説明

光学式皮下脂肪厚測定装置

【課題】1つの入力部の操作であっても生体の異なる部位の皮下脂肪厚を測定することができ、操作が簡単であるとともに、装置を小型化し、かつ低コスト化することができる光学式皮下脂肪厚測定装置を提供する。
【解決手段】光学式皮下脂肪厚測定装置10は、発光素子13と、第1受光素子14及び第2受光素子15とを備える。また、光学式皮下脂肪厚測定装置10は、第1及び第2受光素子14,15から得られる受光量比と生体20の各部位における皮下脂肪厚の値とを相関するものであり生体20の各部位で共用する非線形関数が格納されたデータベース部17を備える。光学式皮下脂肪厚測定装置10は、受光量比に基づいて非線形関数を参照し、皮下脂肪厚の値を推定する制御部16と、皮下脂肪厚の測定開始を制御部16に指示するための1つの入力ボタン10bと、制御部16によって推定された皮下脂肪厚の値を被験者に報知する表示部10aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下脂肪厚を光学式に測定することができる光学式皮下脂肪厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光照射部から生体表面に向けて光を照射し、生体内部を伝播した光を受光部で受光することで生体内部の皮下脂肪厚を測定する光学式皮下脂肪厚測定装置が提案されている。このような光学式皮下脂肪厚測定装置において、特許文献1に開示の皮下脂肪測定装置は、皮膚の色の相違等の影響を受けることなく高精度に皮下脂肪厚の測定を可能にしている。特許文献1の皮下脂肪測定装置は、少なくとも1個の送光素子と複数個の受光素子と脂肪厚推定手段とを備えている。
【0003】
そして、皮下脂肪を透過して受光素子で受光した受光量を、受光量と皮下脂肪厚とのキャリブレーションカーブに適用して脂肪厚推定手段が脂肪厚を推定する。また、脂肪厚推定手段は、送光素子の直近の受光素子の受光量を用いて皮膚色素等による各受光素子の受光量を補正することで、高精度に皮下脂肪厚を測定することができるようになっている。
【0004】
特許文献2の光式皮下脂肪厚測定装置は、生体に向けて光を照射する光源部と、生体内部を伝播して生体表面より出射した光を受光する受光部と、生体表面を所定の形状に成形する成形部と、成形部が生体表面に加える圧力が規定値に達したことを検出する圧力検出部と、受光部での受光量に基づき皮下脂肪厚を算出する演算部とを備えている。演算部には、生体に加わる複数の圧力に応じて受光量と皮下脂肪の厚みとの相関を示す一次回帰直線が予め複数記憶されている。そして、演算部は、生体に加わる圧力に応じた一次回帰直線を複数の中から選択して皮下脂肪厚の測定を行うことで、高精度に皮下脂肪厚を測定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−155091号公報
【特許文献2】特開2003−310575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の光学式皮下脂肪厚測定装置としては、皮下脂肪厚が異なる部位(例えば、二の腕、太もも、腹部)それぞれに対応して、受光量と皮下脂肪の厚さとの相関を示す一次回帰直線が設定されているものがある。このような光学式皮下脂肪厚測定装置においては、被験者は予め選択ボタンを操作して、その選択された部位の測定を行っている。このため、従来の光学式皮下脂肪厚測定装置においては、各部位毎の選択ボタンを操作しなければならず、操作が煩雑であるという問題があった。さらには、従来の光学式皮下脂肪厚測定装置においては、部位選択用の選択ボタンを装置に設けなければならず、装置の小型化、低コスト化が実現できなかった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、1つの入力部の操作であっても生体の異なる部位の皮下脂肪厚を測定することができ、操作が簡単であるとともに、装置を小型化し、かつ低コスト化することができる光学式皮下脂肪厚測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、生体の表面に向けて光を照射する光照射部と、前記生体の内部を伝播した光を受光する受光部と、前記受光部での受光量に基づいて得られる受光パラメータ値と前記生体の各部位における皮下脂肪厚の値とを相関するものであり前記生体の各部位で共用する関数が格納されたデータベース部と、前記受光パラメータ値に基づいて前記データベース部の前記関数を参照し、前記皮下脂肪厚の値を推定する制御部と、前記皮下脂肪厚の測定開始を前記制御部に指示するための1つの入力部と、前記制御部によって推定された皮下脂肪厚の値を被験者に報知する報知部と、を備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、1つの入力部を操作すると、光学式皮下脂肪厚測定装置では皮下脂肪厚の測定を開始させる。