説明

光学素子、成形品および光学素子の製造方法

【課題】成形に際し光学素子を複数個取りする際の成形品の形状を複数個の光学素子部分を二次元に配列したアレイ状とし、成形品の各光学素子部分間を切断して製品とすることにより効率的に製造される光学素子、成形品および光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】射出成形された透明熱硬化性樹脂の成形品30から複数の光学素子部14を切り離して光学素子とする。成形品30は、複数個の光学素子部14が縦横に配列されている。成形品30は、縦横に配列された光学素子部14が一体に繋がった形状に射出成形されている。成形品30が光学素子部14間で切り離されて各光学素子部14に分離されることにより光学素子とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明熱硬化性樹脂製の光学素子、成形品および光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱硬化性樹脂は、耐熱温度が高く、耐熱性が要求される自動車部品、電気製品、生活用品などに用いられている。例えば、自動車用の灰皿、家庭用漏電ブレーカーのボディ、鍋の掴み手などがある。熱硬化性樹脂の成形方法としては、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形などがある。しかし、熱硬化性樹脂は、一般的に、金型に密着し易く、成形直後(例えば、金型から取り出だす際)は脆いといった特性があり、離型し難い材料である。
【0003】
そのため、金型から成形品を取り出す最に、成形品が変形したり破損したりする場合がある。
しかし、上述のような灰皿等の製品では、製品の形状が少し変形しても機能上の問題がないので、製品形状の製造誤差の許容範囲が広く、多少の変形は許容される場合が多い。また、同様に製品形状の制約が少ない製品では、製品形状を厚肉にすることで変形や破損を抑制することができる。
【0004】
また、熱硬化性樹脂材料に離型剤を添加するか、もしくは成形金型に離型剤を吹き付けて成形することで、離型時に熱硬化性樹脂製品の変形や破損を抑えることができる。
また、インサート成形の場合には、インサート材が十分な強度を有しているため、変形、破損が起こらない場合がある。
【0005】
また、熱硬化性樹脂の成形においては、材料の流動特性上、製品内部に気泡を巻き込み易いといった問題がある。
例えば、加熱されている金型キャビティ内壁(成形品表面を成形する部分)に接している樹脂は流動性が良くなり、金型キャビティ内部に樹脂が十分に充填される前に、金型キャビティ内壁の全面に樹脂が行き渡って金型から加熱されることで、成形品表面部分が先に形成・固化されてしまい、内部の気泡が逃げられずに残ってしまう虞がある。
【0006】
また、粘性が非常に低い熱硬化性樹脂材料では、さらに重力の影響も受けて、局所的に気泡は入り易くなる場合がある。
しかし、上述した灰皿等の製品では、たとえ成形品内部に微細な気泡が混在したところで、強度や気密性に問題が無ければ製品として許容される。
ここで、透明な熱硬化性樹脂材料として、例えば、シリコーン材料は、耐熱性、耐光性(対紫外線性)に優れていることから、光学素子としてのLED用レンズに好適な材料である。
【0007】
例えば、LEDとレンズとを有する発光装置には、例えば、回路基板に直接表面実装可能なものがあり、表面実装に際して高温のリフロー炉で半田付けされるので耐熱性が必要となる。また、LEDには、紫外線を発光可能なものもあり、このようなLEDのレンズには耐紫外線性が要求される。また、使用環境において、高温下での使用や、紫外線を含む太陽光の下となる屋外での使用においても、耐熱性および耐光性が必要となる。
【0008】
なお、耐熱性の光学素子材料としては、ガラスが一般的であるが、比重が大きく重く、複雑な形状を作るのが困難といった欠点があり、このような欠点を解消できる透明熱硬化性樹脂(以下、樹脂と略称する場合がある)がLEDを備えた発光装置のレンズ材料として期待されている。
しかし、熱硬化性樹脂材料には、上述のように成形金型に密着し易い、成形直後は非常に脆く壊れ易い、高温の状態では硬化しても柔らかいなどの問題がある。
【0009】
すなわち、熱硬化性樹脂の成形においては、成形後の離型が困難である。そこで、離型に際して超音波で光学素子を成形する成形面を備えた入れ子を振動させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、シリコーン材料には、成形前にシリコーン材料が受けた温度の履歴により成形時の流動性が変化する(ばらつく)といった問題もある。
また、上述のように内部に気泡が生じてしまうと光学素子としての利用は困難である。
【0010】
そこで、金型のキャビティの樹脂が最後に充填される部分に樹脂がオーバーフローする部分を設け、この部分に気泡が追い込まれるようにして、成形後オーバーフローさせた部分を除去して、製品部分に気泡が残るのを防止することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、気泡の防止のために成形金型のキャビティ内を減圧することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−201122号公報
【特許文献2】特開2007−245595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、光学素子の場合に用途にもよるが、ミクロンあるいはサブミクロンオーダーでの高い形状精度が必要とされる場合があり、上述の離型時の変形や破損は、光学素子としては致命的な不具合となる。したがって、上述のように離型時に超音波振動を利用することにより、歩留まりの向上を可能とするが、さらなる歩留まりの向上が望まれている。
この際に、離型時の変形や破損の防止のために、光学素子の形状や肉厚を変えることも考えられるが、光学素子は、要求される光学特性に基づいて設計されるので、変形や破損の防止のために形状を変更してしまうと、所望の光学特性を得られなくなってしまう。
【0013】
また、離型剤との併用により、歩留まりの向上を図ることも考えられるが、熱硬化性樹脂材料に離型性を向上するために多めに離型剤を含有させると、離型剤が溶け切れなかったり、成形中に離型剤が分離・析出したりすることで、光学素子の透明性が損なわれ、光学素子の光学特性が大きく変化し、致命的な不具合となってしまう虞がある。
【0014】
また、樹脂をオーバーフローさせて、気泡をキャビティの外に出してしまう方法であっても、製品形状によっては、流動性と硬化特性の兼合いで必ずしも気泡が除去できない虞がある。また、気泡を除去できたとしても、成形に時間を要して生産性が悪くなる虞がある。また、熱硬化性樹脂材料としてのシリコーン材料は、樹脂材料としては高価であり、成形に際して製品以外の部分を少なくしてコストの低減を図ることが望まれているが、オーバーフローさせる分だけ使用される材料が多くなり、材料に対する歩留まりが悪化することになる。
【0015】
ここで、図20(a)は、光学素子を複数個取り(例えば、8個取り)とした場合の一対の金型のうちの一方の金型の入子6の成形面を示しており、図20(b)は前記金型の入子6で成形された成形品1の側面を示すものである。前記入子6は、中央の樹脂が供給されるスプルー2aと、スプルー2aから各キャビティ5aに樹脂を分岐させて流出させるランナ3aと、ランナ3aからキャビティ5aに樹脂を流入させるゲート4aを備えている。
この入子で成形される成形品1は、スプルー2aで成形される中央のスプルー部2と、ランナ3aで成形されるランナ部3と、ゲート4aで成形されるゲート部4と、キャビティ5aで成形される光学素子(光学素子部)5とからなる。
【0016】
また、図21(a)、(b)、(c)、(d)は、成形品1の成形に際して金型のキャビティ5a内への樹脂の充填状況を順に模擬的に示したものであるが、各ランナ3aからゲート4aを介してキャビティ5aに樹脂を充填した場合に、上述のように、キャビティ5aに樹脂が十分に充填される前に、キャビティ5a内壁の全面に樹脂が行き渡って金型から加熱されることで、成形品表面部分が先に形成・固化されてしまい、内部の気泡が逃げられずに残ってしまうことになる。
【0017】
また、一般に射出成形の金型で小さい成形品を作成する場合には、図20(a)に示すようにランナを分岐させて、一つの成形品で複数の光学素子5を設けるようにするとともに、複数の成形品を一度に成形するように、図20(a)に示す入子6が一つの金型に複数配置されている。
しかし、各入子や、各キャビティ間で流動性のばらつきなどにより、光学素子の特性にばらつきが生じる場合がある。
【0018】
また、各キャビティ5aで成形される光学素子5は、肉厚が薄く離型時に応力が集中し易い箇所がある場合が多い。
