説明

光学活性β−ケトニトリル化合物およびその製造方法

【課題】新規な光学活性β−ケトニトリル化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】シアノ化触媒存在下に、α、β−不飽和化合物とシアニドドナーとを反応させて、一般式(1)の新規な光学活性β−ケトニトリル化合物を製造する。


(R1、R2は分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)シアノ化触媒は、例えばRu[(S)−phenylglycine][(S)−binap]と金属化合物の塩とを反応させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学活性β−ケトニトリル化合物類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性β−ケトニトリル化合物類は、各種光学活性医薬品などの有用物質合成において鍵となる重要中間体である。その代表的な合成法の一つとしてα、β−不飽和カルボニル化合物類へのシアノ基の触媒的不斉共役付加反応があり、種々不斉配位子を用いる検討がなされており(特許文献1、非特許文献1及び2参照)、高いエナンチオ選択性も報告されている。
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1、非特許文献1及び2に記載の技術の場合、多量((基質/触媒)で表される比が1〜100)の触媒を必要とする、反応温度が低い、触媒の調製が煩雑である、触媒が不安定である等工業化には問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/100086
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc.,2003,125(15),4442-4443
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc.,2004,126(32),9928-9929
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、新規な光学活性β−ケトニトリル化合物を提供すること、及び光学活性β−ケトニトリル化合物の効率の良い製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、新規な光学活性β−ケトニトリル化合物の製法を開発するとともに、従来、効率的な合成が困難であった医農薬重要中間体として有用な新規な光学活性β−ケトニトリル化合物を合成するに至った。
すなわち本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で表される新規な光学活性β−ケトニトリル化合物である。
【化1】

一般式(1)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、一般式(1)中、R1が、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有するアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物である。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態は、一般式(1)中、R1が、下記の群から選択されるいずれかの基を表す、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物である。
【化2】

【0010】
本発明の更に別の好ましい実施形態は、一般式(1)中、R2が、メチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ヘキシル基及びシクロヘキシル基からなる群より選択されるいずれかの基を表す、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒の存在下に、
【化3】

(一般式(2)中、R3〜R6は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R3とR4及び/又はR5とR6が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R7〜R10は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R7とR8及び/又はR9とR10が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R11およびR12は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【0012】
【化4】

(一般式(3)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程;および
前記工程で得られた反応生成物中に金属化合物の塩を加え反応させる工程を含むことを特徴とする、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒と、金属化合物の塩とを反応させて得られるシアノ化触媒の存在下に、
【化5】

(一般式(2)中、R3〜R6は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R3とR4及び/又はR5とR6が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R7〜R10は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R7とR8及び/又はR9とR10が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R11およびR12は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【0014】
【化6】

(一般式(3)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程を含むことを特徴とする、上記一般式(1)で表される新規な光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
本発明の好ましい実施形態は、上記一般式(2)におけるMが二価ルテニウムである、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
また、本発明の別の好ましい実施形態は、上記一般式(2)におけるWが1,1'-ビナフチル基又は1,1'-ビフェニル基である、上記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、新規な光学活性β−ケトニトリル化合物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、上記一般式(1)で表される新規な光学活性β−ケトニトリル化合物である。まず、この一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法において用いられるシアノ化触媒について説明する。
本発明では、下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒を用いてもよく、あるいは、第1の触媒としてこの一般式(2)で表されるシアノ化触媒を用い、第2の触媒として金属化合物の塩を用い、これらを反応させて得られたシアノ化触媒を用いてもよい。これらのシアノ化触媒は、本発明の新規な光学活性β−ケトニトリル化合物を製造するための触媒として好適に用いられる。
以下、第1の触媒および第2の触媒の順に説明し、更に、これらを用いた新規な光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法について説明する。
【0017】
<第1の触媒>
第1の触媒は、一般式(2)で表される。
【化7】

