説明

光学的情報読取装置及び情報処理端末

【課題】光学的情報読取装置又は情報処理端末において、ユーザの使い勝手が良く、耐久性の面でも有利な入力構成を提供する。
【解決手段】光学的情報読取装置1には、表示部13と対向する側の空間に指先が配置されたときに、当該指先の位置を検出するサーモパイルアレイ60(指先位置検出手段)と、表示部13に表示される表示情報において、サーモパイルアレイ60によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行う対応位置処理手段とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的情報読取装置及び情報処理端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学的情報読取装置などの情報処理端末では、一般的に入力手段として各種操作ボタンやタッチパネルなどが設けられており、現在では、表示画面に表示される各種情報(例えば、メニュー画面に表示される各メニュー)に対して指示を与える場合、ユーザがこれら入力手段を操作することで行っている。具体的には、操作ボタンを操作することでカーソルキーの切り替えや決定などの指示を行ったり、或いはタッチパネルに対してタッチペンなどを直接接触させることで選択や決定の指示を行ったりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4180600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように直接の接触を必要とする入力手段は、ユーザがその都度操作ボタンやタッチパネルなどを押圧しなければならず、使い勝手の面でそれほど優れているとはいえない。特に、近年の情報処理端末では、装置構成の小型化の要請から操作ボタンやタッチパネルも小型化する傾向にあり、絶えずこのような入力手段の操作を強いる構成では利便性の面で問題がある。また、操作ボタンやタッチパネルのように常に直接の接触操作が必要となる入力構成であると、入力操作に起因する衝撃や劣化が避けられず、耐久性の面でも問題である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、光学的情報読取装置又は情報処理端末において、ユーザの使い勝手が良く、耐久性の面でも有利な入力構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、情報コードを撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された情報コードを読み取る読取手段と、前記撮像手段による前記情報コードの撮像結果及び前記読取手段による前記情報コードの読取結果の少なくともいずれかを表示可能な表示手段と、を備えた光学的情報読取装置であって、前記表示手段と対向する側の空間に指先が配置されたときに、当該指先の位置を検出する指先位置検出手段と、前記表示手段に表示される表示情報において、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行う対応位置処理手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学的情報読取装置において、前記撮像処理によって撮像された前記情報コードを表示し、前記対応位置処理手段は、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する前記対応位置が前記表示手段に表示された前記情報コードの位置であるときに当該情報コードを読取対象として指定し、前記読取手段は、前記対応位置処理手段によって指定された前記情報コードを読み取ることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学的情報読取装置において、前記表示手段は、前記撮像処理によって複数の前記情報コードが撮像されたときに、これら複数の前記情報コードを表示可能とされており、前記対応位置処理手段は、前記表示手段に表示される複数の前記情報コードのうち、前記対応位置にある前記情報コードを読取対象として指定することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記指先位置検出手段によって検出される前記指先の移動量を検出する移動量検出手段を備え、前記対応位置処理手段は、前記表示手段に表示される前記表示情報において、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する前記対応位置に対し、前記移動量検出手段によって検出された前記移動量に応じた表示拡大処理又は表示縮小処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置において、前記指先位置検出手段は、熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の前記検出素子による検出結果に基づいて前記表示手段と対向する側の空間に存在する前記指先の位置を検出する赤外線検出手段からなることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光学的情報読取装置において、前記赤外線検出素子は、アレイ状に構成されたサーモパイルからなることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、情報処理端末