説明

光学測定装置

【課題】 装置に内蔵されている照明用ライトの照明光や、装置外の光が装置内へ侵入する場合においても、信頼性の高い測定結果を得ることができる高精度な光学測定装置を提供する。
【解決手段】 発光素子1による照射光15が消灯時の受光素子5の受光量を基準値として、照射光15が点灯した時の受光量から基準値を減算することにより補正光量を求める。このとき、発光素子1が点灯と消灯を交互に複数回繰り返し、発光素子1が点灯時の受光量から基準値を減算することにより得られた、前記発光素子の点灯回数に応じた数の補正光量の平均値あるいは中間値を最終の補正光量とする。そして、該補正光量に基づいて検体試料11中の分析対象物の濃度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体試料中の分析対象物の濃度を光学的に測定する光学測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検体試料中の成分の濃度測定を行う測定装置の一例として、グルコースモニタ装置(別名:血糖値計)があった。(例えば、特許文献1参照。)これは、糖尿病の患者、或いは予備軍と呼ばれる様な人が、血液中のグルコース濃度をモニタするためのものであり、測定用試験片の反射率変化または電流変化によって測定する装置である。
【0003】
このグルコースモニタ装置を使用する為には、先ず針やランセット等によって、使用者から血液のサンプルを採取しなければならない。そしてその使用者は、グルコースモニタ装置に試薬の付いた測定用試験片を挿入し、該測定用試験片の所定位置に血液サンプルを添加する。添加された血液は、測定用試験片上の試薬と反応し、試験片に反射率の変化または電流の変化をもたらすことによって、血液サンプル中のグルコース濃度を示す。
【0004】
しかし、装置使用者は、血中グルコース濃度を全くの暗闇または限られた光の条件下でモニタしなければならない場合がある。例えば、血中グルコース濃度を真夜中にモニタする場合、測定を行う部屋は全くの暗闇下にあることが多い。また血中グルコース濃度を薄暮にモニタする場合、測定を行う部屋は薄暗いことが多い。この様な暗闇状態で容易に所在を見出せ、所在が見出された後も、全くの暗闇または限られた光の環境で使用できる様な、照明機構を備えたグルコースモニタ装置が望ましい。
【0005】
その様な従来のグルコースモニタ装置の外観を、図4に示す。
図4に示すグルコースモニタ装置31は、測定用試験片37を装着する装着部36と、外部表面32に設けられた穴34を介して上記装着部36を照明する小型ライト33と、測定結果を表示するディスプレイ38とを備えている。
【0006】
このような構成のグルコースモニタ31を用いた、グルコース濃度の測定方法について説明する。
グルコースモニタ装置31内に内蔵されている小型ライト33から、図4の波線35で示した様に、照明光35を出力する。この照明光35は、測定用試験片37をグルコースモニタ装置31の装着部36に挿入する場合は、装着部36を照明する。また、穿刺した指先から抽出された血液サンプル(検体試料)11を測定用試験片37に添加する場合は、装着部36だけでなく、測定用試験片37の添加部も同時に照明する。また、燐光性材料からなるハウジングの外部表面32を照明し、燐光性材料からの光放出を生じさせることもできる。また、グルコース濃度の測定結果をディスプレイ38上に表示させる際に、上記小型ライト33とは別のライト(図示せず)で照明する。
【0007】
このような機能によって、暗闇状態であっても、使用者はハウジングの外部表面32の燐光によって、グルコースモニタ装置の所在を見いだすことが可能になる。また、装着部36や添加部を照明する小型ライト33や、ディスプレイ38を照明する内蔵ライトによって、装置への測定用試験片の装着や血液サンプル(検体試料)の添加や測定結果の読み取りなどが容易になり、使用者の使い勝手を向上させることができる。
【特許文献1】特表2003−512866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の照明機能をもった測定装置は、測定用試験片の電流変化を検出する測定方式では、装置に内蔵したライトの照明光や装置の外光の一部が測定結果に影響を与えるという問題は発生しないが、測定用試験片の反射率変化等の光学的検出を利用する方式では、装置に内蔵したライトの照明光の一部や装置の外光の一部が受光素子に入射し、これが測定誤差を生じる要因となってしまうことがあった。特に、微小な光学信号の検出が要求される高精度測定においては、この問題は深刻である。
【0009】
