説明

光学物品の偏角測定装置及び偏角測定方法

【課題】光学物品の反射偏角を精度よく測定できる光学物品の偏角測定装置の提供。
【解決手段】端面が直角二等辺三角形とされた基準プリズム2と、基準プリズム2の斜辺部2B又は光学物品1の斜辺部1Bに向けてレーザー光を出射するレーザー光源3と、レーザー光源3の基準プリズム2又は光学物品1を挟んで反対側に配置され基準プリズム2又は光学物品1の一方の隣辺部1A,2Aにレーザー光を照射する光源41及び隣辺部1A,2Aで反射された反射光を受光する受光部42を有する第一測定部4と、レーザー光源3から出射されて基準プリズム2又は光学物品1の斜辺部1B,2Bで反射した反射光を受光する第二測定部5と、第二測定部5及び第一測定部4からそれぞれ出力される基準プリズム2の測定値の信号と光学物品1の測定値の信号とを対比して光学物品1の偏角の補正値を演算する演算装置6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムその他の光学物品の偏角を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピックアップ装置、プロジェクター、その他の装置に光学物品が利用されている。この光学物品には、光学薄膜が一面に形成された平板状光学部材を順次ずらして端縁を結ぶ線分と平板状光学部材の板面とが45°となるように階段状に積層し、これらの平板状光学部材の間に接着剤を設けて積層体を形成し、この積層体を板面に対して45°となるように所定ピッチ毎に切断して短冊状部材を形成し、この短冊状部材を所定ピッチ毎に切断して製造されたプリズムが知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1で示されるプリズムは、長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続されるとともに斜辺部と対向する角度が直角とされる直角二等辺三角柱部材が互いに斜辺部同士を対向させた状態で2個接合されている。
このように製造されたプリズムは、その斜辺部に光学薄膜が形成されており、一方の隣辺部から入射した光は光学薄膜を通って他方の隣辺部から射出し、あるいは、一方の隣辺部から入射した光は光学薄膜で一部の光が反射し、一部の光が透過して二つの隣辺部から射出される。
【0004】
このプリズムをはじめ光学物品では、入射光を所定の位置に精度よく出射する性能を有する必要があり、入射光に対して所定の角度で曲げられた出射光との関係を偏角として規定されている。プリズムの偏角は切断面基準で補償することが求められている。
プリズムの偏角を測定する従来例として、測定光を測定対象であるプリズムに出射する光源と、測定光の光軸上に配置された受光器と、受光器の光源側に配置されスリット孔が形成された遮光板とを備え、この遮光板を移動させて受光器で受光する光の受光量のピーク値を求め、基準値とピーク値との距離から偏角値を求める偏角測定装置が知られている(特許文献2)。
この特許文献2で示される従来例は、高精度な偏角測定をコンパクトな構成で実現できるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−143264号公報
【特許文献2】特開2004−257882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2で示される従来例は、光源から出射された測定光を測定対象であるプリズムに透過させ、この透過光を受光器で受光して偏角を求める構成であるため、反射偏角を求めることを前提としていない。