一般式(2)中、R3〜R6は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R3とR4及び/又はR5とR6が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよい。
3〜R6の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、フェニルアルキルなどの炭化水素基が挙げられる。特に、R3〜R6としてフェニル基、トリル基およびキシリル基が好ましい。R3〜R6が有する置換基の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などが挙げられ、これらの基は許容される各種の置換基を有してもよい。特に、置換基として水素原子、p-メチル基および3,5−ジメチル基が好ましい。
【0018】
3とR4(またはR5とR6)が炭素鎖環を形成する場合には、この炭素鎖上にアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基等の許容される各種の置換基が置換されたものを用いてもよい。R3〜R6としては、フェニル、p-トリル、m-トリル、3,5-キシリル、p-tert-ブチルフェニル、p-メトキシフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル基が好ましい。
【0019】
7〜R10は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R7とR8及び/又はR9とR10が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよい。
7〜R10の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール基が好ましい。特に、R7〜R10としては、R7とR9が水素原子であり、R8とR10がフェニル基であることが好ましい。
7〜R10が有する置換基の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基が挙げられる。特に、置換基として水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましい。
【0020】
7とR8(またはR9とR10)が炭素鎖環を形成する場合には、この炭素鎖上にアルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基等の許容される各種の置換基が置換されたものを用いてもよい。R7〜R10として、R7とR9が水素原子であり、R8とR10がフェニル基であることが好ましい。
【0021】
11およびR12は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。
11およびR12の具体例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、フェニルアルキルなどの炭化水素基が挙げられる。特に、R11およびR12として水素原子が好ましい。R11およびR12が有する置換基の具体例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基が挙げられる。特に、置換基として水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましい。
【0022】
一般式(2)におけるWの結合鎖としては、2価の炭化水素鎖(例えば、-CH2-、-(CH22-、-(CH23-、-(CH24-等の直鎖状炭化水素鎖;-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-などの分岐を有する炭化水素鎖;-C64-、-C610-などの環状炭化水素など)、2価のビナフチル、2価のビフェニル、2価のパラシクロファン、2価のビピリジン、2価の環状複素環などが挙げられる。このうち、置換基を有していてもよく2位または2'位がそれぞれホスフィンに結合した1,1'-ビナフチル基または1,1'-ビフェニル基が好ましい。また、これらの結合鎖は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ基などの許容される各種の置換基をしていてもよく、置換基同士が炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などを介して結合していてもよい。またWは光学活性を有していることが好ましい。例えば、Wが1,1'-ビナフチル基を含む場合には、(R)-1,1'-ビナフチル基又は(S)-1,1'-ビナフチル基であることが好ましく、Wが1,1'-ビフェニル基を含む場合には(R)-1,1'-ビフェニル基又は(S)-1,1'-ビフェニル基であることが好ましい。
【0023】
なお、Wを含む2座配位子であるジホスフィン誘導体(R12P-W-PR34)がMに配位していることから、Wの好ましい具体例として、このジホスフィン誘導体を例示する。即ち、ジホスフィン誘導体としてはBINAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル)、TolBINAP(2,2' -ビス[(4-メチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)、XylBINAP(2,2' -ビス[(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)、2,2' -ビス[(4-t-ブチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(4-イソプロピルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(ナフタレン-1-イル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、2,2' -ビス[(ナフタレン-2-イル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル、BICHEMP(2,2' -ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)-6,6'-ジメチル-1,1' -ビフェニル)、BPPFA(1-[1,2-ビス-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルアミン)、CHIRAPHOS(2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、CYCPHOS(1-シクロヘキシル-1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)、DEGPHOS(1-置換-3,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ピロリジン)、DIOP(2,3-イソプロピリデン-2,3-ジヒドロキシ-1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)、SKEWPHOS(2,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン)、DuPHOS(置換-1,2-ビス(ホスホラノ)ベンゼン)、DIPAMP(1,2-ビス[(o-メトキシフェニル)フェニルホスフィノ]エタン)NORPHOS(5,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-ノルボルネン)、PROPHOS(1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)、PHANEPHOS(4,12-ビス(ジフェニルホスフィノ)-[2,2']-パラシクロファン)、置換-2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビピリジン、SEGPHOS((4,4' -ビ-1,3-ベンゾジオキソール)-5,5'-ジイル-ビス(ジフェニルホスフィノ))、BIFAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスファニル)-1,1'-ビジベンゾフラニル)などが例示される。
特に、上記ジホスフィン誘導体としてBINAP(2,2' -ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル)、TolBINAP(2,2' -ビス[(4-メチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)およびXylBINAP(2,2' -ビス[(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィノ] -1,1'-ビナフチル)が好ましい。
【0024】
一般式(2)におけるXおよびYは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、かつそれぞれ置換基を有していてもよい結合鎖である。但し、X及び/又はYは存在しなくともよい。
XおよびYの具体例としては、2価の炭化水素鎖(例えば、-CH2-、-(CH22-、-(CH23-、-(CH24-等の直鎖状炭化水素鎖;-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-などの分岐を有する炭化水素鎖;-C64-、-C610-などの環状炭化水素など)、2価の環状複素環、ヘテロ原子、ヘテロ原子を含むアルキル鎖などが挙げられる。
なお、X及び/又はYが存在しない場合とは、例えば以下の一般式(II)の化合物のように、C=とC(R7)R8とが直接結合しているような場合をいう。
【0025】
一般式(2)におけるMは金属又は金属イオンを示す。Mの具体例としては、Ru、Fe、Pd、Rh、Coなどが挙げられる。特に、Mとして二価ルテニウムが好ましい。
一般式(2)中、Mの各配位子がどのように配置されていてもよいということは、Mに結合しているN、P、O、Oの位置が任意であることを意味する。例えば、一般式(2)においてOとOがMをはさんで向かい合っているが、例えば、OとN、OとPが向かい合った配置でもよい。
第1の触媒の具体例としては、例えば、一般式(II)
【0026】
【化8】