本発明は、この様な従来の課題を解決するもので、装置使用者が暗闇状態において照明機能を用いた場合においても、信頼性の高い測定結果を得ることができる光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1にかかる光学測定装置は、検体試料中の分析対象物との反応が行われる被測定領域を有する測定用試験片と、前記測定用試験片の被測定領域に対して光を照射する発光素子と、前記測定用試験片からの反射光量を受光する受光素子と、該受光した受光量に基づいて前記検体試料中の分析対象物の濃度を算出する検出手段とを備えた光学測定装置であって、前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から、前記発光素子が消灯時の前記受光量を減算した補正光量に基づいて、前記分析対象物の濃度を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2にかかる光学測定装置は、請求項1に記載の光学測定装置において、前記発光素子が消灯時の前記受光量は、前記発光素子が点灯及び消灯を繰り返し行ったときの、第1の消灯時の前記受光量と、第2の消灯時の前記受光量とを平均化したものである、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3にかかる光学測定装置は、請求項1または2に記載の光学測定装置において、前記発光素子は、点灯および消灯を繰り返し行い、前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から前記消灯時の前記受光量を減算し、前記発光素子の点灯および消灯の繰り返し回数に応じた数の補正光量の、平均値を前記補正光量とする、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4にかかる光学測定装置は、請求項1または2に記載の光学測定装置において、前記発光素子は、点灯及び消灯を繰り返し行い、前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から前記消灯時の前記受光量を減算し、前記発光素子の点灯および消灯の繰り返し回数に応じた数の補正光量の、中間値を前記補正光量とする、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項5にかかる光学測定装置は、請求項3または4に記載の光学測定装置において、前記発光素子を点灯後、消灯して再度点灯するまでの時間間隔を、非周期的にした、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項6にかかる光学測定装置は、請求項5に記載の光学測定装置において、前記発光素子を点灯後、消灯して再度点灯するまでの時間間隔を、測定精度を保持するのに必要な間隔の1/10倍から1倍までの任意の間隔とする、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項7にかかる光学測定装置は、検体試料中の分析対象物との反応が行われる被測定領域を有する測定用試験片と、前記測定用試験片の被測定領域に対して光を照射する発光素子と、前記測定用試験片からの反射光量を受光する受光素子と、該受光した受光量に基づいて前記検体試料中の分析対象物の濃度を算出する検出手段とを備えた光学測定装置において、前記測定用試験片或いは前記光学測定装置の一部を照明するライト、又はディスプレイを照明するライトを備え、前記受光素子が前記測定用試験片からの反射光量を受光している間は、前記いずれかのライト或いは両方のライトを、消灯或いは減光する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学測定装置によれば、暗闇状態において、使用者が装置に内蔵された照明機能を利用した場合、照明光の影響を補正するか、或いは影響がないように測定期間中に消灯或いは減光するようにしたので、信頼性の高い測定結果を得ることができる。また、装置の外部から侵入した光の影響も同時に補正することも可能になるため、更に測定結果の信頼性が高い光学測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、図面と共に詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による光学測定装置100の主要部位を示すものである。
図1(a)は、本実施の形態1において、穿刺した指先から抽出された血液サンプル(検体試料)11を、測定用試験片3に添加する前の状態を示している。
【0019】
本実施の形態1の光学測定装置100は、発光素子1、該発光素子1からの照射光を測定用試験片3の所定領域に集光するレンズ2、測定用試験片3からの反射光を受光する受光素子5、該受光した受光量に基づいて分析対象物の濃度を算出する検出手段12、測定用試験片3を照明するライト6、測定結果を示すディスプレイ7を備えている。
【0020】
上記発光素子1としては、ランプや発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)等が考えられるが、グルコースモニタ装置等の小型測定装置においては、発光ダイオードや半導体レーザの様な半導体素子が望ましい。