仮に、特許文献1で示される従来例において、遮光板の配置を代えて反射偏角を求めるようにしたとしても、プリズムを載置する試料台の基準面内に回転ずれがある場合、プリズムの反射偏角を精度よく測定できないという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、光学物品の反射偏角を精度よく測定することができる光学物品の偏角測定装置及び偏角測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる光学物品の偏角測定装置は、長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続される三角柱部を有する光学物品の偏角を測定する装置であって、長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で斜辺部と対向する角度が直角とされる直角二等辺三角柱の基準プリズムと、この基準プリズムの斜辺部又は前記光学物品の斜辺部に向けてレーザー光を出射するレーザー光源と、このレーザー光源の前記基準プリズム又は前記光学物品を挟んで反対側に配置され前記基準プリズムの一方の隣辺部又は前記光学物品の一方の隣辺部にレーザー光を照射する光源及び当該隣辺部で反射された反射光を受光する受光部を有する第一測定部と、前記レーザー光源から出射されて前記基準プリズムの斜辺部又は前記光学物品の斜辺部で反射した反射光を受光する第二測定部と、この第二測定部及び前記第一測定部からそれぞれ出力される前記基準プリズムの測定値の信号と前記光学物品の測定値の信号とを対比して前記光学物品の偏角の補正値を演算する演算装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成の本適用例では、第一測定部の光源からレーザー光を基準プリズムの一方の隣辺部に照射し、この隣辺部で反射された反射光を第一測定部の受光部で受光して隣辺部の基準位置を測定する。さらに、レーザー光源から基準プリズムの隣辺部にレーザー光を照射し、この隣辺で反射した反射光を第二測定部で受光し、斜辺部の基準位置を測定する。その後、基準プリズムに代えて測定対象である光学物品を配置し、この光学物品の一方の隣辺部と斜辺部との位置をそれぞれ測定し、その測定位置の信号を演算装置に出力する。演算装置では、光学物品の実測位置の出力信号と基準プリズムの基準位置の出力信号とを対比して透過偏角や偏角の補正値を演算し、この補正値から透過偏角や反射偏角を求める。
そのため、本適用例では、基準プリズム又は測定対象である光学物品が設置される被設置部とレーザー光源とを結ぶ線分と、被設置部と第一測定部とを結ぶ線部とが一直線上にあり、被設置部と第二測定部とを結ぶ線分とが前述の直線上の線分と交差しているため、被設置部の平面内で光学物品が設置する際に回転ずれを生じても、これら3箇所に配置されているレーザー光源、第一測定部及び第二測定部から得られたデータに基づいて演算装置で正確な補正値を求め、この補正値に基づいて正確な透過偏角や反射偏角を測定することができる。
【0010】
[適用例2]
本適用例にかかる光学物品の偏角測定方法は、長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続される三角柱部を有する光学物品の偏角を測定する方法であって、被設置部に向けてレーザー光を照射するレーザー光源と、このレーザー光源の前記被設置部を挟んで配置され前記被設置部に向けてレーザー光を照射する光源及びレーザー光を受光する受光部を有する第一測定部と、これらのレーザー光源と前記第一測定部とを結ぶ線分と直交するとともに前記被設置部を通る線分上に配置されレーザー光を受光する受光部を有する第二測定部と、長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続されるとともに前記斜辺部と対向する角度が直角とされる直角二等辺三角形の基準プリズムとを用い、前記被設置部に前記基準プリズムを設置し、この基準プリズムの基準位置を前記レーザー光源、前記第一測定部及び前記第二測定部から求める基準位置測定工程と、前記基準プリズムに代えて前記光学物品を前記被設置部に設置し、前記光学物品の実測位置を前記レーザー光源、前記第一測定部及び前記第二測定部から求める実測位置測定工程と、この実測位置測定工程で求めた実測位置と前記基準位置測定工程で求めた基準位置とを対比して偏角の補正値を求める演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成の本適用例では、基準位置測定工程によって、まず、被設置部に設置した基準プリズムの基準位置をレーザー光源、第一測定部及び第二測定部から求め、その後、実測測定工程によって、基準プリズムに代えて測定対象である光学物品を被設置部に設置し、この光学物品の実測位置を前記レーザー光源、前記第一測定部及び第二測定部から求める。そして、これらの実測位置のデータと基準位置のデータとを対比して偏角の補正値を求める。
