説明

光学的成分測定装置

【課題】少量のサンプルであっても、高い分解能と安定した計測精度が実現でき、安価でコンパクトな光学的成分測定装置を提供する。
【解決手段】光ファイバループ2を一の方向に伝搬する直線偏光を右円偏光に変換して測定対象のサンプル22に入射する第1光変換部23と、光ファイバループ2を他の方向に伝搬する直線偏光を左円偏光に変換してサンプル22に入射する第2光変換部24と、を有する円偏光入射部21を備え、両光変換部23,24は、サンプル22の一側に並列して配置され、円偏光を同一方向に出射するように構成され、円偏光入射部21は、一の光変換部23から出射された円偏光を反射し、サンプル22に少なくとも1往復透過させた後、他の光変換部24に入射させる反射手段25をさらに備え、反射手段25は、入射してきた円偏光を偶数回反射させて、サンプル22に出射する偶数個の反射ミラー25aからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルコースなどの旋光性を有する物質の濃度を光学的に測定する光学的成分測定装置に係り、特に、サニャック干渉系を応用した光学的成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルコースなどの旋光性を有する物質では、その旋光度が物質の濃度に依存することが知られており、旋光度を測定し、その測定した旋光度から物質の濃度を検出することが行われている。
【0003】
物質の旋光度(または複屈折率)を測定する方法としては、セナルモンの方法、直交偏波差動法、ミューラー行列計算法、直交偏波ヘテロダイン方式、変調位相シフト法、偏光度の波長掃引法、偏光度(最小値)測定法など、従来より種々の方法が知られている。
【0004】
しかし、これらの方法では、旋光による偏波面の回転角度を直接または偏光度で測定する方式であるため、角度分解能が低く、測定誤差が大きいという課題があった。また、装置が大掛かりとなったり、使用する素子が高価であったり、光軸調整に時間を要したりし、装置が高価となってしまうという課題もあった。
【0005】
そこで、特許文献1では、光ファイバジャイロ等で用いられているサニャック干渉系を応用した光学的成分測定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−274380号公報
【特許文献2】特開2008−122082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、測定対象となるサンプルをセンサループの間に挿入した構成となっているため、1伝搬方向の位相差しか得られず、例えば血中のグルコース濃度を測定するためには、十分な感度が得られないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1では、サンプルを挟み込むように光を送受信する部分を設けているため、計測部が長くなりコンパクトな設計が難しいという問題もある。
【0009】
このような問題を解決するため、特許文献2では、反射ミラーを用いてサンプルに対して光を往復させる構成が提案されているが、この装置では、実際には旋光度を測定することはできないと考えられる。
【0010】
具体的には、特許文献2の図2のような構成では、入射光は、4分の1波長板13で円偏光とされ、ファラデー回転光学素子62を介して被測定試料8に入射することになるが、このとき、被測定試料8に右円偏光が入射されるとすると、被測定試料8を通過した右円偏光はミラー12で反射され、左円偏光に変換されて再び被測定試料8に入射されることになる。ここで、被測定試料8がD−グルコースのように偏波面を右に回転させる物質であるとすると、往路では右円偏光を右に回転させるので伝搬速度が速くなり、復路では左円偏光を右に回転させるので伝搬速度が遅くなり、入射光に対する位相差は2倍とならずにゼロとなる。