説明

光学系および撮像装置

【課題】深い焦点深度の光学系を提供すること。
【解決手段】光学系であって、他の領域の光学パラメータが与える結像特性よりも低い結像特性を与える光学パラメータを有する低結像部を有し、前記低結像部および前記他の領域を通過する物点からの光に対する前記光学系の光学伝達関数が、物点までの距離によらず略同一である。光学系は、低結像部および他の領域を通過する物点からの光を、物点までの距離によらず略同一の大きさに広げてよい。低結像部は、光軸を含む領域であり、他の領域は、低結像部の周囲の光軸を含まない領域であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本来の焦点の光軸方向前後の2点に焦点が位置するとみなすことができるとした二重焦点光学系が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、物点距離が異なる物点に対して、可動部なしで同時に撮像することができるとした二重焦点レンズ系が知られている(例えば、特許文献2参照。)。また、位相マスクを使用することによって光学システムの光伝達関数を焦点位置から或るレンジ内で実質的に一定に留める技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。また、波面の位相を変更する光学素子により焦点関係の収差に対して光学結像の光学伝達関数を実質的に不変とする技術が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−84221号公報
【特許文献2】特開2003−270526号公報
【特許文献3】特表平11−500235号公報
【特許文献4】特表2006−523330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記二重焦点の光学系では、物点距離が異なる2点の被写体については鮮明な被写体像を得ることが期待できるが、その他の物点距離の被写体の像はぼけてしまう場合があるという課題があった。また、上記位相マスクを用いた光学系では、位相マスクおよびレンズを有する光学系の光学特性はレンズの光軸に関して非対称であるので、レンズ、位相マスク、および受光素子をきちんとアライメントしなければ適切に復元された画像を得ることができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、光学系であって、他の領域の光学パラメータが与える結像特性よりも低い結像特性を与える光学パラメータを有する低結像部を有し、低結像部および他の領域を通過する物点からの光に対する光学系の光学伝達関数が、物点までの距離によらず略同一である。
【0006】
光学系は、低結像部および他の領域を通過する物点からの光を、物点までの距離によらず略同一の大きさに広げてよい。
【0007】
低結像部は、光軸を含む領域であり、他の領域は、低結像部の周囲の光軸を含まない領域であってよい。
【0008】
低結像部は、光学系が有する少なくとも1のレンズの少なくとも1の面の光軸を含む一部領域に形成され、当該面の光軸を含まない領域の光学パラメータが与える結像特性よりも低い結像特性を与える光学パラメータを有してよい。
【0009】
低結像部は、光軸を含まない領域の曲面形状が与える結像特性よりも低い結像特性を与える曲面形状を有してよい。
【0010】
低結像部の基準曲率半径は、他の領域の基準曲率半径より大きくてよい。
【0011】
低結像部の基準曲率半径は実質的に無限大であってよい。
【0012】
低結像部の高さaと、低結像部を有する面を通過する軸上光線の最大の高さbとが、0.05≦b/a≦0.77を満たしてよい。
【0013】
aとbとが、0.08≦a/b≦0.60を満たしてよい。
【0014】
aとbとが、0.11≦a/b≦0.43を満たしてよい。
【0015】
低結像部における曲面形状によるバックフォーカスの値fb1、他の領域の曲面形状によるバックフォーカスの値fb2、および、光学系のFナンバーの値FNが、2.4≦(fb2/fb1)×FN≦2.87を満たしてよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、撮像装置であって、上記光学系と、レンズ系を通過した光を受光する受光部とを備える。
【0017】
受光部は、複数の画素にそれぞれ対応する複数の受光素子を有し、複数の画素はそれぞれ少なくとも3色のカラーフィルタの1色を透過した光を受光し、光学系は、3色の光を受光する近接した3個の画素より形成される画素ブロックより大きい大きさに広げてよい。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係る撮像装置100のブロック構成の一例を示す図である。
【図2A】理想レンズ系による結像特性を模式的に示す図である。
【図2B】一実施形態におけるレンズ系110の光学特性の一例を定性的に示す図である。
【図3A】レンズ系110のレンズ構成を示す図である。
【図3B】数値実施例1におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図3C】数値実施例1における深度対MTFを示す図である。
【図3D】数値実施例1における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図4A】レンズ系110の他のレンズ構成を示す図である。
【図4B】数値実施例2におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図4C】数値実施例2における深度対MTFを示す図である。
【図4D】数値実施例2における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図5A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図5B】数値実施例3におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図5C】数値実施例3における深度対MTFを示す図である。
【図5D】数値実施例3における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図6A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図6B】数値実施例4におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図6C】数値実施例4における深度対MTFを示す図である。
【図6D】数値実施例4における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図7A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図7B】数値実施例5におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図7C】数値実施例5における深度対MTFを示す図である。
【図7D】数値実施例5における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図8A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図8B】数値実施例5におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図8C】数値実施例5における深度対MTFを示す図である。
