説明

光学フィルム及びそれを用いた光学装置

【課題】光学性能および機械的性能の双方の高められた光取り出し用光学フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム14と凹凸構造部12とを有する光学フィルムの凹凸構造部12は、下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分:(A)分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種以上含有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、(B)分子中にウレタン結合を有さず、2つの(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート化合物、(C)ラジカル性光重合開始剤、を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂からなる。凹凸構造部12は、一方の面に形成された凹凸構造を持つ。凹凸構造部12の凹凸構造側の面は、凹凸単位形状12aを凹凸構造側の面に沿って繰り返し配列してなる形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに係るものであり、とくに、照明装置または表示装置等の光学装置において光学デバイスから発せられる光の取り出し効率の向上に寄与する光学フィルム、及びそれを用いた光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型化が可能な面発光デバイスとして、エレクトロルミネッセント(EL)素子を用いたものが提案されている。EL素子による発光の効率を高めるためには、EL素子において発光層から発せられ透明電極を経て透明基材へと進行した光を該透明基材の表面から効率良く取り出すことが必要である。
【0003】
このようなEL素子における光取り出しの効率を向上させるために、EL素子の透明基材の表面に凹凸構造を有するシートを設けることが提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
また、特許文献3には、活性エネルギー線硬化性樹脂からなるシート状光学物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−59641号公報
【特許文献2】WO2004/017106号公報
【特許文献3】WO2006/041089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、光取り出し用の凹凸構造表面を有するシートの材質についてはとくに記載がない。また、特許文献2には、光取り出し用の凹凸構造表面を有するシートの材質として、鎖状ポリオレフィン樹脂、芳香族ビニル系樹脂、脂環式オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂およびケトン系樹脂が挙げられており、とくに鎖状ポリオレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂およびポリエーテル系樹脂が好ましいものとして挙げられている。
【0007】
ところで、発光分布が発光面内での方向に実質上依存しない等方的発光を行う、EL素子等の光学デバイスから発せられる光の取り出し効率の向上に寄与する光学フィルムに関しては、その光取り出し効率などの光学性能の向上とともに、機械的性能とくに異物の接触または擦過に対する耐久性(耐擦傷性)の向上が要請される。しかるに、特許文献1および2には、シートの機械的性能の向上に関する記載はない。
【0008】
また、特許文献3には、等方的発光のEL素子等の光学デバイスに適用するシート状光学物品の記載はない。
【0009】
本発明の目的は、以上のような等方的発光の光学デバイスに適用して光取り出し効率の向上に寄与する光学フィルム(光取り出し用光学フィルム)における技術的課題に鑑み、光学性能および機械的性能の双方の一層高められた光取り出し用光学フィルムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、以上のような光取り出し用光学フィルムを用いた光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記いずれかの目的を達成するものとして、
凹凸構造部を有する光学フィルムであって、
前記凹凸構造部は、下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分:
(A)分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種以上含有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(B)分子中にウレタン結合を有さず、2つの(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート化合物、
(C)ラジカル性光重合開始剤、
を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂からなり、
前記凹凸構造部は、一方の面に形成された凹凸構造を持ち、
前記凹凸構造部の凹凸構造側の面は、凹凸単位形状を前記凹凸構造側の面に沿って少なくとも1つの方向に繰り返し配列してなる形状を有することを特徴とする光学フィルム、
が提供される。
【0011】
本発明の一態様においては、前記凹凸単位形状は、大略、角錐形状、角錐台形状、円錐形状、円錐台形状、屋根形状、半球形状または半球台形状であり、突起又は窪みを形成している。本発明の一態様においては、前記光学フィルムは、更に、前記凹凸構造部の凹凸構造側の面の反対側の面に接合された透明基材フィルムを有する。