よって、特許文献2の図2のような構成では、旋光度を測定することはできないと考えられる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、少量のサンプルであっても、高い分解能と安定した計測精度が実現でき、安価でコンパクトな光学的成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、測定対象であるサンプル中の旋光性を有する物質の濃度を光学的に測定する光学的成分測定装置であって、光ファイバループと、光源からの光を直線偏光に変換すると共に分岐して前記光ファイバループの両端に入射し、前記光ファイバループを互いに逆方向に伝搬して前記光ファイバループの両端から出射された光の位相差を検出するセンサ本体と、前記光ファイバループの途中に挿入され、前記光ファイバループを一の方向に伝搬する直線偏光を右円偏光に変換して前記サンプルに入射する第1光変換部と、前記光ファイバループを他の方向に伝搬する直線偏光を左円偏光に変換して前記サンプルに入射する第2光変換部と、を有する前記サンプルに円偏光を入射する円偏光入射部と、前記センサ本体に搭載され、検出した前記位相差に基づき、前記サンプル中の旋光性を有する物質の濃度を求める濃度検出部と、を備え、前記両光変換部は、前記サンプルの一側に並列して配置され、円偏光を同一方向に出射するように構成され、前記円偏光入射部は、一の前記光変換部から出射された円偏光を反射し、前記サンプルに少なくとも1往復透過させた後、他の前記光変換部に入射させる反射手段をさらに備え、前記反射手段は、入射してきた円偏光を偶数回反射させて、前記サンプルに出射するよう構成された偶数個の反射ミラーからなる光学的成分測定装置である。
【0013】
前記光ファイバループの両端の端部部分に、該光ファイバループを構成する光ファイバを巻回して形成された遅延光ファイバをそれぞれ設けてなり、前記遅延光ファイバは、所定長さの前記光ファイバを一の回転方向に巻回した後、それと同じ長さの前記光ファイバを他の回転方向に巻回して形成されてもよい。
【0014】
前記光ファイバループの両端の端部部分に、該光ファイバループを構成する光ファイバを巻回して形成された遅延光ファイバをそれぞれ設けてなり、一方の前記遅延光ファイバは、所定長さの前記光ファイバを時計回りに巻回して形成され、他方の前記遅延光ファイバは、それと同じ長さの前記光ファイバを反時計回りに巻回して形成されてもよい。
【0015】
前記両光変換部は、偏波面を45度回転させる偏波回転素子と、直線偏光を円偏光に変換するλ/4素子と、をそれぞれ有しており、前記偏波回転素子と前記λ/4素子とを光ファイバ型の素子で構成すると共に、前記λ/4素子に円偏光保持光ファイバを結合し、該円偏光保持光ファイバから出射された円偏光を前記サンプルに入射するように前記両光変換部を構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少量のサンプルであっても、高い分解能と安定した計測精度が実現でき、安価でコンパクトな光学的成分測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光学的成分測定装置の概略構成図である。
【図2】図1の光学的成分測定装置を用いてグルコースの濃度を測定した際の左右回り光の位相差とグルコースの濃度の関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る光学的成分測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る光学的成分測定装置の概略構成図である。
【0020】
図1に示すように、光学的成分測定装置1は、グルコースなどの旋光性を有する物質の濃度を光学的に測定する装置であり、光ファイバループ2と、センサ本体3と、円偏光入射部21と、を主に備えている。
【0021】
センサ本体3は、光源11からの光を直線偏光に変換すると共に分岐して光ファイバループ2の両端に入射し、光ファイバループ2を互いに逆方向に伝搬して光ファイバループ2の両端から出射された光の位相差を検出するものである。
【0022】
より具体的には、センサ本体3は、光源11、フォトダイオードなどの受光器12、光を入出力するための3つのポート17a〜17cを有する第1の光カプラ13、偏光子14、光を入出力するための3つのポート17d〜17fを有する第2の光カプラ15、位相変調器16を備え、さらに、信号処理ユニット18とこれらを収容する筐体19とを備える。
