光学流体顕微鏡装置
光学流体顕微鏡装置が開示される。その装置は、表面を有する流路を含み、バクテリア又はウイルスといった対象物がその流路を流れ得る。異なる寸法の光透過領域が、対象物を画像化するのに使用され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年5月9日に出願された米国特許出願第11/125,718号の一部継続出願であって、米国特許出願第11/125,718号は、正規の出願であり、2004年7月23日に出願された第60/590,768号及び2004年6月4日に出願された第60/577,433号の米国仮特許出願に基づく優先権を主張する。本出願も正規の出願であり、2006年3月20日に出願された米国仮特許出願第60/783,920号の出願日の利益を主張する。これらの開示の全ては、全ての目的のため、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府によって支援された研究又は開発でなされた発明に関する権利に関する声明は、適用されない。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体工学の分野は、急速に進歩してきている。これらの進歩は、マイクロ流体回路の大規模集積化の発達、及びライフサイエンス研究へのマイクロ流体工学の様々な応用に関係する。現在、光学顕微鏡は、生物学的な標的物と同様に、基礎的な微小規模の流動物理学を研究するための技術として、マイクロ流体工学の研究に採用されている。それは、これらの集積化されたマイクロ流体工学システム内で実行されるプロセスを研究するためにも使用される。概して、これらの装置は、生物学的な標的物を分析するために、大規模のインフラストラクチャ(例えば、巨大な顕微鏡、チップリーダ)を利用する。
【0004】
近接場光学顕微鏡(Near field scanning optical microscope(NSOM))は、生物学的な標的物を研究するために広範囲に使用される。NSOMは、〜50nmの空間解像度で、構造を光学的に解像し得る。NSOMは、標的試料上の特定の位置を光学的に探査するために、NSOMプローブチップの末端で強く増強され且つ厳密に制限された光場を用いる。バクテリアは、従来型の光学顕微鏡で容易に画像化することができないため、NSOMは、バクテリアを形状観察するのに特に有用である。走査型電子顕微鏡といった、他の高解像度のイメージング装置と比較して、NSOMは、蛍光を介して、試料中のタンパク質又は生化学物質の分布図を選択的に作成することができる。加えて、NSOMの画像化方法は、非破壊的であり、緩衝培地中に浸された生きた対象物を画像化するのに使用され得る。これらの利点の全てを鑑みると、NSOMは、バクテリアの種類を識別するという医療的な適用において、幅広く使用され得ると期待されるだろう。しかしながら、これに関する公開がされていないということは、NSOMを使用するのに、重大な技術上の障害が存在することを示す。そのような障害の1つは、NSOMを用いてハイスループットの画像化を実行することの困難性である。ハイスループットの画像化には、標的となる生きた対象物の全面をラスタ走査するプローブチップが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、NSOM及び大きな光学装置を使用する従来型のマイクロ流体工学システムについて改良した装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、光学流体顕微鏡装置又はOFM装置に関する。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、NSOMの解像度と同様の解像度を達成することができる。しかしながら、NSOMとは異なり、本発明の実施形態は、ハイスループットの画像化のために使用され得る。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該本体中の異なる寸法を有する光透過領域と、該異なる寸法を有する光透過領域を通して照明を提供するために適用された照明光源と、該光透過領域を通して該照明光源からの光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該表面上又は該表面下の、複数の個別の発光領域と、該複数の個別の発光領域によって生成された光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該表面上又は該表面下の少なくとも一つの光画像素子と、該少なくとも一つの光画像素子によって生成された光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0010】
本発明のある実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、CCD(電荷結合素子)といった既製品の検出器を使用し得る。既製のリニアCCDアレイのパラメータに基づき、1ミリ秒という短い時間枠内で、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置によって、バクテリアの100×100画素の画像が獲得され得る。本発明の実施形態において、多数の光学流体顕微鏡装置も、単一チップ上で平行に操作され得る。
【0011】
本発明の実施形態の高速処理能力、及び本発明の実施形態において多数の光学流体顕微鏡装置を使用することができることにより、本発明の実施形態は、NSOMよりも充分に高い画像化処理速度を有する。例えば、NSOM装置において、100×100画素の画像のための取得時間は、約10ミリ秒である。比較すると、単一の1000画素のリニアCCDアレイ上に設置された一連の平行な10個の光学流体顕微鏡装置は、NSOMが単一の画像を作成する時間で、最大で100個の100×100画素の画像を提供し得る。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置のハイスループットの画像化能力及び高い解像度によって、それらは様々な医療への適用に非常に適したものとなる。そのような応用は、異なるバクテリアの種類を識別することを含む。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、従来型のマイクロ流体工学装置において生物学的な画像を得るために使用された巨大な光学装置(例えば、一連の対物レンズ及び複雑な顕微鏡の設置)を省略する。従来型の画像化システムと異なり、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、持ち運びができ且つ小型である。
【0013】
光学流体顕微鏡装置を製造する方法及びそれを使用する方法も開示される。
【0014】
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下において更に詳細に説明される。
【0015】
図において、同一の数字は、同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の複数の構成部品の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の、作動している実施形態の上面図を示す。図面において、光学流体顕微鏡装置における流路の幅は、約44マイクロメートルである。光学流体顕微鏡装置における流路の概略図も図面の左側に示される。
【図3】(a)は、接近した、斜視方向からの、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の他の概略図である。(b)は、(a)に示された光学流体顕微鏡装置における流路の概略上面図である。流路の底部における光透過領域は、その壁に関して斜めの直線を形成する。(c)は、(a)に示された光学流体顕微鏡装置の概略側面図である。(d)は、光学流体顕微鏡装置における各光検出素子から収集された時間経過の結果を示し、各光検出素子は、対象物の画像を作成するのに使用され得る出力を発生し得る。
【図4】(a)〜(e)は、光学流体顕微鏡装置が製造される際の、その断面図を示す。
【図5】光学流体顕微鏡装置の顕微鏡画像、及び透過強度対時間の2つのグラフを示す。左のグラフは、第1の対応する矢印によって示されるように、左の孔部を通した透過強度の変化を示す。右のグラフは、第2の対応する矢印によって示されるように、右の孔部を通した強度の変化を示す。
【図6】(a)は、光学流体顕微鏡装置の上面透過図を示す。光学流体顕微鏡装置における光透過領域は、孔形状(直径約0.5マイクロメートル)である。(b)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置において、隣接する孔部を介した遮断の時間経過の結果を示す。(c)は、クラミドモナスの顕微鏡画像を示す。(d)は、クラミドモナスの光学流体顕微鏡装置の画像を示す初期データを示す。
【図7】光学流体顕微鏡装置の長さに沿った、一連の散在した参照孔部アレイを示す。
【図8】本発明の実施形態に係る他の光学流体顕微鏡装置を示す。この実施形態において、2つの異なる寸法を有する光透過領域が、光学流体顕微鏡装置に使用される。
【図9】(a)〜(c)は、光学流体顕微鏡装置を用いるシステムの概略図を示す。これらの図は、様々な操作段階における血液分別ユニットを示す。作動中の素子が示される。(a)は、注入部と、試料が試薬と混合される混合部と、を示す。(b)は、異なる透過光学フィルタを有する、一連の光学流体顕微鏡装置を通して、混合物が画像化される、光学流体顕微鏡装置の測定の状態を示す。(c)は、分析物の所定の画分がいずれも、異なる試薬と再混合され、その後、再分析され得る、再処理の状態を示す。
【図10】(a)は、本発明の実施形態に係る他の光学流体顕微鏡装置の上面図を示す。この実施形態において、流路中の孔部の代わりに、個別の量子ドットが、細胞といった生物学的な対象物を画像化するのに使用される。(b)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の他の実施形態の上面図を示す。量子ドットが、アレイ状というよりはむしろ直線状に存在する。
【図11】(a)及び(b)は、図10(a)及び(b)において示されたものと同様の実施形態のための具体的な照明光源及び検出器の配置を示す。
【図12】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態において、量子ドットの2次元アレイが流路中に存在し、それらは、互いに関して異なる配向で設置される。
【図13】図10(b)に示された光学流体顕微鏡装置の概略斜視図を示す。
【図14】量子ドットを用いる光学流体顕微鏡装置の側面図を示す。
【図15】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態において、量子ドットは、直線状に配置され、その直線は、互いに関してずれている。
【図16】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態における量子ドットは、先の実施形態よりも、より大きな距離で間隔があけられる。
【図17】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この例における量子ドットは、斜線状に存在する。
【図18】基板中に薄い透過又は屈折溝構造が形成される実施形態を示す。
【図19】光透過率対波長の典型的なグラフを示す。
【図20】(a)は、光透過領域を含む本体の平面図を示し、該光透過領域は、異なる寸法からなる。(b)は、透過率対波長のグラフを示す。(c)は、対象物が光透過領域を遮断する際の、光透過領域を含む本体の平面図を示し、該光透過領域は、異なる寸法からなる。(d)は、対象物が、異なる寸法を有する光透過領域の一部を遮断する際の、透過率対波長の他のグラフを示す。
【図21】本発明の実施形態に係るシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、少なくとも流路の一部を定義する本体において、光透過領域(例えば、間隔をあけた孔部)又は個別の発光素子(例えば、量子ドット)を使用し得る、光学流体顕微鏡に関する。光透過領域又は(他の要素と連結した)発光素子は、流路を通過する生物学的な対象物(biological entity)といったものを画像化するのに使用され得る。他の実施形態は、流路を定義する底面の壁の表面中又はその表面上に少なくとも一つの光イメージング素子を有する光学流体顕微鏡装置に関する。光イメージング素子は、孔部といった1つ又は複数の光透過領域、量子ドットといった1つ又は複数の発光素子、反射性のライン又は密接する量子ドットのラインといった1つ又は複数の直線状の構造物、又はナノ粒子といった1つ又は複数の光分散体の形であってもよい。
【0018】
特に説明する実施の形態において、細胞の画像化について述べられる。しかしながら、本発明の実施形態は、それに限定されないと理解される。例えば、細胞の代わりに、適切な対象物であればいずれも、画像化され得る。対象は、化学的な又は生物学的な物であってよい。生物学的な対象物の例は、全細胞、細胞構成要素、バクテリア若しくはウイルスといった微生物、タンパク質といった細胞構成要素等を含む。巨大分子といった化学的な対象物が、本発明の実施形態によって画像化されてもよい。
【0019】
(I.光透過領域を用いた光学装置)
(A.光透過領域を用いた具体例)
本発明の1つの実施形態は、光学流体顕微鏡装置に関する。光学流体顕微鏡装置は、少なくとも流路の一部を定義する本体を備える。光透過領域は、その本体中に存在し、その本体は、流路の底面と一致する表面を有してもよい。照明光源は、光透過領域を通過し、光学検出器によって受け取られる光を提供する。光学検出器は、照明光源としてその表面の反対側に配置され、光透過領域とそれぞれ関連する個別の個々の光検出素子(例えば、画素)を有してもよい。光学流体顕微鏡装置は、従来型のマイクロ流体工学の光学システムよりも非常に小型である。
【0020】
ある実施形態において、光透過領域は、不透明な又は半透明な層に定義されるマイクロホール又はナノ−ホールであり、それは本体の一部を形成してもよい。それらホール(孔部)は、電子ビームリソグラフィを含む、いずれかの適切な孔部形成工程を用いて定義されてもよい。本発明の実施形態において、各孔部(又は光透過領域)は、約5、1、若しくは0.5マイクロメートル(ミクロン)よりも小さい寸法(例えば、直径)を有してもよい。その孔部はまた、任意の適切な形状を有していてもよく、円形、四角形等であってもよい。
【0021】
孔部の多くはまた、アレイを形成する。そのアレイは、1次元又は2次元であってもよい。例えば、ある実施形態において、アレイ中の孔部は、流路の1つの側面部から流路の他の側面部まで延在する、斜めの直線を形成してもよい。
【0022】
ある実施形態において、アレイ中の光透過領域は、異なる寸法を有してもよい。異なる寸法の光透過領域を設置することによって、その光透過領域上を通過する対象物の形状を決定するために光透過スペクトルをモニターすることが可能である。
【0023】
ある実施形態において、光透過領域のアレイ中に、少なくとも約2、5、又は10個の異なる寸法の光透過領域が存在してもよく、それらは、いずれかの適切な方法でアレイ中に配置されてもよい。光透過領域の寸法(例えば、直径)は、光透過領域のアレイにおいて、ある規則正しい(例えば、光透過領域の行内又は列内の寸法を増加する)方法で増加してもよい。例えば、1つの行は、寸法が(例えば、0.1マイクロメートルの増加量で0.1から1.0マイクロメートルに)徐々に増加し、そのパターンを繰り返す光透過領域を有してもよい。
【0024】
あらゆる適切な数若しくは密度の孔部又は光透過領域が、本発明の実施形態に使用されてもよい。例えば、光学流体顕微鏡装置あたり約10、50、100、又はさらに1000以上の光透過領域が存在してもよい。ある実施形態において、平方センチメートルあたり10、50、100、又は1000以上の光透過領域が存在してもよい。
【0025】
光透過領域及び光学検出器は、光学流体顕微鏡装置において「画像化装置(imager)」を形成し得る。画像化装置は、生物学的又は非生物学的な試料中に存在し得る、生物学的な標的物といった対象物を画像化し得る。試料及びこれに包含される生物学的な標的物は、光学流体顕微鏡装置の、成形された上側の部位において定義された標準的なマイクロ流体工学の集束装置を用いて、画像化装置へと輸送され得る。光学流体顕微鏡装置の、成形された上側の部位は、流路を定義し、ポリ−(ジメチルシロキサン)(PDMS)材料から構成されてもよい。動電学的なもの又は圧力が、試料を光学流体顕微鏡装置中の流路を通して画像化装置へと移動させ、それを通り抜けさせ得る。生物学的な標的物が画像化装置を通過する際、各光透過領域を通った、照明光源からの光の透過率は、時間とともに変化する。光透過領域を通過する変化した光信号を用いて、画像化装置を通過する標的物の画像が再構築され得る。
【0026】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置10の概略図を示す。光学流体顕微鏡装置10は、多層型構造であり得る、本体16を有する。他の実施形態において、それは、その代わりに、単一の一体型構造であってもよい。図示された例において、しかしながら、本体16は、不透明又は半透明な層19を含み、さらにその中に光透過領域14を有する。光学流体顕微鏡装置における流路22中を流れる流体から、不透明又は半透明な層19を隔てるために、透過保護層(図示せず)が、不透明又は半透明な層19を、任意に覆ってもよい。
【0027】
本体16は、流路22を定義し又は包含してもよく、その本体16の表面16(a)は、流路22の底壁と一致してもよい。作動時に、流路22は、その中を流れる細胞20を含む流体を有し得る。マイクロポンプ、動電学的装置及び他の装置(図示せず)が、流路22を通して流体を流すために使用され得る。
【0028】
流路22は、いずれの適切な寸法を有してもよい。例えば、流路22の幅及び/又は高さはそれぞれ、ある実施形態において、約10、5、又は1マイクロメートルより小さくてもよい。
【0029】
本体16における光透過領域14は、孔部であることが好ましい。例えば、光透過領域14は、金といった金属製の層にエッチングされた孔部であってもよい。図示された例において、光透過領域14は、流路22の1つの側面部から流路22の他の側面部まで延在する斜めの直線を形成する。他の実施形態において、光透過領域14は、アレイ又は、流路22内の流れの方向に垂直に延びる1次元の直線の形状であり得る。
【0030】
照明光源12は、表面16(a)の一つの側面上に存在する。照明光源の適切な例は、白色光源、自然光、着色光源等を含む。照明光源12は、流路22を通る流体を通過する光を生じる。適切な照明光源は、市販で購入可能である。
【0031】
光学検出器18は、表面16(a)の他方の側面上に存在する。光学検出器18は、電荷結合素子を含んでもよく、光透過領域14にそれぞれ対応する個別の光検出素子のアレイを含んでもよい。光学検出器18はまた、ダイオードアレイ(例えば、リニア又は2次元ダイオードアレイ)であってもよく、ダイオードアレイ中の各ダイオードは、光透過領域14に対応する。適切な光学検出器も、市販で購入可能である。
【0032】
図示するように、生物学的な細胞20を含む流体は、流路22を通って流れてもよい。細胞20が流路22を通過する際、光透過領域14は、生物学的な細胞20(又は他の対象物)を画像化するのに使用され得る。例えば、図1(a)に示すように、細胞20を含む液体は、流路22を通って流れてもよい。それが流路22を通って流れる際、照明光源12からの光は、流路22を通過し、本体16の表面16(a)を照らす。細胞20によって遮られない光は、ほとんど変化を受けることなく光透過領域14を通過する。細胞20に伝わる光は、遮断され得、又は細胞20を通過する光と比較して、ある程度変化し得る(例えば、強度が低下する、波長が変化する等)。上述したように、光学検出器18中の個々の光検出素子(図示せず)は、それぞれ光透過領域14と連結され得る。検出器18中の個々の光検出素子それぞれが、経時で測定され、経時で光検出素子によって受け取られた光の変化が、細胞20を画像化するのに使用され得る。この工程は、以下で更に詳細に説明される。