【0012】
また、本発明によれば、上記いずれかの目的を達成するものとして、
上記の光学フィルムと、前記凹凸構造部の前記凹凸構造側の面の反対側に位置する、前記光学フィルムの面に接合された光学デバイスと、を備えており、
前記光学デバイスから発せられる光を前記光学フィルムの前記凹凸構造部の凹凸構造側の面から出射させるようにしてなることを特徴とする光学装置、
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明によれば、等方的発光の光学デバイスに適用して光取り出し効率等の光学性能および耐擦傷性等の機械的性能の双方の向上が可能な光取り出し用光学フィルム、およびそれを用いた光学装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による光学フィルム及びそれを用いた光学装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】凹凸構造部の凹凸単位形状の具体例を示す図である。
【図3】凹凸構造部の凹凸単位形状の具体例を示す図である。
【図4】凹凸構造部の凹凸単位形状の具体例を示す図である。
【図5】凹凸構造部の凹凸単位形状の具体例を示す図である。
【図6】凹凸構造部の凹凸単位形状の具体例を示す図である。
【図7】光学フィルムの製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明による光学フィルム及びそれを用いた光学装置の一実施形態を示す模式図である。
【0017】
本実施形態の光学装置は、光学フィルム1と光学デバイス2とを備えている。光学デバイス2は、公知の有機EL発光素子であり、透明基材層22、透明電極層24、有機発光層26および金属電極層28をこの順に積層したものからなる。図1はボトムエミッション構造の有機EL発光素子の例であるが、本発明においては、トップエミッション構造の有機EL発光素子も同様に用いることが出来る。
【0018】
光学フィルム1は、層状の凹凸構造部12および該凹凸構造部12に接合された透明基材フィルム14を有する。凹凸構造部12は、後述するような特定の活性エネルギー線硬化性樹脂からなる。
【0019】
凹凸構造部12は、一方の面(図1では上側の表面)に形成された凹凸構造を持つ。この凹凸構造側の面は、凹凸単位形状12aを上側表面に沿って少なくとも2つの方向に繰り返し配列してなる形状を有する。単位形状12aとしては、大略、角錐形状、角錐台形状、円錐形状、円錐台形状、屋根形状、半球形状または半球台形状であり、突起又は窪みを形成しているものが例示される。ここで、単位形状12aにつき「大略」とは、必ずしも幾何学的に厳密な各形状であるもののみならず、全体形状において幾何学的に厳密な形状からのずれがあってもよく、または部分的に幾何学的に厳密な形状からの変形があってもよいことを意味する。単位形状12aの寸法としては、とくに制限はないが、たとえば高さが10〜1000μmで、基底寸法が10〜1000μmであるものが例示される。単位形状12aの表面が角錐形状、角錐台形状、円錐形状、円錐台形状および屋根形状等の平面からなる場合には、単位形状12aの表面と基底面とのなす角度(底角)は、たとえば20〜70°である。尚、単位形状12aの表面が半球形状および半球台形状等の曲面である場合には、単位形状12aの縦断面形状(即ち、凹凸構造部12の層厚方向を通る断面の形状)における片側の曲線を一次近似により直線で近似した場合の当該直線と基底面とのなす角度を底角とする。この底角は、たとえば20〜70°である。
【0020】
凹凸構造部12の厚さは、たとえば10〜2000μmである。
【0021】
図2〜図6に、単位形状12aの具体例を示す。図2は、単位形状12aが屋根形状(またはテント形状)である例の電子顕微鏡(SEM)写真図を示す。ここでは、単位形状12aは凹凸構造部層に沿って互いに直交する2つの方向に繰り返し配列されている。図3は、単位形状12aが三角錐形状である例の電子顕微鏡(SEM)写真図を示す。ここでは、単位形状12aは凹凸構造部層に沿って互いに60°で交わる3つの方向に繰り返し配列(但し、各方向につき単位形状の方向性が交互に反転して配列)されている。図4は、単位形状12aが半球形状である例の3Dレーザー顕微鏡写真図を示す。ここでは、単位形状12aは凹凸構造部層に沿って互いに60°で交わる3つの方向に繰り返し配列されている。図5は、単位形状12aが四角錐台形状である例の3Dレーザー顕微鏡写真図を示す。ここでは、単位形状12aは凹凸構造部層に沿って互いに直交する2つの方向に繰り返し配列されている。図6は、単位形状12aが四角錐台形状である例のレーザー顕微鏡写真図を示す。ここでは、単位形状12aは凹凸構造部層に沿って互いに直交する2つの方向に繰り返し配列されている。
【0022】
凹凸単位形状12aは、互いに隣接するもの同士が可能な限り密接して配列されるのが好ましい。即ち、繰り返し配列のピッチは凹凸単位形状12aの当該配列方向に関する基底寸法と同等またはそれより幾分大きいのが好ましい。
【0023】
以上のような凹凸単位形状12aは、突起状であってもよいし、又は窪み状であってもよい。
【0024】
透明基材フィルム14は、凹凸構造部12の凹凸単位形状12aの形成された面の反対側の面に接合されている。従って、本実施形態の光学装置において、光学デバイス2は、凹凸構造部12の凹凸単位形状12aの形成された面の反対側に位置する、光学フィルム1の面に接合されていることになる。
【0025】
尚、光学フィルム1において、凹凸構造部12のみで形状保持が可能な場合には、透明基材フィルム14を省略してもよい。
【0026】