また、上述のようにシリコーン材料は高価であり、製品以外の部分を減らすために、上述のように複数個取りの成形品形状とするが、複数のランナ部や各光学素子毎のオーバーフロー部分などにより、必ずしも材料が効率的に使用されている状況とはなっていない。
【0019】
これらの問題の多くは、図20(a)(b)に示されるような、熱可塑性樹脂と略同様の複数個取りとする際のキャビティ5aおよびこのキャビティ5aによって成形される成形品1の形状によって生じるものであり、より多くの光学素子5を一度で成形するに際し、熱硬化性樹脂の特性に適応してより効率的に成形が可能な成形品1の形状が求められている。
【0020】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、成形に際し光学素子を複数個取りする際の成形品の形状を複数個の光学素子部分を二次元に配列したアレイ状とし、成形品の各光学素子部分間を切断して製品とすることにより効率的に製造される光学素子、成形品および光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の光学素子は、射出成形された透明熱硬化性樹脂の成形品から複数の光学素子部を切り離して設けられる光学素子であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された前記光学素子部が一体に繋がった形状の成形品が射出成形され、
前記成形品が前記光学素子部間で切り離されて各光学素子部に分離されることにより設けられたことを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の光学素子は、請求項1に記載の発明において、前記光学素子部は、光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備え、
前記成形品は、前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列される形状に成形され、
前記成形品の隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状が、前記光学素子部の縦横への配列数で設定されるとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の成形品は、透明熱硬化性樹脂が射出成形されて設けられ、かつ、切り離されて光学素子とされる複数の光学素子部が含まれる成形品であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された前記光学素子部が一体に繋がった形状とされていることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の成形品は、請求項3に記載の発明において、前記光学素子部は光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備え、
前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列された形状に成形され、
隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状が、前記光学素子部の縦横への配列数で設定されるとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定されていることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の光学素子の製造方法は、透明熱硬化樹脂を射出成形した成形品から複数の光学素子部を切り離して光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された光学素子部が一体に繋がった形状の成形品を射出成形し、
前記成形品を前記光学素子部間で切り離して各光学素子部を分離して光学素子とすることを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の光学素子の製造方法は、請求項5に記載の発明において、前記光学素子部は、光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備えるものとし、
前記成形品を、前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列される形状に成形し、
前記成形品の隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状を、前記光学素子部の縦横への配列数で設定するとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定することを特徴とする。
【0027】
請求項1、請求項3および請求項5に記載の発明においては、光学素子部が縦横に配列されるとともに一体に繋がった形状の成形品を射出成形により成形することになるので、射出成形に用いられる成形金型は、各光学素子部を成形する個々のキャビティを備えておらず、成形金型には、複数個の光学素子部を成形する部分が一つのキャビティとなっており、一つのキャビティで複数個の光学素子を成形することになる。すなわち、複数個の光学素子部を一体に成形することから、複数個の光学素子部を一つのキャビティで成形することが可能となる。
【0028】
この場合に、複数個の光学素子部を形成するキャビティが一つとなっていることで、光学素子部を成形するキャビティが個々に分かれている場合に比較して、キャビティの内面の表面積が減少する。すなわち、光学素子部が繋がれた部分では、光学素子部を個々に分離して得られる光学素子の表面積のうちの互いに接続されている側面部分の表面積が減少することになるので、その分だけキャビティの内面の表面積が減少することになる。すなわち、一つのキャビティで複数個の光学素子部を成形できるようにすることで、キャビティの容積に対するキャビティ内面の表面積の比率を低くすることができる。
【0029】
個々の光学素子部当たりのキャビティの内面の表面積が減少することにより、キャビティの内面に透明熱硬化性樹脂が密着しても、離型時に成形品に作用する力を低減することができ、離型時の成形品の変形や破損を抑制することができる。
また、縦横に配列された光学素子部の互いに繋がれる部分の形状によっては、その部分の肉厚が2倍以上に厚くなったり、形状の複雑さが緩和されたりする場合があり、この場合は、個々の光学素子部をそれぞれ別のキャビティで成形した場合に比較して、肉厚が厚くなって強度が増したり、形状が単純化されて応力の集中が緩和されたりする。これにより、離型時の変形や破損を抑制することができる。
このように離型時の変形や破損が抑制されることにより、光学特性の良好な光学素子を得ることができる。
【0030】
ここで、従来、個々の光学素子部が個々のキャビティで成形されることにより、成形される光学素子部が小さい場合に、成形される成形品が小さいことから、変形や破損といった問題が生じ易くなっていたが、複数の光学素子部を縦横に配列して一つのキャビティで形成することにより、実質的な成形品(成形品の製品となる部分)が大きくなり、成形品が小さいことに起因する問題を解消することができる。
【0031】
また、製品内部に気泡を含まない光学的特性が良好な素子を得ることができる。
例えば、個々の光学素子部がそれぞれ個々のキャビティにより成形される方式では、気泡を巻き込んで全て不良(あるいは極端に歩留が低い状況)となってしまうような製品形状でも複数の光学素子部を一体に成形する方式の場合には、上述のようにキャビティ容積に対してキャビティ内面の表面積の比率を小さくできることから、成形品周囲と内部とにおける透明熱硬化性樹脂材料の流動速度の差が小さくなり、気泡を巻き込みにくくすることができる。
【0032】
たとえ成形品内から完全に気泡を除去できないような複雑な製品形状の場合でも、一つのキャビティ内に複数個の光学素子部が存在するので、気泡を巻き込んだ箇所に成形された光学素子部以外の光学素子部は気泡を含まない良好な光学的特性を有したものであり、
光学的特性が良好な光学素子を得ることができる。
すなわち、一つのキャビティで一つの光学素子部を成形する構成では、キャビティ内に気泡が一つでも生じれば不良品となるが、複数の光学素子部を一つのキャビティで成形する場合には、気泡を含む光学素子部だけが不良品となり、その他の光学素子部は良品となるので、極端に歩留まりが悪くなるような状況を防止できる。
【0033】
また、一つのキャビティで一つの光学素子部を成形する構成では、例えば、オーバーフローさせる形状などのなんらかの形状部分を外部に接続させる以外に、キャビティの形状を変更することが困難である。それに対して、複数の光学素子部を縦横に配列して光学素子部を一体とすることにより、複数の光学素子部を一つのキャビティで成形可能な形状とした場合には、光学素子部の配列における縦横の光学素子部の数をそれぞれ変更することや、それにより一体の成形される光学素子部の数を変えることや、各光学素子部の配列の間隔を変更することなどにより、キャビティの形状、すなわち、成形品の形状を比較的自由に変更可能である。これにより、成形品の形状を光学素子の光学特性を変更することなく、より離型し易い形状や、より気泡を巻き込みにくい形状などに変更することが可能となる。