そのため、本適用例では、被設置部の平面内で光学物品が設置する際に回転ずれを生じても、正確な透過偏角や反射偏角を測定するための手順を提供することができる。
【0012】
[適用例3]
本適用例にかかる光学物品の偏角測定方法は、前記基準位置測定工程は、前記第一測定部に前記レーザー光源からレーザー光を照射して前記第一測定部のゼロ点補正をするゼロ点補正工程と、前記第一測定部から前記標準プリズムの一方の隣辺部にレーザー光を照射するとともに当該隣辺部で反射されたレーザー光を前記第一測定部の受光部で受光して前記基準プリズムの隣辺位置を測定する基準プリズム隣辺測定工程と、前記レーザー光源から前記標準プリズムの前記斜辺部に向けてレーザー光を照射し前記斜辺部で反射したレーザー光を第二測定部で受光して前記基準プリズムの斜辺部の位置を測定する基準プリズム斜辺測定工程とを備え、実測位置測定工程は、前記光学物品の一方の隣辺部に前記第一測定部からレーザー光を照射するとともに当該隣辺部で反射されたレーザー光を前記第一測定部の受光部で受光して前記光学物品の隣辺位置を測定する光学物品隣辺測定工程と、前記レーザー光源から前記光学物品の前記斜辺部に向けてレーザー光を照射し前記斜辺部で反射したレーザー光を第二測定部で受光して前記光学物品の斜辺部の位置を測定する光学物品斜辺測定工程とを備え、前記演算工程は、前記光学物品斜辺測定工程で測定した測定値から前記光学物品隣辺測定工程で測定した測定値、前記基準プリズム斜辺測定工程で測定した測定値、前記基準プリズム隣辺測定工程で測定した測定値を減じて偏角の補正値を求めることを特徴とする。
【0013】
この構成の本適用例では、基準位置測定工程において、第一測定部のゼロ点補正をすることで、基準プリズムの基準位置をより正確に測定することができるから、偏角をより正確に求めることができる。
【0014】
[適用例4]
本適用例にかかる光学物品の偏角測定方法は、前記基準プリズム隣辺測定工程は、前記基準プリズムの反射光の位置をゼロ点とするように前記基準プリズムの姿勢を変更することを特徴とする。
【0015】
この構成の本適用例では、被設置部の平面内での姿勢を変更して基準プリズムの隣辺部から反射するレーザー光の位置をゼロ点と設定することで、測定対象である光学物品の隣辺部の実測位置を正確に求めることができるから、透過偏角や反射偏角の測定精度をより高いものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光学物品の偏角測定装置の概略構成図。
【図2】第1実施形態の光学物品の偏角測定方法を説明する概略図。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる偏角測定方法を説明する概略図。
【図4】本発明の異なる光学物品の偏角測定をする装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1は第1実施形態にかかる光学物品の偏角測定装置の概略構成図である。
図1において、偏角測定装置は、光学物品1の偏角を測定する装置であって、基準プリズム2、レーザー光源3、第一測定部4、第2測定部5及び演算装置6を備えた構成である。測定対象である光学物品1と基準プリズム2とは被設置部7に設置可能とされる。この被設置部は、レーザー光源3、第一測定部4及び第二測定部5が設置される平面内で回動自在とされる。
【0018】
本実施形態で測定される光学物品1は、直角三角形状の三角柱部10が2個接合された断面正方形のプリズムであり、例えば、ピックアップ装置、プロジェクター、その他の装置に組み込まれている。これらの三角柱部10の隣辺部1Aは、それぞれ外部に露出しており、隣辺部1A同士は同じ長さ寸法を有するとともに互いに直交している。斜辺部1Bと隣辺部1Aとがなす角度は45°である。斜辺部1Bには所定のレーザー光を透過し、他のレーザー光を反射する図示しない光学薄膜が形成されている。
