説明

光学機器および光学機器の製造方法

【課題】より広い範囲を測光することが可能な一眼レフカメラを提供する。
【解決手段】一眼レフカメラは、対物レンズ11により焦点板21上に結像された像を観察するためのファインダー光学系20と、ファインダー光学系20の光軸O1から外れた位置においてファインダー光学系20を介して焦点板21を透過した光を測光する測光装置30とを備え、焦点板21は、対物レンズ11からの光が透過するフレネルレンズ面23を有し、フレネルレンズ面23の中心23aが測光装置30の位置に応じてファインダー光学系20の光軸O1と交差する方向へずれるようにフレネルレンズ面23を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラ等の光学機器においてフレネルレンズおよび測光装置が設けられたファインダー光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフカメラのファインダーでは、実像が形成される焦点面を観察するとともに、当該焦点面を拡散面として対物レンズで形成した実像を拡散させ、拡散光を接眼レンズの近傍に配置した測光装置に入射させて測光を行っていた。
【0003】
その構成例を図8に示しており、視野観察時は、被写体(物体)の像が対物レンズ51により焦点板上の焦点面53に結像し、図示しないペンタプリズムおよび接眼レンズを介して、アイポイントEP(眼)でその像が観察される。なお、このようなファインダーにおいて、フレネルレンズ54は、対物レンズ51の射出瞳52を通過する光をアイポイントEPへ集光させる役割がある。そして、測光装置55は、その光軸がファインダー(接眼レンズ)の光軸に対して傾斜するように接眼レンズの近傍に配置され、アイポイントEPに集光する光線の一部を測光装置55に集光させることにより、測光を行うようになっている。
【0004】
また、この種の構成として、焦点面の拡散特性を非対称にして、測光装置に十分な光を確保するようにしたカメラが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特公平1−36088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファインダーに測光装置を配置する場合、前述したように、ファインダーの光軸とずれた位置に測光装置を配置して測光するのが一般的な方法である。しかしながら、測光装置の光軸をファインダーの光軸に対して傾斜させると、測光装置に対して焦点面の光を均等に得ることが困難であり、また、焦点面の全面の光(すなわち、撮影範囲の全ての光)を得ることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、より広い範囲を測光することが可能な光学機器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る光学機器は、結像レンズにより焦点板上に結像された像を観察するためのファインダー光学系と、前記ファインダー光学系の光軸から外れた位置において前記ファインダー光学系を介して前記焦点板を透過した光を測光する測光装置とを備え、前記ファインダー光学系は、前記結像レンズからの光が透過するフレネルレンズを有し、前記フレネルレンズの中心が前記測光装置の位置に応じて前記ファインダー光学系の光軸と交差する方向へずれるように前記フレネルレンズを配置したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光学機器の製造方法は、結像レンズにより焦点板上に結像された像を観察するためのファインダー光学系と、前記ファインダー光学系の光軸から外れた位置において前記ファインダー光学系を介して前記焦点板を透過した光を測光する測光装置とを用意し、前記ファインダー光学系に、前記結像レンズからの光が透過するフレネルレンズを設け、前記フレネルレンズの中心が前記測光装置の位置に応じて前記ファインダー光学系の光軸と交差する方向へずれるように前記フレネルレンズを配置したことを特徴とする。
【0009】
なお、上述の発明において、前記フレネルレンズの中心は、前記ファインダー光学系の光軸と直角もしくは略直角な方向へずれることが好ましい。
【0010】
また、上述の発明において、前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置の配置される側へずれることが好ましい。
【0011】
また、前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置への入射光が前記測光装置上で略均等となる位置にずれていてもよい。
【0012】
