説明

光学材料用樹脂組成物および光学素子

【課題】光学材料に適した透明性、低複屈折性、耐光性に優れた熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を提供する。特に波長405nm帯のレーザーを透過させる用途で用いる光学素子、さらには光ピックアップ装置の部材である光学素子を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる、特定の構成単位組成からなる共重合体の芳香族二重結合の90%以上を水素化することによって得られる熱可塑性樹脂を、有機溶媒に溶解した状態で孔径0.5μm以下のフィルターによって少なくとも1回以上濾過した熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物およびそれを用いた光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を用いてなる光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
透明熱可塑性樹脂はその成形加工性や軽量性、量産性の高さから光学素子に広く用いられている。特にカメラ、デジタルカメラ、フィルム一体型カメラ(レンズ付きフィルム)、ビデオカメラ、携帯電話カメラなどの各種カメラ、CD、DVD、MOなどの光ピックアップ装置、複写機及びプリンターなどのOA機器といった各種機器に使用されるレンズには、これまでポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン(COP)などの透明熱可塑性樹脂が使用されてきた。
【0003】
しかしながら、近年の情報記録の高密度化や撮像用高性能光学用レンズの高い色調再現性の要求から、透明熱可塑性樹脂を用いた光学材料用樹脂組成物に求められる性能は格段に厳しいものとなっている。小型レンズにおいては、成形時の光学歪みがレンズとしての性能を決める大きな要因となることから、光学異方性(複屈折)を生じにくい材料が求められている。また長時間のレーザー光の照射またはその他の光エネルギー照射条件下では、レンズ中に白濁が発生したりして、光学特性が劣化する場合があるため、改善が求められている。
【0004】
特に次世代高密度光ディスクには波長405nm帯の青紫色レーザーを用いるが、読み出し時の低いエネルギーのレーザー光の照射に耐える光学材料用樹脂組成物はあっても、高倍速書き込み時のような高いエネルギーのレーザー光の照射に耐える光学材料用樹脂組成物が知られていないのが現状である。
【0005】
波長405nm帯の青紫色レーザーに対応できる樹脂として、ビニル脂環式炭化水素系樹脂(特許文献1参照。)が開示されているが、耐光性の面で不十分である場合があり、成形直後の光線透過率は良好であるが、高温下(例えば80℃空気下)での促進耐光性試験では顕著に透過光量の減少が見られる。また、本発明者らは少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られ、かつ、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が1〜4である共重合体の芳香族二重結合を70%以上水素化して得られる熱可塑性透明樹脂が良好な耐光性を示すことを開示しているが(特許文献2参照。)、実用上はさらに高い耐光性を求められていた。
【0006】
スチレン系樹脂の芳香環を水素化(芳香族二重結合の水素化)する技術は古くから知られており、ポリスチレンから得られるポリビニルシクロヘキサンは、機械強度に劣るという欠点はあるものの、透明性と耐熱変形性に優れた樹脂である。その優れた透明性と耐熱変形性から、光ディスク基板への応用が検討されてきた(特許文献3参照。)。また、メチルメタクリレートとスチレンを共重合したMS樹脂の芳香族二重結合を水素化して得た特定のモノマー組成を有する樹脂を、光ディスク用途やプラスチックレンズ用途に応用した例も開示されている(特許文献4、特許文献5参照。)。しかしこれらに開示されているMMA共重合率の低いMS樹脂(MMA構成単位/スチレン構成単位=0.92以下)の芳香族二重結合を水素化した樹脂は、機械強度が必ずしも十分ではなく、プラスチックレンズなどにおいては機械物性の面において実用性能を満足しない場合があった。また、ビニルシクロヘキサン繰り返し単位を全繰り返し単位の50%以上含むので、光や熱によって劣化しやすい3級炭素を多く含むことから、高温下での波長405nm帯の青紫色レーザーなどの照射下では劣化が起こる場合があった。
【特許文献1】特開2001−272501号公報
【特許文献2】特開2006―89713号公報
【特許文献3】特開昭63−43910号公報
【特許文献4】特開平6−25326号公報
【特許文献5】特開平4−75001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上で述べた光学材料用樹脂組成物に要求されている透明性、低複屈折性、耐光性に優れた熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を提供することを目的とする。また、この光学材料樹脂組成物からなる成形体に波長405nm帯のレーザーを透過させる用途で用いる光学素子、さらには光ピックアップ装置の部材である光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記事情に鑑み鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られる、特定の構成単位組成からなる共重合体の芳香族二重結合の90%以上を水素化することによって得られる熱可塑性樹脂を、有機溶媒に溶解した状態で孔径0.5μm以下のフィルターによって少なくとも1回以上濾過して製造した熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を用いることによって、波長405nm帯のレーザーに対する耐光性が良好な光学素子が得られることを見出し、本発明に到った。
