護フィルム、第1の偏光子、第1の複屈折層は、上記液晶セルの視認側に配置されていてもバックライト側に配置されていてもよいが、好ましくは視認側に配置されてなる。
【0024】
第1の複屈折層60は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層である。第2の複屈折層70は、好ましくは、nx=ny>nzの関係を有する複屈折層である。第1の複屈折層60および第2の複屈折層70の詳細は後述する。
【0025】
図1において、第1の透明保護フィルム10、第1の偏光子30、第1の複屈折層60の積層体は、本発明の光学フィルムの好ましい一例である。本発明の光学フィルムにおいては、第1の偏光子30と第1の複屈折層60とを、これらの間に透明保護フィルムを配置せずに、金属酸化物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されている。これにより、全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な光学フィルムとすることができる。
【0026】
第1の偏光子30の吸収軸と第1の複屈折層60の遅相軸とは、実質的に直交している。
【0027】
液晶セル40は、一対のガラス基板41、42と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層43とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)41には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板(カラーフィルター基板)42には、カラーフィルター(図示せず)が設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板41に設けてもよい。基板41および42の間隔(セルギャップ)は、スペーサー44によって制御されている。基板41および42の液晶層43と接する側には、例えばポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0028】
液晶セル40の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。駆動モードの具体例としては、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane Switching)モード、VA(Vertical Aligned)モード、OCB(Optically Aligned Birefringence)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モードおよびASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードが挙げられる。VAモードおよびOCBモードが好ましい。カラーシフトの改善が著しいからである。
【0029】
図2は、VAモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。図2(a)に示すように、電圧無印加時には、液晶分子は基板41、42面に垂直に配向する。このような垂直配向は、垂直配向膜(図示せず)を形成した基板間に負の誘電率異方性を有するネマチック液晶を配することにより実現され得る。このような状態で一方の基板41の面から光を入射させると、第2の偏光子50を通過して液晶層43に入射した直線偏光の光は、垂直配向している液晶分子の長軸の方向に沿って進む。液晶分子の長軸方向には複屈折が生じないため入射光は偏光方位を変えずに進み、第2の偏光子50と直交する偏光軸を有する第1の偏光子30で吸収される。これにより電圧無印加時において暗状態の表示が得られる(ノーマリーブラックモード)。図2(b)に示すように、電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸が基板面に平行に配向する。この状態の液晶層43に入射した直線偏光の光に対して液晶分子は複屈折性を示し、入射光の偏光状態は液晶分子の傾きに応じて変化する。所定の最大電圧印加時において液晶層を通過する光は、例えばその偏光方位が90°回転させられた直線偏光となるので、第1の偏光子30を透過して明状態の表示が得られる。再び電圧無印加状態にすると配向規制力により暗状態の表示に戻すことができる。また、印加電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して第1の偏光子30からの透過光強度を変化させることにより階調表示が可能となる。
【0030】
図3は、OCBモードにおける液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。OCBモードは、液晶層43をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成する駆動モードである。ベンド配向とは、図3(c)に示すように、ネマチック液晶分子の配向が基板近傍においては、ほぼ平行の角度(配向角)を有し、配向角は液晶層の中心に向かうに従って基板平面に対して垂直な角度を呈し、液晶層の中心から離れるに従って対向する基板表面と配向になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しない配向状態をいう。このようなベンド配向は、以下のようにして形成される。図3(a)に示すように、何ら電界等を付与していない状態(初期状態)では、液晶分子は実質的にホモジニアス配向をとっている。ただし、液晶分子は、プレチルト角を有し、かつ、基板近傍のプレチルト角とそれに対向する基板近傍のプレチルト角とが異なっている。ここに所定のバイアス電圧(代表的には、1.5V〜1.9V)を印加すると(低電圧印加時)、図3(b)に示すようなスプレイ配向を経て、図3(c)に示すようなベンド配向への転移が実現され得る。ベンド配向状態からさらに表示電圧(代表的には、5V〜7V)を印加すると(高電圧印加時)、液晶分子は図3(d)に示すように基板表面に対してほぼ垂直に立ち上がる。ノーマリーホワイトの表示モードにおいては、第2の偏光子50を通過して、高電圧印加時に図3(d)の状態にある液晶層に入射した光は、偏光方位を変えずに進み、第1の偏光子30で吸収される。したがって、暗状態の表示となる。表示電圧を下げると、ラビング処理の配向規制力により、ベンド配向に戻り、明状態の表示に戻すことができる。また、表示電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光子からの透過光強度を変化させることにより、階調表示が可能となる。なお、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、スプレイ配向状態からベンド配向状態への相転移を非常に高速でスイッチングできるため、TNモードやIPSモード等の他駆動モードの液晶表示装置に比べ、動画表示特性に優れるという特徴を有する。
【0031】
上記OCBモードの液晶セルの表示モードは、高電圧印加時に暗状態(黒表示)をとるノーマリーホワイトモード、高電圧印加時に明状態(白表示)をとるノーマリーブラックモードのいずれのモードでも使用することができる。
【0032】
上記OCBモードの液晶セルのセルギャップは、好ましくは2μm〜10μmであり、さらに好ましくは3μm〜9μmであり、特に好ましくは4μm〜8μmである。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
【0033】
上記OCBモードの液晶セルに使用されるネマチック液晶は、好ましくは、誘電率異方性が正のものが使用される。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、特開平9−176645号公報に記載のものが挙げられる。また、市販のネマチック液晶をそのまま用いてもよい。市販のネマチック液晶としては、例えば、メルク社製 商品名「ZLI−4535」、および商品名「ZLI−1132」等が挙げられる。上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶の応答速度や透過率等によって適宜に選択されるが、好ましくは0.05〜0.30であり、さらに好ましくは0.10〜0.30であり、さらに好ましくは0.12〜0.30である。また、このようなネマチック液晶のプレチルト角は、好ましくは1°〜10°であり、さらに好ましくは2°〜8°であり、特に好ましくは3°〜6°である。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
【0034】
上記のような液晶パネルは、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、プロジェクター等の液晶表示装置に好適に用いられる。
【0035】
B.偏光子
本発明における偏光子(例えば、第1の偏光子30や第2の偏光子50)は、ポリビニルアルコール系樹脂から形成される。本発明における偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)で染色して一軸延伸したものが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、好ましくは100〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、任意の適切な方法(例えば、樹脂を水または有機溶媒に溶解した溶液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法)で成形され得る。偏光子の厚みは、用いられる液晶表示装置や画像表示装置の目的や用途に応じて適宜設定され得るが、好ましくは5〜80μmである。