【0019】
基準プリズム2は長さが等しい2つの隣辺部2Aを備え、斜斜辺部2Bと対向する角度が直角とされる直角二等辺三角柱のプリズムである。斜辺部2Bには所定のレーザー光を透過し、他のレーザー光を反射する図示しない光学薄膜が形成されている。
ここで、基準プリズム2とは、斜辺部2Bと各隣辺部2Aとが正確な45°であり、隣辺部2A同士がなす角が正確な直角とされた理想的なプリズムである。
なお、本実施形態では、基準プリズム2は図示しない被設置部に設置されるものであり、この被設置部に測定対象である光学物品1も設置される。
【0020】
レーザー光源3は被設置部7に向けてレーザー光を照射するものである。
第一測定部4は、被設置部7を挟んでレーザー光源3とは反対側に配置されている。この第一測定部4は、被設置部7に設置された光学物品1の隣辺部1A又は基準プリズム2の隣辺部2Aにレーザー光を照射する光源41と隣辺部1A,2Aで反射された反射光を受光する受光部42を有するオートコリメーターである。受光部42は反射光の受光位置をX軸とY軸の平面内で検出するCCDを有する。受光部42で受光する反射光の光路と直交する方向に光源41が配置され、この光源41から出射したレーザー光は前記光路に配置されたプリズム43で被設置部7に向けて照射される。
【0021】
第二測定部5は被設置部7に設置された光学物品1又は基準プリズム2の斜辺部1B,2Bで反射した反射光を受光する受光部52を備えている。この受光部52は反射光の受光位置をX軸とY軸の平面内で検出するCCDを有する。なお、本実施形態では、第二測定部5を第一測定部4と同じ構成、つまり、受光部52に加えてレーザー光を照射する光源を有するオートコリメーターとするものでもよい。
演算装置6は第二測定部5及び第一測定部4からそれぞれ出力される基準プリズム2の測定値の信号と光学物品1の測定値の信号とを対比して光学物品1の透過偏角や反射偏角の補正値を演算する。この補正値に基づいて透過偏角や反射偏角が演算される。そのため、第一測定部4と光学物品1の隣辺部1A又は基準プリズム2の隣辺部2Aとの寸法L1や、第二測定部5と光学物品1の底辺部1Bの中心又は基準プリズム2の斜辺部2Bの中心との寸法L2が参照される。
被設置部7は本実施形態では、光学物品1や基準プリズム2の設置面方向において回動自在とされる。
【0022】
次に、第1実施形態にかかる光学物品の偏角測定方法を図2に基づいて説明する。
[基準位置測定工程]
まず、図2(A)に示される通り、第一測定部4のゼロ点補正をする(ゼロ点補正工程)。これにより、レーザー光源3と第一測定部4との基準位置を特定する。この際、被設置部7には何も設置しない。
レーザー光源3から第一測定部4に向けてレーザー光を照射し、第一測定部4の受光部42で受光させる。この測定値をゼロ点(X=0、Y=0)とする。ゼロ点補正が終了したら、レーザー光源3からのレーザー光の照射を中止する。
その後、図2(B)に示される通り、基準プリズム2を被設置部7に設置する。この際、基準プリズム2の一方の隣辺部2Aが第一測定部4に対向し、斜辺部2Bが第二測定部5側に向くようにする。第一測定部4の光源41から基準プリズム2の隣辺部2Aにレーザー光を照射し、その反射光を受光部42で受光する(基準プリズム隣辺測定工程)。ここで、第一測定部4の受光部42の測定値がゼロとなるように被設置部7を角度θだけ回動させる。測定値が0となるように被設置部7を回動したら、第一測定部4の光源41からレーザー光を照射することを中止する。
【0023】
さらに、図2(C)に示される通り、被設置部7を固定して基準プリズム2が動かないようにし、レーザー光源3から基準プリズム2の斜辺部2Bに向けてレーザー光を照射する。レーザー光源3から照射されたレーザー光は斜辺部2Bに形成された光学薄膜で一部が反射し、この反射光が第二測定部5の受光部52で受光される(基準プリズム斜辺測定工程)。この測定値をゼロ点(X=0、Y=0)とする。なお、本実施形態では、第一測定部4及び第二測定部5の信号処理系等は全部で一系統(1ch)しかもたない場合では、1度、ゼロ点補正すると、その前のゼロ点補正が無効となり、再度のゼロ点補正が必要となる。ゼロ点補正が終了したら、レーザー光源3からのレーザー光の照射を中止する。
