説明

光学用易接着性フィルム

【課題】透明性、易接着性および耐傷性に優れる光学用易接着性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に設けられた塗布層からなり、塗布層はイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%を含有することを特徴とする、光学用易接着性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材のベースフィルムとして用いられる光学用易接着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、近年、光学部材を構成する光学用フィルムとして多く用いられ、例えば、液晶表示装置のプリズムレンズシート、タッチパネルや反射防止フィルム、プラズマディスプレイの電磁波シールドフィルム、ディスプレイ防爆フィルムといった光学部材のベースフィルムとして、また、有機ELディスプレイのベースフィルムとして用いられている。このような光学用部材に用いられるベースフィルムには、優れた透明性が要求される。
【特許文献1】特開平2−250872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光学部材に用いられるベースフィルムは、そのうえに種々の機能層を設けて光学部材とされることから、機能層との易接着性が必要であり、また、機能層を設ける加工工程で傷が付かない性質、すなわち耐傷性が必要である。
本発明は、透明性、易接着性および耐傷性に優れる光学用易接着性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に設けられた塗布層からなり、塗布層はイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%を含有することを特徴とする、光学用易接着性フィルムである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、透明性、易接着性および耐傷性に優れる光学用易接着性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルム]
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分とから構成される線状飽和ポリエステルである。このポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートは、機械的物性と光学的物性のバランスがよく好ましい。
【0007】
ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、上記ポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類のポリマーとブレンドしたものであってもよい。
ポリエステルフィルムのポリエステルは、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒を含有してもよい。しかし、フィラーを含有しないことが透明性の点で好ましい。
ポリエステルフィルムの厚みは、ベースフィルムとして使用するために必要な強度を得るために、好ましくは25〜400μmm、さらに好ましくは50〜350μmである。
【0008】
[塗布層]
本発明において、ポリエステルフィルムの少なくとも片面には塗布層が設けられ、塗布層はイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%を含有する。イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートの含有量が5重量%未満であると造膜性が悪くなり透明性が低いものとなり、他方、45重量%を超えるとフィルムの耐ブロッキング性が悪化して取り扱い性が不良となる。
【0009】
[イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート]
塗布層に含有されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートとして好適なものは、アルキレンジイソシアネート,シクロアルキレンジイソシアネートおよびアラルキレンジイソシアネートから選ばれるジイソシアネート化合物と、炭素数が10〜50のモノアルコールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下に反応させた後、未反応のジイソシアネート化合物を除去してなるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート;アルキレン,シクロアルキレンおよびアラルキレンジイソシアネートから選ばれるジイソシアネート化合物をイソシアヌレート化触媒の存在下に反応させ、次いで未反応のジイソシアネート化合物を除去した後、得られたポリイソシアネートと炭素数が10〜50のモノアルコールとを反応させることにより得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートである。
【0010】
アルキレンジイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート(リジンジイソシアネート)を挙げることができる。また、これらの混合物を用いることもできる。
【0011】
シクロアルキレンジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、3−イソシアネートメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソプロピリデン−ビス(4−シクロヘキシル)イソシアネートを挙げることができる。また、これらの混合物を用いることもできる。
【0012】
アラルキレンジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ビス(イソシアネートメチル)−ジフェニルメタンを挙げることができる。また、これらの混合物を用いることもできる。
上記のジイソシアネート化合物のなかで、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサンが特に好ましい。
【0013】
炭素数が10〜50のモノアルコールとしては、一級、二級または三級アルコールを用いることができる。このモノアルコールのなかでも、炭素数が12〜30のモノアルコールが特に好ましい。この範囲の炭素数のモノアルコールを用いることによって、ポリイソシアネートのイソシアネート含有率を高く維持しつつ、貧溶剤に対しても溶解し、5℃以下の低温域でも白濁しない塗液を得ることができる。炭素数が10〜50のモノアルコールとしては、直鎖状または分岐状のモノアルコールを挙げることができる。なかでも、炭素数が12〜30の分岐状のモノアルコールが特に好ましい。