【0036】
偏光子の製造方法としては、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、染色工程、架橋工程、延伸工程、洗浄工程、乾燥工程を含む製造工程に供する方法が採用される。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む浴中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより処理を行う。染色工程、架橋工程、延伸工程、洗浄工程、乾燥工程の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件等に応じて適宜設定され得る。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、特定の処理を省略してもよい。より詳細には、例えば延伸処理は、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、洗浄処理は、すべての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。特に好ましくは、染色工程、架橋工程、延伸工程、洗浄工程、乾燥工程をこの順に行うことである。また、染色工程の前に膨潤工程を行うことも好ましい態様である。
【0037】
(膨潤工程)
膨潤工程は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させる工程である。代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水で満たした処理浴(膨潤浴)中に浸漬することにより行われる。この処理により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄するとともに、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止し得る。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜添加され得る。膨潤浴の温度は、好ましくは20〜60℃、より好ましくは20〜50℃であり、膨潤浴への浸漬時間は、好ましくは0.1〜10分、より好ましくは1〜7分である。なお、後述する染色工程においてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させることもできるので、本膨潤工程は省略することもできる。
【0038】
なお、フィルムを膨潤浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、必要に応じて、ピンチロール等の任意の適切な液切れロールを用いても良いし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法によって余分な水分を取り除いても良い。
【0039】
(染色工程)
染色工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴(染色浴)中に浸漬(吸着または接触などとも言われる場合がある)することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.02〜7重量部、さらに好ましくは0.025〜5重量部の割合で用いられる。
【0040】
上記二色性物質としては、本発明に好適な任意の適切な物質が使用でき、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、エロー3G、エローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどが挙げられる。
【0041】
染色工程において、上記二色性物質は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。有機染料を用いる場合には、例えば、可視光領域のニュートラル化を図る点から、2種類以上を組み合わせることが好ましい。このような具体例としては、例えば、コンゴーレッドとスプラブルーG、スプラオレンジGLとダイレクトスカイブルー、ダイレクトスカイブルーとファーストブラックなどの組み合わせが挙げられる。
【0042】
上記二色性物質としてヨウ素を用いる場合には、染色浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。これらの中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。助剤は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。ヨウ素と助剤(好ましくはヨウ化カリウム)の割合(重量比)は、好ましくは1:5〜1:100、より好ましくは1:6〜1:80、さらに好ましくは1:7〜1:70である。
【0043】
染色浴の温度は、好ましくは5〜70℃、より好ましくは5〜42℃、さらに好ましくは10〜35℃である。染色浴への浸漬時間は、好ましくは1〜20分、より好ましくは2〜10分である。
【0044】
染色工程においては、染色浴中でフィルムを延伸しても良い。このときの累積した総延伸倍率は、好ましくは1.1〜4.0倍である。
【0045】
染色工程における染色処理として、上記のような染色浴に浸漬する方法以外に、例えば、二色性物質を含む水溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布または噴霧する方法であってもよい。また、前工程におけるフィルムの製膜時に二色性物質をあらかじめ混合しておくことも可能である。この場合には、前工程と染色工程が同時期に行われることになる。
【0046】
なお、フィルムを染色浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、必要に応じて、ピンチロール等の任意の適切な液切れロールを用いても良いし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法によって余分な水分を取り除いても良い。
【0047】
(架橋工程)
架橋工程は、代表的には、上記染色処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、架橋剤を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬することにより行われる。架橋剤としては、任意の適切な架橋剤が採用され得る。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用され得る。2種類以上を組み合わせる場合には、例えば、ホウ酸とホウ砂の組み合わせが好ましく、その組み合わせ割合(モル比)は、好ましくは4:6〜9:1、より好ましくは5.5:4.5〜7:3、さらに好ましくは5.5:4.5〜6.5〜3.5である。
【0048】
架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、代表的には1〜10重量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1重量部未満の場合には、十分な光学特性を得ることができない場合が多い。架橋剤の濃度が10重量部を超える場合には、延伸時にフィルムに発生する延伸力が大きくなり、例えば、得られる偏光板が収縮してしまう場合がある。
【0049】
架橋浴の溶液は、ヨウ化カリウムを必須に含む助剤をさらに含有することが好ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化カリウム以外の助剤としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが挙げられる。これらの1種のみ用いても2種以上を併用しても良い。
【0050】
架橋浴の温度は、好ましくは20〜70℃、より好ましくは40〜60℃である。架橋浴へのフィルムの浸漬時間は、好ましくは1秒〜15分、より好ましくは5秒〜10分である。
【0051】
架橋工程においては、染色工程と同様に、架橋剤含有溶液をフィルムに塗布または噴霧する方法を採用しても良い。また、架橋工程において、架橋浴中でフィルムを延伸しても良い。このときの累積した総延伸倍率は、好ましくは1.1〜4.0倍である。
【0052】
なお、フィルムを架橋浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、必要に応じて、ピンチロール等の任意の適切な液切れロールを用いても良いし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法によって余分な水分を取り除いても良い。
【0053】
(延伸工程)
延伸工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程である。延伸工程は、上記のように、いずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。
