光学素子保持体及びこれを用いたステレオ画像撮像装置
【課題】高精度のステレオ画像を撮影できる光学素子保持体を提供する。
【解決手段】長方形の入射面12を有する直方体形状のビームスプリッタ5と、互いに対向し、X軸方向における両端部が嵌合する一対の保持部材8と、保持部材8を互いに近づく方向に押圧するベース部9及びネジ10とを備える。保持部材8の各々は、ビームスプリッタ5の側面を覆う平面部と、平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有する。ビームスプリッタ5の入射面12と対向する第1の出射面と周壁部とのX軸方向の重なり幅が、同方向における入射面12と前記周壁部との重なり幅より大きい。
【解決手段】長方形の入射面12を有する直方体形状のビームスプリッタ5と、互いに対向し、X軸方向における両端部が嵌合する一対の保持部材8と、保持部材8を互いに近づく方向に押圧するベース部9及びネジ10とを備える。保持部材8の各々は、ビームスプリッタ5の側面を覆う平面部と、平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有する。ビームスプリッタ5の入射面12と対向する第1の出射面と周壁部とのX軸方向の重なり幅が、同方向における入射面12と前記周壁部との重なり幅より大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体、及びこれを用いたステレオ画像撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオ画像を撮影するために、図11に示すようなステレオ画像撮像装置900が用いられることがある。ステレオ画像撮像装置900は、左眼用カメラ910と、右眼用カメラ920と、平板状のハーフミラー930とを備える。ハーフミラー930は、入射された光の一部を透過し、他の一部を反射する。左眼用カメラ910は、ハーフミラー930を透過した光学像を撮影し、右眼用カメラ920は、ハーフミラー930で反射された光学像を撮影する。また、左眼用カメラ910は、紙面に垂直方向に移動することができる。これによって、左眼用カメラ910と右眼用撮像装置920とのステレオベースが変えられて、左眼及び右眼の視差量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−312545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したハーフミラー930は平板状であるため、ハーフミラー930のサイズが大きい場合には、自重に起因する撓みが発生する。この結果、当該ハーフミラー930を通過した光や反射した光には、光学像の歪みや光路方向のズレが発生する。そのため、精度の高いステレオ画像を撮影することが困難になるという問題がある。
【0005】
それ故に、本発明は、高精度のステレオ画像を撮影できる光学素子保持体及びこれを用いたステレオ画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体に関する。光学素子保持体は、長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、互いに対向するように配置され、ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態でビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備える。保持部材の各々は、ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有する。ビームスプリッタの長手方向における対向面と周壁部との重なり幅が、同方向における入射面と周壁部との重なり幅より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学素子保持体を用いると、光学像の歪みや光路方向のズレを防止でき、高精度なステレオ画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図2】図1に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図3】図1に示す光学素子保持体の分解斜視図
【図4A】入射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図
【図4B】出射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図
【図5】図1に示すステレオ画像撮像装置のV−Vラインに沿った断面図
【図6】図1に示すステレオ画像撮像装置のVI−VIラインに沿った断面図
【図7】本発明の第2の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図8】図7に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図9】本発明の第3の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図10】図9に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図11】従来のステレオ画像撮像装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図2は、図1に示すステレオ画像撮像装置の側面図であり、図3は、図1に示す光学素子保持体の分解斜視図である。尚、以下においては、ビームスプリッタの入射面の長辺が延びる方向をX軸方向とし、短辺が延びる方向をZ軸方向とする。
