説明

光学機器

【課題】操作性と焦点調節精度に優れたマニュアルフォーカスを行うことが可能な光学機器を提供すること
【解決手段】絞りユニット206を有し、手動操作部126を操作することによって第2のレンズ群204を移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカスモードを実行するカメラは、前記手動操作部の単位操作に対応する前記撮影光学系による合焦位置の移動量である単位移動量が、前記撮影光学系の最小錯乱円の径δとマニュアルフォーカスモード中の前記絞りユニットの絞り値Fと自然数または自然数の逆数としての係数との積になるように、前記手動操作部の操作量に応じて前記撮影光学系の移動を制御する制御部118を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作によってフォーカスレンズを光軸方向に移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカスモードを実行可能な光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアルフォーカス(以下、「MF」と称する場合もある)においては、フォーカスレンズを、ピントを合わせたい位置を一旦通過させることによってその位置を合焦位置として決定する。マニュアルフォーカスにおいては、少ない手動操作によって素早く合焦位置を得る需要があるため、手動操作部の単位操作に対応した合焦位置の移動量である単位移動量の設定は重要である。即ち、単位移動量が小さ過ぎれば合焦精度は向上するが、多くの手動操作が必要となるため操作性は低下する。また、単位移動量が大き過ぎれば手動操作量は少なくなるが、所望の位置にフォーカスレンズを合わせられないなど焦点調節精度が低下する。
【0003】
従来、この単位移動量(またはそれに対応するフォーカスレンズの駆動量)について、特許文献1は被写体距離に応じて設定する方法を開示し、特許文献2は微駆動量と粗駆動量の2種類を設定する方法を開示している。但し、特許文献2は具体的な駆動量については開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−142660号公報
【特許文献2】特開2011−49661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2は、マニュアルフォーカスにおける合焦位置の単位移動量(またはそれに対応するフォーカスレンズの駆動量)については深く検討しておらず、操作性と焦点調節精度の両立が困難であった。
【0006】
本発明は、操作性と焦点調節精度に優れたマニュアルフォーカスを行うことが可能な光学機器を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学機器は、光量を調節する絞りを有し、手動操作部を操作することによって物体の光学像を形成する撮影光学系を移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカスモードを実行可能な光学機器であって、前記手動操作部の単位操作に対応する前記撮影光学系による合焦位置の移動量である単位移動量が、前記撮影光学系の最小錯乱円の径とマニュアルフォーカスモード中の前記絞りの絞り値と自然数または自然数の逆数としての係数との積になるように、前記手動操作部の操作量に応じて前記撮影光学系の移動を制御する制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザがピントが合う範囲と認識する焦点深度に対応して単位移動量が設定されるので、操作性と焦点調節精度に優れたマニュアルフォーカスを行うことが可能な光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のデジタルカメラの概略断面図である。(実施例1)
【図2】図1に示すデジタルカメラのシステムブロック図である。(実施例1)
【図3】図1に示すデジタルカメラの撮影動作を示すフローチャートである。(実施例1)
【図4】図3のS3、S6の一例を説明するための平面図である。(実施例1)
【図5】図3のS8を説明するための図である。(実施例1)
【図6】図3のS9の一例を説明するための平面図である。(実施例1)
【図7】本発明のデジタルカメラの背面図である。(実施例2)
【図8】本発明のデジタルカメラの概略断面図である。(実施例3)
【図9】図8に示すデジタルカメラのシステムブロック図である。(実施例3)