【0024】
図2(D)に示される通り、基準プリズム2を静止させたままで、第一測定部4の光源41から基準プリズム2の隣辺部2Aにレーザー光を照射し、その反射光を受光部42で受光する。この第一測定部4の受光部42の測定値を(X1,Y1)とする。なお、図2(C)で示される工程で、ゼロ点補正をしたので、図2(B)で示される工程で実施したゼロ点補正はキャンセルされることになり、測定値はゼロ点とはならない。
測定値(X1,Y1)を求めたなら、第一測定部4の光源41からのレーザー光の照射を中止する。
【0025】
[実測位置測定工程]
図2(E)に示される通り、被設置部7に基準プリズム2に代えて測定対象の光学物品1を設置する。そして、第一測定部4の光源41から光学物品1の隣辺部1Aにレーザー光を照射し、その反射光を受光部42で受光する(光学物品隣辺測定工程)。この第一測定部4の受光部42の測定値を(X2,Y2)とする。測定値(X2,Y2)を求めたなら、第一測定部4の光源41からのレーザー光の照射を中止する。
図2(F)に示される通り、レーザー光源3から光学物品1の隣辺部1Aに向けてレーザー光を照射する。レーザー光は隣辺部1Aから斜辺部1Bに向けて照射されることになり、この斜辺部1Bの光学薄膜でレーザー光の一部が反射し、この反射光が第二測定部5の受光部52で受光される(光学物品底辺測定工程)。この測定値を(X3,Y3)とする。
【0026】
[演算工程]
図2(D)(E)の工程の測定値で補正した反射偏角(X4,Y4)は次の式で求められる。
補正した反射偏角(X4,Y4)=(X3−(X2−X1),Y3) …(1)
なお、本実施形態では、第一測定部4及び第二測定部5の信号処理系を二系統(2ch)もつものを使用することも可能であり、この場合では、図2(D)の工程が不要となり、補正した反射偏角(X4,Y4)は次の式で求められる。
補正した反射偏角(X4,Y4)=(X3−X2),Y3) …(2)
以上の測定値のデータは演算装置6に送られ、この演算装置では、前述の(1)式又は(2)式に基づいて補正した反射偏角を演算する。そして、予めプログラムされた反射偏角や透過偏角の式に、前述の補正偏角の数値のデータ、さらには、必要に応じて、第一測定部4と光学物品1の隣辺部1A又は基準プリズム2の隣辺部2Aとの寸法L1、さらには、第二測定部5と光学物品1の斜辺部1Bの中心又は基準プリズム2の斜辺部2Bの中心との寸法L2を参照して反射偏角、透過偏角の値を演算する。
測定対象を代えて光学物品1の反射偏角を求める場合には図2(E)(F)の工程を繰り返す。
【0027】
従って、第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)理想的に端面が直角二等辺三角形とされた基準プリズム2と、この基準プリズム2の斜辺部2B又は測定対象である光学物品1の斜辺部1Bに向けてレーザー光を出射するレーザー光源3と、このレーザー光源3の基準プリズム2又は光学物品1を挟んで反対側に配置され基準プリズム2の一方の隣辺部2A又は光学物品1の一方の隣辺部1Aにレーザー光を照射する光源41及び隣辺部1A,2Aで反射された反射光を受光する受光部42を有する第一測定部4と、レーザー光源3から出射されて基準プリズム2の斜辺部2B又は光学物品1の斜辺部1Bで反射した反射光を受光する第二測定部5と、この第二測定部5及び第一測定部4からそれぞれ出力される基準プリズム2の測定値の信号と光学物品1の測定値の信号とを対比して光学物品1の偏角の補正値を演算する演算装置6とを備えて偏角測定装置を構成した。そして、この装置を用いて偏角測定をするため、被設置部7に基準プリズム2を設置し、この基準プリズム2の基準位置をレーザー光源3、第一測定部4及び第二測定部5から求める基準位置測定工程と、基準プリズム2に代えて光学物品1を被設置部7に設置し、光学物品1の実測位置をレーザー光源3、第一測定部4及び第二測定部5から求める実測位置測定工程と、この実測位置測定工程で求めた実測位置と基準位置測定工程で求めた基準位置とを対比して偏角の補正値を求める演算工程とを実施する。