説明

光学フィルムの製造方法

【課題】アクリル樹脂とセルロールエステルを含む光学フィルムの提供を目的とする。
【解決手段】主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む組成物を溶液流延法により製膜する光学フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は、透明性だけでなく、表面光沢や耐候性に優れ、しかも、機械的強度、成形加工性、表面硬度のバランスがとれているので、自動車や家電製品などにおける光学関連用途に幅広く使用されている。 近年、透明性と耐熱性とを兼ね備えたアクリル系樹脂として、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体が開発され、光学フィルム用途への適用が検討されている。主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、主鎖に環構造を有さないアクリル系樹脂に比べてガラス転移温度(Tg)が高く、例えば、画像表示装置において光源などの発熱部に近接した配置が容易となるなど、実用上の様々な利点を有する。例えば特許文献1、2には、分子鎖内に水酸基とエステル基とを有する重合体を環化縮合反応させて得られた、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル系重合体を含む樹脂が開示されている。特許文献3には、環構造としてグルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル系重合体を含む樹脂が開示されており、特許文献4には、環構造としてグルタル酸無水物構造を主鎖に有するアクリル系重合体を含む樹脂が開示されている。
【0003】
この主鎖に有するアクリル系重合体は、従来偏光子保護フィルムなどの光学フィルムに用いられてきたセルロースエステルを溶融成膜する場合の改質剤としても有用であることが特許文献5に記載されており、馬の背故障や凸状故障等のフィルム原反の変形故障を抑制することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−96960号公報
【特許文献2】特開2005−146084号公報
【特許文献3】WO05/108438号公報
【特許文献4】WO05/105918号公報
【特許文献5】特開2009−1744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む光学フィルムを溶融製膜した場合には、セルロースエステルのエステル基や残存水酸基とアクリル系重合体の環構造や残存水酸基との間で、エステル交換反応などによる架橋反応が懸念され、得られるのフィルムの可とう性が低下することがあった。また、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の環化触媒などによりセルロースエステルが劣化するため、着色やフィルム欠点の増加が問題となることがあった。
【0006】
本発明は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む光学フィルムであって、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルに共通の優れた光学特性と高い耐熱性を有しながら、成形時や成形後のフィルムの機械的強度と熱安定性に優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む組成物を溶液流延法により製膜する光学フィルムの製造方法である。
【0008】
前記組成物は主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重合溶液を含むことが好ましい。
【0009】
前記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、環化触媒を含んだ重合溶液を加圧下に熱処理して得られるが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、優れた光学特性と高い耐熱性を有しながら、成形時や成形後のフィルムの機械的強度と熱安定性に優れた、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む光学フィルムを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を、それぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0012】
本発明の製造方法は主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む組成物を溶液流延法により製膜する。

《主鎖に環構造を有するアクリル系重合体》
本発明の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、主鎖に(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造と環構造を含む。(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構造単位の含有割合と環構造単位の含有割合の合計を主鎖中に好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上含む。特に環構造の含有率は、好ましくは5%以上、更に好ましくは10重量%以上、最も好ましくは15重量%以上である。
【0013】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどの単量体に由来する構成単位である。これらの構成単位を2種類以上有していてもよい。メタクリル酸メチル単位を有することが好ましく、この場合、アクリル系重合体ならびにアクリル系重合体を含む組成物および当該組成物を成形して得られたフィルムなどの成形品の熱安定性が向上する。
【0014】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有していてもよい。環化反応により主鎖に環構造を導入するため、アクリル系重合体は重合時に水酸基やカルボン酸基を有する単量体を共重合することが好ましい。具体的には、水酸基を有する単量体として、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、また、カルボン酸基を有する単量体として(メタ)アクリル酸単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの単量体に由来する構成単位が挙げられる。これらの単量体を2種類以上共重合有していてもよい。水酸基やカルボン酸基を有する単量体は環化反応により環構造へと変化するが、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に未反応の水酸基やカルボン酸基を有する単量体由来の構成単位が含まれていてもよい。
【0015】
また、アクリル系重合体はその他の構成単位を有していてもよく、このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの単量体に由来する構成単位である。アクリル系重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
【0016】
本発明の熱可塑性アクリル系重合体は主鎖に環構造を有する。そのため、アクリル系重合体およびアクリル系重合体のTgが高くなり、当該組成物から得た樹脂成形品の耐熱性が向上する。このように主鎖に環構造を有するアクリル系重合体から得た樹脂成形品、例えばフィルムは画像表示装置における光源などの発熱部近傍への配置が容易になるなど光学部材としての用途に好適である。
【0017】