【0023】
光源11としては、例えば、SLD(スーパールミネッセントダイオード)を用いるとよい。これにより、光ファイバループ2からの戻り光とレイリー散乱光とが干渉して発生する干渉ノイズを低減することができる。例えば、血中のグルコース濃度を測定するような場合には、光源11として、水やヘモグロビンの吸収波長帯を避けた近赤外波長の光を出射するものを選択すればよい。
【0024】
光カプラ13,15としては、図1中に図示した1×2入出力ポートを有する光ファイバカプラを用いる。なお、光カプラ13,15として2×2入出力ポートを有する光ファイバカプラを用いることもできる。
【0025】
第1の光カプラ13の第1ポート17aは、光源11に光学的に接続され、第1の光カプラ13の第2ポート17bは、受光器12に光学的に接続され、第1の光カプラ13の第3ポート17cは、偏光子14の一端に光学的に接続される。
【0026】
第2の光カプラ15の第1ポート17dは、偏光子14の他端に光学的に接続され、第2の光カプラ15の第2ポート17eは、光ファイバループ2の一端に光学的に接続され、第2の光カプラ15の第3ポート17fは、光ファイバループ2の他端に光学的に接続される。
【0027】
偏光子14は、コアの複屈折率を大きくし、コイル状に形成したファイバ型の偏光子であり、光源11からの光を直線偏光に変換するためのものである。
【0028】
光ファイバループ2の他端の近傍には、位相変調器16が設けられる。位相変調器16は、光ファイバループ2を互いに反対方向に伝搬する光に相対的に時間遅れのある位相変調をかけるためのものである。受光器12で検出される光の強度は、光ファイバループ2を互いに反対方向に伝搬する光の位相差の余弦に比例するため、零付近の位相差、すなわち微少な振動に対する感度が低い。よって、位相変調器16により位相変調を行って位相差の正弦に比例させることにより、微少な振動に対する感度を向上させることができる。
【0029】
位相変調器16としては、振動子とする円筒状のPZT(ピエゾセラミック)を用い、これに光ファイバループ2を構成する光ファイバの一部を巻き付けた。この位相変調器16では、PZTへ印加する電圧により、PZTに巻き付けた光ファイバを伸縮させることで、光の位相を変調することができる。
【0030】
信号処理ユニット18は、光源11の駆動、受光器12で検出された光信号が光電変換された電気信号の処理、位相変調器16の変調レベルの制御、処理結果(振動波形、振動の強度など)の出力などを行うためのものである。信号処理ユニット18は、光源11、受光器12、および位相変調器16と電気的に接続される。信号処理ユニット18には、受光器12からの電気信号を基に、光ファイバループ2を互いに逆方向に伝搬して光ファイバループ2の両端から出射された光の位相差を検出する位相差検出部18aと、後述する濃度検出部18bとが搭載されている。
【0031】
光ファイバループ2は、偏波面保存光ファイバ(PMF:Polarization Maintaining Fiber)からなる。例えば、光ファイバループ2としてシングルモード光ファイバ(SMF:Single Mode Fiber)を用いた場合、SMFでは互いに直交した伝搬定数のわずかに異なる2つの固有偏光モードが伝搬するために、振動や温度変化などの外乱によりモード変換が発生し、このモード変換による干渉雑音が発生してしまう。このような干渉雑音を避けるため、光ファイバループ2を構成する光ファイバとしては、偏波面保存光ファイバ(直線偏光保持光ファイバ)を用いる。
【0032】
光ファイバループ2の両端の近傍(第2の光カプラ15に近い部分)には、光ファイバループ2を構成する光ファイバ(偏波面保存光ファイバ)を巻回して形成された遅延光ファイバ20がそれぞれ設けられる。遅延光ファイバ20は、センサ本体3の筐体19内に収容される。以下、光ファイバループ2を図1における右回りに伝搬する光を右回り光CW、左回りに伝搬する光を左回り光CCWという。
【0033】
遅延光ファイバ20は、所定長さの光ファイバを一の回転方向に巻回した後、それと同じ長さの光ファイバを他の回転方向に巻回して形成される。この遅延光ファイバ20は、左回り光CCWが位相変調器16に至る時間に対して、右回り光CWが位相変調器16に至る時間を遅延させ、位相変調の効果を高める役割と、光ファイバループ2の回転の影響による位相差を除く役割を兼ねている。