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られ、かつ、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が1〜4である共重合体の芳香族二重結合の90%以上を水素化して得られる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物であって、該熱可塑性透明樹脂が有機溶媒に溶解した状態で孔径0.5μm以下のフィルターによって少なくとも1回濾過されたものであることを特徴とする光学材料用樹脂組成物に関する。
【0010】
また本発明は、この光学材料用樹脂組成物から得られる成形体に波長405nm帯のレーザーを透過させる用途で用いる光学素子。さらには波長405nm帯のレーザーを用いる光ピックアップ装置の部材である光学素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られる熱可塑性透明樹脂は、特に耐光性、低複屈折性に優れている。また酸化劣化にも強く、該熱可塑性透明樹脂を含有する光学材料樹脂組成物を成形する際、成形不良が少なく、色調に優れた光学素子などの成形体を製造することができる。さらに透明性、耐熱変形性、機械物性、低吸水性、などのバランスが優れているため、高品質の光学素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル類;(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)や(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)などの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;(メタ)アクリル酸(2−メトキシエチル)、(メタ)アクリル酸(2−エトキシエチル)などの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;(メタ)アクリル酸ベンジルや(メタ)アクリル酸フェニルなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル類;および2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質類似官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル類などをあげることができるが、物性のバランスから、メタクリル酸アルキルを単独で用いるか、あるいはメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを併用することが好ましい。さらに、メタクリル酸メチル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%を用いることが好ましい。アクリル酸アルキルのうち、特に好ましいものはアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルである。本発明にいて、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を示す。これらを単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明で用いる芳香族ビニルモノマーとしては、具体的にスチレン、α―メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、およびクロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物などがあげられるが、スチレンが好適に用いられる。これらを単独で用いてもよいし、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、工業的にはラジカル重合による方法が簡便でよい。ラジカル重合は塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の方法を適宜選択することができる。例えば、塊状重合法や溶液重合は、モノマー、連鎖移動剤、及び重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的にフィードし、100〜180℃で重合する連続重合法などにより行われる。溶液重合法ではトルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などの溶媒を、モノマー組成物と共に重合槽にフィードする。重合後、反応液を重合槽から抜き出し、押出機や減圧槽で揮発分を除去して共重合体を得ることができる。
【0015】
メタクリル系共重合体の場合、共重合体の構成単位比は仕込みモノマー比とは必ずしも一致せず、重合反応によって実際に共重合体に取り込まれたモノマーの量によって決定される。共重合体の構成単位比は、モノマーの重合変換率が100%であれば仕込みモノマー比と一致するが、実際には50〜80%の重合変換率で製造する場合が多く、反応性の高いモノマーほどポリマーに取り込まれ易いため、モノマー仕込み比と共重合体の構成単位比に違いが生じる。このため、仕込みモノマー比を適宜調整して所望の構成単位比を得るようにする必要がある。