【0010】
ステレオ画像撮像装置1は、立体画像を撮影するためのものであり、光学素子保持体2と、左眼用の光学像を撮影する第1のカメラ3と、右眼用の光学像を撮影する第2のカメラ4とを備える。第1のカメラ3と第2のカメラ4とは、光学系の光軸がY軸と平行となるように(入射面12と直交するように)配置されている。
【0011】
光学素子保持体2は、光を2方向に分岐するビームスプリッタ5と、ビームスプリッタ5によって折り曲げられた光を更に反射し、当該反射した光学像を第2のカメラ4に導く直角プリズム7と、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7を保持する一対の保持部材8と、保持部材8を互いに近づく方向(図1の白抜き矢印方向)に押圧するベース部材9及びネジ10とを有する。
【0012】
図4Aは、入射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図であり、図4Bは、第1の出射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図である。
【0013】
ビームスプリッタ5は、直方体のプリズム型ビームスプリッタであり、内部に設けられる光学機能面11と、光が入射する長方形の入射面12と、入射面12に対向し、光学機能面11を透過した光が出射される第1の出射面13と、ビームスプリッタ5の上面であって、光学機能面11で折り曲げられた光が出射される第2の出射面25とを有する。光学機能面11はハーフミラーであり、入射面12からの入射光の一部を透過し、入射光の他の一部をZ軸正方向に反射する。また、光学機能面11は、入射面12に対して正確に45度の角度をなすように、ビームスプリッタ5内部に設けられている。尚、入射面12は、全域に渡って光が透過するように、全面が透明に形成されている。また、第1の出射面13においては、図4Bの第1の出射面13の4隅のハッチングで示す領域を遮光することで、第1のカメラ3の光学系を通過しない不要な光を遮光している。また、第2の出射面25においては、第2のカメラの光学系の画角内を通過する光束を透過させる円状の反射光路用透明部14が設けられ、反射光路用透明部14を除く全領域(ハッチング領域)が遮光されている。このように、ビームスプリッタ5において、撮影される光が出射する領域以外の表面を遮光することで、ビームスプリッタ5内に不要な光が入り込むことを抑制できる。
【0014】
尚、ビームスプリッタ5は、YZ平面と平行な断面が直角2等辺三角形である直角プリズムの斜面どうしを貼り合わせて作製される。直角プリズムの各面は研磨によって精密に面出しが施されているため、張り合わせ後に、隣接する側面同士が正確に直交する直方体プリズム型ビームスプリッタが作製される。また、直角プリズムの斜面には金属蒸着面が形成されている。この金属蒸着面が光学機能面として機能する。
【0015】
図1〜3に戻って、直角プリズム7は、ビームスプリッタ5で反射された光の一部を反射する反射面6と、XZ平面に平行な出射面15とを有する。直角プリズム7は、反射面
6である斜面を斜め上に向け、かつ、出射面15をY軸負方向に向けた状態で、ビームスプリッタ5の上方に支持される。そして、光学機能面11によって反射された光の一部は、反射面6によってY軸負方向に折り曲げられ、出射面15から出射される。
【0016】
次に、再び図1〜3を用いて、保持部材8、ベース部材9及びネジ10について説明する。
【0017】
一対の保持部材8は、互いに対向するように配置され、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のX軸方向における両端部(図1のハッチングで示す部分)を保持するものである。一対の保持部材8の各々は、互いに鏡像対称となるように形成されており、例えば、樹脂板の切削加工によって作製される。図3に示すように、一対の保持部材8の各々には、凹部が形成されており、ビームスプリッタ5の両端部と、直角プリズム7の両端部とが嵌め込まれている。より詳細には、保持部材8の各々には、ビームスプリッタ5の側面及び直角プリズム7の側面を覆う平面部16及び17と、平面部16及び17の周縁から立ち上がる周壁部18及び19とを有する。尚、ビームスプリッタ5と周壁部18との重なり幅については後述する。
【0018】
ベース部材9は、ビームスプリッタ5の底面を支持する板材である。X軸方向におけるベース部材9の端面には、保持部材8をネジ止めするためのネジ穴20が設けられている。
【0019】
ネジ10は、保持部材8を貫通してネジ穴20にねじ込まれ、一対の保持部材8を互いに近づく方向に押圧する。本実施形態においては、ベース部材9とネジ10とで押圧部材を構成している。ネジ10を用いて保持部材7とベース部材9とをネジ止めすると、保持部材8がビームスプリッタ5及び直角プリズム7を図1の白抜き矢印方向に挟み込んだ状態で、保持部材8がベース部9に固定される。従って、ビームスプリッタ5には、側面と平行な方向(図1〜3におけるYZ平面と平行な方向)の力が加わらない。この結果、ビームスプリッタ5の光学機能面11が、剥離したり、破壊されたりすることを防止できる。