【0033】
図2を参照するに、参照番号34(a)は、マイクロ流体工学装置に使用され得るマイクロ流体工学の経路システムの概略図を示す。参照番号34(b)は、参照番号34(a)に対応するマイクロ流体工学の経路システムの一部分のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。参照番号34(b)によって示されるように、光透過領域のラインは、流路の1つの側面部から他の側面部へと延びる。
【0034】
分岐した流路構造は、光透過領域を含む画像化装置の中央部へと生物学的な標的物を「集中させる(focus)」のに使用されてよい。例えば、生物学的な標的物は、参照番号34(a)によって示される3つの上流流路を有する流路の中央の流路中を流れ得る。3つの流路が、単一の流路へと合流されると、生物学的な標的物は、中央の単一の流路に閉じこめられた状態になるだろう。これによって、生物学的な標的物が、光透過領域を通過する際に、実質的に一直線に動くことができるようになる。
【0035】
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の操作は、図3(a)〜3(d)に関して、更に説明され得る。図3(a)は、接近した視点からの、本発明の実施形態に係る光学装置の他の概略図である。図3(b)は、図3(a)における光学装置中の流路の上面図である。図3(c)は、図3(a)に示される光学流体顕微鏡装置の側面図である。図3(d)は、光学装置における各画素から収集された時間経過の結果を示し、各画素は、対象物の画像を作成するために処理され得る。
【0036】
図3(a)〜図3(c)に示されるように、細胞20は、流路22を通過し、それが流路22を通過する際に、光透過領域14を遮断する。細胞20、又は他の標的対象物は、一定の速度で流路22を通って流れる。細胞20が、画像化装置の中央に集められるように、動電学的又は圧力装置(図示せず)が、細胞20を含む流体を流れさせ得る。図3(a)に示されるように、光透過領域14は、流路22の1つの側面部から流路22の他の側面部まで斜めに延在する。光透過領域14を傾斜させることによって、流路22の各側面部が測定され得、細胞20の外側縁部を画像化するのに使用され得る。他の実施形態において、光透過領域14は、流路22の壁部に垂直な一直線の状態で存在し得る。
【0037】
図3(c)に示されるように、光学検出器18は、複数の光透過領域14を含む不透明又は半透明な層19の下に存在する。不透明又は半透明の層19は、(透過層上に存在し得る)金膜であってよく、100ナノメートルで、白色光透過に対してほぼ不透明であってよい(金層における632.8ナノメートルのHe−Neレーザーによる表皮深さ(skin depth)は、約12ナノメートルである)。
【0038】
いずれの適切な市販で購入可能な光学検出器が、本発明の実施形態において使用されてもよい。光学検出器18は、光透過領域14にそれぞれ対応する複数の個別の光検出素子(例えば、画素)を含む。作動時に、光学検出器18は、光透過領域14を通して、照明光源12からのほとんど変化しない光を受け取ってもよいし、或いは受け取らなくてもよい。これは、細胞20が光透過領域14を覆っているか否かによる。光透過領域14を通って受け取られた光信号の経時での変化が、細胞20を画像化するのに使用され得る。
【0039】
図示されるように、図3(d)は、各光透過領域14下での各光検出素子から収集された時間経過の結果を示す。より特異的には、検出器18における各光検出素子の経時での出力が示される。光透過領域14の既知の位置と(それらが関連する光検出画素と)光学検出器18における個別の光検出素子から生じた時間経過の結果とを用いて、対象物の画像が、図3(d)に示されるように形成され得る。
【0040】
標的物が光透過領域14上を通過する際、それらを通過する光の特性がある程度変化させられる。実際に、各光透過領域14は、近接場光学顕微鏡(NSOM)のプローブチップのように、又は共焦点顕微鏡におけるピンホールとして機能する。本発明の実施形態は、従って、高い感度を有する。
【0041】
各光透過領域と関連する時間経過の結果は、画像化される標的物の外形に加えて、その光学特性に依存する。例えば、所定の時間における所定の位置での低い強度に対応する画素出力は、流路における特定の位置での対象物の幅に関するデータを提供する。各画素に対するデータは、対象物の画像を形成するためにコンピュータを用いて処理され得る。この例において、細胞20は、それが流路22を通って、検出器の画素上及び光透過領域14上を通過する際、一直線に動く。
【0042】
本発明の実施形態は、複数の利点を有する。本発明の実施形態は、高解像度を与え、安価に製造され、少量の試料量を使用し、表示が容易であり、高い処理能力を有する。本発明の実施形態は、マッチ箱と同じくらい小さくてよく、ハイスループットの処理が可能であり、大量製造が容易である。従来型の巨大な顕微鏡と異なり、それらは、製造するのが容易で安価であり、それらは小型である。本発明の実施形態はまた、サブ波長の解像域に達し得、従って、小さなバクテリア及びウイルスのチップ上での光学イメージングの新しい分野を切り開く。異なるウイルス又はバクテリアの種類を画像化し、識別するためのハイスループットの方法は、生物学的及び医療上の使用にとって重要且つ好都合であり得る。
【0043】
(B.光学流体顕微鏡装置を製造する方法)
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、任意の適切な方法で製造され得る。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を製造する具体的な方法は、図4(a)〜4(e)を参照に説明され得る。エッチング、積層、及びソフトリソグラフィを含むよく知られた工程の任意の適切な組み合わせが、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を製造するのに使用され得る。
【0044】
イメージングアレイの製造は、図4(a)に示され、ガラス板32の透明表面上の金層34(約100ナノメートル厚)を先ず蒸着させることによって始まる。ガラス板32は、その代わりに、いくつかの他の透明層であってもよい。金層34は、その代わりに、任意の他の適切な不透明又は半透明の層であってもよい。
【0045】
図4(b)に示すように、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)レジスト層36は、その後、金層34上に流され、標準的な電子ビームリソグラフィが、PMMAレジスト36中に孔部パターンを形成するのに使用される。PMMAレジスト36の代わりに、いずれの他の適切な種類のフォトレジストが使用されてもよい。
【0046】
図4(c)に示されるように、現像後、金層34は、ウエットエッチングされ、それによって画像化装置の孔部39が定義される。その代わりに、ドライエッチング工程が、画像化装置の孔部39を形成するのに使用されてもよい。
【0047】
他の実施形態において、エッチングが使用される必要性はない。例えば、レーザーアブレーション工程が、孔部39を形成するのに使用され得る。この場合、フォトレジスト層は、孔部39を形成するのに必要とされない。
【0048】
図4(d)に示されるように、残存するPMMA層36は、その後、除去され、電気的又は機械的に、画像化装置を光学流体顕微鏡装置の流体部位から隔離するように働く、新しいPMMA膜37(約200ナノメートル厚)に置換される。代替案としては、PMMA膜37の代わりに、異なる種類の透明又は半透明の絶縁材料が使用され得る。
【0049】
新しいPMMA膜37、先のPMMA層36、及び光学流体顕微鏡装置において形成された任意の他の層が、いずれの適切な工程を用いて堆積されてもよい。具体的な工程は、ローラ塗布、スピン塗布、蒸着等を含む。
【0050】
最終的な組立段階において、図4(e)に示すように、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造体40が、前もって形成され、その後、PMMA膜37に接着される。接続用孔部(図示せず)が、その後、流体の注入部及び排出部を形成するために、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造体40中に空けられる。PDMS構造体37は、(当業者に公知の)ソフトリソグラフィ技術を用いて形成されてもよく、その後、約30秒間、空気プラズマにさらされる。PDMS層40及びPMMA膜37は、一緒に積層されてもよい。組立後、光学流体顕微鏡装置の様々な構成要素の間の結合強度を改善するのを助けるために、80℃のポスト焼成が用いられ得る。
【0051】
また、図4(e)に示されるように、個別の光検出素子43(a)を含む検出器43は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を形成するために、接着又は他の適切な結合機構を用いて、ガラス板32に取り付けられる。上述のように、光学検出器43は、市販で購入可能な部分であり得る。
【0052】
適切な電子装置(図示せず)が、取付検出器に接続されてもよい。そのような電子装置は、画像処理ソフトウエア、異なる生物学的対象物を識別するためのソフトウエア、信号処理ソフトウエア及び電子装置等から構成されるコンピュータを備えてもよい。当業者は、光学流体顕微鏡装置内の画像化装置から画像を形成するために、どのような種類の電子装置が、本発明の実施形態において、使用され得るかを認識している。加えて、いずれの信号処理を実行するためのコンピュータコード又は他のソフトウエアに関連する機能も、当業者によって作製され得る。コンピュータは、C、C++、パスカル等を含む任意の適切なプログラミング言語でコーディングする。
【0053】
(C.孔部の間隔及び解像度)
上述したように、典型的な光学流体顕微鏡装置において、不透明な金層における孔部を通過する光の透過は、不透明な層の底部に直接存在する、リニアCCD又はフォトダイオードアレイといった検出器によって監視される。この配置は、光学流体顕微鏡装置を小型化し、巨大な光学装置から解放する。各孔部及び各孔部を通る光の透過は、単一のCCD画素又はフォトダイオードに一意的に位置づけられ得る。例えば、孔部間の間隔は、約13マイクロメートルの幅で存在し得るので、その間隔は、市販で購入可能な検出器における個別の光検出素子(例えば、DalsaトールピクセルセンサIL−C6−2048といったラインスキャンセンサ)の間隔と同一である。
【0054】
流れの方向と垂直なy方向の画素解像度、γyは、この方向における隣接する孔部の間隔に依存する。金膜を通してエッチングされた、単位幅あたりの孔部が多いほど、以下の方程式(1)によって定義される達成可能な解像度が高い。方程式(1)は、
【数1】
で表され、式中、nhは孔部の数に等しく、wは路幅である。例えば、路幅が40μmである場合、流路全域に40個の孔部が存在すると、y方向の画素寸法は、1マイクロメートルであり得る。x(流れ)方向において、画素寸法は、方程式(2)によって定義されるように、光学測定ユニットの取得速度及び標的物の移動速度によって決定される(即ち、x方向における解像度は、標的物の移動速度u×画素取得時間Δtに等しい)。
【数2】
例えば、標的物の流速が毎秒100マイクロメートルであり、検出器の読み取り速度が1KHzである場合、X方向における最大解像度は、約0.1マイクロメートルに等しいだろう。
【0055】
光学流体顕微鏡装置の感度は、各孔部を通って透過した光の総量に依存する。不透明な層が完全導電性であると仮定して、孔部寸法(Sh)の2つの異なる条件が検討される。それらは以下の通りである。
Sh>λ、大きい孔部の制限−この条件では、実効透過域ATは、単純に孔部の物理的な断面部に等しい。
Sh<λ、小さい孔部の制限−この条件では、孔部は非常に薄いと仮定され、Bethe(Bethe HA,'Theory of diffraction by small holes',physics Review,66,163(1944))は、実効透過域がピンホール直径の6乗に比例することを示した。
【0056】
最近の研究では、De Abajo(F. de Abajo, 2002,"Light transmission through a single cylindrical hole in a metallic film", Optics Express, vol. 10, pp. 1475-1484)は、透過率が、孔部深度に応じて、指数的に更に低下することを観察した。これらの2つの影響を組み合わせると、実効透過域は、以下のように表され得る。
【数3】
この方程式は、De Abajoが報告したシミュレーションデータとよく一致する。しかしながら、光学流体顕微鏡装置の性能をよりよく評価する目的で、材料の有限な誘電率、ひいては光学的シミュレーションの回答を考慮に入れることが必要である。(フレーム率の逆数にも等しい)画素測定時間(dwell time)τの総透過光子数が、以下の式によって与えられる。
【数4】
式中、hc/λは1つの単一光子が有するエネルギーであり、Iは照明強度であり、εはCCDカメラの量子効率である。
【0057】
主要なノイズ源は、光子計数ノイズ(ショットノイズ)と、受信ノイズ(nrτ)とを含む。従って、感度は、以下の通り表され得る。
【数5】
従って、マイクロメートルレベルでの解像度と30dBの感度とを有する対象物の画像化は、自然光照明の使用で容易に実施され得る。原理的に、サブ波長の解像度は、単に、所望の解像度限界で、y方向に、隣接する孔部の間隔をあけて配置することによって、光学流体顕微鏡装置において達成され得る。孔部は、数十マイクロメートルでx方向に分離されるので、それらの透過率への寄与は、CCDカメラ上では、互いを区別できるだろう。最先端のナノファブリケーション技術は、数十ナノメートル内の解像度でのエッチングパターンの形成を可能とする。100ナノメートルより低い解像度を有する光学流体顕微鏡装置が、作製され得る。
【0058】
(D.標的物のマイクロ流体輸送)
マイクロ及びナノスケールでは、流体の流れ及び微粒子の輸送は、様々な異なる技術を用いて達成され得、最も一般的なものは、従来の圧力駆動流、動電学的輸送、液滴駆動又は熱毛細管技術を介した不連続な液滴の移動を含む。
【0059】
電子ビームリソグラフィで作成された画像寸法が、20ナノメートルと小さく製造され得る一方、流体光学顕微鏡の最終的な解像度は、標的物の垂直方向及び水平方向の閉じ込めの安定性によって制限され得る。物理的な閉じ込めは、経路寸法が、およそ画像化される標的物の寸法であることを必要とし、より小さい標的物(<0.5マイクロメートル)に対しては、およそ数百ナノメートルの経路寸法を意味し得る。
【0060】
電気浸透輸送は、外部印加電界の、電気二重層との相互作用の結果としてもたらされる。電気二重層は、その境界面(この場合固体−液体境界面)近傍の非ゼロ電荷密度の非常に薄い領域であり、概して、荷電種の表面吸収の結果であり、その結果として、全体の電気的中性を維持するための、溶液中の局所的な自由イオンの再構成によりもたらされる。それは表面駆動効果であるので、動電速度は、経路寸法に殆ど依存しない。そのため、電気浸透輸送は、物理的な閉じ込め及び最終的に望まれる画像化の範囲にとってより好ましい。
【0061】
物理的な閉じ込めに加えて、標的物の流体工学的な閉じ込めが、最終的な画像化の安定性にとって等しく望まれるだろう。多くの研究者が、ブラウン粒子動力学を研究しており、せん断流中にある粒子は、粒子上に働く様々な流体力が釣り合う特定の位置に移動する傾向があることを示している。ここで説明したような、低アスペクト比の微小経路システムにおける圧駆動流には、垂直方向における強いせん断勾配が存在し、そのせん断勾配は、経路の上側又は下側の表面のいずれかから中心部までの距離の約40%の位置で標的物を閉じ込める傾向があるだろう(即ち、2つの垂直方向の等価位置がある)。しかしながら、水平方向において、大きな速度の勾配がなく(即ち、低アスペクト比の経路において、水平方向における放射線状の速度特性は非常に弱い傾向があり)、従って、それが先ず経路に焦点を当てた後に、ブラウン拡散に対して標的物を安定化する機構はない。マイクロ流体装置中の電気浸透駆動の局所的な改良における最近の進展によって、速度特性が調節され、それによって、垂直及び水平方向の両方におけるブラウン運動に対する閉じ込めのための、せん断力の釣り合う単一の位置を形成することが可能となり得る。そのような調節は、従来の圧駆動流で実施することは困難である。ブラウン運動効果及びこれらの効果に対処する方法が、以下で更に詳細に論じられる。
【0062】
電動駆動型マイクロ流体装置が、図2に示される。図2に示されるように、2つの側枝からの流体は、集束力として働く。中央の経路は、上流の集束により画像化装置の中央部に閉じ込められた生物学的標的物を含む。流体に印加された電圧を動力学的に調節することによって、生物学的標的物がより速く検出領域に達するように動かされ得るが、それらがより多くの画素情報を得る目的で検出領域を通過する際は、より遅く動かされ得る。上述したように、不透明又は半透明な層(例えば、穴のあいた金層)は、PMMAの薄い層によって電気ポートから隔離される。PMMA層及びPDMS経路は、より密な密閉及びより良好な流れの特性のために、酸素プラズマで処理される。本発明の実施形態は、画像取得のために適切な速度で生物学的標的物を動かすよう、標的物の移動経路においては50V以下、集束経路においては30Vよりも低い電圧勾配を使用してもよい。
【0063】
(E.具体的な実験結果)
上述で説明され、図3に図示されるように、透過率の時間経過の全情報を用いて、画像化する標的物の幾何学的形状が、再構築され得る。画像化された生物学的標的物は、Carolina biological supplyによって提供されたクラミドモナスであった。クラミドモナスは、単細胞で、双鞭毛の緑藻である。それは、おおよそ円形の形状であり、約10〜20マイクロメートルの範囲の直径を有する。それは、充分に開発された技術によって形質転換され得る、非常に明確な遺伝情報を有するため、研究ツールとして一般的になっているいくつかの種を含む。これらの最初の実験において、図1に示されたものと同様のOFM構成が使用された。各孔部を介した透過率の変化は、Olympus IX−71倒立顕微鏡に装着された、8ビットSony XCD−X710ファイヤーワイヤー(登録商標)CCDカメラによって記録された。
【0064】
図5は、単一のクラミドモナス細胞が、それらの上を通過する際の2つの隣接する孔部の透過率の変化を示す。10個の連続的な画像フレームが、コンピュータプログラムへと送られ、そこから、各孔部からの画素情報が抽出される。図5から、孔部を介した光透過率が、画像化領域を横切って流れる標的物に動的に応答することが理解され得る。より多くのフレームが迅速に収集されれば、より詳細な画素情報が取得され得、生物学的試料の2次元画像がその後再構成され得る。
【0065】
図6(a)は、光学流体顕微鏡装置の透過画像を示す。孔部は、それらが示されるよりも小さい(0.5マイクロメートル)。図6(b1)及び図6(b2)は、隣接する孔部を介した遮断の時間経過の結果を示す。図6(c)は、クラミドモナスの顕微鏡画像を示す。図6(d)は、クラミドモナスの光学流体顕微鏡装置の画像を示す初期データを示す。
【0066】
(F.ブラウン運動)
光学流体顕微鏡装置に採用される画像化方法は、孔部アレイを横切る標的対象物の流れが、全軌跡の間、一直線状であり、ずれないことを示唆する。一直線の軌道からのずれはいずれも、処理された対象物の画像を変形させ得る。
【0067】
取得され得る画像の解像度は、その軌跡に沿った対象物の実効的なずれによって制限される。意図しない対象物の軌跡のずれは、温度勾配、大きなシステムの振動、及びブラウン運動によって引き起こされ得る。最初の2つは、注意深いシステム設計によって最小化され得る一方、ブラウン運動を直接抑制するためになされ得ることはほとんどない。
【0068】
時間スケールtでの、粘性ηの流体中、直径l(エル)の球状粒子の、一次元におけるずれの2乗平均(式5−1)は、以下の式6によって与えられる。
【数6】
【数7】