において、情報を表示する表示手段と、熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の前記検出素子による検出結果に基づいて前記表示手段と対向する側の空間に存在する熱源の位置を検出する赤外線検出手段と、前記赤外線検出手段によって検出される前記熱源の移動量を検出する移動量検出手段と、前記表示手段に表示される表示情報において、前記赤外線検出手段によって検出された前記熱源の位置に対応する対応位置に対し、前記移動量検出手段によって検出された前記移動量に基づく所定表示処理を行う対応位置処理手段と、が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、光学的情報読取装置において、表示手段と対向する側の空間に指先が配置されたときに、当該指先の位置を検出する指先位置検出手段と、表示手段に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行う対応位置処理手段とが設けられている。このようにすると、ユーザが表示手段に表示される表示情報に向けて指先を配置したときに、この指先の配置に応じてその指示された対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行うことができる。従って、ユーザは複雑な操作や表示装置への接触を行わずに表示に対して指示を与えることができるようになり、ユーザの使い勝手が良く、耐久性の面でも有利となる。
【0014】
請求項2の発明は、撮像処理によって撮像された情報コードを表示し、対応位置処理手段は、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置が表示手段に表示された情報コードの位置であるときに当該情報コードを読取対象として指定し、読取手段は、対応位置処理手段によって指定された情報コードを読み取っている。このようにすると、ユーザは指先で簡単に読み取る情報コードを指示することができ、情報コードの読み取りに関して利便性が一層高まる。
【0015】
請求項3の発明は、撮像処理によって複数の情報コードが撮像されたときに、これら複数の情報コードを表示手段に表示可能とされており、対応位置処理手段は、表示手段に表示される複数の情報コードのうち、対応位置にある情報コードを読取対象として指定している。このようにすると、複数の情報コードが撮像されたときに、ユーザが所望の情報コードを指先で簡単に選択できるようになり、複数の情報コードを撮像可能な環境下においても利便性を高めることができる。
【0016】
請求項4の発明では、指先位置検出手段によって検出される指先の移動量を検出する移動量検出手段が設けられ、対応位置処理手段は、表示手段に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対し、移動量検出手段によって検出された移動量に応じた表示拡大処理又は表示縮小処理を行っている。このようにすると、ユーザは指先の移動量を調整することによって表示情報の表示を拡大或いは縮小することができるようになり、ユーザは簡単な操作で表示を所望の倍率に変更することができる。また、移動量に応じた表示拡大処理がなされる構成であると、小さな表示情報を表示したとしても、ユーザが簡単な操作で拡大できるため、画面上に小さな表示情報を配置し易くなり、ひいては、より多くの情報を画面に配置し易くなる。
【0017】
請求項5の発明では、指先位置検出手段は、熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の検出素子による検出結果に基づいて表示手段と対向する側の空間に存在する指先の位置を検出する赤外線検出手段によって構成されている。このようにすると、指先を熱源として当該指先をより正確に検出できるようになる。また、熱をあまり発しない物体が表示手段に近づいたとしても指先と区別し易いため、誤検出も生じにくくなる。
【0018】
請求項6の発明は、赤外線検出素子がアレイ状に構成されたサーモパイルによって構成されている。このようにすると、表示手段と対向して配置される指先の位置(表示手段に対する相対位置)を精度高く検出できるようになり、装置構成の小型化も図りやすくなる。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項5と同様の構成を奏する情報処理端末を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(A)は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置を概略的に例示する平面図であり、図1(B)はその側面図である。
【図2】図2は、図1の光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図である。
【図3】図3(A)は無線リーダ部の電気的構成を例示するブロック図であり、図3(B)は、情報コード読取部の電気的構成を例示するブロック図である。
【図4】図4(A)は、指先が表示部13に対向して配置される前の状態を示す説明図であり、空間側から表示部側を見た図である。図4(B)は、指先が表示部13に対向して配置されたときの様子を示す説明図である。また、図4(C)は、指先が図4(B)の位置から移動した様子を示す説明図である。