そして、制御部は、得られた受光パラメータ値に基づいて生体の各部位で共用する関数を用いて皮下脂肪厚を推定する。よって、皮下脂肪厚の厚みが異なる部位であっても、各部位で共用する関数を用いることで、各部位それぞれの皮下脂肪厚を測定することができる。したがって、測定する部位毎に選択ボタンを操作する必要がある場合と異なり操作が簡単である。また、皮下脂肪厚を測定する際に操作する入力部は1つだけであるため、測定する部位毎に選択ボタンを必要とする場合と比べて光学式皮下脂肪厚測定装置を小型化し、かつ低コスト化することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置において、前記関数は、前記受光パラメータ値が大きくなるほど傾きが大きくなる非線形関数であることを要旨とする。これによれば、非線形関数において、受光パラメータ値が大きくなるとは、皮下脂肪厚が厚くなることを示すため、非線形関数を用いることで、厚みの薄い皮下脂肪厚から厚みの厚い皮下脂肪厚まで正確に測定することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置において、前記受光パラメータ値が、前記光照射部から第1距離だけ離れた位置に設けられた第1受光部での第1受光量と、前記第1距離より長い第2距離だけ前記光照射部から離れた位置に設けられた第2受光部での第2受光量との相対比であることを要旨とする。
【0012】
これによれば、皮膚色素や吸光・散乱特性の違いによる影響を補正した受光パラメータ値を用いて皮下脂肪厚を算出することができ、高精度に皮下脂肪厚を測定することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置において、前記データベース部には、前記受光パラメータ値により係数が異なる複数の関数が格納され、前記制御部は前記受光パラメータ値に基づき複数の関数の中から一つを選択して前記皮下脂肪厚を推定することを要旨とする。
【0014】
これによれば、生体の各部位それぞれの皮下脂肪厚を測定することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置において、前記光照射部を生体の表面に押し当てたとき、該生体の表面に加わる圧力を検出する圧力検出部をさらに備え、前記制御部は、前記圧力検出部により所定値以上の圧力が検出されたことを契機に前記光照射部に光を照射させることを要旨とする。
【0015】
これによれば、生体の表面に所定値以上の圧力が加わることは、光照射部が生体の表面に確実に押し当てられた状態であり、この状態とは、光照射部の発光面と生体の表面との間に外光が侵入することが防止される状態である。そして、圧力検出部によって所定値以上の圧力が検出されたことを契機に光照射部に光を照射させることで、外光の影響を受けることなく皮下脂肪厚の測定を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの入力部の操作であっても生体の異なる部位の皮下脂肪厚を測定することができ、操作が簡単であるとともに、装置を小型化し、かつ低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態の光学式皮下脂肪厚測定装置を示す模式図。
【図2】光学式皮下脂肪厚測定装置の本体基板及び測定板を示す下面図。
【図3】光学式皮下脂肪厚測定装置の表面における表示部及び入力ボタンを示す図。
【図4】(a)は受光量と皮下脂肪厚との相関及び一次回帰直線を示すグラフ、(b)は受光量と皮下脂肪厚との相関及び指数関数を示すグラフ。
【図5】(a)は受光量比と皮下脂肪厚との相関及び一次回帰直線を示すグラフ、(b)は受光量比と皮下脂肪厚との相関及び指数関数を示すグラフ。
【図6】データベース部に格納した非線形関数及び受光量比と皮下脂肪厚との相関を示すグラフ。
【図7】太もも、二の腕、及び腹部の皮下脂肪厚と受光量比との相関及び一次回帰直線を示すグラフ。
【図8】第2の実施形態の光学式皮下脂肪厚測定装置を示す模式図。
【図9】2つの一次回帰直線よりなる非線形関数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、光学式皮下脂肪厚測定装置10は、矩形板状の本体基板11を備えるとともに、この本体基板11の下面中央部には円板状をなす測定板12が設けられている。この測定板12は直径120mm程度の黒色ABSによって形成され、皮下脂肪厚の測定時には、測定板12の下面が生体20の表面に押し当てられる。なお、生体20は、表面に皮膚20a、皮膚20aの下の皮下脂肪20b、及び皮下脂肪20bの下の筋肉20cの3層からなる。