【0034】
請求項2、請求項4および請求項6においては、光学素子部が光学機能部とその周囲の外周部とからなっている。ここで、外周部は、例えば、光学素子を光学装置に取り付ける際に使用される部分である。
複数の光学素子部を縦横に配列した形状の成形品において、外周部どうしが隣合っている。成形品から光学素子部を分離する際には、光学素子部の縦横の配列に沿って外周部どうしの間が切断されるので切断代となる部分が必要であり、それが除去部となる。
【0035】
この成形品において、成形金型のキャビティ内に透明熱硬化性樹脂が充填される際に、キャビティ内を樹脂が流動して光学素子部が隣り合う部分、すなわち、光学素子部が切り離される際に切断されて除去される除去部を通過することになる。この除去部の断面の形状によって樹脂の流動が影響を受けることになる。
【0036】
例えば、成形品において光学素子部を横一列もしくは縦一列とし、成形品の長さ方向に沿って透明熱硬化樹脂材料を充填した場合には、光学素子部の外周部どうしの間の断面積が、一つの前記光学素子部の断面積と略同等なり、従来と同様に光学機能部への樹脂の充填が円滑に行えず、空気を巻き込み易くなってしまう虞がある。そこで、例えば、縦横の光学素子部の配列数を2つ以上とするなどして、除去部の断面積を大きくすることにより、光学機能部への樹脂の充填を円滑にすることができる。
【0037】
また、除去部の光学素子部間の距離となる厚みが、成形品における光学素子部の配列における各光学素子部間の距離で決まることになる。ここで、成形品の光学機能部を含む部分の断面の形状と、光学的機能部を含まない外周部だけを通る断面の形状とが大きく異なる場合で、かつ、除去部の断面形状と、外周部の断面形状とが略同じ場合に、前記除去部の厚みの違いによっても樹脂の流動が影響を受けることになる。
したがって、成形品の光学素子部の縦の配列数や横の配列数を変更したり、光学素子部間の距離を変更したりすることで、成形品の成形時における樹脂の流動を制御することが可能となり、例えば、実験的に樹脂の流動特性を最適とすることが可能な成形品の形状を求めて成形を行うことで、気泡を含まず良好な光学特性を有する光学素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、光学素子部が縦横に配列された形状の成形品を個々の各光学素子部に分離して光学素子とするので、成形品は、光学素子を複数個取りする構成でも、キャビティは一つとなり、キャビティで形成される部分の表面積は、成形品に含まれる数の光学素子部の表面積の和より小さくなり、離型時に成形品にかかるキャビティの内面からの力が減少し、離型時における成形品の変形や損傷を防止することができる。
また、従来に比較して上述のように容積当たりの表面積が小さくなることから、気泡を巻き込む可能性を低くすることができるとともに、たとえ、一部の光学素子部に気泡が巻き込まれてしまっても、他の光学素子部は気泡を含まない所望の光学特性を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学素子を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図2】前記光学素子とされる光学素子部が縦横に配列された成形品を示す要部断面図である。
【図3】前記成形品を示す図であって、(a)は、可動金型の入れ子に保持された状態の正面図であり、(b)は断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)は、射出成形金型のキャビティ内の透明熱硬化樹脂の流動を説明するための図である。
【図5】光学装置の基板への前記成形品の取付を説明するための図であり、(a)は取付直前の状態を示す図であり、(b)は取付後の状態を示す図である。
【図6】光学装置の基板への前記成形品の位置決めを説明するための図であり、(a)は前記成形品の正面図であり、(b)は位置決めを説明するための図である。
【図7】光学装置の基板への前記成形品の位置決めの変形例を説明するための図であり、(a)は前記成形品の正面図であり、(b)は位置決めを説明するための図である。
【図8】光学装置の基板への前記成形品の位置決めの別の変形例を説明するための図であり、(a)は前記成形品の正面図であり、(b)は位置決めを説明するための図である。
【図9】前記成形品を成形するための射出成形金型を示す要部断面図である。
【図10】前記射出成形金型の一対の金型のうちの固定側金型を示す要部断面図である。
【図11】前記射出成形金型の一対の金型のうちの可動側金型を示す要部断面図である。
【図12】前記固定側金型の成形面を示す正面図である。
【図13】前記可動側金型の成形面を示す正面図である。
【図14】成形品本体部の変形例であって、縦横に配列された光学素子部どうしの間に溝を設けた成形品を示す断面図である。
【図15】成形品本体部の変形例であって、縦横に配列された光学素子部どうしの間にスリットを設けた成形品を示す正面図である。
【図16】成形品本体部の変形例であって、周囲にダミー領域を設けた成形品を示す正面図である。
【図17】成形品の変形例であって、反射膜と反射防止膜とが設けられた光学素子を示す断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態の成形品を示す正面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の成形品の基板への取り付けを示す図であって、(a)は取付直前の状態を示す図であり、(b)は取付後の状態を示す図である。
【図20】(a)は、従来の可動金型の入れ子の正面図であり、(b)は従来の成形品断面図である。
【図21】従来の(a)、(b)、(c)、(d)は、射出成形金型のキャビティ内の透明熱硬化樹脂の流動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、この例の光学素子10は、図5等に示すLED素子50を備える基板51に取り付けられて、LED素子50からの光を設定された方向に向けるレンズとして機能するものである。このLED素子50と光学素子10とからなる発光装置(照明装置)は、例えば、携帯電話の基板に取り付けられて携帯電話に備えられたカメラの撮影範囲を照明するものなどとして使用される。
【0041】
なお、光学素子10は、携帯電話以外のLEDを用いた各種発光装置および照明装置にも利用可能である。また、光学素子10は、LED以外の発光装置や照明装置に応用可能である。さらに、発光装置や照明装置以外の光学装置にも応用可能である。例えば、光センサ用の受光素子(センサ)用の光学素子としても利用可能であり、反射型の光センサの場合に、LED素子と受光素子との両方用の光学素子となっていてもよい。また、赤外線センサを用いた温度センサの光学素子であってもよい。
【0042】
この光学素子10は、例えば、円形の光学的機能を有する光学的機能部11と、この光学的機能部11の周囲に一体に設けられた外周部12とからなるものである。
光学的機能部11は、平面視して円形で、LED素子50側(内面側)が略平面か緩やかな曲面とされ、LED素子50の反対側(外面側)が大きく突出した曲面とされている。
【0043】
外周部12は、光学的機能部11の周囲に矩形の平板状に形成された外周板部12aと、基板51への取付部とされるとともに、LED素子50の周囲を囲む外周筒部12bとからなるものである。
外周筒部12bは、矩形板状の外周板部12aの4辺と対応する4つの壁部から四角筒状に形成され、外周板部12aの外周部分からLED素子50側に向って突出した状態となっている。また、光学素子10の外周筒部12b内は、略直方体上の空間で、外周板部12aの反対側が開放された状態とされている。
【0044】
また、外周筒部12bの外周面は、4つの側面を備え、各側面が平面状で、後述のように成形品30から光学素子10を個々に分離する際に切断された切断面となっている。なお、後述のように成形品本体部31の外周に切除領域62を設けた場合には成形品30から切り離された全ての光学素子10において、4つの側面が全て切断面とされるが、切除領域62を設けない場合には、成形品本体部31の最外周部分の角部以外に配置される光学素子10は、4つの側面のうちの3つの側面が切断面とされ、残りの側面は、後述の射出成形装置の金型70のキャビティ31cに成形された面とされる。
【0045】