光学デバイス2から発せられる光の分布は実質上等方的であるので、光学デバイス2から発せられる光は、光学フィルム1の凹凸構造部12の凹凸単位形状12aの形成された面により、高い効率で取り出される。
【0027】
さて、光学フィルム1の凹凸構造部12は、下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分:
(A)分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種以上含有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(B)分子中にウレタン結合を有さず、2つの(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート化合物、
(C)ラジカル性光重合開始剤、
を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂からなる。
【0028】
この樹脂は、更に(D)分子中に1つの重合性二重結合基を有する化合物、および(E)その他の成分、を含有してもよい。
【0029】
このような活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記特許文献3に記載されている。以下、各成分について説明する。尚、以下において、樹脂は、樹脂組成物として記載されることがある。
【0030】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物:
本発明の樹脂組成物に使用する(A)成分は、分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種以上含有する化合物である。この(A)成分は、ラジカル重合性光重合開始剤の存在下で紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応や架橋反応を起こす成分であり、主に光学フィルム(シート状光学物品)の凹凸構造部の耐擦傷性および耐熱性を付与する。(A)成分は、分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を1種以上含有していればよく、分子中に1つまたは2つの(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を併せて含有していてもよい。
【0031】
分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物とは、代表的には、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つ水酸基を有する(メタ)アクリロイル化合物の1種以上とを反応させて得られる化合物である。分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、脂肪族系、脂環族系、芳香族系に分類される種々のポリイソシアネート化合物を使用できる。硬化時の着色性や硬化物の耐光黄変性などを考慮すると、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその3量体(アダクト型、ビウレット型またはイソシアヌレート型)が好ましい。その中でも、イソホロンジイソシアネートとイソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート3量体が、得られる硬化物の耐擦傷性および耐熱性の点でより好ましい。
【0032】
分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つ水酸基を有する(メタ)アクリロイル化合物としては、特に制限はない。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパンなどが挙げられる。ここで、アクリレート化合物の方がメタクリレート化合物よりも、光硬化性の点で好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリロイル化合物は、それぞれ2種以上を併用することができる。組み合わせの種類および比率を変えることにより、それぞれ1種から得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物とは異なる弾性率やその他の物性を発現させることができる。
【0034】
ポリイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリロイル化合物とのウレタン化反応は、常法に従って実施できる。例えば、ジブチル錫ジラウレートなどの錫系化合物を触媒として用いて、60〜100℃に加熱することにより容易にウレタン(メタ)アクリレート化合物を合成できる。また、ウレタン(メタ)アクリレートの粘度調整のため、合成時に反応には直接関係ない低粘度の(メタ)アクリレートなどの反応性希釈剤を使用しても良い。
【0035】
特に、(A)成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびそれを3量化して得られるイソシアヌレート型のトリイソシアネート化合物(イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート3量体)と、2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレート化合物が好ましい。このようなウレタンアクリレート化合物としては、例えば、以下の構造式(1)〜(7)で示される各ウレタンアクリレート化合物の混合物が挙げられる。このような(A)成分を用いると、樹脂組成物が比較的低い重合収縮率を有し、硬化の際に着色し難く、硬化性、硬化物の耐光性、耐擦傷性、耐熱性に優れ、また樹脂組成物の動的弾性率を最適範囲に調整するのに適している。