【0019】
測定板12には光照射部としての発光素子13が設けられている。この発光素子13は、中心波長750ナノメートル(nm)のLEDよりなる。なお、発光素子13から照射される光の中心波長は500〜2500ナノメートル(nm)の近赤外領域であることが望ましく、また、発光素子13にレーザダイオードを用いてもよい。そして、発光素子13は、発光面が測定板12の下面に露出するとともに、測定板12の下面から生体20の皮膚20aに向けて光を照射可能になっている。
【0020】
図2に示すように、測定板12には、発光素子13から第1距離k1だけ離れた位置に、第1受光部としての第1受光素子14が設けられている。第1受光素子14はフォトダイオードよりなる。第1受光素子14は、受光面が測定板12の下面に露出するように測定板12に設けられ、発光素子13から照射され、さらに生体20を透過した光を受光するとともにその受光量を検出するようになっている。また、測定板12には、発光素子13から第2距離k2だけ離れた位置に、第2受光部としての第2受光素子15が設けられている。第2受光素子15はフォトダイオードよりなる。第2受光素子15は、受光面が測定板12の下面に露出するように測定板12に設けられ、発光素子13から照射され、さらに生体20を透過した光を受光するとともにその受光量を検出するようになっている。
【0021】
測定板12には、発光素子13、第1受光素子14、及び第2受光素子15が直線状に配置されている。そして、発光素子13と第1受光素子14との間の第1距離k1は、皮膚色素や吸光・散乱特性の違いによる影響を補正するために短いのが好ましく、例えば10〜50mmに設定されるのが好ましい。また、発光素子13と第2受光素子15との間の第2距離k2は、第1距離k1より長く設定され、20〜100mmに設定されるのが望ましい。
【0022】
図3に示すように、光学式皮下脂肪厚測定装置10の表面には、報知部としての表示部10a、及び入力部としての入力ボタン10bが設けられている。入力ボタン10bの表面には「皮下脂肪厚」の表示がなされている。この入力ボタン10bを操作することにより皮下脂肪厚の測定開始が光学式皮下脂肪厚測定装置10に指示される。そして、光学式皮下脂肪厚測定装置10によって皮下脂肪厚が測定されると、測定された皮下脂肪厚が表示部10aに表示され、表示部10aの表示によって測定した皮下脂肪厚が被験者に報知されるようになっている。なお、表示部10aは液晶画面によって形成され、皮下脂肪厚を数値で表示する。
【0023】
図1に示すように、光学式皮下脂肪厚測定装置10において、表示部10a及び入力ボタン10bは制御部16に電気的に接続され、制御部16によって表示部10aへの表示が制御されるとともに、入力ボタン10bの操作により皮下脂肪厚の測定開始が制御部16に指示されるようになっている。
【0024】
また、発光素子13は制御部16に電気的に接続され、制御部16により発光素子13の点灯、消灯が制御される。また、第1受光素子14及び第2受光素子15は制御部16に電気的に接続されている。そして、第1受光素子14で検出された受光量、及び第2受光素子15で検出された受光量は制御部16に送られるようになっている。制御部16には、データベース部17が設けられている。このデータベース部17には、第1受光素子14及び第2受光素子15で得られた受光量に基づいて皮下脂肪厚の値を算出する際に用いられる関数が格納されている。
【0025】
ここで、皮下脂肪厚の値を算出する際に用いる関数について説明する。図4(a)及び図4(b)は、光学式皮下脂肪厚測定装置10を使って生体擬似モデルの皮下脂肪厚を測定したときの結果を示すものである。なお、図示しないが、生体疑似モデルは、皮下脂肪モデルの下に筋肉モデルを備えた2層よりなり、皮下脂肪モデルは500〜2500nmの近赤外領域において透過性の高い材料より形成され、筋肉モデルはABSなどの光吸収体より形成されている。
【0026】
図4(a)及び図4(b)のグラフは、縦軸に皮下脂肪モデルの厚さ(皮下脂肪厚)を示し、横軸に第2受光素子15の受光量を示している。図4(a)には、皮下脂肪厚と受光量との相関を示す関数たる一次回帰直線G4aが示されている。この一次回帰直線G4aにおける皮下脂肪厚と受光量との相関係数Rは0.93になっている。一方、図4(b)には、皮下脂肪厚と受光量との相関を示す関数たる指数関数G4bが示されている。この指数関数G4bにおける皮下脂肪厚と受光量との相関係数Rは0.98になっている。なお、一次回帰直線G4a及び指数関数G4bそれぞれは、超音波、X線、MRIなどを用いて予め測定された皮下脂肪厚と、その皮下脂肪厚での受光量との関係から最小二乗法等により得られる。