【0020】
第1のカメラ3は、光学像を結像する光学系21と、光学系21で結像された光学像を電気信号に変換する撮像素子22とを有する。第1のカメラ3は、光学系21の光軸がY軸方向と一致し、かつ、光学系21を第1の出射面13に向けた状態で配置されている。尚、第1のカメラ3は、図示しない支持機構によって、X軸方向に移動自在に支持されている。これによって、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのX軸方向のステレオベースを変え、左眼及び右眼の視差量を調整することができる。
【0021】
第2のカメラ4は、第1のカメラ3と同様に、光学系23と撮像素子24とを備える。第2のカメラ4には、光学機能面11及び反射面6の各々で折り曲げられた光学像が取り込まれる。ここで、第2のカメラ4は、光学系23の光軸がY軸方向に一致し、かつ、光学系23を出射面15に向けた状態で配置されている。尚、第1のカメラ3を駆動する代わりに、第1のカメラ3を固定して、第2のカメラ4のみをX軸方向に移動しても良い。或いは、第1のカメラ3及び第2のカメラ4の両方をX軸方向に移動自在としても良い。また、第1のカメラ3の光軸上の光路長(1点鎖線で示す)と、第2のカメラの光軸上の光路長(破線で示す)とが等しくなるように、第1のカメラ3は、第2のカメラ4よりY軸負方向にシフトした位置に支持されている。
【0022】
次に、図5及び6を用いて、ビームスプリッタ5と保持部材7の周壁部18との重なり幅について説明する。
【0023】
図5は、図1に示すステレオ画像撮像装置のV−Vラインに沿った断面図であり、図6は、図1に示すステレオ画像撮像装置のVI−VIラインに沿った断面図である。
【0024】
ビームスプリッタ5の第1の出射面13と周壁部18とのX軸方向の重なり幅W1と、同方向における、ビームスプリッタ5の入射面12と周壁部18とのX軸方向の重なり幅W2とは、第1のカメラ3が有する光学系21の画角に応じて設計されている。具体的には、図5に示すように、第1のカメラ3をビームスプリッタ5の端部に最も近い位置に配置した時に、第1のカメラ3の光学系21の画角内を通過する光束(右下がりハッチングで示す)が、周壁18で遮蔽されない範囲で、周壁18のX軸方向の幅が最大となるように、重なり幅W1及びW2の各々が設計されている。そのため、本実施形態では、重なり幅W1は、重なり幅W2より大きく形成されている。尚、図5では、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのステレオベースを最大にした状態が示されているが、図5における左側の重なり幅W1及びW2も同様に設定されている。すなわち、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのステレオベースを最小にした状態で、第1のカメラ3の光学系21の画角内を通過する光束が周壁18で遮蔽されない範囲で最大となるように、図5の左側部分の重なり幅W1及びW2が設定されている。
【0025】
ビームスプリッタ5の前後の位置ズレを抑制するためには、保持部材8が、入射面12と第1の出射面13とに重なった状態でビームスプリッタ5を保持する必要がある。入射面12及び第1の出射面13の長辺近傍を保持する構造を採用した場合、垂直画角方向における入射面12の開口範囲が狭くなってしまう。これに対して、本実施形態では、ビームスプリッタ5の水平画角方向のサイズが垂直画角方向のサイズより余裕があることを利用して、入射面12及び第1の出射面13の短辺近傍を保持している。この結果、ビームスプリッタ5の側面サイズをコンパクトに維持しつつ、ビームスプリッタ5の前後の位置ズレを抑制できる。また、第1の出射面13と周壁部の重なり幅W1(図5)を可能な範囲で大きくすることによって、ビームスプリッタ5をより安定して保持することができる。
【0026】
また、図6に示すように、第2の出射面25と周壁部18とは、重なり幅W3でX軸方向に重なっている。尚、重なり幅W3は、光学機能面11で折り曲げられた光が周壁部18で遮蔽されない大きさに設計されている。具体的には、重なり幅W3は、図5に示した重なり幅W1と同寸法に設計されている。更に、直角プリズム7と周壁部19とは、直角プリズム7の全周に渡り、重なり幅W4でX軸方向に重なっている。尚、本実施形態では、重なり幅W4は重なり幅W3と同寸法に設計されている。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置1では、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7が、保持部材8によって支持されている。また、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のX軸方向の両端部が周壁部18及び19の内部に嵌め込まれているため、X軸、Y軸及びZ軸方向のいずれに対しても、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のガタつきが防止される。