説明

光学異方性膜の評価方法、光学異方性膜の光学特性の測定装置および光学異方性膜の製造方法

【課題】 走行している長尺の光学異方性膜が所望の光学特性が得られているか否かの判定をインラインでの測定で可能にする評価方法、かかる評価方法を可能にする測定装置、および該評価結果を用いて所望の光学特性を有する光学異方性膜を製造する方法を提供する。
【課題手段】 光学異方性膜に対し垂直方向、面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向、および面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してそれぞれの透過偏光状態の変化を測定する工程、およびその測定値と、所望の光学特性を有する光学異方性膜について同様の測定を行って得られる透過偏光状態の変化とを対比する工程、を有する光学異方性膜の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜の評価方法、光学異方性膜の光学特性の測定装置および光学異方性膜の製造方法に関する。より詳しくは、走行している長尺の光学異方性膜が光学特性が得られているか否かの判定をインラインでの測定で可能にする評価方法、該評価方法を可能にする測定装置、および該評価結果を用いて所望の光学特性を有する光学異方性膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光の偏光状態を変化させることができる光学異方性膜は、位相差板、視野角補償板などとして液晶表示装置をはじめ様々な光学装置に用いられている。光学装置に求められる光学特性に応じて、光学異方性膜として異なる二種以上の層からなる多層のフィルムが用いられることがある。しかしながら所望の光学特性を有する多層の光学異方性膜を製造することは容易ではなかった。
【0003】
すなわち、光学異方性膜が単一の層からなる場合は、該光学異方性膜の面内レターデーションReおよび厚さ方向のレターデーションRthを所望の値と一致させることで、所望の光学特性を有する光学異方性膜を得ることができた。しかし多層の光学異方性膜については、ReおよびRthを一致させるだけでは、所望の光学特性を得られない場合があった。これは多層の光学異方性膜全体の値として得られるReおよびRthが一致しても各層ごとの光学特性が異なるためと推測される。
【0004】
二種の層からなる光学異方性膜の各層ごとのレターデーションを測定する方法として、該光学異方性膜を1枚のフィルムとみなし、光学異方性膜全体のレターデーション値を測定して得た実測値と、各層のレターデーション値と主軸の配向方向とを仮定して貼り合わせたときのレターデーション値を計算して得た計算値とから、実測値と一致する光学異方性膜のレターデーション値と配向方向との組合せを求めることで、各層のReを決定する方法が開示されている(非特許文献1参照)。
【0005】
また本発明者らは、光学異方性膜に対し3方向から光を照射してそれぞれの透過偏光状態の変化を測定することで、二種の層からなる光学異方性膜の各層のReおよびRthを求められることを見出した(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「プラスチックエージ」,2000年,4月号,p.154−156
【非特許文献2】International Display Workshops 2010予稿集,LCTp3−3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしこれらの方法では、各層のReを仮定して計算を行い、二種の層全体の値として得られるReおよびRthの実測値と対比して一致させる、フィッティングと呼ばれる解析を行なう必要があった。フィッティングはしばしば複雑な計算と解析を伴うため、光学異方性膜を連続的に製造する場合において、適時に測定と解析を行い、その結果を所望の光学特性を得るための製造条件に反映させることは容易ではなかった。
【0008】
また、多層の光学異方性膜を多層押し出しで製造する場合は、多層押し出しで得られた未延伸のフィルムを延伸して光学異方性を付与することが通常である。この方法では各層ごとのReおよびRthを個別に制御することはできないため、光学異方性膜の各層ごとのReおよびRthを求められたとしても、製造条件を調整して所望の光学特性を得ることは容易ではなかった。
【0009】
そこで本発明は、走行している長尺の光学異方性膜が所望の光学特性が得られているか否かの判定をインラインでの測定で可能にする評価方法を提供することを目的とする。また本発明は、かかる評価方法を可能にする測定装置、および該評価結果を用いて所望の光学特性を有する光学異方性膜を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、多層の光学異方性膜に対し特定の3方向から光を照射して得られる、それぞれの透過偏光状態の変化が、光学異方性膜の光学特性と強い相関を有することを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、下記[1]〜[3]が開示される。