また、成形品30の外周の角部に配置されていた光学素子10は、一つの角を挟む二つの側面が切断面とされ、前記角に対向して配置される角を挟む二つの側面が前記キャビティ31cにより成形された面とされる。なお、光学素子10の成形された面である側面で挟まれる角が、成形品30の角と一致する。後述のように成形品30の光学素子部14が縦横に配列された成形品本体部31の一方の側縁側にランナ部32が成形品本体部31の一方の側縁の略全幅に渡って接合されている場合に、成形品本体部31のランナ部32側は成形品30の外周とならず、角部を除いてランナ部32が接続された部分から切り離された光学素子10は、4つの側面全てが切断面となる。
【0046】
前記透明熱硬化性樹脂材料としては、エポキシ、シリコーン、有機-無機ハイブリット樹脂やそれらに無機フィラーを添加したもの等を適用することができるが、この実施形態ではシリコーンを用いている。
【0047】
図2および図3の示すように、成形品30は、切り離されて光学素子10とされる複数の光学素子部14を一体に成形したものである。なお、図2においては、説明を容易とするために図3の光学素子部14の配列数より少ない配列数で成形品を図示した。図3においては、成形品30は、可動側金型の入子のキャビティ内に保持された状態となっている。
【0048】
また、成形品30は、上述のように光学素子部14が縦横に配列された成形品本体部31と、金型70の後述のスプルー33cで成形されるスプルー部33および金型70の後述のランナ32cで形成されるランナ部32とからなっている。また、ランナ部32は、成形品本体部31に接続された状態となっているが、この成形品本体部31とランナ部32との境界部分がゲート部となる。
【0049】
この成形品においては、スプルー部33から成形品本体部31に向う方向に直交する方向の幅が広くなるので、ランナ部32が例えば直線に沿った円柱状や棒状ではなく、スプルー部33から成形品本体部31に向うにつれて広がる三角形状とされている。
【0050】
成形品30の成形品本体部31において、光学素子部14は、互いに直交する縦方向と、横方向とにそれぞれ並んで配列されており、複数の光学素子部14が二次元アレイ状となっている。
すなわち、成形品30において、光学素子部14は、縦横に並んで配置されるとともに、各光学素子部14の境界部分が縦横に直線状(格子状)に配置されている。
【0051】
したがって、成形品本体部31において、複数の横の列においては、各光学素子部14の配置位置が揃った状態となっており、複数の横の列における光学素子部14どうしの境界が縦方向に沿って直線状となっている。同様に複数の縦の列においては、各光学素子部14の配置位置が揃った状態となっており、複数の縦の列における光学素子部14どうしの境界が横方向に沿って直線状となっている。
したがって、光学素子部14どうしを切り離す際に、縦横の光学素子部14の配列数に従って、縦横の格子状に成形品本体部31を切断することで、光学素子部14を切り離して光学素子10とすることができる。
【0052】
また、成形品本体部31における各光学素子部14は、外周部12どうしが隣り合って接続された状態となっており、上述の切断により外周部12の側面が形成されることになる。上述のように光学素子部14の各配置位置に応じて全ての側面が切断面となったり、一部の側面だけが切断面となったりする。
【0053】
成形品30において、外周筒部12bどうしが隣り合って配置されることになるが、外周筒部12bどうしが接合される部分には、切断代(除去部)16を見込んだ状態となっており、外周筒部12bの縦横のそれぞれの切断方向に沿った断面においては、図2に示すように、光学素子10の外周筒部12bの厚みAの二倍の厚み2Aにさらに切断代16を足した厚みとなっている。
なお、切断代16部分は、切断時に切削屑となってなくなることになる。
【0054】
また、光学素子部14の切断分離の方法としては従来の切断技術を用いることができ、例えば、ワイヤーソー、レーザー加工、液体ジェット加工、ダイシング、カッター刃などを用いることができる。
また、切断分離は必ずしも光学素子10単品にする必要はない。例えば、2個組み、4個組み、ライン状など用途に応じて選択できる。なお、単品としなかった場合には、後述のように光学装置に組み付けてから切断するものとしてよい。また、光学装置で複数個の光学素子を組み合わせて使うもの、すなわち、単品の光学素子10ではなく、複数の光学素子部14からなるレンズアレイとして使用するものとしてもよい。
【0055】
ここで、従来のように一つのキャビティで一つの光学素子を成形した場合に、図1に示される光学素子の外周筒部12bと外周板部12aとの角部は、応力が集中しやすいものとなるともに、例えば、可動側金型に保持された状態から離型する際に、外周板部12aの内側面と、外周筒部12bの内側面および外側面とがそれぞれキャビティの内面に密着した状態となって、離型時に力がかかることから、前記角部で変形や破損が生じる虞がある。
それに対して、成形品30では、その外周部分を除いて、上述のように二つの外周筒部12bが切断代16を挟んで繋がった状態となるので、従来の光学素子一つ一つの成形品に比較して外周筒部の断面の厚みが二倍(2A+切断代)以上に厚くなるとともに、内面側は内隅の角部が残るが、外面側は、出隅の角部がなくなる。また、成形品30では、外周部12どうしが隣り合って接続された状態となることで、光学素子10一つ一つの成形品に比較して外周部12の側面分だけ成形品30の表面積が少なくなり、キャビティの内周面に密着する面積が減少し、離型時に成形品30にかかる力が減少する。これにより、光学特性の良好な光学素子10を製造することができる。
【0056】
以上のことから、離型時に未だ温度が高く脆い状態の成形品30にかかる力が減少するとともに、形状的に応力が集中する部分の厚みが厚くなって剛性が高くなり、さらに、応力の集中が弱められる形状となる。このことから、離型時の成形品30の変形や破損を抑制できる。なお、成形品30の成形品本体部31から個々の光学素子部14を切り離して光学素子10とする際には、成形品30の温度が低下しており、離型時に比較して成形品30の強度が高くなっているので、成形品30を切断する際には、変形や破損が起こり難い状態となっている。したがって、一体に成形された光学素子部14を個々に切断するものとしても、光学特性の良好な光学素子10を得ることができる。
【0057】
また、図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、射出成形装置の後述の金型70においては、成形品本体部31を形成する概略矩形板状のキャビティ31cにスプルー33cから三角形状に広がってランナ32cが接続されているので、キャビティ31cの一方の側縁部から略横方向の列に沿って透明熱硬化性樹脂材料aが流動し、キャビティ31c内にこの樹脂材料aが充填されていくことになる。
【0058】
この際に、従来と同様に、樹脂材料aは、キャビティ31cの内面に沿った部分の流動性が良くなり、キャビティ31cの内面近傍における流れの方が、内面から離れた部分より速くなるが、従来の個々の光学素子を成形するキャビティの最も大きな断面よりも樹脂の流動方向に交差する(略直交する)断面の断面積が、光学素子部の縦方向の配列数分だけ大きくなり、光学的機能部11を成形する部分を含めてキャビティ31c内に円滑に樹脂を流動させて、気泡の巻き込みを抑制することが可能となる。
【0059】
特に、外周部どうしが接続される部分で光学素子部を切り離す際の切断面となる部分で、充填される樹脂材料aの流動方向に交差する(略直交する)部分の断面積が、一つの光学素子部の最大の断面積より大きくされているので、外周部12の部分から円滑に光学的機能部11とされる部位に樹脂を流入させ、光学的機能部11とされる部位に気泡を巻き込んだ状態とするのを防止できる。
【0060】
金型70のキャビティ31c全体では、例えば、図4(d)に示すように、最後に気泡bが残る可能性があるが、この場合に、気泡bが残ってしまった光学素子部14が不良の光学素子10となるだけで、残りの光学素子部14は、良好な光学素子10となり、従来の個々の光学素子をキャビティで成形する際に、光学素子の形状から気泡bが残る可能性が高い場合に比較して、歩留まりの向上を図ることができ、従来気泡bが残り易く、成形が困難な形状の光学素子でも成形が可能となる。
【0061】
ここで、離型困難度や気泡巻き込み易さは、透明熱硬化性樹脂材料の種類(グレード)や製品形状によっても変化するが、成形品30においては、縦横に配列される光学素子部14の縦の配列数や横の配列数を有る程度自由に設定可能なことから、材料特性に応じて、光学素子部14どうしの接続部分である切断代16の幅、厚み等の形状を調整することや、光学素子部14の配列の数や縦横の比率を任意に設定することで、これまで使えなかった透明熱硬化性樹脂材料や薄肉形状の製品にも対応が可能となる。
【0062】