そして、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7は剛性が高いため、自重によって撓むこともない。この結果、光学素子保持体2で分岐された光には、光学像の歪みや光路方向のズレが発生しない。従って、精度の高いステレオ画像を撮影することができる。更に、ステレオ画像撮像装置1では、屈折率が空気より大きな材質よりなるビームスプリッタ5及び直角プリズム7を設けることで、入射面12からカメラの入射面までの光路長を短くすることができる。この結果、ステレオ画像撮像装置1の光軸方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0028】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図8は、図7に示すステレオ画像撮像装置の側面図である。以下、本実施形態と第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0029】
まず、本実施形態のプリズム7の配置が第1の実施形態と異なる。より詳細には、プリズム7は、ビームスプリッタ5の上方において、反射面6がビームスプリッタ5の光学機能面11と平行となるように配置されている。したがって、ビームスプリッタ5の光学機能面11によってX軸方向に折り曲げられた光は、直角プリズム7の内部を通過することなく、反射面6の表面で反射されて第2のカメラ4へと導かれる。第1の実施形態では、小型化のために、ビームスプリッタ5と第1のカメラ3との距離、直角プリズム7と第2のカメラ4との距離を詰めていくと、直角プリズム7の出射面15に第2のカメラ4が接触する位置関係が限界点の一つとなる。これに対して、第2の実施形態では、直角プリズム7の反射面6を第2のカメラ4側に向けることによって、上述の限界点が緩和されるので、第1の実施形態より全体として小型化が可能な場合がある。
【0030】
次に、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置31は、第2のカメラ4を載置するための平板32を更に備える。平板32は、光学素子保持体2を構成する保持部材8によって支持される。保持部材8には、ビームスプリッタ5を嵌め込むための凹部と、直角プリズムを嵌め込むための凹部との間に、Y軸方向に延びる溝33が更に設けられる。平板32は、図7に示すように、対向する側面の一部を溝33に嵌合させることによって保持部材8に取り付けられている。溝33は、平板32の上面とビームスプリッタ5の第2の出射面25とを平行に保持できるように形成されている。このような嵌合構造を採用することにより、平板32を保持部材8に確実に固定することができると共に、平板32の上面位置を精度良く決めることが可能となる。尚、平板32には、ビームスプリッタ5から直角プリズム7に至る光を遮らずに通過させる窓部34が設けられている。
【0031】
平板32は、図7に示すように、ネジ35によって保持部材8にネジ止めされている。保持部材8にネジ止めされた平板32は、ベース部材9及びネジ10の組み合わせと同じ機能を発揮し、ビームスプリッタ5の光学機能面11に損傷を与えることなく、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の確実な保持に寄与する。
【0032】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図10は、図9に示すステレオ画像撮像装置の側面図である。以下、本実施形態と第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
まず、本実施形態では、第1の実施形態と比べて、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の位置が逆になっている。すなわち、ビームスプリッタ5が第2のカメラ4の前方に配置され、直角プリズム7が第1のカメラ3の前方に配置される。ビームスプリッタ5の入射面12から入射した光の一部は、光学機能面11を透過して出射面13から出射され、第2のカメラ4に入射する。ビームスプリッタ5の入射面12から入射した光の残りは、光学機能面11によってZ軸負方向に反射された後、平板32の窓部34を通過し、直角プリズム7の反射面6によってY軸負方向に反射され、第1のカメラ3に入射する。
【0034】
次に、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置37では、右眼用画像を撮影するための第2のカメラ4がプリズム5の長手方向(X軸方向)に平行移動可能であり、第2のカメラ4を平行移動させる機構が更に設けられている。具体的には、ステレオ画像撮像装置37は、平板32の上面に取り付けられるステージ38と、ステージ38上に取り付けられるスライダー39と、スライダー39に取り付けられ、第2のカメラ4が取り付けられる取り付けプレート40とを更に備える。スライダー39は、ステージ38上に敷設されるレール41と、レール41に係合し、レール41に沿ってX軸方向に摺動自在なスライド部材42とを含む。
【0035】
第2の実施形態で説明したように、平板32は、保持部材8の溝33への嵌め込みによって、上面がビームスプリッタ5の第2の出射面25と平行となるように保持部材8に固定されている。平板32の上面は、ステージ38及びスライダー39を載置するための基準面となる。平板32の上面の配置は、保持部材8によってビームスプリッタ5の面を基準として正確に決められているので、スライダー39を介した第2のカメラ4の平行移動の精度を確保することができる。