で表される化合物(Ru[(S)-phenylglycine]2[(S)-binap])が挙げられる。
第1の触媒の製造方法としては、WO2008-099965A1に記載の方法を挙げることができる。
【0027】
<第2の触媒>
第2の触媒は、金属化合物の塩であり、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム及びランタノイドの群から選ばれる1種以上の塩、及び/又はアンモニウム塩から選ばれる。第2の触媒は、第1の触媒の共触媒である。
リチウムの塩としては、LiOR (R:アルキル、アルケニル又はアリール)、LiR (R:アルキル、アルケニル又はアリール)、ハロゲン化リチウム(LiF, LiCl, LiBr, LiI)、LiClO4、Li(OTf)、Li(OAc)、LiCN、Li2CO3等が挙げられるが、その他の塩でもよい。又、上記特開2006-219457号公報に記載のリチウム塩を用いることもできる(特開2006-219457号公報の段落0008)。特に、LiOC6H5、LiCl及びLiClO4が好ましい。
ナトリウム、カリウム、セシウムの塩としては、上記したリチウム塩に対応するものを用いることができる。マグネシウムの塩としてはマグネシウムトリフラートが挙げられ、ランタノイドの塩としては、イッテルビウムトリフラートが挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば塩化テトラブチルアンモニウム等の有機アンモニウム塩が挙げられる。
本発明で用いることができるシアノ化触媒の一態様は、アキラルな塩(第2の触媒)に加え、光学活性な錯体(第1の触媒)も触媒に用いるため、光学活性な生成物を得ることができる。一方、LiCl等のアキラルな塩だけを触媒として用いる場合(例えば特開2006-219457号公報記載の触媒)、生成物は全てラセミ体(すなわち0% ee)となる。
すなわち、LiCl等のアキラルな塩だけを触媒とするとアキラルな反応が生じるが、本発明においては不斉反応を生じさせることができる。
【0028】
<光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法>
本発明の別の実施形態は、第1の触媒の存在下、上記一般式(3)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程およびこの工程で得られた反応生成物中に第2の触媒を加え反応させる工程を有する、下記一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
更に、本発明の別の実施形態は、第1の触媒と第2の触媒を反応させて得られた触媒の存在下、上記一般式(3)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程を有する、下記一般式(1)で表される新規な光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法である。
【0029】
【化9】