【0034】
光ファイバループ2の途中には、サンプル22に円偏光を入射する円偏光入射部21が挿入される。円偏光入射部21は、光ファイバループ2の長手方向中央に挿入されることが望ましい。
【0035】
円偏光入射部21は、光ファイバループ2を一の方向に伝搬する直線偏光(右回り光CW)を右円偏光に変換して測定対象のサンプル22に入射する第1光変換部23と、光ファイバループ2を他の方向に伝搬する直線偏光(左回り光CCW)を左円偏光に変換してサンプル22に入射する第2光変換部24と、を有している。
【0036】
第1光変換部23は、光ファイバループ2から出射された直線偏光(右回り光CW)を平行光とするレンズ23aと、レンズ23aにより平行光となった直線偏光(右回り光CW)が入射され、偏波面を45度回転させる偏波回転素子23bと、偏波回転素子23bからの直線偏光を円偏光に変換するλ/4素子23cと、を有している。
【0037】
第2光変換部24は、第1光変換部23と同様に、光ファイバループ2から出射された直線偏光(左回り光CCW)を平行光とするレンズ24aと、レンズ24aにより平行光となった直線偏光(左回り光CCW)が入射され、偏波面を45度回転させる偏波回転素子24bと、偏波回転素子24bからの直線偏光を円偏光に変換するλ/4素子24cと、を有している。
【0038】
ここでは、偏波回転素子23b,24bとしてファラデー回転素子を用い、λ/4素子23c,24cとして4分の1波長板を用いた。
【0039】
本実施の形態では、両光変換部23,24は、サンプル22の一側に並列して配置され、円偏光を同一方向(図1における右方向)に出射するように構成される。
【0040】
さらに、本実施の形態では、円偏光入射部21は、一の光変換部23(または24)から出射された円偏光を反射し、サンプル22を少なくとも1往復透過させた後、他の光変換部24(または23)に入射させる反射手段25をさらに備えている。ここでは、一の光変換部23(または24)から出射されサンプル22を透過した円偏光を反射手段25で反射して再びサンプル22に入射し、そのサンプル22を透過した円偏光を他の光変換部24(または23)に入射させるように円偏光入射部21を構成しており、つまり、円偏光をサンプル22に対して1往復させるように構成しているが、これに限らず、円偏光をサンプル22に対して2往復以上させるように構成してもよく、往復させる数を増やすほど感度を向上させることができる。
【0041】
反射手段25は、入射してきた円偏光を偶数回反射させて、サンプル22に出射するよう構成された偶数個の反射ミラー25aからなる。本実施の形態では、2個の反射ミラー25aを用い、入射してきた円偏光を2回反射させて、サンプル22に出射するよう構成した。
【0042】
また、光学的成分測定装置1では、信号処理ユニット18の位相差検出部18aが検出した位相差に基づき、サンプル22中の旋光性を有する物質の濃度(つまり測定対象となる物質の濃度)を求める濃度検出部18bを備えている。濃度検出部18bは、センサ本体3の信号処理ユニット18に搭載されている。
【0043】
濃度検出部18bは、位相差検出部18aが検出した位相差と、予め作成した検量線とに基づき、測定対象となる物質の濃度を検出するようにされる。検量線は、位相差に対する測定対象となる物質の濃度の関係を表すものであり、校正用の濃度サンプル等を用いて予備実験を行って予め検量線を作成しておき、信号処理ユニット18のメモリにテーブルまたは関数として記憶させておくとよい。また、サンプル22を収容するサンプルホルダーのみの状態、すなわちサンプルホルダーにサンプル22を収容しない状態の位相差を濃度ゼロとして、校正を行うとよい。
【0044】
次に、光学的成分測定装置1の動作を説明する。
【0045】
まず、サンプルホルダーにサンプル22を収容して光学的成分測定装置1にセットし、その状態で光源11から光を出射する。ここでは、サンプル22がD−グルコースのように偏波面を右に回転させる物質を含み、この物質(旋光物質という)の濃度を検出する場合を説明する。