【図5】図5(A)は、図4(A)のときのサーモパイルアレイでの検出の様子を説明する説明図であり、表示部側から空間側を見た図である。図5(B)は、図4(B)のときのサーモパイルアレイでの検出の様子を説明する説明図である。また、図5(C)は、図4(C)のときのサーモパイルアレイでの検出の様子を説明する説明図である。
【図6】図6(A)は、図5(A)のときのサーモパイルアレイでの検出値を説明する説明図であり、図6(B)は、図5(B)のときのサーモパイルアレイでの検出値を説明する説明図である。また、図6(C)は、図5(C)のときのサーモパイルアレイでの検出値を説明する説明図である。
【図7】図7(A)は、ある検出時期S1のときの指先位置と次の検出時期S2のときの指先位置とを説明する説明図であり、図7(B)は、図7(A)において検出時期S1から次の検出時期S2に変化したときのサーモパイルアレイでの検出値及び指先検出位置の変化を説明する説明図である。図7(C)は、図7(A)において検出時期S1から次の検出時期S2に変化したときの移動量の算出方法を説明する説明図である。
【図8】図8(A)は、サーモパイルアレイでの各検出値に基づいて指先位置を検出する方法を説明する説明図である。図8(B)は、図7(A)のS1の状態からS2の状態に変化して指先が近づく場合(近づき)と、図7(A)のS2のような状態からS1のような状態に変化して指先が離れる場合(離れ)についての移動量の算出方法を説明する説明図である。
【図9】図9は、ある検出時期S1のときの指先位置、S1の次の検出時期S2のときの指先位置、S2の次の検出時期S3のときの指先位置、S3の次の検出時期S4のときの指先位置をそれぞれ説明する説明図である。
【図10】図10は、図9において検出時期S1、S2、S3、S4と変化したときのサーモパイルアレイでの検出値及び指先検出位置の変化をそれぞれ説明する説明図である。
【図11】図11(A)は、図9、図10において、検出時期S1からS2までの時間t1における移動量、検出時期S2からS3までの時間t2における移動量、検出時期S3からS4までの時間t3における移動量の算出方法を説明する説明図である。図11(B)は、図9における各検出時期S1、S2、S3、S4に変化したときの移動量と指先位置との対応関係を説明する説明図である。
【図12】図12(A)は、ある検出時期S1のときの指先位置、S1の次の検出時期S2のときの指先位置、S2の次の検出時期S3のときの指先位置をそれぞれ説明する説明図である。図12(B)は、図12(A)において検出時期S1、S2、S3と変化したときのサーモパイルアレイでの検出値及び指先検出位置の変化をそれぞれ説明する説明図である。 図12(C)は、図12(A)(B)において、検出時期S1からS2までの時間t1における移動量、検出時期S2からS3までの時間t2における移動量、検出時期S3からS2の位置まで戻った場合の移動量の算出方法を説明する説明図である。図12(D)は、図12における各検出時期S1、S2、S3に変化したときの移動量、移動方向、移動量の大小、指先位置との対応関係を説明する説明図である。
【図13】図13は、ある検出時期S1のときの指先位置、S1の次の検出時期S2のときの指先位置、S2の次の検出時期S3のときの指先位置、S3の次の検出時期S4のときの指先位置をそれぞれ説明する説明図であり、併せて各検出時期S1〜S4での表示例を説明するものである。更に、検出時期S3から検出時期S4’、S5となった場合の例(変更例)も併せて説明するものである。
【図14】図14は、複数の情報コードが表示画面に表示されたときの指先による指定について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、本発明の光学的情報読取装置及び情報処理端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(光学的情報読取装置の全体構成)
まず、図1、図2等を参照して光学的情報読取装置の全体構成を概説する。図1(A)は、第1実施形態に係る光学的情報読取装置を概略的に例示する平面図であり、図1(B)はその側面図である。図2は、図1の光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図である。図3(A)は無線リーダ部の電気的構成を例示するブロック図であり、図3(B)は、情報コード読取部の電気的構成を例示するブロック図である。
【0022】
本実施形態に係る光学的情報読取装置1は、例えば、図1(A)(B)のような外観をなし、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯情報端末として構成されている。この光学的情報読取装置1は、バーコードや二次元コードなどの情報コードを読み取る情報コードリーダとしての機能と、無線タグを読み取る無線タグリーダとしての機能とを備え、読み取りを二方式で行いうる構成をなしている。
【0023】
図2に示すように、光学的情報読取装置1は、全体的制御を司る制御部10を備えており、この制御部10に、メモリ11、キー操作部12、表示部13、外部インターフェース14、無線リーダ部20、情報コード読取部30、無線通信部40などが接続されている。
【0024】