【0027】
そして、図4(a)及び図4(b)に示すように、一次回帰直線G4aを用いて得られる皮下脂肪厚の値は、指数関数G4bを用いて得られる皮下脂肪厚の値に比べて受光量が大きくなると誤差が大きくなる。よって、皮下脂肪厚の値をより正確に算出するためには、指数関数(非線形関数)を用いる方が好ましいことが示された。
【0028】
図5(a)及び図5(b)は、光学式皮下脂肪厚測定装置10を使って上記生体擬似モデルの皮下脂肪厚を測定したときの結果を示すグラフである。
図5(a)及び図5(b)のグラフは、縦軸に皮下脂肪モデルの厚さ(皮下脂肪厚)を示し、横軸に、第1受光素子14の受光量と第2受光素子15の受光量との相対比である受光量比を示している。図5(a)には、皮下脂肪厚と受光量比との相関を示す関数たる一次回帰直線G5aが示されている。この一次回帰直線G5aにおける皮下脂肪厚と受光量比との相関係数Rは0.89になっている。一方、図5(b)には、皮下脂肪厚と受光量比との相関を示す関数たる指数関数G5bが示されている。この指数関数G5bにおける皮下脂肪厚と受光量比との相関係数Rは0.97になっている。なお、一次回帰直線G5a及び指数関数G5bそれぞれは、超音波、X線、MRIなどを用いて予め測定された皮下脂肪厚と、その皮下脂肪厚での受光量比との関係から最小二乗法等により得られる。
【0029】
そして、図5(a)及び図5(b)に示すように、一次回帰直線G5aを用いて得られる皮下脂肪厚の値は、受光量比が大きくなると誤差が大きくなる。よって、皮下脂肪厚の値をより正確に算出するためには、指数関数(非線形関数)を用いる方が好ましいことが示された。また、図示しないが、受光量比を用いて皮下脂肪厚を算出した場合の方が、算出に用いる関数に対する皮下脂肪厚の値のばらつきが収まることが示された。よって、第1受光素子14と第2受光素子15を用いることで、皮膚色素や吸光・散乱特性の違いによる影響を補正して皮下脂肪厚をより正確に算出することができる。
【0030】
本実施形態では、皮下脂肪厚の値を算出する関数として、図6に示す非線形関数G6を用いるとともに、皮下脂肪厚を算出するための受光パラメータ値として受光量比を用いた。非線形関数G6は、受光量比が大きくなるほど皮下脂肪厚への変換係数が大きくなるように作成されるとともに、皮下脂肪厚と受光量比との相関係数Rは0.84になっている。この非線形関数G6は、超音波、X線、MRIなどを用いて予め実際の皮下脂肪厚を測定し、その皮下脂肪厚と、皮下脂肪厚の測定場所における受光量比との関係から最小二乗法などにより近似することにより得られる。
【0031】
さて、上記構成の光学式皮下脂肪厚測定装置10を用いて、生体20各部位としての太もも、二の腕、及び腹部の皮下脂肪厚を測定するには、まず、被験者は測定板12を、太もも、二の腕、又は腹部の表面に押し当て、次に、入力ボタン10bを操作して光学式皮下脂肪厚測定装置10をONさせると制御部16は、発光素子13を所定時間点灯させる。発光素子13から生体20の内部に照射された光は、太もも、二の腕、又は腹部の皮膚20a、皮下脂肪20b、及び筋肉20cを伝播して第1受光素子14及び第2受光素子15に受光される。制御部16は、第1受光素子14の受光量と、第2受光素子15の受光量との相対比(受光量比)を算出する。さらに、制御部16は、非線形関数G6を参照し、得られた受光量比に基づいて、太もも、二の腕、又は腹部の皮下脂肪厚を算出(推定)する。次に、制御部16は、算出した皮下脂肪厚を表示部10aに表示させる。
【0032】
図6に、光学式皮下脂肪厚測定装置10によって算出された皮下脂肪厚(太もも、二の腕、及び腹部)の値を示す。太もも、二の腕、及び腹部を含めた全体の相関係数Rは0.84である。ここで、図7に、太もも、二の腕、及び腹部それぞれの皮下脂肪厚と受光量比との相関を示す関数たる一次回帰直線G7を示す。各一次回帰直線G7それぞれは、超音波、X線、MRIなどを用いて予め実際の皮下脂肪厚を測定し、その皮下脂肪厚と、皮下脂肪厚の測定場所における受光量比との関係から最小二乗法などにより近似することにより得られる。太ももの一次回帰直線G7における相関係数Rは0.75、二の腕の一次回帰直線G7における相関係数Rは0.81、腹部の一次回帰直線G7における相関係数Rは0.84である。
【0033】
よって、図6に示す非線形関数G6と、各一次回帰直線G7とを比較しても、相関係数にほとんど差が見られない。したがって、非線形関数G6を用いることで、腹部、太もも、二の腕のように、皮下脂肪厚の異なる部位であっても入力ボタン10bを操作するだけで各部位の皮下脂肪厚を測定することができる。