【図8D】数値実施例5における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図9A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図9B】数値実施例6におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図9C】数値実施例6における深度対MTFを示す図である。
【図9D】数値実施例6における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【図10A】レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す図である。
【図10B】数値実施例4におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す図である。
【図10C】数値実施例4における深度対MTFを示す図である。
【図10D】数値実施例4における空間周波数対MTFを回折限界とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る撮像装置100のブロック構成の一例を示す。撮像装置100は、レンズ系110、レンズ系110を通過した光を受光する受光部120、補正部140、画像処理部145、および出力部150を備える。レンズ系110は、物点までの距離によらず略同一な光学伝達関数を有する。レンズ系110の光学特性については、図2Bに関連して定性的に説明する。また、図3Aから図9Dに関連して実施例を説明する。
【0022】
受光部120は、2次元的に配置された複数の受光素子を有する。複数の受光素子のそれぞれは、レンズ系110を通過した光を受光して、受光量に応じた大きさの受光信号を出力する。
【0023】
補正部140は、複数の受光素子から出力された受光信号をA/D変換して得られたデジタルの受光信号を取得する。本デジタルの受光信号は、複数の受光素子の受光量に実質的に線形な値とみなすことができる。補正部140は、取得したデジタルの受光信号により表される画像に補正処理を施す。例えば、補正部140は、各受光素子に対応する画素値、各受光素子の位置、及びレンズ系110の光学的伝達関数に基づいて、画像を補正する。このように、補正部140は、レンズ系110の光学伝達関数に基づいて、受光部120が受光した光により得られた画像を補正する。
【0024】
画像処理部145は、補正部140によって補正された画像に画像処理を施す。画像処理部145が施す画像処理としては、カラーバランス処理、γ変換、色同時化処理、輪郭補正処理、色補正処理などを例示することができる。
【0025】
出力部150は、画像補正部140および画像処理部145により処理されて得られた画像を出力する。例えば、出力部150は、得られた処理画像を表示してよい。また、出力部150は、記録媒体に処理画像を記録してよい。他にも、出力部150は、通信回線に処理画像を送出してよい。なお、出力部150は、処理画像を圧縮して、圧縮された処理画像を出力してもよい。
【0026】
図2Aは、理想レンズ系による結像特性を模式的に示す。理想レンズ系によれば、光軸上の無限遠物点からの光線210、光線220、および、光線230は、いずれも光軸上の一点に結像する。本結像点に像面が位置していれば一点の点像が得られるが、像面を本結像点からデフォーカスさせると、デフォーカス量に応じて点像の広がりは拡大してしまう。
【0027】
図2Bは、一実施形態におけるレンズ系110の光学特性の一例を定性的に示す。レンズ系110は、像面に最も近いレンズ115の像側の光学面に、実質的に平坦な低結像領域260を有している。ここでは、低結像領域260は、光軸を中心とする円形の断面領域であるとする。レンズ系110は、低結像領域260を有する点を除いて、図2Aで説明した理想レンズ系と同じ光学パラメータを有するとする。
【0028】
光線220および光線230は、低結像領域260を通過しない光線であり、理想レンズ系と同様に、レンズ系110により光軸上の一点に結像される。光線210は、低結像領域260上において光軸から最も離れた位置を通過する光線であるとする。光線210は、低結像領域260が存在することにより、光線220および光線230の結像点より遠方で光軸と交わる。また、低結像領域260上の他の高さを通過する他の光線は、光線210と光軸との交点よりさらに遠方の位置で光軸と交わる。
【0029】
レンズ系110によれば、一点の点像が得られるような像面位置は存在せず、光軸上のどの位置に像面をとっても、ある程度の広がりを有する点像が得られる。レンズ系110による光学伝達関数の逆伝達関数に対応する復元処理を広がった点像に施すことで、広がった点像は実質的に一点の点像に復元され得る。
【0030】
また、レンズ系110によれば、像面位置をデフォーカスさせても、デフォーカス量に応じた点像の広がりの変化を、理想レンズ系に比べると著しく低減できることが期待できる。光軸方向の所定範囲内の像面位置で点像の広がりが略一定となれば、その範囲内の像面位置で得られたどの点像も、例えば所定の像面位置に対応する逆伝達関数の復元処理により、近似的に一点となる点像に復元され得る。この場合、レンズ系110は、比較的に深い焦点深度を実質的に有しているといえる。
【0031】
なお、近軸光と比べると、周辺光はその収差量をレンズの光学パラメータで調整することは比較的に容易である。したがって、低結像領域260を光軸近傍に形成することで、点像の広がりをデフォーカスに対して略一定となるレンズ系を比較的に容易に設計することができる。なお、以後の説明において、低結像領域260を通過する光線の最大高さをa、低結像領域260を有する面を通過する軸上光線の最大の高さをbとして、レンズ系110の光学特性を評価する評価指標として用いる。
【0032】
尚、図2Bにおいて、前記光線の通過する高さaおよびbと前記光線の高さを瞳面に投射した光線の高さa'およびb'の関係は、概ね比例関係にある。本発明の実施例は、a/bの比率で比較するが、概ねa/b=a'/b'となるので、瞳面に換算した値(a'/b')で比較することも可能である。
【0033】
図3Aは、レンズ系110のレンズ構成を示す。表1には、図3Aに示すレンズ系110の数値実施例1の諸元の値を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
本数値実施例1および後に説明する各数値実施例の諸元表において、面番号、面形状、曲率半径、面間隔、硝材、および屈折率は、それぞれ以下の諸元を示す。
【0036】
すなわち、面番号iは、物体側から数えてi番面の光学面を示す。絞りを表す面に対応する面番号には「絞り」と示される。面形状は、光学面が球面である場合には「球面」、非球面である場合には「非球面」などを示す。
【0037】
曲率半径は、第i番面の光学面の曲率半径を示す。面間隔は物体側から第i番目の光学面と第i+1番目の光学面との間の軸上の面間隔を示す。屈折率は物体側に第i番目の光学面を有する硝材のd線(587.562nm)に対する屈折率を示す。なお、曲率半径Infinityは、当該光学面が平面(光軸に垂直)であることを示す。
【0038】
数値実施例1において、面形状BINARYは、当該光学面が異なる2つの面形状パラメータで規定されることを示す。本数値実施例1における面番号12および面番号13の諸元は、それぞれ表2および表3に示される。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表2および表3において、曲率半径、円錐常数、H、H、H、H10は、面番号で定められる光学面の諸元を示す。すなわち、曲率半径および円錐常数は、光学面の基準の曲率半径を示す。H4、H6、H8、およびH10は、それぞれ、4次、6次、8次、および、10次の非球面展開係数を示す。すなわち、Hnは、n次の非球面展開係数を示す。このことは、他の表でも同様である。なお、光学面のザグzは、以下の式で表される。
【0042】
【数1】