一般式(1)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。
【0030】
1、R2における環状アルキル基、環状アルケニル基、アリール基、あるいは複素環は、更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ等の許容される各種の置換基を有していてもよい。
1、R2における鎖状アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル等の分岐を有さないものや、イソプロピル、sec−ブチル等の分岐を有するものなどが挙げられる。特に、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数4以上の鎖状アルキル基、例えば、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルなどが好ましく挙げられ、R2としては、メチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ヘキシルなどが好ましく挙げられる。
1、R2における環状アルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等が好ましく挙げられる。
1、R2におけるアルケニル基としては、例えばエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、プロペニル基などが挙げられる。特に、R1としては、
【化10】

が好ましく挙げられる。
【0031】
1、R2におけるアリール基としては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が挙げられる。特に、R1、R2としては、置換基を有するフェニルが好ましく、
【化11】

がより好ましく挙げられる。
1、R2における複素環としては、例えばピロール、チオフェン、フラン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール等の5員環骨格を有するものや、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン等の6員環骨格を有するものが挙げられる。特に、R1としては、
【化12】

が好ましく挙げられる。
【0032】
一般式(1)中、R1は、下記置換基群から選択されるいずれかの基を表すことが好ましい。
【化13】

一方、一般式(2)中、R2は、メチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ヘキシル及びシクロヘキシルからなる群より選択されるいずれかの基を表すことが好ましい。
なお、一般式(1)中、R1が置換基を有しないフェニルを表す場合、R2は、分岐を有していてもよい炭素数3以上の鎖状アルキル基、例えば、n-プロピル、i-プロピル、n-ヘキシルなどや、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基を表すことが好ましい。
【0033】
本発明においては、特に、以下の構造式で表される光学活性β−ケトニトリル化合物が好ましい。
【化14】

【0034】
本願において、「シアニドドナー」とは、反応系内においてシアンイオン(CN-)又はシアン化水素を生じる化合物と定義される。
本発明で用いられるシアニドドナーとしては、HCN、及びNaCN、KCN等のシアン化化合物、トリメチルシリルシアニド、ジ−t−ブチルメチルシリルシアニド、ジフェニル−t−ブチルシリルシアニドなどが挙げられる。
【0035】
基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物(式中、R1及びR2は一般式(1)と同義である)を用いることができる。
【化15】

基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物の代表例としては、以下の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
【化16】