【0016】
本発明で水素化反応に用いる共重合体の構成単位モル比((メタ)アクリル酸エステルモノマー単位/芳香族ビニルモノマー単位=A/B)は、1〜4である。1未満であると機械強度が劣り実用に耐えない場合がある。4を超えると、吸水による成形体のそりや寸法変化が無視できなくなり、光学材料用樹脂組成物としては好ましくなくなってしまう。構成単位モル比(A/B)は、物性バランスの面から、1〜2.5が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0017】
上記共重合体は、適当な溶媒に溶解して水素化反応を行う。水素化反応溶媒と重合溶媒は、同じでも良いし、異なっていても良い。水素化反応溶媒としては、水素化反応前後の共重合体及び水素に対する溶解能が高く、かつ、水素化反応に不活性な溶媒が好ましい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒が用いられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0018】
水素化反応は、バッチ式反応や連続流通式反応などの公知の手法を用いて、3〜30MPaの水素圧、60〜250℃の反応温度で行うのが好ましい。反応温度が低すぎると反応が進行しにくく、反応温度が高すぎると分子鎖の切断による分子量の低下が起こったり、エステル部位も水素化されたりすることがある。分子鎖の切断による分子量低下を防ぎかつ円滑に反応を進行させるには、用いる触媒の種類および反応系中の濃度、共重合体の反応系中の濃度、分子量などに応じて、温度、水素圧を適宜選択することが好ましい。
【0019】
水素化反応には公知の水素化触媒を使用することができる。具体的にはニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウムなどの金属、または該金属の酸化物、塩、錯体などの化合物をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒が挙げられる。これらのなかでもニッケル、パラジウム、白金をカーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土に担持した触媒が好ましく用いられる。担持量は、担体の0.1〜30wt%が好ましい。
【0020】
水素化率は、全芳香族二重結合の90%以上であり、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上(100%を含む)である。90%未満の場合には、波長405nm帯のレーザーを照射した際に白化が見られるなど、耐光性が不足する場合が出てくる。
【0021】
上で述べた熱可塑性透明樹脂に、特性を損なわない範囲で公知の添加剤を配合し、光学材料用樹脂組成物とする。添加剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯塩系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などの光安定剤、アルキルスルホン酸塩、ステアリン酸のグリセリンエステルなどの帯電防止剤、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、芳香族エステル、トリグリセライド類、フッ素系界面活性剤、高級脂肪酸金属塩などの離型剤または滑剤、リン酸トリエステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、脂肪酸一塩基酸エステル系化合物、二価アルコールエステル系化合物、オキシ酸エステル系化合物、パラフィン系化合物、液状ポリマー系化合物などの可塑剤などが挙げられる。また白化防止に効果があると知られる軟質重合体やアルコール性化合物などを添加してもよい。これらの添加剤は、各々単独で用いてもよいし、相乗効果をもたらすものもあるため、二種以上を組みあわせて用いてもよい。
【0022】
添加剤の添加量は特に限定されないが、重合体100重量部当り、通常0.0001〜5.0重量部、好ましくは0.001〜1.0重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部の範囲であり、目的に応じて適宜選択すればよい。添加剤の添加方法も特に限定されないが、例えば有機溶媒を用いた重合体の製造工程中において、該重合体が有機溶媒に溶解した溶液に添加剤を添加して液中ブレンドして溶媒を除去する方法が挙げられる。後述する濾過工程の前に添加しても良いし、濾過後に転嫁することもできる。また、溶媒が除去された後の重合体にドライブレンドする方法なども簡便で好ましい。
【0023】
本発明の熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物は、含有する異物粒子の数が極力少ないことが好ましい。異物とは、外部から混入した不純物のほか、重合体の製造工程で混入する触媒残渣、ゲル化物、副反応物など、樹脂に相溶しない物質である。光拡散剤などを添加して、あえて透過光を散乱させて使用する場合を除き、散乱光を利用しない用途においては、異物粒子の数が多いと透過光の損失が大きくなるため好ましくない。また異物粒子の量が少ないほど光に対する劣化が抑制される。異物の粒径は、光散乱式微粒子検出器などを用いて測定することが出来るが、熱可塑性透明樹脂に粒径1μm以上の異物粒子を実質上含まないことが好ましい。また、粒径が0.5μm以上で1μm未満の異物粒子の含有量が3×10個/g以下であることが好ましく、2×10個/g以下であることがより好ましい。特に高度の透明性を求められる場合は、粒径が0.5μm以上で1μm未満の異物粒子の含有量は5×10個/g以下であるのが好ましい。本発明では異物粒子の含有量を低減させる方法として、熱可塑性透明樹脂の製造工程において、重合体を含有する溶液を、孔径が0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下のフィルターで、少なくとも1回以上濾過する方法を用いる。