【0046】
光源11から出射した光は、第1の光カプラ13を伝搬し、偏光子14で直線偏光にされ、第2の光カプラ15に入射する。第2の光カプラ15では、入射した光が2つに分岐され、分岐された光は光ファイバループ2の異なる端にそれぞれ入射する。
【0047】
光ファイバループ2の一端に入射された右回り光CWは、遅延光ファイバ20を通過して第1光変換部23に入射し、レンズ23aで平行光とされ、偏波回転素子23bで偏波面が45度回転され、λ/4素子23cで右円偏光に変換されて、サンプル22に入射する。右円偏光がサンプル22を透過する際には、旋光物質により右円偏光が右に回転され伝搬速度が速くなる。サンプル22を透過した右円偏光は、反射手段25の1つ目の反射ミラー25aで反射されて左円偏光に変換され、さらに2つ目の反射ミラー25aで反射されて再び右円偏光に変換されて、サンプル22に入射され、サンプル22を透過する際には再び伝搬速度が速くなる。サンプル22を透過した右円偏光は、第2光変換部24に入射し、λ/4素子24cで直線偏光に変換され、偏波回転素子24bで偏波面が45度回転され、レンズ24aで集光されて光ファイバループ2に戻る。光ファイバループ2に戻った右回り光CWは、遅延光ファイバ20を通過し、位相変調器16で位相変調され、第2の光カプラ15に入射する。
【0048】
同様に、光ファイバループ2の他端に入射された左回り光CCWは、位相変調器16で位相変調され、遅延光ファイバ20を通過して第2光変換部24に入射し、レンズ24aで平行光とされ、偏波回転素子24bで偏波面が45度回転され、λ/4素子24cで左円偏光に変換されて、サンプル22に入射する。左円偏光がサンプル22を透過する際には、旋光物質により左円偏光が右に回転され伝搬速度が遅くなる。サンプル22を透過した左円偏光は、反射手段25の1つ目の反射ミラー25aで反射されて右円偏光に変換され、さらに2つ目の反射ミラー25aで反射されて再び左円偏光に変換されて、サンプル22に入射され、サンプル22を透過する際には再び伝搬速度が遅くなる。サンプル22を透過した左円偏光は、第1光変換部23に入射し、λ/4素子23cで直線偏光に変換され、偏波回転素子23bで偏波面が45度回転され、レンズ23aで集光されて光ファイバループ2に戻る。光ファイバループ2に戻った左回り光CCWは、遅延光ファイバ20を通過し、第2の光カプラ15に入射する。
【0049】
第2の光カプラ15に入射した左右回り光CW,CCWは、第2の光カプラ15で干渉して干渉光となる。この干渉光は、偏光子14を伝搬し、第1の光カプラ13で再び2つの光に分岐され、分岐された一方の光は受光器12で受光される。
【0050】
受光器12で受光された光は電気信号に変換され、その電気信号は信号処理ユニット18に入力される。位相差検出部18aは、入力された電気信号を基に左右回り光CW,CCWの位相差を検出し、濃度検出部18bは、位相差検出部18aが検出した位相差に基づき、サンプル22中の旋光物質の濃度を求める。得られた濃度は、図示しない表示器等に表示するようにしてもよいし、図示しないパーソナルコンピュータ等に出力するようにしてもよい。
【0051】
本実施の形態の作用を説明する。
【0052】
本実施の形態に係る光学的成分測定装置1では、光ファイバループ2の途中に、光ファイバループ2を一の方向に伝搬する直線偏光(右回り光CW)を右円偏光に変換して測定対象のサンプル22に入射する第1光変換部23と、光ファイバループ2を他の方向に伝搬する直線偏光(左回り光CCW)を左円偏光に変換してサンプル22に入射する第2光変換部24と、を有する円偏光入射部21を挿入し、両光変換部23,24を、サンプル22の一側に並列して配置して円偏光を同一方向に出射するように構成すると共に、一の光変換部23(または24)から出射された円偏光を反射手段25により反射し、サンプル22を少なくとも1往復透過させた後で、他の光変換部24(または23)に入射させるようにしており、反射手段25は、入射してきた円偏光を偶数回反射させて、サンプル22に出射する偶数個の反射ミラー25aから構成されている。
【0053】