【図10】図8に示す電子リングの出力から単位移動量を算出する方法を説明するための図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、レンズ交換可能なデジタル一眼レフカメラとして構成された実施例1のデジタルカメラ(光学機器、撮像装置)の断面図であり、100はカメラ本体、200はカメラ本体100に装着可能なレンズ鏡筒(交換レンズ)である。なお、本発明の光学機器は、レンズ一体型カメラやフィルム型カメラなど種類は問わない。また、光学機器は、レンズ交換可能なカメラ本体、レンズ交換可能なカメラ本体と交換レンズからなるカメラシステム、レンズ一体型のカメラなどを含む。
【0012】
カメラ本体100は、図1に示すように、主ミラー102、サブミラー104、焦点検出部106、シャッタ108、撮像素子110、ペンタプリズム112、ファインダ光学系114、モニタ(表示手段)116を有し、MFモードを実行可能である。
【0013】
主ミラー102はレンズ鏡筒200を通ってきた光束の一部をファインダ光学系114に反射すると共に一部の光束を透過する。サブミラー104は主ミラー102を透過した光束を焦点検出部106へ反射する。主ミラー102とサブミラー104は、図1に示すように光軸上に配置された非撮影時のミラーダウン状態と、光軸から退避される不図示の静止画撮影中及び動画撮影時のミラーアップ状態との間で移動可能に構成されている。なお、主ミラー102とサブミラー104がない所謂ミラーレスのカメラにも本実施例は適用可能である。
【0014】
焦点検出部106は入射光を二つの光束に分割する不図示のコンデンサレンズと光線を再結像させる二つのセパレータレンズと、結像された被写体像を光電変換するCCD等のラインセンサからなり、位相差方式によって焦点状態を検出するAFセンサである。
【0015】
シャッタ108は撮影時露光時間中に開き、それ以外の時は遮光する露光手段である。シャッタ108は、測光終了信号が出された後に露光開始のため開放される。撮像素子110は物体の光学像を光電変換するCMOSあるいはCCDなどである。ペンタプリズム112とファインダ光学系114は被写体像をユーザに被写体を不図示のファインダで視認することを可能にする。
【0016】
モニタ116は、カメラ本体100の背面に設けられ、撮像素子110から出力される信号に基づく画像や保存された画像を表示する表示部である。また、モニタ116は撮像素子から出力される信号に基づく画像(ライブビュー画像)を逐次表示することもできる。本実施例のカメラは、撮像素子110に結像した画像をモニタ116に表示して画像を確認しながらユーザに手動操作によってピント調整を行うことを可能にするライブビュー撮影モードを備えている。ライブビュー撮影モードでは、特に、被写体に素早く精度良くピント調整を行うことが求められている。
【0017】
レンズ鏡筒(交換レンズ)200は、図1に示すように、第1のレンズ群202、フォーカシング光学系(フォーカスレンズ)としての第2のレンズ群204、絞りユニット(絞り手段)206を有する。第1のレンズ群202と第2のレンズ群204は物体の光学像を形成する撮影光学系(撮影レンズ)を構成する。撮影レンズはより多くレンズ群を有してもよいし、変倍光学系のレンズ群と駆動機構を含んでいてもよい。
【0018】
焦点調節においては、第2のレンズ群204が光軸方向に移動される。第1のレンズ群202を通る光束(撮影光)は、絞りユニット206で光量が制限される。
【0019】
絞りユニット206は、カメラCPU118から送信された絞り動作命令に従い、レンズCPU201によって制御される絞り駆動部と、絞り駆動部によって駆動され開口面積を決定する絞り部とから構成され、光量を調節する。絞りユニット206は絞り値(F値)が調節可能に構成されている。なお、絞りはカメラ本体100に設けられていてもよいし、カメラ本体100とレンズ鏡筒200の両方に設けられていてもよい。
【0020】
図2は、図1に示すデジタルカメラのシステムブロック図である。
【0021】
カメラ本体100は、図2に示すように、カメラCPU(制御部)118、カメラ接点120、電源スイッチ122、レリーズスイッチ124、手動操作部126、信号処理部128、画像記録部130、撮影モード切替部132、入力部134を更に有する。
【0022】
カメラCPU118は、マイクロコンピュータで構成され、カメラ本体100の構成要素を制御する。カメラCPU118は後述するレンズCPU208と通信し、各種の情報を取得する。
【0023】
カメラCPU118は、単位移動量設定部118a、絞り値取得部118b、最小錯乱円径取得部118c、駆動量変換部118d、操作量取得部118eを有する。
【0024】