式中、kBはボルツマン定数であり、Tはシステム温度である。室温の水中に漂う直径10マイクロメートルの対象物は、約10ミリ秒の時間の間に一次元において平均29ナノメートルのずれを受けるだろう。回転方向に作動させるブラウン運動も存在する。しかしながら、回転の相対的な程度及びその解像度への影響は、並進ブラウン運動のずれ効果と比較して小さい。
【0069】
粒子寸法に対する、ずれの逆依存性は、達成可能な解像度に対するブラウン運動の弱い効果が、より小さい対象物では増加することを意味する。実際に、30ナノメートルの解像度と10kHzのライン走査取得速度とを有する光学流体顕微鏡装置は、4マイクロメートルの寸法の微生物を画像化するのに使用される場合、70ナノメートルの画像解像度を有する100×100画素の画像を達成することが見込まれ得る。高解像度の光学流体顕微鏡装置は、ブラウン運動のアーチファクトによって明確に影響を受けないような比較的大きい生物学的対象物を画像化するのに使用される場合、それらの所定の解像度を容易に達成し得ることが分かる。
【0070】
ブラウン運動に起因する動きのアーチファクトを修正するための方法を実験的に研究し、検証することが可能である。その方法は、標的対象物が検出アレイを通過する際に、その動きのドリフトを追跡することが可能な追跡記録システムを光学流体顕微鏡装置中に設置することを含む。
【0071】
図7は、追跡光透過領域を含む実施例を示す。図7において、光透過領域42の追跡装置は、画像化光透過領域44と交互に配置されてもよい。この例において、追跡光透過領域42はそれぞれ、個々の一連の5又は6つの孔部を有し、概して、流路22の中央部に沿って配置される。一方、画像化光透過領域44は、流路22の1つの壁部から流路22の他の壁まで延在する、光透過領域の斜めのアレイを形成する。照明光源(図示せず)と検出器(図示せず)との構成は、前述した実施形態におけるものと同様であり得る。
【0072】
追跡光透過領域42を用いると、対象物が孔部アレイを横切って流れる際に、光透過領域42の各追跡装置で、対象物20の横方向のドリフトを追跡することが可能である。追跡装置は、経路の中央に個別に設置されるので、隣接する一組の光透過領域42を横切る信号のドリフトはいずれも、y方向における対象物の漂流(ネットドリフト)と関連し得る。このドリフト情報は、光学流体顕微鏡装置を用いて形成されるいずれの画像をも変形させるのに使用され得る。光透過領域42の追跡装置間の対象物20の到達時間における変化は、x方向における対象物のネットドリフトと関連し得る。
【0073】
光学流体顕微鏡装置の性能は、より多くの追跡装置が使用される場合に改善されることが見込まれ得る。ブラウン運動のアーチファクトと関連する解像度の不確定性は、(追跡装置が規則正しく間隔をあけて配置されていると仮定して)使用される追跡装置の数の平方根に比例して減少する。追跡装置を有する光学流体顕微鏡装置の構築と実現は、容易である。
【0074】
(G.光透過領域及び蛍光を用いた実施形態)
本発明のある実施形態は、対象物を画像化するのに光透過領域と蛍光とを使用する。これらの実施形態の背景として、厚い不透明又は半透明構造の層における孔部は、ゼロモード伝搬のためのカットオフ波長よりも短い波長の光のみを効果的に透過するだろう。より長い波長の光は、充分には透過しない。実効透過域の関数として、この透過作用の近似方程式は、以下の式によって与えられる。
【数8】
式中、λは波長であり、dは導電層の厚みであり、shは孔部の直径である。この方程式は上述される。充分に厚い導電層にとって、λがsh/0.586を越える場合、透過率は、急激に落ちる。「d」が大きい場合、透過率曲線は、階段関数のように見えるだろう。
【0075】
同時に蛍光及び透過による対象物の画像化を行う方法は、(波長λexでの)適当な励起光域で試料を照射することを含む。試料内の蛍光色素分子は、吸収し、異なる波長λf;λf>λexで再発光するだろう。均一な照明域を仮定して、試料からの蛍光パターンは、対象物の蛍光画像を投影する一方、波長λexでの透過率は、対象物の透過画像を投影するだろう。蛍光及び透過の画像化モードの両方を用いることによって、より正確な対象物の画像が作成され得る。
【0076】
図8を参照すると、一対の孔部のインターレースライン214を有する光学流体顕微鏡装置を用いることによって、両方の画像を取得することが可能である。第1のライン(又は組)の孔部211の孔部寸法は、孔部212が、波長λf及びλexの両方の光を透過するように選択され得る。第2のラインの孔部212の孔部寸法は、波長λexの光のみを透過するように選択されるだろう。孔部211、212のラインは、対の孔部それぞれが、経路壁部から同一の横方向のずれで存在するように配置され得るので、それらは、対象物を横切る同一のラインを調べるだろう。第2のラインの孔部211を通る透過率は、その後、流路を通って流れる対象物20の透過顕微鏡画像を生成するのに使用され得る。対象物の蛍光画像は、第1のラインの孔部211と第2のラインの孔部212とを通る透過率の違いを検出することによって生成され得る。照明光源(図示せず)及び検出器(図示せず)の構成は、先に説明した実施形態におけるものと同様であり得る。
【0077】
(H.光学流体顕微鏡装置の適用)
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を用いるシステムの概略図が、図9(a)〜9(c)に示される。先に説明した光学流体顕微鏡装置はいずれも、図9(a)〜9(c)に図示されるようなシステムにおいて使用され得る。
【0078】
図9(a)に示されるように、システムは、血液細胞の同定及び計数を実施することが可能な血液分別ユニットとして使用される。そのシステムは、(例えば、「試料注入部(sample in)」及び「試薬注入部(reagent in)」によって設計されるような)多数の流体注入部及び(例えば、「廃棄物排出部(waste out)」として設計されるような)流体排出部とを含む。図示されるように、混合調整装置と、一連の3つの光学流体顕微鏡装置とが存在する。光学流体顕微鏡装置への排出部は、「試料を注入する」流体導入部へと戻される、単一の再循環流へと収束する。図9(b)は、それらがシステム中を通る際の流れを示す。図9(c)は、流体が、試料を注入する流体の流れへと戻され、再循環される際の操作時の流れを示す。
【0079】
具体的な操作手順は、次の通りである。第1に、対象の血液試料及び識別用試薬が、混合容器へと流し込まれる。採用される識別用試薬は、対象の血液画分に基づいて変更されてよく、赤血球細胞の溶解試薬、(クロラゾールブラックといった)化学染色剤、固定化剤又は希釈剤を含んでもよい。比較的大きい容量(〜1マイクロリットル)の血液試料及び試薬が、この工程に使用されると、その流れは、圧駆動され、又は動電的に作動され得る。第2に、混合物は、充分な時間(約10秒)、混合されて反応させられる。第3に、混合物は、その後、動電現象によって、光学流体顕微鏡装置を横切って輸送される。所定の流路は、直径20マイクロメートルで、各光学流体顕微鏡装置は、500ナノメートルの解像度を有するように設計されるだろう。最適な流速は、約6.0ミリメートル/秒であるだろう。
【0080】
各光学流体顕微鏡装置は、装置と取付CCDアレイとの間に帯域フィルタを包含するように設計されてもよい。帯域フィルタは、可視スペクトルの適当な部分を測るために、500〜550nm、550〜600nm、600〜650nm及び650〜700nmでのフィルタリングを提供する。そのフィルタの特性は、最も重要であるスペクトル成分に基づいて再調節され得る。
【0081】
図示された実施形態において、所望の画像化速度は、1.6ミリ秒あたり1細胞である。各細胞に関して得られた多スペクトルの画像データは、手動で又は自動化プログラムによって処理される。その処理された情報は、細胞を互いに識別するのに使用され得、処理された細胞は、その後、的確な容器で的確な出力電圧にバイアスをかけることによって適当な回収又は廃棄容器に向けられてもよい。
【0082】
追加の処理工程として、一定の分類された血液画分はいずれも、所望の画分を単にシステムの導入部へと向けることによって、システム全体を通って再処理されてもよい。この画分は、その後、画分中の異なる構成成分を更に識別するために、又は全体としてその画分に関するより多くの情報を収集するために、異なる識別用試薬と混合され、画像化され、再分類されてもよい。殆ど又は全く損失なく分類された画分を再処理する能力は、マイクロ流体工学に基づくセルソータに固有である(従来型のセルサイトメトリシステムは、概して再処理用に設計されていない)。この利点は、多段階処理を用いる将来的なセルソーティングの適用にとって、重要な因子であるだろう。
【0083】
細胞の同定及び分類の速度は、(200マイクロ秒あたり1細胞の速度で細胞を処理する)市販の血液識別ユニットの速度と同等である。しかしながら、本発明の実施形態の処理速度は、同一チップ上で同時に作動するシステムの数を単純に増加することによって、一桁分、顕著に増加され得る。更に、本発明の実施形態は、ソーティングに関してより的確で正確である。特に、本発明の実施形態は、桿状球と成熟好中球とを識別をすること、及び有核赤血球の計数において、市販の血液識別ユニットよりも優れた性能を有し得る。
【0084】
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、血液中の循環腫瘍細胞(circulating tumor cell(CTC))を同定するのに使用される可能性がある。循環腫瘍細胞(CTC)は、概して、それらの細胞又は核の形態の外観検査に基づいて識別され、分類されることに鑑みて、セルソーティングシステムに基づく光学流体顕微鏡装置は、自動化されたCTC細胞の計数のために使用され得る。光学流体顕微鏡装置の画像化方法は、オンチップの画像化システムとしてマイクロ流体工学に基づくフローサイトメータへの組み込みから、尿中の異なるバクテリアの種類の同定及び計数のための高い処理能力を有する分析システムとしての使用の範囲まで、幅広く多様な応用において有用であるだろう。
【0085】
(II.発光素子を用いた光学流体装置)
従来型の光学顕微鏡において、最大達成解像度は、レイリーの基準によって定義されるように、理論的には、λ/2に制限され、ここで、λは、含まれる光の光学波長である。(上述した孔部に基づく方法は、λ/2の制限より高い解像度を許容するだろう。)近視野顕微鏡、量子もつれ光子(entangled photon)顕微鏡、誘導放出制御(STED)顕微鏡、及び構造化照明顕微鏡といった、新しい技術の使用によって、この制限は、ある程度、克服可能である。しかしながら、計算コスト、システムの複雑さ、及び光強度の必要量が、所望の解像度に応じて指数的に上昇する。
【0086】
他の実施形態は、費用効果の高い方法で、対象物の画像にサブ波長の解像度を与え得ることを開示する。これらの実施形態は、蛍光色素分子アレイ又はグリッドを用い、各アレイ又はグリッド部位は、狭く且つそのアレイ又はグリッドにおける他の蛍光色素分子とは異なる蛍光又はラマン発光スペクトルを保有する蛍光色素分子を有するだろう。適切な蛍光色素分子は、量子ドットを含む。量子ドットは、明確で狭い発光スペクトルで製造され得、強く且つ小型の蛍光エミッタである。量子ドットは、市販で購入可能であり、次の例示的な刊行物に記載される:J. K. Jaiswal, H. Mattoussi, J. M. Mauro, S. M. Simon, Long-term multiple color imaging of live cells using quantum dot bioconjugates Nature Biotechnology 21, 47(2003年1月);及びM. Dahan, T. Laurance, F. Pinaud, D. S. Chemla, A. P. Alivisatos, M. Sauer, S. Weiss, Time-gated biological imaging by use of colloidal quantum dots Optics Letters 26, 825(2001))。本発明の実施形態は、量子ドットを用いて説明される一方、本発明の実施形態は、量子ドットに限定されない。
【0087】
光を発生する素子を用いる、本発明の実施形態にとって、多数の可能な適用がある。例えば、本発明の実施形態は、種を同定できるようにバクテリア又はウイルスの形状を分類する手段として、巨大タンパク質の形状を分類する手段として、癌化した細胞を同定できるように細胞の核の形状を測定し取得する手段として、細胞の屈折率プロファイルを測定する手段として、及び製造、合成及び生産における品質管理又は他の目的のために小さい対象物の形状を同定する手段として使用され得る。
【0088】
発光素子を含む具体的な光学流体顕微鏡装置は、図10(a)に示される。図10(a)において、量子ドット62のグリッドは、本体の表面16(a)中に埋め込まれ、又はその上に存在する。各量子ドット62は、他の量子ドット62とは異なる蛍光発光スペクトルを有する。図10(a)に示されるように、対象物20は、量子ドット62のグリッド上に存在し、量子ドット62を用いて画像化される。
【0089】
量子ドット62は、約10ナノメートル程度の寸法を有し、隣接する量子ドット間の間隔は、10ナノメートルと小さくてもよい。他のグリッドの間隔及び他の寸法の量子ドットが、本発明の他の実施形態において使用され得る。
【0090】
対象物20の形状及び寸法を画像化するために、対象物20は、量子ドット62のグリッドの上に置かれ、照明光源(図示せず)からの均一な照明域にさらされる。対象物20の下にある量子ドット62は、殆ど照明を受けず、そのため、殆ど蛍光を発しないだろう。
【0091】
グリッド全体からの蛍光を収集し、市販で購入可能な分光計(又は他の検出器)の使用によりそのスペクトルをスペクトル的に分解することによって、どの量子ドット62が覆われているかを決定することが可能である。例えば、量子ドット62の位置及び量子ドット62と関連するそれぞれの蛍光発光スペクトルが分かる。分光計を用いて、コンピュータは、どの蛍光スペクトルが、分光計によって受け取られたかを決定し得、結果として、どの特定のグリッド部位が、対象物20によって覆われるかを決定し得る。これから、対象物20の形状が、量子ドット62の間隔によってのみ制限される解像度で、導き出され得る。
【0092】
量子ドットのグリッドを構成する代わりに、顕微鏡用の別の配置は、個別の量子ドット62の直線状のアレイが採用される配置であり得る。量子ドット62は、表面16(a)上又はその下に存在する。これは、図10(b)に示される。図10(b)において、個別の量子ドット62は、対象物20の流れの方向に垂直に延びる直線に一列に設置される。先に説明した実施形態のように、どの量子ドット62が覆われているかを決定するために、経時で量子ドット62の蛍光スペクトルを測定することが可能である。この例において、対象物20は、流路22を通って量子ドット62のアレイを横切って流れる。経時変化する蛍光スペクトルは、その後、対象物20の形状を決定するために充分なデータを提供するよう処理され得る。
【0093】
図10(a)及び図10(b)に示される光学流体顕微鏡装置の実施形態における、検出器及び照明光源の配置は、変更され得る。2つの具体的な構成が、図11(a)及び図11(b)に示される。図11(a)及び図11(b)は、本発明の実施形態の概略側面図である。図11(a)及び図11(b)において、同一の数字は同一の要素を示す。
【0094】
図11(a)において、照明光源420は、所定の第1の波長光を提供してもよい。第1の波長光430は、第2の波長光431が量子ドット62によって提供されるよう、本体410(a)上又は本体内に設置された量子ドット62を励起してもよい。第2の波長光431は、検出器430によって受け取られてもよい。細胞20が、量子ドット62を通過する際に、それは第1の波長光20を遮断し又は変更するので、量子ドット62から放出された光は、検出器430によって先に受け取られた第2の波長光431とは異なる。この例において、照明光源420及び光学検出器430は、量子ドット62及び本体410(a)上にあるので、本体410(a)は、透明、半透明、又は不透明であってもよい。
【0095】
図11(b)は、異なる構成を有する他の実施形態を示す。この実施形態において、検出器430は、本体410(b)の下にある。この実施形態において、本体410(b)が、透明又は半透明であるので、第2の波長光431は、それを通って検出器430へと通過し得る。
【0096】
更に他の実施形態において、本体410(a)、410(b)が透明又は半透明である場合、照明光源420は、その代わりに、本体410(a)、410(b)の下部に存在し得る。検出器430は、本体410(a)、410(b)の上又はその下に配置され得る。
【0097】
マイクロ流路を有する別の顕微鏡が、製造され得る。これは図12に示される。量子ドット62は、基板22上の、ライン62(a)の2つ以上のセット64中に置かれる。各ライン62は、同一の個別の量子ドット62を有し、各ラインは、他のライン62と異なる発光スペクトルを有するだろう。各セット64の向きは異なり得る。図14に示される実施形態において、蛍光スペクトルは、なおも遮断がされていることを決定するために測定され得る。この場合、特定のスペクトル帯における蛍光消失範囲は、量子ドットの特定のラインが、対象物によって覆われる程度を示すものである。
【0098】
一組のラインを用いた測定を行った後、対象物20は、量子ドットラインの次のセット64へと流される。輸送は、対象物20の配向性が乱されないようなやり方で、実施される。その工程は、全てのラインセット64に対して繰り返される。ラインセット64上でのコンピュータ断層計算を実施することによって、対象物20の形状を決定し得る。
【0099】
図12における構成は、以前の構成に対して利点を有する。例えば、N×Nグリッド上での対象物20の形状は、N個の異なる種類の量子ドットで見出され得る。上述した先の実施形態において、同一の解像度には、N2の異なる種類の量子ドットの使用が必要である。
【0100】
図13及び図14を参照すると、対象物が非常に透明で、量子ドットからの発光を充分に減少させるのに、量子ドットからの励起光場の充分量を遮断しない場合、本発明の実施形態は、代わりに、一過性の(エバネセント)励起場の使用に頼り得る。
【0101】
励起された光場70は、本体中の流路22の表面16(a)上又はその下にある量子ドット62へと向けられる。それは、ガラスと経路の境界面での入射角が臨界角を越えるよう、注意深く調節される。この状況において、指数的に減衰するエバネセント場は別にして、光学的な励起場は、殆ど量子ドット62に到達せず、量子ドット62は、蛍光を発しない又は非常に弱く蛍光を発するだろう。経路中を流れる流体溶媒よりも高い屈折率を有する対象物20が励起された光場70の経路を横切る場合、屈折率の変化が見られるだろう。
【0102】
図14においてより明確に示されるように、対象物20の存在によって形成された新たな屈折率は、臨界角をより大きな値に変更するのに充分に、著しく大きいので、その後、光学励起場は、今度は、流路22における伝播場82になるだろう。伝播場82は、その後、対象物20の下の量子ドット62を励起し得、(光学フィルタを含み得る)画像化システム122及び検出器124が、量子ドット62によって生じた光を受け取り得る。これらの実施形態において、特定のアレイグリッド部位からの蛍光信号は、そのグリッド部位で特定の量子ドット62が遮断されることを示す。
【0103】
図13及び図14を参照して説明された光学流体顕微鏡装置の実施形態は、他の目的のために使用され得る。例えば、それらは、対象物20の屈折率プロファイルを調べるために使用され得る。励起光場の入射角を変更し、いつ透過波が対象物20を通って伝播波になるかを決定することによって、その屈折率プロファイルを正確に測定することが出来る。
【0104】
図15は、本発明の実施形態に係る更に他の光学流体顕微鏡装置を示す。その実施形態は、階段状のラインパターンで設置された量子ドットを用いた。隣接するラインと関連する蛍光信号の違いは、対象物上の特定の位置に起因し得る。
【0105】
図15に示されるような光学流体顕微鏡装置はまた、量子ドットのラインの代わりに、スリット(図示せず)で実装され得る。スリットが充分に狭く、それらが底部から照らされる場合、エバネセント場は、基板上面の上に構成されるだろう。所定のスリット領域を横切る対象物の流れは、エバネセント波を伝播波に変え得る。全透過光を測定することによって、既述の量子ドット手法を用いて得られた情報と同様の一連の情報が決定され得る。