【0036】
【化1】

【0037】
【化2】

【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
イソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート3量体に対するヘキサメチレンジイソシアネートのモル比は、2.0〜4.0の範囲内であることが好ましい。このモル比が上記範囲内であれば、硬化物の収縮率が大きくなり過ぎることもなく、硬化物の動的弾性率が高くなり過ぎることもない。
【0044】
ペンタエリスリトールトリアクリレートに対する2−ヒドロキシプロピルアクリレートのモル比は、0.25〜1.0の範囲内であることが好ましい。このモル比が上記範囲内であれば、硬化物の動的弾性率が高くなり過ぎることもなく、靭性を十分付与できる。
【0045】
ウレタンアクリレート化合物の構成において、イソシアネート基に対する水酸基のモル比は1.0〜1.5の範囲内であることが好ましい。このモル比が1.0以上であれば、未反応イソシアネートが樹脂組成物中に残留するのを低減し、保管安定性を良好にできる。また、このモル比が1.5以下であれば、未反応のペンタエリスリトールトリアクリレートや2−ヒドロキシプロピルアクリレートが含有量を低減し、硬化収縮性が大きくなるのを防ぐことができる。
【0046】
(A)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜80質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。上記各範囲の下限値は、光学フィルムの凹凸構造部の耐擦傷性や耐熱性の点などにおいて意義がある。また、上記各範囲の上限値は、(B)成分や(D)成分により樹脂硬化物の動的弾性率を調整でき、シートの反りを小さくできる点などにおいて意義がある。
【0047】
(B)ジ(メタ)アクリレート化合物:
本発明の樹脂組成物に使用する(B)成分は、分子中にウレタン結合を有さず、2つの(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート化合物である。この(B)成分は、ラジカル重合性光重合開始剤の存在下で紫外線等の活性エネルギー線照射することにより重合反応や架橋反応を起こす成分であり、(A)成分と混合することにより、主に樹脂組成物の粘度を低下させ、透明基材フィルム表面への凹凸構造部成形性を向上し、更に樹脂硬化物の動的弾性率を設計値へ調整するための成分である。
【0048】
(B)成分としては、例えば、分子量500以上の脂肪族のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はF系のジ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0049】
(B)成分の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加数が4モル以上のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加数が4モル以上のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシドの付加数が4モル以上のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのエチレンオキシドの付加数が4モル以上のジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0050】
この中で、ポリブチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加数が6モル以上のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキシドの付加数が6モル以上のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシドの付加数が6モル以上のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのエチレンオキシドの付加数が6モル以上のジ(メタ)アクリレートが、樹脂硬化物の動的弾性率調整の点で好ましい。
【0051】
更に、下記一般式(I)および(II)で示される化合物は、光学フィルムの凹凸構造部の耐擦傷性を低下させない点でより好ましい。
【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
以上の(B)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0055】
(B)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜90質量部、特に好ましくは30〜80質量部である。上記各範囲の下限値は、樹脂組成物の粘度を低減し、透明基材フィルム表面への凹凸構造部成形性を良好にする点、更には樹脂硬化物の動的弾性率が高くならないように調整し、光学フィルムの反りを小さくする点などにおいて意義がある。また、上記各範囲の上限値は、樹脂硬化物の動的弾性率が低くなり過ぎず、光学フィルムの凹凸構造部に十分な耐熱性や耐擦傷性を付与できる点などにおいて意義がある。
【0056】
(C)ラジカル性光重合開始剤:
本発明の樹脂組成物に使用する(C)成分は、ラジカル性光重合開始剤である。この(C)成分は、紫外線や可視光線等の活性エネルギー線を照射することにより発生するフリーラジカルによりエチレン性不飽和化合物のラジカル重合を開始させる化合物である。
【0057】
