説明

光学接続構造

【課題】 光伝送媒体の位置合わせが容易で、接続損失も生じにくい光学接続構造を提供する。
【解決手段】 光伝送媒体10と光機能部品20または光伝送媒体10と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、前記光伝送媒体10の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部16と側面が削られた接続部17とを有し、該接続部17近傍に光機能部品20または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。光伝送媒体10と光機能部品20または光伝送媒体10と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、前記光伝送媒体10の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部16と側面が削られた接続部17とを有し、該接続部17に接触して光機能部品20または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上で光機能部品を接続するのに光伝送媒体を有する光学接続構造が用いられている。光学接続構造には、フェルールに光伝送媒体である光ファイバを装着して基板に沿って光機能部品に突き合わせるといった基板と平行方向に接続するものと、基板に対し垂直方向に開口された接続点を持つ光機能部品に光ファイバの先端を斜めに切断して接触させるといった基板と垂直方向に接続するものとがある。
【0003】
基板と垂直方向に接続する光学接続構造では配線の自由度は高いものの、有効な位置合わせ方法がなかった。そのため、安定して接続を行うことが難しく、例えば光機能部品と光ファイバとの接触の際に、光機能部品を破損させる恐れがあった。
【0004】
ファイバレンズ等の特殊な部品を用いて光学接続させることも可能である(例えば、特許文献1を参照)。しかし、部品点数が多くなり高コストになるだけでなく、光ファイバのコアと光機能部品との距離で光が拡散して接続損失が生じやすい問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特表2005−519342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、光伝送媒体の位置合わせが容易で、接続損失も生じにくい光学接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)光伝送媒体と光機能部品または光伝送媒体と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、前記光伝送媒体の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部と側面が削られた接続部とを有し、該接続部近傍に光機能部品または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。
(2)光伝送媒体と光機能部品または光伝送媒体と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、前記光伝送媒体の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部と側面が削られた接続部とを有し、該接続部に接触して光機能部品または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。
(3)前記反射部に反射膜が形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光学接続構造。
(4)前記光伝送媒体は、側面が保護膜で覆われていることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光学接続構造。
(5)前記接続部は、粘着性接続部材を備えることを特徴とする前記(1)または(2)記載の光学接続構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光伝送媒体の位置合わせが容易で、接続損失も生じにくい光学接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
図1を用いて実施形態1について説明する。
図1(a)は本発明の実施形態1の光学接続構造を示す側面図、図1(b)は本発明の実施形態1の光学接続構造を示す正面図である。
10は光伝送媒体である光ファイバ、11はコア、12はクラッド、16は反射部、17は接続部、20は面発光レーザ等の光機能部品、Lは光である。