アクリル系重合体が環構造を有することにより、得られるフィルムのTgが高くなると成形温度を高くする必要がある。成形温度が高くなると、成形時にポリマー主鎖間の架橋が生じやすく、成形体の異物が増加し、さらに、脆さが増加するため、特にフィルム成形時や成形後においてフィルム強度が不足しやすい。しかし、本発明のアクリル系重合体では、このような場合においても、ポリマー主鎖間の架橋が抑制でき、フィルム成形時や成形後において十分な機械的強度を有する成形体を得ることができる。
【0018】
環構造の種類は特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
アクリル系重合体が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば、4から8員環であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体の重合収率が高いこと、前駆体の環化反応により、高いラクトン環含有率を有するアクリル系重合体が得られること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から以下の一般式(1)に示される構造が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
上記一般式(1)において、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0022】
一般式(1)における有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1から20の範囲のアルキル基、エテニル基、プロペニル基などの炭素数1から20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数1から20の範囲の芳香族炭化水素基であり、上記アルキル基、上記不飽和脂肪族炭化水素基、上記芳香族炭化水素基は、水素原子の一つ以上が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基、およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
【0023】
アクリル系重合体が主鎖にラクトン環構造を有する場合、当該樹脂におけるラクトン環構造の含有率は特に限定はされないが、例えば5〜90%であり、好ましくは10〜80%であり、より好ましくは10〜70%であり、さらに好ましくは20〜60%である。アクリル系重合体における環構造の含有率が過度に小さくなると、アクリル系重合体ならびに当該組成物から得られるフィルムなどの成形品における耐熱性の低下や、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、上記含有率が過度に大きくなると、アクリル系重合体の成形性、ハンドリング性が低下する。
【0024】
本発明の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は8万以上、分散度は3.5以下が好ましく、好ましくはMw10万以上、分散度は3以下である。尚、重量平均分子量と分散度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量であり、GPCで重量平均分子量、数平均分子量の測定結果から算出するものである。本発明の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重量平均分子量を8万以上、分散度を3.5以下とすることにより、樹脂の分岐構造が抑制され、加工時の熱安定性が改善され、成形品とした時の強度や外観が改善される。
【0025】
本発明の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、110℃以上が好ましい。アクリル系重合体としてのTgを向上できることから、アクリル系重合体のTgは115℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。なお、一般的なアクリル系重合体のTgは100℃程度である。

《主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の製造方法》
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は公知の方法により製造できる。環構造が無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、WO2007/26659号公報あるいはWO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。環構造が無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。環構造がラクトン環構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報あるいは特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
【0026】
本発明の主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の製造方法としては、アクリル系重合体を重合する重合工程後に環化反応を行い、主鎖に環構造を導入することが好ましい。
【0027】
重合工程に供する単量体成分中における(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜90重量%、特に好ましくは65〜85重量%である。(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が30重量%未満であると、得られたアクリル系重合体の光学的特性が劣ることがある。逆に、(メタ)アクリル酸エステルの含有割合が95重量%を超えると、得られたアクリル系重合体の耐熱性が低下することがある。
【0028】
また、重合工程に供する単量体成分中における(メタ)アクリル酸の含有割合は、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0〜5重量%である。(メタ)アクリル酸の含有割合が30重量%を超えると、重合工程などでゲル化が起こることがある。
【0029】
重合工程に供する単量体成分には、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸以外の単量体を配合してもよい。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル系重合体製造方法の重合は重合溶媒中、100℃以下で重合することが好ましい。この場合、実質的に100℃以下で重合が行われればよいが、具体的には重合時間の90%以上の時間を100℃以下で重合する。好ましくは、重合温度が0〜100℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が60〜100℃、重合時間が1〜10時間である。100℃以下で重合することにより、重合中の副反応としてのポリマーの分岐や主鎖間の架橋反応を抑制することが出来、アクリル系重合体に優れた熱安定性と機械的強度を付与することが出来る。
【0031】
重合溶媒としては有機溶媒が好ましく、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。 エステル交換反応などの脱アルコール反応により起きる主鎖間の架橋反応が抑制できることから、重合溶媒はアルコール系溶媒を含むことが好ましい。ただし、アルコール系溶媒の含有割合が高い場合は主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル系重合体の溶解性が悪くなるため、有機溶媒中のアルコール系溶媒の含有割合は0〜90%が好ましく、より好ましくは0〜50%、さらに好ましくは0〜20%、特に好ましくは0〜5%である。 また、重合溶媒の沸点が高すぎると、最終的に得られるアクリル系重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が40〜200℃である溶媒が好ましく、溶液製膜を実施することを考えると、重合溶媒の沸点は40〜100℃が好ましい。