【0106】
発光素子を含む光学流体顕微鏡装置は、任意の適切な方法で製造され得る。1つの例において、図15に示される顕微鏡の構成を作り出すため、フォトリソグラフィ及びエッチング工程が、本体(例えば、基板)中の必要なラインをエッチングするために使用され得る。各導電性ラインが、その後、選択的に帯電され得、逆帯電された同一の量子ドットを含む溶液が、そのラインを横切って量子ドットを流すことによって、選択されたラインに付着され得る。量子ドットの帯電されたラインへの接着は、その後、接着された基板全面をコーティングすることによって、固定化され得る。その工程は、その後、完全な一連のラインが完成するまで、異なる導電性ラインと、同一の量子ドットの異なるセットとを用いて繰り返され得る。量子ドットアレイのグリッドの解像度は、達成可能なリソグラフィエッチングの解像度によってのみ制限される。
【0107】
他のやり方において、細針先(fine needle tip)アクチュエータシステムが使用されてもよい。この方法において、単一のグリッド部位の形成は、量子ドットと、エポキシといったキャリアと、の混合物を用いる。配置された針先は、その後、混合物に浸され、混合物の単一の液滴を堆積させるために基板上の正確な位置へと動かされるだろう。その工程は、その後、グリッド全体が完成するまで、異なる量子ドット−エポキシ混合物について繰り返されるだろう。量子ドットのグリッドの解像度は、特定の位置に動かす針先の達成可能な正確さによってのみ制限される。
【0108】
量子ドットは、約10ナノメートルの発光線幅で作製され得る。蛍光を観察し得る利用可能な発光スペクトルが、約300ナノメートルであると仮定した場合、これは、30の異なる種類の量子ドットを明確に検出することが可能であることを示すだろう。この状況において、図10に示される顕微鏡の構成において提示されるグリッド寸法が、5×5より大きいことはあり得ない。より大きいグリッド寸法は、異なる分光計がグリッドの異なる小区分に割り当てられる場合、達成され得る。この状況において、最も高いグリッド密度は、5×5のサブグリッドを(1/2波長)×(1/2波長)の面積と等しくすることによって、与えられる。グリッド配置が密接であるほど、分光計の回収光によって正確に解像され得ない。これは、すなわち、この顕微鏡構成によって達成され得る解像度が、約100ナノメートルであることを示す。
【0109】
最後に、達成可能な解像度は、利用可能な異なる量子ドット種の数の一次関数であり得る。そのように、さらにより狭い発光帯幅を有する量子ドットを調整することが非常に望ましい。この代わりに、蛍光共鳴エネルギー移動分光法(又は一定の関連する現象)が使用され得る。例えば、色素対の1つの構成要素が光を吸収し、一方他方が発光する、色素対が作製され得る。吸光性の構成要素は、狭吸光帯幅を有するように設計され得、発光性の構成要素は、狭発光性の構成要素である。異なる吸収及び発光波長を有する、これらの色素対の異なる順列組み合わせによって、非常に多くの数の非変性色素種を作製することが可能である。
【0110】
(III.他の流体光学装置の実施形態)
図16は、更に他の光学流体顕微鏡装置の実施形態を示す。この実施形態において、基板22は、個別の量子ドット又はナノ粒子の、角度のついた直線状のアレイが埋め込まれる。量子ドット88の間の水平方向の分離、間隔u112、は、充分に大きく配置されるので、その配置が、CCDカメラ又は他の画像化装置上で画像化される際に、2つの異なるドットを互いに分離することが可能である。1対1の画像化を実施する場合、間隔uは、CCDカメラの画素寸法と等しい又はそれより大きくてもよい。間隔v110は、この顕微鏡の解像度を設定し、そのため、出来る限り小さくてよい。理想的には、それは、包含されるナノ粒子の寸法に等しい。
【0111】
対象物20は、流路22を通って流れ、各量子ドット88からの蛍光スペクトルは、画像化CCDカメラ(図示せず)上でモニターされる。表面16(a)が透明な本体の一部分を形成する場合、CCDカメラは、表面16(a)の底面に搭載され得る。別の方法では、上部から対象物20を画像化することが可能である。しかしながら、これは、元々の入力ビームからの全内部屈折光がCCDによって検出されないようにするのに、ある程度の注意を要する。量子ドット88が、充分に間隔をあけて配置されると、各量子ドット88は、CCD上の画素と明確に関連するだろう。対象物20の形状が、量子ドット88を横切る移動において変化しないとすると、CCD信号の経時変化から、その形状の決定が可能である。
【0112】
先の顕微鏡構成が、サブ波長の空間情報をスペクトルでコード化するための方法として考えられ得る一方、この方法は、サブ波長の空間情報を上の波長(above-wavelength)の空間情報に空間的にコード化する方法として解釈され得る。
【0113】
この方法に関連する2つの明確な利点がある。第1に、蛍光色素分子が、異なるものである必要がない。全アレイの量子ドットは、同一であり得る。これは、装置の製造工程を単純化する。異なる量子ドットの必要性がない。異なる量子ドットの必要性が除外されることにより、他の造影機構の使用が可能となる。1つの造影機構は、ナノ粒子の使用を含み得る。ナノ粒子は、それらの物理的な断面積と比較して散乱断面積が増加する。それらが、量子ドットの代わりに使用される場合、それらの散乱信号は、量子ドットから生じる蛍光信号の代わりに使用され得る。
【0114】
おおよその計算として、10ナノメートルの解像度を望み、且つ対象物の寸法が1マイクロメートルである場合、(10マイクロメートル画素寸法CCD、u=10マイクロメートル、v=10ナノメートルでの1対1の画像化を仮定して)少なくとも1ミリメートル長のマイクロ流路が使用され得る。
【0115】
図17を参照すると、他の構成が示される。この構成は、上述の実施形態の一部と同様である。間隔をあけて配置されたグリッド中に個々の量子ドットを埋め込む代わりに、流路22の底面16(a)に直線状の量子ドット160を設置することが可能である。直線状の量子ドット160は、検出器(図示せず)において別個の光検出素子上に位置づけられる、異なる区分152、154を有し得る。
【0116】
図17における実施形態は、本体中に溝を作製し、その後、その溝に量子ドットを設置することによって形成され得る。量子ドットラインの各区分が、CCD上の単一画素に位置する限りは、この実施形態の解像能は、先の実施形態に匹敵する。光分散性ナノ粒子が、他の実施形態における量子ドットの代わりに使用され得ることも示される。
【0117】
図17に示される実施形態は、利点を有する。第1に、先の実施形態と比較して、より多くの数の蛍光発光分子又は量子ドットが信号に寄与することによって、非常に多くの信号が存在する。第2に、図17に示された実施形態は、製造するのが容易である。直線状の蛍光発光分子を埋め込むことは、均一に間隔をあけて配置された蛍光発光分子を設置するよりも容易であるだろう。
【0118】
図18は、図17における構成の他の変形である構成を示す。この場合、透過又は屈折ライン178は、光学流体顕微鏡装置の本体を横切る。屈折又は透過された信号は、CCD又は他の検出器上で同様のやり方で画像化される。ライン178の異なる区分174、176は、流路22を形成する表面16(a)下に存在し得る検出器中の別個の光検出素子に対応してもよい。対象物20の形状を決定するために、検出器からの信号を処理することは、先に述べた実施形態と同様である。この実施形態は、製造するのが容易である。
【0119】
更に他の実施形態も可能である。例えば、H. J. Lezec, A. Degiron, E. Davaux, R. A. Linke, L. Martin-Moreno, F. J. Garcia-Vidal, T. W. Ebbesen, Beaming Light from a Subwavelength Aperture Science 297, 820(2002)に記載されたもののように、一連の周期的に加工された半球環状にパターン化された透過性孔部を用いることが可能である。適切に設計され、パターン化された孔部は、小さな発散角で効率的に光を透過することができるだろう。良好に制限された光透過率は、透過工程の際、輪郭がぼやけるアーチファクトをいずれも劇的に低減できる。
【0120】
本発明の更に他の実施形態は、異なる寸法を有する光透過領域を用いることができる。そのような光透過領域を用いると、光透過スペクトルを用いて、光透過領域を通過する対象物の形状を決定することが可能である。
【0121】
図19は、単一の光透過領域又は孔部に関する、波長に対する光透過率のグラフを示す。この状況において、厚くて充分な導電性を有する層における孔部は、ゼロモード伝播のためのカットオフ波長よりも短い波長の光のみを透過し得る。つまり、特定の寸法の孔部は、特定の範囲の波長の光を通すだろうし、一方、他の寸法の孔部は、異なる範囲の波長の光を通すだろう。
【0122】
本発明の他の実施形態は、図20(a)〜図20(b)に関して説明され得る。図20(a)に示されるように、本体702は、異なる寸法を有する多数の光透過領域(例えば、孔部)704から構成される。この例において、光透過領域は、アレイ状に存在し、アレイ中の光透過領域のそれぞれは、異なる寸法を有する。図20(a)におけるアレイは、704(a)〜704(i)で標識された9個の孔部を有し、各孔部は、異なる寸法を有する。孔部は、円形で、放射状の断面を有し、任意の適切な深度を有してもよい。他の実施形態において、孔部は、必要に応じて、長方形又は正方形の断面を有し得る。1つのアレイ内に異なる断面形状を備える孔部を有することも可能である。
【0123】
図20(b)に示されるように、図20(b)における透過スペクトルの部位a〜iは、それぞれ、各孔部704(a)〜704(i)と関連してもよい。図20(a)に示されるように、孔部704(a)は、アレイ中の最も大きな孔部であり、図20(b)におけるスペクトルの部位aに対応し、最も広い範囲の波長での光透過を許容し、また最も低い光透過率を有する。これに対して、孔部704(i)は、アレイ中の最も小さい孔部であり、図20(a)におけるスペクトルの部位iに相当し、最も高い光透過率を有する。
【0124】
言い換えれば、図20(b)における各段階の高さは、特定の孔部を介した透過率に相当し得る。透過スペクトルをモニターすることによって、アレイ上の対象物の遮断パターンを得ることが可能である。アレイ内において、(約10nmの製作公差を仮定して)少なくとも約2、5、或いはさらに少なくとも10の異なる孔部の種類及び/又は寸法が存在し得る。
【0125】
図20(a)に示されるように、アレイ中の孔部の寸法は、列内又は行内において規則正しく増大又は減小してもよい。そのような系列は、孔部のアレイの全面を通過する対象物をより容易に表示し得る、透過スペクトルの作成を助け得る。孔部のアレイが2次元であり、孔部の寸法が、列内及び/又は行内において増大することが好ましい。図20(a)に示されるように、寸法は、列(又は行)の一端部から他端部まで増大し得る。連続的な列(又は行)は、その結果、次第に増大するより大きな孔部を有し得る。
【0126】
図20(c)に示されるように、孔部704のアレイ上を横切って通過する、対象物700(例えば、細胞)は、孔部704(b)、704(c)及び704(f)を遮断する。図20(d)に示されるように、孔部704(b)、704(c)及び704(f)と関連するスペクトルの部位b、c及びf(図20(b)参照)はない。図20(a)及び20(c)におけるスペクトルを用いて、異なる寸法の孔部704(a)〜704(i)の空間位置を知ることで、孔部704のアレイ上を横切って通過する対象物700の形状を決定することが可能である。
【0127】
本体中の孔部の密度が増加され得る(それによって解像度が増加する)ように、出来るだけ小さい直径を有する孔部を作製することが好ましい。円形の孔部及び任意のいずれの形状の孔部でも、本発明の実施形態に使用されてよい。透過率も、高い屈折率の材料で孔部を満たすことによって増加されてもよい。これは、各孔部内の有効波長を効果的に減少させ、小さい減衰係数を有する、より伝播性の高いモード又はゼロモードの導波路の存在を許容する。高い透過率は、システムの感度を向上させ、透過率の測定をより容易にするので、望ましい。
【0128】
図21は、本発明の実施形態に係るシステムの概略図を示す。図21は、光源790からの光を受け取る、(先に説明した)パターン化された孔部アレイ800を示す。対象物806は、孔部アレイ上を通過し、アレイ800中の特定の孔部を遮断する。アレイ800を通過する光は、CCDカメラ804を有する顕微鏡810へと通る。コンピュータ(図示せず)は、動作可能にCCDカメラ804と連結されてよく、プロセッサ、CCDカメラ804中のどのピクセルが光を受け取るかを決定するためのコードを有するコンピュータ読み取り可能な記録媒体、孔部アレイ800及びCCDカメラ804を用いて作成された透過スペクトルを解析するためのコード、及びアレイ800上を通過する対象物806を画像化及び/又は解析するのに透過スペクトルを用いるためのコードから構成されてよい。
【0129】
本発明の実施形態において、(顕微鏡の解像度によって制限される)本体の領域Apixel上の位置を、CCD装置といった画像化カメラ上の単一画素上に位置づけることが可能である。各領域Apixelを、一連のパターンの10個の個別の孔部で満たすことが可能である。各孔部からの透過スペクトルを測定する場合、本発明の実施形態は、Apixelよりも10倍小さい画素寸法での解像度を達成し得る。言い換えれば、本来の画像化システムがXマイクロメートルの解像度を有する場合、このやり方によって、Nが個別の孔部の数であるときに、sqrt(N)Xマイクロメートルにまで解像度が増加する。
【0130】
スペクトル透過プロファイルを得るための最も単純なやり方は、入力光波長を単に走査し、カメラで多数の画像を取得することであってもよい。
【0131】
図20(a)〜図20(d)及び図21を参照して説明した本発明の実施形態は、本発明の範囲から逸脱しない限り、前述した実施形態のいずれの特徴とでも組み合わせられ得ると理解される。例えば、特に図1〜図9に関して説明された製造方法、材料、寸法及びシステムは、本発明の範囲から逸脱しない限り、図20(a)〜図20(d)に関して説明された実施形態の詳細と組み合わせられ得る。
【0132】
図20(a)〜図20(d)及び図21に示された実施形態は、前述した実施形態に対して利点を有する。第1の利点は、これが、結果としてより小型のシステムとなることである。第2の利点は、対象物の画像化が1ショットでなされ、その時間枠がカメラのフレーム率によって制限されることである。走査波長光源が使用される場合、それは、光源が1サイクル走査するのに要する時間によって制限される。画像化フレーム間の対象物の移動は、画像の品質を低下させないだろう。
【0133】
ここで使用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定されるものではなく、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴と等価のもの、或いはそれらの一部を除外するという意図はなく、様々な変更が、請求される本発明の範囲内において可能であると認識される。
【0134】
さらに、本発明の1つ又は複数の実施形態の1つ又は複数の特徴は、本発明の範囲から逸脱することがない限り、本発明の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせられ得る。
【0135】
上述した全ての特許、特許出願、刊行物、及び説明は、全ての目的のため、その全体において、参照によってここで援用される。いずれも先行技術であると自認されるものではない。
【0136】
「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」の記述は、特に異なるものとして示されない限り、「1つ又は複数(one or more)」を意味すると意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年5月9日に出願された米国特許出願第11/125,718号の一部継続出願であって、米国特許出願第11/125,718号は、正規の出願であり、2004年7月23日に出願された第60/590,768号及び2004年6月4日に出願された第60/577,433号の米国仮特許出願に基づく優先権を主張する。本出願も正規の出願であり、2006年3月20日に出願された米国仮特許出願第60/783,920号の出願日の利益を主張する。これらの開示の全ては、全ての目的のため、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府によって支援された研究又は開発でなされた発明に関する権利に関する声明は、適用されない。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体工学の分野は、急速に進歩してきている。これらの進歩は、マイクロ流体回路の大規模集積化の発達、及びライフサイエンス研究へのマイクロ流体工学の様々な応用に関係する。現在、光学顕微鏡は、生物学的な標的物と同様に、基礎的な微小規模の流動物理学を研究するための技術として、マイクロ流体工学の研究に採用されている。それは、これらの集積化されたマイクロ流体工学システム内で実行されるプロセスを研究するためにも使用される。概して、これらの装置は、生物学的な標的物を分析するために、大規模のインフラストラクチャ(例えば、巨大な顕微鏡、チップリーダ)を利用する。
【0004】
近接場光学顕微鏡(Near field scanning optical microscope(NSOM))は、生物学的な標的物を研究するために広範囲に使用される。NSOMは、〜50nmの空間解像度で、構造を光学的に解像し得る。NSOMは、標的試料上の特定の位置を光学的に探査するために、NSOMプローブチップの末端で強く増強され且つ厳密に制限された光場を用いる。バクテリアは、従来型の光学顕微鏡で容易に画像化することができないため、NSOMは、バクテリアを形状観察するのに特に有用である。走査型電子顕微鏡といった、他の高解像度のイメージング装置と比較して、NSOMは、蛍光を介して、試料中のタンパク質又は生化学物質の分布図を選択的に作成することができる。加えて、NSOMの画像化方法は、非破壊的であり、緩衝培地中に浸された生きた対象物を画像化するのに使用され得る。これらの利点の全てを鑑みると、NSOMは、バクテリアの種類を識別するという医療的な適用において、幅広く使用され得ると期待されるだろう。しかしながら、これに関する公開がされていないということは、NSOMを使用するのに、重大な技術上の障害が存在することを示す。そのような障害の1つは、NSOMを用いてハイスループットの画像化を実行することの困難性である。ハイスループットの画像化には、標的となる生きた対象物の全面をラスタ走査するプローブチップが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、NSOM及び大きな光学装置を使用する従来型のマイクロ流体工学システムについて改良した装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、光学流体顕微鏡装置又はOFM装置に関する。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、NSOMの解像度と同様の解像度を達成することができる。しかしながら、NSOMとは異なり、本発明の実施形態は、ハイスループットの画像化のために使用され得る。
【0007】
本発明の1つの実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該本体中の異なる寸法を有する光透過領域と、該異なる寸法を有する光透過領域を通して照明を提供するために適用された照明光源と、該光透過領域を通して該照明光源からの光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該表面上又は該表面下の、複数の個別の発光領域と、該複数の個別の発光領域によって生成された光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、表面を有する流路を備える本体と、該表面上又は該表面下の少なくとも一つの光画像素子と、該少なくとも一つの光画像素子によって生成された光を受け取るために適用された光学検出器と、から構成される光学流体顕微鏡装置に関する。