【0036】
尚、上記の第1〜第3の実施形態に係る光学素子保持体2は直角プリズム7を有するが、直角プリズム7を用いるか否かは任意である。例えば、直角プリズム7を用いずに、第2の出射面25に対向し、かつ、光学系23の光軸を垂直方向(Z軸方向)に一致させた状態で、第2のカメラ4を配置しても良い。
【0037】
また、上記の第1〜第3の実施形態に係る保持部材は、ビームスプリッタ5と直角プリズム7とを一体的に保持しているが、ビームスプリッタ5のみを保持して、直角プリズム7は別の保持機構を用いて保持しても良い。
【0038】
更に、上記の第1〜第3の実施形態では、第1のカメラ3が左眼用画像を撮影し、第2のカメラ4が右眼用画像を撮影しているが、第1のカメラ3及び第2のカメラ4の左右を逆にしても良い。
【0039】
更に、上記の第1〜第3の実施形態では、ビームスプリッタ5で折り曲げられた光を第2のカメラ4に導くために直角プリズム7を用いているが、直角プリズム7の代わりに、ミラーを用いることも可能である。直角プリズム7に代えてミラーを用いる場合も同様に、ミラーの対向する側辺部分を嵌め込んで保持できるように、一対の保持部材8に凹部を設ければ良い。
【0040】
また、ミラーを用いる場合は、直角プリズム7の反射面6をミラー(反射膜)としたものを作製し、直角プリズム7の各辺を剛性のある支持部材で構成するようにしても構わない。この場合、ミラーを構成する側面の形状は直角二等辺三角形となることが好ましい。
【0041】
更に、上記の第1〜第3の実施形態で説明したように、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の上下の配置は任意であり、各実施形態で具体例として示した、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の配置を逆にしても良い。また、直角プリズム7の反射面6の配置も任意である。したがって、第2及び第3の実施形態において、直角プリズム7を第1の実施形態のように配置しても良い。逆に、第1の実施形態において、直角プリズム7を第2及び第3の実施形態のように配置しても良い。
【0042】
更に、上記の第1の実施形態においても、第2及び第3の実施形態と同様に、保持部材8に溝33と、溝33に嵌合する平板32とを更に設けても良い。逆に、第2及び第3の実施形態に係る構成から、溝33及び平板32をなくしても良い。
【0043】
更に、上記の第3の実施形態では、第2のカメラ4をビームスプリッタ5の長手方向に平行移動させるためのスライド機構を特定したが、これに限定されず、他の構成のスライド機構を採用しても良い。また、スライド機構には、ボールネジまたは送りネジと、モータとを組み合わせた送り機構が設けられていても良い。
【0044】
更に、上記の第1および第2の実施形態に、第3の実施形態で説明したスライド機構を更に追加しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、立体画像を撮影するステレオ画像撮像装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ステレオ撮像装置
2 光学分岐素子
3 第1のカメラ
4 第2のカメラ
5 ビームスプリッタ
6 反射面
7 直角プリズム
8 保持部材
9 ベース部材
10 ネジ
11 光学機能面
12 入射面
13 第1の出射面
14 反射光路用透明部
15 出射面
16、17 平面部
18、19 周壁部
20 ネジ穴
21、23 光学系
22、24 撮像素子
25 第2の出射面
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体、及びこれを用いたステレオ画像撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオ画像を撮影するために、図11に示すようなステレオ画像撮像装置900が用いられることがある。ステレオ画像撮像装置900は、左眼用カメラ910と、右眼用カメラ920と、平板状のハーフミラー930とを備える。ハーフミラー930は、入射された光の一部を透過し、他の一部を反射する。左眼用カメラ910は、ハーフミラー930を透過した光学像を撮影し、右眼用カメラ920は、ハーフミラー930で反射された光学像を撮影する。また、左眼用カメラ910は、紙面に垂直方向に移動することができる。これによって、左眼用カメラ910と右眼用撮像装置920とのステレオベースが変えられて、左眼及び右眼の視差量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−312545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したハーフミラー930は平板状であるため、ハーフミラー930のサイズが大きい場合には、自重に起因する撓みが発生する。この結果、当該ハーフミラー930を通過した光や反射した光には、光学像の歪みや光路方向のズレが発生する。そのため、精度の高いステレオ画像を撮影することが困難になるという問題がある。