切断代16の形状は、光学素子10の側面となる形状に対して切断面を広くしたり(切断代16部分が成形品30においてリブ状となる)、切断代16部分にスリットや溝を設けることで切断面部分を狭くしたりすることができるとともに、厚みも任意に変えることができる。切断代16の厚みを変えた場合に、切断を行う加工装置による切断時の切削される幅を変更することで、切断代16が多少厚くなっても切断代部分を一度の切断で切除することが可能である。例えば、切断代16の厚みに対応した厚みの切断刃を選択することにより、切断代16を一度切断するだけで、切断代16を除去することができる。なお、光学素子部14どうしの間に、一度の切断では除去できない厚みの切断代16を設け、2回の切断により切断代16を除去するものとしてもよい。
【0063】
また、光学素子部14の配列の数や縦横の比率を変更することで、キャビティ31cに充填される透明熱硬化性樹脂材料の流動方向に略直交する方向の断面積を略自由に設定することができる。
従来の方法では、キャビティの形状が光学素子10の形状により決まってしまうので、キャビティの形状により樹脂の流動性をコントロールできなかったが(厳密に言えば、成形条件(射出速度や圧力)やゲートサイズだけでは流動性の調整に限界があったが)、この成形品30では、上述のように成形品30の形状を有る程度自由に変更可能となり、これに伴ってキャビティ31cの形状も変更されることになり、キャビティ31cの形状により、樹脂の流動性のコントロールが可能になる。なお、個々の光学素子を得るのではなく、光学素子アレイを製造する場合には、光学素子アレイの設計によりキャビティの形状が決まってしまい、成形品形状を自由に設定することはできない。
【0064】
光学素子部14を分離するための成形品30の切断は、成形品30単体で行ってもよいが、図5に示すように、複数のLED素子50が縦横に配列された基板51に成形品30を取り付けた後に成形品30と基板51とを同時に切断するものとしてもよい。
前記基板51には、LED素子50が縦横に配列されて固定されている。また、各LED素子50が基板51に設けられるとともに各LED素子50に対応した電極に接続されるように電気的配線が施されている。
【0065】
ここで、光学素子10とLED素子50を備えた発光装置は、表面実装用の部品となっており、基板51には、各LED素子50の裏面側部分に図示しない電極が形成され、この電極とLED素子50とが基板51に形成された配線で接続されている。
発光装置は、例えば、一つのLED素子50を備えるもので、複数のLED素子50が縦横に配列された基板51を切断して、1つずつのLED素子50を備えるLED基板52とする必要がある。
【0066】
基板51における各LED素子50の配置位置は、成形品本体部31における光学素子部14の光学的機能部11の配置位置と対応しており、基板51にLED素子50と光学的機能部11とが重なるように成形品本体部31を配置すると、LED素子50の周囲を外周筒部12bが囲んだ状態となる。すなわち、光学素子部14のLED素子50側の外周筒部12b内に形成された凹部にLED素子50が収容された状態となる。
【0067】
また、基板51のLED素子50が配置された側の面に、光学素子部14の外周筒部12bの先端面を接着することで、LED素子50は、前記光学素子部14の凹部内で密閉された状態となる。
この際には、光学素子部14の外周部どうしの間の前記切断位置と、基板51のLED素子50どうしの間の切断位置が重なった状態となり、これらの切断位置を同時に切断することで、一つのLED素子50と、それに対応する光学素子10を備えた発光装置を得ることができる。
【0068】
成形品本体部31は、基板51に接着される前に、図3に示すスプルー部33およびランナ部32から成形品本体部31を切り離すために、成形品本体部31とランナ部32との境界としてのゲート部で切断しておくものとしてもよいし、基板51に接着した後に成形品本体部31とランナ部32との境界を切断するものとしてもよい。すなわち、基板51に成形品本体部31ではなく、成形品30を接着してから成形品30および基板51を切断して発光装置を得るものとしてもよい。
【0069】
以上のように、各光学素子10を各LED基板52に個々に取り付けるのではなく、複数のLED基板52に複数の光学素子10を一度に接着して接合することが可能となるとともに、成形品30と基板51とをそれぞれ別々に切断するのではなく、同時に切断できることから、発光装置の組立工数を大幅に削減することができ、製造期間の短縮と、製造コストの削減を図ることができる。
【0070】
また、成形品30と、基板51とを各々別々に切断した場合に切削屑がLED素子50や光学素子10の外周筒部12bの内部に付着し、最終的に発光装置内部に切削屑が入ってしまう虞があるが、先に基板51と成形品30とを接着することにより、光学素子10内にLED素子50が封止された状態で、成形品30および基板51の切断が行われることになる。これによって、発光装置内部に切削屑が入るのを防止することができる。
すなわち、発光装置内に切削屑が浸入して、不良品となるのを防止することができる。
【0071】
また、基板51に成形品本体部31を接合する際に、基板51の各LED基板52のLED素子50の位置と、成形品本体部31の各光学素子部14の光学的機能部11の位置とを正確に合わせる必要がある。そこで、図5および図6に示すように、成形品30(成形品本体部31)と、基板51とに互いに係合する位置決め手段を設けるものとしてもよい。
例えば、成形品30の基板51に接する外周筒部12bの先端面に先端側に向うにつれて径が小さくなる円錐台状の位置決めボス(突起)33を設け、基板51に前記位置決めボス35の位置に対応して、底に向うほど径が小さくなる円錐台状の位置決め孔53を設け、位置決め孔53に位置決めボス35を挿入することで、基板51(LED素子50)と成形品30(光学的機能部11)との位置決めを行うものとしてもよい。
なお、位置決め手段として互いに係合する凹凸を成形品30と基板51とに設ける場合に、成形品30と基板51とのどちらに凹部(凸部)を設けてもよい。
【0072】
また、図6においては、各光学素子部14毎に2つの位置決めボス35が設けられ、各LED基板52毎に2つの位置決め孔53が設けられている。
このような位置決め手段を用いることにより、LED素子50に対して光学素子部14の光学的機能部11の位置がずれてしまうことにより発光装置の特性が低下したり、発光装置が所定の用途用に機能できなくなるのを防止することができる。
【0073】
成形品30および基板51に位置決め手段を設けることにより、LED素子50に対する光学的機能部11の位置を正確することができ、良好な特性を有する発光装置を製造することができる。
また、基板51に成形品30を接着する際に接着剤が固化する間に基板51に対して成形品30が変位してしまうのを防止できる。
また、位置決め手段として、互いに係合する凹凸を基板51と成形品30とのそれぞれの接着面に設けることで、平面状の接着面より接着面の面積を広くして、接着強度を高くすることができる。
【0074】
必ずしも上述のように個々の光学素子部14毎に位置決め手段を設ける必要はなく、成形品30の複数箇所に位置決め手段を設けるものとしてもよいが、より高精度に位置決めをするためには、光学素子部14およびLED基板の個々に位置決め手段が設けるのが望ましい。
例えば、基板51と成形品30との接着に、透明熱硬化性樹脂からなる成形品に対応して熱硬化タイプの接着剤を用いた場合に、基板51と成形品30との熱膨張差によって位置がずれることを防止できる。
【0075】
上述のように、位置決め手段は円錐台等の概略円錐状の突起(位置決めボス35)、穴(位置決め孔53)とすることにより組み付け易くなり、かつ、高精度に位置決めしやすくなる。また、各光学素子部14の位置決めのボス35および各LED基板52の位置決め孔53を少なくとも2箇所以上としたほうが高精度に位置決めができる。
【0076】
図7は、位置決め手段の変形例を示すものであり、基板51側に縦横のLED素子50の配列方向のうちの一方としての例えば、縦の配列方向に沿ってLED素子50の各列ごとに断面逆台形状(底部に向かうほど幅が狭くなる形状)の位置決め溝54が形成されている。
また、位置決め溝54の位置に対応して成形品30には、光学素子部14の縦の配列方向(一方の配列方向)に沿って断面台形状(先端に向うほど幅狭くなる形状)の位置決め突条34が設けられている。位置決め突条34の位置は、基板51と接する外周筒部12bの先端面である必要があり、位置決め溝54の位置も位置決め突条34の位置に対応している必要がある。
【0077】
ここで、位置決め溝54に位置決め突条34を挿入することで、縦横の配列方向のうちの横方向の配列方向に沿った位置が決まるが、成形品30が位置決め溝54に沿って移動可能なので、縦の配列方向に沿った位置が決まらない。
そこで、基板51および成形品30の位置決め溝54に直交する方向の端面が、これら端面に当接する規制平面を備えた規制部材61に当接することで、縦の配列方向に沿った位置が決められるようになっている。なお、規制部材61は、成形品30および基板51と別部材である。
【0078】