制御部10は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インターフェース等を有し、メモリ11とともに情報処理装置として機能している。キー操作部12は、複数のキーによって構成され、使用者のキー操作に応じて制御部10に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部10は、キー操作部12から操作信号を受けたとき、その操作信号に応じた動作を行うように構成されている。表示部13は、例えば液晶表示器などによって構成されており、制御部10によって表示内容が制御されるように構成されている。また、外部インターフェース14は、外部(例えばホスト装置)との間でのデータ通信(例えば、ケーブルを介したシリアル通信等)を行うためのインターフェースとして構成されており、制御部10と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、光学的情報読取装置1には、電源となるバッテリ15や電源部16が設けられており、これらによって制御部10や各種電気部品に電力が供給されている。
【0025】
無線リーダ部20は、ハードウェア的には公知のRFIDリーダとして構成されており、アンテナ25及び制御部10と協働して無線タグとの間で電磁波による通信を行い、無線タグに記憶されるデータの読み取り、或いは無線タグへのデータの書き込みを行うように機能している。この無線リーダ部20は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図3(A)に示すように、送信回路21、受信回路22、整合回路23などを有している。
【0026】
情報コード読取部30は、図3(B)に示すように、CCDエリアセンサなどの固体撮像素子からなる受光センサ33、結像レンズ37、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部31などを備えた構成をなしており、制御部10と協働して読取対象物Rに付された情報コードQ(例えば、バーコードやQRコード(登録商標))を読み取るように機能する。
【0027】
この情報コード読取部30では、例えばQRコードQの読み取りを行う場合、まず、制御部10から指令を受けた照明部31にて照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口(図示略)を通って読取対象物Rに照射されるようになっている。そして、照明光LfがQRコードQにて反射した反射光Lrは読取口を通って装置内に取り込まれ、結像レンズ37を通って受光センサ33に受光される。なお、受光センサ33は、「撮像手段」の一例に相当する。
【0028】
読取口(図示略)と受光センサ33との間に配される結像レンズ37は、QRコードQの像を受光センサ33上に結像させる構成をなしており、受光センサ33はこのQRコードQの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ33から出力される受光信号は、画像データとしてメモリ11(図2)に記憶され、デコード処理などに用いられるようになっている。なお、情報コード読取部30には、受光センサ33からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。
なお、受光センサ33は、「撮像手段」の一例に相当する。また、制御部10は、「読取手段」の一例に相当し、撮像手段によって撮像された情報コードを読み取るように機能する。また、表示部13が「表示手段」の一例に相当し、撮像手段による情報コードの撮像結果及び読取手段による情報コードの読取結果の少なくともいずれかを表示するように機能する。
【0029】
無線通信部40は、例えば無線LANインターフェースなどによって構成されており、無線LANに接続された外部装置と無線通信を行うように機能するものである。
【0030】
また、本実施形態では、制御部10にサーモパイルアレイ60が接続されている。サーモパイルアレイ60は、特許P3626007号公報で示されるような、公知のサーモパイル二次元センサによって構成されている。このサーモパイルアレイ60は、例えば、表示部13付近に配置されると共に、複数の検出素子がマトリックス状に配置されてなり、例えば、表示部13から所定距離離れた位置における当該表示部13とほぼ平行に配置される仮想平面において、図4のように各素子に対応した検出エリアがそれぞれ構成され、全体として検出エリアがマトリックス状に構成されるようになっている。
【0031】
(表示制御処理)
1.指先位置の検出
本実施形態では、上述のサーモパイルアレイ60によって指先の位置が検出されるようになっている。図1(B)、図4に示すように、サーモパイルアレイ60は、少なくとも表示部13と対向する側の空間を熱源の検出領域としており、図4(B)(C)のように指先が配置されたときに、この指先の熱を検出し、指先の位置を特定できるようになっている。
【0032】
このサーモパイルアレイ60は「指先位置検出手段」「赤外線検出手段」の一例に相当しており、表示部13と対向する側の空間に指先が配置されたときに当該指先の位置を検出するように機能しており、具体的には、熱源を検出可能な検出素子60aが複数マトリックス状に配列され、それら複数の検出素子による検出結果に基づいて表示部13と対向する側の空間に存在する指先の位置を検出するように構成されている。
【0033】
サーモパイルアレイ60では、表示部13と対向する空間側においてマトリックス状に検出領域が構成されているようになっている。具体的には、表示部13から所定距離隔てた位置において当該表示部13と平行に位置する仮想平面F1(図1(B)を想定した場合に、この仮想平面F1において図5のような検出エリアARが構成されるようになっている。
【0034】