【0054】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの累積延伸倍率は、好ましくは2〜7倍、より好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が2倍未満である場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる場合がある。累積延伸倍率が7倍を超える場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(偏光子)が破断しやすくなる場合がある。延伸後のフィルムの厚みは、好ましくは3〜75μm、より好ましくは5〜50μmである。
【0055】
延伸の具体的な方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを温水溶液中で延伸する湿式延伸法、含水後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを空気中で延伸する乾式延伸法などが挙げられる。湿式延伸法を採用した場合には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、処理浴(延伸浴)中で所定の倍率に延伸する。
【0056】
延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えば、エタノール)などの溶媒中に、ヨウ化カリウムを必須に含む溶液が好適に用いられる。ヨウ化カリウム以外には、例えば、各種金属塩、ホウ素または亜鉛の化合物、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが、これらの1種または2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、ホウ酸を含むことが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度は、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ホウ酸とヨウ化カリウムを併用する場合には、その組み合わせ割合(重量比)は、好ましくは1:0.1〜1:4、より好ましくは1:0.5〜1:3である。
【0057】
延伸浴の温度は、好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜67℃、さらに好ましくは50〜62℃である。乾式延伸する場合には、50〜180℃が好ましい。
【0058】
なお、フィルムを延伸浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、必要に応じて、ピンチロール等の任意の適切な液切れロールを用いても良いし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法によって余分な水分を取り除いても良い。
【0059】
(洗浄工程)
洗浄工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、処理浴(水洗浴)中に浸漬することにより行われる。洗浄工程により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの不要残存物を洗い流すことができる。洗浄浴は、ヨウ化カリウムを必須に含む水溶液である。ヨウ化カリウム以外には、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンが、これらの1種または2種以上含まれていてもよい。ヨウ化カリウムの濃度は、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%、特に好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物水溶液には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。
【0060】
洗浄浴の温度は、好ましくは10〜60℃、より好ましくは15〜40℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は、好ましくは1秒〜1分である。洗浄工程は1回だけ行ってもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施する場合、各処理に用いられる洗浄浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜調整され得る。例えば、洗浄工程は、ポリマーフィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10重量%、10〜60℃)に1秒〜1分浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。
【0061】
なお、フィルムを洗浄浴から引き上げる際には、液だれの発生を防止するために、必要に応じて、ピンチロール等の任意の適切な液切れロールを用いても良いし、エアーナイフによって液を削ぎ落とす等の方法によって余分な水分を取り除いても良い。
【0062】
(乾燥工程)
乾燥工程としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥など)が採用され得る。好ましくは加熱乾燥である。加熱乾燥の場合には、乾燥温度は、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜45℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜10分である。以上のようにして、偏光子が得られる。
【0063】
C.透明保護フィルム
上記のように、実用的には、第1の偏光子30の片側(第1の複屈折層の配されていない側)には、透明保護フィルム(図1における透明保護フィルム10)が設けられ得る。さらに、図1に示すように、本発明の液晶パネルが第2の偏光子50を有する場合には、第2の偏光子50の少なくとも片側には、透明保護フィルム(図1においては、透明保護フィルム11、12)が設けられ得る。透明保護フィルムを設けることにより、偏光子の劣化が防止され得る。
【0064】
透明保護フィルムとしては、任意の適切な保護フィルムが採用され得る。透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が挙げられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂も用いられ得る。偏光特性および耐久性の観点から、セルロース系フィルム(表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムなど)またはアクリル系フィルムが好ましい。
【0065】
アクリル系フィルムとしては、任意の適切なアクリル系樹脂を材料とするフィルムを採用し得る。
【0066】
上記アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であれば耐久性に優れ得る。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0067】
上記アクリル系樹脂を材料とするアクリル系フィルムは、面内位相差(Δnd)、厚み方向の位相差(Rth)が、好ましくはほぼゼロ(0)となり得る。
【0068】
上記アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切なアクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0069】
上記アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0070】
上記アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0071】
上記アクリル系樹脂として、不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構造単位およびグルタル酸無水物由来の構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。このような(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2004−70290号公報、特開2004−70296号公報、特開2004−163924号公報、特開2004−292812号公報、特開2005−314534号公報、特開2006−131898号公報、特開2006−206881号公報、特開2006−265532号公報、特開2006−283013号公報、特開2006−299005号公報、特開2006−335902号公報などに記載の、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0072】
上記アクリル系樹脂として、グルタルイミド由来の構造単位、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位、および芳香族ビニル由来の構造単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることができる。このような(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報などに記載の、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0073】