【0010】
本発明のある実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、CCD(電荷結合素子)といった既製品の検出器を使用し得る。既製のリニアCCDアレイのパラメータに基づき、1ミリ秒という短い時間枠内で、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置によって、バクテリアの100×100画素の画像が獲得され得る。本発明の実施形態において、多数の光学流体顕微鏡装置も、単一チップ上で平行に操作され得る。
【0011】
本発明の実施形態の高速処理能力、及び本発明の実施形態において多数の光学流体顕微鏡装置を使用することができることにより、本発明の実施形態は、NSOMよりも充分に高い画像化処理速度を有する。例えば、NSOM装置において、100×100画素の画像のための取得時間は、約10ミリ秒である。比較すると、単一の1000画素のリニアCCDアレイ上に設置された一連の平行な10個の光学流体顕微鏡装置は、NSOMが単一の画像を作成する時間で、最大で100個の100×100画素の画像を提供し得る。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置のハイスループットの画像化能力及び高い解像度によって、それらは様々な医療への適用に非常に適したものとなる。そのような応用は、異なるバクテリアの種類を識別することを含む。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、従来型のマイクロ流体工学装置において生物学的な画像を得るために使用された巨大な光学装置(例えば、一連の対物レンズ及び複雑な顕微鏡の設置)を省略する。従来型の画像化システムと異なり、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、持ち運びができ且つ小型である。
【0013】
光学流体顕微鏡装置を製造する方法及びそれを使用する方法も開示される。
【0014】
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下において更に詳細に説明される。
【0015】
図において、同一の数字は、同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の複数の構成部品の斜視図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の、作動している実施形態の上面図を示す。図面において、光学流体顕微鏡装置における流路の幅は、約44マイクロメートルである。光学流体顕微鏡装置における流路の概略図も図面の左側に示される。
【図3】(a)は、接近した、斜視方向からの、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の他の概略図である。(b)は、(a)に示された光学流体顕微鏡装置における流路の概略上面図である。流路の底部における光透過領域は、その壁に関して斜めの直線を形成する。(c)は、(a)に示された光学流体顕微鏡装置の概略側面図である。(d)は、光学流体顕微鏡装置における各光検出素子から収集された時間経過の結果を示し、各光検出素子は、対象物の画像を作成するのに使用され得る出力を発生し得る。
【図4】(a)〜(e)は、光学流体顕微鏡装置が製造される際の、その断面図を示す。
【図5】光学流体顕微鏡装置の顕微鏡画像、及び透過強度対時間の2つのグラフを示す。左のグラフは、第1の対応する矢印によって示されるように、左の孔部を通した透過強度の変化を示す。右のグラフは、第2の対応する矢印によって示されるように、右の孔部を通した強度の変化を示す。
【図6】(a)は、光学流体顕微鏡装置の上面透過図を示す。光学流体顕微鏡装置における光透過領域は、孔形状(直径約0.5マイクロメートル)である。(b)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置において、隣接する孔部を介した遮断の時間経過の結果を示す。(c)は、クラミドモナスの顕微鏡画像を示す。(d)は、クラミドモナスの光学流体顕微鏡装置の画像を示す初期データを示す。
【図7】光学流体顕微鏡装置の長さに沿った、一連の散在した参照孔部アレイを示す。
【図8】本発明の実施形態に係る他の光学流体顕微鏡装置を示す。この実施形態において、2つの異なる寸法を有する光透過領域が、光学流体顕微鏡装置に使用される。
【図9】(a)〜(c)は、光学流体顕微鏡装置を用いるシステムの概略図を示す。これらの図は、様々な操作段階における血液分別ユニットを示す。作動中の素子が示される。(a)は、注入部と、試料が試薬と混合される混合部と、を示す。(b)は、異なる透過光学フィルタを有する、一連の光学流体顕微鏡装置を通して、混合物が画像化される、光学流体顕微鏡装置の測定の状態を示す。(c)は、分析物の所定の画分がいずれも、異なる試薬と再混合され、その後、再分析され得る、再処理の状態を示す。
【図10】(a)は、本発明の実施形態に係る他の光学流体顕微鏡装置の上面図を示す。この実施形態において、流路中の孔部の代わりに、個別の量子ドットが、細胞といった生物学的な対象物を画像化するのに使用される。(b)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の他の実施形態の上面図を示す。量子ドットが、アレイ状というよりはむしろ直線状に存在する。
【図11】(a)及び(b)は、図10(a)及び(b)において示されたものと同様の実施形態のための具体的な照明光源及び検出器の配置を示す。
【図12】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態において、量子ドットの2次元アレイが流路中に存在し、それらは、互いに関して異なる配向で設置される。
【図13】図10(b)に示された光学流体顕微鏡装置の概略斜視図を示す。
【図14】量子ドットを用いる光学流体顕微鏡装置の側面図を示す。
【図15】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態において、量子ドットは、直線状に配置され、その直線は、互いに関してずれている。
【図16】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この実施形態における量子ドットは、先の実施形態よりも、より大きな距離で間隔があけられる。
【図17】量子ドットを用いる本発明の他の実施形態の上面図を示す。この例における量子ドットは、斜線状に存在する。
【図18】基板中に薄い透過又は屈折溝構造が形成される実施形態を示す。
【図19】光透過率対波長の典型的なグラフを示す。
【図20】(a)は、光透過領域を含む本体の平面図を示し、該光透過領域は、異なる寸法からなる。(b)は、透過率対波長のグラフを示す。(c)は、対象物が光透過領域を遮断する際の、光透過領域を含む本体の平面図を示し、該光透過領域は、異なる寸法からなる。(d)は、対象物が、異なる寸法を有する光透過領域の一部を遮断する際の、透過率対波長の他のグラフを示す。
【図21】本発明の実施形態に係るシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、少なくとも流路の一部を定義する本体において、光透過領域(例えば、間隔をあけた孔部)又は個別の発光素子(例えば、量子ドット)を使用し得る、光学流体顕微鏡に関する。光透過領域又は(他の要素と連結した)発光素子は、流路を通過する生物学的な対象物(biological entity)といったものを画像化するのに使用され得る。他の実施形態は、流路を定義する底面の壁の表面中又はその表面上に少なくとも一つの光イメージング素子を有する光学流体顕微鏡装置に関する。光イメージング素子は、孔部といった1つ又は複数の光透過領域、量子ドットといった1つ又は複数の発光素子、反射性のライン又は密接する量子ドットのラインといった1つ又は複数の直線状の構造物、又はナノ粒子といった1つ又は複数の光分散体の形であってもよい。
【0018】
特に説明する実施の形態において、細胞の画像化について述べられる。しかしながら、本発明の実施形態は、それに限定されないと理解される。例えば、細胞の代わりに、適切な対象物であればいずれも、画像化され得る。対象は、化学的な又は生物学的な物であってよい。生物学的な対象物の例は、全細胞、細胞構成要素、バクテリア若しくはウイルスといった微生物、タンパク質といった細胞構成要素等を含む。巨大分子といった化学的な対象物が、本発明の実施形態によって画像化されてもよい。
【0019】
(I.光透過領域を用いた光学装置)
(A.光透過領域を用いた具体例)
本発明の1つの実施形態は、光学流体顕微鏡装置に関する。光学流体顕微鏡装置は、少なくとも流路の一部を定義する本体を備える。光透過領域は、その本体中に存在し、その本体は、流路の底面と一致する表面を有してもよい。照明光源は、光透過領域を通過し、光学検出器によって受け取られる光を提供する。光学検出器は、照明光源としてその表面の反対側に配置され、光透過領域とそれぞれ関連する個別の個々の光検出素子(例えば、画素)を有してもよい。光学流体顕微鏡装置は、従来型のマイクロ流体工学の光学システムよりも非常に小型である。
【0020】
ある実施形態において、光透過領域は、不透明な又は半透明な層に定義されるマイクロホール又はナノ−ホールであり、それは本体の一部を形成してもよい。それらホール(孔部)は、電子ビームリソグラフィを含む、いずれかの適切な孔部形成工程を用いて定義されてもよい。本発明の実施形態において、各孔部(又は光透過領域)は、約5、1、若しくは0.5マイクロメートル(ミクロン)よりも小さい寸法(例えば、直径)を有してもよい。その孔部はまた、任意の適切な形状を有していてもよく、円形、四角形等であってもよい。
【0021】
孔部の多くはまた、アレイを形成する。そのアレイは、1次元又は2次元であってもよい。例えば、ある実施形態において、アレイ中の孔部は、流路の1つの側面部から流路の他の側面部まで延在する、斜めの直線を形成してもよい。
【0022】
ある実施形態において、アレイ中の光透過領域は、異なる寸法を有してもよい。異なる寸法の光透過領域を設置することによって、その光透過領域上を通過する対象物の形状を決定するために光透過スペクトルをモニターすることが可能である。
【0023】
ある実施形態において、光透過領域のアレイ中に、少なくとも約2、5、又は10個の異なる寸法の光透過領域が存在してもよく、それらは、いずれかの適切な方法でアレイ中に配置されてもよい。光透過領域の寸法(例えば、直径)は、光透過領域のアレイにおいて、ある規則正しい(例えば、光透過領域の行内又は列内の寸法を増加する)方法で増加してもよい。例えば、1つの行は、寸法が(例えば、0.1マイクロメートルの増加量で0.1から1.0マイクロメートルに)徐々に増加し、そのパターンを繰り返す光透過領域を有してもよい。
【0024】
あらゆる適切な数若しくは密度の孔部又は光透過領域が、本発明の実施形態に使用されてもよい。例えば、光学流体顕微鏡装置あたり約10、50、100、又はさらに1000以上の光透過領域が存在してもよい。ある実施形態において、平方センチメートルあたり10、50、100、又は1000以上の光透過領域が存在してもよい。
【0025】
光透過領域及び光学検出器は、光学流体顕微鏡装置において「画像化装置(imager)」を形成し得る。画像化装置は、生物学的又は非生物学的な試料中に存在し得る、生物学的な標的物といった対象物を画像化し得る。試料及びこれに包含される生物学的な標的物は、光学流体顕微鏡装置の、成形された上側の部位において定義された標準的なマイクロ流体工学の集束装置を用いて、画像化装置へと輸送され得る。光学流体顕微鏡装置の、成形された上側の部位は、流路を定義し、ポリ−(ジメチルシロキサン)(PDMS)材料から構成されてもよい。動電学的なもの又は圧力が、試料を光学流体顕微鏡装置中の流路を通して画像化装置へと移動させ、それを通り抜けさせ得る。生物学的な標的物が画像化装置を通過する際、各光透過領域を通った、照明光源からの光の透過率は、時間とともに変化する。光透過領域を通過する変化した光信号を用いて、画像化装置を通過する標的物の画像が再構築され得る。
【0026】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置10の概略図を示す。光学流体顕微鏡装置10は、多層型構造であり得る、本体16を有する。他の実施形態において、それは、その代わりに、単一の一体型構造であってもよい。図示された例において、しかしながら、本体16は、不透明又は半透明な層19を含み、さらにその中に光透過領域14を有する。光学流体顕微鏡装置における流路22中を流れる流体から、不透明又は半透明な層19を隔てるために、透過保護層(図示せず)が、不透明又は半透明な層19を、任意に覆ってもよい。
【0027】
本体16は、流路22を定義し又は包含してもよく、その本体16の表面16(a)は、流路22の底壁と一致してもよい。作動時に、流路22は、その中を流れる細胞20を含む流体を有し得る。マイクロポンプ、動電学的装置及び他の装置(図示せず)が、流路22を通して流体を流すために使用され得る。
【0028】
流路22は、いずれの適切な寸法を有してもよい。例えば、流路22の幅及び/又は高さはそれぞれ、ある実施形態において、約10、5、又は1マイクロメートルより小さくてもよい。
【0029】
本体16における光透過領域14は、孔部であることが好ましい。例えば、光透過領域14は、金といった金属製の層にエッチングされた孔部であってもよい。図示された例において、光透過領域14は、流路22の1つの側面部から流路22の他の側面部まで延在する斜めの直線を形成する。他の実施形態において、光透過領域14は、アレイ又は、流路22内の流れの方向に垂直に延びる1次元の直線の形状であり得る。
【0030】
照明光源12は、表面16(a)の一つの側面上に存在する。照明光源の適切な例は、白色光源、自然光、着色光源等を含む。照明光源12は、流路22を通る流体を通過する光を生じる。適切な照明光源は、市販で購入可能である。
【0031】
光学検出器18は、表面16(a)の他方の側面上に存在する。光学検出器18は、電荷結合素子を含んでもよく、光透過領域14にそれぞれ対応する個別の光検出素子のアレイを含んでもよい。光学検出器18はまた、ダイオードアレイ(例えば、リニア又は2次元ダイオードアレイ)であってもよく、ダイオードアレイ中の各ダイオードは、光透過領域14に対応する。適切な光学検出器も、市販で購入可能である。
【0032】
図示するように、生物学的な細胞20を含む流体は、流路22を通って流れてもよい。細胞20が流路22を通過する際、光透過領域14は、生物学的な細胞20(又は他の対象物)を画像化するのに使用され得る。例えば、図1(a)に示すように、細胞20を含む液体は、流路22を通って流れてもよい。それが流路22を通って流れる際、照明光源12からの光は、流路22を通過し、本体16の表面16(a)を照らす。細胞20によって遮られない光は、ほとんど変化を受けることなく光透過領域14を通過する。細胞20に伝わる光は、遮断され得、又は細胞20を通過する光と比較して、ある程度変化し得る(例えば、強度が低下する、波長が変化する等)。上述したように、光学検出器18中の個々の光検出素子(図示せず)は、それぞれ光透過領域14と連結され得る。検出器18中の個々の光検出素子それぞれが、経時で測定され、経時で光検出素子によって受け取られた光の変化が、細胞20を画像化するのに使用され得る。この工程は、以下で更に詳細に説明される。
【0033】
図2を参照するに、参照番号34(a)は、マイクロ流体工学装置に使用され得るマイクロ流体工学の経路システムの概略図を示す。参照番号34(b)は、参照番号34(a)に対応するマイクロ流体工学の経路システムの一部分のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。参照番号34(b)によって示されるように、光透過領域のラインは、流路の1つの側面部から他の側面部へと延びる。
【0034】
分岐した流路構造は、光透過領域を含む画像化装置の中央部へと生物学的な標的物を「集中させる(focus)」のに使用されてよい。例えば、生物学的な標的物は、参照番号34(a)によって示される3つの上流流路を有する流路の中央の流路中を流れ得る。3つの流路が、単一の流路へと合流されると、生物学的な標的物は、中央の単一の流路に閉じこめられた状態になるだろう。これによって、生物学的な標的物が、光透過領域を通過する際に、実質的に一直線に動くことができるようになる。
【0035】
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置の操作は、図3(a)〜3(d)に関して、更に説明され得る。図3(a)は、接近した視点からの、本発明の実施形態に係る光学装置の他の概略図である。図3(b)は、図3(a)における光学装置中の流路の上面図である。図3(c)は、図3(a)に示される光学流体顕微鏡装置の側面図である。図3(d)は、光学装置における各画素から収集された時間経過の結果を示し、各画素は、対象物の画像を作成するために処理され得る。
【0036】
図3(a)〜図3(c)に示されるように、細胞20は、流路22を通過し、それが流路22を通過する際に、光透過領域14を遮断する。細胞20、又は他の標的対象物は、一定の速度で流路22を通って流れる。細胞20が、画像化装置の中央に集められるように、動電学的又は圧力装置(図示せず)が、細胞20を含む流体を流れさせ得る。図3(a)に示されるように、光透過領域14は、流路22の1つの側面部から流路22の他の側面部まで斜めに延在する。光透過領域14を傾斜させることによって、流路22の各側面部が測定され得、細胞20の外側縁部を画像化するのに使用され得る。他の実施形態において、光透過領域14は、流路22の壁部に垂直な一直線の状態で存在し得る。
【0037】
図3(c)に示されるように、光学検出器18は、複数の光透過領域14を含む不透明又は半透明な層19の下に存在する。不透明又は半透明の層19は、(透過層上に存在し得る)金膜であってよく、100ナノメートルで、白色光透過に対してほぼ不透明であってよい(金層における632.8ナノメートルのHe−Neレーザーによる表皮深さ(skin depth)は、約12ナノメートルである)。
【0038】
いずれの適切な市販で購入可能な光学検出器が、本発明の実施形態において使用されてもよい。光学検出器18は、光透過領域14にそれぞれ対応する複数の個別の光検出素子(例えば、画素)を含む。作動時に、光学検出器18は、光透過領域14を通して、照明光源12からのほとんど変化しない光を受け取ってもよいし、或いは受け取らなくてもよい。これは、細胞20が光透過領域14を覆っているか否かによる。光透過領域14を通って受け取られた光信号の経時での変化が、細胞20を画像化するのに使用され得る。
【0039】
図示されるように、図3(d)は、各光透過領域14下での各光検出素子から収集された時間経過の結果を示す。より特異的には、検出器18における各光検出素子の経時での出力が示される。光透過領域14の既知の位置と(それらが関連する光検出画素と)光学検出器18における個別の光検出素子から生じた時間経過の結果とを用いて、対象物の画像が、図3(d)に示されるように形成され得る。
【0040】
標的物が光透過領域14上を通過する際、それらを通過する光の特性がある程度変化させられる。実際に、各光透過領域14は、近接場光学顕微鏡(NSOM)のプローブチップのように、又は共焦点顕微鏡におけるピンホールとして機能する。本発明の実施形態は、従って、高い感度を有する。
【0041】
各光透過領域と関連する時間経過の結果は、画像化される標的物の外形に加えて、その光学特性に依存する。例えば、所定の時間における所定の位置での低い強度に対応する画素出力は、流路における特定の位置での対象物の幅に関するデータを提供する。各画素に対するデータは、対象物の画像を形成するためにコンピュータを用いて処理され得る。この例において、細胞20は、それが流路22を通って、検出器の画素上及び光透過領域14上を通過する際、一直線に動く。