(C)成分としては、従来から光ラジカル重合開始剤として知られている多種多様な化合物を用いることができる。(C)成分として使用できる紫外線感応性のラジカル性光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインモノエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名IRGACURE127]等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;などが挙げられる。また、(C)成分として使用できる可視光線感応性のラジカル性光重合開始剤の具体例としては、カンファーキノン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名IRGACURE784]等を挙げることができる。
【0058】
この中で、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾインモノエチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが、硬化性および樹脂硬化物の着色性の点で好ましい。
【0059】
以上のラジカル性光重合開始剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0060】
(C)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、特に好ましくは0.1〜4質量部である。上記各範囲の下限値は、樹脂組成物の活性エネルギー線による硬化性の点などにおいて意義がある。また上記各範囲の上限値は、光学フィルムの凹凸構造部が著しく黄色に着色するのを防止できる点などにおいて意義がある。
【0061】
(D)分子中に1つの重合性二重結合基を有する化合物:
本発明の樹脂組成物に使用する(D)成分は、分子中に1つの重合性二重結合基を有する化合物である。この(D)成分は、ラジカル重合性光重合開始剤の存在下で紫外線等の活性エネルギー線照射することにより重合反応を起こす成分であり、樹脂組成物の粘度を低下させ、透明基材フィルム表面への凹凸構造部成形性を向上し、更に、重合収縮により硬化樹脂内部に発生する内部応力の一部を硬化中に緩和するための成分である。すなわち、この(D)成分を、(A)〜(C)成分に加えることにより、光学フィルムの反りを小さくすることができる。
【0062】
(D)成分として、代表的にはモノ(メタ)アクリレート化合物を使用できる。ただしこれに限定されず、分子中に1つの二重結合を有する化合物であればよい。(D)成分の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フォスフォエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等が挙げられる。
【0063】
以上の(D)成分は1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0064】
(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15質量部、特に好ましくは1〜10質量部である。上記各範囲の下限値は、樹脂組成物の粘度を低下させる点および光学フィルムの反りを低減する点などにおいて意義がある。また、上記各範囲の上限値は、光学フィルムの凹凸構造部の耐熱性の点などにおいて意義がある。
【0065】
(E)その他の成分:
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、耐擦傷性向上または離型性向上のためにフッ素含有化合物、炭素数8以上の長鎖アルキル基を有する化合物を使用してもよい。フッ素含有化合物の具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)クリレート等が挙げられる。炭素数8以上の長鎖アルキル基を有する化合物の具体例としては、ダイマージオール(例えば、ユニケマ製、商品名プリポール2033など)、ダイマージオールのジ(メタ)アクリレート等の長鎖アルキル化合物などが使用できる。
【0066】
その他、適宜、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS等)、レベリング剤、熱安定剤、皮膜物質改質剤、難燃剤、重合防止剤、ラジカル性熱重合開始剤、カチオン性光重合開始剤、カチオン性熱重合開始剤、光重合促進剤、増感剤、離型剤、帯電防止剤等の各種添加剤を含有させても良い。
【0067】
(E)成分の使用量は、本発明の樹脂組成物の本質的な効果に影響しない範囲、例えば(A)成分、(B)成分および(D)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0〜4質量部添加することが適当である。
【0068】
上記の(A)〜(D)成分、並びに任意の(E)その他の成分からなる本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、スターラーチップやはね付き攪拌棒等を使用して、均一に十分混合される。この混合は、光重合が開始しないように、イエローランプ等の照明のもとで行うのが適当である。
【0069】
透明基材フィルム14としては、活性エネルギー線を透過するものであれば特に限定はなく、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等の樹脂やガラスからなるフィルム、シートまたは板等が使用できる。透明基材フィルム14の厚さは、たとえば25〜250μmである。
【0070】