【0014】
直鎖状のモノアルコールとしては、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n−ノナデカノール、エイコサノール、セリルアルコール、メリシルアルコールを挙げることができる。
【0015】
分岐状のモノアルコールとしては、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−セチルステアリルアルコールを挙げることができる。
【0016】
モノアルコールは、分子内に1個のヒドロキシル基を有していればよく、それ以外の分子構造は耐候性に悪い影響を与えない限り、分子内にエステル基,エーテル基,シクロヘキサン環,芳香環などを有していてもよい。
これらのモノアルコールに対し、少量の脂肪族不飽和アルコール,ジオール,トリオールなどを混入または併用してもよい。
【0017】
モノアルコールは、目的とするポリイソシアネートの平均官能基数が2以上になるように使用することが好ましく、ジイソシアネート化合物の量に対して、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%用いるのがよい。
【0018】
イソシアヌレート化触媒は、Zwitter ion型のヒドロキシアルキル第4級アンモニウム化合物が適し、その例としては、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・2−エチルヘキサノエート、N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサノエート、トリエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサデカノエート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フェニルカーボネート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フォーメートを挙げることができる。
【0019】
イソシアヌレート化触媒は、ジイソシアネート化合物に対して、例えば0.001〜0.1重量%、好ましくは0.002〜0.05重量%を用いるとよい。また、イソシアヌレート化反応を調節するために、たとえば特開昭61−129173号公報に記載されているような有機亜リン酸エステルなどを助触媒として使用することが好ましい。
【0020】
ジイソシアネート化合物とモノアルコールとをイソシアヌレート化触媒の存在下に反応させた後、未反応のジイソシアネート化合物を除去してもよいし、また、ジイソシアネート化合物だけをイソシアヌレート化して未反応のジイソシアネート化合物を除去し、得られたポリイソシアネートをモノアルコールと反応させてもよい。
【0021】
イソシアヌレート化反応は、通常、30〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度でおこなうのがよく、その際の反応の転化率はジイソシアネート化合物およびモノアルコールの合計仕込量に対して、好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%の範囲である。50重量%を超えた転化率では、生成するポリイソシアネートの分子量が高くなりすぎ、溶解性,相溶性,NCO含有率が低下し、粘度が高くなることがあり、好ましくない。
【0022】
イソシアヌレート化反応を終了した後、たとえばリン酸,モノクロル酢酸,ドデシルベンゼンスルホン酸,パラトルエンスルホン酸などのイソシアヌレート化反応の停止剤を反応混合物に添加してイソシアヌレート化触媒を失活させた後、たとえば薄膜蒸留等に対して未反応のジイソシアネート化合物を除去することにより、ポリイソシアネートを得ることができる。
【0023】
イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートとモノアルコールとの反応は一般的なウレタン化反応であり、通常のウレタン化反応と同様、室温〜100℃付近の温度で無触媒またはスズ系,アミン系などの触媒の存在下におこなうことができる。
【0024】
このようにして得られたイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートは、イソシアネート含有率が好ましくは15〜24重量%、さらに好ましくは20〜24重量%であり、また、粘度が25℃で好ましくは20ポイズ以下、さらに好ましくは15ポイズ以下の液体である。
【0025】
[高分子樹脂]
塗布層は、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートの他に、バインダーとして高分子樹脂を含有するこが好ましい。すなわち、塗布層は、好ましくは、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%および高分子樹脂95〜55重量%からなる。高分子樹脂が55重量%未満であるとポリエステルフィルムへの密着性や加工層の密着性が悪くなり、好ましくなく、95重量%を超えると造膜性が悪くなり、透明性が下がり好ましくない。
【0026】
バインダーの高分子樹脂として、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を用いることができ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を用いる。光学用部材には高い透明性が求められ、塗布層の屈折率を下げることで反射率が低下し透過率が上がるため、バインダーの高分子樹脂として容易に屈折率を下げられるアクリル樹脂が好ましい。
【0027】
[フィラー]
塗布層は、良好な滑り性を得るために、フィラーを含有することが好ましい。塗布層がフィラーを含有する場合、フィラーの平均粒子径は、例えば200〜2000nm、好ましくは300〜1500nmである。平均粒子径がこの範囲であることによって、傷の入り易い工程、例えば回転トルク高い金属ロールを用いる工程においても、十分な耐傷性を得るとともに、フィルム表面のヘーズが低く、光学特性の良好な易接着性フィルムを得ることができる。
【0028】
塗布層がフィラーを含有する場合、フィラーの含有量は、塗布層の組成物100重量%あたり、好ましくは0.1〜20重量%である。この範囲で含有することによって、滑り性を有しながら、透明な易接着性フィルムを得ることができる。
【0029】
フィラーとしては、無機微粒子、有機微粒子、有機無機複合粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸ソーダ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデンの粒子を用いることができる。有機微粒としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂の粒子を用いることができる。有機無機複合粒子としては、酸化ケイ素・アクリル樹脂複合物、酸化ケイ素・シリコーン樹脂複合物を用いることができる。
