説明

光学器材用コーティング剤

【課題】屈折率の高い酸化チタンを使用した場合であっても、従来のような高温処理を必要とせずに高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜を形成しうるコーティング剤、高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜及びその製造方法。
【解決手段】チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水とを共存させて得られる光学器材用コーティング剤、並びに、チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源の加水分解溶液と、窒素含有有機塩基とを混合して得られる光学器材用コーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学器材用コーティング剤に関する。更に詳しくは、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、CRT用フィルタ、光記録用基体等の光学器材用コーティング剤、該光学器材用コーティング剤からなる光学器材用コーティング膜及びその製造方法、並びに該光学器材用コーティング膜を有する光学器材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズに代表される光学器材に用いられる光学材料には、従来から使用されている無機ガラスに加えて、加工容易性及び生産効率の観点から、近年、その代替材料としてプラスチックが用いられている。
【0003】
とりわけ、ポリカーボネート及びポリメチルメタクリレートに代表される透明プラスチックは、軽量、易加工性、耐衝撃性等の長所を生かして、無機ガラスの代替として広く用いられている。しかし、これらの透明プラスチックは、無機ガラスと比べると、硬度が充分でない、傷がつきやすい、溶媒に浸されやすい、帯電してほこりを吸着しやすい、光により劣化しやすい、着色しやすい等の欠点があることから、窓ガラス等のシート状材料に適用するのには実用上解決すべき多くの技術的課題がある。
【0004】
これらの技術的課題を改善する試みとして、例えば、耐擦傷性及び耐薬品性を向上させる目的で、プラスチック基材の表面に特定の無機系物質を真空蒸着させたり、有機系ポリマーをコーティングする方法(例えば、特許文献1参照)、耐擦傷性を向上させるためにコーティング膜にシリカ微粒子等の無機微粒子を添加する方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0005】
また、光学レンズ材料では、プラスチックで構成される有機ガラスは、従来の無機ガラスと比べて屈折率が低いため、光学レンズ端面が厚くなることから、強度の視力矯正用には適さないとされていたが、近年、有機ガラスの屈折率が改善され、1.7前後の屈折率を有するものが開発されている。
【0006】
有機レンズの屈折率を安定化させたり、向上させたりするために、特定の無機化合物、例えば、酸化チタン等の微粒子を有機ガラスに配合することが試みられている。しかし、酸化チタン自体は、高屈折率を与えるが、光触媒活性があるため、有機ガラスを変色させる等の技術的課題がある。そのため、前記技術的課題を解決するものとして、光触媒活性のない無機化合物で酸化チタン微粒子を被覆した複合酸化チタンの微粒子が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
別の構造を有する酸化チタンとして、層構造を有する酸化チタンの懸濁液(例えば、特許文献4参照)や、チタニアナノシートからなる多層超薄膜(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【特許文献1】米国特許第4294950号明細書
【特許文献2】特公平3−50774号公報
【特許文献3】特開2000−206305号公報
【特許文献4】特開平9−25123号公報
【特許文献5】特開平2001−270022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、高硬度を有する膜を基材に形成するために、前記(複合)酸化チタン微粒子等の無機粒子をアルコキシシラン系の熱硬化性樹脂と併用した場合、高温処理が必要となるが、その処理温度は基材の耐熱温度付近までしか高くすることができない。また、屈折率をより高めるために無機粒子の含有量を増加させると、満足しうる密着性や高硬度を有するコーティング膜を得ることができない。
【0009】
本発明は、屈折率の高い酸化チタンを使用した場合であっても、従来のような高温処理を必要とせずに、高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜を形成しうるコーティング剤、高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜及びその製造方法、並びに前記コーティング膜を有する光学器材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水とを共存させて得られる光学器材用コーティング剤、
(2)チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源の加水分解溶液と、窒素含有有機塩基とを混合して得られる光学器材用コーティング剤、
(3)窒素含有有機塩基の存在下で、チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源を加水分解させることによって得られる光学器材用コーティング剤、
(4)チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水との共存下でチタン含有化合物を生成させる光学器材用コーティング剤の製造方法、
(5)前記(1)〜(3)いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布して形成される光学器材用コーティング膜、
(6)前記(5)記載の光学器材用コーティング膜を有する光学器材、
(7)前記(1)〜(3)いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布する工程を有する光学器材用コーティング膜の製造方法、並びに
(8)前記(1)〜(3)いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布する工程を有する、光学器材用コーティング膜を有する光学器材の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のような高温処理を必要とせずに、高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜を形成しうるコーティング剤、従来よりも高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜及び該コーティング膜を含有する光学器材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者等は、特定のチタン及び窒素含有有機塩基を含有するコーティング剤が、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、CRT用フィルタ、光記録用基体等の光学器材用のコーティング膜として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の光学器材用コーティング剤は、チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水とを共存させて得られるチタン含有化合物を含んでなるものである。本発明の光学器材用コーティング剤の好適な態様には、以下の態様が含まれる。