図8は、位置決め手段の別の変形例を示すものであるが、成形品の形状も異なるものとなっており、成形品30aは、光学素子部14が縦横に配列された成形品本体部31oより外周側に後述の切除領域62(ダミー領域)が設けられている。なお、切除領域62については、後に詳細に説明する。この切除領域62に前述の異位置決めボス35と、位置決め突条34とが設けられている。
位置決め突条34は、光学素子部14の縦横の配列方向のうちの一方の縦の配列方向に沿って設けられるとともに、切除領域62の縦の配列方向に沿った成形品30aの側縁部に形成されている。
【0079】
また、前記切除領域62の前記側縁部の反対側の側縁部に位置決めボス35が設けられている。
基板51には、位置決めボス35に対応して位置決め孔53が設けられ、位置決め突条34に対応して位置決め溝54が設けられている。
位置決め孔53に位置決めボス35が挿入された状態では、基板51に対して、位置決め孔53を中心として成形品30aが相対的に回転可能となり、位置決め溝54に位置決め突条34が挿入された状態では、基板51に対して、位置決め溝54に沿って相対的に成形品30aがスライド移動可能なるが、位置決め孔53に位置決めボス35が挿入され、かつ、位置決め溝54に位置決め突条34が挿入されることで、前記回転移動と前記スライド移動が規制されて、基板51に成形品30aが位置決めされる。
【0080】
図9から図13に示すように、上記成形品30を射出成形するための射出成形装置の金型70は、固定側金型71と可動側金型72とを備えている。
固定側金型71は、固定側取付板81とこの固定側取付板81に複数の受け板82,83を介して取り付けられた固定側型板(キャビティプレート)84とを備えている。固定側型板84と受け板83との間には、断熱板85が介在されている。固定側型板84には、入れ子86が設けられており、この入れ子86の前面には、図3に示す成形品30全体を成形するための成形面80が形成されている。この成形面80は、略平坦な面で成形品30の各光学素子部14の光学的機能部11に対応する部分が掘り込まれて凹部となっている。また、固定側型板84には、図12に示すように4つの入れ子86が配置されており、4つの成形面80が設けられている。また、成形面80は、成形品本体部31を形成する固定側キャビティ31aと、固定側ランナ32aと、固定側スプルー33aとからなる。
【0081】
また、入れ子86の中央部には、樹脂の流入通路である概略切頭円錐状のスプルー33aが形成されており、このスプルー33aには、スプルーユニット91等に形成された樹脂の流入通路92が連通しており、固定側取付板81に固定されたブッシュ93内に樹脂注入機のノズルから射出された樹脂が流入通路92を通してスプルー33a内に送られる。前記断熱板85は、樹脂成形品形成部の熱が固定側受け板83側に伝わるのを抑制して、流入通路92内の樹脂の流動性を確保するように機能している。また、同様の目的のために、スプルーユニット91等は水冷用配管等により水冷されている。
固定側型板84には、可動側型板77側に突出するガイドピン87が設けられている。
【0082】
また、可動側金型72は、可動側取付板73とこの可動側取付板73に複数の受け板74,75,76を介して取り付けられた可動側型板(コアプレート)77とを備えている。受け板75と受け板76との間には、断熱板79が介在されている。可動側型板77には、概略円柱状の入れ子78が設けられており、この入れ子78の前面には、図3に示す成形品30全体を成形するための成形面90が形成されている。この成形面90は、入れ子78の平坦な前面の一部が掘り込まれて形成され、成形品30に対応する凹部となっている。また、成形面90は、成形品本体部31に対応する可動側キャビティ31b、可動側ランナ32b、可動側スプルー33bからなる。
固定側キャビティ31aと可動側キャビティ31bとから上述のキャビティ31cが構成され、固定側ランナ32aと可動側ランナ32bとから上述のランナ32cが構成され、固定側スプルー33aと可動側スプルー33bとから上述のスプルー33cが構成される。
また、可動側型板77には、固定側型板84のガイドピン87が挿入されるガイドブッシュ88が設けられ、ガイドブッシュ88にガイドピン87が挿入されることで、固定側型板84と可動側型板77とが位置を合わせられる。
【0083】
入れ子78は、可動側型板77の円柱状の貫通孔94、受け板76の円柱状の貫通孔95、断熱板79の円柱状の貫通孔96および受け板75の円柱状の貫通孔97に亘って挿入されている。また、貫通孔94、貫通孔95、貫通孔96および貫通孔97の内周面と、入れ子78の外周面との間には、少しだけ隙間が設けられている。この入れ子78は、可動側型板77の貫通孔94および受け板76の貫通孔95にそれぞれ、Oリング(弾性部材)98,99を介して嵌合されており、これにより入れ子78の半径方向の位置が固定されている。各Oリング98,99はそれぞれ、入れ子78の外周面に形成されたOリング用の溝に装着されている。
【0084】
また、入れ子78の前後方向(型合わせ面側を前側としている。)の中央部には、側方外方に突出する円板状の鍔部78aが形成されている。一方、受け板76の貫通孔95の後端側には、貫通孔95および受け板76の後面に開口する円環状の切欠部100が形成されており、この切欠部100内に入れ子78の鍔部78aが挿入されている。この鍔部78aの前後にそれぞれ、円環状のスペーサ101,102が配置され、切欠部100の前側の内面と断熱板79の前面とでこれらのスペーサ101,102を挟まれることにより、鍔部78aがスペーサ101,102で挟まれている。この場合、鍔部78aおよびスペーサ101,102の幅寸法の合計が切欠部100の幅寸法(奥行き寸法)よりも若干小さく設定されている。スペーサ101,102は、ベイクライト等の摩擦係数の小さい低摩擦材料からなり、鍔部78aは、これらのスペーサ101,102の間で、半径方向にすべり移動可能である。樹脂の射出時に入れ子78が後面側に押されるが、このとき入れ子78の鍔部78aの後面がスペーサ102の前面に当接されるので、入れ子78の前後方向(軸方向)の位置(したがって入れ子78の前面の成形品30を形成するための成形面90の位置)は、断熱板79の前面に当接されるスペーサ102の幅寸法によって決められる。また、鍔部78aの外径寸法は、切欠部100の半径方向の内面の径より小さく設定されており、鍔部78aの外周側には隙間が設けられている。
【0085】
また、入れ子78の後面には、超音波振動子104が取り付けられている。この超音波振動子104前面中央部にはボルト部105が設けられており、このボルト部105が入れ子78の後面の中央に形成された雌ねじ孔78bにセラミック等の断熱性材料からなる座金106を介してねじ込まれている。断熱性の座金106を用いることにより、樹脂成形品形成部の熱が超音波振動子104に伝わるのを抑制している。同様の目的で、前記断熱板79が受け板75,76の間に介在されている。超音波振動子104は、複数の圧電素子107を有するもので、交流電圧を加えると先端部分が高速振動し、これにより入れ子78を高速振動させるものである。この超音波振動子104は、例えば発振周波数が27kHz程度で、振動振幅が10μm程度に設定される。この場合入れ子78はホーンとして機能し、入れ子78は、前後方向においては前面部および後面部で最大の振幅になり、鍔部78aで振幅が0(零)になり、半径方向においては鍔部78aで振幅が最大になるようになっている。
【0086】
次に、光学素子10の製造方法を説明する。
光学素子10を所望の光学特性や取り付け構造に対応して設計する。
次に、成形品30の形状を設計する。この際には、光学素子10の形状を考慮して、光学素子部14の縦横の配列数、縦横の配列における隣り合う光学素子部14間の距離(切断代16の厚み)を決定する。なお、これらは、例えば、光学素子部14の形状に基づく成形品30の厚み(縦横の配列方向の両方に直交する方向の長さ)に適した成形品30の縦横方向の長さを決定し、それに基づいて縦横方向の光学素子部14の配列数を決定する。
【0087】
実際には、実験やシミュレーションに基づいて、成形品の強度が高く、気泡を巻き込み難い形状となるように、光学素子10の形状を考慮して、光学素子部14の縦横の配列数、縦横の配列における隣り合う光学素子部14間の距離を決定する。これにより、成形品30の隣り合う光学素子部14どうしの間で、光学素子部14を分離する際に取り除かれる除去部としての切断代16の形状が決定される。
なお、成形品30の形状を決定する際には、成形品30を成形する金型70の成形面80,90の形状も考慮する必要があり、スプルー33c、ランナ32c、キャビティ31cの配置等も決定される。
また、光学素子部14の配列においては、必ずしも横の列数が全て同じとし、縦の列数が全て同じとして成形品本体部31が概略矩形状とする必要はなく、例えば、図3において、ランナ部32から遠ざかるにつれて幅が広がるように縦の列の光学素子部14の数を順次増やしたり、ランナ部32から遠ざかるにつれて狭まるように縦の列の光学素子部14の数を順次減らしたりしてもよい。