単位移動量設定部118aは、マニュアルフォーカスモード中(マニュアルフォーカスモードが選択されている場合)に手動操作部126の単位操作に対応する撮影光学系による合焦位置(ピント面)の移動量である単位移動量を設定する。本実施例では、単位移動量設定部118aは、合焦位置の単位移動量を絞り値取得部118bが取得した絞り値Fと、最小錯乱円径取得部118cが取得した最小錯乱円の径δの積Fδとして設定している。
【0025】
但し、一般には、Fδに自然数または自然数の逆数としての係数を更にかけてこれを単位移動量に設定することができる。また係数は、マニュアルフォーカスモード中に変更可能であってもよい。
【0026】
Fδは焦点深度であり、ユーザがピントが合っていると認識する範囲である。Fδを基準にすることによってフォーカスレンズがピントを合わせたい位置を通過した時に幾つ戻せばよいか(例えば、係数が本実施例のように1であれば1つもどせばよい)をユーザは容易に知ることができ、操作性と焦点調節精度の両立を図ることができる。
【0027】
絞り値取得部118bは、絞りユニット206と通信するレンズCPU208からMFモード中に光量を調節する絞りの(現在の)絞り値Fを取得する。
【0028】
最小錯乱円径取得部118cは、レンズCPU208から撮影光学系の最小錯乱円の径を取得する。最小錯乱円の径δは固定値であるので取得時期はMFモード中でなくてもレンズCPU208との初期通信時でもよい。
【0029】
駆動量変換部118dは、レンズCPU208から取得した情報に基づいて単位移動量設定部118aが設定した単位移動量を第2のレンズ群204の駆動量に変換する。なお、レンズCPU208から取得した情報は、後述するレンズ位置情報検出部214が検出する第2のレンズ群204の位置情報やズーム位置情報などであり、この変換処理には従来行われている方法を使用するために詳細な説明は省略する。
【0030】
操作量取得部118eは、手動操作部126の手動操作量を取得する。操作量は、例えば、MFにおける操作量や、焦点調節を行う領域を設定する操作量である。
【0031】
本実施例では、手動操作部126の単位操作に対応するピント面の移動量(単位移動量)が焦点深度に比例する量になるように単位移動量設定部118aで設定してから、これを駆動量変換部118eで第2のレンズ群204の実際の駆動量に変換している。しかし、合焦位置の移動量と第2のレンズ群204の駆動量との関係が分かっていれば、単位移動量を算出せずに、その関係に基づいて第2のレンズ群204の駆動量を算出してもよい。
【0032】
カメラ接点120は、レンズ鏡筒側に信号を伝達する信号伝達接点、レンズ側に電源を供給する電源用接点からなっている。
【0033】
電源スイッチ122は外部よりユーザが操作可能で、カメラCPU118を立ち上げてシステム内の各アクチュエータやセンサ等への電源供給およびシステムの動作を可能にする。
【0034】
レリーズスイッチ124は外部より操作可能な2段ストローク式のレリーズスイッチで、その信号はカメラCPU118に入力され、撮影モードによって違った制御が行われる。例えば、レリーズスイッチ124は第1ストロークスイッチがONまで操作されたことを検知すると、自動焦点調節(AF)や自動露出調整(AE)などの撮影準備動作が行われる。また、第2ストロークスイッチがONまで操作されたことを検知すると、レリーズスイッチ124は撮影動作およびデジタル画像信号の作成動作及び記録動作を行う。
【0035】
手動操作部126はマニュアルフォーカスに使用され、単位操作ごとに第2のレンズ群204を光軸方向にステップ移動させる。
【0036】
信号処理部128は、撮像素子110からのデジタル変換された出力に各種の処理を施す。画像記録部130は、信号処理部128で出力された画像データを不図示の記録媒体に記録、保存する。
【0037】
撮影モード切替部132は、ライブビュー撮影モードが選択されるとライブビュー撮影モードを設定する。
【0038】
入力部134は、ユーザが各種の情報を入力または設定するダイアル、ボタン、画面、レバーなどである。例えば、ユーザは、手動操作部126の手動操作によって第2のレンズ群204を移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカスモード(MFモード)を設定することができる。また、ユーザは、入力部134を介して焦点深度Fδに掛けられる係数を入力することができる。
【0039】
レンズ鏡筒200は、図2に示すように、レンズCPU208、レンズ接点210、駆動部212、レンズ位置情報検出部214を更に有する。
【0040】
レンズCPU208は、カメラCPU118と通信を行うと共に、レンズ鏡筒200の各部を制御する。レンズ接点210は、カメラ本体100から信号を伝達される信号伝達接点、カメラ本体100側から電源を供給される電源用接点からなっている。
【0041】