【0021】
上記受光素子5としては、フォトダイオードやCCDで代表されるイメージセンサやフォトマル(光電子増倍管)等が考えられるが、図示したグルコースモニタ装置等の小型測定装置においては、受光素子への受光量は十分であるので、フォトダイオードが適当である。
【0022】
上記ライト6は、測定用試験片3の端部に使用者が暗闇でも血液サンプル(検体試料)11を添加し易いように照明する照明用のライトである。
【0023】
上記ディスプレイ7は、装置の状態や測定結果を示す役割があり、暗闇でも表示内容を確認できるように表示面を照明するための上記ライト6とは別のライトを有する。
【0024】
ところで、図1(a)に示すように、ライト6の照明光の一部8やディスプレイ7の照明光の一部9が、装置内部を通過、あるいは反射することにより、受光素子5に入射されてしまうことがある。また、部屋内の照明や日光などの装置外の光10が、装置の隙間を通過して受光素子5に入射されることがある。なお、実際には、装置内に入射される光は、図に示した波線の様な曲がった経路をたどるわけではなく、装置内の各部品に何度も反射する等して受光素子内に到達する。
【0025】
このような測定とは異なる用途で用いる照明光の一部が受光素子5に入射されると、測定結果に影響を及ぼすという問題が生じる。そこで、本実施の形態1では、発光素子1の消灯時の受光量を基準値として、点灯時の受光量を補正し、該補正した受光量に基づいて分析対象物の濃度を算出する。
【0026】
以下、本実施の形態1における光学測定動作について説明する。図1(b)は、本実施の形態1における、測定状態の様子を示した図である。本実施の形態では、検体試料11として血液サンプルを用い、血液中のグルコース濃度の測定を行う。
【0027】
装置使用者が測定用試験片3に血液サンプル11を添加してから規定時間後、測定用試験片3上の被測定領域4は、血液中のグルコースの濃度に相当した呈色を示すようになる。この呈色している被測定領域4に対して、発光素子1から照射光15をレンズ2でスポット16の状態に集光して照射する。そして、被測定領域4からの反射散乱光17を受光素子5で受光する。ここで被測定領域4の呈色度は、血液サンプル11中の成分濃度に相応して変化する。また、被測定領域4では、呈色度に応じて照射光スポット16の光が吸光されるので、受光素子5の受光量に応じて、血液中のグルコース濃度を測定する。
【0028】
上記測定は、発光素子1の点灯と消灯を交互に繰り返すことにより、複数回行う。図1(c)に、時間に対する受光素子5で受光する光量のグラフを図示した。図において、受光量18は、発光素子1の点灯時に検出された信号であり、受光量19は、発光素子1の消灯時に検出された信号である。
【0029】
ここで複数回の測定を行う理由は、受光素子5内の光検出信号測定回路に電気的ノイズが混入すると、測定結果に影響を及ぼす可能性があるので、複数回の測定を行ってその平均値或いは中間値を最終の測定結果とすることによって、ノイズの影響を軽減するためである。
【0030】
発光素子1が消灯している場合には、先に述べた様に、ライト6やディスプレイ7の照明光の一部や、装置外の光(部屋内の照明や日光など)の一部が受光素子5に入射されているため、受光量19の値は零にはならない。また、測定期間中に、装置外の光やライト6及びディスプレイ7の照明光等の受光量が変化した場合には、受光量18、19の値も信号18a、19aで示した様に同期して変化する。(図1(c)では、いずれも値が大きくなっている。)
【0031】
ここで、照明光等の受光量の変化には、次のような要因が考えられる。
装置外の光については、測定装置が小型で持ち運び可能である場合、使用者が装置を移動している最中に、部屋の照明光や日光等の当たり具合が変化したりするためである。また、測定装置を机上等の一定の場所に設置して使用している場合であっても、装置周辺の人の移動によって、部屋の照明光や日光等の影の具合が変化したりすることも考えられる。
また、測定装置に内蔵されたライト6及びディスプレイ7の照明光については、回路の電気的ノイズによって、照明用ライトの駆動電流の変動が発生するため等である。
【0032】
従って、このように受光素子5の受光量に変動があった場合、本実施の形態では、発光素子1の消灯時の受光量19を基準値とし、発光素子1の点灯時の受光量18から基準値を減算することにより補正光量を得る。また基準値は、発光素子1の点灯及び消灯を繰り返し行ったときの、第1の消灯時の受光素子5の受光量と、第2の消灯時の受光量とを平均化したものである。また、図1(c)で示している様に、発光素子1を所定のタイミングで点灯及び消灯を複数回繰り返し、発光素子1の各点灯時の受光量から上記基準値を減算した値の平均値あるいは中間値を最終の補正光量とする。
【0033】