【0024】
用いるフィルターとしては、PTFE製メンブランフィルター(PTI社製プロフロー、日本ポール社製エンフロンなど)やポリプロピレン製デプスフィルター(PTI社製ポリフローなど)、ポリエーテルサルホン製メンブランフィルター(PTI社製クラリフローなど)、焼結金属製フィルター、SUSランダムファイバー型フィルター、セルロース製電位吸着フィルターなどを用いることができるが、いずれも孔径は0.5μm以下のものを使用し、特に少なくとも一回はメンブランフィルターによる濾過を行うと効果的に異物粒子を排除することが出来る。また、該フィルターにかかる負荷を低減するために、フィルター上流に1μm〜10μm程度の目の粗いフィルターを設置しておくほうが好ましい。
【0025】
濾過を行う工程はいずれのタイミングでもよいが、水素化反応後に触媒を除去した反応液を濃縮する前の工程で行うと、粘度が低く、処理量が増えるため好ましい。また、脱揮押出によりペレット化する場合には、押出機直前に耐熱性のあるフィルターを設置するのも効果的である。
【0026】
また押出機から溶融吐出するストランドを冷却する工程、ペレタイジング工程、ペレットを射出成形機に導入する工程など、大気にさらされる工程を極力清浄な環境下で行うことにより異物粒子の含有量を低減させることができる。これらの工程の少なくとも一工程を、ISO14644−1で定めるクラス5以上の清浄度を持つ環境下で行うことが好ましい。
【0027】
本発明の熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物は、加熱溶融することで所望の形状に加工することができる。成形は、公知の射出成形法や押出成形法、熱プレス成形法などによって行うことができる。中でも光学素子はその生産性から射出成形がより一般的に用いられる。射出成形時のシリンダー温度は、好ましくは220〜320℃、より好ましくは230〜300℃である。さらに好ましくは240℃〜290℃である。シリンダー温度が高すぎると樹脂の分解や劣化等が起こって強度特性が低下したり着色したりする場合があり、低すぎると成形体に残留応力が発生して複屈折が大きくなったり、キャビティ形状の転写性が悪くなったりする。金型温度は好ましくは50〜180℃、より好ましくは80〜150℃である。金型温度が高すぎると離型不良が発生したり、成形サイクルが長くなり生産性が悪くなったりする。低すぎると複屈折が大きくなったり、転写性が悪くなったりする。射出圧力は、好ましくは30〜200MPa、より好ましくは60〜150MPaである。保圧時間は、好ましくは1〜300秒間、より好ましくは5〜150秒間である。保圧時間が、長すぎると樹脂の分解、劣化等が起こり、短すぎると成形収縮が大きくなる。冷却時間は、好ましくは5〜300秒間、より好ましくは10〜150秒間である。冷却時間は、長すぎると生産性が低下し、短すぎると複屈折が大きくなったり、転写性が悪くなったりする。成形条件が上記範囲にある場合、光学素子の機械強度、複屈折、離型性、転写性、生産性等がバランスされて好適である。本発明の熱可塑性透明樹脂は耐熱分解性に優れているため、いずれの方法によっても熱劣化などによる成形不良が少なく、色調に優れた成形品を製造することができる。
【0028】
成形品の具体的な用途としては、各種導光板、各種導光体、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学フィルター、光学フィルムなど、光線を透過させて使用する光学素子をあげることができるが、特に波長405nm帯のレーザー光にも耐光性が良好であるため、これを透過させて用いる用途に最適である。射出成形では金型のキャビティ内の形状によって任意の形状にすることが出来るが、光学素子の表面に回折格子やプリズム、低反射加工といった機能性表面を賦形することも出来る。さらに具体的な用途としてはピックアップ対物レンズ、コリメートレンズ、シリンドリカルレンズ、アクロマティックレンズ、ビームエクスパンダー、レシーバーレンズといったレンズ類、光学フィルターやビームスプリッター、ハーフミラー、光ファイバー、回折格子などの光学素子が例示でき、これらの光学素子を用いる光ピックアップ装置の部材として有用である。
【0029】
一般に、射出成形により製造された光学素子には成形時の応力が残存しているため、複屈折が発生する。複屈折が大きいプラスチックレンズなどを光ピックアップ装置に用いると、スポット形状が楕円形状に変形してしまい、光情報記録媒体の記録、再生を良好に行うことができない。本発明で用いる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物から得られる成形体は複屈折が小さいので、前記光学素子は、成形手段、形状によらず、偏光を透過させる必要がある用途に最適である。偏光を透過させる用途の部材としては液晶ディスプレイ部材や、光学式情報記録用部材などがあるが、とりわけ光ピックアップ装置の部材として特に好適に用いることができる。
【0030】