【0043】
図3B〜図3Dには、数値実施例1の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示される。後に説明する他の数値実施例においても、以下に説明するスポットダイアグラムおよびMTF特性と同様の結像特性が示される。
【0044】
図3Bは、数値実施例1におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照すると、各像高において、デフォーカスに対してスポット径は比較的に一定の大きさを有していることがわかる。デフォーカス0において所定の広がりが認められることに注目されるべきである。なお、デフォーカス0の位置は、中心MTFの値がピークとなる光軸上の位置近傍において周辺性能とのバランスから決定される。
【0045】
図3Cは、数値実施例1における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.57程度と比較的に低くなっていることがわかる。また、MTFの分布が比較的に幅広になっており、デフォーカスした位置にも相当強度の応答を有することがわかる。
【0046】
レンズ系の焦点深度は、多くの場合、深度対MTFの分布において、最大MTF値に対する所定割合(例えば、20%)の強度を持つ幅で評価される。本数値実施例1おいては、上記の比較的に低いMTF値に応じた感度で撮像することができるとともに、像復元処理では実質的にMTF値を持ち上げる処理が施される。したがって、このレンズ系110においても、最大MTF値に対して所定の値を有するMTF値において、焦点深度を評価することができる。本図に示されるようにMTFの分布が比較的に幅広になっていることから、本数値実施例においては比較的に長い焦点深度を有していることがわかる。実際の焦点深度の評価値については、他の数値実施例とともに後述する。
【0047】
図3Dは、数値実施例1における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。このため、同じ復元処理パラメータを用いてもアーチファクトの発生を抑制することができる。また、本図から、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。このため、復元処理により高周波の信号を復元できることがわかる。
【0048】
図4Aは、レンズ系110の他のレンズ構成を示す。表4には、図4Aに示すレンズ系110の数値実施例2の諸元の値を示す。
【0049】
【表4】