【0042】
本発明の実施形態は、複数の利点を有する。本発明の実施形態は、高解像度を与え、安価に製造され、少量の試料量を使用し、表示が容易であり、高い処理能力を有する。本発明の実施形態は、マッチ箱と同じくらい小さくてよく、ハイスループットの処理が可能であり、大量製造が容易である。従来型の巨大な顕微鏡と異なり、それらは、製造するのが容易で安価であり、それらは小型である。本発明の実施形態はまた、サブ波長の解像域に達し得、従って、小さなバクテリア及びウイルスのチップ上での光学イメージングの新しい分野を切り開く。異なるウイルス又はバクテリアの種類を画像化し、識別するためのハイスループットの方法は、生物学的及び医療上の使用にとって重要且つ好都合であり得る。
【0043】
(B.光学流体顕微鏡装置を製造する方法)
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、任意の適切な方法で製造され得る。本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を製造する具体的な方法は、図4(a)〜4(e)を参照に説明され得る。エッチング、積層、及びソフトリソグラフィを含むよく知られた工程の任意の適切な組み合わせが、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を製造するのに使用され得る。
【0044】
イメージングアレイの製造は、図4(a)に示され、ガラス板32の透明表面上の金層34(約100ナノメートル厚)を先ず蒸着させることによって始まる。ガラス板32は、その代わりに、いくつかの他の透明層であってもよい。金層34は、その代わりに、任意の他の適切な不透明又は半透明の層であってもよい。
【0045】
図4(b)に示すように、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)レジスト層36は、その後、金層34上に流され、標準的な電子ビームリソグラフィが、PMMAレジスト36中に孔部パターンを形成するのに使用される。PMMAレジスト36の代わりに、いずれの他の適切な種類のフォトレジストが使用されてもよい。
【0046】
図4(c)に示されるように、現像後、金層34は、ウエットエッチングされ、それによって画像化装置の孔部39が定義される。その代わりに、ドライエッチング工程が、画像化装置の孔部39を形成するのに使用されてもよい。
【0047】
他の実施形態において、エッチングが使用される必要性はない。例えば、レーザーアブレーション工程が、孔部39を形成するのに使用され得る。この場合、フォトレジスト層は、孔部39を形成するのに必要とされない。
【0048】
図4(d)に示されるように、残存するPMMA層36は、その後、除去され、電気的又は機械的に、画像化装置を光学流体顕微鏡装置の流体部位から隔離するように働く、新しいPMMA膜37(約200ナノメートル厚)に置換される。代替案としては、PMMA膜37の代わりに、異なる種類の透明又は半透明の絶縁材料が使用され得る。
【0049】
新しいPMMA膜37、先のPMMA層36、及び光学流体顕微鏡装置において形成された任意の他の層が、いずれの適切な工程を用いて堆積されてもよい。具体的な工程は、ローラ塗布、スピン塗布、蒸着等を含む。
【0050】
最終的な組立段階において、図4(e)に示すように、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造体40が、前もって形成され、その後、PMMA膜37に接着される。接続用孔部(図示せず)が、その後、流体の注入部及び排出部を形成するために、PDMS(ポリジメチルシロキサン)構造体40中に空けられる。PDMS構造体37は、(当業者に公知の)ソフトリソグラフィ技術を用いて形成されてもよく、その後、約30秒間、空気プラズマにさらされる。PDMS層40及びPMMA膜37は、一緒に積層されてもよい。組立後、光学流体顕微鏡装置の様々な構成要素の間の結合強度を改善するのを助けるために、80℃のポスト焼成が用いられ得る。
【0051】
また、図4(e)に示されるように、個別の光検出素子43(a)を含む検出器43は、本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を形成するために、接着又は他の適切な結合機構を用いて、ガラス板32に取り付けられる。上述のように、光学検出器43は、市販で購入可能な部分であり得る。
【0052】
適切な電子装置(図示せず)が、取付検出器に接続されてもよい。そのような電子装置は、画像処理ソフトウエア、異なる生物学的対象物を識別するためのソフトウエア、信号処理ソフトウエア及び電子装置等から構成されるコンピュータを備えてもよい。当業者は、光学流体顕微鏡装置内の画像化装置から画像を形成するために、どのような種類の電子装置が、本発明の実施形態において、使用され得るかを認識している。加えて、いずれの信号処理を実行するためのコンピュータコード又は他のソフトウエアに関連する機能も、当業者によって作製され得る。コンピュータは、C、C++、パスカル等を含む任意の適切なプログラミング言語でコーディングする。
【0053】
(C.孔部の間隔及び解像度)
上述したように、典型的な光学流体顕微鏡装置において、不透明な金層における孔部を通過する光の透過は、不透明な層の底部に直接存在する、リニアCCD又はフォトダイオードアレイといった検出器によって監視される。この配置は、光学流体顕微鏡装置を小型化し、巨大な光学装置から解放する。各孔部及び各孔部を通る光の透過は、単一のCCD画素又はフォトダイオードに一意的に位置づけられ得る。例えば、孔部間の間隔は、約13マイクロメートルの幅で存在し得るので、その間隔は、市販で購入可能な検出器における個別の光検出素子(例えば、DalsaトールピクセルセンサIL−C6−2048といったラインスキャンセンサ)の間隔と同一である。
【0054】
流れの方向と垂直なy方向の画素解像度、γyは、この方向における隣接する孔部の間隔に依存する。金膜を通してエッチングされた、単位幅あたりの孔部が多いほど、以下の方程式(1)によって定義される達成可能な解像度が高い。方程式(1)は、
【数1】
で表され、式中、nhは孔部の数に等しく、wは路幅である。例えば、路幅が40μmである場合、流路全域に40個の孔部が存在すると、y方向の画素寸法は、1マイクロメートルであり得る。x(流れ)方向において、画素寸法は、方程式(2)によって定義されるように、光学測定ユニットの取得速度及び標的物の移動速度によって決定される(即ち、x方向における解像度は、標的物の移動速度u×画素取得時間Δtに等しい)。
【数2】
例えば、標的物の流速が毎秒100マイクロメートルであり、検出器の読み取り速度が1KHzである場合、X方向における最大解像度は、約0.1マイクロメートルに等しいだろう。
【0055】
光学流体顕微鏡装置の感度は、各孔部を通って透過した光の総量に依存する。不透明な層が完全導電性であると仮定して、孔部寸法(Sh)の2つの異なる条件が検討される。それらは以下の通りである。
Sh>λ、大きい孔部の制限−この条件では、実効透過域ATは、単純に孔部の物理的な断面部に等しい。
Sh<λ、小さい孔部の制限−この条件では、孔部は非常に薄いと仮定され、Bethe(Bethe HA,'Theory of diffraction by small holes',physics Review,66,163(1944))は、実効透過域がピンホール直径の6乗に比例することを示した。
【0056】
最近の研究では、De Abajo(F. de Abajo, 2002,"Light transmission through a single cylindrical hole in a metallic film", Optics Express, vol. 10, pp. 1475-1484)は、透過率が、孔部深度に応じて、指数的に更に低下することを観察した。これらの2つの影響を組み合わせると、実効透過域は、以下のように表され得る。
【数3】
この方程式は、De Abajoが報告したシミュレーションデータとよく一致する。しかしながら、光学流体顕微鏡装置の性能をよりよく評価する目的で、材料の有限な誘電率、ひいては光学的シミュレーションの回答を考慮に入れることが必要である。(フレーム率の逆数にも等しい)画素測定時間(dwell time)τの総透過光子数が、以下の式によって与えられる。
【数4】
式中、hc/λは1つの単一光子が有するエネルギーであり、Iは照明強度であり、εはCCDカメラの量子効率である。
【0057】
主要なノイズ源は、光子計数ノイズ(ショットノイズ)と、受信ノイズ(nrτ)とを含む。従って、感度は、以下の通り表され得る。
【数5】
従って、マイクロメートルレベルでの解像度と30dBの感度とを有する対象物の画像化は、自然光照明の使用で容易に実施され得る。原理的に、サブ波長の解像度は、単に、所望の解像度限界で、y方向に、隣接する孔部の間隔をあけて配置することによって、光学流体顕微鏡装置において達成され得る。孔部は、数十マイクロメートルでx方向に分離されるので、それらの透過率への寄与は、CCDカメラ上では、互いを区別できるだろう。最先端のナノファブリケーション技術は、数十ナノメートル内の解像度でのエッチングパターンの形成を可能とする。100ナノメートルより低い解像度を有する光学流体顕微鏡装置が、作製され得る。
【0058】
(D.標的物のマイクロ流体輸送)
マイクロ及びナノスケールでは、流体の流れ及び微粒子の輸送は、様々な異なる技術を用いて達成され得、最も一般的なものは、従来の圧力駆動流、動電学的輸送、液滴駆動又は熱毛細管技術を介した不連続な液滴の移動を含む。
【0059】
電子ビームリソグラフィで作成された画像寸法が、20ナノメートルと小さく製造され得る一方、流体光学顕微鏡の最終的な解像度は、標的物の垂直方向及び水平方向の閉じ込めの安定性によって制限され得る。物理的な閉じ込めは、経路寸法が、およそ画像化される標的物の寸法であることを必要とし、より小さい標的物(<0.5マイクロメートル)に対しては、およそ数百ナノメートルの経路寸法を意味し得る。
【0060】
電気浸透輸送は、外部印加電界の、電気二重層との相互作用の結果としてもたらされる。電気二重層は、その境界面(この場合固体−液体境界面)近傍の非ゼロ電荷密度の非常に薄い領域であり、概して、荷電種の表面吸収の結果であり、その結果として、全体の電気的中性を維持するための、溶液中の局所的な自由イオンの再構成によりもたらされる。それは表面駆動効果であるので、動電速度は、経路寸法に殆ど依存しない。そのため、電気浸透輸送は、物理的な閉じ込め及び最終的に望まれる画像化の範囲にとってより好ましい。
【0061】
物理的な閉じ込めに加えて、標的物の流体工学的な閉じ込めが、最終的な画像化の安定性にとって等しく望まれるだろう。多くの研究者が、ブラウン粒子動力学を研究しており、せん断流中にある粒子は、粒子上に働く様々な流体力が釣り合う特定の位置に移動する傾向があることを示している。ここで説明したような、低アスペクト比の微小経路システムにおける圧駆動流には、垂直方向における強いせん断勾配が存在し、そのせん断勾配は、経路の上側又は下側の表面のいずれかから中心部までの距離の約40%の位置で標的物を閉じ込める傾向があるだろう(即ち、2つの垂直方向の等価位置がある)。しかしながら、水平方向において、大きな速度の勾配がなく(即ち、低アスペクト比の経路において、水平方向における放射線状の速度特性は非常に弱い傾向があり)、従って、それが先ず経路に焦点を当てた後に、ブラウン拡散に対して標的物を安定化する機構はない。マイクロ流体装置中の電気浸透駆動の局所的な改良における最近の進展によって、速度特性が調節され、それによって、垂直及び水平方向の両方におけるブラウン運動に対する閉じ込めのための、せん断力の釣り合う単一の位置を形成することが可能となり得る。そのような調節は、従来の圧駆動流で実施することは困難である。ブラウン運動効果及びこれらの効果に対処する方法が、以下で更に詳細に論じられる。
【0062】
電動駆動型マイクロ流体装置が、図2に示される。図2に示されるように、2つの側枝からの流体は、集束力として働く。中央の経路は、上流の集束により画像化装置の中央部に閉じ込められた生物学的標的物を含む。流体に印加された電圧を動力学的に調節することによって、生物学的標的物がより速く検出領域に達するように動かされ得るが、それらがより多くの画素情報を得る目的で検出領域を通過する際は、より遅く動かされ得る。上述したように、不透明又は半透明な層(例えば、穴のあいた金層)は、PMMAの薄い層によって電気ポートから隔離される。PMMA層及びPDMS経路は、より密な密閉及びより良好な流れの特性のために、酸素プラズマで処理される。本発明の実施形態は、画像取得のために適切な速度で生物学的標的物を動かすよう、標的物の移動経路においては50V以下、集束経路においては30Vよりも低い電圧勾配を使用してもよい。
【0063】
(E.具体的な実験結果)
上述で説明され、図3に図示されるように、透過率の時間経過の全情報を用いて、画像化する標的物の幾何学的形状が、再構築され得る。画像化された生物学的標的物は、Carolina biological supplyによって提供されたクラミドモナスであった。クラミドモナスは、単細胞で、双鞭毛の緑藻である。それは、おおよそ円形の形状であり、約10〜20マイクロメートルの範囲の直径を有する。それは、充分に開発された技術によって形質転換され得る、非常に明確な遺伝情報を有するため、研究ツールとして一般的になっているいくつかの種を含む。これらの最初の実験において、図1に示されたものと同様のOFM構成が使用された。各孔部を介した透過率の変化は、Olympus IX−71倒立顕微鏡に装着された、8ビットSony XCD−X710ファイヤーワイヤー(登録商標)CCDカメラによって記録された。
【0064】
図5は、単一のクラミドモナス細胞が、それらの上を通過する際の2つの隣接する孔部の透過率の変化を示す。10個の連続的な画像フレームが、コンピュータプログラムへと送られ、そこから、各孔部からの画素情報が抽出される。図5から、孔部を介した光透過率が、画像化領域を横切って流れる標的物に動的に応答することが理解され得る。より多くのフレームが迅速に収集されれば、より詳細な画素情報が取得され得、生物学的試料の2次元画像がその後再構成され得る。
【0065】
図6(a)は、光学流体顕微鏡装置の透過画像を示す。孔部は、それらが示されるよりも小さい(0.5マイクロメートル)。図6(b1)及び図6(b2)は、隣接する孔部を介した遮断の時間経過の結果を示す。図6(c)は、クラミドモナスの顕微鏡画像を示す。図6(d)は、クラミドモナスの光学流体顕微鏡装置の画像を示す初期データを示す。
【0066】
(F.ブラウン運動)
光学流体顕微鏡装置に採用される画像化方法は、孔部アレイを横切る標的対象物の流れが、全軌跡の間、一直線状であり、ずれないことを示唆する。一直線の軌道からのずれはいずれも、処理された対象物の画像を変形させ得る。
【0067】
取得され得る画像の解像度は、その軌跡に沿った対象物の実効的なずれによって制限される。意図しない対象物の軌跡のずれは、温度勾配、大きなシステムの振動、及びブラウン運動によって引き起こされ得る。最初の2つは、注意深いシステム設計によって最小化され得る一方、ブラウン運動を直接抑制するためになされ得ることはほとんどない。
【0068】
時間スケールtでの、粘性ηの流体中、直径l(エル)の球状粒子の、一次元におけるずれの2乗平均(式5−1)は、以下の式6によって与えられる。
【数6】
【数7】
式中、kBはボルツマン定数であり、Tはシステム温度である。室温の水中に漂う直径10マイクロメートルの対象物は、約10ミリ秒の時間の間に一次元において平均29ナノメートルのずれを受けるだろう。回転方向に作動させるブラウン運動も存在する。しかしながら、回転の相対的な程度及びその解像度への影響は、並進ブラウン運動のずれ効果と比較して小さい。
【0069】
粒子寸法に対する、ずれの逆依存性は、達成可能な解像度に対するブラウン運動の弱い効果が、より小さい対象物では増加することを意味する。実際に、30ナノメートルの解像度と10kHzのライン走査取得速度とを有する光学流体顕微鏡装置は、4マイクロメートルの寸法の微生物を画像化するのに使用される場合、70ナノメートルの画像解像度を有する100×100画素の画像を達成することが見込まれ得る。高解像度の光学流体顕微鏡装置は、ブラウン運動のアーチファクトによって明確に影響を受けないような比較的大きい生物学的対象物を画像化するのに使用される場合、それらの所定の解像度を容易に達成し得ることが分かる。
【0070】
ブラウン運動に起因する動きのアーチファクトを修正するための方法を実験的に研究し、検証することが可能である。その方法は、標的対象物が検出アレイを通過する際に、その動きのドリフトを追跡することが可能な追跡記録システムを光学流体顕微鏡装置中に設置することを含む。
【0071】
図7は、追跡光透過領域を含む実施例を示す。図7において、光透過領域42の追跡装置は、画像化光透過領域44と交互に配置されてもよい。この例において、追跡光透過領域42はそれぞれ、個々の一連の5又は6つの孔部を有し、概して、流路22の中央部に沿って配置される。一方、画像化光透過領域44は、流路22の1つの壁部から流路22の他の壁まで延在する、光透過領域の斜めのアレイを形成する。照明光源(図示せず)と検出器(図示せず)との構成は、前述した実施形態におけるものと同様であり得る。
【0072】
追跡光透過領域42を用いると、対象物が孔部アレイを横切って流れる際に、光透過領域42の各追跡装置で、対象物20の横方向のドリフトを追跡することが可能である。追跡装置は、経路の中央に個別に設置されるので、隣接する一組の光透過領域42を横切る信号のドリフトはいずれも、y方向における対象物の漂流(ネットドリフト)と関連し得る。このドリフト情報は、光学流体顕微鏡装置を用いて形成されるいずれの画像をも変形させるのに使用され得る。光透過領域42の追跡装置間の対象物20の到達時間における変化は、x方向における対象物のネットドリフトと関連し得る。
【0073】
光学流体顕微鏡装置の性能は、より多くの追跡装置が使用される場合に改善されることが見込まれ得る。ブラウン運動のアーチファクトと関連する解像度の不確定性は、(追跡装置が規則正しく間隔をあけて配置されていると仮定して)使用される追跡装置の数の平方根に比例して減少する。追跡装置を有する光学流体顕微鏡装置の構築と実現は、容易である。
【0074】
(G.光透過領域及び蛍光を用いた実施形態)
本発明のある実施形態は、対象物を画像化するのに光透過領域と蛍光とを使用する。これらの実施形態の背景として、厚い不透明又は半透明構造の層における孔部は、ゼロモード伝搬のためのカットオフ波長よりも短い波長の光のみを効果的に透過するだろう。より長い波長の光は、充分には透過しない。実効透過域の関数として、この透過作用の近似方程式は、以下の式によって与えられる。
【数8】
式中、λは波長であり、dは導電層の厚みであり、shは孔部の直径である。この方程式は上述される。充分に厚い導電層にとって、λがsh/0.586を越える場合、透過率は、急激に落ちる。「d」が大きい場合、透過率曲線は、階段関数のように見えるだろう。
【0075】
同時に蛍光及び透過による対象物の画像化を行う方法は、(波長λexでの)適当な励起光域で試料を照射することを含む。試料内の蛍光色素分子は、吸収し、異なる波長λf;λf>λexで再発光するだろう。均一な照明域を仮定して、試料からの蛍光パターンは、対象物の蛍光画像を投影する一方、波長λexでの透過率は、対象物の透過画像を投影するだろう。蛍光及び透過の画像化モードの両方を用いることによって、より正確な対象物の画像が作成され得る。
【0076】
図8を参照すると、一対の孔部のインターレースライン214を有する光学流体顕微鏡装置を用いることによって、両方の画像を取得することが可能である。第1のライン(又は組)の孔部211の孔部寸法は、孔部212が、波長λf及びλexの両方の光を透過するように選択され得る。第2のラインの孔部212の孔部寸法は、波長λexの光のみを透過するように選択されるだろう。孔部211、212のラインは、対の孔部それぞれが、経路壁部から同一の横方向のずれで存在するように配置され得るので、それらは、対象物を横切る同一のラインを調べるだろう。第2のラインの孔部211を通る透過率は、その後、流路を通って流れる対象物20の透過顕微鏡画像を生成するのに使用され得る。対象物の蛍光画像は、第1のラインの孔部211と第2のラインの孔部212とを通る透過率の違いを検出することによって生成され得る。照明光源(図示せず)及び検出器(図示せず)の構成は、先に説明した実施形態におけるものと同様であり得る。