【0037】
本発明におけるシアノ化触媒に対するα、β−不飽和カルボニル化合物のモル比S/C(Sは基質であるα、β−不飽和カルボニル化合物、Cは触媒)は1〜1,000,000が好ましく、1〜100,000がより好ましい。また、α、β−不飽和カルボニル化合物に対するシアニドドナーのモル比は1〜3が好ましく、1〜1.5がより好ましい。
【0038】
光学活性β−ケトニトリル化合物を製造するためのシアノ化反応は、アルゴンなどの不活性雰囲気下、常圧で行うのが好ましい。
また、シアノ化反応は、無溶媒であっても反応溶媒中であっても進行する。反応溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド(DMSO)などヘテロ原子を含む溶媒が挙げられる。なお、本発明におけるシアノ化触媒を溶解させて反応に用いる際、上記したのと同様の溶媒を用いることができる。
【0039】
反応温度は特に限定されないが、-78〜50℃が好ましく、-70〜40℃がより好ましい。反応時間は基質の種類などによって異なるが、多くの場合は1分〜12時間の範囲である。反応終了後に反応混合液から光学活性β−ケトニトリル化合物を採取する方法としては、蒸留や抽出を採用すればよい。
光学活性β−ケトニトリル化合物は、上述したシアノ化触媒の存在下、α、β−不飽和カルボニル化合物とシアニドドナーとを反応させることにより対応する光学活性β−ケトニトリル化合物を製造することができる。具体的には、例えば、α、β−不飽和カルボニル化合物とシアニドドナーを入れた容器へ、シアノ化触媒を有機溶媒に溶解して得た触媒溶液又はシアノ化触媒の固形物(触媒固形物)を加えて撹拌することにより、α、β−不飽和カルボニル化合物とシアニドドナーとを反応させることができる。
ここで、α、β−不飽和カルボニル化合物が油状の場合、α、β−不飽和カルボニル化合物とシアニドドナーとを入れた無溶媒の容器へ、触媒溶液又は触媒固形物を加えて反応させてもよい。また、α、β−不飽和カルボニル化合物が固体の場合、α、β−不飽和カルボニル化合物とシアニドドナーと反応溶媒とを入れた容器へ、触媒溶液又は触媒固形物を加えて反応させてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明において使用した分析方法の詳細を以下に示す。
(i)ヘリウムキャリアガスを用いてShimadzuGC−17AまたはGC−2010装置により、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施した。
(ii)JEOL JNM−EX270またはJNM−A400分光計によりNMRスペクトルを得た。
(iii)DEPT実験によって炭素多重度を測定した。
(iv)JASCO DIP−360偏光計で旋光度を測定した。
(v)北海道大学機器分析センターにおいて質量分析測定を実施した。
【0041】
20mM LiOPh溶液の調整
アルゴン雰囲気下、10ml二口フラスコ中で、リチウムフェノキシド(1.0M、0.2ml、Aldrich)を脱水THF(9.8ml、関東化学)で希釈した。
【0042】
下記構造式(但し、Ar=C65)で表されるルテニウム錯体(S,S,S)−3aは従来報告されている方法により調製した。
【化17】

【0043】
実施例1
2−メチル−4−オキソ−4−フェニルブチロニトリル(2a)の合成
攪拌子を付した50mlシュレンクフラスコに、アルゴン雰囲気下、メタノール(48.1mg、1.5ミリモル)を加え、0℃に冷却した後にトリメチルシリルシアニド(149.1mg、1.5ミリモル)を滴下し、15分間攪拌した。次いで、脱水t−ブチルメチルエーテル(関東化学株式会社)(6mL)、ルテニウム錯体(S,S,S)−3aのTHF溶液(20mM、100μl)、20mM LiOPh(100μl、前記調整)を加え、同温度(0℃)で30分間攪拌した後、1−フェニル−2−ブテン−1−オン(1a)を5分かけて滴下し、5時間反応させ、標題化合物(2a、収率;94%、光学純度;99.8%e.e.)を得た。
【0044】
実施例2〜15
以下に示すような出発原料を使用し、以下に示すような製造条件を用いた以外は、実施例1と同様にして様々な光学活性β−ケトニトリル化合物を製造した。
ただし、実施例2〜4に関しては、実施例1の3倍スケールにて実施した。
【化18】

【0045】
不斉シアノ化生成物の分析データ
上記で製造した光学活性β−ケトニトリル化合物の分析データを以下に示す。
【0046】
(+)−3−メチル−2−(2−オキソ−2−フェニルエチル)ブチロニトリル(2b)
【化19】

[α]D25 = +8.0 (c = 0.93, CHCl3)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.11 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 1.14 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 1.93-2.01 (m, 1H, CH(CH3)2), 3.22 (dd, J = 5.7, 16.6 Hz, 1H, C=OCHH), 3.23-3.30 (m, 1H, CHCN), 3.40 (dd, J = 6.8, 16.6 Hz, 1H, C=OCHH ), 7.48-7.52 (m, 2H, aromatic H), 7.60-7.64 (m, 1H, aromatic H), 7.95-7.98 (m, 2H, aromatic H)
13C NMR (67.7 MHz, CDCl3): δ = 18.1 (CH3), 20.7 (CH3), 29.4 (CH), 33.0 (CH), 38.5 (CH2), 120.4 (C), 127.7 (CH), 128.5 (CH), 133.4 (CH), 135.6 (C), 195.3 (C)
HRMS (ESI): m/z calcd for C13H15ClNO: 236.08422 ([M+Cl]-); found: 236.08468
Chiral GC analysis:column, CHIRALDEX G-TA (0.25 mm x 30 m); carrier gas: helium (124 kPa); column temp: 170 °C; tR of minior-2: 19.0 min (2.2%), tR of major-2: 19.6 min (97.8%); 96% ee.
【0047】
(−)−2−(2−オキソ−2−フェニルエチル)オクタンニトリル(2d)
【化20】