【0014】
態様1:チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合することによって得られる光学器材用コーティング剤、好ましくはチタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合した後、得られた混合物とヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合することによって得られる光学器材用コーティング剤。
【0015】
態様2:窒素含有有機塩基の存在下で、チタン源を加水分解させることによって得られる光学器材用コーティング剤、好ましくは窒素含有有機塩基の存在下で、チタン源を加水分解させた後、得られた加水分解物とヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合することによって得られる光学器材用コーティング剤。
【0016】
態様2には、更に、以下の方法によって得られるものが含まれる。
(方法A)窒素含有有機塩基とチタン源との混合物に水を加える方法、好ましくは窒素含有有機塩基とチタン源との混合物に水を加え、得られた混合液とヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合する方法。
(方法B)窒素含有有機塩基の水溶液とチタン源とを混合し、チタン源を加水分解させる方法、好ましくは窒素含有有機塩基の水溶液とチタン源とを混合し、チタン源を加水分解させた後、得られた加水分解物とヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合する方法。
【0017】
<コーティング剤の原料>
チタンアルコキシド及びチタン塩は、それぞれ単独で又は併用することができる。チタンアルコキシド及びチタン塩は、加水分解により、水酸化チタンを生成するチタン含有化合物であることが好ましい。水酸化チタンとしては、Ti(OH)、Ti(OH)又はTi(OH)で表される組成式を有するものが挙げられる。
【0018】
チタンアルコキシドは、水と混合するか、又は水と混合した後、加熱することにより、水酸化チタンを容易に生成するものである。
【0019】
チタンアルコキシドとしては、例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のアルコキシドの炭素数が1〜6のチタンアルコキシド、好ましくはアルコキシドの炭素数が2〜4のチタンアルコキシドが挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。アルコキシドの炭素数が1〜6のチタンアルコキシドのなかでは、アルコキシドの炭素数が1〜6のチタンテトラアルコキシドが好ましく、アルコキシドの炭素数が2〜4のチタンテトラアルコキシドがより好ましく、入手のし易さ及び取り扱い性の観点から、チタンテトライソプロポ
キシドが更に好ましい。
【0020】
チタン塩は、水と混合するか、又は水と混合した後、加熱することにより、水酸化チタンを容易に生成する。
【0021】
チタン塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、二塩化チタン等の塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタニル等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、入手しやすさ等の観点から、四塩化チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルが好ましい。
【0022】
チタン源は、混合のしやすさの観点から、有機溶媒溶液として用いることが好ましい。チタン源の溶液に用いられる好適な有機溶媒としては、アルコールが挙げられる。アルコールとしては、チタン源との相溶性が高いものが好ましい。好適なアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等の炭素数が1〜8の1価アルコール等が挙げられる。
【0023】
チタン源の有機溶媒溶液におけるチタン源の濃度は、生産性を高める観点及び高粘度化を抑制し、混合をさせやすくする観点から、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは1〜15重量%である。
【0024】
チタン源の加水分解は、チタン源の有機溶媒溶液に水を添加したり、チタン源を例えば、溶媒中に分散あるいは溶解させた状態で、空気中の水分(湿気)を混合溶媒にとけ込ませて空気中の水分を利用したりして行うことができる。
【0025】
チタン源を加水分解させる際には、チタン源とともに、他の元素、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、鉄等を共存させ、チタン源とこの他の元素とを複合化させることもできる。
【0026】
チタン源の加水分解は、アルカリの存在下で行うことができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類水酸化物、アンモニア、後述するアミン類等が挙げられる。これらのアルカリのなかでは、入手のし易さ及び取り扱い性の観点から、アルカリ金属水酸化物、アンモニア及びアミン類が好ましい。
【0027】
チタン源を加水分解させる際に用いられる水の量は、水酸化チタンを十分に生成させる観点及びその溶液の粘度の上昇を抑制し、生産効率を高める観点から、チタン源の質量に対して、好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜15倍である。
【0028】
加水分解の際のチタン源の有機溶媒溶液の温度及び加水分解に要する時間は、用いられるチタン源の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
【0029】
窒素含有有機塩基は、チタン源の加水分解溶液と共存することにより、コーティング剤中で後述するチタン酸シートの構造を形成するものと考えられる。この構造により、窒素含有有機塩基が用いられた本発明のコーティング剤は、高硬度を有するコーティング膜を形成するものと考えられる。
【0030】
窒素含有有機塩基のなかでは、1013hPaにおける沸点が300℃以下である窒素含有有機塩基は、そのコーティング膜中における残存量を低減させ、高硬度を有するコーティング膜を形成させる観点から好ましい。
【0031】
窒素含有有機塩基としては、例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0032】
アミン類の中では、本発明の光学器材用コーティング膜の硬度及び透明度を良好にする観点から、炭素数1以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルケニル基を1個以上有する、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンからなる群より選ばれた1種以上が好ましい。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。アルキル基又はアルケニル基を有するアミンは、モノアミンであってもよく、ジアミン又はそれ以上のポリアミンであってもよい。
【0033】
アルキル基又はアルケニル基を含有するアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、アリルアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジアリルアミン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の第3級アミン;エチレンジアミン、1,2−
プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ブタンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,2−ペンタンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、1,4−ペンタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2,3−ペンタンジアミン、1,2−ヘキサンジアミン、1,3−ヘキサンジアミン、1,4−ヘキサンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ペプチルジアミン、1,8−オクチルジアミン等のジアミン;ブテニルアミン、ヘキセニルアミン、オクテニルアミン、デセニルアミン等のアルケニルアミン等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、膜硬度及びコストの観点から、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2級アルキルアミン及びトリエチルアミン等の第3級アルキルアミンが好ましく、炭素数が1〜10の第2級アルキルアミン及び炭素数が1〜10の第3級アルキルアミンがより好ましく、ジエチルアミン及びジ−n−プロピルアミンが更に好ましく、ジエチルアミンがより一層好ましい。
【0034】
本発明のコーティング剤には、チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合することによって生成するチタン含有化合物(以下、本発明におけるチタン含有化合物ともいう)を有機溶媒に安定に分散させる観点から、ヒドロキシカルボン酸を含有させることが好ましい。
【0035】
ヒドロキシカルボン酸は、水酸基を有するカルボン酸である。水酸基を有するカルボン酸としては、例えば、水酸基を1個有するヒドロキシカルボン酸、水酸基を2個有するヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
水酸基を1個有するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸(一塩基酸)、乳酸(一塩基酸)、マンデル酸(一塩基酸)、リンゴ酸(二塩基酸)、クエン酸(三塩基酸)等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。水酸基を2個有するヒドロキシカルボン酸としては、グリセリン酸(一塩基酸)、酒石酸(二塩基酸)などが挙げられる。
【0037】
ヒドロキシカルボン酸のなかでは、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸及び酒石酸からなる群より選ばれた1種以上は、有機溶媒に対する本発明におけるチタン含有化合物の分散性を高める観点から好ましい。
【0038】
アミン類1当量あたりのヒドロキシカルボン酸の量は、本発明におけるチタン含有化合物の有機溶媒に対する分散性を向上させる観点から、好ましくは0.5当量以上、より好ましくは1当量以上であり、得られるコーティング膜の硬度を高める観点から、好ましくは4当量以下、より好ましくは3当量以下である。
【0039】
なお、アミン類の当量とは、使用されるアミンのモル数にアミノ基の個数を掛けた値であり、ヒドロキシカルボン酸の当量とは、使用されるヒドロキシカルボン酸のモル数にカルボキシル基の個数を掛けた値である。
【0040】
本発明のコーティング剤には、形成されるコーティング膜に安定した強度を付与する観点から、シラン化合物を含有させることが好ましい。
【0041】
シラン化合物としては、有機ポリシロキサンを形成せしめる化合物、有機ケイ素化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0042】
有機ポリシロキサンを形成せしめる化合物の代表例としては、一般式(I):
(RSi(X)3−a (I)
(式中、Rは炭素数1〜10の有機基、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Xは加水分解性基、aは0又は1を示す)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物が挙げられる。Xは、硬化速度を高める観点及び加水分解を容易にする観点から、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシアルキル基が好ましい。
【0043】
有機ケイ素化合物の代表例としては、メチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び/又はその加水分解物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。これらのなかでは、染色性を付与する観点から、エポキシ基又はグリシドキシ基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0044】
シランカップリング剤の代表例としては、一般式(II):
Si(OR (II)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシアルキル基を示す)
で表されるシラン化合物が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシメチルシラン、テトラエトキシエチルシラン、テトラプロポキシプロピルシラン、テトラブトキシブチルシラン及び/又はその加水分解物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。これらのなかでは、コーティング膜硬度を向上させる観点から、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
【0045】
シラン化合物は、硬化温度を下げ、硬化をより促進させる観点から、加水分解させた後に用いることが好ましい。
【0046】
本発明のコーティング剤がシラン化合物を含有する場合は、加水分解は、純水又は塩酸、酢酸、硫酸等の酸性水溶液を添加し、撹拌することによっても行うことができる。加水分解の度合は、純水又は酸性水溶液の添加量を調節することにより、容易に調節することができる。
【0047】
加水分解に際しては、一般式(I)のX基と等モル以上10倍モル以下の純水又は酸性水溶液を添加することが硬化を促進させる観点から、好ましい。加水分解によってアルコール等が生成するので、無溶媒で加水分解することが好ましいが、加水分解を更に均一に行う目的で、シラン化合物と溶媒とを混合した後、加水分解を行うことができる。
【0048】
また、目的に応じて、加水分解後のアルコール等を加熱又は減圧により、適宜除去した後にシラン化合物を使用することもでき、その後に適当な溶媒を添加することもできる。この溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは、必要に応じて、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。また、目的に応じて、加水分解反応を促進し、更に予備縮合等の反応を進行させるために、室温以上に加熱してもよく、予備縮合を抑えるために、加水分解温度を室温以下に下げてもよい。
【0049】