また、前記測光装置が前記測光を行う測光面を有している場合には、前記フレネルレンズの中心は、前記測光面への入射光が前記測光面上で略均等となる位置にずれていてもよい。
【0013】
また、上述の発明において、前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量は、前記ファインダー光学系における視野範囲の寸法の10〜20%であることが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、前記ファインダー光学系は接眼レンズを有し、前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量をXとし、前記接眼レンズの焦点距離をfeとしたとき、次式
0<X/fe<0.2
の条件を満足することが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、前記光学機器がカメラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より広い範囲を測光することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願の好ましい実施形態について図を参照しながら説明する。本願に係る光学機器である一眼レフカメラ1が図1に示されている。この一眼レフカメラ1は、対物レンズ11と、クイックリターンミラー13と、撮影用の撮像素子14と、ファインダー光学系20とを備えて構成される。また、ファインダー光学系20は、物体側から順に光軸に沿って並んだ、焦点板21と、ペンタプリズム25と、接眼レンズ26とを有して構成され、対物レンズ11によって焦点板21上に形成(結像)された像を接眼レンズ26により観察できるようになっている。
【0018】
対物レンズ11は、被写体像を撮像素子14上もしくは焦点板21上に結像する。クイックリターンミラー13は、対物レンズ11を通る光軸に対して45度の角度で挿入されており、通常時(撮影待機状態)には、対物レンズ11を通った被写体(図示せず)からの光を反射して焦点板21上に結像させ、シャッターレリーズ時にはミラーアップ状態となって跳ね上がり、対物レンズ11を通った被写体(図示せず)からの光が撮像素子14上に結像するようになっている。すなわち、撮像素子14と焦点板21とは、光学的に共役な位置に配設される。
【0019】
なお、焦点板21とペンタプリズム25との間に、液晶表示素子24が配設される。この液晶表示素子24は、焦点板21上に結像された被写体像に焦点検出エリアマーク等の情報を重ねて表示するとともに、被写体像の外側に露出値等の種々の撮影情報を表示する。なお、液晶表示素子24は、縦横に並ぶ11個の焦点検出エリアマーク35a〜35kを図4に示すように表示する。
【0020】
ペンタプリズム25は、対物レンズ11によって結像された焦点板21上の被写体像(倒立像)からの光束が、入射面25a、第1反射面25b、最終反射面25cおよび射出面25dを順に経ることで、前記被写体像を上下左右反転して正立像にする。その結果、ペンタプリズム25は、観察者が被写体像を正立像として観察できるようにするとともに、ファインダー光学系20をコンパクトに構成できるようにしている。
【0021】
ファインダー光学系20の簡略化した構成を図2に示す。なお、図2において、液晶表示素子24、ペンタプリズム25および接眼レンズ26の図示を省略している。前述したように、ファインダー光学系20は、対物レンズ11によって焦点板21の焦点面22に結像された像を、ペンタプリズム25および接眼レンズ26を介してアイポイントEP(眼)で観察できるようになっている。
【0022】
そして、ファインダー光学系20の光軸O1から外れた接眼レンズ26の近傍には、ファインダー光学系20を介して焦点板21を透過した光を測光する測光装置30が設けられる。測光装置30は、測光レンズ31と、測光センサー32とを有して、その光軸O2がファインダー光学系20の光軸O1に対して傾斜するように構成され、焦点板21を透過してアイポイントEPに集光する光の一部を測光レンズ31を介して測光センサー32へ集光させることにより、測光を行うようになっている。
【0023】
測光センサー32は、測光を行うことが可能な測光面32a(図5を参照)を有するCCDやCMOS等の撮像素子であり、ペンタプリズム25を透過した光束による被写体像の画像信号を取得する。また、測光センサー32は、一眼レフカメラ1の作動を制御する制御装置(図1および図2において不図示)と電気的に接続されており、取得した被写体像の画像信号をこの制御装置に出力する。なお、測光センサー32による被写体像の画像信号の出力は、周期的に行うようにしてもよく、他の動作に連動して行うようにしてもよい。
【0024】