[1]多層の光学異方性膜の評価方法であって、
前記光学異方性膜に対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定する工程、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定する工程、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定する工程、および
前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)の測定値と、所望の光学特性を有する光学異方性膜について同様の測定を行って得られる透過偏光状態の変化(1)〜(3)とを対比する工程、
を有することを特徴とする光学異方性膜の評価方法。
【0012】
[1]記載の評価方法において、前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)の測定が分光エリプソメトリーによるものであり、
前記透過偏光状態の変化(1)が透過光の位相差の変化Δであり、
前記透過偏光状態の変化(2)が透過光の位相差の変化Δであり、
前記透過偏光状態の変化(3)が透過光の位相差の変化Δおよび振幅比の変化Ψであることが好ましい。
また、θが40°≦θ≦50°であることが好ましい。
また、多層の光学異方性膜が多層押し出し成形により得られたものであることが好ましい。
【0013】
[2]走行している長尺の、多層の光学異方性膜の光学特性を測定する装置であって、
前記光学異方性膜に対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定するユニット、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定するユニット、および
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定するユニット、
を有することを特徴とする光学異方性膜の光学特性の測定装置。
【0014】
[3]多層で長尺の光学異方性膜を連続的に製造する方法であって、
多層で長尺の光学フィルムを延伸して該光学フィルムに光学異方性を付与する工程、
前記光学フィルムに対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定する工程、
前記光学フィルムの面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定する工程、
前記光学フィルムの面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定する工程、および
前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)が所望の値となるように製造条件を調整する工程、
を含むことを特徴とする長尺の光学異方性膜の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の評価方法によれば、複雑な計算や解析を行なうことなく、多層の光学異方性膜が所望の光学特性を有するか否かを簡易に判定することができる。また本発明の測定装置は、上記判定に必要な透過偏光状態の変化をインラインで容易に測定することができる。さらに本発明の製造方法によれば、上記判定結果を適時に光学異方性膜の製造条件に反映させることができるので、所望の光学特性を有する光学異方性膜を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学異方性膜の光学特性の測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の評価方法は、多層の光学異方性膜の光学特性を評価する方法である。本発明の評価方法が適用できる光学異方性膜は、多層であり、各層の面内遅相軸が互いに平行または直交な関係にある膜である。ここで多層とは、異なる二種以上の層が積層された構成を有することを表す。光学異方性膜の構成は、多層であれば二層であっても三層以上であってもよいが、好ましくは二種二層または二種三層であり、より好ましくは二種二層である。
【0018】
光学異方性膜の各層を構成する材料は、光を透過する性質のあるものであれば特に限定されないが、通常は樹脂フィルムが用いられる。用いられる樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、トリアセチルセルロース、環状オレフィン樹脂などを挙げることができる。
【0019】
光学異方性膜の膜厚は、通常20〜250μm、好ましくは40〜180μmである。光学異方性膜は、通常、薄いので、互いに直交するx軸及びy軸を膜面に平行な方向に、z軸を膜に垂直な方向(厚さ方向)にとり、そして、nを光学異方性膜の面内遅相軸方向の屈折率、nを光学異方性膜の面内遅相軸に面内で直交する方向の屈折率、nを光学異方性膜の厚さ方向の屈折率と定義している。