本発明のコーティング剤におけるシラン化合物の含有量は、コーティング膜の硬度及び基材に対する密着性の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。
【0050】
<態様1のコーティング剤>
態様1によれば、チタン源の加水分解溶液と、窒素含有有機塩基とを混合した後、好ましくはヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合することにより、コーティング剤が得られる。
【0051】
チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合する際の温度は、特に限定されないが、窒素含有有機塩基の安定性の観点から、好ましくは2〜200℃、より好ましくは10〜150℃、更に好ましくは20〜100℃である。また、チタン源の加水分解溶液と、窒素含有有機塩基との混合時間は、生産効率を高める観点から、好ましくは0.1〜20時間、より好ましくは1〜10時間である。
【0052】
チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合した後には、形成されるコーティング膜の強度を向上させる観点から、更に50〜200℃の温度で水熱処理を行ってもよい。
【0053】
なお、チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基の水溶液とを混合したときには、白濁を生じることがあるが、継続的に攪拌を行うことにより、無色透明な液とすることができる。
【0054】
<態様2のコーティング剤>
態様2によれば、チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とを混合するのではなく、例えば、窒素含有有機塩基の存在下で、チタン源を加水分解させた後に、好ましくはヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合することにより、コーティング剤を調製することができる。
【0055】
態様2によれば、例えば、窒素含有有機塩基とチタン源との混合物に水を加え、好ましくはヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合する方法(以下、方法Aという)、窒素含有有機塩基の水溶液と、チタン源とを混合し、チタン源を加水分解させた後、好ましくはヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物とを混合する方法(以下、方法Bという)等により、コーティング剤を調製することができる。
【0056】
方法Aにおける混合物に水を加える際の水の量、及び方法Bにおける水溶液に用いられる水の量は、いずれも、チタン源が加水分解するのに十分な量であればよい。水の量は、通常、窒素含有有機塩基とチタン源との混合物の合計質量に対して、好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜15倍である。
【0057】
方法Aにおいて、水を添加する際の混合物の温度は、特に限定されないが、通常、好ましくは2〜200℃、より好ましくは20〜100℃である。また、水の滴下時間は、0.01〜5時間が好ましく、0.02〜2時間がより好ましい。水の添加後には、0.1〜20時間程度の熟成を行うことが好ましい。
【0058】
方法Bにおいて、水溶液とチタン源とを混合する際の水溶液及びチタン源の温度は、特に限定されないが、通常、それぞれ、好ましくは2〜200℃、より好ましくは20〜100℃である。混合後には、0.1〜20時間程度の熟成を行うことが好ましい。
【0059】
コーティング剤の使用時におけるチタン濃度は、コーティング膜の生産性を高める観点及び高粘度化を抑制する観点から、酸化チタン(TiO)換算で、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。酸化チタン(TiO)換算のチタン濃度は、蛍光X線によってコーティング剤の単位重量中のチタン原子のモル数を測定し、相当する酸化チタンの重量を算出することによって得ることができる。
【0060】
コーティング剤中のチタンの濃度は、調製されたコーティング剤を濃縮、希釈などして調整してもよく、その場合のコーティング剤中のチタンの濃度(TiO質量換算濃度)は、コーティング剤の保存安定性の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、膜の製造効率や膜物性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。なお、コーティング剤中のチタンの濃度は、溶媒を添加したり、除去することにより、容易に調整することができる。
【0061】
コーティング剤におけるチタン濃度の調整に用いる溶媒の種類は、特に限定されず、その例として、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。水としては、例えば、イオン交換水等が挙げられる。また、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。水と有機溶媒との混合溶媒としては、水系溶媒が挙げられる。
【0062】
なお、本明細書において、水系溶媒とは、本発明のコーティング剤に用いられる溶媒における水分含量が30重量%以上である溶媒という。また、有機系溶媒とは、本発明のコーティング剤に用いられる溶媒における水分含量が30重量%未満である溶媒という。
【0063】
本発明においては、コーティング剤から溶媒を除去した後、水系溶媒を添加することにより、コーティング剤の製造の際に用いられた溶媒とは異なる水系溶媒が用いられた水系コーティング剤を製造することができる。また、溶媒を除去した後、有機系溶媒を添加することにより、コーティング剤の製造の際に用いられた溶媒とは異なる有機系溶媒が用いられた有機溶媒系コーティング剤を製造することもできる。
【0064】
有機溶媒系コーティング剤は、窒素含有有機塩基、チタン源、有機溶媒、及び必要によりヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物を混合することにより得ることもできる。この場合、有機溶媒は、あらかじめ窒素含有有機塩基、チタン源、ヒドロキシカルボン酸又はシラン化合物と混合しておいてもよく、あるいは窒素含有有機塩基、チタン源、及び必要によりヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物を混合した後に、混合してもよい。また、窒素含有有機塩基、チタン源、及び必要によりヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物を混合した後、水を除去し、改めて有機溶媒と混合する方法によっても、有機溶媒系コーティング剤を得ることができる。
【0065】
水分の除去方法としては、加熱により水分を蒸発させる方法、減圧により水分を蒸発させる方法、及び吸着剤により水分を脱水する方法等が挙げられる。加熱により水分を蒸発させる方法の場合、乾燥温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、希望する乾燥度により適宜設定すればよいが、通常1〜72時間が好ましく、5〜24時間がより好ましい。
【0066】
得られた粉末の水の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0067】
有機溶媒系コーティング剤におけるチタン濃度は、酸化チタン(TiO)換算で、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜15質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。