凹凸構造部12は、透明基材フィルム14の表面に直接設けてもよい。また、透明基材フィルム14との密着性を向上させるために、透明基材フィルム14の表面に密着性向上のための表面処理を施して表面処理層を形成してから凹凸構造部12を設けてもよい。この表面処理としては、例えば、透明基材フィルム14の表面にポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などからなる易接着層を形成する方法や、透明基材フィルム14の表面を粗面化処理するなどの方法が挙げられる。更に、透明基材フィルム14の凹凸構造部12と反対側に、光の取り出し効率をさらに向上させるため、あるいは、透過光の出射角度による波長依存性を低減して、より均一にするために光拡散層を設けても良い。この光拡散層は、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂に屈折率の異なる有機系微粒子やシリカ微粒子等の拡散剤を配合することで形成することができる。
【0071】
また、透明基材フィルム14には、帯電防止、反射防止、基材同士の密着防止など他の処理を施すこともできる。
【0072】
図7に、光学フィルム1の製造装置を示す。図7を参照して、光学フィルム1の製造方法につき、以下に説明する。
【0073】
光学フィルム1の凹凸構造部12の凹凸単位形状12aの形成された面を転写形成するための転写面を有する例えば銅製の薄膜を外周に巻き付けた円筒形金型7と、ゴム製ニップロール6との間に、透明シート状基材5(即ち上記透明基材フィルム14)を導入する。透明シート状基材5が導入された状態において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物10をタンク8から先端にノズルを取り付けた配管9を通して、円筒形金型7と透明シート状基材との間に供給しながら、透明シート状基材5を移動させる。この時、円筒形金型7はこれに合わせて回転しており、円筒形金型7と透明シート状基材5との間に挟まれた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物10は、高圧水銀灯等を光源とした紫外線照射装置11付近に来たところで、紫外線照射により硬化する。ランプ通過後、円筒形金型7から離型し、光学フィルム12’(即ち光学フィルム1)を得る。
【0074】
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を貯蔵するタンク8および円筒形金型7の内部あるいは外部には、温度を一定に制御するためシーズヒータや温水ジャケットなどの熱源設備が配置されており、タンク8内の樹脂温度および円筒形金型7の表面温度を適宜維持する。
【0075】
光学フィルム1の製造に用いる金型(型部材)としては、例えば、アルミニウム、黄銅、鋼などの金属製の型、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などの合成樹脂製の型、これらの材料にメッキを施したものや各種金属粉を混合した材料より作製した型などが挙げられる。特に、金属製の型は、耐熱性や強度の面から好ましく、また、連続生産に適している。より具体的には、金属製の型は、重合発熱に強い、変形しにくい、傷が付きにくい、温度制御が可能である、精密成形に適しているなどの利点がある。
【0076】
これらの金型において、光学フィルム1の凹凸構造部12の凹凸単位形状12aの形成された面を転写形成するための転写面を作成する方法としては、ダイヤモンドバイトによる切削、或いはWO2008/069324号公報に記載されるようなエッチングが挙げられる。前者は、単位形状12aが、角錐形状、角錐台形状、円錐形状、円錐台形状および屋根形状等の大略平面の組合せによるものである場合に好適であり、後者は、単位形状12aが、半球形状または半球台形状等の曲面を有するものの場合に好適である。また、これらの転写面形状の凹凸が反転した形状の転写面を有するマスター型から電鋳法を用いて作製した金属薄膜をロール芯部材に巻きつけて、円筒形金型を作製する方法も用いることができる。また、転写面をブラスト処理により、単位構造が完全に失われない程度に粗面化し、粗面による光拡散効果により、光学装置からの出射光波長の出射角度依存性を低減することもできる。
【0077】
活性エネルギー線発光光源としては、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ(フュージョンUVシステムズ社製)、可視光ハロゲンランプ、キセノンランプ、太陽光等が使用できる。活性エネルギー線照射時の雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガス中でもよい。照射エネルギーとしては、例えば、200〜600nm、好ましくは320〜390nmの波長の波長範囲における積算エネルギーが、例えば、0.01〜10J/cm2、好ましくは0.5〜8J/cm2となるように照射することが適当である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。
【0079】
以下の実施例及び比較例において、「部」はとくに断らない限り質量部を意味する。
【0080】
以下の実施例及び比較例における評価法は次の通りとした。
【0081】
電子顕微鏡観察(SEM):走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4300−SE/N)を使用して測定した。
【0082】
レーザー顕微鏡観察:3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス社製、LEXT OLS4000)を用いて測定した。
【0083】
法線輝度:
市販の有機EL素子(LUMIOTEC社製、デザインサンプルキット、発光部寸法:125mm×125mm)の表面の光学フィルムを剥離してガラス表面をむき出しにして、評価用の光源とした。次いで厚み25μmの基材レス両面接着テープ(日東電工社製、LUCIACS CS9621T)を用いて、測定対象の光学フィルムを凹凸構造側の面が出光側に向くように評価用光源のガラス表面に貼り付けた。この状態で評価光源に1.5Aの電流を通電して点灯し、輝度計(トプコン社製、BM−7)を用いて法線輝度を測定した。
【0084】
出射光束量:
法線輝度測定時と同様に光学フィルムを貼り付けた光源を、法線輝度測定時と同様の条件で点灯し、光学フィルムを貼り付けた発光部を、直径25mmの開口部を設けた積分球(Labsphere社製)に密着させ、光源表面からの出射光を積分球の中に入光させた。入光した総放射束量を、積分球に接続したマルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、PMA−11)で測定し、標準視感度曲線による補正を行なって出射光束量を算出した。
【0085】
耐擦傷性:
法線輝度測定時と同様に光学フィルムを貼り付けた光源を、摩擦堅牢度試験機(大栄科学精機製作所社製、RT−200)を用いて評価した。摩擦子としては平面摩擦子(20mm×20mm)の中心に5mm角の大きさで188μmのPETフィルムを両面テープで貼付け、その上にアンチグレアフィルムを貼り付けたものを使用し、摩擦回数は1往復で実施した。評価は光源の非点灯時に目視にて下記の基準に従い判定した:
○ 摩擦後1日経過後に傷を確認できない;
× 摩擦後1日経過後も確認可能な傷が残る。
【0086】
[製造例]活性エネルギー線硬化性樹脂組成物樹脂の製造:
硝子製フラスコに、イソシアネート化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネート117.6g(0.7モル)およびイソシアヌレート型のヘキサメチレンジイソシアネート3量体151.2g(0.3モル)と、水酸基を有する(メタ)アクリロイル化合物として、2−ヒドロキシプロピルアクリレート128.7g(0.99モル)およびペンタエリスリトールトリアクリレート693g(1.54モル)と、触媒として、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫100ppmと、重合禁止剤として、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.55gとを仕込み、70〜80℃の条件にて残存イソシアネート濃度が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレート化合物を得た。このウレタンアクリレート化合物は、先に記載した構造式(1)〜(7)で示される各ウレタンアクリレート化合物の混合物である。
【0087】
(A)成分として、前記ウレタンアクリレート化合物を35部、(B)成分として、下記式(9)[一般式(I)のlが9である化合物]で表されるジメタクリレート(商品名アクリエステルPBOM、三菱レイヨン(株)製)を25部、および下記式(10)で表されるジメタクリレート(商品名ニューフロンティアBPEM−10、第一工業製薬(株)製)を40部、(C)成分として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を1.2部、混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0088】
【化10】

【0089】
【化11】

【0090】
[参考例]
前記の評価用光源(すなわち表面に光学フィルムが存在しない状態)の法線輝度、出射光束量を測定したところ、法線輝度は3570[cd/m2]、出射光束量は62.8×10−3[lm]であった。
【0091】
[実施例1]
型部材の母材としての10mm厚のステンレス合金上に無電解ニッケルメッキ層を500μm形成した型部材を頂角100°の二等辺三角形形状のダイヤモンドバイトを用いて切削し型部材を作製した。得られた型部材は四角錐がテント状に変形した凸部が配列した形状である。この型部材に製造例1で作製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を均一に塗布し、その上に厚み188μmのPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4300)を置き、ハンドロールで均一に伸ばした。その後PETフィルム上からUV照射を行ない、型部材とPETフィルムの間で伸ばされた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。型部材からPETフィルムを剥離し、PETフィルム表面に型部材の凸形状が、反転した形状を表面に有する光学フィルムAを得た。表面のSEM観察画像を図2に示す。SEM画像で示す通り、長辺が66μm、短辺が33μmで深さが約14μm、底角が40度の凹型のテント状形状(凹凸単位形状)が、隙間無く規則的に配列していた。
【0092】
得られた光学フィルムAの法線輝度、出射光束量、耐擦傷性の評価を実施し、結果を表1に示す。尚、表1において、「凹凸パターン形成樹脂」は凹凸単位形状を有する凹凸構造部を形成する樹脂を指す。
【0093】
光学フィルムが無い場合を100%とした時に、法線輝度は160%と法線方向の輝度が向上し、出射光束量は132%と光取り出し効率が向上したことが確認できた。また耐擦傷試験でも発生した傷が1日以内に元の傷の無い状態に復元した。
【0094】
[比較例1]
実施例1の型部材を用いて、成型樹脂としてシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン社製、ゼオノア)を、金型温度250度の条件でプレス成型し、表面に実施例1と同様に凹型のテント状形状を有する厚み300μmの光学フィルムBを得た。得られた光学フィルムBの法線輝度、出射光束量、耐擦傷性の評価を実施し、結果を表1に示す。耐擦傷性試験後の有機EL素子表面は、実施例1と異なり1日経過後も傷が復元せずに視認された。