さらに、例えば、特開2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような樹脂組成物から形成されるポリマーフィルムも保護フィルムとして使用可能である。より詳細には、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とシアノ基とを有する熱可塑性樹脂との混合物である。具体例としては、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。例えば、このような樹脂組成物の押出成形物が用いられ得る。
【0074】
上記透明保護フィルムは、透明で色付が無いことが好ましい。具体的には、透明保護フィルムの厚み方向の位相差Rthが、好ましくは−90nm〜+75nm、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、最も好ましくは−70nm〜+45nmである。透明保護フィルムの厚み方向の位相差Rthがこのような範囲であれば、透明保護フィルムに起因する偏光子の光学的着色を解消し得る。
【0075】
上記透明保護フィルムの厚みは、目的に応じて適宜設定され得る。透明保護フィルムの厚みは、代表的には500μm以下、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは5〜150μmである。
【0076】
第1の偏光子または第2の偏光子と透明保護フィルムとの積層の好ましい形態は、接着剤層を介して、第1の偏光子または第2の偏光子が透明保護フィルムに接着されてなる。
【0077】
上記接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤を採用し得る。例えば、ポリビニルアルコール系接着剤が挙げられる。ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有する。また、後述するような、金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を採用しても良い。
【0078】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコール;などが挙げられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は1種のみ用いても良いし2種以上を併用しても良い。
【0079】
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、接着性の点からは、平均重合度が好ましくは100〜3000、より好ましくは500〜3000であり、平均ケン化度が好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%である。
【0080】
上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、得られる光学フィルムの耐久性が向上する点で好ましい。上記アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、日本合成化学(株)製の商品名「ゴーセノールZシリーズ」、同社の商品名「ゴーセノールNHシリーズ」、同社の商品名「ゴーセファイマーZシリーズ」が挙げられる。
【0081】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法が挙げられる。
【0082】
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不十分であり不適当である。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは1〜20モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると架橋剤との反応点が少なくなり、耐水性の向上効果が小さい。アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0083】
上記架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。
架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類(なかでもヘキサメチレンジアミンが好ましい);トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチレンプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物;などが挙げられる。架橋剤としては、メラミン系架橋剤が好ましく、特にメチロールメラミンが好適である。上記アルデヒド類の具体例としては、日本合成化学(株)製 商品名「グリオキザール」、OMNOVA製 商品名「セクアレッツ755」等が挙げられる。上記アミン類の具体例としては、三菱瓦斯化学(株)製 商品名「メタシキレンジアミン」等が挙げられる。また、上記メチロール化合物の具体例としては、大日本インキ(株)製 商品名「ウォーターゾールシリーズ」等が挙げられる。
【0084】
上記架橋剤の配合量は、上記ポリビニルアルコール系樹脂(好ましくは、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂)100重量部に対して、好ましくは1〜60重量部である。該配合量の上限値は、より好ましくは50重量部であり、さらに好ましくは30重量部であり、さらに好ましくは15重量部であり、特に好ましくは10重量部であり、最も好ましくは7重量部である。該配合量の下限値は、より好ましくは5重量部であり、さらに好ましくは10重量部であり、特に好ましくは20重量部である。上記の範囲とすることによって、透明性、接着性、耐水性に優れた接着剤層を形成することができる。なお、架橋剤の配合量が多い場合、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難になるおそれがある。しかし、後述する金属化合物コロイドを併用する場合には、架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
【0085】
なお、上記ポリビニルアルコール系接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。
【0086】
第1の偏光子30と接する面(好ましくは、積層体Aの透明保護フィルム面、あるいは、偏光子保護フィルム面)には接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
【0087】
上記アンカー層としては、例えば、反応性官能基を有するシリコーン層が挙げられる。反応性官能基を有するシリコーン層の材料は、特に制限されないが、例えば、イソシアネート基含有のアルコキシシラノール類、アミノ基含有アルコキシシラノール類、メルカプト基含有アルコキシシラノール類、カルボキシ含有アルコキシシラノール類、エポキシ基含有アルコキシシラノール類、ビニル型不飽和基含有アルコキシシラノール類、ハロゲン基含有アルコキシラノール類、イソシアネート基含有アルコキシシラノール類が挙げられ、アミノ系シラノールが好ましい。さらに上記シラノールを効率よく反応させるためのチタン系触媒や錫系触媒を添加することにより、接着力を強固にすることができる。また上記反応性官能基を有するシリコーンに他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらにはテルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂などの粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤等を用いても良い。
【0088】
上記反応性官能基を有するシリコーン層は公知の技術により塗工、乾燥して形成される。シリコーン層の厚みは、乾燥後で、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。塗工の際、反応性官能基を有するシリコーンを溶剤で希釈してもよい。希釈溶剤は特に制限はされないが、アルコール類があげられる。希釈濃度は特に制限されないが、好ましくは1〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%である。
【0089】
上記接着剤層の形成は、接着剤(例えば、上記で説明したポリビニルアルコール系接着剤や、後述するような、金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤)を、透明保護フィルムの偏光子への接着面側、偏光子の透明保護フィルムへの接着面側、これらの両側、のいずれかに塗布することにより行うことが好ましい。偏光子と透明保護フィルムとを貼り合せた後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成することが好ましい。接着剤層を形成した後にこれを貼り合わせることもできる。上記貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。加熱乾燥温度、乾燥時間は接着剤の種類に応じて適宜決定される。
【0090】
上記接着剤層の厚みは、乾燥後の厚みで厚くなりすぎると、接着性の点で好ましくないことから、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0091】
D.Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層(第1の複屈折層)
【0092】