【0068】
有機溶媒系コーティング剤に用いられる有機溶媒の沸点は、コーティング膜の製造効率を高める観点から、好ましくは20〜300℃、より好ましくは30〜200℃、更に好ましくは30〜130℃である。
【0069】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール等のアルコール系有機溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン等の含酸素有機溶媒、アセトニトリル等の窒素含有有機溶媒、プロピレンカーボネート等が好ましい。
【0070】
本発明のコーティング剤は、チタン源の加水分解溶液と窒素含有有機塩基とが接触することによって得られるので、コーティング剤には、本発明におけるチタン含有化合物としてチタン酸シートの構造を有するものが含有されているものと考えられる。
【0071】
本明細書にいう「チタン酸シート」とは、(1)チタン原子を含有し、(2)ラマンスペクトルで波数が260〜305cm−1、440〜490cm−1及び650〜1000cm−1である領域にそれぞれシグナルを有する物質で、ナノオーダーサイズのシート状物質をいう。
【0072】
好ましいチタン酸シートの例として、二チタン酸、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、レピドクロサイト型等の構造を有するチタン酸が挙げられる。
【0073】
なお、従来の代表的な酸化チタンであるアナターゼ型チタニアでは、波数が140〜160cm−1、390〜410cm−1、510〜520cm−1及び630〜650cm−1である領域にラマンピークが観測され、ルチル型チタニアでは、波数が230〜250cm−1、440〜460cm−1及び600〜620cm−1である領域にラマンピークが観測される。
【0074】
従来の知見から、チタン酸シートは、チタンを中心として6個の酸素が配位した8面体構造を基本的なユニットとし、このユニットが平面状に並んだナノオーダーの広がりを有する構造と推定されている。
【0075】
本発明に用いられているチタン酸シートには、例えば、チタン酸との塩の形態で窒素含有有機塩基が含まれていると考えられる。
【0076】
なお、コーティング剤中に窒素含有有機塩基を含むチタン酸シートが形成されているとの推定は、以下の測定に基づく。
【0077】
(1)コーティング剤のラマンスペクトル測定は、アルゴンイオンレーザー(波長488nm)を光源とし、レーザー出力100〜600mW、積算時間30〜300秒で透過法にて測定され、CCDカメラを検出器とし、100〜1100cm−1の測定波数領域における5154点の測定データに基づきスペクトルが特定される。測定に供するコーティング剤は、酸化チタン換算濃度で5重量%となるように調整する。
【0078】
(2)コーティング剤を100℃の温度で12時間以上常圧にて乾燥させることによって得られた粉末について、以下の測定を行う。
【0079】
(3)チタンの定量分析は、蛍光X線〔理学電機(株)製、品番:ZSX100E〕によって行い、炭素、水素及び窒素の定量分析は、全自動元素分析計(パーキンエルマー社製、品番:2400II、カラム分離方式、TCD検出)によって行う。
【0080】
(4)ラマンスペクトルの測定で、波数が260〜305cm−1、440〜490cm−1及び650〜1000cm−1である領域にそれぞれシグナルを有し、チタン原子及びチタン酸シートの構造が導出された場合、コーティング剤は、含有機窒素塩基を含むチタン酸シートの構造が含有されていると推定することができる。
【0081】
なお、窒素含有有機塩基を含有するチタン酸シートの紫外線吸収スペクトルは、吸収スペクトルの立ち上がり波長(吸収端)が300〜340nmの領域内で見られる。これに対して、アナターゼ型チタニアでは、波長360〜380nmの領域内で吸収スペクトルの立ち上がり波長(吸収端)が見られ、ルチル型チタニアでは、波長400〜420nmの領域内で吸収スペクトルの吸収端が見られる。
【0082】
チタン酸シートは、かかる構造を有するので、水系溶媒又は有機溶媒中に良好に分散し、光学器材用コーティング剤としての取り扱い易さを確保することができるものと考えられる。
【0083】
また、窒素含有有機塩基を含むチタン酸シートは、アナターゼ型やルチル型のチタニアと比べて吸収端が短波長側にあり、紫外線(UV−A及びUV−B)の吸収量が少ないため光触媒活性が低いという利点があることから、アナターゼ型やルチル型のチタニアと比べて、光学器材用コーティング剤及びコーティング膜の安定性(耐光性)の観点から好ましいと考えられる。
【0084】
本発明のコーティング剤中の窒素原子とチタン原子のモル比(窒素原子/チタン原子)は、本発明のコーティング膜を容易に形成することができることから、好ましくは0.01〜10、より好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.2〜2である。このモル比は、チタン源及び窒素含有有機塩基の量を適宜調節することにより、容易に調整することができる。
【0085】
また、コーティング剤のpH(25℃)は、コーティング剤の汎用性を高め、またコーティング剤中のチタン酸シートの構造を安定化させることができると考えられることから、好ましくは3〜13、より好ましくは6〜12である。なお、コーティング剤のpHは、例えば、酸又は塩基を適宜添加することにより、容易に調整することができる。
【0086】
本発明のコーティング剤には、チタンアルコキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド等)、アナターゼ型チタニア、ルチル型チタニア等のチタン酸以外のチタン種が共存していてもよい。しかし、この場合、チタン酸以外のチタン種の濃度(TiO質量換算濃度)は、コーティング剤の保存安定性や膜物性の観点から、チタン濃度の好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より一層好ましくは0%となるように配合することである。コーティング剤中のチタンの種類は、チタン酸シートの場合と同様に、ラマンスペクトルにより同定することができる。
【0087】
本発明のコーティング剤には、屈折率を調整する目的で、金属酸化物を任意成分として含有していてもよい。金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化鉄、酸化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。
【0088】
本発明のコーティング剤には、所望により、レンズとの屈折率をあわせるために微粒子状金属酸化物を、反応を促進するために硬化剤を、また塗布時における濡れ性を向上させ、コーティング膜の平滑性を向上させるために各種有機溶媒や界面活性剤を含有させることもできる。更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等もコーティング膜の物性に悪影響を与えない範囲内で添加することもできる。
【0089】
微粒子状金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化鉄等の金属酸化物の微粒子が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0090】