波長405nm帯のレーザーを使用する光ピックアップ装置は次世代高密度光ディスクに対して用いられるが、対物レンズの開口数が0.85のBlu−ray Discと開口数が0.65のHD DVDの2種類があり、いずれの光ピックアップ装置にもこれまでのDVDやCDと互換性のあるものが求められている。これを解決するために、2つの対物レンズを使用波長で切り替えて用いる方法や、レンズ表面に鋸歯形状の回折構造を賦形することで、屈折と回折の作用を利用して収差を補正する方法、可動式のコリメーターレンズを用いる方法などが開示されている。回折作用を発揮する微細構造は、対物レンズに施してもよいし、コリメーターレンズに施す場合もある。すなわち波長405nm帯のレーザーを使用する光ピックアップ装置に用いられる光学素子の素材としては、耐光性の問題からガラスが多く用いられているが、このような複雑な形状、微細な表面構造をもっているため、本発明で用いる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を射出成形して製造することが、実用上有意義なのである。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によりその範囲を限定されるものではない。なお、熱可塑性透明樹脂および脂熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物の評価方法は次の通りである。
【0032】
評価方法
(1)共重合体中の構成単位のモル比
H―NMR(400MHz:CDCl)の測定値から計算した。
(2)水素化率
水素化反応前後のUVスペクトル測定における波長260nmの吸収の減少率により求めた。水素化反応前の樹脂の濃度Cにおける吸光度A、水素化反応後の樹脂の濃度Cにおける吸光度Aから、以下の式より算出した。
水素化率=100×[1−(A×C)/(A×C)]
(3)ガラス転移温度(Tg)
セイコー電子工業(株)製DSC220型示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、樹脂量10mg、10℃/min.の条件で測定し、中点法で算出した。
(4)曲げ試験(曲げ強さ、曲げ弾性率)
射出成形によって得られた126×12×3.2(mm)の直方体の試験片をそれぞれTgより20℃低い温度で16時間アニールし、23℃、50RH条件下にて88時間以上調湿した後に行った。曲げ強さ、曲げ弾性率はJIS K7203に従って測定した。
(5)微小異物量の測定
次に示す方法にて調整した試料を、パーティクルカウンタPacific Scientific Instruments社製HIAC ROYCO SYSTEM 8011で測定し、0.5μm以上1.0μm未満の微小異物の量をカウントした。測定試料の調整法としては、得られた光学材料用樹脂組成物のペレットをあらかじめ濾過して異物を除去したイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、表面付着物を取り除き、得られた洗浄ペレットをあらかじめ異物を除去したトルエンに溶解させて5wt%の溶液を作製して測定に供した。
(6)複屈折の測定
射出成形機ファナック製AUTOSHOT100Bを用い、50mmφ、3.2mm厚の円盤状平板を成形した。シリンダーの温度は230℃。金型温度はTgより20℃低い温度に設定、冷却時間は15秒間した。成形片にヒケがないよう計量値、保圧力、保圧時間を適宜決定して得られた円盤状平板の中央部分の位相差を日本分光製エリプソメーターM−220で測定した。測定波長は405nm、650nm、780nmの3波長を用いた。
(7)波長405nmの初期光線透過率
島津製作所製紫外可視分光光度計UV−3100PCを用いて、3.2mm厚の平板を透過法で測定した。
(8)波長405nm帯レーザーの耐光性
射出成形によって得られた3.2mm厚さの熱可塑性樹脂の平板を、空気下80℃のオーブンに入れ、ビーム径4.8mmφ、エネルギー密度500mW/cmとなるよう調整した波長405nm帯のレーザー光を照射した。2mmφ程度の部位に絞った測定が可能となるよう、光束絞り改造を施した紫外可視分光光度計で、レーザー光照射部分の光線透過率を測定し、波長405nmでの光線透過率の径時変化を追跡した。波長405nm光の透過率が0.5%減となった時点での照射時間を記録し、耐光性を評価した。耐光性を示した照射時間が300時間以上を○、300時間未満、150時間以上を△、150時間未満を×とした。
(9)プラスチックレンズの転写性
射出成形したプラスチックレンズを光学顕微鏡で観察し、ヒケ、表面の凹み、荒れなどの欠陥があるものを不良品とした。生産した100個のプラスチックレンズのうち、不良品がない場合をA、不良品が1〜10個の場合をB、不良品が11個以上の場合をCとした。
(10)プラスチックレンズの波長405nm帯レーザーの耐光性
射出成形したプラスチックレンズを空気下80℃のオーブンに入れ、エネルギー密度500mW/cmとなるよう出力を調整した波長405nm帯のレーザー光を300時間照射した。所定時間後、目視及び光学顕微鏡で観察し、照射部分の白化や表面の形状の荒れのないものを○、変化の兆候が見られるものを△、変化が確認されたものを×とした。
【0033】
実施例1
モノマー成分としてメタクリル酸メチル59.9モル%とスチレン39.9モル%、重合開始剤として2.1×10-3モル%のt−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエートからなるモノマー組成物を、ヘリカルリボン翼付き10リットル完全混合槽に1kg/時間で連続的にフィードし、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。
【0034】
重合槽液面が一定となるように、底部から重合液をギヤポンプで抜き出し、150℃に維持しながら、ベント口を備えた押出機に導入して揮発分を脱揮し、ストランド状に押出し、切断してペレットとした(樹脂A)。このとき共重合体中の構成単位のモル比(A/B)は1.5であった。