そのため、基準プリズム2又は光学物品1が設置される被設置部7に対してレーザー光源3、第二測定部5及び第一測定部4が互いに直交する3方向に配置されているから、被設置部7の平面内で光学物品1が設置する際に回転ずれを生じても、これら3箇所に配置されているレーザー光源3、第一測定部4及び第二測定部5から得られたデータに基づいて演算装置6で正確な補正値を求め、この補正値に基づいて正確な透過偏角や反射偏角を測定することができる。
【0028】
(2)基準位置測定工程では、第一測定部4にレーザー光源3からレーザー光を照射して第一測定部4のゼロ点補正をするゼロ点補正工程と、第一測定部4から標準プリズム2の一方の隣辺部2Aにレーザー光を照射するとともに隣辺部2Aで反射されたレーザー光を第一測定部4の受光部42で受光して基準プリズム2の隣辺位置を測定する基準プリズム隣辺測定工程と、レーザー光源3から標準プリズム2の斜辺部2Bに向けてレーザー光を照射し斜辺部2Bで反射したレーザー光を第二測定部5で受光して基準プリズム2の斜辺部の位置を測定する基準プリズム斜辺測定工程と、を実施する。
従って、基準位置測定工程において、第一測定部4のゼロ点補正をすることで、レーザー光源3と第一測定部4との位置関係が明確になり、基準プリズム2の基準位置をより正確に測定することができ、偏角をより正確に求めることができる。
(3)実測位置測定工程では、光学物品1の一方の隣辺部1Aに第一測定部4からレーザー光を照射するとともに隣辺部1Aで反射されたレーザー光を第一測定部4の受光部42で受光して光学物品1の隣辺位置(X2,Y2)を測定する光学物品隣辺測定工程と、レーザー光源3から光学物品1の斜辺部1Bに向けてレーザー光を照射し斜辺部1Bで反射したレーザー光を第二測定部5の受光部52で受光して光学物品1の斜辺部1Bの位置(X3,Y3)を測定する光学物品斜辺測定工程とを実施する。演算工程では、光学物品斜辺測定工程で測定した測定値(X3,Y3)から光学物品隣辺測定工程で測定した測定値(X2,Y2)、基準プリズム斜辺測定工程で測定した測定値(X1,Y1)、前記基準プリズム隣斜辺測定工程で測定した測定値(X=0,Y=0)を減じて反射偏角の補正値(X4,Y4)を(X3−(X2−X1),Y3)として求めた。従って、簡易な方法により正確な反射偏角の補正値を求めることができるので、偏角測定精度が高いものとなる。
【0029】
(4)基準プリズム隣辺測定工程は、基準プリズム2の反射光の位置をゼロ点とするように被設置部7を回動して基準プリズム2の姿勢を変更する工程を含む。そのため、測定対象である光学物品1の隣辺部1Aの実測位置を正確に求めることができるから、透過偏角や反射偏角の測定精度をより高いものにできる。
(5)第一測定部4としてオートコリメーターを用いた。オートコリメーターは既存の装置であるため、本実施形態のために特殊の装置を製造することを要しないから、装置の製造コストを低くすることができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態にかかる光学物品の偏角測定方法を図3に基づいて説明する。第2実施形態は、ゼロ点補正をすることなく、反射偏角の補正値を演算装置6のプログラムで実施する点で第1実施形態とは異なるもので、光学物品1の構造については第1実施形態と同じである。
[基準位置測定工程]
まず、図3(A)に示される通り、被設置部7には何も設置しない状態で、レーザー光源3から第一測定部4に向けてレーザー光を照射し、第一測定部4の受光部42で受光させる。この測定値を(X1,Y1)とする。この測定が終了したら、レーザー光源3からのレーザー光の照射を中止する。
【0031】
その後、図3(B)に示される通り、基準プリズム2を被設置部7に設置する。この際、基準プリズム2の一方の隣辺部2Aが第一測定部4に対向し、斜辺部2Bが第二測定部5側に向くようにする。第一測定部4の光源41から基準プリズム2の隣辺部2Aにレーザー光を照射し、その反射光を受光部42で受光する。この測定値を(X2,Y2)とする。測定が終了したら、第一測定部4の光源41からレーザー光を照射することを中止する。