硬化剤の例としては、アリルアミン、エチルアミン等のアミン類、またルイス酸やルイス塩基を含む各種酸や塩基、例えば、有機カルボン酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、過塩素酸、臭素酸、亜セレン酸、チオ硫酸、オルトケイ酸、チオシアン酸、亜硝酸、アルミン酸、炭酸等を有する金属塩、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムを有する金属アルコキシド又はこれらの金属キレート化合物等が挙げられる。また、透明皮膜を形成するのに好ましい硬化剤としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、セルロース類、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0091】
本発明のコーティング剤の硬化は、通常、熱風の使用又は活性エネルギー線の照射によって行うことができる。硬化は、好ましくは70〜200℃の熱風、より好ましくは90〜150℃の熱風を使用して行うことができる。活性エネルギー線としては、遠赤外線等が挙げられ、活性エネルギー線は、熱による損傷を低く抑えることができる。
【0092】
本発明のコーティング剤は、コーティング膜の形成が容易であり、適度な硬度を有し、コーティング膜の透明性に優れ、光触媒活性が低いという利点を有する。したがって、本発明のコーティング剤は、光学器材のコーティング膜に好適に使用することができる。
【0093】
より具体的には、本発明のコーティング剤は、例えば、眼鏡レンズ、カメラ用レンズ、自動車の窓ガラス、ワードプロセッサーやコンピュータ等のディスプレイに付設される光学フィルタ等に用いられるコーティング膜に好適に使用することでき、特にプラスチックレンズ用ハードコート膜に好適に使用することができる。なかでも、気圧1013hPaにおける沸点が300℃以下である窒素含有有機塩基が用いられた光学器材用コーティング膜は、高い硬度を有し、耐擦傷性及び基材に対する付着性に優れているのに加えて、光透過性が良好であり、光触媒活性が低いので、プラスチックメガネレンズ用のハードコー
ト膜に好適に使用することができる。
【0094】
本発明のコーティング膜は、本発明のコーティング剤を塗布することによって形成することができる。
【0095】
本発明のコーティング膜におけるチタンの含有量は、その用途、適用される基材の種類等に応じて適宜決定することが好ましい。チタンの含有量は、酸化チタン換算量で見積もることができる。コーティング膜におけるチタンの含有量は、酸化チタン換算量で、高硬度、高耐擦傷性及び強付着性を有するコーティング膜を形成する観点から、好ましくは2〜99重量%である。
【0096】
本発明のコーティング膜中では、チタン酸シートが、積層した構造(以下、「層状チタン酸」ともいう)を形成していると推定される。
【0097】
本明細書にいう「層状チタン酸」とは、(1)チタン原子を含有し、(2)ラマンスペクトルで波数が260〜305cm−1、440〜490cm−1及び650〜1000cm−1の領域にそれぞれシグナルを有する物質をいう。
【0098】
なお、本発明においてコーティング膜中の層状チタン酸の層間隔と考えられる構造は、窒素含有有機塩基の大きさが大きくなるにしたがって格子面間隔が増大することがX線回折によって確認されていることから、窒素含有有機塩基は、層状チタン酸の層間に存在している構造であると考えられる。
【0099】
なお、コーティング膜中に窒素含有有機塩基を含む層状チタン酸が形成されているとの推定は、以下の測定に基づく。
【0100】
(1)コーティング膜に用いられるコーティング剤のラマンスペクトルは、アルゴンイオンレーザー(波長488nm)を光源とし、レーザー出力100〜600mW、積算時間30〜300秒で透過法によって測定され、CCDカメラを検出器とし、100〜1100cm−1の測定波数領域における5154点の測定データに基づきスペクトルが特定される。測定に供するコーティング剤は、酸化チタン換算濃度で5重量%となるように調整する。
【0101】
(2)コーティング膜に用いられるコーティング剤を100℃の温度で12時間以上常圧にて乾燥させることによって得られた粉末について、以下の測定を行う。
【0102】
(3)チタンの定量分析は、蛍光X線〔理学電機(株)製、品番:ZSX100E〕によって行い、炭素、水素及び窒素の定量分析は、全自動元素分析計(パーキンエルマー社製、品番:2400II、カラム分離方式、TCD検出)によって行う。
【0103】
(4)ラマンスペクトルの測定で、波数が260〜305cm−1、440〜490cm−1及び650〜1000cm−1の領域にそれぞれシグナルを有すれば、層状チタン酸の構造が含有されていると推定される。
【0104】
本発明のコーティング膜は、JIS K−5400の鉛筆硬度法による鉛筆硬度で、F以上、好ましくは4H以上、より好ましくは6H以上、更に好ましくは8H以上の硬度を有することが望ましい。
【0105】
本発明のコーティング膜の膜厚は、膜の透明性を高める観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下、より一層好ましくは1μm以下であり、コーティング膜の硬度を高める観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは50nm以上、より一層好ましくは100nm以上である。なお、本発明のコーティング膜の膜厚は、電子顕微鏡により測定することができる。
【0106】
本発明のコーティング膜は、本発明のコーティング剤として、水系コーティング剤又は有機溶媒系コーティング剤を用いて形成させてもよい。
【0107】
本発明のコーティング膜を形成させるにあたっては、清浄化、接着性の向上、耐水性の向上等を目的として、基材にあらかじめ前処理を施すことができる。
【0108】
好適な前処理としては、例えば、活性化ガス処理、アルカリ、各種有機溶媒による化学的処理、プラズマ、紫外線等による物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理、サンドブラスト処理、更には各種樹脂を用いたプライマー処理を施すことによって、基材と硬化膜との密着性等を向上させることができる。
【0109】
本発明のコーティング剤を基板に塗布する方法については特に制限はない。その塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の常法が挙げられる。これらの方法のなかでは、コーティング膜の形成効率及び形成されたコーティング膜の均一性の観点から、スピンコート法及びディップコート法が好ましい。
【0110】
コーティング剤を基材に塗布した後には、その基材を熱処理することが好ましい。熱処理温度は、残留有機物を効率よく除去し、コーティング膜の硬度を高める観点から、窒素含有有機塩基や溶媒の沸点以上の温度であることが好ましい。また、窒素含有有機塩基が熱分解すると、炭素質の残渣を生成する場合があり、その残渣が着色や透明度低下の原因となるため、熱処理温度は、窒素含有有機塩基の分解温度以下の温度であることが好ましい。熱処理温度は、本発明におけるチタン含有化合物の構造安定性、チタニアへの相転移抑制の観点から、好ましくは450℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは250〜80℃である。
【0111】
熱処理時間は、熱処理温度によって異なるので一概には決定することができないが、残留有機物を効率よく除去し、膜硬度を高める観点から、好ましくは15分間以上、より好ましくは20分間以上、更に好ましくは30分間以上である。また、効率よくコーティング膜を形成する観点から、熱処理時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
【0112】