第1の複屈折層は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する。好ましくは1.1≦Nz≦1.7、より好ましくは1.1≦Nz≦1.4である。第1の複屈折層が1<Nz≦2の関係を有することにより、特定の第2の複屈折層と組み合わせることによって全方位において色つきのないニュートラルな表示が得られる液晶表示装置に好適な液晶パネルを提供することが可能となる。第1の複屈折層は、好ましくはλ/4板である。
【0093】
第1の複屈折層の面内位相差は、好ましくは90〜160nmであり、より好ましくは95〜150nmであり、さらに好ましくは95〜145nmである。
【0094】
第1の複屈折層の厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、第1の複屈折層の厚みは、好ましくは20〜110μmであり、さらに好ましくは25〜105μmであり、最も好ましくは30〜100μmである。
【0095】
第1の複屈折層を形成し得る樹脂としては、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。具体的には、第1の複屈折層は環状オレフィン系フィルムである。
【0096】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。
【0097】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0098】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内において、開環重合可能な他のシクロオレフィン類を併用することができる。このようなシクロオレフィンの具体例としては、例えば、シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等の反応性の二重結合を1個有する化合物が挙げられる。
【0099】
上記環状オレフィン系樹脂は、トルエン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した数平均分子量(Mn)が好ましくは25,000〜200,000、さらに好ましくは30,000〜100,000、最も好ましくは40,000〜80,000である。数平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0100】
上記環状オレフィン系樹脂がノルボルネン系モノマーの開環重合体を水素添加して得られるものである場合には、水素添加率は、好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、最も好ましくは99%以上である。このような範囲であれば、耐熱劣化性および耐光劣化性などに優れる。
【0101】
上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0102】
第1の複屈折層は、上記環状オレフィン系樹脂から形成されたフィルム(環状オレフィン系フィルム)を延伸することにより得られ得る。環状オレフィン系フィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、注型(キャスティング)法等が挙げられる。押出成形法または注型(キャスティング)法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、第1の複屈折層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記環状オレフィン系フィルムは、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
【0103】
上記環状オレフィン系フィルムは、自由端延伸されたフィルムであっても良いし、固定端延伸されたフィルムであっても良い。好ましくは固定端延伸されたフィルムである。固定端延伸を行うことによって、Nz係数が1<Nz≦2の関係を有するフィルムとし易い。また、固定端延伸を行うことによって、フィルムの短手方向(幅方向)に遅相軸を設けることができるので、当該フィルムの遅相軸を偏光子の吸収軸に対して直交するように配置させる場合には、当該フィルムと偏光子との貼り合わせをロールtoロールで連続的に行うことが可能となり、製造効率が高くなる。
【0104】
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸倍率は、好ましくは1.2〜4.0倍、さらに好ましくは1.2〜3.8倍、最も好ましくは1.25〜3.6倍である。このような倍率で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の複屈折層が得られ得る。延伸倍率が1.2倍より小さい場合には、第1の複屈折層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。延伸倍率が4.0倍よりも大きい場合には、延伸中にフィルムが切れてしまったり、脆くなってしまったりするおそれがある。
【0105】
上記環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸温度は、好ましくは130〜165℃、さらに好ましくは135〜165℃、最も好ましくは137〜165℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の効果を適切に発揮し得る第1の複屈折層が得られ得る。延伸温度が130℃より低い場合には、均一に延伸できないおそれがある。延伸温度が165℃より高い場合には、第1の複屈折層に求められる所望の面内位相差が発現できないおそれがある。
【0106】
E.第1の複屈折層と第1の偏光子との積層
第1の偏光子と第1の複屈折層とは、金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されてなる。図1を例に説明すると、第1の偏光子30と第1の複屈折層60とが金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されてなる。
【0107】
第1の複屈折層における第1の偏光子への積層面には、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、樹脂材料を塗工することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。易接着処理されることにより、易接着層が形成される。易接着層の厚みは、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜80nmである。
【0108】
金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤は、第1の偏光子側に塗工してもよいし、第1の複屈折層側に塗工してもよいし、第1の偏光子と第1の複屈折層の両側に塗工してもよい。
【0109】
上記接着剤層は、例えば、接着剤を所定割合で含有する塗工液を上記第1の光学補償層の表面および/または第1の偏光子の表面に、塗工し乾燥することで形成される。上記塗工液の調製方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、市販の溶液または分散液を用いてもよく、市販の溶液または分散液にさらに溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解または分散して用いてもよい。
【0110】
上記金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤は、前述したポリビニルアルコール系接着剤(ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤)に金属化合物コロイドがさらに含有される。上記金属化合物コロイドは、金属化合物微粒子が分散媒中に分散しているものであり得、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものであり得る。
【0111】
金属化合物コロイドを形成する微粒子の平均粒子径は、偏光特性等の光学特性に悪影響を及ぼさない限り、任意の適切な値であり得る。好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。微粒子を接着剤層中に均一に分散させ得、接着性を確保し、かつクニックを抑え得るからである。なお、「クニック」とは、偏光子と保護層の界面で生じる局所的な凹凸欠陥のことをいう。
【0112】
上記金属化合物としては、任意の適切な化合物を採用し得る。例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物が挙げられる。好ましくはアルミナである。
【0113】
上記金属化合物コロイドは、代表的には、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒としては、例えば、水、アルコール類が挙げられる。コロイド溶液中の固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%である。コロイド溶液は、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有し得る。
【0114】
上記金属化合物コロイド(固形分)配合量は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して200重量部以下であり、より好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜175重量部、最も好ましくは30〜150重量部である。接着性を確保しながら、クニックの発生を抑え得るからである。