実施形態1の光学接続構造は、光ファイバ10と光機能部品20とを接続する光学接続構造であって、光ファイバ10の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部16と側面が削られた接続部17とを有し、接続部17近傍に光機能部品20が配置されていることを特徴とする。
【0010】
まず、反射部16は斜めにカットされている必要があり、その角度は30〜60°が好ましく、より好ましくは40〜50°である。
反射部16は接続部17から入射してくる光Lをコア11へ反射させることができる。または、コア11内を伝送されてきた光を接続部17へ反射させることができる。
次に、接続部17は、光ファイバ10の側面が削られて構成されている。
したがって、光機能部品20とコア11との距離が短くなり光Lが拡散しにくくなる。
また、接続部17は平面なので光を透過しやすく接続損失が生じにくい。
そして、接続部17の面を光機能部品20の上面に合わせて配置すれば、光ファイバ10と光機能部品20とを容易に位置合わせできる。
なお、接続部17と光機能部品20は接触していてもよい。
実施形態1の光学接続構造によれば、光機能部品20から出射された光Lが接続部17を透過して反射部16で反射され、コア11内を伝送される。または、コア11内を伝送されてきた光が反射部16で反射され、接続部17を透過して光機能部品20へ出射される。
なお、光機能部品20に代えて図示していない他の光ファイバ等を用いてもよい。
また、光ファイバ10は、一端だけでなく両端に反射部16と接続部17とを有してもよい。
【0011】
(実施形態2)
図2を用いて実施形態2について説明する。
図2(a)は本発明の実施形態2の光学接続構造を示す側面図、図2(b)は本発明の実施形態2の光学接続構造を示す正面図である。
18は反射膜である。
他の構成は実施形態1と同一であるので説明を省略する。
実施形態2の光学接続構造は、反射部16に反射膜18が形成されていることを特徴とする。
反射膜18は金属メッキ等が好ましい。具体的には、金、銀、銅、ニッケル等が好ましく使用される。また、反射膜の膜厚は、スペースを取らないくらいの膜厚であれば、特に規定されないが、0.05μm〜3μm程度が好ましい。
実施形態2の光学接続構造によれば、反射部16を透過する光が少なくなり、さらに接続損失を低減できる。
【0012】
(実施形態3)
図3を用いて実施形態3について説明する。
図3(a)は本発明の実施形態3の光学接続構造を示す側面図、図3(b)は本発明の実施形態3の光学接続構造を示す正面図である。
19は保護膜である。
他の構成は実施形態1と同一であるので説明を省略する。
実施形態3の光学接続構造は、光ファイバの側面が保護膜19で覆われていることを特徴とする。
保護膜19は光を透過する樹脂等が好ましいが、光を吸収する保護膜であっても、所望の光強度が得られるのであれば、特に限定されない。具体的にはアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等のいずれかが好ましい。
実施形態3の光学接続構造は、接続部17の強度不足を補うことができるので、細い光ファイバを用いる場合等に特に有効である。
【0013】
(実施形態4)
図4を用いて実施形態4について説明する。
図4(a)は本発明の実施形態4の光学接続構造を示す側面図、図4(b)は本発明の実施形態4の光学接続構造を示す正面図である。
Xは粘着性接続部材である。接続部17は粘着性接続部材Xを介して光機能部品20と接触している。
他の構成は実施形態1と同一であるので説明を省略する。
実施形態4の光学接続構造は、接続部17が粘着性接続部材Xを備えることを特徴とする。
【0014】
粘着性接続部材Xとしては、光伝送媒体に接触した際、適度なタック性を伴って密着する屈折率整合体であればよい。
適度なタック性を有するには、粘着力が1〜100gf/25mmであることが好ましく、より好ましくは5〜50gf/25mm、特に好ましくは10〜30gf/25mmである。粘着力が1gf/25mm未満だと接続が安定せず、100gf/25mmを超えるとのり残りが発生して好ましくない。
なお、上記の粘着力はJIS Z 0237の90度引きはがし粘着力に準拠して測定した値である。
次に、屈折率整合体であるには、光伝送媒体と屈折率が近ければよい。具体的には、フレネル反射の回避による伝送損失の面から屈折率の差が±0.1以内であることが好ましく、特に0.05以内であることが好ましい。なお、上記屈折率は20℃での値であり、測定には波長1310nmの光源を用いる。
また、粘着性接続部材Xは、硬度がJIS(A型)5〜100であれば凝集破壊が起こり難く、そのまま再接続可能となるので好ましい。さらに好ましくは20〜90である。
上記の硬度はJIS K−6253に準拠して測定した値である。なお、粘着性接続部材Xを交換して再接続することもできる。