コーティング膜の硬度は、窒素含有有機塩基における窒素原子と層状チタン酸におけるチタン原子のモル比(窒素原子/チタン原子)が小さくなるほど、高くなる傾向がある。また、硬化温度が高く、硬化時間が長くなると、コーティング膜に含まれている窒素含有塩基が蒸発し、コーティング膜中の窒素原子とチタン原子のモル比(窒素原子/チタン原子)が低下し、好適な構造となる傾向がある。このモル比(窒素原子/チタン原子)は、高硬度を有するコーティング膜を形成する観点から、0.01〜0.3、好ましくは0.01〜0.25、より好ましくは0.05〜0.24である。
【0113】
本発明の光学器材は、本発明の光学器材用コーティング膜を有するものであり、例えば、本発明の光学器材用コーティング剤を塗布することによって光学器材にコーティング膜を形成させることができる。
【0114】
本発明のコーティング膜を含有する好適な光学器材として、膜作製の容易性、硬度発現性、膜の透明性及び低光触媒活性の観点から、眼鏡レンズ、カメラ用レンズ、自動車の窓ガラス、ワードプロセッサーのディスプレイに付設する光学フィルタ等を挙げることができる。
【実施例】
【0115】
実施例1(コーティング剤の製造)
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシド28.42g(100mmol)を溶解させてチタンアルコキシド溶液を得た。この溶液を蒸留水152.69gに室温下、撹拌しながら徐々に滴下した。滴下とともにチタンテトライソプロポキシドは加水分解して白濁する。その後、さらにジエチルアミン7.31g(100mmol)を撹拌しながら添加した。その後、撹拌し続けると、やがて無色透明溶液となった。
【0116】
このときのチタンのTiO換算濃度は、約5質量%であり、ジエチルアミンの窒素原子とチタンアルコキシドのチタン原子のモル比(窒素原子/チタン原子)は1であった。
【0117】
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。その結果、d値11.07(角度2θで7.98degree)付近に主ピーク(第1ピーク)が認められ、第2ピークがd値5.73(角度2θで15.46degree)付近に認められることから、生成した層状チタン酸は、層間に有機カチオンが挟まれた層構造を有することが推認された。
【0118】
実施例2(コーティング剤の製造)
イソプロピルアルコール10mLにチタンテトライソプロポキシド28.42g(100mmol)を溶解させてチタンアルコキシド溶液を得た。
【0119】
ジエチルアミン7.31g(100mmol)に蒸留水を加えてジエチルアミン水溶液160gを調製した。このジエチルアミン水溶液に、先のチタンアルコキシド溶液を室温下、攪拌しながら徐々に滴下した。滴下とともにチタンテトライソプロポキシドは加水分解して白濁するが、攪拌を続けると、やがて無色透明溶液となった。このときのチタンのTiO換算濃度は、約5質量%であり、ジエチルアミンの窒素原子とチタンアルコキシドのチタン原子のモル比(窒素原子/チタン原子)は1であった。
【0120】
得られた無色透明溶液をガラス板上に数滴滴下し、乾燥させた膜を用いてX線回折分析を行った。その結果を図1に示す。図1に示されるX線回折図によれば、d値9.87(角度2θで8.95degree)付近に主ピーク(第1ピーク)が認められ、第2ピークがd値5.11(角度2θで17.32degree)付近に認められることから、生成した層状チタン酸は、層間に有機カチオンが挟まれた層構造を有することが推認された。
【0121】
また、無色透明溶液をラマン分光分析した結果、層状チタン酸としてレピドクロサイト型に特有のピークが波数278cm−1、442cm−1及び702cm−1付近に認められた。
【0122】
なお、ラマンスペクトルにおいて、前記3つの波数領域での吸収は、通常の酸化チタンはこのような3つの吸収を有しないことから、層状チタン酸に固有のものである。このことから、チタンを含有し、ラマンスペクトルにおける吸収が前記3つの波数領域にあるものは、層状チタン酸の骨格構造を有していると推定することができる。層間隔については、X線回折において、規則的なピークにより推認することができる。
【0123】
実施例3(コーティング膜の製造)
表面の汚れを水及び2−プロパノールで充分に洗浄したマイクロスライドガラス〔松浪硝子(株)製、縦76mm、横52mm、厚さ1.3mm〕をディップコーターに装着した。このスライドガラスの全面を各種コーティング液に40cm/minで浸漬した後、10秒間静置し、40cm/minの速度で引き上げたものを、表1に示す硬化温度および硬化時間で乾燥させた後、鉛筆硬度、耐擦傷性及び密着性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に記載する。
【0124】
(1)鉛筆硬度
JIS K−5400に従い、傷がつかないときの最高の鉛筆硬度を示した。
【0125】
(2)耐擦傷性
#0000のスチールウールに1kgの荷重をかけ、1秒間あたり1往復させる操作を5回又は50回表面を繰り返し擦り、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
A:50回で膜が消失している面積が半分未満
B:50回で膜が消失している面積が半分以上
C:5回で膜が消失している面積が半分未満
D:5回で膜が消失している面積が半分以上だが、完全には消失していない
E:5回で膜が完全に消失
【0126】
(3)密着性(クロスカット法/碁盤目試験)
本発明のコーティング膜の基板に対する密着性は、JIS K−5400のクロスカットテープ法等によって求めることができる。本発明のコーティング膜の基板に対する密着性は、クロスカットテープ法による評価で、100個の碁盤目の中で、剥離せずに残った碁盤目の数が、好ましくは95〜100、より好ましくは98〜100、更に好ましくは100である。具体的には、以下のようにする。
【0127】
塗布面に1mmの基材に達する碁盤目を塗膜の上から新品のカッターナイフで100個作り、セロハン粘着テープ〔(株)ニチバン製〕を強く貼り付けた後、急速に剥がし、残った碁盤目の数で評価した。今回の試験では、塗膜に剥離が起こらなかったので、良好と評価した。なお、各実験例及び各比較実験例において、同一の硬化温度で実験を行い、硬化時間が2時間のときに密着性が良好である場合、それ以上の硬化時間で硬化させても密着性が良好となると判断される。
【0128】
なお、表1に示す実験例1〜4及び実験例5〜19では、それぞれ実施例1及び2で得られたコーティング剤を使用し、比較実験例1〜15では、市販の酸化チタンゾル〔多木化学(株)製、品番:M6〕を使用した。
【0129】
【表1】

【0130】
表1に示された結果から、各実験例で得られた光学器材用コーティング剤は、いずれも、従来のような高温処理を必要とせずに高硬度、高耐擦傷性及び強密着性を有するコーティング膜を形成することがわかる。
【0131】
実験例1〜19及び比較実験例1〜15は、ガラス基板に対してコーティングした場合であるが、基材が異なるとコーティング膜の物性も異なることから、プラスチックレンズに対してコーティングしたときの物性を調べた。
【0132】
実施例4
実施例2で得られたコーティング剤を下記の方法でプラスチックレンズに塗布し、上記と同様にして、鉛筆硬度、耐擦傷性及び密着性を評価した。
【0133】
〔コーティング剤のプラスチックレンズへの塗布〕
(1)プラスチックレンズの洗浄
プラスチックレンズ〔日本ラボラトリー(株)製、屈折率1.67、チオウレタン系樹脂〕を10%水酸化ナトリウム水溶液に10分間浸漬することによって洗浄した後、イオン交換水で十分にすすぎ、さらにイソプロピルアルコールで洗浄した後、40℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した。
【0134】
(2)コーティング膜の製造