また、樹脂Aの16.4mgをクロロホルム15mLに溶解させ、測定した波長260nmの吸光度は1.093であった。
【0035】
上記、樹脂Aをジオキサンに溶解し、10wt%ジオキサン溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に10wt%ジオキサン溶液を500重量部、10wt%Pd/C(NEケムキャット社製)を1重量部仕込み、水素圧10MPaで200℃、15時間保持して水素化反応した。フィルターにより触媒を除去した後、ジオキサンを加熱留去して反応液を50wt%まで濃縮した。トルエンで再び10wt%まで希釈することを繰り返して溶媒置換し、50wt%トルエン溶液を得た。
【0036】
得られた樹脂液の一部からメタノール中に沈殿精製し、乾燥させた樹脂の62.5mgをクロロホルム5mLに溶解させて測定した波長260nmの吸光度は0.521であった。前記樹脂Aの波長260nmの吸光度、測定試料の濃度から、水素化率は96%と計算された。
【0037】
50wt%トルエン溶液を再びトルエンで10wt%まで希釈し、オクタデシル−3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを樹脂100重量部に対して0.05重量部、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4、6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールを樹脂100重量部に対して0.01重量部、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートを樹脂100重量部に対して0.02重量部添加した。
【0038】
この組成物をギヤポンプで直列に接続した2本のカートリッジ型フィルターハウジングへ送液して濾過を行った。1本目のプレフィルターとしてはPP製デプスフィルター(PTI社製ポリフロー孔径5μm)を用い、2本目の仕上げフィルターとしてPTFE製メンブランフィルター(PTI社製プロフローII孔径0.45μm)を用いた。濾過された樹脂液をタンクで昇温し、さらにギヤポンプでベント口を備えた押出機に導入して揮発分を脱揮して、ストランド状に押出した。これをクリーンブース内に設置したペレタイザで切断して熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物のペレットを得た(組成物A1)。
【0039】
組成物A1を用いて射出成形機(ファナック製AUTOSHOT100B)により、シリンダー温度260℃で種々の試験片を作製し、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第1表に示す。
【0040】
実施例2
モノマー成分としてメタクリル酸メチル80.0モル%とスチレン19.8モル%を用いた以外は製造例1と同様にして共重合体を合成した(樹脂B)。共重合体中の構成単位のモル比(A/B)は4.0であった。
【0041】
樹脂Bを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応して熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を得た(組成物B1)。水素化率は100%であった。組成物Bを用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第1表に示す。
【0042】
実施例3
モノマー成分としてメタクリル酸メチル50.7モル%、アクリル酸メチル9.3モル%とスチレン39.8モル%を用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を合成した(樹脂C)。共重合体中の構成単位のモル比(A/B)は1.6であった。
【0043】
樹脂Cを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応して熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を得た(組成物C1)。水素化率は97%であった。組成物C1を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第1表に示す。
実施例4
モノマー成分としてメタクリル酸メチル51.3モル%、スチレン48.7モル%を用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を合成した(樹脂D)。共重合体中の構成単位のモル比(A/B)は1.1であった。
【0044】
樹脂Dを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応して熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を得た(組成物D1)。水素化率は98%であった。組成物D1を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第1表に示す。
【0045】
比較例1
樹脂Aの水素化反応時間を10時間に短縮した以外は実施例1と同様にして、水素化率の異なる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物(水素化率72%、組成物A2)を得た。組成物A2を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0046】
比較例2
