説明

光学式エンコーダの原点検出方法

【課題】簡単な構成で、光学式エンコーダの原点信号検出を行うこと。
【解決手段】光源1と、配列方向に相対移動が可能なインクリメンタル信号生成用パターン5を有するメインスケール4と、光源1で照明されたメインスケール4を透過、または、反射した光束を受光し、インデックススケールを兼ねる複数のフォトダイオードから成る第1のフォトダイオードアレイと、複数の第1のフォトダイオードアレイから構成される第2のフォトダイオードアレイを有するインクリメンタル信号検出部2と、第2のフォトダイオードアレイからの出力信号を処理するインクリメンタル信号処理部3を有し、メインスケール4が、複数のインクリメンタル信号生成用パターン5と同一ピッチの原点信号生成用パターン9を有し、複数の第1のフォトダイオードアレイから構成される原点信号検出部10からの出力信号を処理する原点信号処理部11を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダの原点検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学式エンコーダでは、変位測定の初期位置である原点検出が行われており、例えば、特許文献1では、原点位置を検出するエンコーダの原点検出装置に関する技術が公開されている。図15に、従来の光学式エンコーダの原点信号検出方法を示した。従来方式では、図15に示したように、原点信号検出用パターンとしてインクリメンタル信号検出用パターンとは異なるランダムパターンを用意し、さらに、このランダムパターンに対応するフォトダイオードアレイを原点信号検出部として用意する。以上のような構成において、ランダムパターンによって生じる明暗のパターンが、フォトダイオードアレイにずれることなく重なるときに、原点信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-318371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の光学式エンコーダの原点検出方法は、原点検出のために、インクリメンタル信号検出用パターンとは異なるランダムパターンを用意し、検出用のフォトダイオードアレイも、上記ランダムパターンに合せて特別なフォトダイオードアレイを用意しなければならず、構成が複雑になり、コストアップの原因になっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、光学式エンコーダの原点信号検出を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による、光学式エンコーダの原点信号検出方法は、光源と、等間隔の光学格子から構成され、光学格子の配列方向に相対移動が可能なインクリメンタル信号生成用パターンを有するメインスケールと、前記光源で照明された前記メインスケールを透過、または、反射した光束を受光し、インデックススケールを兼ねる複数のフォトダイオードから成る第1のフォトダイオードアレイを1組として、複数組の前記第1のフォトダイオードアレイから構成される第2のフォトダイオードアレイを有するインクリメンタル信号検出部と、前記第2のフォトダイオードアレイからの出力信号を処理するインクリメンタル信号処理部を有する光学式エンコーダにおいて、前記メインスケールが、複数の前記インクリメンタル信号生成用パターンと同一ピッチの光学格子により構成される原点信号生成用パターンを有し、複数組の前記第1のフォトダイオードアレイから構成される原点信号検出部と、前記原点信号検出部からの出力信号を処理する原点信号処理部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明による、光学式エンコーダの原点信号検出方法は、光源から照射された光が、メインスケール上の等間隔の光学格子から構成されるインクリメンタル信号生成用パターンを透過、または、反射し、第2のフォトダイオードアレイで受光されることで、インクリメンタル信号を生成するのと同時に、メインスケール上のインクリメンタル信号生成用パターンと同一ピッチである原点信号生成用パターンを透過、または、反射し、第2のフォトダイオードアレイと同様な構成の原点信号検出部において受光され、原点信号処理部から、原点信号が出力される。従って、簡単な構成で、インクリメンタル信号と原点信号の検出が可能な、光学式エンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る光学式エンコーダのインクリメンタル信号検出構成を示した図である。
【図2】同実施例のインクリメンタル信号検出部を示した図である。
【図3】同実施例のメインスケール上のインクリメンタル信号検出用パターンを示した図である。
【図4】同実施例のインクリメンタル信号検出用パターにより、インクリメンタル信号検出部上に照射された光束と、インクリメンタル信号検出部の重なりを示した図である。