【0032】
さらに、図3(C)に示される通り、レーザー光源3から基準プリズム2の斜辺部2Bに向けてレーザー光を照射する。レーザー光源3から照射されたレーザー光は斜辺部2Bに形成された光学薄膜で一部が反射し、この反射光が第二測定部5の受光部52で受光される。この測定値を(X3,Y3)とする。測定が終了したら、レーザー光源3からのレーザー光の照射を中止する。
【0033】
[実測位置測定工程]
図3(D)に示される通り、被設置部7に基準プリズム2に代えて測定対象の光学物品1を設置する。そして、第一測定部4の光源41から光学物品1の隣辺部1Aにレーザー光を照射し、その反射光を受光部42で受光する。この第一測定部4の受光部42の測定値を(X4,Y4)とする。測定値(X4,Y4)を求めたなら、第一測定部4の光源41からのレーザー光の照射を中止する。
【0034】
図3(E)に示される通り、レーザー光源3から光学物品1の隣辺部1Aに向けてレーザー光を照射する。レーザー光は隣辺部1Aから斜辺部1Bに向けて照射されることになり、この底辺部1Bの光学薄膜でレーザー光の一部が反射し、この反射光が第二測定部5の受光部52で受光される。この測定値を(X5,Y5)とする。
【0035】
[演算工程]
ここで、図3(D)(E)の工程の測定値で補正した反射偏角(X6,Y6)は次の式(3)で求められる。この(3)式は予め演算装置6のプログラムとして記憶されている。
補正した反射偏角(X6,Y6)=(X5−X4−((X3−(X2−X1)),Y5−Y3) …(3)
以上の測定値のデータは演算装置6に送られ、この演算装置では、前述の(3)式に基づいて補正した反射偏角を演算する。
そして、予め規定されている反射偏角や透過偏角の式に前述の補正偏角のデータを入れて求める反射偏角、透過偏角の値を演算する。
測定対象を代えて光学物品1の反射偏角を求める場合には図3(D)(E)の工程を繰り返す。
【0036】
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)(5)の効果と同様の効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(6)反射偏角の補正値を求めるにあたり、ゼロ点補正をすることなく、演算処理するようにしたので、被設置部7の回動操作が不要とされることになり、測定作業が容易となる。
【0037】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記実施形態では、測定対象の光学物品1を直角三角形状の三角柱部10が2個接合された断面正方形のプリズムとしたが、本発明で測定できる光学物品は前記実施形態のものに限定されない。例えば、図4(A)に示される通り、直角三角形状の三角柱部10が1個からなる断面直角二等辺三角柱のプリズム8でもよく、図4(B)に示される通り、前記実施形態の光学物品1の隣辺部に三角柱部10の隣辺部を接合した異形プリズム9であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ピックアップ装置、プロジェクター、その他の装置に用いられる光学物品に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1、8,9…測定対象である光学物品、1A,2A…隣辺部、1B,2B…斜辺部、2…基準プリズム、3…レーザー光源、4…第一測定部、5…第二測定部、6…演算装置、7…被設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続される三角柱部を有する光学物品の偏角を測定する装置であって、