【0088】
また、光学素子部14の形状は、矩形に限られるものではなく、他の形状であってもよいが、この場合には、例えば、曲線に沿った切断が可能なレーザー加工等の切断方法で、光学素子部14を切り離す必要がある。
成形品30および金型70の成形面80,90の設計が終了した後に、金型70の入れ子78,86を製造し、金型70を組む。
【0089】
この金型70を用いて成形品30の成形を行う。この際には、ブッシュ93ないに樹脂注入機のノズルから射出された樹脂がスプルーユニット91の流入通路92を通してスプルー33a内に送られ、この樹脂がランナ32a,32bを介してキャビティ31a,31b(31c)内に送られる。図4に示すようにキャビティ31c内に樹脂が充填された後に、固定側金型71から可動側金型72を離して型開きする。この型開き動作中または型開き後に、超音波振動子104で入れ子78を振動させる。これにより、入れ子78に密着している成形品30と入れ子78との間に空気層が形成され、入れ子78から成形品30が離型される。
【0090】
なお、入れ子78は、可動側型板77および受け板76にそれぞれ、弾性部材であるOリング98,99を介して保持されているので、入れ子78と可動側型板77および受け板76との間にそれぞれ、隙間が形成されているため、入れ子78は樹脂の射出、硬化により成形品30が形成されるときには精密な位置を確保できるとともに、離型時には超音波振動可能である。
また、入れ子78の鍔部78aは、半径方向の振幅が最大になる部分であるが、鍔部78a外周側に隙間が設けられているので、鍔部78aがスペーサ101,102の間で半径方向にすべり移動して超音波振動することが可能である。
【0091】
次いで、図示しない取出機の取出ヘッドを下降させた後、取出ヘッドを前進させ(可動側金型72に接近させ)、その後取出ヘッドのチャックで成形品30のスプルー部33を把持する。
次いで、取出ヘッドを後退させ(可動側金型72から離間させ)、その後上昇させて、固定側金型71と可動側金型72との間から外部に位置させる。
【0092】
次に、成形品30を切断代16で格子状に切断するものとしてもよいが、上述のように成形品30を切断する前に、LED素子50が縦横に配列された基板51に接着する。
この際には、シリコーン系やエポキシ系など従来の接着剤を用いることができる。
なお、接着強度、熱伝導性、熱膨張率、屈折率などの接着剤の特性は、光学デバイスの用途、使用条件に応じて、選択すれば良い。
また、接着剤として接着性を持つ封止材料を用いても良い。
【0093】
接着剤による接着固化方法は、嫌気タイプ、熱硬化タイプ、光硬化タイプなど従来の方法を用いることができる。
特にシリコーン材料の場合は高い耐熱性、耐UV性があるため、熱硬化タイプやUV硬化タイプを用いることができる。
成形品30と基板51が接着された後に、これらを成形品30の切断代16に沿って切断する。これにより、成形品30が分離されて光学素子10が設けられた状態となるとともに、光学素子10が既に光学装置としての発光装置に組み込まれた状態となる。
【0094】
この光学素子10、成形品30および光学素子10の製造方法にあっては、上述のように離型時の変形や破損を抑制することができるとともに気泡が残るのを防止することができる。これにより、良好な光学特性を有する光学素子を高い歩留まりで製造することが可能となる。また、光学素子10を備える光学装置(発光装置)の製造を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0095】
図14は、成形品本体部31の変形例である成形品本体部31m示すもので、成形品本体部31の切断代16部分のLED素子50側の面と、その反対側の面とに溝17を設けたものである。
この成形品本体部31mによれば、光学素子部14どうしの間の切断代16部分で切断する際に、溝17に沿って切断することが可能となり、光学素子部14どうしの間の切断代16部分での切断を容易とすることができる。
【0096】
図15は、成形品本体部31の別の変形例である成形品本体部31nを示すもので、成形品本体部31の切断代16部分にスリット18を設けたものである。こ場合も切断代16にスリット18を設けたことにより、光学素子部14どうしの間の切断を容易とすることができる。
【0097】
ただし、成形品本体部31m、31nの成形に際し、金型70に溝17やスリット18を設ける構成とした場合に、その部分での透明熱硬化性樹脂材料の流路断面積が減少することになり、樹脂材料の流動に悪影響を与える場合は、溝17やスリット18を設けない方が好ましい。また、キャビティ31c内の樹脂材料の流動性を制御するために、樹脂材料の流路断面積の調整として、切断代16部分に溝17やスリット18を設けるものとしてもよい。
【0098】
図16は、成形品本体部31のさらに別の変形例である成形品本体部31oを示すものである。成形品本体部31oは、その周囲に切除領域62が形成されている。この切除領域は、切除領域62を有する成形品30aから光学素子部14を切り離して光学素子10とする際に、切除される領域である。この切除領域62は、成形時に成形品30aの最外周部の補強のためと、気泡を巻き込んだ場合に光学素子部14部分より外側の切除領域62に気泡を追い出すために設けられたものである。
【0099】
例えば、図2に示す成形品本体部31においては、光学素子部14どうしが隣り合う部分では、外周筒部12b部分の厚みが二つの光学素子部14の外周筒部12bの厚みに切断代16を加えたものとなり、単独の光学素子10の外周筒部12bの厚みの2倍以上となるが、成形品30の最外周部の光学素子部14の外周側の側面には、隣り合う光学素子部14が存在せず、この部分では、外周筒部12bの厚みが単独の光学素子10の外周筒部12bの厚みと同様となる。そこで、成形品本体部31の周囲に切除領域62を設けることで、成形品本体部31oの最外周部の外周筒部12b部分の厚みを、外周筒部12bと切除領域62とを合わせた厚みとして、成形品本体部31oの最外周部の補強を行うことが可能となり、離型時に成形品本体部31oの最外周部での変形および破損を防止することができる。
【0100】
また、図4に示すように、キャビティ31cにおいては、例えば、ランナ32cの反対側となる側縁部分に最後に樹脂が充填される状態となる可能性が高く、この部分に気泡bが残る可能性が高いが、その最外周部に光学素子部14ではなく、光学素子部14を切り離す際に切り離されて切除される切除領域62が設けられているので、気泡bは、切除領域62に移動する可能性が高く、成形品本体部31oの光学素子部14に気泡が残るのを防止することができる。
【0101】
また、図16では、成形品本体部31oの全周に渡って切除領域62を設けたが、必ずしも全周に設ける必要はなく、例えば、ランナ部32が接続される部分に切除領域62を設けないものとしてもよいし、図4において気泡が残り易いランナ部32の反対側の側縁にだけ切除領域62を設ける構成としてもよい。また、実際に成形を行った過去の結果などから、成形品本体部31oの外周部のうちの変形や破損が生じ易い部位や、気泡が含まれ易い部位の周囲にだけ切除領域62を設けるものとしてもよい。
このように成形品本体部31oの全周ではなく、外周の一部に切除領域62を設けることで、価格が透明熱可塑性樹脂に比較して高価な透明熱硬化性樹脂の使用量の増加を抑え、コストの低減を図ることができる。なお、成形品本体部31oの全周に切除領域62を設ける場合でも、一部に設ける場合でも材料コストを低減する上では、例えば、切除領域62の幅を狭くするなどして、材料の使用量を最小限度にすることが好ましい。また、成形品本体部31oの外周の位置によって、切除領域62の幅を異なるものとしてもよい。
【0102】
図17は、上述のようにLED素子50を備えた基板51に成形品30を取り付けた後に、基板51と成形品30とを一緒に切断することにより分離された光学素子10とLED基板52とからなる発光装置20を示すものであるとともに、光学素子10の変形例を示すものとなっている。なお、変形例となる各光学素子10を切り離すとともに、各LED基板52を切り離した後に、これら個々のLED基板52に個々の光学素子10を取り付けるものとしてもよい。
変形例となる光学素子10は、基本的に上述の光学素子10と同様のものであるが、その表面に周知の反射防止構造21と周知の反射構造22が設けられている。
【0103】
反射防止構造21を設けることによって、光学素子10表面での反射損失が抑えられて光を効率良く利用できる。また、反射防止構造は、ARコーティング(反射防止膜)やフィルム、微細パターンによる反射防止構造などが適用できる。ARコーティングの場合、スパッタや蒸着、塗布による方法があり、そのいずれも適用できる。光学素子10自身は耐熱性を求められているものであり、例えば、プリント基板への表面実装に際して上述のリフロー工程を通した後でも機能が損なわれない必要がある。しかし、通常のスパッタや蒸着によるARコーティングでは、樹脂とコーティングの熱膨張差によってクラックや剥離が発生しやすいため、リフロー工程を経るような場合には、塗布によるARコーティングや微細パターンによる反射防止構造が望ましい。