【図5】同実施例のインクリメンタル検出部によって出力されたA、B、A-、B-相信号の波形を示した図である。
【図6】同実施例のメインスケール上の原点信号検出用パターンを示した図である。
【図7】同実施例の構成を示した図である。
【図8】同実施例の原点信号検出部を示した図である。
【図9】同実施例の原点信号検出部によって出力された原点信号の波形を示した図である。
【図10】本発明の実施例2に係る原点信号検出部を示した図である。
【図11】同実施例の原点信号検出部によって出力された原点信号の波形を示した図である。
【図12】本発明の実施例3に係る光学式エンコーダの構成を示した図である。
【図13】本発明の実施例4に係る原点信号検出用パターンを示した図である。
【図14】本発明の実施例4に係る原点信号波形を示した図である。
【図15】従来例の光学式エンコーダの原点信号検出方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施例1に係る光学式エンコーダのインクリメンタル信号検出構成を示した図である。LEDチップから成る光源1から射出した発散光束は、メインスケール4上のインクリメンタル信号生成パターン5で反射し、インクリメンタル信号検出部2に入射する。図2は、インクリメンタル信号検出部2を示した図である。本実施例では、第1のフォトダイオードアレイ7aが4本のフォトダイオード6から構成され、インクリメンタル信号が、A、B、A-、B-相の4相の信号として出力される。第1のフォトダイオードアレイ7aの配列が第2のフォトダイオードアレイ7bである。
【0011】
図3は、メインスケール4と、メインスケール4上のインクリメンタル信号生成パターン5を示した図である。反射/非反射のピッチをPとすると、図1に示した構成では、光源1から射出した発散光束は、図4に示したように、2Pのピッチの明暗パターン8として第2のフォトダイオードアレイ7bに入射する。図2に示したように、第1のフォトダイオードアレイ7aのピッチを2Pとすれば、メインスケールの相対移動に対する出力信号が得られ、第1のフォトダイオードアレイ7aの各A、B、A-、B-相のフォトダイオード6からの受光電流はまとめられて、A、B、A-、B-相として出力される。このとき得られる信号波形を図5(a)に示した。また、A相とA-相、B相とB-相の差動を取った波形が図5(b)である。
【0012】
図6は、原点信号検出用パターン9を示した図である。図6に示したように、原点信号検出用パターン9は、インクリメンタル信号検出パターン5と同一のピッチPを持つ。図7は実施例1の構成を示した図である。図7に示した構成では、光源1から射出した発散光束は、メインスケール4上のインクリメンタル信号検出用パターン5に入射すると同時に、原点信号検出用パターン9に入射する。原点信号検出用パターン9に入射した光束による反射光は、原点信号検出部10に入射する。インクリメンタル信号検出部2の第2のフォトダイオードアレイ7bがN組の第1のフォトダイオードアレイ7aによって構成されている場合、原点検出用パターン9は、N組の反射/非反射パターンで構成され、原点信号検出部10は、N組の第1のフォトダイオードアレイ7aで構成されることが望ましい。
【0013】
以下に、N=2の場合の例を示す。原点信号検出部10が、N=2組の第1のフォトダイオードアレイ7aで構成され、第1のフォトダイオード7aのうち、インクリメンタル信号検出において、A相出力を行うフォトダイオード6のみを、原点信号として出力すると、原点信号検出パターン9の反射/非反射パターンがM組から成る場合の出力信号は、Mの値に従って、図9のような波形を示す。図9より、インクリメンタル信号と同等の分解能を得るためには、M=Nを満たすような、原点信号検出用パターンが望ましいことがわかる。この関係は、Nが任意の自然数をとる場合に当てはまる。
【0014】
〔第2実施形態〕
つぎに、図10に基づいて本発明の第2実施形態の光学式エンコーダの原点信号検出方法について説明する。図10は本発明の第2実施形態の原点信号検出部10を示した図である。本実施形態の原点信号検出部10は、第1のフォトダイオード7aのうち、インクリメンタル信号検出において、A相とB相を出力し、図11に示したような、原点信号ZAとZBを出力する。この2つの信号が交わる中心位置を原点として出力すれば、メインスケールの移動方向によらず、同一の地点を原点とすることができる。
【0015】
〔第3実施形態〕
つぎに、図12に基づいて本発明の一実施形態の光学式エンコーダの原点信号検出方法の構成を示した。図12に示したように、同一の構成の光源1と検出部をもつ組を、インクリメンタル信号検出部2と原点信号検出部10に用いることもできる。
【0016】
〔第4実施形態〕