【0020】
光学異方性膜は、長尺のフィルムであることが好ましい。ここで「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。このような長尺のフィルムは製造ラインにおいて、長さ方向に連続的に製造工程を行なうことにより得られる。本発明の評価方法によれば、長尺の位相差フィルムを連続的に製造する場合に、各工程の一部または全部をインラインで簡便且つ効率的に行なうことが可能である。
【0021】
樹脂フィルムからなる光学異方性膜の製造方法は限定されない。具体的には、(a)光学異方性を有する二以上のフィルムを、それぞれのフィルムの面内遅相軸が平行または直交となるように貼り合せる方法;(b)光学異方性を有さない二以上のフィルムを貼り合せ、次いでこのフィルムを延伸して光学異方性を付与する方法;および(c)多層のフィルムを多層押し出しにより成形し、次いでこのフィルムを延伸して光学異方性を付与する方法;が挙げられる。これらの中でも、各層の面内遅相軸を平行または直交にすることが容易であるので(b)および(c)の方法が好ましく、(c)の方法が特に好ましい。なお光学異方性を有さない樹脂フィルムを一方向に延伸(一軸延伸)して光学異方性を付与すると、そのフィルムの面内遅相軸は、通常、フィルムを構成する樹脂が正の固有複屈折を有する場合は延伸方向(配向方向)に平行な方向となり、フィルムを構成する樹脂が負の固有複屈折を有する場合は延伸方向(配向方向)と面内で垂直な方向となる。本発明の測定方法によれば、各層を分離することが困難な(c)の方法で製造した光学異方性膜であっても、その光学特性を評価することができる。
【0022】
本発明の評価方法は、前記光学異方性膜に対し光を照射してその透過偏光状態の変化を測定する工程を含む。本発明で用いる光の種類は限定されないが、波長が350〜800nmの可視光線であることが好ましい。また、レーザー光等の細い平行光線であることが好ましい。光学異方性膜に照射される光の範囲を狭くでき、より正確な測定が可能になるからである。
【0023】
本発明で透過偏光状態の変化を測定する方法としては分光エリプソメトリーおよびミュラーマトリックスが挙げられ、それぞれ分光エリプソメータおよびミュラーマトリックス偏光計を用いて測定することができる。中でも、少数のパラメータで十分な情報量が得られるので分光エリプソメトリーによる測定が好ましい。
【0024】
本発明の評価方法では、第1の測定として、前記光学異方性膜に対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定する。ここで光学異方性膜に対し垂直方向とは前記z軸の方向に等しい。ただし光の照射方向は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で該z軸の方向に対して誤差を含んでいてもよく、具体的には光の照射方向とz軸がなす角である極角が5°以下であることを表す。透過偏光状態の変化(1)は光学異方性膜全体のReに相当し、分光エリプソメトリーによる測定を行う場合は、偏光状態の変化(1)は透過光の位相差の変化Δで表される。
【0025】
本発明の評価方法では、第2の測定として、前記光学異方性膜の配向方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定する。極角θの範囲は、好ましくは40°≦θ≦60°である。この範囲であると、測定感度に優れる。透過偏光状態の変化(2)は光学異方性膜全体のRthと相関し、分光エリプソメトリーによる測定を行う場合は、偏光状態の変化(2)は透過光の位相差の変化Δで表される。
【0026】
本発明の評価方法では、第3の測定として、前記光学異方性膜の配向方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定する。
【0027】
方位角θの範囲は45°に近いほど好ましく、好ましくは40°≦θ≦50°、より好ましくは44°≦θ≦46°である。この範囲であると、測定感度に優れる。極角θの範囲は、好ましくは40°≦θ≦60°である。この範囲であると、測定感度に優れる。分光エリプソメトリーによる測定を行う場合は、偏光状態の変化(3)は透過光の位相差の変化Δおよび振幅比の変化Ψで表される。
【0028】
本発明の評価方法は、前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)の測定値と、所望の光学特性を有する光学異方性膜について同様の測定を行って得られる透過偏光状態の変化(1)〜(3)とを対比する工程を含む。
【0029】
本発明者らの見出した知見によれば、前記透過偏光状態の変化(1)および(2)に加え、透過偏光状態の変化(3)を所望の光学特性を有する光学異方性膜と一致させることで、光学異方性膜の各層ごとのReやRthに係わらず、光学異方性膜として同等の光学特性を得ることができる。したがって、光学異方性膜の各層ごとの光学特性を測定することなく、上記透過偏光状態の変化(1)〜(3)を測定するのみで、容易に光学異方性膜の光学特性を評価することができる。