粘着性接続部材Xには、高分子材料、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等の各種粘着材料を用いることが好ましい。
中でも、耐環境性及び接着性の面から、シリコーン系及びアクリル系の粘着材料が特に好ましい。また、適宜架橋剤、添加剤、軟化剤、粘着調整剤等の添加により接着力、濡れ性を調節してもよく、耐水性や耐湿性、耐熱性を付加してもよい。
実施形態4の光学接続構造は、接続が安定し、損失が生じにくくなる点で好ましい。
【0015】
なお、本発明に用いられる光伝送媒体は単心の光ファイバに限られず、光ファイバを複数本テープ化したテープ心線等でもよく、一度に接続される光伝送媒体の数量に制限はない。
また、光伝送媒体としては、石英ファイバ等を好適に用いることができるが、これは簡単に加工できる光ファイバの一例であり、その材料は限定されない。また、光伝送媒体として、光導波路を用いることができ、その形状および材質は、適宜選択して使用することができる。さらに、光伝送媒体における屈折率分布は、ステップ分布やグレーテッド分布等、使用目的により適宜選択することができる。
【0016】
また、本発明に用いられる光機能部品としては、光学レンズ、フィルタ、測定器、レーザーダイオード、フォトダイオードなどがあげられ、その種類に関しては特に限定されるものではない。光学レンズは、例えば両凸、両凹、凹凸、平凸、非球面等の各種形状を有するものや、コリメートレンズ、ロッドレンズなどがあげられ、フィルタとしては、例えば一般光通信用フィルタのほか、多層膜フィルタやポリイミドフィルタ等があげられる。
【0017】
次に、本発明の光学接続構造の作製方法を説明する。
まず、光伝送媒体に反射部16および接続部17を形成する。
反射部16は光伝送媒体が樹脂等硬度の低い材料で構成されている場合は先端をカッター等で切断することで形成できる。また、ガラス等硬度の高い材料で構成されている場合は、ダイシングソーや、研磨により形成することができる。
なお、反射部16に反射膜18を設ける場合、切断後に金属メッキ等を施すことで形成できる。
また、接続部17は光伝送媒体の側面を耐水サンドペーパー、研磨ペースト、研磨スラリー、研磨シート等で研磨することで形成できる。
なお、光伝送媒体の側面に保護膜19を設ける場合、研磨後に樹脂コート等を施すことで形成できる。
次に、予め基板上等に設置された光機能部品等に接続部17を位置合わせして、当該光伝送媒体を配置する。
なお、接続部17に粘着性接続部材Xを設ける場合、塗布や貼付により形成してから配置できる。
また、光機能部品等に粘着性接続部材Xを塗布または貼付し、そこに接続部17を配置してもよい。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を用いて説明する。
<実施例1>
実施例1では実施形態1の光学接続構造を作製した。
まず、光伝送媒体として石英系シングルモードの光ファイバ(住友電工社製、外径0.25mm、長さ0.3m、20℃での屈折率1.452)を用意した。
そして、一端を研磨装置により45°に研磨し、反射部を形成した。
次に、当該一端の側面を研磨スラリーであるダイヤモンドコンパウンド(ENGIS社製、商品名:「Hyprez」)で長さ2mm、深さ25μm程度研磨し、接続部を形成した。
次に、予め基板上に設置された面発光レーザ(富士ゼロックス社製、波長850nm)と該接続部とを位置合わせして、面発光レーザと接続部とが0.05mm程度離間するように光伝送媒体を配置した。
これにより、接続部近傍に光機能部品を配置した。
以上により実施例1の光学接続構造を作製した。
【0019】
<実施例2>
実施例2では実施形態2の光学接続構造を作製した。
切断により反射部を形成した後に、厚さ1μmの銀メッキを施すことで反射膜を形成した。
その他は実施例1と同様にして実施例2の光学接続構造を作製した。
【0020】
<実施例3>
実施例3では実施形態3の光学接続構造を作製した。
研磨後に厚さ10μmの透明なシリコーン樹脂コートを施すことで保護膜を形成した。
その他は実施例1と同様にして実施例3の光学接続構造を作製した。
【0021】
<実施例4>
実施例4では実施形態4の光学接続構造を作製した。
光ファイバに反射部と接続部を形成した後、接続部に粘着性接続部材(TOMOEGAWA社製、商品名:「FITWELL」、20℃での屈折率1.46)を貼付し、該粘着性接続部材と面発光レーザとを接触させ、固定した。
その他は実施例1と同様にして実施例4の光学接続構造を作製した。
【0022】
<比較例1>
比較例1では、図5に示すように、接続部を設けなかった。
図5(a)は比較例の光学接続構造を示す側面図、図5(b)は比較例の光学接続構造を示す正面図である。
その他は実施例1と同様にして比較例1の光学接続構造を作製した。
【0023】