【0032】
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0033】
重合を行う際には、重合溶液のゲル化を抑制するために、重合溶液中に生成したアクリル系重合体の濃度が60重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合溶液中に生成したアクリル系重合体の濃度が60重量%を超える場合には、重合溶媒を重合溶液に追加して60重量%以下となるように制御することが好ましい。重合溶液中に生成したアクリル系重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。なお、重合溶液中に生成したアクリル系重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するので、重合溶液中に生成したアクリル系重合体の濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。
【0034】
重合溶液の粘度や重合温度を制御するために、重合中に有機溶媒を追加するのも好ましい形態のひとつである。追加する形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、重合溶液に連続的に重合溶媒を添加してもよいし、間欠的に重合溶媒を添加してもよい。また、添加する重合溶媒としては、例えば、重合反応の初期仕込み時に使用した溶媒と同じ種類の重合溶媒であってもよいし、異なる種類の重合溶媒であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に使用した溶媒と同じ種類の溶媒を用いることが好ましい。また、添加する重合溶媒は、1種のみの単一溶媒であっても2種以上の混合溶媒であってもよい。樹脂の重合中に重合溶媒を追加することにより、重合槽内の重合溶液の粘度を一定の範囲内に制御することが可能となり、十分な攪拌を行うことが可能となると共に、高粘度下で発生するポリマー鎖の分岐や架橋を抑制できる。また、重合温度より低温の重合溶媒を追加するため、重合で発熱する重合系中の重合温度の制御も容易となる。
【0035】
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合溶液中には、通常、得られたアクリル系重合体以外に有機溶媒が含まれているが、溶媒を完全に除去してアクリル系重合体を固体状態で取り出す必要はなく、有機溶媒を含んだ状態で、続く環化反応工程に導入することが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続く環化反応に好適な溶媒を再添加してもよい。
【0036】
環化反応は、重合後に行われることが好ましく、加熱により環化反応が促進される。主鎖にラクトン環構造または無水グルタル酸構造を有するアクリル系重合体の場合、アクリル系重合体の分子鎖中に存在するヒドロキシ基またはカルボキシル基とエステル基とが環化縮合反応してラクトン環構造または無水グルタル酸構造を生じる反応であり、その環化反応によってアルコールが発生し、脱アルコールが行われる。主鎖にグルタルイミド構造アクリル系重合体の場合は、添加したアミノ基含有化合物のアミノ基とポリマー鎖中に存在するカルボキシル基とエステル基とが環化縮合反応を起こし、その環化反応によって水やアルコールが発生し、脱水と脱アルコールが行われる。環構造がアクリル系重合体の分子鎖中(アクリル系重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。
【0037】
環化反応を行う際に、公知の環化触媒を添加することが好ましい。樹脂の重合後に環化触媒を添加することにより、単量体と触媒の副反応や重合中の分岐・架橋が抑制され、アクリル系重合体に優れた熱安定性と機械的強度を付与することが出来る。
【0038】
環化触媒としてはp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。さらに、例えば、特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に開示されているように、塩基性化合物、酢酸亜鉛などの有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
【0039】
あるいは、環化反応の触媒として有機リン化合物を用いてもよい。使用可能な有機リン酸化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸などのアルキル(アリール)亜ホスホン酸(ただし、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのモノエステルまたはジエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸などのジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのモノエステルまたはジエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸などのアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニルなどのリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのモノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィンなどのアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィンなどの酸化モノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウムなどのハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの有機リン化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機リン化合物のうち、触媒活性が高くて着色性が低いことから、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸モノエステルまたはジエステルが特に好ましい。
【0040】
また、塩基性の環化触媒の使用も可能であり、特開2009−144112に記載された12族元素の化合物、特に亜鉛化合物が好ましい。亜鉛化合物の具体的な種類は特に限定されず、例えば、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などの有機亜鉛化合物;酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などの無機亜鉛化合物;トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛などのフッ素を含む有機亜鉛化合物;が挙げられる。
【0041】
環化反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系重合体に対して、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化反応の反応率が充分に向上しないことがある。逆に、触媒の使用量が5重量%を超えると、得られたアクリル系重合体が着色することや、アクリル系重合体の主鎖が架橋して、溶融成形が困難になることがある。
【0042】
触媒の添加時期は、特に限定されるものではなく、例えば、重合工程途中に添加してもよいし、重合工程後に添加してもよいし、それらの両方で添加してもよい。重合中あるいは重合後に加熱しながら触媒を添加してもよいし、環化触媒の添加後に高温で熱処理してもよい。
【0043】