つぎに、図13に基づいて本発明の一実施形態の光学式エンコーダの原点信号検出方法の構成を示した。図13に示したように、原点信号検出用パターン9が、インクリメンタル信号検出パターン5と同一のピッチPを持つ原点信号検出用パターン12と、インクリメンタル信号生成用パターン5とピッチの異なる(ここでは、P/2)原点信号生成用パターン13から構成されるとき、原点信号生成用パターン12と原点信号生成用パターン13の大きさを適切に設定することで、図14に示したような、波形が得られる。得られた波形は、原点信号検出用パターン9が原点信号検出用パターン12のみによって構成される場合よりも、耐ノイズ性に優れた波形となる。また、インクリメンタル信号生成用パターン5とピッチの異なる原点信号生成用パターン13の構成は、ここで示した、インクリメンタル信号生成用パターン5の半分のピッチに限らず、複数の異なるピッチのパターンとの組合せでもよいし、複数のインクリメンタル信号生成用パターンとは異なるピッチのパターンの組合せでもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 光源
2 インクリメンタル信号検出部
3 インクリメンタル信号処理部
4 メインスケール
5 インクリメンタル信号生成用パターン
6 フォトダイオード
7a 第1のフォトダイオードアレイ
7b 第2のフォトダイオードアレイ
8 フォトダイオードアレイ上の光束
9 原点信号生成用パターン
10 原点信号検出部
11 原点信号処理部
12 インクリメンタル信号生成用パターンと同一ピッチの原点信号生成用パターン
13 インクリメンタル信号生成用パターンとピッチの異なる原点信号生成用パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
等間隔の光学格子から構成され、光学格子の配列方向に相対移動が可能なインクリメンタル信号生成用パターンを有するメインスケールと、
前記光源で照明された前記メインスケールを透過、または、反射した光束を受光し、インデックススケールを兼ねる複数のフォトダイオードから成る第1のフォトダイオードアレイを1組として、複数組の前記第1のフォトダイオードアレイから構成される第2のフォトダイオードアレイを有するインクリメンタル信号検出部と、
前記第2のフォトダイオードアレイからの出力信号を処理するインクリメンタル信号処理部を有する光学式エンコーダにおいて、
前記メインスケールが、複数の前記インクリメンタル信号生成用パターンと同一ピッチの光学格子により構成される原点信号生成用パターンを有し、
複数組の前記第1のフォトダイオードアレイから構成される原点信号検出部と、
前記原点信号検出部からの出力信号を処理する原点信号処理部を有することを特徴とする光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項2】
前記原点信号検出部を構成する前記第1のフォトダイオードアレイの組数と、
前記原点信号生成用パターンを構成する、透過/不透過、または、反射/非反射のパターンの組数が等しいことを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項3】
前記第2のフォトダイオードアレイと、前記原点信号検出部が、同数の前記第1のフォトダイオードアレイから構成されることを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項4】
前記インクリメンタル信号処理部と、前記原点信号処理部が、前記第1のフォトダイオードアレイを構成するそれぞれのフォトダイオードのうち、位相の等しいフォトダイオードの出力の和をそれぞれ出力することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項5】
前記インクリメンタル信号処理部と、前記原点信号処理部が、差動回路を有することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項6】
前記原点信号検出部から出力される請求項4に記載の出力信号において、位相の異なる出力信号のうち、2組の信号の出力値が等しくなり、所定のしきい値より大きくなる地点を原点として出力することを特徴とする請求項1に記載の光学式エンコーダの原点信号検出方法。
【請求項7】
前記原点信号生成用パターンを構成する、透過/不透過、または、反射/非反射のパターンが、前記インクリメンタル信号生成用のパターンと同一なピッチと、複数の前記インクリメンタル信号生成用のパターンとは異なるピッチのパターン、または、複数の前記インクリメンタル信号生成用のパターンとは異なるピッチのパターンによって構成されることを特徴とする光学式エンコーダの原点信号検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−36945(P2013−36945A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175495(P2011−175495)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】