図5は、測光センサー32の詳細な構成を示す正面図である。撮像素子である測光センサー32は、マトリクス状に配列された複数の画素(光電変換素子)33(ここでは横16個×縦12個=192個)を備えている。各画素33は、図6に示すように3個の部分33a、33b、33cに分割され、これらの部分33a、33b、33cにはそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の原色フィルターが設けられている。これにより、各画素33毎に被写体像のRGB信号を出力することができる。
【0025】
また、制御装置の詳細な構成を図7に示す。図7に示す制御装置40は、CPU等から構成され、例えば、A/D変換部41と、センサー制御部42と、露出演算部43と、追尾制御部46とを備えている。A/D変換部41は、測光センサー32から出力されるアナログ画像信号を画像情報としてのデジタル画像信号に変換する。センサー制御部42は、デジタル画像信号が適切な値になるように測光センサー32の作動を制御する。具体的に述べると、センサー制御部42は、例えば、測光センサー32の最大出力が目標出力レベルとなるように蓄積時間およびアンプゲインを設定するピークAGC制御や、測光センサー32からの出力の平均レベルが目標出力レベルとなるように制御する平均AGC制御を行う。露出演算部43は、測光センサー32により取得した画像信号に基づいて露出値を演算する。
【0026】
追尾制御部46は、測光センサー32により取得した被写体像(画像信号)のうち、手動もしくは自動によりいずれかの焦点検出エリアマーク35a〜35kを重ねて設定した(被写体像における)追尾対象に対応する画像(信号)をテンプレート画像として記憶部47に記憶し、設定した追尾対象を追尾して合焦させるためのレンズ駆動量を算出する。追尾制御部46により算出されたレンズ駆動量は、対物レンズ11に設けられたレンズ駆動装置49に出力される。レンズ駆動装置49は、図示しないモータや駆動回路等を有して構成され、追尾制御部46から入力されたレンズ駆動量に基づいて対物レンズ11のフォーカシングレンズ(図示せず)を駆動し、焦点調節を行う。
【0027】
ところで、焦点板21におけるペンタプリズム25と対向する面(アイポイントEP側の面)には、図2に示すように、対物レンズ11によって被写体像が結像される焦点面22が形成される。一方、焦点板21における焦点面22と反対側の面(物体側の面)には、対物レンズ11の射出瞳12を通過する光をアイポイントEPへ集光させるフレネルレンズ面23が形成される。フレネルレンズ面23は、対物レンズ11によって焦点面21に形成される実像の光をアイポイントへ導く作用を有している。これにより、アイポイントEPで対物レンズ11の実像を周辺部まで観察することが可能になる。なお、フレネルレンズ面23は、その中心23aがファインダー光学系20の光軸O1と直角な方向に測光装置30の配置に応じてずれるように配置される。
【0028】
このような構成の一眼レフカメラ1において、視野観察時には、被写体(不図示)からの光は、対物レンズ11を通り、クイックリターンミラー13で焦点板21の方向に反射され、焦点板21のフレネルレンズ面23を透過して焦点面22に被写体像が結像される。そして、ファインダー光学系20において、焦点面22に結像された被写体像からの光は、液晶表示素子24、ペンタプリズム25および接眼レンズ26を透過してアイポイントEPに導かれ、アイポイントEPにて観察者は被写体(不図示)の実像を観察することができる。また、シャッターレリーズ時には、対物レンズ11を通った被写体(不図示)からの光は、クイックリターンミラー13がミラーアップ状態となるため、撮像素子14上に結像される。
【0029】
また、視野観察時において、ファインダー光学系20の焦点板21を透過してアイポイントEPに集光する光の一部は、測光装置30の測光レンズ31を介して測光センサー32に集光され、測光センサー32が焦点板21を透過する光を測光する。このとき、前述したように、フレネルレンズ面23は、その中心23aがファインダー光学系20の光軸O1と直角な方向に測光装置30の配置される側へずれるように配置される。
【0030】
このように、フレネルレンズ面23の中心23aを測光装置30の位置に応じてファインダー光学系20の光軸O1と交差する方向へずらすように製造することで、本実施形態によれば、焦点板21から測光装置30に到達する光を増やすことができるため、測光装置30に対して焦点面22の光を均等に得ることが可能になり、また、焦点面22の全面の光(すなわち、撮影範囲の全ての光)を得ることが可能になることから、より広い範囲を測光することが可能になる。特に、このような形態を一眼レフカメラ1に適用することで、高い効果を得ることができる。
【0031】