【0030】
上記第1〜第3の測定を行なう順序は限定されない。各測定を順次行なってもよいし、一度に(同時に)行なってもよい。具体的には、例えば分光エリプソメトリーによる測定を行う場合は、光源と検光子を1組有する分光エリプソメータを用いて順次光源と検光子の角度を変えながら測定を行なってもよいし、光源と検光子を3組有する分光エリプソメータを用いて一度に第1〜第3の測定を行なってもよい。短時間で精度よく測定ができるので、各測定を一度に行なうことが好ましい。
【0031】
本発明の測定装置は、上記第1の測定を行なうユニット、第2の測定を行なうユニット、および第3の測定を行なうユニットを有する、光学異方性膜の光学特性の測定装置である。好ましくは光源と検光子を3組有する分光エリプソメータである。分光エリプソメータは光学異方性膜に接触することなく短時間で測定することが可能なので、走行中の長尺の光学異方性膜についてインラインで測定することが可能である。
【0032】
以下に、本発明の測定装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この一実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の測定装置を示す概略図である。図1において、長尺で多層の、幅方向に面内遅相軸を有する光学異方性膜2が図1の左下側から右上側に向かって走行している。光学異方性膜2の上部には、光学異方性膜2に対し垂直方向に光を照射する第1光源11、光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射する第2光源12、および光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射する第3光源13が設置されている。
【0034】
光学異方性膜2の下部には、第1光源11から照射された光を受光する第1検光子21、第2光源12から照射された光を受光する第2検光子22、および第3光源13から照射された光を受光する第3検光子23が設置されている。
【0035】
第1検光子21は第1光源11と光学異方性膜2を挟んで対向する位置に配置され、第1検光子21により、光学異方性膜2を透過した光の位相差の変化Δが測定される。第2検光子22は第2光源12と光学異方性膜2を挟んで対向する位置に配置され、第1検光子22により、光学異方性膜2を透過した光の位相差の変化Δが測定される。第3検光子23は第3光源13と光学異方性膜2を挟んで対向する位置に配置され、第3検光子23により、光学異方性膜3を透過した光の位相差の変化Δ3および振幅比の変化Ψが測定される。なお図1中、光源と検光子を結ぶ線は測定に用いる光の光軸を表す。
【0036】
すなわち、第1光源11と第1検光子21により上記第1の測定を行なうユニットが構成され、第12光源12と第2検光子22により上記第2の測定を行なうユニットが構成され、第3光源13と第3検光子23により上記第3の測定を行なうユニットが構成され、上記各ユニットにより本発明の測定装置1が構成される。上記各光源および各検光子は光学異方性膜2に接触しない位置に設置されるので、走行している長尺の光学異方性膜2の光学特性をインラインで測定することができる。
【0037】
上記本発明の測定装置は、長尺の光学異方性膜の製造において延伸処理を行なう装置と同一のライン上に設置することが好ましい。延伸処理直後の光学異方性膜の光学特性を測定し、その結果に基づき延伸処理の条件を調整し、所望の光学特性を有する光学異方性膜を容易に製造できるからである。
【0038】
本発明の製造方法は、多層で長尺の光学異方性膜を連続的に製造する方法であって、多層で長尺の光学フィルムを延伸して該光学フィルムに光学異方性を付与する工程を含む。
【0039】
延伸前の、多層で長尺の光学フィルム(以下、延伸前フィルムということがある。)を製造する方法は限定されず、公知の方法をいずれも採用できるが、多層押し出しにより製造することが好ましい。多層押し出しにより得られた延伸前フィルムは、一旦ロールなどに巻き取って巻回体とした後に延伸処理に供してもよいし、多層押し出しと後述する延伸処理を一連の製造ライン上で行なってもよい。
【0040】
延伸前フィルムの厚さは、延伸倍率を考慮して適宜定めればよく、好ましくは30〜1000μm、より好ましくは80〜380μmである。
【0041】
延伸前フィルムを延伸して該光学フィルムに光学異方性を付与する。延伸の操作としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して長尺方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸);テンターを用いて幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸);縦一軸延伸と横一軸延伸とを順に行う方法(逐次二軸延伸);延伸前フィルムの長尺方向に対して斜め方向に延伸する方法(斜め延伸);等を採用できる。光学異方性膜の面内遅相軸の方向を一定にできるとの観点からは、縦一軸延伸、横一軸延伸または逐次二軸延伸が好ましい。