以上のようにして得られた補正光量に基づいて、血液11中のグルコース濃度を算出するようにしたので、測定期間中の受光素子5の受光量の変動の影響を軽減することができ、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0034】
ところで、一般的に、必要な信号成分以外の変動分を除去する方法として、照射光を既定の周波数で点滅(光強度変調)し、光検出信号のうち同一周波数成分のみを抽出してその振幅の大きさから分析対象物の濃度を算出する方法や、光検出信号に対して同一周波数の参照信号で同期検波を行い、同一周波数成分のみを直流成分として検出し、該検出値から分析対象物の濃度を算出する、いわゆるロックインアンプを用いる方法等が良く知られている。これに対し、本発明では、1個の測定データを取得する場合、消灯回数は1回あるいは2回でよいので、従来のように、わざわざ高度で複雑な方法を用いて光を周期的に点滅させる必要がないので、簡単な方法で分析対象物の濃度測定を行うことができる。
【0035】
なお、本実施の形態1では、検体試料が血液サンプルの場合について述べたが、他の試料(尿や唾液や体液など)であっても何ら支障はない。また、測定用試験片からの反射散乱光を受光する構成について述べたが、試験片を通過する透過光を受光するようにしても何ら支障はない。また、呈色部(被測定領域)における照射光の吸光の事例を述べたが、照射光を必要としないで自ら発光する場合であっても、本実施の形態1の光学測定装置を用いることで、同様の効果が得られる。
【0036】
このような実施の形態1の光学測定装置によれば、発光素子1が点灯時の受光素子5の受光量から消灯時の受光量を減算した補正光量に基づいて、検体試料11中の分析対象物の濃度を求めるようにしたので、ライト6やディスプレイ7の照明光や外光等の影響を軽減させることができ、装置使用者が暗闇状態において照明機能を用いた場合においても、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0037】
また、発光素子1は点灯及び消灯を交互に繰り返し、検出手段12は、発光素子1が点灯時の受光素子5の受光量から消灯時の受光量を減算し、前記発光素子の点灯回数に応じた数の補正光量の、平均値あるいは中間値を最終の補正値とするようにしたので、照明光や外光の光量が変化してもその影響を軽減させることができ、より信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0038】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における光学測定装置200の主要部位を示すものである。図において、図1と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図2(a)は、本実施の形態2において、測定用試験片3を移動させながら測定している様子であり、図2(b)は、その時の受光素子5で受光する光量を示している。図2(b)において、受光量21は、発光素子1を点灯した場合の信号であり、受光量22は、発光素子1を消灯した場合の信号である。ここでは、受光素子5による測定を、発光素子1の点灯と消灯を交互に繰り返すことにより、複数回行っている。この結果、受光量21の変化の大きさ23によって、被測定領域4の呈色度を求めることができる。
【0040】
この場合には、測定用試験片3とそれを支持する部品(図示せず)が同時に移動して、ライト6の照明光の一部8やディスプレイ7の照明光の一部9や、装置外の光(部屋内の照明や日光など)の一部10が、移動中の装置内部の部品で反射し、受光素子5に入射する受光量が移動に伴って変化するので、図1の場合に加えて、更により大きな変動が発生する。信号21a及び信号22aは、受光量の増加を示しており、信号21b及び信号22bは、受光量の減少を示している。
【0041】
従って、本実施の形態2では、この様な受光素子5の受光量に変動があった場合でも、発光素子1の消灯時の受光量22を基準値として、発光素子1が点灯時の受光素子5の受光量22から基準値を減算することにより補正光量を得る。また基準値は、発光素子1が点灯及び消灯を繰り返し行ったときの、第1の消灯時の受光量と、第2の消灯時の受光量とを平均化したものである。また更に図2(b)で示している様に、発光素子1を所定のタイミングで点灯及び消灯を複数回繰り返し、発光素子1の各点灯時の受光量から上記基準値を減算した値の平均値あるいは中間値を最終の補正光量とする。
【0042】