【0104】
また、部分的に反射構造22を設けて不要な部分に光が照射しないようにしても良い。
これにより例えば照明用途の光学素子10であれば、所望の照射範囲だけを照らすようにすることができる。なお、不要な部分への光の照射を遮る構造としては、反射構造22に限られるものではなく、光を拡散する拡散構造や光を吸収する吸収構造であってもよい。
これら拡散構造・吸収構造・反射構造22としては、シボや墨塗り、微細パターン、メッキやスパッタによる金属膜などがある。
また、2色成形や貼付け等で高屈折層を設けて、反射機能を持たせることもできる。
反射構造22においては、例えばチップの周囲に反射膜を設けることで、不必要な部分に放出された光を光学的機能部11に反射させれば光を有効に利用することができる。
【0105】
図17に示すように、光学的機能部11のLED素子50側の面と、LED素子50の反対側となる面とに反射防止構造21を設けることで、光学的機能部11における光の透過率を高めることができる。
また、外周部12のLED素子50側の面と、LED素子50の反対側となる面とに反射構造22を設けることにより、光を反射させて光学的機能部11に至る光の量を増やすことができる。
【0106】
また、反射防止構造21および反射構造22は、基本的に使用されるLED素子50が発光する光の波長に対応したものである必要がある。
また、反射防止構造21および反射構造22を設けるのは、成形品30から光学素子部14を分離する前とすることが好ましい。成形品30では、光学素子部14が所定配列で互いに近接して並んだ状態となっているので、個々の分離された光学素子10に反射防止構造21および反射構造22を形成するよりも容易に形成することができる。
なお、反射防止構造21だけを設けるものとしてもよいし、反射構造22だけを設けるものとしてもよい。
【0107】
次の、本発明の第2実施形態を説明する。
図18に示すように第2実施形態の成形品30bは、スプルー部33pを成形品30bの中央に配置した形状となっている。したがって、金型70の入れ子78cにおいても、スプルーがキャビティの中央に配置された形状となる。また、スプルーの周囲にランナが形成され、ランナの周囲に設けられたキャビティに透明熱硬化性樹脂が放射状に流入することになる。
これにより成形品30bは、中央にスプルー部33pが設けられ、その周囲にランナ部32pが設けられ、ランナ部32pの周囲に成形品本体部31pが設けられた形状となる。このような構造とすることで、上述の成形品30に対してランナ部32pの樹脂量を減少させてコストの低減を図ることができる。
なお、成形品30bは、その中央のランナ部32pおよびスプルー部33pを除く成形品本体部31pにおいて、光学素子部14が縦横に配列されたものであり、これらランナ部32p、スプルー部33pおよび成形品本体部31pの配置以外は、第1実施形態と同様の構造を有するものである。
【0108】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図19に示すように、第3実施形態の成形品30qは、光学素子部14aの形状が第1実施形態と異なる以外は第1実施形態と同様の構造となっている。
第1実施形態の光学素子部14においては、外周部12が外周板部12aと、外周筒部12bとから設けられていたが、第3実施形態の成形品30qの光学素子部14aでは、外周部12dは、外周筒部12bを備えることなく、外周板部12aの部分だけからなっている。
【0109】
したがって、成形品30qの光学素子部14aは、成形品30の光学素子部14のように外周板部12aと外周筒部12bとの角部のような応力が集中する部位がないので、外周部12dを補強する必要がなく、成形品30qのLED素子50側が平面状となっている。ただし、縦横に複数の光学素子部14aが配置されることで、成形品30qの透明熱硬化性樹脂材料が流動する部分の断面積は、従来の一つのキャビティで一つの光学素子部を形成する場合より広くなっており、気泡の巻き込みを防止することができる。
また、光学素子部14aを個々に分離して光学素子とした場合に、LED素子50の周囲を囲う形状とはなっていないが、基板51のLED素子50の周囲には、LED素子50の周囲を囲んだ形状の外周壁55が設けられている。外周壁55は、基板51からLED基板52を個々に切り離す前の状態において、縦横のそれぞれ複数の突条が交差した格子状の形状となっている。第3実施形態においても、成形品30q(成形品本体部31q)を各光学素子部14aに分離せずに、上述の外周壁55を有する基板51に成形品30qもしくは成形品本体部31qを取り付けた後(接着した後)に、光学素子とLED基板52を備えた個々の発光装置に分離するようになっている。
【符号の説明】
【0110】
10 光学素子
11 光学的機能部
12 外周部
14 光学素子部
16 切断代(除去部)
30 成形品
30a 成形品
30b 成形品
30q 成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形された透明熱硬化性樹脂の成形品から複数の光学素子部を切り離して設けられる光学素子であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された前記光学素子部が一体に繋がった形状の成形品が射出成形され、
前記成形品が前記光学素子部間で切り離されて各光学素子部に分離されることにより設けられたことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記光学素子部は、光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備え、
前記成形品は、前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列される形状に成形され、
前記成形品の隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状が、前記光学素子部の縦横への配列数で設定されるとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
透明熱硬化性樹脂が射出成形されて設けられ、かつ、切り離されて光学素子とされる複数の光学素子部が含まれる成形品であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された前記光学素子部が一体に繋がった形状とされていることを特徴とする成形品。
【請求項4】
前記光学素子部は光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備え、
前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列された形状に成形され、
隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状が、前記光学素子部の縦横への配列数で設定されるとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定されていることを特徴とする請求項3に記載の成形品。
【請求項5】
透明熱硬化樹脂を射出成形した成形品から複数の光学素子部を切り離して光学素子を製造する光学素子の製造方法であって、
複数個の前記光学素子部が縦横に配列され、かつ、縦横に配列された光学素子部が一体に繋がった形状の成形品を射出成形し、
前記成形品を前記光学素子部間で切り離して各光学素子部を分離して光学素子とすることを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項6】
前記光学素子部は、光学的機能を有する光学的機能部と、その周囲に一体に設けられた外周部とを備えるものとし、
前記成形品を、前記外周部どうしが隣り合うように前記光学素子部が配列される形状に成形し、
前記成形品の隣り合う前記光学素子部どうしの間で、前記光学素子部を分離する際に取り除かれる除去部の形状を、前記光学素子部の縦横への配列数で設定するとともに、隣り合う前記光学素子部間の距離で設定することを特徴とする請求項5に記載の光学素子の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−206980(P2011−206980A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75577(P2010−75577)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】