【0042】
延伸温度は、延伸前フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度にもよるが、好ましくは70〜200℃、より好ましくは100〜170℃である。また延伸倍率は、所望の光学特性を発現しうる任意の倍率とすることができるが、1.1倍以上5倍以下であることが好ましく、1.3倍以上3倍以下であることがより好ましい。
【0043】
次いで、上記により延伸したフィルムの、前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)を測定する。測定を迅速に行ない、適時に後述する延伸条件の調整に反映できるとの観点からは、測定は走行している上記延伸処理後のフィルムに対してインラインで行なうことが好ましい。また上記第1〜第3の測定は、同時に行なうことが好ましい。
【0044】
続いて、上記測定の結果に基づき、透過偏光状態の変化(1)〜(3)が所望の値となるように製造条件を調整する。ここで製造条件を調整するとは、好ましくは延伸の条件を調整することであるが、多層押し出しにより連続的に延伸前フィルムを製造し、これを同一の製造ライン上で延伸して光学異方性膜を得る場合には、延伸前フィルムの少なくとも一つの層の厚さを調整してもよい。延伸前フィルムの層の厚さを調整する方法としては、多層押し出しに供する樹脂の量を調整する方法や、押し出し成形の速度を調整する方法が挙げられる。
【0045】
延伸条件の調整は、通常、延伸の温度または延伸倍率を調整することにより行なうが、得られる光学異方性膜の膜厚および幅を一定にできるとの観点から、延伸の温度を調整することが好ましい。
【0046】
製造条件の調整が透過偏光状態の変化(1)〜(3)に及ぼす影響を予め把握しておくと、製造条件を適切に調整し、所望の光学特性を有する光学異方性膜を容易に得られるので好ましい。すなわち、例えば上記測定が分光エリプソメトリーである場合には、製造条件の調整(例えば、延伸の温度を上げる)を行なうことにより、Δ、Δ、ΔおよびΨがそれぞれどの程度変動するかを予め把握しておくことで、より適切に製造条件を調整でき、フィルムの走行を止めることなく連続的に光学異方性膜を製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお実施例中、添字のA〜Fは、それぞれ光学異方性膜A〜Fについての値であることを表す。
【0048】
(実施例1)
二種二層の共押出成形用のフィルム成形装置を準備し、ポリカーボネート樹脂(旭化成社製、ワンダーライトPC−110、荷重たわみ温度145℃、平均屈折率ni1=1.590)のペレットを、ダブルフライト型のスクリューを備えた一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(NovaChemicals社製、Dylark D332、荷重たわみ温度135℃、平均屈折率:ni2=1.585)のペレットをダブルフライト型のスクリューを備えたもう一方の一軸押出機に投入して、溶融させた。溶融された260℃のポリカーボネート樹脂を目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通してマルチマニホールドダイの一方のマニホールドに、溶融された260℃のスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂を目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを通してもう一方のマニホールドにそれぞれ供給した。ポリカーボネート樹脂およびスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂を該マルチマニホールドダイから260℃で同時に押し出しフィルム状にした。共押し出しさせる樹脂の量は、ポリカーボネート樹脂:スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂の体積比で1:9.2の割合となるようにした。該フィルム状溶融樹脂を表面温度130℃に調整された冷却ロールにキャストし、次いで表面温度50℃に調整された2本の冷却ロール間に通して、ポリカーボネート樹脂層(第1層)とスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂層(第2層)からなる幅1350mmの延伸前フィルムaを得た。マイクロメータを使用して延伸前フィルムaの厚さを測った結果、150μmであった。
【0049】
延伸前フィルムaを縦一軸延伸機に供給し、延伸温度155℃、延伸倍率2倍で縦方向に延伸した。続いて、延伸されたフィルムをテンター延伸機に供給し、延伸温度130℃、延伸倍率1.15で横方向に延伸して光学異方性膜Aを得た。マイクロメータを使用して光学異方性膜Aの厚さを測った結果92μmであった。なおポリカーボネート樹脂とスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂の量比から計算される各層の膜厚は、第1層の膜厚d=9μm、第2層の膜厚d=83μmであった。