【0050】
本数値実施例2における面番号12および面番号13の各ゾーンの諸元は、表5および表6に示される。表5および表6の諸元は、表2および表3の諸元と同様であるので、説明を省略する。以後説明する数値実施例の各ゾーンの諸元についても同様の諸元が示される。
【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
図4B〜図4Dには、数値実施例2の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図4Bは、数値実施例2におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0において所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0054】
図4Cは、数値実施例2における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.57程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0055】
図4Dは、数値実施例2における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。また、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。
【0056】
図4Dは、数値実施例1における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。このため、復元処理により高周波の信号を復元できることがわかる。
【0057】
図5Aは、レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す。表7には、図5Aに示すレンズ系110の数値実施例3の諸元の値を示す。
【0058】
【表7】

【0059】
本数値実施例3における面番号12および面番号13の各ゾーンの諸元は、表8および表9に示される。
【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
図5B〜図5Dには、数値実施例4の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図5Bは、数値実施例4におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0においてスポットダイアグラムの所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0063】
図5Cは、数値実施例4における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.46程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0064】
図5Dは、数値実施例4における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。また、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。
【0065】
図6Aは、レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す。表10には、図6Aに示すレンズ系110の数値実施例4の諸元の値を示す。
【0066】
【表10】

【0067】
本数値実施例4における面番号12および面番号13の各ゾーンの諸元は、表11および表12に示される。
【0068】
【表11】

【0069】
【表12】

【0070】
図6B〜図6Dには、数値実施例4の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図6Bは、数値実施例4におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0においてスポットダイアグラムの所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0071】
図6Cは、数値実施例4における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.62程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0072】
図6Dは、数値実施例5における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。また、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。
【0073】
図7Aは、レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す。表10には、図7Aに示すレンズ系110の数値実施例5の諸元の値を示す。
【0074】
【表13】

【0075】
本数値実施例5における面番号12および面番号13の各ゾーンの諸元は、表14および表15に示される。
【0076】
【表14】

【0077】
【表15】

【0078】
図7B〜図7Dには、数値実施例5の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図7Bは、数値実施例5におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0においてスポットダイアグラムの所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0079】
図7Cは、数値実施例5における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.65程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0080】
図7Dは、数値実施例5における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。また、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。
【0081】
図8Aは、レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す。表16には、図8Aに示すレンズ系110の数値実施例6の諸元の値を示す。
【0082】
【表16】

【0083】
本数値実施例6における面番号1および面番号2の各ゾーンの諸元は、表17および表18に示される。
【0084】
【表17】

【0085】
【表18】

【0086】
本数値実施例6における非球面の面番号5−12の非球面データは、表19A〜表19Dに示される。なお、非球面の面番号に対応する曲率半径の欄には、非球面の面形状を規定する一パラメータである基準曲率半径が記載される。
【0087】
【表19A】

【0088】
【表19B】

【0089】
【表19C】

【0090】
【表19D】

【0091】
図8B〜図8Dには、数値実施例6の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図8Bは、数値実施例6におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0においてスポットダイアグラムの所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0092】
図8Cは、数値実施例6における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.52程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0093】
図8Dは、数値実施例6における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、像高によらず比較的に一致した空間周波数対MTFを有することがわかる。また、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。このため、復元処理により高周波の信号を復元できることができることがわかる。
【0094】
本数値実施例6では、平坦領域は最も物体側に位置するレンズに形成されている。最も像側に位置するレンズに平坦領域が形成されなくとも、比較的に深い焦点深度を有するレンズ系を設計することができる。光軸を含まない領域では元々収差が存在しており、レンズ設計において光軸を含む領域よりも比較的に結像特性を制御し易い。このため、光軸を含む所定の良否域が平坦な場合であっても、平坦領域の周囲の領域の光学パラメータを適切に設計することで、スポットの広がりを略一定にすることができる場合がある。
【0095】
図9Aは、レンズ系110の更なる他のレンズ構成を示す。表20には、図9Aに示すレンズ系110の数値実施例7の諸元の値を示す。なお、面番号12の光学面は、光軸から半径0.025mm以内のゾーンは多項式で定められ、その周囲のゾーンは、半径0.08mmの非球面となっている。
【0096】
【表20】