この検出エリアARは、サーモパイルアレイ60の各検出素子60aのマトリックス配置を相似的に拡大したエリアとなっており、サーモパイルアレイ60の隅に配置される第1検出素子Se1(検出素子60a)の検出領域に相当するエリアが第1領域AR1に相当し、同様に、第2検出素子Se2(検出素子60a)の検出領域に相当するエリアが第2領域AR2、第3検出素子Se3(検出素子60a)の検出領域に相当するエリアが第3領域AR3、第4検出素子Se4(検出素子60a)の検出領域に相当するエリアが第4領域AR4と続き、最後の第16検出素子Se16(検出素子60a)の検出領域に相当するエリア(第16領域AR16)までマトリックス状に構成される。
【0035】
なお、図4、図5等では、表示部13から所定距離隔てた位置の仮想平面F1(図1(B)で構成される検出エリアARを概念的に説明しているが、この仮想平面F1から表示部13にやや近付いた平行面或いは仮想平面F1からやや遠ざかった平行面であっても検出エリアARとほぼ同様の検出エリアが構成されるようになっている。
【0036】
このようなサーモパイルアレイ60が配置されているため、例えば図4(B)のように指先が配置され、図4(B)図5(B)のように検出エリアAR内に指先が入った場合、図6(B)のように熱検知がなされる。なお、図6(B)では、Y2行X2列の部分が第6検出素子Se6に相当する第6領域AR6の値を示しており、この第6領域AR6の状態値が熱検知を示す値である「1」に変更されている。第1領域AR1、第2領域AR2、第3領域AR3でも同様に「1」に変更されている。
【0037】
なお、本実施形態で用いられる各検出素子60aは、検出素子60aで検出される温度が所定閾値を超える場合の当該検出素子60aの状態値が「1」が示され、閾値未満の場合には状態値として「0」が示されるようになっている。また、図5(C)のように仮想平面F1付近において指先が移動したときには、第9領域AR9〜第16領域AR16で指先の熱が検出されるため、図6(C)のような値となる。また、本実施形態では、図5(B)(C)のように、複数の領域(領域の島)が検出された場合、その領域番号の最も大きい領域を指先の位置として定めている。例えば、図5(B)の例では、AR1、2、5、6(領域の島)のうち、最も大きい番号「6」が付された第6領域を指先位置として決定している(図6(B)の丸印、図7(A)の説明参照)。同様に、図5(C)の例では、AR9〜16のうち、最も大きい番号「16」が付された第16領域を指先位置として決定している(図6(C)の丸印参照)。
【0038】
2.移動量、移動方向の検出
更に、本実施形態では、一定の時間間隔(t1)毎に上記サーモパイルアレイ60での検出を行い、検出エリアAR内の各検出領域の値の変化に基づいて移動量を算出している。例えば、ある検出時期S1から上記時間t1が経過した次の検出時期S2までに移動した移動量は、図7(B)のように算出されるようになっており、「近づき」の場合も「離れ」の場合も同様に算出されるようになっている。本実施形態全体を通して、「移動量」は、変化後の指先検出位置(座標)におけるX座標値とY座標値との和から、変化前の指先検出位置(座標)におけるX座標値とY座標値との和を引いたものである。具体的には、図8(A)のように、S1からS2の変化において「近づき」となる場合、上記の指先検出方法に従って、図8(B)のような検出値が得られる。そして、この場合、X方向、Y方向いずれも2つずつ移動しているため、図8(C)のように移動量は「4」となる。
【0039】
図9では、S1から複数時期(S1〜S4)に亘って移動した場合を示しており、この場合も上記指先検出方法に従って、図10のS1〜S4のような状態値がそれぞれ得られ、各指先位置が検出される(S2〜S4の丸印)。そして、時期S1〜S2に変化した時間t2のときの移動量(t1)、時期S2〜S3に変化した時間t2のときの移動量(t2)、時期S3〜S4に変化した時間t3のときの移動量(t3)が図11(A)のように算出され、図11(B)のような結果(各時期の移動量と指先位置の結果)が得られる。
なお、本実施形態では、制御部10が移動量検出手段の一例に相当し、指先位置検出手段によって検出される指先の移動量を検出するように機能する。
【0040】
また、本実施形態では、移動方向を検出している。移動方向については、指先検出位置のX方向増加量(減少量)とY方向増加量(減少量)とを加算し、合計して正の値であれば移動方向が近づいていると判定し、合計して負の値であれば移動方向が遠ざかっていると判定している。図12の例では、図12(A)のようにS1、S2、S3と変化したときの各状態値(図12(B))に基づいて、図12(C)のように移動量を判断しており、更に、各時期の変化において移動方向を判断している。
【0041】
さらに、図12の例では、検出された移動量を複数の段階に分けており、例えば、移動量が第1の閾値(ここでは「2」)以下であれば、移動量「小」と判定し、移動量が第2の閾値(ここでは「3」)以上であれば移動量「大」と判定している。図12(D)は、図12(A)のような指先移動がなされたときの、移動量の大小、移動方向、指先位置の判定結果を示している。
【0042】
3.表示処理
本実施形態では、各時期毎に検出されるこのような移動量の大小、移動方向、指先位置の検出に基づいて、図13のように表示処理を行っている。図13の例では、時期S1から時期S2に変化したときに「え」の位置に対応する検出領域AR1(図4、図5等)で指先の検出がなされ、移動方向が「近」、移動量が「小」と判断される場合を示している。この場合、S2での指先位置(検出領域AR1)に対応する表示情報(即ち「え」)を拡大する表示処理を行っている。また、S3では、S2の状態から更に近づけられ、、移動方向が「近」、移動量が「小」と判断される場合を示している。この場合、S3での指先位置(検出領域AR6)に対応する表示情報(即ち「え」)をさらに拡大する表示処理を行っている。