【0050】
この光学異方性膜Aについて、透過偏光状態の変化を、分光エリプソメータ(J.A.Woollam社製M−2000)を用いて以下のように測定した。なお下記第1〜第3の測定いずれにおいても光学異方性膜Aの第1層側の面から光を照射した。
【0051】
第1の測定として、波長550nmの光ビームが光学異方性膜Aに垂直に入射されるように調整し透過光の位相差の変化Δ1Aを測定した。このときΔ1A=157.4nmであった。
【0052】
第2の測定として、光学異方性膜Aの遅相軸(配向方向)が0°且つ光ビームが光学異方性膜Aに対し極角θが50°で入射されるように調整し透過光の位相差の変化Δ2Aを測定した。このときΔ2A=158.0nmであった。
【0053】
第3の測定として、光学異方性膜Aの遅相軸(配向方向)に対し方位角θが45°且つ光ビームが光学異方性膜Aに対し極角θが50°で入射されるように調整し透過光の位相差の変化Δ3Aと振幅比の変化Ψ3Aを測定した。
このときΔ3A=76.1°、Ψ3A=53.0°であった。
【0054】
(実施例2,3)
延伸前フィルムaを延伸する温度および延伸倍率を調整することで、ΔおよびΔが光学異方性膜Aとほぼ等しく、ΔおよびΨが光学異方性膜Aと異なる光学異方性膜Bおよび光学異方性膜Cを得た。光学異方性膜Bについて透過光の位相差の変化および振幅比の変化を測定したところ、Δ1B=157.5nm、Δ2B=158.1nm、Δ3B=72.5°、Ψ3B=52.6°であった。また光学異方性膜Cについて透過光の位相差の変化および振幅比の変化を測定したところ、Δ1C=157.2nm、Δ2C=158.2nm、Δ3C=69.1°、Ψ3C=52.3°であった。
【0055】
(実施例4)
第1層用の延伸前フィルムとして、厚さが67μmの環状オレフィン樹脂フィルム(ゼオノアフィルムZF14;日本ゼオン社製、平均屈折率ni1=1.535)を準備した。これとは別に、第2層用の延伸前フィルムとして、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂(NovaChemicals社製、Dylark D332、荷重たわみ温度135℃、平均屈折率:ni2=1.585)を溶融押し出しして、厚さ150μmのスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂フィルムを得た。
【0056】
透過光の位相差の変化および振幅比の変化が光学異方性膜Aと等しい光学異方性膜Dを、上記の延伸前フィルムを用いて得る条件を計算により求めた。具体的には、上記非特許文献2に開示される計算方法に基づき、かかる光学異方性膜Dを形成するために必要な各層の面内レターデーションReおよび厚さ方向のレターデーションRthを計算し、Re=39nm、Rth=121nm、Re=118nmおよびRth=−127nmを得た。なおここで、添字の1および2は、それぞれ第1層および第2層についての値であることを表す。
【0057】
ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記環状オレフィン樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムd1を得た。これとは別に、ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムd2を得た。
【0058】
次いで、日東電工社製両面接着テープを用いて延伸フィルムd1および延伸フィルムd2をそれぞれの遅相軸が平行となるように貼り合わせて光学異方性膜Dを作製した。光学異方性膜Dについて透過光の位相差の変化および振幅比の変化を測定したところ、Δ1D=157.4nm、Δ2D=158.0nm、Δ3D=76.1°、Ψ3D=53.1°であり、光学異方性膜Aの値と等しいことが確認できた。
【0059】
(実施例5)
透過光の位相差の変化および振幅比の変化が光学異方性膜Bと等しい光学異方性膜Eを、上記の延伸前フィルムを用いて得られる条件を実施例4と同様に計算し、Re=54nm、Rth=161nm、Re=103nmおよびRth=−171nmを得た。
【0060】
ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記環状オレフィン樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムe1を得た。これとは別に、ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムe2を得た。
【0061】
次いで、日東電工社製両面接着テープを用いて延伸フィルムe1および延伸フィルムe2をそれぞれの遅相軸が平行となるように貼り合わせて光学異方性膜Eを作製した。光学異方性膜Eについて透過光の位相差の変化および振幅比の変化を測定したところ、Δ1E=157.3nm、Δ2E=158.1nm、Δ3E=72.4°、Ψ3E=52.6°であり、光学異方性膜Bの値とほぼ等しいことが確認できた。