【0097】
本数値実施例7における面番号12の各ゾーンの諸元は、表21に示される。
【0098】
【表21】

【0099】
XnYmに対応する欄には、光軸を原点としてx座標についてn次、y座標についてm次の次数の項に対する係数が示されている。すなわち、光学面のザグzは、以下の式で表される。
【0100】
【数2】

【0101】
上式を展開すると以下ように表される。
【0102】
【数3】

【0103】
上式の係数Aが、表21の各欄の係数に対応する。
【0104】
本数値実施例7における非球面の面番号3−12の非球面データは、表22A〜表22Dに示される。
【0105】
【表22A】

【0106】
【表22B】

【0107】
【表22C】

【0108】
【表22D】

【0109】
図9B〜図9Dには、数値実施例7の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図9Bは、数値実施例7におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照して、デフォーカス0においてスポットダイアグラムの所定の広がりが認められることに注目されるべきである。
【0110】
図9Cは、数値実施例7における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.72程度と比較的に低くなっており、MTFの分布が比較的に幅広になっていることがわかる。したがって、比較的に深い焦点深度を有することがわかる。
【0111】
図9Dは、数値実施例7における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、比較的に高周波領域まで周波数応答を有することがわかる。このため、復元処理により高周波の信号を復元できることができることがわかる。
【0112】
本数値実施例7から、光軸近傍の領域が平坦面でなくとも、比較的に深い焦点深度を有するレンズ系を設計できることがわかる。
【0113】
ここで参考のため、数値実施例1−7に係るレンズ系において低結像部を有しないレンズ構成の実施例を示す。図10Aには、数値実施例1−5に係るレンズ系に対応するレンズ系を示す。表23には、図10Aに示すレンズ系110の数値実施例の諸元の値を示す。
【0114】
【表23】

【0115】
図10B〜図10Dには、本数値実施例の結像特性として、スポットダイアグラム図およびMTF特性が示されている。図10Bは、本数値実施例におけるスポットダイアグラムの像高およびデフォーカス依存性を示す。本図を参照すると、デフォーカス0においてスポットダイアグラムが比較的に小さいことがわかる。また、数値実施例1−5に係るレンズ系と比べると、デフォーカス依存性が著しく大きいことがわかる。
【0116】
図10Cは、本数値実施例における深度対MTFを示す。本図を参照すると、MTFの最大値が約0.86程度と比較的に高くなっており、MTFの分布が比較的に幅狭になっていることがわかる。したがって、焦点深度は比較的に狭いことがわかる。
【0117】
図10Dは、本数値実施例における空間周波数対MTFを、回折限界とともに示す。本図を参照すると、近軸光に対しては回折限界に近い周波数応答を有することがわかる。しかしながら、異なる像高に対して周波数応答が比較的に大きく異なっていることがわかる。
【0118】
以上数値実施例1−7に例示したように、光軸を含む中央領域に低結像部を形成することにより、比較的に深い焦点深度を持つ光学系を設計することができることが示された。
【0119】
表24Aおよび表24Bは、上記数値実施例において低結像部の径を異ならせた場合の焦点深度を示す。
【0120】
【表24A】