ここで発光素子1が点灯のあと消灯して再度点灯するまでの時間間隔は、非周期的とする。特に、測定精度を保持するのに必要な最大間隔の1/10倍から1倍までの任意の間隔で変化させる様にすることが、実現的で望ましい。この目的は、周期的になりがちな光学ノイズのゆらぎをできるだけ排除することである。つまり、部屋の中で使用している照明器具は、50Hzまたは60Hzの商用電力を用いているために、この周波数での光学ノイズが発生していることがある。また、最近ではインバーター駆動(40〜100kHz)を行っている照明器具も多いので、この周波数での光学ノイズが発生していることもある。また、ライト6やディスプレイ7の照明光の場合でも、回路内で周期的に発生している電気ノイズに同期して、発光量が変動していることもある為である。
【0043】
そこで本実施の形態2では、発光素子1が点灯時の受光素子5の受光量から基準値を減算することにより得た値を補正光量として、操作位置に対する補正光量のグラフを図2(c)の様に書き直す。この操作によって、補正光量24は照明光や装置外の光の変動による誤差要因が除去されるために、測定用試験片3の移動に伴った滑らかな変化のグラフが得られる。従って、補正光量24の変化の大きさ25に基づいて、被測定領域4の呈色度を正確に求めることができる。(図2(b)では、受光量21の変化の大きさ23は、変動誤差21bを含んでいたが、図2(c)では、この誤差の影響が無くなった。)これにより、信頼性の高い、血液(検体試料)11中のグルコース濃度を算出することができる。
【0044】
なお、本実施の形態2では、測定用試験片を移動させて測定する場合について述べたが、前記実施の形態1のように、測定用試験片を移動させずに測定する場合に適用しても同様な効果が得られる。また、検体試料が血液サンプルの場合について述べたが、他の試料(尿や唾液や体液など)であっても何ら支障はない。また、測定用試験片からの反射散乱光を受光する構成について述べたが、試験片からの透過光を受光するようにしても何ら支障はない。また、呈色部(被測定領域)における照射光の吸光の事例を述べたが、照射光を必要としないで自ら発光する場合であっても、本実施の形態2の光学測定装置を用いることで同様の効果が得られる。
【0045】
このような実施の形態2の光学測定装置によれば、発光素子1を点灯し、消灯してから再度点灯するまでの間の時間間隔を、非周期的にしたことにより、照明光や装置外の光の変動による影響を軽減することができ、より信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0046】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における光学測定装置300の主要部位を示すものである。図において、図1と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
図3(a)は、本実施の形態3において、測定用試験片3に穿刺した指先から抽出された血液サンプル(検体試料)11を添加する前の状態であり、装置使用者の使い勝手を向上するために、ライト6やディスプレイ7の照明光を点灯している。図3(b)は、照明光を消灯して測定している状態の様子を示している。
【0048】
つまり、暗闇状態で測定用試験片3を装置に装着したり、血液サンプル(検体試料)11を測定用試験片3に添加したり、装置の状態を確認したりする場合には、ライト6やディスプレイ7の照明光が必要である。しかし、上記実施の形態1及び2で述べた通り、この照明光は、測定誤差の要因となる。
【0049】
そこで、本実施の形態3では、数秒程度の測定期間のみ、照明光を消灯あるいは減光するようにした。これにより、測定中、受光素子5には誤差となる光が入射しなくなるので、より測定誤差を低減する効果が得られる。また、この照明光の消灯あるいは減光期間は、装置使用者が結果表示を待つのみの時間であり、使い勝手には殆ど影響を与えないと考えられるので、簡単な方法ではあるが、非常に有効である。
【0050】
なお、本実施の形態3では、測定用試験片3やディスプレイ7を照明するライトについて述べたが、測定装置に備えられている如何なるライトであっても、同様な操作で同様の効果が得られるものである。
【0051】
また、本実施の形態3では、検体試料が血液サンプルの場合について述べたが、他の試料(尿や唾液や体液など)であっても何ら支障はない。また、測定用試験片からの反射散乱光を受光する構成について述べたが、試験片からの透過光を受光するようにしても何ら支障はない。
【0052】
また、本実施の形態3では、呈色部(被測定領域)における照射光の吸光の事例を述べたが、照射光を必要としないで自ら発光する場合であっても、本実施の形態3の光学測定装置を用いることで同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかる光学測定装置は、暗闇状態において、使用者が使い易いように照明用のライトを装置に内蔵した場合や、装置外の光が装置内へ入ってしまう場合であっても、信頼性の高い測定結果が得られる高精度な光学測定として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1による光学測定装置の主要部位と機能を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態2による光学測定装置の主要部位と機能を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態3による光学測定装置の主要部位と機能を説明するための図である。