環化反応において加熱する方法については、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用すればよい。例えば、重合工程によって得られた、重合溶媒を含む重合溶液をそのまま加熱処理してもよいし、溶媒を脱揮後に加熱処理してもよい。溶液状態でオートクレーブなどの耐圧装置中で200℃以上の温度で環化反応を行い、高温で環化反応を促進させるのも好ましい実施形態のひとつである。あるいは、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置、脱揮装置を備えた押出機などを用いて脱揮処理を行うこともできる。本発明では、触媒を含んだ重合溶液を加圧下に熱処理することが特に好ましい実施形態である。重合溶媒と後述する環化触媒を含んだ状態で加熱した後、更に耐圧装置中加圧下で200℃以上に加熱して環化することにより、環化度が高くて耐熱性に優れた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を溶液状態で得ることが出来る。
【0044】
環化反応の際に採用できる反応器は、特に限定されるものではないが、例えば、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置などが挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化反応に好適なベント付き押出機も使用可能である。これらの反応器のうち、本発明においては、釜型反応器、オートクレーブ、熱交換器が特に好ましい。環化触媒を加えてから釜型反応器において常圧で熱処理後、オートクレーブや熱交換器などの耐圧装置を使用して加圧下で200℃以上の高温において熱処理することも好ましい実施形態のひとつである。
【0045】
環化反応の際には、例えば、重合工程で得られたアクリル系重合体と重合溶媒とを含む重合溶液を無触媒で加熱反応させることも可能であるが、本発明では環化触媒を添加して加熱反応させる方法が好ましい。加熱時間は、特に限定されるものではないが、例えば、加熱温度は、好ましくは40〜300℃であり、加熱時間は、好ましくは1〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。加熱温度が40℃未満であるか、あるいは、加熱時間が1時間未満であると、環化反応率が低下することがある。逆に、加熱温度が300℃を超えるか、あるいは、加熱時間が20時間を超えると、樹脂の着色や分解が起こることがある。
【0046】
本発明においては、環化反応に特開2000-230016や特開2007−262396、特開2007−262399などに記載された脱揮工程を併用することも可能である。脱揮された主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は重合時に用いられた溶媒や溶液製膜に好ましい低沸点の溶媒に再溶解して、溶液製膜に用いられる。
【0047】
環化触媒を添加し環化反応を十分行った後にも微量の未反応の反応性基が残存し、成形時に発泡やポリマー間の架橋での増粘などの問題が起きることがあるため、環化触媒の失活剤を添加することが好ましい。失活剤の添加は、残存する触媒による溶液製膜時のセルロースエステルの劣化を抑制するためにも有効である。環化反応には酸性触媒、あるいは、塩基性触媒が用いられることが多く、その場合、失活剤は中和反応により触媒を失活させるため、触媒が酸性物質である場合、失活剤は塩基性物質を用いればよく、逆に触媒が塩基性物質である場合、失活剤は酸性物質を用いればよい。失活剤としては、熱加工時に樹脂組成物を阻害する物質などを発生しない限り、特に限定されるものではないが、失活剤に塩基性物質を用いる場合、例えば、金属カルボン酸塩、金属錯体、金属酸化物などが挙げられ、金属カルボン酸塩と金属酸化物が好ましく、金属カルボン酸塩が特に好ましい。ここで、金属としては、樹脂組成物の物性を阻害せず、廃棄時に環境汚染を招くことがない限り、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;ジルコニウム;などが挙げられる。金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などが挙げられる。金属錯体における有機成分としては、特に限定されるものではないが、アセチルアセトンなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられ、酸化亜鉛が好ましい。他方、失活剤に酸性物質を用いる場合には、例えば、有機リン酸化合物やカルボン酸などが挙げられる。失活剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、失活剤は固形物、粉末状、分散体、懸濁液、水溶液など、いずれの形態で添加しても良く、特に限定されるものではない。
【0048】
失活剤の配合量は、環化反応に使用した触媒に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくはアクリル系重合体に対して、10〜10,000ppm、より好ましくは50〜5,000ppm、さらに好ましくは100〜3,000ppmである。失活剤の配合量が10ppm未満であると、失活剤の作用が不十分になり、成形時に発泡やポリマー間の架橋での増粘が起こることがある。逆に、失活剤の配合量が10,000を越えると、必要以上に失活剤を使用することになり、分子量低下が起こるなど樹脂組成物の物性を阻害することがある。
【0049】
失活剤を添加するタイミングは、アクリル系重合体の製造にあたり、触媒を添加し環化反応を十分行った後であり、かつ得られたアクリル系重合体が溶液製膜される前である限り、特に限定されるものではない。例えば、アクリル系重合体を製造中に所定の段階で失活剤を添加するか、アクリル系重合体に環化触媒を添加し熱処理して環化反応を進行させてから失活剤を添加するか、あるいは、アクリル系重合体を製造した後、アクリル系重合体、失活剤、その他の成分などを同時に加熱溶融させて混練する方法;アクリル系重合体を製造した後、アクリル系重合体、失活剤、その他の成分などを溶剤に溶解する方法;溶液流延法に用いる溶液に失活剤を添加する方法;アクリル系重合体、その他の成分などを加熱溶融させておき、そこに失活剤を添加して混練する方法;アクリル系重合体を加熱溶融させておき、そこに失活剤、その他の成分などを添加して混練する方法;などが挙げられる。
【0050】
アクリル系重合体を環化反応させて得られた、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に含まれる異物数は、アクリル系重合体の製造工程および/またはフィルム製膜工程において、アクリル系重合体の溶液または溶融液を、例えば、濾過精度0.01〜15μmのフィルターなどで濾過することにより、減少させることができる。

《セルロースエステル》
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、特に限定はされず、例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。その中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく用いられる。
本発明に用いられるセルロースエステルは、50000〜150000の数平均分子量(Mn)を有することが好ましく、55000〜120000の数平均分子量を有することが更に好ましく、60000〜100000の数平均分子量を有することが最も好ましい。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比が1.3〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、更に好ましくは1.7〜4.0であり、更に好ましくは2.0〜3.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。
なお、Mn及びMw/Mnは下記の要領で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することができる。
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することができる。