なお、フレネルレンズは元々集光作用を有するものだが、その集光性は強いものではない。その理由は、集光性を強めると観察者の眼を置ける範囲が著しく制約されてしまうからである。逆に、集光性を弱めすぎると観察像の明るさが低下して、フレネルレンズの本来の作用が不十分になってしまう。そのため、本実施形態のようにフレネルレンズ面23をシフトさせても、その量が適切な範囲であれば、フレネルレンズ本来の機能を保ちつつ、測光センサー32に導く光線を増やして、本願における問題を改善することができる。
【0032】
図3は、測光センサー32のXY方向の照度分布をシミュレーションしたグラフである。グラフの実線は紙面と垂直な方向(X方向とする:図2および図4を参照)の照度、破線は紙面と平行な方向(Y方向とする:図2および図4を参照)の照度を示している。また、グラフの縦軸は照度、横軸は測光センサー32上の位置を示し、0が測光センサー32の中央位置である。
【0033】
図3(a)は図4に示す従来例でのシミュレーション結果であり、図3(a)のグラフから、Y方向で、センサー中央からみて照度分布に偏りがあることがわかる。さらに、0を中心としたときに、Y方向の左右における照明範囲については、中心より右側の方が左側より広く(2倍以上)照明されていることが分かる。これは、測光装置30の光軸O2がファインダー光学系20の光軸O1に対して傾斜しているために発生する問題である。一方、図3(b)は、図2に示す本実施形態でのシミュレーション結果であり、図3(a)と比較して、フレネルレンズ面23の中心23aを測光センサー32側にずらすことにより、特にY方向の非対称性が改善され、その結果、センサー範囲(測光センサー32が光を検出できる範囲)に含まれる光の量が増加し、センサー範囲での照度が大きく改善されていることがわかる。
【0034】
ただし、フレネルレンズ面23の中心23aのずれ量を適切な範囲より大きくすると、測光装置30に対しては有利に働くが、対物レンズ11により焦点面22に形成される実像の光をアイポイントEPへ導くというフレネルレンズ本来の機能が低下するため、アイポイントEPでのファインダー視野に周辺減光やケラレ等を発生させてしまうおそれがある。そのため、ファインダー光学系20の光軸O1に対するフレネルレンズ面23の中心23aのずれ量を、ファインダー光学系20における視野範囲の寸法(イメージサークル寸法)の10〜20%に抑えることが好ましい。その範囲であれば、フレネルレンズ本来の機能低下を許容範囲にすることができる。ここで、イメージサークル寸法とは、焦点板21の結像する範囲の対角線の長さに等しく、撮像素子14の画面対角線の長さにも等しい。
【0035】
また、ファインダー光学系20の光軸O1に対するフレネルレンズ面23の中心23aのずれ量をXとし、接眼レンズ26の焦点距離をfeとしたとき、次の条件式(1)を満足することが好ましい。なお、Xはフレネルレンズ面23の中心23aとファインダー光学系20の光軸O1との間の距離であり、中心23aから光軸O1への垂線の長さをいう。
【0036】
0<X/fe<0.2 …(1)
【0037】
この条件式(1)は、接眼レンズ26の屈折力とフレネルレンズ面23のずれ量を最適にする条件式である。焦点板21とアイポイントEP(眼)との間の距離は、接眼レンズ26の焦点距離に比例する。すなわち、条件式(1)は、フレネルレンズ面23のずれ量と、焦点板21とアイポイントEP(眼)との間の距離との関係を間接的に規定するものである。条件式(1)の下限値を下回る条件である場合、フレネルレンズ面23のずれ量が小さくなり、本願の効果が得られなくなる。一方、条件式(1)の上限値を上回る条件である場合、フレネルレンズ面23のずれ量が大きくなり、アイポイントEPへ導かれる光が不十分になる。なお、本願の効果を確実にするために、条件式(1)の下限値を0.005にすることがより好ましい。
【0038】
例えば、本実施形態において、ファインダー光学系20の光軸O1と測光センサー32との間の距離をY(Yの向きについては、図2を参照)とすると、Y=9mmで、焦点距離fe=56.4mmのとき、ずれ量X=3mmと設定される。このとき、X/fe=0.053となり、条件式(1)を満たしていることがわかる。ここで、Yはファインダー光学系20の光軸O1から直角な方向に沿った距離であり、測光装置30の下端から光軸O1への垂線の長さをいう。
【0039】
なお、前述したように、フレネルレンズ面23の中心23aは、ファインダー光学系20の光軸O1と直角もしくは略直角な方向へずれることが好ましい。このようにすれば、フレネルレンズ面23をずらすことによるアイポイントEPへの影響を小さくすることができる。また、ファインダー光学系20を一眼レフカメラ1の内部へ配置する際に、焦点板21が傾斜していることによる他部品との干渉を考慮しなくても良い。
【0040】