【0077】
(H.光学流体顕微鏡装置の適用)
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置を用いるシステムの概略図が、図9(a)〜9(c)に示される。先に説明した光学流体顕微鏡装置はいずれも、図9(a)〜9(c)に図示されるようなシステムにおいて使用され得る。
【0078】
図9(a)に示されるように、システムは、血液細胞の同定及び計数を実施することが可能な血液分別ユニットとして使用される。そのシステムは、(例えば、「試料注入部(sample in)」及び「試薬注入部(reagent in)」によって設計されるような)多数の流体注入部及び(例えば、「廃棄物排出部(waste out)」として設計されるような)流体排出部とを含む。図示されるように、混合調整装置と、一連の3つの光学流体顕微鏡装置とが存在する。光学流体顕微鏡装置への排出部は、「試料を注入する」流体導入部へと戻される、単一の再循環流へと収束する。図9(b)は、それらがシステム中を通る際の流れを示す。図9(c)は、流体が、試料を注入する流体の流れへと戻され、再循環される際の操作時の流れを示す。
【0079】
具体的な操作手順は、次の通りである。第1に、対象の血液試料及び識別用試薬が、混合容器へと流し込まれる。採用される識別用試薬は、対象の血液画分に基づいて変更されてよく、赤血球細胞の溶解試薬、(クロラゾールブラックといった)化学染色剤、固定化剤又は希釈剤を含んでもよい。比較的大きい容量(〜1マイクロリットル)の血液試料及び試薬が、この工程に使用されると、その流れは、圧駆動され、又は動電的に作動され得る。第2に、混合物は、充分な時間(約10秒)、混合されて反応させられる。第3に、混合物は、その後、動電現象によって、光学流体顕微鏡装置を横切って輸送される。所定の流路は、直径20マイクロメートルで、各光学流体顕微鏡装置は、500ナノメートルの解像度を有するように設計されるだろう。最適な流速は、約6.0ミリメートル/秒であるだろう。
【0080】
各光学流体顕微鏡装置は、装置と取付CCDアレイとの間に帯域フィルタを包含するように設計されてもよい。帯域フィルタは、可視スペクトルの適当な部分を測るために、500〜550nm、550〜600nm、600〜650nm及び650〜700nmでのフィルタリングを提供する。そのフィルタの特性は、最も重要であるスペクトル成分に基づいて再調節され得る。
【0081】
図示された実施形態において、所望の画像化速度は、1.6ミリ秒あたり1細胞である。各細胞に関して得られた多スペクトルの画像データは、手動で又は自動化プログラムによって処理される。その処理された情報は、細胞を互いに識別するのに使用され得、処理された細胞は、その後、的確な容器で的確な出力電圧にバイアスをかけることによって適当な回収又は廃棄容器に向けられてもよい。
【0082】
追加の処理工程として、一定の分類された血液画分はいずれも、所望の画分を単にシステムの導入部へと向けることによって、システム全体を通って再処理されてもよい。この画分は、その後、画分中の異なる構成成分を更に識別するために、又は全体としてその画分に関するより多くの情報を収集するために、異なる識別用試薬と混合され、画像化され、再分類されてもよい。殆ど又は全く損失なく分類された画分を再処理する能力は、マイクロ流体工学に基づくセルソータに固有である(従来型のセルサイトメトリシステムは、概して再処理用に設計されていない)。この利点は、多段階処理を用いる将来的なセルソーティングの適用にとって、重要な因子であるだろう。
【0083】
細胞の同定及び分類の速度は、(200マイクロ秒あたり1細胞の速度で細胞を処理する)市販の血液識別ユニットの速度と同等である。しかしながら、本発明の実施形態の処理速度は、同一チップ上で同時に作動するシステムの数を単純に増加することによって、一桁分、顕著に増加され得る。更に、本発明の実施形態は、ソーティングに関してより的確で正確である。特に、本発明の実施形態は、桿状球と成熟好中球とを識別をすること、及び有核赤血球の計数において、市販の血液識別ユニットよりも優れた性能を有し得る。
【0084】
本発明の実施形態に係る光学流体顕微鏡装置は、血液中の循環腫瘍細胞(circulating tumor cell(CTC))を同定するのに使用される可能性がある。循環腫瘍細胞(CTC)は、概して、それらの細胞又は核の形態の外観検査に基づいて識別され、分類されることに鑑みて、セルソーティングシステムに基づく光学流体顕微鏡装置は、自動化されたCTC細胞の計数のために使用され得る。光学流体顕微鏡装置の画像化方法は、オンチップの画像化システムとしてマイクロ流体工学に基づくフローサイトメータへの組み込みから、尿中の異なるバクテリアの種類の同定及び計数のための高い処理能力を有する分析システムとしての使用の範囲まで、幅広く多様な応用において有用であるだろう。
【0085】
(II.発光素子を用いた光学流体装置)
従来型の光学顕微鏡において、最大達成解像度は、レイリーの基準によって定義されるように、理論的には、λ/2に制限され、ここで、λは、含まれる光の光学波長である。(上述した孔部に基づく方法は、λ/2の制限より高い解像度を許容するだろう。)近視野顕微鏡、量子もつれ光子(entangled photon)顕微鏡、誘導放出制御(STED)顕微鏡、及び構造化照明顕微鏡といった、新しい技術の使用によって、この制限は、ある程度、克服可能である。しかしながら、計算コスト、システムの複雑さ、及び光強度の必要量が、所望の解像度に応じて指数的に上昇する。
【0086】
他の実施形態は、費用効果の高い方法で、対象物の画像にサブ波長の解像度を与え得ることを開示する。これらの実施形態は、蛍光色素分子アレイ又はグリッドを用い、各アレイ又はグリッド部位は、狭く且つそのアレイ又はグリッドにおける他の蛍光色素分子とは異なる蛍光又はラマン発光スペクトルを保有する蛍光色素分子を有するだろう。適切な蛍光色素分子は、量子ドットを含む。量子ドットは、明確で狭い発光スペクトルで製造され得、強く且つ小型の蛍光エミッタである。量子ドットは、市販で購入可能であり、次の例示的な刊行物に記載される:J. K. Jaiswal, H. Mattoussi, J. M. Mauro, S. M. Simon, Long-term multiple color imaging of live cells using quantum dot bioconjugates Nature Biotechnology 21, 47(2003年1月);及びM. Dahan, T. Laurance, F. Pinaud, D. S. Chemla, A. P. Alivisatos, M. Sauer, S. Weiss, Time-gated biological imaging by use of colloidal quantum dots Optics Letters 26, 825(2001))。本発明の実施形態は、量子ドットを用いて説明される一方、本発明の実施形態は、量子ドットに限定されない。
【0087】
光を発生する素子を用いる、本発明の実施形態にとって、多数の可能な適用がある。例えば、本発明の実施形態は、種を同定できるようにバクテリア又はウイルスの形状を分類する手段として、巨大タンパク質の形状を分類する手段として、癌化した細胞を同定できるように細胞の核の形状を測定し取得する手段として、細胞の屈折率プロファイルを測定する手段として、及び製造、合成及び生産における品質管理又は他の目的のために小さい対象物の形状を同定する手段として使用され得る。
【0088】
発光素子を含む具体的な光学流体顕微鏡装置は、図10(a)に示される。図10(a)において、量子ドット62のグリッドは、本体の表面16(a)中に埋め込まれ、又はその上に存在する。各量子ドット62は、他の量子ドット62とは異なる蛍光発光スペクトルを有する。図10(a)に示されるように、対象物20は、量子ドット62のグリッド上に存在し、量子ドット62を用いて画像化される。
【0089】
量子ドット62は、約10ナノメートル程度の寸法を有し、隣接する量子ドット間の間隔は、10ナノメートルと小さくてもよい。他のグリッドの間隔及び他の寸法の量子ドットが、本発明の他の実施形態において使用され得る。
【0090】
対象物20の形状及び寸法を画像化するために、対象物20は、量子ドット62のグリッドの上に置かれ、照明光源(図示せず)からの均一な照明域にさらされる。対象物20の下にある量子ドット62は、殆ど照明を受けず、そのため、殆ど蛍光を発しないだろう。
【0091】
グリッド全体からの蛍光を収集し、市販で購入可能な分光計(又は他の検出器)の使用によりそのスペクトルをスペクトル的に分解することによって、どの量子ドット62が覆われているかを決定することが可能である。例えば、量子ドット62の位置及び量子ドット62と関連するそれぞれの蛍光発光スペクトルが分かる。分光計を用いて、コンピュータは、どの蛍光スペクトルが、分光計によって受け取られたかを決定し得、結果として、どの特定のグリッド部位が、対象物20によって覆われるかを決定し得る。これから、対象物20の形状が、量子ドット62の間隔によってのみ制限される解像度で、導き出され得る。
【0092】
量子ドットのグリッドを構成する代わりに、顕微鏡用の別の配置は、個別の量子ドット62の直線状のアレイが採用される配置であり得る。量子ドット62は、表面16(a)上又はその下に存在する。これは、図10(b)に示される。図10(b)において、個別の量子ドット62は、対象物20の流れの方向に垂直に延びる直線に一列に設置される。先に説明した実施形態のように、どの量子ドット62が覆われているかを決定するために、経時で量子ドット62の蛍光スペクトルを測定することが可能である。この例において、対象物20は、流路22を通って量子ドット62のアレイを横切って流れる。経時変化する蛍光スペクトルは、その後、対象物20の形状を決定するために充分なデータを提供するよう処理され得る。
【0093】
図10(a)及び図10(b)に示される光学流体顕微鏡装置の実施形態における、検出器及び照明光源の配置は、変更され得る。2つの具体的な構成が、図11(a)及び図11(b)に示される。図11(a)及び図11(b)は、本発明の実施形態の概略側面図である。図11(a)及び図11(b)において、同一の数字は同一の要素を示す。
【0094】
図11(a)において、照明光源420は、所定の第1の波長光を提供してもよい。第1の波長光430は、第2の波長光431が量子ドット62によって提供されるよう、本体410(a)上又は本体内に設置された量子ドット62を励起してもよい。第2の波長光431は、検出器430によって受け取られてもよい。細胞20が、量子ドット62を通過する際に、それは第1の波長光20を遮断し又は変更するので、量子ドット62から放出された光は、検出器430によって先に受け取られた第2の波長光431とは異なる。この例において、照明光源420及び光学検出器430は、量子ドット62及び本体410(a)上にあるので、本体410(a)は、透明、半透明、又は不透明であってもよい。
【0095】
図11(b)は、異なる構成を有する他の実施形態を示す。この実施形態において、検出器430は、本体410(b)の下にある。この実施形態において、本体410(b)が、透明又は半透明であるので、第2の波長光431は、それを通って検出器430へと通過し得る。
【0096】
更に他の実施形態において、本体410(a)、410(b)が透明又は半透明である場合、照明光源420は、その代わりに、本体410(a)、410(b)の下部に存在し得る。検出器430は、本体410(a)、410(b)の上又はその下に配置され得る。
【0097】
マイクロ流路を有する別の顕微鏡が、製造され得る。これは図12に示される。量子ドット62は、基板22上の、ライン62(a)の2つ以上のセット64中に置かれる。各ライン62は、同一の個別の量子ドット62を有し、各ラインは、他のライン62と異なる発光スペクトルを有するだろう。各セット64の向きは異なり得る。図14に示される実施形態において、蛍光スペクトルは、なおも遮断がされていることを決定するために測定され得る。この場合、特定のスペクトル帯における蛍光消失範囲は、量子ドットの特定のラインが、対象物によって覆われる程度を示すものである。
【0098】
一組のラインを用いた測定を行った後、対象物20は、量子ドットラインの次のセット64へと流される。輸送は、対象物20の配向性が乱されないようなやり方で、実施される。その工程は、全てのラインセット64に対して繰り返される。ラインセット64上でのコンピュータ断層計算を実施することによって、対象物20の形状を決定し得る。
【0099】
図12における構成は、以前の構成に対して利点を有する。例えば、N×Nグリッド上での対象物20の形状は、N個の異なる種類の量子ドットで見出され得る。上述した先の実施形態において、同一の解像度には、N2の異なる種類の量子ドットの使用が必要である。
【0100】
図13及び図14を参照すると、対象物が非常に透明で、量子ドットからの発光を充分に減少させるのに、量子ドットからの励起光場の充分量を遮断しない場合、本発明の実施形態は、代わりに、一過性の(エバネセント)励起場の使用に頼り得る。
【0101】
励起された光場70は、本体中の流路22の表面16(a)上又はその下にある量子ドット62へと向けられる。それは、ガラスと経路の境界面での入射角が臨界角を越えるよう、注意深く調節される。この状況において、指数的に減衰するエバネセント場は別にして、光学的な励起場は、殆ど量子ドット62に到達せず、量子ドット62は、蛍光を発しない又は非常に弱く蛍光を発するだろう。経路中を流れる流体溶媒よりも高い屈折率を有する対象物20が励起された光場70の経路を横切る場合、屈折率の変化が見られるだろう。
【0102】
図14においてより明確に示されるように、対象物20の存在によって形成された新たな屈折率は、臨界角をより大きな値に変更するのに充分に、著しく大きいので、その後、光学励起場は、今度は、流路22における伝播場82になるだろう。伝播場82は、その後、対象物20の下の量子ドット62を励起し得、(光学フィルタを含み得る)画像化システム122及び検出器124が、量子ドット62によって生じた光を受け取り得る。これらの実施形態において、特定のアレイグリッド部位からの蛍光信号は、そのグリッド部位で特定の量子ドット62が遮断されることを示す。
【0103】
図13及び図14を参照して説明された光学流体顕微鏡装置の実施形態は、他の目的のために使用され得る。例えば、それらは、対象物20の屈折率プロファイルを調べるために使用され得る。励起光場の入射角を変更し、いつ透過波が対象物20を通って伝播波になるかを決定することによって、その屈折率プロファイルを正確に測定することが出来る。
【0104】
図15は、本発明の実施形態に係る更に他の光学流体顕微鏡装置を示す。その実施形態は、階段状のラインパターンで設置された量子ドットを用いた。隣接するラインと関連する蛍光信号の違いは、対象物上の特定の位置に起因し得る。
【0105】
図15に示されるような光学流体顕微鏡装置はまた、量子ドットのラインの代わりに、スリット(図示せず)で実装され得る。スリットが充分に狭く、それらが底部から照らされる場合、エバネセント場は、基板上面の上に構成されるだろう。所定のスリット領域を横切る対象物の流れは、エバネセント波を伝播波に変え得る。全透過光を測定することによって、既述の量子ドット手法を用いて得られた情報と同様の一連の情報が決定され得る。
【0106】
発光素子を含む光学流体顕微鏡装置は、任意の適切な方法で製造され得る。1つの例において、図15に示される顕微鏡の構成を作り出すため、フォトリソグラフィ及びエッチング工程が、本体(例えば、基板)中の必要なラインをエッチングするために使用され得る。各導電性ラインが、その後、選択的に帯電され得、逆帯電された同一の量子ドットを含む溶液が、そのラインを横切って量子ドットを流すことによって、選択されたラインに付着され得る。量子ドットの帯電されたラインへの接着は、その後、接着された基板全面をコーティングすることによって、固定化され得る。その工程は、その後、完全な一連のラインが完成するまで、異なる導電性ラインと、同一の量子ドットの異なるセットとを用いて繰り返され得る。量子ドットアレイのグリッドの解像度は、達成可能なリソグラフィエッチングの解像度によってのみ制限される。
【0107】
他のやり方において、細針先(fine needle tip)アクチュエータシステムが使用されてもよい。この方法において、単一のグリッド部位の形成は、量子ドットと、エポキシといったキャリアと、の混合物を用いる。配置された針先は、その後、混合物に浸され、混合物の単一の液滴を堆積させるために基板上の正確な位置へと動かされるだろう。その工程は、その後、グリッド全体が完成するまで、異なる量子ドット−エポキシ混合物について繰り返されるだろう。量子ドットのグリッドの解像度は、特定の位置に動かす針先の達成可能な正確さによってのみ制限される。
【0108】
量子ドットは、約10ナノメートルの発光線幅で作製され得る。蛍光を観察し得る利用可能な発光スペクトルが、約300ナノメートルであると仮定した場合、これは、30の異なる種類の量子ドットを明確に検出することが可能であることを示すだろう。この状況において、図10に示される顕微鏡の構成において提示されるグリッド寸法が、5×5より大きいことはあり得ない。より大きいグリッド寸法は、異なる分光計がグリッドの異なる小区分に割り当てられる場合、達成され得る。この状況において、最も高いグリッド密度は、5×5のサブグリッドを(1/2波長)×(1/2波長)の面積と等しくすることによって、与えられる。グリッド配置が密接であるほど、分光計の回収光によって正確に解像され得ない。これは、すなわち、この顕微鏡構成によって達成され得る解像度が、約100ナノメートルであることを示す。
【0109】
最後に、達成可能な解像度は、利用可能な異なる量子ドット種の数の一次関数であり得る。そのように、さらにより狭い発光帯幅を有する量子ドットを調整することが非常に望ましい。この代わりに、蛍光共鳴エネルギー移動分光法(又は一定の関連する現象)が使用され得る。例えば、色素対の1つの構成要素が光を吸収し、一方他方が発光する、色素対が作製され得る。吸光性の構成要素は、狭吸光帯幅を有するように設計され得、発光性の構成要素は、狭発光性の構成要素である。異なる吸収及び発光波長を有する、これらの色素対の異なる順列組み合わせによって、非常に多くの数の非変性色素種を作製することが可能である。
【0110】
(III.他の流体光学装置の実施形態)
図16は、更に他の光学流体顕微鏡装置の実施形態を示す。この実施形態において、基板22は、個別の量子ドット又はナノ粒子の、角度のついた直線状のアレイが埋め込まれる。量子ドット88の間の水平方向の分離、間隔u112、は、充分に大きく配置されるので、その配置が、CCDカメラ又は他の画像化装置上で画像化される際に、2つの異なるドットを互いに分離することが可能である。1対1の画像化を実施する場合、間隔uは、CCDカメラの画素寸法と等しい又はそれより大きくてもよい。間隔v110は、この顕微鏡の解像度を設定し、そのため、出来る限り小さくてよい。理想的には、それは、包含されるナノ粒子の寸法に等しい。
【0111】
対象物20は、流路22を通って流れ、各量子ドット88からの蛍光スペクトルは、画像化CCDカメラ(図示せず)上でモニターされる。表面16(a)が透明な本体の一部分を形成する場合、CCDカメラは、表面16(a)の底面に搭載され得る。別の方法では、上部から対象物20を画像化することが可能である。しかしながら、これは、元々の入力ビームからの全内部屈折光がCCDによって検出されないようにするのに、ある程度の注意を要する。量子ドット88が、充分に間隔をあけて配置されると、各量子ドット88は、CCD上の画素と明確に関連するだろう。対象物20の形状が、量子ドット88を横切る移動において変化しないとすると、CCD信号の経時変化から、その形状の決定が可能である。
【0112】