駆動部212は、第2のレンズ群204を光軸方向に駆動する。レンズ位置情報検出部214は、第2のレンズ群204の移動量を検出し、エンコーダから構成されている。
【0042】
次に、図3は、カメラCPU118によって実行される、マニュアルフォーカスにおけるカメラの動作について説明するフローチャートであり、「S」はステップ(工程)の略である。図3に示すフローチャートは、コンピュータに各ステップ(手順)を実行させるためのプログラムとして具現化可能であり、本実施例ではカメラCPU118に設けられた不図示のメモリにソフトウェアとして格納されている。
【0043】
カメラ本体100の電源スイッチ122がONにされると(S1)、カメラCPU118は、撮影モード切替部132によって撮影モードがライブビュー撮影モードが設定されているか否かを判断する(S2)。なお、本実施例では、ライブビュー撮影モードにおいて第2のレンズ群の単位移動量を設定する効果が大きいためS2を設けているが、ファインダによる被写体観察時でも同様の効果を得ることができるので、S2を設けるかどうかは必須ではない。
【0044】
カメラCPU118は、ライブビュー撮影モードが設定されていなければ(S2のNO)、その他のモードに応じた処理を実行し(S12)、S2に戻る。一方、カメラCPU118は、ライブビュー撮影モードが設定されていれば(S2のYES)、ライブビュー画像をモニタ116に表示する(S3)。
【0045】
次に、カメラCPU118は、MFモードになっているか否かを判断する(S4)。カメラCPU118は、MFモードになっていなければ(S4のNO)、S12へと進み、MFモードになっていれば(S4のYES)、レリーズスイッチ124の第2ストロークスイッチがONか否かを判断する(S5)。
【0046】
カメラCPU118は、レリーズスイッチ124の第2ストロークスイッチがONであれば(S5のYES)、シャッタ108を開放して露光を行い(S10)、露光により撮像素子110に撮像された画像を画像記録部130に記録し(S11)、S2に戻る。
【0047】
一方、カメラCPU118は、レリーズスイッチ124がOFFであれば(S5のNO)、手動操作部126による焦点領域の選択操作がなされたかどうかを判断し(S6)、なされていなければ(S6のNO)、S4に戻る。
【0048】
図4(a)は、S6を説明するための平面図である。116Aはモニタ116としての表示機能と手動操作部126としてのタッチパネル機能を備えたタッチパネルモニタである。図4(a)ではS3において表示される等倍表示のライブビュー画像A1において、タッチパネル操作によってピントを合わせたい領域A2が選択および設定されている。領域A2は、設定されると、まず、その輪郭の点線がユーザに表示され、次に、図4(b)に示すように、拡大表示される。これにより、焦点調節が容易になる。
【0049】
カメラCPU118は、手動操作部126による焦点領域の選択操作がなされた場合には(S6のYES)、レンズCPU208から絞り値と第2のレンズ群204の位置の情報を取得する(S7)。
【0050】
次に、カメラCPU118の単位移動量設定部118aは、取得した情報に基づいて第2のレンズ群204の単位操作に対する単位移動量を算出する(S8)。ここでは、入力部134による係数の入力がない(係数が1)と仮定して、カメラCPU118は、ピント面の単位移動量を絞り値Fと最小錯乱円の径δから算出された焦点深度Fδと設定する。
【0051】
図5は、S8を説明するための図である。絞り値Fは、焦点距離を撮影レンズの有効口径で割った値であり、撮影レンズの明るさを表わす。この明るさは絞り値Fの自乗に反比例し、数値が大きくなるほど暗くなる。最小錯乱円径δは、デジタルカメラにおいて点像であると判断することができるボケの径である。焦点深度Fδは、写真画像として鮮明に撮影することができる範囲である。つまり、ピント面をFδ動かして初めて撮影像のピントがずれたことが認識できる。
【0052】
図5に示すように、絞り値がF>Fであるとき焦点深度の関係はFδ>Fδとなる。絞り値がFの時にはピント面をFδだけ移動してピント面がずれたことが認識でき、絞り値がFの時にはピント面をFδより小さい値であるFδだけ移動してピント面がずれたことが認識できる。
【0053】
そのため、絞り値Fが大きい場合、つまり焦点深度Fδが大きい場合には、ピント面移動量が大きい方がピント調整は行いやすく、絞り値Fが小さい場合、つまり焦点深度Fδが小さい場合には、ピント面移動量が小さい方がピント調整は行いやすい。
【0054】
また、カメラCPU118の駆動量変換部118dは、レンズ位置情報検出部214の検出結果に基づいて単位移動量を第2のレンズ群204の駆動量(移動量)に変換する(S8)。
【0055】