[α]D27 = -12.6 (c = 0.97, CHCl3)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.43 (t, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 1.31-1.42 (m, 6H), 1.47-1.70 (m, 4H), 3.23 (dd, J = 6.4, 16.6 Hz, 1H, C=OCHH), 3.25-3.32 (m, 1H, CHCN), 3.41 (dd, J = 5.9, 16.6 Hz, 1H, C=OCHH), 7.45-7.52 (m, 2H, aromatic H), 7.60-7.63 (m, 1H, aromatic H), 7.95-7.97 (m, 2H, aromatic H)
13C NMR (67.7 MHz, CDCl3): δ = 13.9 (CH3), 22.4 (CH2), 26.2 (CH), 27.1 (CH2), 28.6 (CH2), 31.4 (CH2), 31.9 (CH2), 40.1 (CH2), 121.9 (C), 128.0 (CH), 128.7 (CH), 133.7(CH), 135.8 (C), 195.3 (C)
HRMS (ESI): m/z calcd for C16H21NONa: 266.15154 ([M+Na]+); found: 266.15183
Chiral HPLC analysis: column, CHIRALCEL OJ-H; eluent, hexane : 2-propanol = 90 : 10; flow, 1.0 mLmin-1; column temp: 40 °C; detection: UV 254 nm; tR of minior : 8.3 min (3.4%), tR of major: 9.8 min (96.6%); 93% ee.
【0048】
2−シクロヘキシル−4−オキソブチロニトリル(2e)
【化21】

98% (isolated yield); [α]D28 = +5.8 (c = 1.03, CHCl3) ;
IR (KBr, neat): 2238, 1685 cm-1
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.18-1.31 (m, 5H, cyclo-C6H11), 1.34-1.90 (m, 6H, cyclo-C6H11), 3.23-3.29 (m, 2H, C=OCHH, CHCN), 3.39 (dd, J = 8.8, 19.0Hz, 1H, C=OCHH), 7.48-7.52 (m, 2H, aromatic H), 7.60-7.63 (m, 1H, aromatic H), 7.96-7.97 (m, 2H, aromatic H)
13C NMR (67.7 MHz, CDCl3): δ = 25.7 (CH2), 25.8 (CH2), 25.9 (CH2), 29.1(CH2), 31.4 (CH2), 32.5 (CH), 38.4 (CH2), 38.9 (CH), 121.0 (C), 128.0 (CH), 128.8 (CH), 133.7(CH), 135.9 (C), 195.5 (C)
HRMS (ESI): m/z calcd for C16H19NONa: 264.13589 ([M+Na]+); found: 264.13640.
Anal. Calcd for C16H19NO: C, 79.63, H, 7.94, N, 5.80. Found: C, 79.62, H, 8.03, N, 5.71.
Chiral HPLC analysis: column, CHIRALCEL OD-H; eluent, hexane : 2-propanol = 90 : 10; flow, 1.0 mLmin-1; column temp: 40 °C; detection: UV 254 nm; tR of minior : 8.6 min (2.7%), tR of major: 10.1 min (97.3%); 95% ee.
【0049】
2−メチル−4−オキソ−4−(4−メチルフェニル)ブチロニトリル(2i)
【化22】