【0034】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)光学式皮下脂肪厚測定装置10は、1つの入力ボタン10bを備えるとともに、制御部16には1つの非線形関数G6が格納されている。そして、1つの非線形関数G6を用いることで、太もも、二の腕、及び腹部の皮下脂肪厚を測定することができる。よって、測定する部位毎に選択ボタンを操作する必要がある場合と異なり、簡単に操作することができる。
【0035】
(2)光学式皮下脂肪厚測定装置10においては、1つの入力ボタン10bを操作するだけで太もも、二の腕、及び腹部それぞれの皮下脂肪厚を測定することができる。よって、光学式皮下脂肪厚測定装置10には入力ボタン10bだけを設ければよく、測定する部位毎に選択ボタンを必要とした場合と比べて光学式皮下脂肪厚測定装置10を小型化することができるとともに、ボタンの数を減らして製造コストを低コスト化することができる。
【0036】
(3)皮下脂肪厚の算出に用いる受光パラメータ値として、発光素子13から第1距離k1だけ離れた第1受光素子14の受光量と、第1距離k1より長い第2距離k2だけ発光素子13から離れた第2受光素子15の受光量との相対比である受光量比を用いた。このため、皮膚色素や吸光・散乱特性の違いによる影響を補正した受光パラメータ値を用いて皮下脂肪厚を算出することができ、高精度に皮下脂肪厚を測定することができる。
【0037】
(4)皮下脂肪厚を算出する関数として非線形関数G6を設定した。この非線形関数G6は、受光量比が大きくなるに従い傾きが大きくなるような関数である。そして、受光量比が大きくなるとは、皮下脂肪厚が厚くなることを示すため、非線形関数G6を用いることで、厚みの薄い皮下脂肪厚から厚みの厚い皮下脂肪厚まで正確に測定することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8を用いて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0039】
図8に示すように、第2の実施形態の光学式皮下脂肪厚測定装置10において、本体基板11の下面には収容凹所11aが形成されるとともに、この収容凹所11aには所定のヤング率を有する圧縮バネ31が収容されている。圧縮バネ31は一端(図8では上端)が収容凹所11aの内頂面に当接するとともに他端(図8では下端)が測定板12の表面(図8では上面)に当接している。そして、圧縮バネ31は、バネ力により測定板12を本体基板11から離れる方向へ付勢している。
【0040】
また、圧縮バネ31には圧力検出部32が電気的に接続されるとともに、圧力検出部32は制御部16に電気的に接続されている。そして、測定板12が生体20表面に押し当てられると、圧縮バネ31が圧縮され、圧力検出部32によって生体20に加わる圧力が検出されるようになっている。さらに、制御部16は、圧力検出部32によって検出された圧力が所定値以上になると、発光素子13を所定時間点灯させる制御を行うようになっている。なお、圧力の所定値とは、測定板12の下面全体が生体20表面に確実に押し当てられるときに圧力検出部32に加わる値に設定されるのが好ましい。
【0041】
したがって、上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1)〜(4)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)第2の実施形態における光学式皮下脂肪厚測定装置10は、圧縮バネ31及び圧力検出部32を備える。そして、圧力検出部32に所定値以上の圧力が検出されると制御部16は発光素子13を点灯させ、皮下脂肪厚の測定を開始させる。このため、生体20表面に測定板12の下面を確実に接触させた時点で皮下脂肪厚が測定されることとなり、測定中に、測定板12の下面と生体20表面との間を遮断して測定板12の下面に外光が入り込むことを防止することができる。その結果として、発光素子13からの光の散乱を防止して、発光素子13からの光を用いた皮下脂肪厚の測定を正確に行うことができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図9に示すように、データベース部17に格納する関数を、受光量比を所定の値より小さい領域で近似した一次回帰直線G8aと所定の値以上の領域で近似した一次回帰直線G8bとを結合してなるものとし、受光量比が大きくなるほど傾きが大きくなる非線形関数としてもよい。すなわち、データベース部17には、受光量比により係数の異なる一次回帰直線G8aと一次回帰直線G8bとが格納されている。なお、一次回帰直線G8aに比べて一次回帰直線G8bの傾きが大きくなるように近似している。そして、このような非線形関数を用いた場合、受光量比が小さい場合、制御部16は一次回帰直線G8aと一次回帰直線G8bのうち一次回帰直線G8aを選択して皮下脂肪厚を算出し、受光量比が大きい場合は、制御部16は一次回帰直線G8aと一次回帰直線G8bのうち一次回帰直線G8bを用いて皮下脂肪厚を算出する。このように構成しても、生体20の部位を区別することなく、一つの入力ボタン10bで皮下脂肪厚を測定することができる。