次に、カメラCPU118の操作量取得部118eは、ユーザによる手動操作部126の操作量を取得し、この操作量にS8で取得した駆動量を掛けることによって第2のレンズ群204の駆動量を算出する。そして、カメラCPU118は、手動操作部126の単位操作毎にピント面を所定量Fδだけ移動させてMFを行って(S9)、S4へ戻る。
【0056】
図6はS9の一例を説明するための平面図である。126A1、126A2は、手動操作部126として機能するタッチパネルモニタ116A上のタッチパネル領域である。ユーザが、タッチパネル領域126A1を1回タッチするとピント面が無限側へ単位移動量だけ移動され、タッチパネル領域126A2を1回タッチするとピント面が至近側へ単位移動量だけ移動される。
【0057】
本実施例のデジタルカメラは、電源スイッチ122がOFFにされるまで上記動作を繰り返し、OFFにされるとカメラCPU118とレンズCPU201との通信が終了し、カメラ本体100及びレンズ鏡筒200への電源供給が終了する。
【0058】
本実施例によれば、1回の手動操作により、焦点深度Fδだけピント面が移動するのでピント面が移動したと認識できる最小単位毎にMFが実施でき、操作性が向上する。
【0059】
上述したように、入力部134を介して単位移動量はFδの自然数倍に設定することができる。これにより、少ない手動操作によって所望の合焦位置を素早く取得することができ、操作性が向上することができる。また、単位移動量はFδの自然数の逆数とすることができ、合焦精度と高めることができる。例えば、ユーザは入力部134を介して係数を1/2に設定した場合、2回のステップ移動によってピント面がFδだけ移動することをユーザは認識するため、これを認識できない従来技術よりも操作性が向上している。
【0060】
更に、入力部134を操作することによって単位移動量を途中で変更することもできる。現在位置が所望のピント位置から離れていれば単位移動量を大きく設定して現在位置がピント位置に近くなったときに単位移動量を小さく設定するなどである。これにより、操作性と合焦精度の両立を図ることができる。
【0061】
本実施例によれば、ライブビュー撮影モードにおいて、タッチパネルの単位操作毎に焦点深度に応じた単位所定量のピント調整が可能であるため、所望するピント面へのピント調整が操作性良く行える。
【実施例2】
【0062】
実施例2のデジタルカメラの構成は図1〜図3に示すものと同様であるが、手動操作部126の例としてタッチパネルの代わりにクリック式ダイアルを使用している点で実施例1と相違している。クリック式ダイアルは、単位回転操作毎にユーザにクリック感を与えると共に単位回転角度ごとに固定されるように構成されている。
【0063】
図7は、実施例2のデジタルカメラの背面図である。クリック式ダイアル126Bは表示部116の横に設けられている。MF操作は、図3のS7で算出された焦点深度Fδをピント面の単位移動量とし、クリック式ダイアル126Bの1クリックの回転角度に対応させる。そして、クリック式ダイアル126Bを反時計回りに回転した場合を無限側へ、時計回りに回転した場合を至近側へ対応させる。なお、クリック式ダイアル126Bの位置はカメラの背面に限定されず、側面など他の場所に設けられてもよい。
【0064】
本実施例によれば、クリック式ダイアル126Bの単位操作毎に焦点深度に応じた単位移動量の焦点調節が可能であり、操作性が向上している。
【実施例3】
【0065】
図8と図9は実施例3のデジタルカメラの概略断面図とシステムブロック図であり、図1と図2と同様の部材には同様の参照符号を付している。100Aはカメラ本体、200Aはカメラ本体100Aに着脱可能なレンズ鏡筒である。
【0066】
実施例1のデジタルカメラは手動操作部126がカメラ本体100側に設けられているが、実施例3のデジタルカメラはレンズ鏡筒200A側に設けられている点で相違している。カメラCPU118の動作は図3と同様であるので説明を省略する。
【0067】
本実施例の手動操作部は、撮影光学系を収納したレンズ鏡筒200A(の外周)に回転可能に固定された電子リング220として具現化されている。電子リング220の回転操作により、第2のレンズ群204が駆動される。電子リング220は、回転に伴って図10(a)に示すパルス信号を出力し、パルス信号のパルス数に応じて第2のレンズ群204が駆動される。図10(a)は、電子リング220の回転に伴って互いに位相が90度ずれた2つの矩形波U1、U2が出力されている。
【0068】
カウントされるパルス信号間隔は非常に短く、電子リング220の回転に伴って出力される単パルスに対して単位操作のための所定量を割り当てることは困難である。
【0069】