97% (isolated yield); [α]D26 = -13.2 (c = 1.01, CHCl3)
IR (KBr, neat): 2243, 1685 cm-1
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.42 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 2.43 (s, CH3C6H4), 3.17-3.22 (distorted dd, 1H, C=OCHH), 3.30-3.42 (m, 2H, CHCN, C=OCHH), 7.28 (d, J = 8.3 Hz, 2H, aromatic H), 7.85 (d, J = 8.3 Hz, 2H, aromatic H).
13C NMR (67.7 MHz, CDCl3): δ = 17.9 (CH3), 20.5 (CH), 21.7 (CH3), 42.1 (CH2), 122.7 (C), 128.1 (CH), 129.5 (CH), 133.4 (C), 144.8 (C), 194.7 (C).
HRMS (ESI): m/z calcd for C12H13NONa: 210.08894 ([M+Na]+); found: 210.08908.
Anal. Calcd for C12H11NO: C, 76.98, H, 7.00, N, 7.48. Found: C, 76.96, H, 7.10, N, 7.42.
Chiral GC analysis: column, InertCap CHIRAMIX (0.25 mm x 30 m); carrier gas: helium (217 kPa); column temp: 170 °C heating to 179 °C at a rate of 0.5 °C min-1; tR of major-2: 23.5 min (97.4%), tR of minior-2: 24.8 min (2.6%); 95% ee.
【0050】
4−(4−メトキシフェニル)−2−メチル−4−オキソブチロニトリル(2h)
【化23】

[α]D28 = -17.6 (c = 0.99, CHCl3)
IR(KBr disc): 3337, 2980, 2941, 2842, 2576, 2361, 2241, 2050, 1676, 1599, 1577, 1511.
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.45 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 3.24 (dd, J = 6.3, 17.6 Hz, 1H, C=OCHH), 3.30-3.39 (m, 2H, CHCN, C=OCHH), 3.89 (s, 3H, OCH3), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H, aromatic H), 7.93 (d, J = 8.8 Hz, 2H, aromatic H)
13C NMR (67.7 MHz, CDCl3): δ = 17.9 (CH3), 20.6 (CH), 41.8 (CH2), 55.5(CH3), 113.9 (CH), 122.8 (C), 129.0(C), 130.3 (CH), 164.0 (C), 193.6 (C)
HRMS (ESI): m/z calcd for C12H13NO2Na : 226.08385 ([M+Na]+); found: 226.08388
Anal. Calcd for C12H13NO2: C, 70.92, H, 6.45, N, 6.89. Found: C, 70.89, H, 6.43, N, 6.81
Chiral HPLC analysis: column, CHIRALCEL OJ-H; eluent, hexane : 2-propanol = 80 : 20; flow, 1.0 mLmin-1; column temp: 40 °C; detection: UV 220 nm; tR of minior : 20.9 min (4.7 %), tR of major: 25.0 min (95.3 %); 91 % ee.
【0051】
4−(3−メトキシフェニル)−2−メチル−4−オキソブチロニトリル(2n)
【化24】

[α]D26 = -1.16 (c = 1.08, CHCl3), [α]D26 = 21.10 (c = 1.07, CH3OH),
IR(KBr):2242, 1685, 1598, 1583
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.43 (d, J = 6.8 Hz, 3H, CH3), 3.21 (dd, J = 6.3, 16.6 Hz, 1H, C=OCHH), 3.30- 3.44 (m, 2H), 3.86 (s, J = 5.9,3H, CH3),.7.16 (dd, J = 2.4 , 7.8 Hz, 1H, aromatic H), 7.40 (t, J = 7.8 Hz, 1H, aromatic H), 7.48-7.52 ( m, 2H, aromatic H).
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ = 17.7 (CH3), 20.4 (CH), 42.2 (CH2), 55.4(CH3), 112.1 (CH), 120.1 (CH), 120.4(CH), 122.5 (C), 129.7 (CH), 137.1 (C), 159.8(C), 195.0 (C).
HRMS (ESI): m/z calcd for C12H13NO2Na :Anal. Calcd for C12H13NO2: C, 70.92, H, 6.45, N, 6.89. Found: C, 70.79, H, 6.46, N, 6.84.
Chiral HPLC analysis: column, CHIRALCEL OD-H; eluent, hexane : 2-propanol = 90 : 10; flow, 1.0 mLmin-1; column temp: 40 °C; detection: UV 254 nm; tR of minior : 13.4 min (1.14 %), tR of major: 18.4 min (98.86 %); 98 % ee.
【0052】
2−メチル−4−オキソ−4−(2−クロロフェニル)ブチロニトリル(2o)
【化25】