【0121】
【表24B】

【0122】
本表は、数値実施例の番号、低結像部の高さ(a)、第1指標値(a/b)、および、焦点深度が示されている。第1指標値は、低結像部を有するレンズを通過する軸上光線の最大高さ(b)と低結像部の高さの比(a/b)で定めるとする。深度対MTF値のMTF分布において、MTF値が所定の評価基準MTF値となる幅を、焦点深度とした。評価基準MTF値には、およそ最大MTF値の20%となる値にとった。
【0123】
本表に示すように、いずれの大きさのaについても、比較的に深い焦点深度が得られた。ここで第1指標値a/bが0.05以上0.77以下の場合に、比較的に深い焦点深度が得られた。焦点深度を深くすることを目的とした場合に、第1指標値を0.05以上0.77以下とすることがよい。
【0124】
また、第1指標値が0.08以上0.60以下である場合には、数値実施例1〜7のより多くの光学系の場合において比較的に長い焦点深度が得られている。すなわち、焦点深度を深くすることを目的とした場合に、第1指標値を0.08以上0.60以下とすることが望ましいといえる。
【0125】
特に、第1指標値が0.11以上0.43以下である場合に、数値実施例1〜7のより多くの光学系の場合において、比較的に長い焦点深度が得られている。すなわち、焦点深度を深くすることを目的とした場合に、第1指標値を0.11以上0.43以下とすることがより望ましいといえる。
【0126】
表25は、上記数値実施例において焦点深度に影響を与える第2指標値を示す。本表には、数値実施例の番号、低結像部を含む領域の焦点距離(f1)、低結像部を含む領域のバックフォーカス(fb1)、低結像部を含まない領域の基準曲率半径に対応する焦点距離(f2)、当該基準曲率半径に対応するバックフォーカス(fb2)、入射瞳径、Fナンバー(FN)、および、第2指標値を示す。
【0127】
【表25】

【0128】
第2指標値は、(fb2/fb1)×FNで定めるとする。上記数値実施例1−7において、第2指標値が2.4から2.87までの間で、深い焦点深度が得られた。すなわち、焦点深度を深くすることを目的とした場合に、第2指標値は2.4以上2.87以下の範囲内であることが好ましい。
【0129】
以上この発明の実施例として、低結像領域が、最も像側の第1レンズの像側の面および最も像側位置するレンズに設けたものを例示した。しかし、当該低結像領域の位置は当該箇所に限定されるものではない。低結像領域を有する面の位置にかかわらず、この発明の所定の範囲を満足する限り、光軸上の性能に関しては同じ効果が得られる。一方、絞りから離れた位置に低結像領域がある場合、低結像領域は主に光軸近傍の結像特性に対して影響を及ぼし、低結像領の位置が絞りに近づくほど低結像領域の影響が周辺性能へも影響を及ぼすようになるので、周辺性能とのバランスを考慮して、低結像領の位置を適宜選択することが可能である。
【0130】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0131】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0132】
110 レンズ系
100 撮像装置
115 レンズ
120 受光部
140 補正部
145 画像処理部
150 出力部
210 光線
220 光線
230 光線
260 低結像領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の領域の光学パラメータが与える結像特性よりも低い結像特性を与える光学パラメータを有する低結像部を有し、
前記低結像部および前記他の領域を通過する物点からの光に対する光学伝達関数が、物点までの距離によらず略同一である
光学系。
【請求項2】
前記光学系は、前記低結像部および前記他の領域を通過する物点からの光を、物点までの距離によらず略同一の大きさに広げる
請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記低結像部は、光軸を含む領域であり、前記他の領域は、前記低結像部の周囲の光軸を含まない領域である
請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記低結像部は、前記光学系が有する少なくとも1のレンズの少なくとも1の面の前記光軸を含む一部領域に形成され、当該面の前記光軸を含まない領域の光学パラメータが与える結像特性よりも低い結像特性を与える光学パラメータを有する
請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
前記低結像部は、前記光軸を含まない領域の曲面形状が与える結像特性よりも低い結像特性を与える曲面形状を有する
請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記低結像部の基準曲率半径は、前記他の領域の基準曲率半径より大きい
請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記低結像部の基準曲率半径は実質的に無限大である
請求項5に記載の光学系。
【請求項8】
前記低結像部の高さaと、前記低結像部を有する面を軸上光線が通過する最大高さbとが、
0.05≦a/b≦0.77
を満たす請求項6に記載の光学系。
【請求項9】
前記aと、前記bとが、
0.08≦a/b≦0.60
を満たす請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
前記低結像部における曲面形状によるバックフォーカスの値fb1、前記他の領域の曲面形状によるバックフォーカスの値fb2、および、前記光学系のFナンバーの値FNが、
2.4≦(fb2/fb1)×FN≦2.87
を満たす請求項6に記載の光学系。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の光学系と、
前記光学系を通過した光を受光する受光部と
を備える撮像装置。
【請求項12】
前記受光部は、複数の画素にそれぞれ対応する複数の受光素子を有し、前記複数の画素はそれぞれ少なくとも3色のカラーフィルタの1色を透過した光を受光し、
前記光学系は、前記3色の光を受光する近接した3個の画素より形成される画素ブロックより大きく広げたことを特徴とする
請求項11に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公開番号】特開2011−22358(P2011−22358A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167303(P2009−167303)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】