このように構成することで、サンプル22を往復させる際に円偏光の回転方向を同一とすることができ、例えば、サンプル22がD−グルコースのように偏波面を右に回転させる物質であるとすると、右回り光CWである右円偏光は往路でも復路でも伝搬速度が速くなり、左回り光CCWである左円偏光は往路でも復路でも伝搬速度が遅くなることとなり、センサ本体3にて検出する位相差を大きくして感度を向上させることが可能となる。その結果、たとえ少量のサンプル22であっても、高い分解能と安定した計測精度を実現することが可能になる。
【0054】
一例として、光学的成分測定装置1を用いてグルコースの濃度を測定した際の左右回り光CW,CCWの位相差Δθとグルコースの濃度の関係を図2に示す。図2では、一例として、グルコースの濃度0.1g/dl、0.5g/dlの場合の位相差Δθを示しているが、このうち、健常者で血糖値がやや高いと判断される値であるグルコースの濃度0.1g/dlの場合であっても、顕著な位相差Δθが得られており、血中のグルコース濃度の測定に十分に対応し得る良好な感度が得られていることが分かる。
【0055】
また、光学的成分測定装置1によれば、両光変換部23,24を、サンプル22の一側に並列して配置して円偏光を同一方向に出射するように構成することで、計測部を短くすることが可能となり、コンパクトな設計が可能である。
【0056】
さらに、光学的成分測定装置1は、光ファイバジャイロ等で用いられているサニャック干渉系を応用したものであるため、高い分解能、安定した計測精度を有し(例えば、位相差0.001度は容易に計測できる)、安価でコンパクトな装置が実現できる。また、光学的成分測定装置1は、光計測系であるため起動が早く計測時間が短く、リアルタイムの計測が可能であるという利点もある。
【0057】
また、光学的成分測定装置1では、光ファイバループ2の両端の近傍(端部部分)に、光ファイバループ2を構成する光ファイバを巻回して形成された遅延光ファイバ20をそれぞれ設けており、遅延光ファイバ20を、所定長さの光ファイバを一の回転方向に巻回した後、それと同じ長さの光ファイバを他の回転方向に巻回して形成している。なお、一方の遅延光ファイバ20を、所定長さの光ファイバを時計回りに巻き回したものとし、他方の遅延光ファイバ20を、それと同じ長さの光ファイバを反時計回りに巻き回したものとしても、サニャック効果の影響を排除することができる。
【0058】
また、光学的成分測定装置1では、光ファイバループ2の中央部にサンプル22を位置させることにより、右回り光CW及び左回り光CCWは同時刻にサンプルに到達・透過することになる。従って、サンプルの温度が変化して、その屈折率分布が変化したとしても、温度変化によって生じたサンプル内の屈折率分布に対して右回り光CW及び左回りCCWは全く同じ屈折率の媒質を伝搬する(同時刻に伝搬する)ことになるので、時間差が発生せず、サンプルの温度変化の影響を受けることがない。
【0059】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0060】
図3に示す光学的成分測定装置31は、基本的に図1の光学的成分測定装置1と同じ構成であり、偏波回転素子23b、24bとλ/4素子23c、24cとを光ファイバ型の素子で構成すると共に、λ/4素子23c、24cに円偏光保持光ファイバ23d,24dを結合し、円偏光保持光ファイバ23d,24dから出射された円偏光を、レンズ23a,24aで平行光としてサンプル22に入射するように両光変換部23,24を構成したものである。
【0061】
光学的成分測定装置31では、偏波回転素子23b、24bとしては、電流が流れ周囲に磁界を発生させる導線の周囲に光ファイバを周回させた構造の光ファイバ型のファラデー回転素子を用いるとよい。また、λ/4素子23c、24cとしては、偏波面保存光ファイバの出射端から結合長(波長)の約1/4の部位を溶融して45度捻った構造のものを用いることができる。
【0062】
光学的成分測定装置31によれば、偏波回転素子23b、24bとλ/4素子23c、24cとを光ファイバ型の素子で構成しているため、損失や光の反射による影響を低減することができる。
【0063】