溶液製膜に用いるため、セルロースエステルは溶媒に溶解させておくことが好ましい。有機溶媒に溶解釜中で該セルロースエステルや添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成することや、セルロースエステル溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成することが考えられる。セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させたままの状態で用いることも可能である。セルロースエステルの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35重量%が好ましい。溶解中または後のドープにマット剤を除く添加剤を加えて溶解した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は、セルロースエステル中の異物は溶媒に溶解して、必要に応じて紫外線吸収剤、可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の添加物を添加混合した後、実施することが出来る。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。
濾過の濾材は、絶対濾過精度0.04mm以下のものが好ましく、0.01〜0.02mmの範囲がより好ましい。濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。

《光学フィルム》
本発明により製造される光学フィルムは主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む。主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルの重量比は99/1〜1/99が好ましく、90/10〜10/90がより好ましい。
【0051】
本発明により製造される光学フィルムは、主鎖に環構造を有する熱可塑性アクリル系重合体とセルロースエステルは、アクリル系重合体以外の成分を、当該組成物に占める割合にして40%未満、好ましくは10%未満の範囲で含んでいてもよい。
【0052】
その他の熱可塑性樹脂を含む場合、その他の熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィンポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレンポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;などである。
【0053】
上記例示した熱可塑性樹脂のなかでも、アクリル系重合体との相溶性、特に主鎖にラクトン環構造を有するアクリル系重合体との相溶性に優れることから、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位と芳香族ビニル単量体に由来する構成単位とを含む共重合体が好ましい。当該共重合体は、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体である。
【0054】
紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシケート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジーヒドロキシベンゾフェノン、4−n−オクチルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノン)−ブタン等が挙げられる。サリシケート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシケート等が挙げられる。ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。また、トリアゾール系化合物としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステルが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル」−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。市販品としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(チバスペシシャリティーケミカルズ社製)、トリアゾール系紫外線吸収剤として「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等が挙げられる。
【0055】
これらは単独で、または2種類以上の組み合わせて使用することができる。上記紫外線吸収剤の配合量は特に限定されないが、フィルム中に0.01〜25重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。添加量が少なすぎると耐候性向上の寄与が低く、また多すぎると機械強度の低下や黄変を引き起こす場合がある。
【0056】
本発明により製造される光学フィルムは、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系あるいはイオウ系などの公知の酸化防止剤を、1種で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0057】
酸化防止剤はフェノール系の酸化防止剤であってもよい。フェノール系酸化防止剤は、例えば、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アセテート、n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシル−α−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミド−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノ−N,N−ビス−[エチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−1−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタントリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル−7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオールビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカンである。
【0058】
フェノール系酸化防止剤は、チオエーテル系酸化防止剤またはリン酸系酸化防止剤と組み合わせて使用することが好ましい。組み合わせる際の酸化防止剤の添加量は、アクリル系重合体に対してフェノール系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤の各々が0.01%以上、あるいはフェノール系酸化防止剤およびリン酸系酸化防止剤の各々が0.025%以上である。
【0059】
チオエーテル系酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートである。
【0060】
リン酸系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイトである。
【0061】
本発明により製造される光学フィルムにおける酸化防止剤の添加量は、例えば0〜10%であり、好ましくは0〜5%であり、より好ましくは0.01〜2%であり、さらに好ましくは0.05〜1%である。酸化防止剤の添加量が過度に大きくなると、成形時に酸化防止剤のブリードアウトやシルバーストリークスが発生することがある。
【0062】