【0062】
(実施例6)
透過光の位相差の変化および振幅比の変化が光学異方性膜Cと等しい光学異方性膜Fを、上記の延伸前フィルムを用いて得られる条件を実施例4と同様に計算し、Re=67nm、Rth=201nm、Re=91nmおよびRth=−214nmを得た。
【0063】
ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記環状オレフィン樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムf1を得た。これとは別に、ReおよびRthが上記の値となるように延伸条件を調整して上記スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂フィルムを延伸し、延伸フィルムf2を得た。
【0064】
次いで、日東電工社製両面接着テープを用いて延伸フィルムf1および延伸フィルムf2をそれぞれの遅相軸が平行となるように貼り合わせて光学異方性膜Fを作製した。光学異方性膜Fについて透過光の位相差の変化および振幅比の変化を測定したところ、Δ1F=157.2nm、Δ2F=158.2nm、Δ3F=69.1°、Ψ3F=52.2°であり、光学異方性膜Cの値とほぼ等しいことが確認できた。
【0065】
(実施例7)
日東電工社製両面接着テープを用いて光学異方性膜Aを日東電工社製偏光フィルムNPF−G1029DUに貼り合わせ、大きさが5cm×5cmの偏光板Aを作製した。ただし偏光板の透過軸と光学異方性膜の遅相軸が平行になるように貼り合わせた。次いでナナオ社製液晶モニターFlexScan S2410Wを分解し、液晶パネルのレア側偏光板を剥がして代わりに偏光板Aを並べて貼り付け、液晶モニターサンプルAを作製した。ただし偏光板Aの透過軸がフロント側偏光板の透過軸と直交になるように、且つ光学異方性膜が液晶セル側に来るように貼り合わせた。液晶モニターを再組み立てし、点灯させてRADIANT IMAGING社製視野角測定装置IMAGING SPHEREを用い暗表示輝度を測定した。
【0066】
(実施例8〜12)
光学異方性膜Aに代えて、光学異方性膜B〜Fを用いた他は、実施例7と同様にして液晶モニターサンプルB〜Fを作製した。これらのサンプルを用いて、実施例7と同様にして暗表示輝度を測定した。
【0067】
暗表示輝度(透過輝度)を極角60°、方位角45°方向で測定した結果を表1に示す。ただし、値は透過輝度が最も小さいサンプルDを用いた場合(実施例10)の透過輝度を1としたときの相対値である。
【0068】
【表1】

【0069】
以上の結果より、サンプルAとサンプルD、サンプルBとサンプルE、サンプルCとサンプルFの3つの組み合わせはそれぞれ透過輝度が同等であり、他の組み合わせはその透過輝度が大きく異なっていることが分かる。これにより、ΔおよびΔを等しくしたのみでは多層の光学異方性膜の光学特性を一致させることはできないが、ΔおよびΔに加えてΔおよびΨも同じ値とすることで、光学異方性膜の光学特性を等しくできることが分かる。したがって、Δ、Δ、Δ、およびΨを測定することにより多層の光学異方性膜の性能を適切に評価できることが分かる。
【0070】
(実施例13)
実施例1と同様にして共押し出しによるフィルム成形を行い、ポリカーボネート樹脂層(第1層)とスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂層(第2層)からなる厚さが158μmで幅1350mmの長尺の延伸前フィルムgを得た。
【0071】
延伸前フィルムgを縦一軸延伸機に供給し、延伸温度155℃、延伸倍率2倍で縦方向に延伸した。続いて、延伸されたフィルムをテンター延伸機に連続的に供給し、延伸温度130℃、延伸倍率1.15で横方向に延伸して光学異方性膜Gを得た。連続的に製造される光学異方性膜Gを一部サンプリングし、マイクロメータを使用して厚さを測った結果99μmであった。なおポリカーボネート樹脂とスチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂の量比から計算される各層の膜厚は、第1層の膜厚d1=10μm、第2層の膜厚d2=89μmであった。
【0072】
連続的に製造される光学異方性膜Gの透過偏光状態の変化を、インラインで測定した。測定は、図1に示される、光源と検光子を3組有する分光エリプソメータを用いて、第1〜第3の測定を同時に行うほかは、実施例1と同様の条件で行った。
【0073】
第1の測定で得られる透過光の位相差の変化Δ1Gは、157.4nmであった。第2の測定で得られる透過光の位相差の変化Δ2Gは、158.0nmであった。第3の測定で得られる透過光の位相差の変化Δ3Gは77.5°、振幅比の変化Ψ3Gは53.3°であった。また光学異方性膜Gを用いて実施例7と同様にして液晶モニターサンプルGを作成し、暗表示輝度を測定した。透過輝度は、サンプルDを用いた場合(実施例10)の透過輝度を1としたときの相対値で1.30であった。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例14)