【0030】
塗布層には、紫外線吸収剤、界面活性剤、滑材、ワックスを添加してもよい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、フェノール系のものを例示することができる。
【0031】
[製造方法]
本発明において、未延伸のポリエステルフィルムまたは一軸延伸されたポリエステルフィルムに、塗布層の成分を溶解もしくは分散させた水性塗布液を塗布することにより塗膜を形成し、その後、さらに同時二軸延伸、逐次二軸延伸または一軸延伸して、塗布層を備える二軸延伸ポリエステルフィルムとすることで製造することが好ましい。
【0032】
塗布層に用いるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートは市販のものを用いることができ、例えば三井武田ケミカル社製商品名タケネートWD−220、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−730、旭化成ケミカルズ社製商品名デュラネートTSA−100、デュラネートTSS−100、デュラネートTSE−100を用いることができる。また、合成する場合、合成法は公知であり、例えば特開平2−250872号公報に記載された方法で合成することができる。
【0033】
ポリエステルフィルムは、フィルムを構成することになるポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させることで、未延伸のポリエステルフィルムとして得ることができる。
【0034】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸し、もしくは長手方向と幅方向に同時に延伸をし、必要に応じてさらに180〜230℃で、1〜60秒間熱処理を行い、熱処理温度より10〜20℃低い温度で幅方向に0〜20%収縮させながら再熱処理を行うことにより得ることができる。なお、ガラス転移温度をTgと略記する。
【0035】
塗液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、延伸工程の途中、すなわち配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに対して行うことが好ましい。結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとしては、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向させた一軸延伸フィルム、縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向させた二軸延伸フィルム(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了させる前の二軸延伸フィルム)を挙げることができる。
【0036】
なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向させた一軸延伸フィルムに塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施して塗布層を形成することが好ましい。さらに好ましくは未延伸フィルムに塗液を塗布し、乾燥させ、縦延伸と横延伸を同時に実施し、その後熱固定を実施し、塗布層を形成する。
【0037】
塗液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗液に、塗液の成分とは化学的に不活性な界面活性剤を配合することが好ましい。かかる界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの塗液の濡れを促進し塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤を用いる場合、塗液の固形分100重量%あたり好ましくは1〜10重量%用いる。
【0038】
塗布の方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法を単独または組合せて用いることができる。なお、塗布層は必要に応じフィルムの片面のみに形成してもよいし両面に形成してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
物性は下記の方法により評価した。「部」は重量部を意味する。
【0040】
(1)ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。なお、本発明において、ヘーズによるフィルムの透明性はつぎのとおりである。
ヘーズ 0.6%以下 ……透明性極めて良好
ヘーズ 0.6%を超え1.0%以下 ……透明性良好
ヘーズ 1.0%を超え1.5%以下 ……透明性不良
ヘーズ 1.5%を超える ……透明性極めて不良
【0041】
(2)ガラス転移温度
サンプル10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差走査熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度、示差走査熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
【0042】
(3)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0043】
(4)塗布層厚み
包埋樹脂でフィルムを固定し断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて、塗布層の厚みを測定した。
【0044】
(5)接着性
プリズムレンズのパターンを形成した型に、下記組成からなる紫外線硬化型アクリル樹脂を流し込み、その上に得られたポリエステルフィルムの塗布面を該樹脂側にして密着させ、ポリエステルフィルム面側の30cmの距離から紫外線ランプを用いて紫外光(照射強度300mJ/cm)を照射し樹脂を硬化させ、頂角90度、ピッチ50μm、高さが30μmのプリズムレンズ層を形成した。このプリズムレンズ層に碁盤目のクロスカット(1mmのマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満 ……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満 ……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満 ……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満 ……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの ……接着力極めて不良