本発明により製造される光学フィルムは、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、例えば、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;アンチブロッキング剤;マット剤;酸補足剤;金属不活性化剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。本発明の光学フィルムにおける、上記その他の添加剤の添加量は、例えば0〜5%であり、好ましくは0〜2%であり、より好ましくは0〜0.5%である。
【0063】
本発明により製造される光学フィルムの厚さは特に限定されないが、例えば10μm〜500μmであり、20μm〜300μmが好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
本発明により製造される光学フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上、さらに好ましくは91%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%未満であると透明性が低下し、光学フィルムとして適さない。
【0064】
本発明により製造される光学フィルムは、着色が少なく、250μm厚みあたりのb値が好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下である。
【0065】
本発明により製造される光学フィルムは、好ましくはヘイズが5%以下であり、より好ましくは3%以下である。ヘイズが5%を越えると透過率が低下し、光学用途に適さないことがある。
【0066】
本発明により製造される光学フィルムの表面には、必要に応じて、各種の機能性コーティング層が形成されていてもよい。機能性コーティング層は、例えば、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、ガスバリヤー層などである。
【0067】
本発明により製造される光学フィルムの用途は特に限定されないが、その高い透明性、耐熱性により、光学部材として好適に用いることができる。光学部材は、例えば、光学用保護フィルム、具体的には、各種の光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LDなど)基板の保護フィルム、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどの光学フィルムとして、本発明により製造される光学フィルムを用いてもよい。特に、偏光子保護フィルムや位相差フィルムとして好適に用いられる。

《光学フィルムの製造方法》
本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は(1)溶解工程、(2)流延工程、(3)乾燥工程を有する。
【0068】
(1)溶解工程:
溶解工程とは、本発明の光学フィルムの製造に用いられる組成物(ドープ)を製造する工程であり、具体的には、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルと、必要に応じて前記光学フィルムに含まれる紫外線吸収剤や酸化防止剤などの添加物とを含む溶液を調整する工程である。主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを溶媒に溶解する場合、個別に溶媒に溶解してから溶液同士を混合しても良いし、同時に同じ溶剤に溶解しても良い。本発明の好ましい形態としては、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は脱揮工程を経ずに重合溶剤を含んだ重合溶液の状態となっており、別に準備したセルロースエステル溶液を攪拌しながら、アクリル系重合体溶液を少しずつ添加していくことで、セルロースエステルが固化することなく、溶液製膜に用いるドープを用意することが出来る。溶解中または後のドープに必要な添加剤を加えて溶解した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。 濾過の濾材は、絶対濾過精度0.04mm以下のものが好ましく、0.01〜0.02mmの範囲がより好ましい。濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
【0069】
溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることができ、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。本発明においては、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重合溶液に含まれる重合溶媒も用いることができる。これらの内、複数の溶媒が溶液に含まれていても良い。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。
【0070】
セルロースエステルの溶液を作成するには、セルロースエステル(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該セルロースエステル、ポリマーや添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成すること、あるいはセルロースエステル溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成することが考えられる。セルロースエステルの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35重量%が好ましい。
【0071】
(2)流延工程:
ドープを支持体上に流延し、均一な膜を得る工程である。
【0072】
一般に、製膜工程で変形応力を受ければ、配向が進んでフィルムの複屈折値は増大する。複屈折値の増大に伴い、フィルムの均一性を維持しにくくなり、光学特性のバラツキも増大するので、粘度の低い状態で比較的小さな応力のもとに製膜することが望ましい。また、ドープが低粘度であることは塗工後のレベリング効果によって膜厚が均一化される効果もあるため好ましい。溶解液の好ましい粘度は10ポイズ以から100ポイズであり、より好ましくは15ポイズから70ポイズである。なお、10ポイズよりも低いと支持体上から流れ出してしまうため、適宜仕切り板を設けるなどの対処が必要となる。
塗工方法としてはダイコーター、ドクターブレードコーター、ロールコーター、コンマコーター、リップコーター等が好ましいが、これらの例に限定されずに通常使用される種々の方法が可能である。
【0073】
好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや回転する金属ドラム等の金属支持体、あるいはポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0074】
(3)乾燥工程:
金属支持体上にドープを流延したドープ膜を加熱し、溶媒蒸発させて乾燥フィルムを得る工程である。
【0075】
加熱乾燥は流延もしくは塗布直後の液膜が乾燥していない状態では、急激な風の流れや加熱などがあると、厚みムラが生じやすいため厚みムラをなくすよう注意しながら乾燥する。すなわち、直接的にフィルムに風を与えないようにしたり、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。また、急激な加熱・冷却を防いだりすることが重要となる。さらに、雰囲気中の湿度によってドープ膜が発泡したりするため、湿度のコントロールも重要となる。その後、半固化状態になった後に熱風等を吹きつけて残留溶媒を少なくするように乾燥するのが好ましい。
【0076】
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。中でも、重力による応力を低減させるため、上下に複数のロールを配置し、フィルムを上下上下・・・と通すバーチカルパス方式(垂直懸垂パス方式)が、オーブンの設置スペースを省略しつつ長い乾燥経路を確保できるため好ましい。
また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高いフィルムを得るには有効な方法である。