また、前述したように、フレネルレンズ面23の中心23aは、測光装置30の配置される側へずれることが好ましい。このようにすれば、測光装置30へより多くの光を導くことができる。
【0041】
また、フレネルレンズ面23の中心23aは、測光装置30への入射光が測光装置30(測光センサー32の測光面32a)上で略均等となる位置にずれることが好ましい。このようにすれば、より正確に測光を行うことができる。なお、中心23aのずれ量は、測光装置30とファインダー光学系20の光軸O1との間の距離に応じて適切な範囲が決定される。よって、中心23aのずれ量は、測光装置30の位置と、焦点板21からアイポイントEPまでの距離との少なくとも一方に基づいて、適切な範囲が決定される。
【0042】
よって、図4に示したように、ファインダー光学系20による被写体像の観察領域に(液晶表示素子24によって)複数の焦点検出エリアマーク35a〜35kが設定される場合であっても、測光センサー32は、焦点検出エリアマーク35a〜35kに対応する領域により多くの光が導かれるので、より正確な画像信号を出力することができる。特に、図4における下側3つの焦点検出エリアマーク35i〜35kに対応する、測光センサー32の測光面32aにおける下側3分の1の領域であっても、十分正確な画像信号を出力することができる。
【0043】
なお、焦点板21の一端と測光センサー32の上端との間の距離よりも、焦点板21の他端と測光センサー32の下端との間の距離は遠く、測光センサー32の下側の領域で光量が不足がちであった。これに対し、本実施形態においては、測光センサー32の測光面32aにおける下側3分の1の領域であっても、十分正確な画像信号を出力することができるため、測光センサー32において、図4における下側3つの焦点検出エリアマーク35i〜35kに対応する領域から出力される画像信号と、それ以外の焦点検出エリアマーク35a〜35hに対応する領域から出力される画像信号との間で、出力値に大きな差を無くすことができる。なお、測光センサー32の上下方向は、図1および図2における上下方向(Y方向)に対応する。
【0044】
なお、上述の実施形態において、一眼レフカメラ1に限らず、ファインダー光学系を有した光学機器であれば本願を適用することが可能である。また、上述の実施形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本願の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【0045】
また、上述の実施形態において、ファインダー光学系20に設けられたフレネルレンズを例に説明したが、これに限られるものではなく、ストロボ等の照明装置に設けられたフレネルレンズにおいても本願を適用可能であり、具体的には、当該フレネルレンズの中心を、照明装置を構成する光学系の光軸と交差する方向へずれるように配置すればよい。
【0046】
また、上述の実施形態において、フレネルレンズ面23の中心23aについて「測光装置30の配置される側」とは、ファインダー光学系20の光路を直線状に記した光学断面図(図2)における「測光装置30の配置される側」であって、一眼レフカメラ1に搭載されている状態での「測光装置30の配置される側」(図1における右側)ではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一眼レフカメラの概略構成図である。
【図2】ファインダー光学系の模式図(光学断面図)である。
【図3】(a)は従来における測光センサーの照度分布を示す模式図であり、(b)は本実施形態における測光センサーの照度分布を示す模式図である。
【図4】焦点検出エリアマークの表示例を示す図である。
【図5】測光センサーの正面図である。
【図6】測光センサーの画素構成を示す図である。
【図7】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のファインダー光学系を示す模式図(光学断面図)である。
【符号の説明】
【0048】
1 一眼レフカメラ(光学機器) 11 対物レンズ(結像レンズ)
20 ファインダー光学系
21 焦点板 22 焦点面
23 フレネルレンズ面(23a 中心) 26 接眼レンズ
30 測光装置
31 測光レンズ 32 測光センサー(32a 測光面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズにより焦点板上に結像された像を観察するためのファインダー光学系と、
前記ファインダー光学系の光軸から外れた位置において前記ファインダー光学系を介して前記焦点板を透過した光を測光する測光装置とを備え、
前記ファインダー光学系は、前記結像レンズからの光が透過するフレネルレンズを有し、