【0115】
上記接着剤の調製方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、金属化合物コロイドを含有する接着剤の場合であれば、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤とを予め混合して適切な濃度に調整したものに、金属化合物コロイドを配合する方法が挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、使用時期等を考慮しながら混合することもできる。なお、樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に調整してもよい。
【0116】
上記接着剤の樹脂濃度は、塗工性や放置安定性等の点から、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0117】
上記接着剤のpHは、好ましくは2〜6、より好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、最も好ましくは3.5〜4.5である。通常、金属化合物コロイドの表面電荷は、pHを調整することにより制御し得る。当該表面電荷は、好ましくは正電荷である。正電荷を有することにより、例えば、クニック発生を抑制し得る。
【0118】
上記接着剤の全固形分濃度は、接着剤の溶解性、塗工粘度、ぬれ性、目的とする厚みなどによって変化し得る。全固形分濃度は、溶剤100に対して、好ましくは2〜100(重量比)であり、より好ましくは10〜50(重量比)であり、さらに好ましくは20〜40(重量比)である。このような範囲であれば、表面均一性の高い接着剤層が得られる。
【0119】
上記接着剤の粘度としては、任意の適切な粘度を採用し得る。例えば、23℃におけるせん断速度1000(1/s)で測定した値が、好ましくは1〜50(mPa・s)であり、より好ましくは2〜30(mPa・s)であり、さらに好ましくは4〜20(mPa・s)である。上記の範囲であれば、表面均一性に優れた接着剤層を形成することができる。
【0120】
上記接着剤の塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、コータを用いた塗工方式を用いることができる。用いられるコータは、上述したコータの中から適宜選択され得る。
【0121】
上記接着剤のガラス転移温度(Tg)としては、任意の適切な温度が採用され得る。好ましくは20〜120℃であり、より好ましくは40〜100℃であり、さらに好ましくは50〜90℃である。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量(DSC)測定によるJISK7121−1987に準じた方法で測定することができる。
【0122】
上記接着剤層の厚みとしては、任意の適切な厚みが採用され得る。好ましくは0.01〜0.15μmであり、より好ましくは0.02〜0.12μmであり、さらに好ましくは0.03〜0.09μmである。上記の範囲であれば、高温多湿の環境下に曝されても、耐久性に優れ、偏光子のはがれや浮きが生じない。
【0123】
上記接着剤は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を含み得る。
【0124】
F.nx=ny>nzの関係を有する複屈折層(第2の複屈折層)
第2の複屈折層は、好ましくはnx=ny>nzの関係を有する。第2の複屈折層は、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。積層体の場合には、積層体全体として上記のような光学特性を有する限り、各層を構成する材料および各層の厚みは適宜設定され得る。
【0125】
第2の複屈折層がnx=ny>nzの関係を有する場合、いわゆるネガティブCプレートとして機能し得る。第2の複屈折層がこのような屈折率分布を有することにより、特定の第1の複屈折層との組み合わせによって本発明の目的が効果的に達成し得る。上記のように、本明細書においては「nx=ny」は、nxとnyとが厳密に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合も包含するので、第2の複屈折層は面内位相差を有し得、また、遅相軸を有し得る。ネガティブCプレートとして実用的に許容可能な面内位相差Δndは、好ましくは0〜20nmであり、より好ましくは0〜10nmであり、さらに好ましくは0〜5nmである。
【0126】
第2の複屈折層の厚み方向の位相差Rthは、好ましくは30〜350nmであり、より好ましくは60〜300nmであり、さらに好ましくは80〜260nmであり、最も好ましくは100〜240nmである。
【0127】
上記のような厚み方向の位相差が得られ得る第2の複屈折層の厚みは、使用される材料等に応じて変化し得る。例えば、第2の複屈折層の厚みは、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、さらに好ましくは1〜15μmであり、さらに好ましくは1〜10μmであり、特に好ましくは1〜8μmであり、最も好ましくは1〜5μmである。このような厚みは、二軸延伸によるネガティブCプレートの厚み(例えば、60μm以上)に比べて薄く、画像表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。さらに、第2の複屈折層を非常に薄く形成することにより、熱ムラが顕著に防止され得る。
【0128】
第2の複屈折層を構成する材料としては、上記のような光学特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。好ましくは、第2の複屈折層は、非液晶性材料のコーティング層である。延伸フィルムに比べて厚みを格段に薄くできるので、液晶パネルの薄型化に寄与し得るからである。好ましくは、非液晶性材料は、非液晶性ポリマーである。このような非液晶性材料をコーティング層に用いる場合、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成し得る。その結果、配向基板のみならず未配向基板も使用され得る。さらに、未配向基板を用いる場合であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
【0129】
上記非液晶性材料としては、例えば、特開2004−46065号公報の段落(0018)〜(0072)に例示のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むからである。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0130】
上記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0131】
次に、第2の複屈折層の製造方法について説明する。第2の複屈折層の製造方法としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な方法が採用され得る。
【0132】
第2の複屈折層は、好ましくは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、およびポリエステルイミドからなる群より選択される少なくとも1種の非液晶材料を含む。この非液晶材料を含む溶液を、好ましくは、透明高分子フィルムに塗布後、乾燥して、透明高分子フィルム上に該ポリマー層を形成することで、nx=ny>nzの関係を有する第2の複屈折層が得られる。
【0133】
第2の複屈折層の代表的な製造方法は、基材フィルムに上記非液晶性ポリマーの溶液を塗工する工程と、当該溶液中の溶媒を除去して非液晶性ポリマーの層を形成する工程とを含む。非液晶性ポリマーの層は、偏光板(代表的には、偏光子の保護層)に直接塗工して形成してもよく(すなわち、偏光子の保護層が基材フィルムを兼ねてもよく)、任意の適切な基材に形成した後、偏光子(代表的には、偏光子の保護層)に転写してもよい。転写による方法は、基材を剥離することをさらに含み得る。
【0134】
上記基材フィルムとしては、任意の適切なフィルムが採用され得る。代表的な基材フィルムとしては、前述した偏光子の保護層に用いられるプラスチックフィルムが挙げられる。偏光子の保護層自体が基材フィルムを兼ねてもよい。
【0135】
上記塗工溶液(透明高分子フィルムに塗布するポリマー溶液)の溶媒は、特に制限されず、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等が挙げられる。中でも、メチルイソブチルケトンが好ましい。非液晶材料に対して高い溶解性を示し、かつ、基板を侵食しないからである。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0136】
上記塗工溶液における上記非液晶性ポリマーの濃度は、上記のような第2の複屈折層が得られ、かつ塗工可能であれば、任意の適切な濃度が採用され得る。例えば、当該溶液は、溶媒100重量部に対して、非液晶性ポリマーを好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部含む。このような濃度範囲の溶液は、塗工容易な粘度を有する。
【0137】
上記塗工溶液は、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤をさらに含有し得る。