【0077】
本発明の光学フィルムの製造工程は上記(1)〜(3)の工程以外にも、接着性向上のために、けん化処理やコロナ処理、プラズマ処理、さらには、易接着層などの塗布などの工程を有していても良い。また、防眩層やハードコート層などの各種の機能性コーティング層を設ける工程や延伸工程を有することも可能である。
【0078】
延伸する場合は、一軸延伸でも良いし、二軸延伸でも良い。二軸延伸する場合は、同時二軸延伸でも良いし、逐次二軸廷伸でも良い。延伸した場合は、機械強度が向上しフィルム性能が向上する。
【0079】
延伸温度としては、光学フィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましく、具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+100)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+80)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+100)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
【0080】
面積比で定義した廷伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.3〜10倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う靱性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
【0081】
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、光学フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
【0082】
フィルムの光学等方性や力学特性を安定化させるため、溶液製膜後や延伸処理後に熱処理(アニーリング)などを行うこともできる。
【実施例】
【0083】
[ガラス転移温度]
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
【0084】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
【0085】
システム:東ソー製
カラム:TSK−GEL SuperHZM−M 6.0×150 2本直列
ガードカラム:TSK−GEL SuperHZ−L 4.6×35 1本
リファレンスカラム:TSK−GEL SuperH−RC 6.0×150 2本直列
溶離液:クロロホルム 流量0.6mL/分
カラム温度:40℃
[ラクトン環構造単位の含有割合]
まず、重合で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
【0086】
すなわち、ラクトン環構造を有した重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における前記原料単量体の含有率から算出することができる。これらの値(X、Y)を脱アルコール計算式:
1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。
【0087】
例として、後述の製造例1で得られるペレットにおいてラクトン環構造の占める割合を計算する。この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(重量比)は組成上20重量%であるから、(32/116)×20≒5.52重量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は0.11重量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1−(0.11/5.52)≒0.980となるので、脱アルコール反応率は98.0%である。
【0088】
そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(ヒドロキシ基)を有する原料単量体の当該共重合組成における含有率(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環単位の構造の含有率(重量比)に換算することで、当該共重合体におけるラクトン環構造の含有割合を算出することが出来る。実施例1の場合、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該共重合体における含有率が20.0重量%、算出した脱アルコール反応率が98.0重量%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成するラクトン環化構造単位の式量が170であることから、当該共重合体中におけるラクトン環の含有割合は28.7(20.0×0.980×170/116)重量%となる。
【0089】
[ヘイズ]
フィルムのヘイズは、濁度計(日本電色工業社製、NDH 5000)を用いて測定した。
【0090】
[YI値]
フィルムのYIは、測色色差計(日本電色工業社製、Color Meter ZE6000)を用い、ASTM(E313)に準拠して測定した。
【0091】
[耐折回数]
フィルムの耐折回数は、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE−201型)を用いて、フィルムサンプルを23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させた後、幅15mm、長さ90mmの試験フィルムを使用し、荷重200gの条件で、JIS P8115を参考にして測定を5回行い、平均の回数を耐折回数とした。
<製造例1>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した2mの耐圧反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル43.7kg、メタクリル酸メチル174.8kg、メチルエチルケトン212.5kgをフィルターを通して仕込んだ。これに、窒素ガスを40L/分の流量で30分間バブリングした後、90℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製、商品名:V−601)0.23kg、メチルエチルケトン6kgからなる溶液を5時間かけて滴下しながら還流下(約80℃〜90℃)で常圧で1時間、さらに、反応釜内を加圧し、90〜95℃の間で3時間熟成を行った。
この溶液にリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、商品名:Phoslex A−8)を218.5g加え、加圧下、90〜95℃でさらに2時間、環化反応を進行させた。
【0092】
次いで、平均滞留時間30分の条件で240℃に熱媒の温度を設定した熱交換器を通して、環化反応を完結させた。
【0093】
得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体溶液(1A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.11%の重量減少率を検知し、ラクトン環化率は98.0%、重量平均分子量は139000であり、ガラス転移温度は131℃であった。
<製造例2>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した2mの耐圧反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル43.7kg、メタクリル酸メチル174.8kg、メチルエチルケトン212.5kgをフィルターを通して仕込んだ。これに、窒素ガスを40L/分の流量で30分間バブリングした後、90℃まで昇温し、還流したところで、開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬製、商品名:V−601)0.23kg、メチルエチルケトン6kgからなる溶液を5時間かけて滴下しながら還流下(約80℃〜90℃)で常圧で1時間、さらに、反応釜内を加圧し、90〜95℃の間で3時間熟成を行った。