上記の延伸前フィルムgを用いて透過光の位相差の変化および振幅比の変化が光学異方性膜Aと等しい光学異方性膜を得るために、上記光学異方性膜Gの連続製造の途中で、インラインで第1〜第3の測定を行いながら延伸条件を変更した。縦方向の延伸倍率を1.98倍、横方向の延伸温度を131℃としたところ、Δ1H=157.4nm、Δ2H=158.0nm、Δ3H=76.1°、Ψ3H=53.1°となったので、この延伸条件で連続的に製造を行い光学異方性膜Hを得た。この光学異方性膜Hを用いて実施例7と同様にして液晶モニターサンプルHを作成し、暗表示輝度を測定した。透過輝度は、サンプルDを用いた場合(実施例10)の透過輝度を1としたときの相対値で1.03であった。結果を表1に示す。
【0075】
以上の結果より、光学異方性膜の連続製造において、Δ、Δ、Δ、およびΨをインラインで連続的に測定しながら、これらの値が所望の光学特性を有する光学異方性膜と等しくなるように製造条件を調節することで、得られる光学異方性膜の光学特性を所望の物と一致させることが可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0076】
1 光学特性の測定装置
2 光学異方性膜
11 第1光源
12 第2光源
13 第3光源
21 第1検光子
22 第2検光子
23 第3検光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層の光学異方性膜の評価方法であって、
前記光学異方性膜に対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定する工程、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定する工程、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定する工程、および
前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)の測定値と、所望の光学特性を有する光学異方性膜について同様の測定を行って得られる透過偏光状態の変化(1)〜(3)とを対比する工程、
を有することを特徴とする光学異方性膜の評価方法。
【請求項2】
走行している長尺の、多層の光学異方性膜の光学特性を測定する装置であって、
前記光学異方性膜に対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定するユニット、
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定するユニット、および
前記光学異方性膜の面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定するユニット、
を有することを特徴とする光学異方性膜の光学特性の測定装置。
【請求項3】
多層で長尺の光学異方性膜を連続的に製造する方法であって、
多層で長尺の光学フィルムを延伸して該光学フィルムに光学異方性を付与する工程、
前記光学フィルムに対し垂直方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(1)を測定する工程、
前記光学フィルムの面内遅相軸方向に対し方位角−5°〜+5°かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(2)を測定する工程、
前記光学フィルムの面内遅相軸方向に対し方位角θ(ただし、30°≦θ≦60°である)かつ極角θ(ただし、30°≦θ≦70°である)の方向に光を照射してその透過偏光状態の変化(3)を測定する工程、および
前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)が所望の値となるように製造条件を調整する工程、
を含むことを特徴とする長尺の光学異方性膜の製造方法。
【請求項4】
前記透過偏光状態の変化(1)〜(3)の測定が分光エリプソメトリーによるものであり、
前記透過偏光状態の変化(1)が透過光の位相差の変化Δであり、
前記透過偏光状態の変化(2)が透過光の位相差の変化Δであり、
前記透過偏光状態の変化(3)が透過光の位相差の変化Δおよび振幅比の変化Ψである、
請求項1記載の評価方法。
【請求項5】
θが40°≦θ≦50°である、請求項1または4に記載の測定方法。
【請求項6】
多層の光学異方性膜が多層押し出し成形により得られたものである、請求項1、4、または5に記載の評価方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−150107(P2012−150107A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285145(P2011−285145)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】