【0045】
<紫外線硬化型アクリル樹脂>
2,2−ビス(4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学社製 NKエステルBPE−500) 49重量%
2,2−ビス(4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学社製 NKエステルA−BPE−4) 10重量%
テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業社製 ビスコート#150) 39重量%
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製 Darocur1173) 2重量%
【0046】
(6)耐傷性
直径6mmの硬質クロムメッキしたピンを固定し、長手方向に20cm、幅方向に15mmにカットしたフィルムをピンに対して90°で接触させ、一定速度(20mm/s)で一定長さ(20cm)で10往復、ピン上を滑らせて、フィルム表面に入る傷の度合を評価した。
5:まったく傷が入らない ……耐傷性極めて良好
4: 0%<全体面積に対する傷の面積≦10% ……耐傷性良好
3:10%<全体面積に対する傷の面積≦25% ……耐傷性やや不良
2:25%<全体面積に対する傷の面積≦50% ……耐傷性不良
1:50%<全体面積に対する傷の面積 ……耐傷性極めて不良
【0047】
[実施例1〜3、比較例1〜3、5]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍に延伸した後、その両面に、表1に示す成分からなる塗布組成物の水性塗布液(固形分濃度3%)をロールコーターで均一に塗布した。比較例5は塗布層を設けていない。
次いで、この塗布フィルムを引き続いて95℃で乾燥し、横方向に130℃で3.7倍に延伸し、230℃で幅方向に3%収縮させ熱固定し、厚さ188μmのフィルムを得た。なお、塗布層の厚みは60nmであった。
【0048】
[実施例4]
溶融ポリエチレン−2,6−ナフタレート([η]=0.69dl/g、Tg=121℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍に延伸した後、その両面に表1に示す成分からなる塗布組成物の水性塗布液(固形分濃度3%)をロールコーターで均一に塗布した。次いで、この塗布フィルムを引き続いて105℃で乾燥し、横方向に140℃で3.7倍に延伸し、240℃で幅方向に3%収縮させ熱固定し、厚さ188μmのフィルムを得た。なお、塗布層の厚みは60nmであった。
【0049】
[実施例5、比較例4]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いでその両面に表1に示す成分からなる塗布組成物の水性塗布液(固形分濃度8%)をロールコーターで均一に塗布した。この塗布フィルムを引き続いて90℃で乾燥し、100℃で同時に縦方向に3.4倍、横方向に3.7倍に延伸し、225℃で縦方向及び幅方向にそれぞれ2%収縮させ熱固定し、厚さ188μmの易接着性フィルムを得た。なお、塗布層の厚さは60nmであった。
【0050】
【表1】

【0051】
アクリル1:
メチルメタクリレート60モル%/エチルアクリレート30モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%で構成されている(Tg=40℃)。なお、アクリルは、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硫酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらに、メチルメタクリレート46.7部、エチルアクリレート23.3部、N−メチロールアクリルアミド6.8部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が30%のアクリル1の水分散体を得た。
【0052】
アクリル2:
メチルメタクリレート90モル%/N−メチロールアクリルアミド20モル%で構成されている(Tg=90℃)。なお、アクリル2はアクリル1の製造法に準じて各モノマーの仕込み量を変更して、アクリル2の水分散体を得た。
【0053】
架橋剤1:
イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製 商品名タケネートWD−720)
架橋剤2:
イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(三井武田ケミカル社製 商品名タケネートWD−730)
架橋剤3:
メチロール化メラミン(住友化学工業社製 商品名スミテックスレジンM−3)
微粒子:
アクリルフィラー(平均粒径:100nm)(日本触媒社製 商品名MX−100W)
濡れ剤:
ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成社製 商品名ナロアクティーN−70)
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の光学用易接着性フィルムは、光学部材のベースフィルムとして好適に用いることができ、特に、フラットパネルディスプレイの光学部材のベースフィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムおよびその少なくとも片面に設けられた塗布層からなり、塗布層はイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%を含有することを特徴とする、光学用易接着性フィルム。
【請求項2】
塗布層が、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート5〜45重量%および高分子樹脂95〜55重量%からなる、請求項1記載の光学用易接着性フィルム。
【請求項3】
高分子樹脂がアクリル樹脂である、請求項1記載の光学用易接着性フィルム。
【請求項4】
塗布層が未延伸または一軸延伸フィルムに塗布され、その後同時二軸延伸、逐次二軸延伸または一軸延伸された、請求項1記載の光学用易接着性フィルム。
【請求項5】
フラットパネルディスプレイの光学部材のベースフィルムとして用いられる、請求項1記載の光学用易接着性フィルム。

【公開番号】特開2009−178955(P2009−178955A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20453(P2008−20453)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】