【0095】
[実施例2]
実施例1と同様の型部材を用い、頂角90度の直角二等辺三角形形状のダイヤモンドバイトを用いて型部材を作製した。得られた型部材は三角錐の凸部が配列した形状である。この型部材を用いた以外は実施例1と同様の方法で光学フィルムCを得た。表面のSEM観察画像を図3に示す。SEM画像で示す通り、底面が一辺42μmの正三角形で深さが約12μm、底角が45度の凹型の三角錐形状(凹凸単位形状)が、規則的に配列していた。得られた光学フィルムCを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0096】
[実施例3]
WO2008/069324号公報に記載されるエッチングする製法でマイクロレンズ形状の型部材を作製した。得られた型部材は半球形状の凹部が配列した形状である。この型部材を用いた以外は実施例1と同様の方法で光学フィルムDを得た。表面のレーザー顕微鏡観察画像を図4に示す。光学フィルムDの表面はレーザー顕微鏡画像で示す通り、直径が50μmの半球形状凸部(凹凸単位形状)が規則的に配列していた。得られた光学フィルムDを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0097】
[実施例4]
実施例1と同様の型部材を用い、頂角100度の二等辺三角形形状のダイヤモンドバイトを用い、更に電鋳により凹凸反転させたニッケル製の型部材を作製した。得られた型部材は四角錐台形状の凹部が配列した形状である。この型部材を用いた以外は実施例1と同様の方法で光学フィルムEを得た。表面のレーザー顕微鏡観察画像を図5に示す。光学フィルムEの表面はレーザー顕微鏡画像で示す通り、四角錐台形状の凸部(凹凸単位形状)が規則的に配列していた。この四角錐台形の底面は一辺50μmの正方形であり底面と上面の高低差は10μmであった。得られた光学フィルムEを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0098】
[実施例5]
実施例1と同様の型部材を用い、頂角60度の二等辺三角形形状のダイヤモンドバイトを用い、更に電鋳により凹凸反転させたニッケル製の型部材を作製した。得られた型部材は四角錐台形状の凹部が配列した形状である。この型部材を用いた以外は実施例1と同様の方法で光学フィルムFを得た。表面のレーザー顕微鏡観察画像を図6に示す。光学フィルムFの表面はレーザー顕微鏡画像で示す通り、四角錐台形状の凸部(凹凸単位形状)が規則的に配列していた。この四角錐台形の底面は一辺50μmの正方形であり底面と上面の高低差は30μmであった。得られた光学フィルムFを実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【符号の説明】
【0100】
1 光学フィルム
12 凹凸構造部
12a 凹凸単位形状
14 透明基材フィルム
2 光学デバイス
22 透明基材層
24 透明電極層
26 有機発光層
28 金属電極層
5 透明シート状基材
6 ゴム製ニップロール
7 円筒形金型
8 タンク
9 配管
10 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
11 紫外線照射装置
12’ 光学フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸構造部を有する光学フィルムであって、
前記凹凸構造部は、下記の(A)成分、(B)成分および(C)成分:
(A)分子中に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種以上含有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
(B)分子中にウレタン結合を有さず、2つの(メタ)アクリロイル基を有するジ(メタ)アクリレート化合物、
(C)ラジカル性光重合開始剤、
を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂からなり、
前記凹凸構造部は、一方の面に形成された凹凸構造を持ち、
前記凹凸構造部の凹凸構造側の面は、凹凸単位形状を前記凹凸構造側の面に沿って少なくとも1つの方向に繰り返し配列してなる形状を有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記凹凸単位形状は、大略、角錐形状、角錐台形状、円錐形状、円錐台形状、屋根形状、半球形状または半球台形状であり、突起又は窪みを形成していることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記光学フィルムは、更に、前記凹凸構造部の凹凸構造側の面の反対側の面に接合された透明基材フィルムを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルムと、前記凹凸構造部の前記凹凸構造側の面の反対側に位置する、前記光学フィルムの面に接合された光学デバイスと、を備えており、
前記光学デバイスから発せられる光を前記光学フィルムの前記凹凸構造部の凹凸構造側の面から出射させるようにしてなることを特徴とする光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−3074(P2012−3074A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138529(P2010−138529)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】