【0138】
上記塗工溶液は、必要に応じて、異なる他の樹脂をさらに含有し得る。このような他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。このような樹脂を併用することにより、目的に応じて適切な機械的強度や耐久性を有する光学補償層を形成することが可能となる。
【0139】
上記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等が挙げられる。上記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0140】
上記塗工溶液に添加される上記異なる樹脂の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、このような樹脂は、上記非液晶性ポリマーに対して、好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜30重量%の割合で添加され得る。
【0141】
上記溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用され得る。
【0142】
塗工後、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥(例えば、60〜250℃)などの乾燥により、上記溶液中の溶媒を蒸発除去させ、フィルム状の光学補償層を形成する。
【0143】
第2の複屈折層を構成する材料としては、例えば、ポリ(4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン−ビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−5−イリデンビスフェノール)テレフタレート、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テトラクロロビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)−ビスフェノール−コ−(2−ノルボルニリデン)−ビスフェノールテレフタレート、ポリ(4,4’−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−5−イリデン)−ビスフェノール−コ−(4,4’−イソプロピリデン−2,2’,6,6’−テトラブロモ)−ビスフェノールテレフタレート、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ビスフェノール−コ−4,4’−(2−ノルボルニリデン)ビスフェノール)テレフタレート−コ−イソフタレート、またはこれらのコポリマーを採用しても良い。これらは1種のみ用いても、2種以上を併用しても良い。
【0144】
G.第2の複屈折層と第2の偏光子との積層
前述の通り、本発明における第2の複屈折層は、好ましくは、基材上のコーティング層として形成され得る。基材が偏光子の保護層を兼ねる場合(例えば、基材がトリアセチルセルロースフィルムなどのセルロース系フィルムの場合)には、基材のコーティング層と反対の側が、第2の偏光子と接着剤を介して直接に積層されてなることが好ましい。基材が偏光子の保護層を兼ねない場合には、第2の偏光子(代表的には、第2の偏光子の保護層)に転写し、基材を剥離することが好ましい。接着剤についての詳細は、前述した通りである。
【0145】
H.液晶セルと第1の複屈折層または第2の複屈折層との積層
第1の複屈折層または第2の複屈折層の液晶セルへの積層面側には、液晶セルと密着させるため、好ましくは粘着剤層を有する。
【0146】
上記粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用い得る。特に、炭素数が4〜12のアクリル系ポリマーよりなるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0147】
上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が好ましい。
【0148】
上記粘着剤層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着剤層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。
【0149】
上記粘着剤層は、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層などであってもよい。
【0150】
上記粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で光学フィルム(例えば、第1の複屈折層)上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着剤層を形成してそれを光学フィルム(例えば、第1の複屈折層)面に移着する方式などがあげられる。
【0151】
粘着剤層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として光学フィルム(例えば、第2の複屈折層)の片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着剤層とすることもできる。
【0152】
粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、好ましくは1〜40μmであり、より好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは10〜25μmである。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、また、40μmより厚くなると発泡などによる浮きや剥がれが生じやすく外観不良となる。
【0153】
上記光学フィルム(例えば、第1の複屈折層)と上記粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることも可能である。
【0154】
上記アンカー層としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー層が用いられ、特に好ましくは分子中にアミノ基を含んだポリマー類が使用される。分子中にアミノ基を含んだポリマーは、分子中のアミノ基が、粘着剤中のカルボキシル基や、導電性ポリマー中の極性基と反応もしくはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0155】
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、前述アクリル系粘着剤の共重合モノマーで示したジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などを挙げることができる。
【0156】
上記アンカー層に帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などが挙げられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。これは、帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗布工程に際して有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑える事が出来るためである。
【0157】
本発明においては、上記第1の偏光子30、第1の複屈折層60、第2の偏光子50、第2の複屈折層70、接着剤層、粘着剤層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【実施例】
【0158】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0159】
〈位相差の測定〉
試料フィルムの屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA−WPR)により計測し、面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthを算出した。測定温度は23℃、測定波長は590nmであった。
【0160】
〈コントラストの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、極角を60°方向で方位角を0〜360°に変化させ、方位角45°、135°、225°、315°におけるコントラストを測定して、その平均値を求めた。なお、方位角および極角は図4に示す通りである。
【0161】
〈カラーシフトの測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、方位角0〜360°に変化させて、極角を60°方向にした液晶表示装置の色調を測定し、xy色度図上にプロットした。
【0162】
〈黒輝度の測定〉
ELDIM社製 商品名 「EZ Contrast160D」を用いて、極角60°方向で、方位角を−180°〜180°に変化させ、方位角と黒輝度との関係をプロットした。
【0163】
〈クニック評価〉
23℃の暗室で、バックライトを点灯させてから30分間経過した後、黒表示をした場合の表示面を目視により観察し、1000mm×1000mm内の輝点(クニック)の数を目視にてカウントした。
【0164】
〔参考例1〕:偏光子(第1の偏光子、第2の偏光子と称することもある)の作製
ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸して偏光子を作製した。
【0165】
〔参考例2〕:金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤の調製
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(商品名「ゴーセファイマーZ200」、日本合成化学工業(株)製、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100重量部に対し、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を得た。この水溶液100重量部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm、固形分濃度10%、正電荷)18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4〜4.5であった。
【0166】
〔参考例3〕:ポリビニルアルコール系接着剤の調製
アルミナコロイド水溶液を加えなかった以外は参考例2と同様にして、ポリビニルアルコール系接着剤水溶液を調製した。
【0167】
〔実施例1〕
(偏光板一体型位相差フィルム(1A)の作製)
ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名:ゼオノア、型番:ZF14−100、厚み:100μm)を、TD方向に150℃で2.6倍に固定端延伸することによって、第1の複屈折層を作製した。この第1の複屈折層の厚みは33μm、Nz=1.3(Rth=170nm、Δnd=130nm)であった。
第1の偏光子の吸収軸と第1の複屈折層の遅相軸とが直交するように貼り合わせた。さらに、第1の偏光子の第1の複屈折層とは反対の側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を貼り合わせた。各層は、参考例2で調製した金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を介して貼り合わせた。
(偏光板一体型位相差フィルム(1B)の作製)
TAC基材(厚み:80μm)に、2,2´−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)および2,2´−ビス(トリフルオロメチル)−4,4´−ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドを、メチルイソブチルケトン(MIBK)を溶媒として調製した溶液(濃度:10重量%)を30μmの厚みで塗布した。その後、120℃で10分間乾燥処理することで、ポリイミド層の厚みが約3μmの、基材一体型の第2の複屈折層を得た。得られた第2の複屈折層の屈折率分布はnx=ny>nzであった。この基材一体型の第2の複屈折層の基材側に、参考例2で調製した金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用い、第2の偏光子を、該第2の偏光子の吸収軸と該第2の複屈折層の遅相軸とが直交するように貼り合わせた。さらに、第2の偏光子の第2の複屈折層とは反対の側に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例3で調製したポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いて貼り合わせた。
(液晶パネル(1C)の作製)
液晶パネル(SONY製、BRAVIA、32インチパネル)から液晶セル(VAモード)を取り出し、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を用いて、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれを、該液晶セルをはさんで上下に貼り合わせた。このとき、上記偏光板一体型位相差フィルム(1A)と偏光板一体型位相差フィルム(1B)のそれぞれに含まれる偏光子の吸収軸が直交するようにした。また、上記偏光板一体型位相差フィルム(1B)がバックライト側、偏光板一体型位相差フィルム(1A)が視認側となるように貼り合わせた。
(評価)
得られた液晶パネル(1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。また、上記の評価方法に従ってクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0168】
〔実施例2〕
実施例1において、第1の偏光子の第1の複屈折層とは反対の側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み:80μm)を、参考例3で調製したポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を介して貼り合わせた以外は、実施例1と同様に行った。
(評価)
得られた液晶パネル(2C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。また、上記の評価方法に従ってクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0169】
〔比較例1〕
実施例1において、第1の偏光子と第1の複屈折層との貼り合わせにおいて、参考例3で調製したポリビニルアルコール系接着剤(厚み:0.1μm)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
(評価)
得られた液晶パネル(C1C)について、上記の評価方法に従ってコントラストを求めた。結果を表1に示す。また、上記の評価方法に従ってクニック評価を行った。結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

【0171】
表1によれば、本発明の光学フィルムを用いた液晶パネルは、コントラストが高く、かつ、クニック評価も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の光学フィルムは、液晶テレビや携帯電話等に好適な、液晶パネルおよび該液晶パネルを用いた液晶表示装置に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置がVAモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置がOCBモードの液晶セルを採用する場合に、液晶層の液晶分子の配向状態を説明する概略断面図である。
【図4】カラーシフトの測定における方位角および極角を説明する模式図である。
【図5】(a)は、従来の代表的な液晶表示装置の概略断面図であり、(b)は、この液晶表示装置に用いられる液晶セルの概略断面図である。
【符号の説明】
【0174】
30 第1の偏光子
40 液晶セル
50 第2の偏光子
60 第1の複屈折層
70 第2の複屈折層
100 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明保護フィルム、偏光子、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNz係数が1<Nz≦2の関係を有する環状オレフィン系フィルムからなる複屈折層をこの順に含み、該偏光子と該複屈折層が金属化合物コロイドを含有するポリビニルアルコール系接着剤を介して直接に積層されてなる、光学フィルム。
【請求項2】
前記透明保護フィルムが、セルロース系フィルムまたはアクリル系フィルムのいずれかである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記偏光子の吸収軸と前記複屈折層の遅相軸とが実質的に直交してなる、請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記複屈折層がλ/4板である、請求項1から3までのいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
液晶セルと、該液晶セルの視認側に配置される請求項1から4までのいずれかに記載の光学フィルムとを含む、液晶パネル。
【請求項6】
前記液晶セルのバックライト側にnx=ny>nzの関係を有する複屈折層が配置されてなる、請求項5に記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記nx=ny>nzの関係を有する複屈折層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミドから選択される少なくとも1種の非液晶材料を含む、請求項6に記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記液晶セルが、VAモードまたはOCBモードである、請求項5から7までのいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
請求項5から8までのいずれかに記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−109939(P2009−109939A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284784(P2007−284784)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】