前記フレネルレンズの中心が前記測光装置の位置に応じて前記ファインダー光学系の光軸と交差する方向へずれるように前記フレネルレンズを配置したことを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記フレネルレンズの中心は、前記ファインダー光学系の光軸と直角もしくは略直角な方向へずれることを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置の配置される側へずれることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置への入射光が前記測光装置上で略均等となる位置にずれていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の光学機器。
【請求項5】
前記測光装置は、前記測光を行う測光面を有しており、
前記フレネルレンズの中心は、前記測光面への入射光が前記測光面上で略均等となる位置にずれていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の光学機器。
【請求項6】
前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量は、前記ファインダー光学系における視野範囲の寸法の10〜20%であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項7】
前記ファインダー光学系は接眼レンズを有し、
前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量をXとし、前記接眼レンズの焦点距離をfeとしたとき、次式
0<X/fe<0.2
の条件を満足することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項8】
前記光学機器がカメラであることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項9】
結像レンズにより焦点板上に結像された像を観察するためのファインダー光学系と、
前記ファインダー光学系の光軸から外れた位置において前記ファインダー光学系を介して前記焦点板を透過した光を測光する測光装置とを用意し、
前記ファインダー光学系に、前記結像レンズからの光が透過するフレネルレンズを設け、
前記フレネルレンズの中心が前記測光装置の位置に応じて前記ファインダー光学系の光軸と交差する方向へずれるように前記フレネルレンズを配置したことを特徴とする光学機器の製造方法。
【請求項10】
前記フレネルレンズの中心は、前記ファインダー光学系の光軸と直角もしくは略直角な方向へずれることを特徴とする請求項9に記載の光学機器の製造方法。
【請求項11】
前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置の配置される側へずれることを特徴とする請求項9もしくは請求項10に記載の光学機器の製造方法。
【請求項12】
前記フレネルレンズの中心は、前記測光装置への入射光が前記測光装置上で略均等となる位置にずれていることを特徴とする請求項9もしくは請求項10に記載の光学機器の製造方法。
【請求項13】
前記測光装置は、前記測光を行う測光面を有しており、
前記フレネルレンズの中心は、前記測光面への入射光が前記測光面上で略均等となる位置にずれていることを特徴とする請求項9もしくは請求項10に記載の光学機器の製造方法。
【請求項14】
前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量は、前記ファインダー光学系における視野範囲の寸法の10〜20%であることを特徴とする請求項9から請求項13のうちいずれか一項に記載の光学機器の製造方法。
【請求項15】
前記ファインダー光学系は接眼レンズを有し、
前記ファインダー光学系の光軸に対する前記フレネルレンズの中心のずれ量をXとし、前記接眼レンズの焦点距離をfeとしたとき、次式
0<X/fe<0.2
の条件を満足することを特徴とする請求項9から請求項14のうちいずれか一項に記載の光学機器の製造方法。
【請求項16】
前記光学機器がカメラであることを特徴とする請求項9から請求項15のうちいずれか一項に記載の光学機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−3423(P2009−3423A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106072(P2008−106072)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】