この溶液にリン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、商品名:Phoslex A−8)を218.5g加え、加圧下、90〜95℃でさらに2時間、環化反応を進行させた。得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体溶液(2A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.55%の重量減少を検知し、ラクトン環化率は90.2%、重量平均分子量は159000であり、ガラス転移温度は128℃であった。
< 製造例3>
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた2mの反応釜に、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部、メタクリル酸メチル40部、トルエン50部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。還流したところで、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.15部を加えて、還流下(100〜110℃)で溶液重合を行い、5時間かけて熟成を行った。
得られた重合体成分100部に対して37.5部のメチルイソブチルケトン、および、重合体溶液100部に対して0.1部のリン酸メチル/リン酸ジメチル混合物(東京化成工業社製)を加え、窒素を通じつつ、還流下(95〜100℃)で5時間、環化縮合反応を行った。得られた反応溶液の一部を取り出し、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.62%の重量減少率を検知した。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPa、リアベント数1個とフォアベント数4個のベントタイプスクリュー2軸押出機(直径=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体(2A)のペレットを得た。得られたペレット(3A)について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.18%の重量減少率を検知し、ラクトン環化率は96.7%であった。また、このペレット(3A)の重量平均分子量は165000であり、ガラス転移温度は133℃であった。
<実施例1>
酢酸セルロース(アセチル基置換度 61.3〜61.9%、粘度(60g/L、25℃) 80〜110mP・s)を塩化メチレンに溶解し15wt%溶液(1B)とした。この溶液(1B)を攪拌しながら、酢酸セルロース/アクリル系重合体が重量比で9/1となるように、製造例1で得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体溶液(1A)をゆっくり添加した。さらに、塩化メチレンを加えて固形分を調整し、酢酸セルロースと主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を9/1の重量比で含む15wt%溶液(1S)を得た。
【0094】
上記作製した溶液(1S)を、22℃でベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、タックフリー状態(ドープ膜に指で触れてみて付着しなくなる状態)になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力160N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したフィルムを35℃で溶媒を蒸発させ、その後、135℃の乾燥温度で乾燥させて、膜厚40μmのフィルム(1F)を得た。得られたフィルム(1D)のヘイズは0.3、YIは0.20、耐折回数は811回であった。
<実施例2>
酢酸セルロース(アセチル基置換度 61.3〜61.9%、粘度(60g/L、25℃) 80〜110mP・s)を塩化メチレンに溶解し15wt%溶液(2B)とした。この溶液(2B)を攪拌しながら、酢酸セルロース/アクリル系重合体が重量比で9/1となるように、製造例2で得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体溶液(2A)をゆっくり添加した。さらに、塩化メチレンを加えて固形分を調整し、セルロースエステルと主鎖に環構造を有するアクリル系重合体を9/1の重量比で含む15wt%溶液(2S)を得た。
【0095】
溶液(2S)を用いた以外は実施例1と同様に溶液流延法による製膜を行い、膜厚40μmのフィルム(2F)を得た。得られたフィルム(1D)のヘイズは0.5、YIは0.24、耐折回数は394回であった。
<実施例3>
酢酸セルロース(アセチル基置換度 61.3〜61.9%、粘度(60g/L、25℃) 80〜110mP・s)と製造例3で得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のペレット(3A)を塩化メチレンに酢酸セルロース/アクリル系重合体が重量比で9/1となるように溶解し、15wt%溶液(3S)とした。
【0096】
溶液(3S)を用いた以外は実施例1と同様に溶液流延法による製膜を行い、膜厚40μmのフィルム(3F)を得た。得られたフィルム(3F)のヘイズは0.5、YIは0.30、耐折回数は722回であった。
<比較例1>
酢酸セルロース(アセチル基置換度 61.3〜61.9%、粘度(60g/L、25℃) 80〜110mP・s)と製造例3で得られた主鎖に環構造を有するアクリル系重合体のペレット(3A)を酢酸セルロース/アクリル系重合体が重量比で9/1となるように混合した後、2軸式押出し機を用いて230℃で溶融混合しペレット(4B)を得た。
【0097】
得られたペレット(4B)を、シリンダー径が20mmの単軸押出機を用いて以下の条件で押出成形し、厚さ40μmの光学フィルム(4F)を作製した。得られたフィルム(4F)のヘイズは0.7、YIは0.61、耐折回数は308回であった。
【0098】
押出条件−シリンダー温度:250℃
ダイ:コートハンガータイプ、幅150mm、温度250℃
キャスティング:つや付き2本ロール、第1ロールおよび第2ロールともに130℃に保持。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の光学フィルムは、その高い光学特性や耐熱性、機械的強度により、光学部材として好適に用いることができる。光学部材としては、例えば、偏光子保護フィルムなどの光学用保護フィルムや位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムなどに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体とセルロースエステルを含む組成物を溶液流延法により製膜する光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記組成物は主鎖に環構造を有するアクリル系重合体の重合溶液を含む請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記主鎖に環構造を有するアクリル系重合体は、環化触媒を含んだ重合溶液を加圧下に熱処理して得られる請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−46768(P2011−46768A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194099(P2009−194099)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】