長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部と対向する角度が直角とされる直角二等辺三角柱の基準プリズムと、この基準プリズムの斜辺部又は前記光学物品の斜辺部に向けてレーザー光を出射するレーザー光源と、このレーザー光源の前記基準プリズム又は前記光学物品を挟んで反対側に配置され前記基準プリズムの一方の隣辺部又は前記光学物品の一方の隣辺部にレーザー光を照射する光源及び当該隣辺部で反射された反射光を受光する受光部を有する第一測定部と、前記レーザー光源から出射されて前記基準プリズムの斜辺部又は前記光学物品の斜辺部で反射した反射光を受光する第二測定部と、この第二測定部及び前記第一測定部からそれぞれ出力される前記基準プリズムの測定値の信号と前記光学物品の測定値の信号とを対比して前記光学物品の偏角の補正値を演算する演算装置とを備えたことを特徴とする光学物品の偏角測定装置。
【請求項2】
長さが等しい2つの隣辺部を備え、斜辺部で接続される三角柱部を有する光学物品の偏角を測定する方法であって、
被設置部に向けてレーザー光を照射するレーザー光源と、このレーザー光源の前記被設置部を挟んで配置され前記被設置部に向けてレーザー光を照射する光源及びレーザー光を受光する受光部を有する第一測定部と、これらのレーザー光源と前記第一測定部とを結ぶ線分と直交するとともに前記被設置部を通る線分上に配置されレーザー光を受光する受光部を有する第二測定部と、長さが等しい2つの隣辺部を備え斜辺部で接続されるとともに前記斜辺部と対向する角度が直角とされる直角二等辺三角形の基準プリズムとを用い、
前記被設置部に前記基準プリズムを設置し、この基準プリズムの基準位置を前記レーザー光源、前記第一測定部及び前記第二測定部から求める基準位置測定工程と、
前記基準プリズムに代えて前記光学物品を前記被設置部に設置し、前記光学物品の実測位置を前記レーザー光源、前記第一測定部及び前記第二測定部から求める実測位置測定工程と、
この実測位置測定工程で求めた実測位置と前記基準位置測定工程で求めた基準位置とを対比して偏角の補正値を求める演算工程と、
を備えたことを特徴とする光学物品の偏角測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載された光学物品の偏角測定方法において、
前記基準位置測定工程は、前記第一測定部に前記レーザー光源からレーザー光を照射して前記第一測定部のゼロ点補正をするゼロ点補正工程と、前記第一測定部から前記標準プリズムの一方の隣辺部にレーザー光を照射するとともに当該隣辺部で反射されたレーザー光を前記第一測定部の受光部で受光して前記基準プリズムの隣辺位置を測定する基準プリズム隣辺測定工程と、前記レーザー光源から前記標準プリズムの前記斜辺部に向けてレーザー光を照射し前記斜辺部で反射したレーザー光を第二測定部で受光して前記基準プリズムの斜辺部の位置を測定する基準プリズム底辺測定工程とを備え、
実測位置測定工程は、前記光学物品の一方の隣辺部に前記第一測定部からレーザー光を照射するとともに当該隣辺部で反射されたレーザー光を前記第一測定部の受光部で受光して前記光学物品の隣辺位置を測定する光学物品隣辺測定工程と、前記レーザー光源から前記光学物品の前記斜辺部に向けてレーザー光を照射し前記斜辺部で反射したレーザー光を第二測定部で受光して前記光学物品の斜辺部の位置を測定する光学物品斜辺測定工程とを備え、
前記演算工程は、前記光学物品斜辺測定工程で測定した測定値から前記光学物品隣辺測定工程で測定した測定値、前記基準プリズム斜辺測定工程で測定した測定値、前記基準プリズム隣辺測定工程で測定した測定値を減じて偏角の補正値を求めることを特徴とする光学物品の偏角測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載された光学物品の偏角測定方法において、
前記基準プリズム隣辺測定工程は、前記基準プリズムの反射光の位置をゼロ点とするように前記基準プリズムの姿勢を変更することを特徴とする光学物品の偏角測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−203940(P2010−203940A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50300(P2009−50300)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】