先の顕微鏡構成が、サブ波長の空間情報をスペクトルでコード化するための方法として考えられ得る一方、この方法は、サブ波長の空間情報を上の波長(above-wavelength)の空間情報に空間的にコード化する方法として解釈され得る。
【0113】
この方法に関連する2つの明確な利点がある。第1に、蛍光色素分子が、異なるものである必要がない。全アレイの量子ドットは、同一であり得る。これは、装置の製造工程を単純化する。異なる量子ドットの必要性がない。異なる量子ドットの必要性が除外されることにより、他の造影機構の使用が可能となる。1つの造影機構は、ナノ粒子の使用を含み得る。ナノ粒子は、それらの物理的な断面積と比較して散乱断面積が増加する。それらが、量子ドットの代わりに使用される場合、それらの散乱信号は、量子ドットから生じる蛍光信号の代わりに使用され得る。
【0114】
おおよその計算として、10ナノメートルの解像度を望み、且つ対象物の寸法が1マイクロメートルである場合、(10マイクロメートル画素寸法CCD、u=10マイクロメートル、v=10ナノメートルでの1対1の画像化を仮定して)少なくとも1ミリメートル長のマイクロ流路が使用され得る。
【0115】
図17を参照すると、他の構成が示される。この構成は、上述の実施形態の一部と同様である。間隔をあけて配置されたグリッド中に個々の量子ドットを埋め込む代わりに、流路22の底面16(a)に直線状の量子ドット160を設置することが可能である。直線状の量子ドット160は、検出器(図示せず)において別個の光検出素子上に位置づけられる、異なる区分152、154を有し得る。
【0116】
図17における実施形態は、本体中に溝を作製し、その後、その溝に量子ドットを設置することによって形成され得る。量子ドットラインの各区分が、CCD上の単一画素に位置する限りは、この実施形態の解像能は、先の実施形態に匹敵する。光分散性ナノ粒子が、他の実施形態における量子ドットの代わりに使用され得ることも示される。
【0117】
図17に示される実施形態は、利点を有する。第1に、先の実施形態と比較して、より多くの数の蛍光発光分子又は量子ドットが信号に寄与することによって、非常に多くの信号が存在する。第2に、図17に示された実施形態は、製造するのが容易である。直線状の蛍光発光分子を埋め込むことは、均一に間隔をあけて配置された蛍光発光分子を設置するよりも容易であるだろう。
【0118】
図18は、図17における構成の他の変形である構成を示す。この場合、透過又は屈折ライン178は、光学流体顕微鏡装置の本体を横切る。屈折又は透過された信号は、CCD又は他の検出器上で同様のやり方で画像化される。ライン178の異なる区分174、176は、流路22を形成する表面16(a)下に存在し得る検出器中の別個の光検出素子に対応してもよい。対象物20の形状を決定するために、検出器からの信号を処理することは、先に述べた実施形態と同様である。この実施形態は、製造するのが容易である。
【0119】
更に他の実施形態も可能である。例えば、H. J. Lezec, A. Degiron, E. Davaux, R. A. Linke, L. Martin-Moreno, F. J. Garcia-Vidal, T. W. Ebbesen, Beaming Light from a Subwavelength Aperture Science 297, 820(2002)に記載されたもののように、一連の周期的に加工された半球環状にパターン化された透過性孔部を用いることが可能である。適切に設計され、パターン化された孔部は、小さな発散角で効率的に光を透過することができるだろう。良好に制限された光透過率は、透過工程の際、輪郭がぼやけるアーチファクトをいずれも劇的に低減できる。
【0120】
本発明の更に他の実施形態は、異なる寸法を有する光透過領域を用いることができる。そのような光透過領域を用いると、光透過スペクトルを用いて、光透過領域を通過する対象物の形状を決定することが可能である。
【0121】
図19は、単一の光透過領域又は孔部に関する、波長に対する光透過率のグラフを示す。この状況において、厚くて充分な導電性を有する層における孔部は、ゼロモード伝播のためのカットオフ波長よりも短い波長の光のみを透過し得る。つまり、特定の寸法の孔部は、特定の範囲の波長の光を通すだろうし、一方、他の寸法の孔部は、異なる範囲の波長の光を通すだろう。
【0122】
本発明の他の実施形態は、図20(a)〜図20(b)に関して説明され得る。図20(a)に示されるように、本体702は、異なる寸法を有する多数の光透過領域(例えば、孔部)704から構成される。この例において、光透過領域は、アレイ状に存在し、アレイ中の光透過領域のそれぞれは、異なる寸法を有する。図20(a)におけるアレイは、704(a)〜704(i)で標識された9個の孔部を有し、各孔部は、異なる寸法を有する。孔部は、円形で、放射状の断面を有し、任意の適切な深度を有してもよい。他の実施形態において、孔部は、必要に応じて、長方形又は正方形の断面を有し得る。1つのアレイ内に異なる断面形状を備える孔部を有することも可能である。
【0123】
図20(b)に示されるように、図20(b)における透過スペクトルの部位a〜iは、それぞれ、各孔部704(a)〜704(i)と関連してもよい。図20(a)に示されるように、孔部704(a)は、アレイ中の最も大きな孔部であり、図20(b)におけるスペクトルの部位aに対応し、最も広い範囲の波長での光透過を許容し、また最も低い光透過率を有する。これに対して、孔部704(i)は、アレイ中の最も小さい孔部であり、図20(a)におけるスペクトルの部位iに相当し、最も高い光透過率を有する。
【0124】
言い換えれば、図20(b)における各段階の高さは、特定の孔部を介した透過率に相当し得る。透過スペクトルをモニターすることによって、アレイ上の対象物の遮断パターンを得ることが可能である。アレイ内において、(約10nmの製作公差を仮定して)少なくとも約2、5、或いはさらに少なくとも10の異なる孔部の種類及び/又は寸法が存在し得る。
【0125】
図20(a)に示されるように、アレイ中の孔部の寸法は、列内又は行内において規則正しく増大又は減小してもよい。そのような系列は、孔部のアレイの全面を通過する対象物をより容易に表示し得る、透過スペクトルの作成を助け得る。孔部のアレイが2次元であり、孔部の寸法が、列内及び/又は行内において増大することが好ましい。図20(a)に示されるように、寸法は、列(又は行)の一端部から他端部まで増大し得る。連続的な列(又は行)は、その結果、次第に増大するより大きな孔部を有し得る。
【0126】
図20(c)に示されるように、孔部704のアレイ上を横切って通過する、対象物700(例えば、細胞)は、孔部704(b)、704(c)及び704(f)を遮断する。図20(d)に示されるように、孔部704(b)、704(c)及び704(f)と関連するスペクトルの部位b、c及びf(図20(b)参照)はない。図20(a)及び20(c)におけるスペクトルを用いて、異なる寸法の孔部704(a)〜704(i)の空間位置を知ることで、孔部704のアレイ上を横切って通過する対象物700の形状を決定することが可能である。
【0127】
本体中の孔部の密度が増加され得る(それによって解像度が増加する)ように、出来るだけ小さい直径を有する孔部を作製することが好ましい。円形の孔部及び任意のいずれの形状の孔部でも、本発明の実施形態に使用されてよい。透過率も、高い屈折率の材料で孔部を満たすことによって増加されてもよい。これは、各孔部内の有効波長を効果的に減少させ、小さい減衰係数を有する、より伝播性の高いモード又はゼロモードの導波路の存在を許容する。高い透過率は、システムの感度を向上させ、透過率の測定をより容易にするので、望ましい。
【0128】
図21は、本発明の実施形態に係るシステムの概略図を示す。図21は、光源790からの光を受け取る、(先に説明した)パターン化された孔部アレイ800を示す。対象物806は、孔部アレイ上を通過し、アレイ800中の特定の孔部を遮断する。アレイ800を通過する光は、CCDカメラ804を有する顕微鏡810へと通る。コンピュータ(図示せず)は、動作可能にCCDカメラ804と連結されてよく、プロセッサ、CCDカメラ804中のどのピクセルが光を受け取るかを決定するためのコードを有するコンピュータ読み取り可能な記録媒体、孔部アレイ800及びCCDカメラ804を用いて作成された透過スペクトルを解析するためのコード、及びアレイ800上を通過する対象物806を画像化及び/又は解析するのに透過スペクトルを用いるためのコードから構成されてよい。
【0129】
本発明の実施形態において、(顕微鏡の解像度によって制限される)本体の領域Apixel上の位置を、CCD装置といった画像化カメラ上の単一画素上に位置づけることが可能である。各領域Apixelを、一連のパターンの10個の個別の孔部で満たすことが可能である。各孔部からの透過スペクトルを測定する場合、本発明の実施形態は、Apixelよりも10倍小さい画素寸法での解像度を達成し得る。言い換えれば、本来の画像化システムがXマイクロメートルの解像度を有する場合、このやり方によって、Nが個別の孔部の数であるときに、sqrt(N)Xマイクロメートルにまで解像度が増加する。
【0130】
スペクトル透過プロファイルを得るための最も単純なやり方は、入力光波長を単に走査し、カメラで多数の画像を取得することであってもよい。
【0131】
図20(a)〜図20(d)及び図21を参照して説明した本発明の実施形態は、本発明の範囲から逸脱しない限り、前述した実施形態のいずれの特徴とでも組み合わせられ得ると理解される。例えば、特に図1〜図9に関して説明された製造方法、材料、寸法及びシステムは、本発明の範囲から逸脱しない限り、図20(a)〜図20(d)に関して説明された実施形態の詳細と組み合わせられ得る。
【0132】
図20(a)〜図20(d)及び図21に示された実施形態は、前述した実施形態に対して利点を有する。第1の利点は、これが、結果としてより小型のシステムとなることである。第2の利点は、対象物の画像化が1ショットでなされ、その時間枠がカメラのフレーム率によって制限されることである。走査波長光源が使用される場合、それは、光源が1サイクル走査するのに要する時間によって制限される。画像化フレーム間の対象物の移動は、画像の品質を低下させないだろう。
【0133】
ここで使用された用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定されるものではなく、そのような用語及び表現の使用において、示され、説明された特徴と等価のもの、或いはそれらの一部を除外するという意図はなく、様々な変更が、請求される本発明の範囲内において可能であると認識される。
【0134】
さらに、本発明の1つ又は複数の実施形態の1つ又は複数の特徴は、本発明の範囲から逸脱することがない限り、本発明の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせられ得る。
【0135】
上述した全ての特許、特許出願、刊行物、及び説明は、全ての目的のため、その全体において、参照によってここで援用される。いずれも先行技術であると自認されるものではない。
【0136】
「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」の記述は、特に異なるものとして示されない限り、「1つ又は複数(one or more)」を意味すると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する流路を備える本体と、
該本体中の、異なる寸法を有する光透過領域と、
該光透過領域を通る照明を提供するために適用される照明光源と、
該光透過領域を通る、該照明光源からの光を受け取るために適用される光学検出器と、
から構成される光学流体顕微鏡装置。
【請求項2】
前記表面は流路の底部である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項3】
前記光透過領域は孔部であり、前記異なる寸法は異なる直径である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項4】
前記光学検出器は、電荷結合素子から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項5】
前記光学検出器は、複数の別個の光検出素子を含み、該光検出素子は、それぞれ前記光透過領域に対応する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項6】
前記流路は、約1マイクロメートルより小さい幅を備える底部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項7】
前記光透過領域が、光学的に透明な材料から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項8】
前記孔部のアレイが、前記表面の第1の側面から、前記表面の第2の側面まで延在する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項9】
前記光透過領域のアレイが、光透過領域の第1のアレイであり、前記光学装置が、光透過領域の第2のアレイを備え、該光透過領域の第2のアレイが、参照ポイントを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項10】
前記表面が、底壁の一部であり、光学検出器が該底壁に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項11】
前記光透過領域のアレイが、斜めの直線を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項12】
前記照明光源が、白色光を提供する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項13】
前記本体が、高分子材料から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置を用いる方法であって、
前記流路を通して、対象物を包含する流体を流す工程を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記光透過領域が、円形放射状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光透過領域が、孔部から構成される、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光透過領域が、孔部中に高い屈折率の材料を有する孔部である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記対象物が細胞である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記光透過領域を通過する光を用いて、透過スペクトルを検出する工程を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記透過スペクトルを用いて、前記対象物の形状を決定する工程を更に備える、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
表面を有する流路を備える本体と、
該本体中の、異なる寸法を有する光透過領域と、
該光透過領域を通る照明を提供するために適用される照明光源と、
該光透過領域を通る、該照明光源からの光を受け取るために適用される光学検出器と、
から構成される光学流体顕微鏡装置。
【請求項2】
前記表面は流路の底部である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項3】
前記光透過領域は孔部であり、前記異なる寸法は異なる直径である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項4】
前記光学検出器は、電荷結合素子から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項5】
前記光学検出器は、複数の別個の光検出素子を含み、該光検出素子は、それぞれ前記光透過領域に対応する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項6】
前記流路は、約1マイクロメートルより小さい幅を備える底部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項7】
前記光透過領域が、光学的に透明な材料から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項8】
前記孔部のアレイが、前記表面の第1の側面から、前記表面の第2の側面まで延在する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項9】
前記光透過領域のアレイが、光透過領域の第1のアレイであり、前記光学装置が、光透過領域の第2のアレイを備え、該光透過領域の第2のアレイが、参照ポイントを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項10】
前記表面が、底壁の一部であり、光学検出器が該底壁に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項11】
前記光透過領域のアレイが、斜めの直線を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項12】
前記照明光源が、白色光を提供する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項13】
前記本体が、高分子材料から構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光学流体顕微鏡装置を用いる方法であって、
前記流路を通して、対象物を包含する流体を流す工程を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記光透過領域が、円形放射状の断面形状を有する、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光透過領域が、孔部から構成される、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光透過領域が、孔部中に高い屈折率の材料を有する孔部である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記対象物が細胞である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記光透過領域を通過する光を用いて、透過スペクトルを検出する工程を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記透過スペクトルを用いて、前記対象物の形状を決定する工程を更に備える、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−521671(P2010−521671A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553675(P2009−553675)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/054908
【国際公開番号】WO2008/112416
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506321458)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/054908
【国際公開番号】WO2008/112416
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506321458)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】
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