【0043】
なお、データベース部17に格納する関数は、複数格納するのであれば、一次回帰直線G8a,G8bのような一次回帰直線でなく、指数関数を複数格納してもよい。
○ なお、図8に示す一次回帰直線G8a,G8bがデータベース部17に格納された光学式皮下脂肪厚測定装置10において、受光パラメータ値を第1受光素子14又は第2受光素子15の受光量としてもよい。
【0044】
○ 本体基板11に設ける受光部は1つだけであってもよく、3つ以上設けてもよい。
○ 報知部として、音声やパラメータ表示等によって皮下脂肪厚を被験者に報知するようにしてもよい。
【0045】
○ 各実施形態では、関数として非線形関数に指数関数を用いたが、二次関数、三次関数などとしてもよい。
○ 第2の実施形態において、圧力検出のために圧縮バネ31を用いたが、歪ゲージを用いて圧力検出を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
G4a,G5a,G8a,G8b…関数としての一次回帰直線、G4b,G5b…関数及び非線形関数としての指数関数、G6…非線形関数、k1…第1距離、k2…第2距離、10a…報知部としての表示部、10b…入力部としての入力ボタン、13…光照射部としての発光素子、14…第1受光部としての第1受光素子、15…第2受光部としての第2受光素子、16…制御部、17…データベース部、20…生体、32…圧力検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の表面に向けて光を照射する光照射部と、
前記生体の内部を伝播した光を受光する受光部と、
前記受光部での受光量に基づいて得られる受光パラメータ値と前記生体の各部位における皮下脂肪厚の値とを相関するものであり前記生体の各部位で共用する関数が格納されたデータベース部と、
前記受光パラメータ値に基づいて前記データベース部の前記関数を参照し、前記皮下脂肪厚の値を推定する制御部と、
前記皮下脂肪厚の測定開始を前記制御部に指示するための1つの入力部と、
前記制御部によって推定された皮下脂肪厚の値を被験者に報知する報知部と、を備えることを特徴とする光学式皮下脂肪厚測定装置。
【請求項2】
前記関数は、前記受光パラメータ値が大きくなるほど傾きが大きくなる非線形関数である請求項1に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置。
【請求項3】
前記受光パラメータ値が、前記光照射部から第1距離だけ離れた位置に設けられた第1受光部での第1受光量と、前記第1距離より長い第2距離だけ前記光照射部から離れた位置に設けられた第2受光部での第2受光量との相対比である請求項1又は請求項2に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置。
【請求項4】
前記データベース部には、前記受光パラメータ値により係数が異なる複数の関数が格納され、前記制御部は前記受光パラメータ値に基づき複数の関数の中から一つを選択して前記皮下脂肪厚を推定する請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置。
【請求項5】
前記光照射部を生体の表面に押し当てたとき、該生体の表面に加わる圧力を検出する圧力検出部をさらに備え、前記制御部は、前記圧力検出部により所定値以上の圧力が検出されたことを契機に前記光照射部に光を照射させる請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の光学式皮下脂肪厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178799(P2010−178799A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22931(P2009−22931)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】