【0043】
一方、S4では、S3の状態から大きく遠ざけられ、移動方向が「遠」、移動量が「大」と判断される場合を示している。この場合、S3で拡大処理が行われた拡大表示情報(即ち「え」)を大きく縮小する表示処理を行っている。また、別例として、S4’のように、S3の状態から小さく遠ざけられ、移動方向が「遠」、移動量が「小」と判断される場合、S3で拡大表示が行われていた拡大表示情報を小さく縮小する表示処理を行っている。そして、S5のように更に遠ざけることで、更なる縮小表示を行っている。
【0044】
本実施形態では、制御部10が「対応位置処理手段」の一例に相当し、表示部13に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行うように機能し、具体的には、表示部13に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対し、移動量検出手段によって検出された移動量に応じた表示拡大処理又は表示縮小処理を行うように機能している。
【0045】
4.情報コード読取処理
また、本実施形態では、受光センサ33によって情報コードQが撮像されたときに、指先によって情報コードを指定できるようになっている。
本実施形態では、受光センサ33によって複数の情報コードQが撮像されたときに、図14のように、これら情報コードQを表示部13に表示させるように制御がなされるようになっている。そして、その状態で指先の検出を受け付け、例えば図4(B)のように指先が配置された場合には、上記のように指先位置を検出すると共に、この指先の領域(即ち検出領域AR6)に配置されている情報コードQ4を読み取ることができる。
【0046】
このように、本実施形態では、撮像処理によって撮像された情報コードを表示することもでき、上記「対応位置処理手段」は、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置が表示部13に表示された情報コードQの位置であるときに当該情報コードを読取対象として指定している。そして、上記「読取手段」は、「対応位置処理手段」によって指定された情報コードQを読み取っている。
【0047】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係る光学的情報読取装置1では、表示部13と対向する側の空間に指先が配置されたときに、当該指先の位置を検出する指先位置検出手段と、表示部13に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行う対応位置処理手段とが設けられている。このようにすると、ユーザが表示部13に表示される表示情報に向けて指先を配置したときに、この指先の配置に応じてその指示された対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行うことができる。従って、ユーザは複雑な操作や表示装置への接触を行わずに表示に対して指示を与えることができるようになり、ユーザの使い勝手が良く、耐久性の面でも有利となる。
【0048】
また、本実施形態では、撮像処理によって撮像された情報コードQを表示し、対応位置処理手段は、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置が表示部13に表示された情報コードQの位置であるときに当該情報コードQを読取対象として指定し、読取手段は、対応位置処理手段によって指定された情報コードを読み取っている。このようにすると、ユーザは指先で簡単に読み取る情報コードQを指示することができ、情報コードQの読み取りに関して利便性が一層高まる。
【0049】
また、本実施形態では、撮像処理によって複数の情報コードQが撮像されたときに、これら複数の情報コードQを表示部13に表示可能とされており、対応位置処理手段は、表示部13に表示される複数の情報コードQのうち、対応位置にある情報コードを読取対象として指定している。このようにすると、複数の情報コードQが撮像されたときに、ユーザが所望の情報コードを指先で簡単に選択できるようになり、複数の情報コードQを撮像可能な環境下においても利便性を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、指先位置検出手段によって検出される指先の移動量を検出する移動量検出手段が設けられ、対応位置処理手段は、表示部13に表示される表示情報において、指先位置検出手段によって検出された指先の位置に対応する対応位置に対し、移動量検出手段によって検出された移動量に応じた表示拡大処理又は表示縮小処理を行っている。このようにすると、ユーザは指先の移動量を調整することによって表示情報の表示を拡大或いは縮小することができるようになり、ユーザは簡単な操作で表示を所望の倍率に変更することができる。また、移動量に応じた表示拡大処理がなされる構成であると、小さな表示情報を表示したとしても、ユーザが簡単な操作で拡大できるため、画面上に小さな表示情報を配置し易くなり、ひいては、より多くの情報を画面に配置し易くなる。
【0051】