また、光学的成分測定装置31によれば、円偏光保持光ファイバ23d,24dとサンプル22との距離を短くできるので、空間伝搬する光の広がりの影響を小さくでき、両光変換部23,24の距離(円偏光保持光ファイバ23d,24dの出射端同士の距離)を短くすることができ、よりコンパクトな装置を実現できる。
【0064】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、上記実施の形態では、測定対象の物質としてグルコースを挙げたが、これに限らず、本発明の光学的成分測定装置1,31は、旋光性を有する物質であればどのような物質の濃度であっても測定することが可能であり、例えば、果実などの糖度測定に用いることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 光学的成分測定装置
2 光ファイバループ
3 センサ本体
11 光源
12 受光器
13 第1のカプラ
14 偏光子
15 第2のカプラ
16 位相変調器
18 信号処理ユニット
18a 位相差検出部
18b 濃度検出部
20 遅延光ファイバ
21 円偏光入射部
22 サンプル
23 第1光変換部
24 第2光変換部
25 反射手段
25a 反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象であるサンプル中の旋光性を有する物質の濃度を光学的に測定する光学的成分測定装置であって、
光ファイバループと、
光源からの光を直線偏光に変換すると共に分岐して前記光ファイバループの両端に入射し、前記光ファイバループを互いに逆方向に伝搬して前記光ファイバループの両端から出射された光の位相差を検出するセンサ本体と、
前記光ファイバループの途中に挿入され、前記光ファイバループを一の方向に伝搬する直線偏光を右円偏光に変換して前記サンプルに入射する第1光変換部と、前記光ファイバループを他の方向に伝搬する直線偏光を左円偏光に変換して前記サンプルに入射する第2光変換部と、を有する前記サンプルに円偏光を入射する円偏光入射部と、
前記センサ本体に搭載され、検出した前記位相差に基づき、前記サンプル中の旋光性を有する物質の濃度を求める濃度検出部と、
を備え、
前記両光変換部は、前記サンプルの一側に並列して配置され、円偏光を同一方向に出射するように構成され、
前記円偏光入射部は、一の前記光変換部から出射された円偏光を反射し、前記サンプルに少なくとも1往復透過させた後、他の前記光変換部に入射させる反射手段をさらに備え、
前記反射手段は、入射してきた円偏光を偶数回反射させて、前記サンプルに出射するよう構成された偶数個の反射ミラーからなる
ことを特徴とする光学的成分測定装置。
【請求項2】
前記光ファイバループの両端の端部部分に、該光ファイバループを構成する光ファイバを巻回して形成された遅延光ファイバをそれぞれ設けてなり、
前記遅延光ファイバは、所定長さの前記光ファイバを一の回転方向に巻回した後、それと同じ長さの前記光ファイバを他の回転方向に巻回して形成される
請求項1記載の光学的成分測定装置。
【請求項3】
前記光ファイバループの両端の端部部分に、該光ファイバループを構成する光ファイバを巻回して形成された遅延光ファイバをそれぞれ設けてなり、
一方の前記遅延光ファイバは、所定長さの前記光ファイバを時計回りに巻回して形成され、
他方の前記遅延光ファイバは、それと同じ長さの前記光ファイバを反時計回りに巻回して形成される
請求項1記載の光学的成分測定装置。
【請求項4】
前記両光変換部は、偏波面を45度回転させる偏波回転素子と、直線偏光を円偏光に変換するλ/4素子と、をそれぞれ有しており、
前記偏波回転素子と前記λ/4素子とを光ファイバ型の素子で構成すると共に、前記λ/4素子に円偏光保持光ファイバを結合し、該円偏光保持光ファイバから出射された円偏光を前記サンプルに入射するように前記両光変換部を構成した
請求項1〜3いずれかに記載の光学的成分測定装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−173261(P2012−173261A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38432(P2011−38432)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】