図10(b)は、この場合の単位移動量の算出方法を説明するための図である。本実施例は、連続して出力される複数のパルス信号U1、U2に単位移動量Fδを割り当てている。図10(b)では、一例として、パルス信号U1の立ち上がりから3つ目の立ち下りまでの期間にFδを割り当てているが、パルス信号U2を利用してもよいし、パルス信号U1の立ち上がりとパルス信号U2の立ち上がりなど両方の信号を使用してもよい。
【0070】
また、電子リング220の反時計回りの回転を無限側に、時計回りの回転を至近側に割り当てている。また、ユーザは単位操作を行ったか否かを電子音や振動などにより感知することができる。
【0071】
本実施例によれば、電子リング220の単位操作毎に焦点深度に応じた単位移動量の焦点調節が可能であり、操作性が向上している。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
光学機器はカメラの用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
118…カメラCPU(制御部)、118b…絞り値取得部、118c…最小錯乱円径取得部、126…手動操作部、206…絞りユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量を調節する絞りを有し、手動操作部を操作することによって物体の光学像を形成する撮影光学系を移動させて焦点調節を行うマニュアルフォーカスモードを実行可能な光学機器であって、
前記手動操作部の単位操作に対応する前記撮影光学系による合焦位置の移動量である単位移動量が、前記撮影光学系の最小錯乱円の径とマニュアルフォーカスモード中の前記絞りの絞り値と自然数または自然数の逆数としての係数との積になるように、前記手動操作部の操作量に応じて前記撮影光学系の移動を制御する制御部を有することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記撮影光学系はフォーカスレンズを含み、
前記制御部は、前記手動操作部の操作に応じて前記絞りの絞り値と前記フォーカスレンズの位置情報とを取得し、前記取得した前記絞りの絞り値及び前記フォーカスレンズの位置と前記撮影光学系の最小錯乱円の径と前記手動操作部の操作量とに基づいて前記フォーカスレンズの移動を制御することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記係数が入力される入力部を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記係数は前記マニュアルフォーカスモード中に変更可能であることを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項5】
前記撮影光学系が形成する前記光学像を光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子から出力される信号に基づく画像を表示する表示部と、
を更に有し、
前記撮像素子から出力される信号に基づく画像を前記表示部に逐次表示して撮影するライブビュー撮影モードにおいて、前記制御部は前記絞り値を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項6】
前記表示部は、焦点調節を行う領域を設定するタッチパネル機能を有することを特徴とする請求項5に記載の光学機器。
【請求項7】
前記表示部は、設定された前記焦点調節を行う領域を拡大表示することを特徴とする請求項6に記載の光学機器。
【請求項8】
前記手動操作部は前記表示部に表示された所定の領域に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の光学機器。
【請求項9】
前記手動操作部はダイアルであり、前記単位操作は前記ダイアルの回転操作であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項10】
前記手動操作部は、前記撮影光学系を収納したレンズ鏡筒に回転可能に設けられた電子リングであり、前記操作は前記電子リングの回転操作であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項11】
前記光学機器は、カメラ本体と前記カメラ本体に装着可能な交換レンズとを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−61584(P2013−61584A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201293(P2011−201293)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】