【図4】従来の光学測定装置の一例としてのグルコースモニタ装置の照明機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1 発光素子
2 レンズ
3 測定用試験片
4 呈色部(被測定領域)
5 受光素子
6 ライト
7 ディスプレイ
8 ライトの照明光の一部が装置内部を通過して受光素子に入射される様子
9 ディスプレイの照明光の一部が装置内部を通過して受光素子に入射される様子
10 装置外の光が装置の隙間を通過して受光素子に入射される様子
11 血液サンプル(検体試料)
12 検出手段
15 測定用照射光
16 スポット
17 反射散乱光
18 発光素子を点灯した場合の受光素子での受光量
19 発光素子を消灯した場合の受光素子での受光量
21 発光素子を点灯した場合の受光素子での受光量
22 発光素子を消灯した場合の受光素子での受光量
23 受光素子での受光量の変化の大きさ
24 照射光を点灯した時の受光量から基準値を減算することにより得た補正光量
25 補正光量の変化の大きさ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体試料中の分析対象物との反応が行われる被測定領域を有する測定用試験片と、前記測定用試験片の被測定領域に対して光を照射する発光素子と、前記測定用試験片からの反射光量を受光する受光素子と、該受光した受光量に基づいて前記検体試料中の分析対象物の濃度を算出する検出手段とを備えた光学測定装置であって、
前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から、前記発光素子が消灯時の前記受光量を減算した補正光量に基づいて、前記分析対象物の濃度を算出する、
ことを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
前記発光素子が消灯時の前記受光量は、前記発光素子が点灯及び消灯を繰り返し行ったときの、第1の消灯時の前記受光量と、第2の消灯時の前記受光量とを平均化したものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記発光素子は、点灯および消灯を繰り返し行い、
前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から前記消灯時の前記受光量を減算し、前記発光素子の点灯および消灯の繰り返し回数に応じた数の補正光量の、平均値を前記補正光量とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記発光素子は、点灯及び消灯を繰り返し行い、
前記検出手段は、前記発光素子が点灯時の前記受光量から前記消灯時の前記受光量を減算し、前記発光素子の点灯および消灯の繰り返し回数に応じた数の補正光量の、中間値を前記補正光量とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記発光素子を点灯後、消灯して再度点灯するまでの時間間隔を、非周期的にした、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記発光素子を点灯後、消灯して再度点灯するまでの時間間隔を、測定精度を保持するのに必要な間隔の1/10倍から1倍までの任意の間隔とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の光学測定装置。
【請求項7】
検体試料中の分析対象物との反応が行われる被測定領域を有する測定用試験片と、前記測定用試験片の被測定領域に対して光を照射する発光素子と、前記測定用試験片からの反射光量を受光する受光素子と、該受光した受光量に基づいて前記検体試料中の分析対象物の濃度を算出する検出手段とを備えた光学測定装置において、
前記測定用試験片或いは前記光学測定装置の一部を照明するライト、又はディスプレイを照明するライトを備え、
前記受光素子が前記測定用試験片からの反射光量を受光している間は、前記いずれかのライト或いは両方のライトを、消灯或いは減光する、
ことを特徴とする光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232662(P2008−232662A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69095(P2007−69095)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】