実施例および比較例の主な条件を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例および比較例の光学接続構造について、以下の方法で評価した。
【0026】
<評価方法>
(位置合わせに要した時間)
まず、光ファイバの接続部と面発光レーザとを位置合わせして配置するのに掛かった時間を測定した。
なお、実施例4では接続部に粘着性接続部材を貼着する時間も含めた。
【0027】
(接続損失)
次に、接続損失の評価を行った。
[基準実験]
まず、接続箇所がない状態で接続損失0の標準状態を示すために基準実験を行った。
両端にSCコネクタを有する光ファイバを用意し、SCコネクタをそれぞれ光パワーメータ(ADVANTEST社製、商品名:「OPTICAL MULTI POWER METER 「Q8221」」)の入射用端子と出射用端子に接続した。
そして、波長1550nmの光を入射用端子から入射させ、出射用端子から出射された光パワーを測定して基準値とした。
【0028】
[実施例および比較例の評価]
次に実施例および比較例の光学接続構造について接続損失を評価した。
実施例および比較例の光学接続構造の光ファイバについて、面発光レーザと接続していない一端にSCコネクタ(住友電工社製、商品名:「単心光コネクタSC」)を取り付け、該SCコネクタを測定器(ADVANTEST社製、商品名:「OPTICAL MULTI POWER METER 「Q8221」」)の出射用端子に接続した。
次に、面発光レーザから1550nmの光を入射させ、測定器に出射された光のパワーを測定した。
そして、基準値との差を算出し、接続損失[dB]とした。
【0029】
結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
<評価結果>
表2から明らかなように、実施例1〜4では、短時間で位置合わせが可能となり、1.2dB以下の小さい接続損失で接続可能であった。
これに対し、比較例1では、ファイバ表面が曲面であるため、位置合わせに時間がかかり、さらに光が拡散し接続損失は大きくなった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本発明の実施形態1の光学接続構造を示す側面図、(b)は本発明の実施形態1の光学接続構造を示す正面図
【図2】(a)は本発明の実施形態2の光学接続構造を示す側面図、(b)は本発明の実施形態2の光学接続構造を示す正面図
【図3】(a)は本発明の実施形態3の光学接続構造を示す側面図、(b)は本発明の実施形態3の光学接続構造を示す正面図
【図4】(a)は本発明の実施形態4の光学接続構造を示す側面図、(b)は本発明の実施形態4の光学接続構造を示す正面図
【図5】(a)は比較例の光学接続構造を示す側面図、(b)は比較例の光学接続構造を示す正面図
【符号の説明】
【0033】
10 光ファイバ
11 コア
12 クラッド
16 反射部
17 接続部
18 反射膜
19 保護膜
20 光機能部品
L 光
X 粘着性接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送媒体と光機能部品または光伝送媒体と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、
前記光伝送媒体の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部と側面が削られた接続部とを有し、
該接続部近傍に光機能部品または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。
【請求項2】
光伝送媒体と光機能部品または光伝送媒体と他の光伝送媒体とを接続する光学接続構造であって、
前記光伝送媒体の少なくとも一端は、斜めにカットされた反射部と側面が削られた接続部とを有し、
該接続部に接触して光機能部品または他の光伝送媒体が配置されていることを特徴とする光学接続構造。
【請求項3】
前記反射部に反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光学接続構造。
【請求項4】
前記光伝送媒体は、側面が保護膜で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の光学接続構造。
【請求項5】
前記接続部は、粘着性接続部材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の光学接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−300824(P2009−300824A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156334(P2008−156334)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】