樹脂Bの水素化反応の時間を3時間に短縮した以外は実施例1と同様にして、水素化率の異なる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物(水素化率76%、組成物B2)を得た。組成物B2を用い、製造例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0047】
比較例3
樹脂Cの水素化反応時間を3時間に短縮した以外は実施例1と同様にして、水素化率の異なる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物(水素化率72%、組成物C2)を得た。組成物C2を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0048】
比較例4
樹脂Dの水素化反応時間を8時間に短縮した以外は実施例1と同様にして、水素化率の異なる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物(水素化率70%、組成物D2)を得た。組成物D2を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0049】
比較例5
モノマー成分としてメタクリル酸メチル20.4モル%とスチレン79.4モル%を用いた以外は実施例1と同様にして共重合体を合成した(樹脂E)。共重合体中の構成単位のモル比(A/B)は0.25であった。
【0050】
樹脂Eを用いた以外は実施例1と同様にして、水素化反応して熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を得た(組成物E1)。水素化率は95%であった。組成物E1を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0051】
比較例6
上記、実施例1において、溶液状態の組成物に対して、フィルターによる濾過を行わずに製造した以外は実施例1と同様にして、熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物を製造した(組成物A3)。組成物A3を用い、実施例1と同様にして、ガラス転移温度、曲げ強さ、曲げ弾性率、微小異物量、波長405nm、650nm、780nmにおける複屈折量(位相差)、波長405nmの初期光線透過率、波長405nm帯レーザーの耐光性を評価した。結果を第2表に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
実施例5 プラスチックレンズの成形
実施例1で作製した光学材料用樹脂組成物を用いて射出成形機(ファナック社製、AUTOSHOT100B)により、樹脂温度260℃、金型温度100℃にて、ピックアップレンズを成形した。直交させた二枚の偏光板の間に得られたレンズをおき、面光源上において観察したが、複屈折によるムラや光の抜けはほとんど見られなかった。キャビティ内形状の転写性も良好であり、耐光性も良好であった。転写性および耐光性の評価の結果を第3表に示す。
【0055】
実施例6
実施例2で作製した光学材料用樹脂組成物を用いて実施例5と同様にピックアップレンズを成形した。直交させた二枚の偏光板の間に得られたレンズをおき、面光源上において観察したが、複屈折によるムラや光の抜けはほとんど見られなかった。キャビティ内形状の転写性も良好であり、耐光性も良好であった。転写性および耐光性の評価の結果を第3表に示す。
【0056】
実施例7
実施例3で作製した光学材料用樹脂組成物を用いて実施例5と同様にピックアップレンズを成形した。直交させた二枚の偏光板の間に得られたレンズをおき、面光源上において観察したが、複屈折によるムラや光の抜けはほとんど見られなかった。キャビティ内形状の転写性も良好であり、耐光性も良好であった。転写性および耐光性の評価の結果を第3表に示す。
【0057】
実施例8
実施例4で作製した光学材料用樹脂組成物を用いて実施例5と同様にピックアップレンズを成形した。直交させた二枚の偏光板の間に得られたレンズをおき、面光源上において観察したが、複屈折によるムラや光の抜けはほとんど見られなかった。キャビティ内形状の転写性も良好であり、耐光性も良好であった。転写性および耐光性の評価の結果を第3表に示す。
【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られ、かつ、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(Bモル)に対する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(Aモル)のモル比(A/B)が1〜4である共重合体の芳香族二重結合の90%以上を水素化して得られる熱可塑性透明樹脂を含む光学材料用樹脂組成物であって、該熱可塑性透明樹脂が有機溶媒に溶解した状態で孔径0.5μm以下のフィルターによって少なくとも1回濾過されたものであることを特徴とする光学材料用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学材料用樹脂組成物を成形してなる光学素子。
【請求項3】
少なくとも波長405nm帯のレーザー光を透過させて用いることを特徴とする請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
光ピックアップ装置に組み込まれる部材である請求項3に記載の光学素子。

【公開番号】特開2008−15199(P2008−15199A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186002(P2006−186002)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】