[α]D27 = -10.4 (c = 0.99, CHCl3)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.43 (d, J = 6.6 Hz, 3H, CH3), 3.20-3.45 (m, 3H),7.33-7.41(m, 1H), 7.44 (br d, 2H, aromatic H), 7.54 (br d, 1H, aromatic H).
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3): δ = 17.6 (CH3), 20.7 (CH), 46.3 (CH2), 122.2 (C), 127.2 (CH), 129.3 (CH), 130.7 (CH), 131.1(C), 132.5 (CH), 137.7 (C), 198.1 (C).
HRMS (ESI): m/z calcd for C11H10NOClNa : 230.03486 ([M+Na]+); found: 230.03437.
Anal. Calcd for C12H13NOCl: C, 63.62, H, 4.85, N, 6.75, Cl, 17.07. Found: C, 63.52, H, 4.66, N, 6.76, Cl, 16.95.
Chiral HPLC analysis: column, CHIRALCEL OJ-H; eluent, hexane : 2-propanol = 90 : 10; flow, 1.0 mLmin-1; column temp: 40 °C; detection: UV 254 nm; tR of major : 15.2 min (90.9 %), tR of minior: 19.0 min (9.1 %); 82 % ee.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される光学活性β−ケトニトリル化合物。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)
【請求項2】
一般式(1)中、R1が、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有するアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す、請求項1に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物。
【請求項3】
一般式(1)中、R1が、下記の群から選択されるいずれかの基を表す、請求項2に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物。
【化2】

【請求項4】
一般式(1)中、R2が、メチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ヘキシル基及びシクロヘキシル基からなる群より選択されるいずれかの基を表す、請求項2または3に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物。
【請求項5】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒の存在下に、
【化3】

(一般式(2)中、R3〜R6は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R3とR4及び/又はR5とR6が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R7〜R10は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R7とR8及び/又はR9とR10が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R11およびR12は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【化4】

(一般式(3)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程;および
前記工程で得られた反応生成物中に金属化合物の塩を加え反応させる工程を含む、請求項1に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(2)で表されるシアノ化触媒と、金属化合物の塩とを反応させて得られるシアノ化触媒の存在下に、
【化5】

(一般式(2)中、R3〜R6は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R3とR4及び/又はR5とR6が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R7〜R10は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であって、R7とR8及び/又はR9とR10が置換基を有していてもよい炭素鎖環を形成してもよく;R11およびR12は同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基;W、X、Yは同一又はそれぞれ異なっていてもよく、それぞれ置換基を有していてもよい結合鎖を表し、但し、X及び/又はYは存在しなくともよい;Mは金属又は金属イオンを示し、Mの各配位子はどのように配置されていてもよい)
下記一般式(3)
【化6】

(一般式(3)中、R1、R2は同一又は異なっていてもよく、分岐を有していてもよい鎖状アルキル基、置換基を有していてもよい環状アルキル基、分岐を有していてもよい鎖状アルケニル基、置換基を有していてもよい環状アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環を示す。)
で表されるα、β−不飽和カルボニル化合物と、シアニドドナーとを反応させる工程を含む、請求項1に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(2)におけるMが二価ルテニウムである請求項5または6に記載の光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)におけるWが1,1'-ビナフチル基又は1,1'-ビフェニル基である請求項5から7のいずれかに記載の光学活性β−ケトニトリル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−162477(P2011−162477A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26762(P2010−26762)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】