また、本実施形態では、指先位置検出手段は、熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の検出素子による検出結果に基づいて表示部13と対向する側の空間に存在する指先の位置を検出する赤外線検出手段によって構成されている。このようにすると、指先を熱源として当該指先をより正確に検出できるようになる。また、熱をあまり発しない物体が表示部13に近づいたとしても指先と区別し易いため、誤検出も生じにくくなる。
【0052】
また、本実施形態では、赤外線検出素子がアレイ状に構成されたサーモパイルによって構成されている。このようにすると、表示部13と対向して配置される指先の位置(表示部13に対する相対位置)を精度高く検出できるようになり、装置構成の小型化も図りやすくなる。
【0053】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
上記実施形態では、4×4で検出素子が配置されたサーモパイルアレイを例示したが素子数や素子配列はこれに限定されない。
【0055】
上記実施形態では、情報処置端末の例として携帯型の光学的情報読取装置1を例示したが、これ以外の情報処理端末に適用してもよい。例えば、カーナビゲーション装置の表示部付近の同様のサーモパイルアレイ60を配置し、上記実施形態と同様に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…光学的情報読取装置
10…制御部(読取手段、対応位置処理手段)
13…表示部(表示手段)
33…受光センサ(撮像手段)
60…サーモパイルアレイ(指先位置検出手段、赤外線検出手段)
Q…情報コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された情報コードを読み取る読取手段と、
前記撮像手段による前記情報コードの撮像結果及び前記読取手段による前記情報コードの読取結果の少なくともいずれかを表示可能な表示手段と、
を備えた光学的情報読取装置であって、
前記表示手段と対向する側の空間に指先が配置されたときに、当該指先の位置を検出する指先位置検出手段と、
前記表示手段に表示される表示情報において、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する対応位置に対して所定の表示処理又は所定の読取対象指定処理を行う対応位置処理手段と、
を備えたことを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記撮像処理によって撮像された前記情報コードを表示し、
前記対応位置処理手段は、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する前記対応位置が前記表示手段に表示された前記情報コードの位置であるときに当該情報コードを読取対象として指定し、
前記読取手段は、前記対応位置処理手段によって指定された前記情報コードを読み取ることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記撮像処理によって複数の前記情報コードが撮像されたときに、これら複数の前記情報コードを表示可能とされており、
前記対応位置処理手段は、前記表示手段に表示される複数の前記情報コードのうち、前記対応位置にある前記情報コードを読取対象として指定することを特徴とする請求項2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記指先位置検出手段によって検出される前記指先の移動量を検出する移動量検出手段を備え、
前記対応位置処理手段は、前記表示手段に表示される前記表示情報において、前記指先位置検出手段によって検出された前記指先の位置に対応する前記対応位置に対し、前記移動量検出手段によって検出された前記移動量に応じた表示拡大処理又は表示縮小処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項5】
前記指先位置検出手段は、熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の前記検出素子による検出結果に基づいて前記表示手段と対向する側の空間に存在する前記指先の位置を検出する赤外線検出手段からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。
【請求項6】
前記赤外線検出素子は、アレイ状に構成されたサーモパイルからなることを特徴とする請求項5に記載の光学的情報読取装置。
【請求項7】
情報を表示する表示手段と、
熱源を検出可能な検出素子が複数配列されると共に、それら複数の前記検出素子による検出結果に基づいて前記表示手段と対向する側の空間に存在する熱源の位置を検出する赤外線検出手段と、
前記赤外線検出手段によって検出される前記熱源の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記表示手段に表示される表示情報において、前記赤外線検出手段によって検出された前記熱源の位置に対応する対応位置に対し、前記移動量検出手段によって検出された前記移動量に基づく所定表示処理を行う対応位置処理手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−203944(P2011−203944A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69824(P2010−69824)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】