洗浄したプラスチックレンズをディップコーターに装着し、25℃に温調しておいた実施例2で得られたコーティング剤中に20秒間浸漬したのち、60mm/minで、プラスチックレンズを引き上げ、室温で30分間乾燥させた後、乾燥機に移し、95℃で20分間、さらに110℃で4時間硬化反応を行い、プラスチックレンズ表面に厚さ約0.9μmのコーティング膜を形成させた。
【0135】
実施例5
(1)コーティング剤の調製
ジエチルアミン0.1モル(7.314g)を蒸留水160gに溶解したアミン水溶液を攪拌し、これに2−プロパノール10mLにチタンテトライソプロポキサイド〔Ti(OiPr)〕0.1モル(28.422g)を溶解させた溶液をチタン源として滴下した。滴下に伴って溶液が白濁したが、攪拌を続行すると透明溶液1が得られた。
【0136】
この透明溶液1に、クエン酸0.033モル(6.404g)を蒸留水30gに溶解させたクエン酸水溶液を滴下し、滴下終了後のpHが約7である透明溶液2を得た。
【0137】
この透明溶液をフッ素樹脂製バットに入れ、100℃の乾燥機にて8時間乾燥し、淡黄色の乾燥粉末3を得た。15.66gの乾燥粉末3をメタノール16.21gに添加し、室温下で2時間混合撹拌することにより、淡黄色透明のメタノール分散液を得た。
【0138】
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15.66gをメタノール7.87gに溶解させた溶液に、0.01規定の塩酸水溶液5.51gを約10分で滴下し、その後一昼夜攪拌した。この加水分解物に、前記メタノール分散液31.87g、2−エトキシエタノール5.51g、アルミニウムアセチルアセトン0.24g及びシルウェットL−7001〔東レ・ダウコーニング(株)製〕0.02gを順次添加し、再び一昼夜攪拌した後、粘度調整剤としてメタノール33.33gを加えてコーティング剤を調製した。
【0139】
(2)コーティング膜の製造
洗浄したプラスチックレンズをディップコーターに装着し、25℃に温調しておいた前記コーティング剤中に20秒間浸漬した後、60mm/minでプラスチックレンズを引き上げ、室温で30分間乾燥させた後、乾燥機に移し、95℃で20分間、110℃で4時間硬化反応を行い、プラスチックレンズの表面に厚さ約1.5μmのコーティング膜を形成させた。
【0140】
比較例1
実施例4において、実施例2で得たコーティング剤の酸化チタンに市販の酸化チタンゾル〔多木化学(株)製、品番:M6〕を使用した以外は、実施例4と同様にしてプラスチックレンズにコーティングを行い、前記と同様にして鉛筆硬度、耐擦傷性及び密着性を調べた。
【0141】
(3)プラスチックレンズに対するコーティング膜の密着性
前記「(3)密着性」と同様の方法により、密着性を評価した。ただし、評価結果は、100個の碁盤目の中で剥離せずに残った碁盤目の数を(剥離せずに残った碁盤目の数)/100で表記した。
【0142】
以上の結果を表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
以上の結果から、実施例5で得られたコーティング剤は、シランカップリング剤が配合されているので、プラスチック材料に対して膜物性(鉛筆硬度、耐擦傷性、密着性)を向上させることができることがわかる。
【0145】
〔生成物の構造分析〕
実施例5で得られた透明溶液1をガラス基板上に滴下し、乾燥させた薄膜をX線回折法により分析し、この溶液そのものをラマン分光測定法により分析した。その結果、X線回折においては、2θ=8.54°(d=1.035nm)、16.62°(d=0.533nm)付近にピークを有する(図2参照)。このことから、この薄膜は、層間距離が約1nmである層状構造物と推定される。また、この薄膜は、前記ラマン分光法により、レピドクロサイト型チタン酸シートであると考えられる。
【0146】
透明溶液2の数滴をガラス基板上に滴下し、乾燥後、前記X線回折測定装置により生成物を確認したところ、層間距離1.9nmのチタン酸シートが生成していたと推定される(図3参照)。また、前記ラマン分光法により測定した結果、チタン酸シートはレピドクロサイト型チタン酸シートが生成していると考えられる。
【0147】
乾燥粉末3を前記ラマン分光法により測定した結果、レピドクロサイト型チタン酸シートが生成していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明のコーティング剤は、眼鏡用レンズ、カメラ用レンズ、CRT用フィルタ、光記録用基体等に好適に使用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】実施例1で得られた無色透明溶液を乾燥させた膜のX線回折図である。
【図2】実施例4で得られた透明溶液1を乾燥させた膜のX線回折図である。
【図3】実施例4で得られた透明溶液2を乾燥させた膜のX線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水とを共存させて得られる光学器材用コーティング剤。
【請求項2】
チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源の加水分解溶液と、窒素含有有機塩基とを混合して得られる光学器材用コーティング剤。
【請求項3】
更に、ヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物を混合して得られる請求項1又は2記載の光学器材用コーティング剤。
【請求項4】
窒素含有有機塩基の存在下で、チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源を加水分解させることによって得られる光学器材用コーティング剤。
【請求項5】
加水分解後に、更に、ヒドロキシカルボン酸及び/又はシラン化合物を加えることによって得られる請求項4記載の光学器材用コーティング剤。
【請求項6】
ヒドロキシカルボン酸が、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、グリセリン酸及び酒石酸からなる群より選ばれた1種以上である請求項5記載の光学器材用コーティング剤。
【請求項7】
窒素含有有機塩基の1013hPaにおける沸点が300℃以下である請求項1〜6いずれか記載の光学器材用コーティング剤。
【請求項8】
窒素含有有機塩基が、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム水酸化物からなる群より選ばれた1種以上である請求項1〜6いずれか記載の光学器材用コーティング剤。
【請求項9】
チタンアルコキシド及びチタン塩からなる群より選ばれた1種以上のチタン源と、窒素含有有機塩基と水との共存下でチタン含有化合物を生成させる光学器材用コーティング剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布して形成される光学器材用コーティング膜。
【請求項11】
請求項10記載の光学器材用コーティング膜を有する光学器材。
【請求項12】
請求項1〜6いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布する工程を有する光学器材用コーティング膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6いずれか記載の光学器材用コーティング剤を塗布する工程を有する、光学器材用コーティング膜を有する光学器材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−199656(P2007−199656A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170331(P2006−170331)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】