【0005】
それ故に、本発明は、高精度のステレオ画像を撮影できる光学素子保持体及びこれを用いたステレオ画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体に関する。光学素子保持体は、長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、互いに対向するように配置され、ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態でビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備える。保持部材の各々は、ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有する。ビームスプリッタの長手方向における対向面と周壁部との重なり幅が、同方向における入射面と周壁部との重なり幅より大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学素子保持体を用いると、光学像の歪みや光路方向のズレを防止でき、高精度なステレオ画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図2】図1に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図3】図1に示す光学素子保持体の分解斜視図
【図4A】入射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図
【図4B】出射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図
【図5】図1に示すステレオ画像撮像装置のV−Vラインに沿った断面図
【図6】図1に示すステレオ画像撮像装置のVI−VIラインに沿った断面図
【図7】本発明の第2の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図8】図7に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図9】本発明の第3の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図
【図10】図9に示すステレオ画像撮像装置の側面図
【図11】従来のステレオ画像撮像装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図2は、図1に示すステレオ画像撮像装置の側面図であり、図3は、図1に示す光学素子保持体の分解斜視図である。尚、以下においては、ビームスプリッタの入射面の長辺が延びる方向をX軸方向とし、短辺が延びる方向をZ軸方向とする。
【0010】
ステレオ画像撮像装置1は、立体画像を撮影するためのものであり、光学素子保持体2と、左眼用の光学像を撮影する第1のカメラ3と、右眼用の光学像を撮影する第2のカメラ4とを備える。第1のカメラ3と第2のカメラ4とは、光学系の光軸がY軸と平行となるように(入射面12と直交するように)配置されている。
【0011】
光学素子保持体2は、光を2方向に分岐するビームスプリッタ5と、ビームスプリッタ5によって折り曲げられた光を更に反射し、当該反射した光学像を第2のカメラ4に導く直角プリズム7と、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7を保持する一対の保持部材8と、保持部材8を互いに近づく方向(図1の白抜き矢印方向)に押圧するベース部材9及びネジ10とを有する。
【0012】
図4Aは、入射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図であり、図4Bは、第1の出射面を手前にしたビームスプリッタの斜視図である。
【0013】
ビームスプリッタ5は、直方体のプリズム型ビームスプリッタであり、内部に設けられる光学機能面11と、光が入射する長方形の入射面12と、入射面12に対向し、光学機能面11を透過した光が出射される第1の出射面13と、ビームスプリッタ5の上面であって、光学機能面11で折り曲げられた光が出射される第2の出射面25とを有する。光学機能面11はハーフミラーであり、入射面12からの入射光の一部を透過し、入射光の他の一部をZ軸正方向に反射する。また、光学機能面11は、入射面12に対して正確に45度の角度をなすように、ビームスプリッタ5内部に設けられている。尚、入射面12は、全域に渡って光が透過するように、全面が透明に形成されている。また、第1の出射面13においては、図4Bの第1の出射面13の4隅のハッチングで示す領域を遮光することで、第1のカメラ3の光学系を通過しない不要な光を遮光している。また、第2の出射面25においては、第2のカメラの光学系の画角内を通過する光束を透過させる円状の反射光路用透明部14が設けられ、反射光路用透明部14を除く全領域(ハッチング領域)が遮光されている。このように、ビームスプリッタ5において、撮影される光が出射する領域以外の表面を遮光することで、ビームスプリッタ5内に不要な光が入り込むことを抑制できる。
【0014】
尚、ビームスプリッタ5は、YZ平面と平行な断面が直角2等辺三角形である直角プリズムの斜面どうしを貼り合わせて作製される。直角プリズムの各面は研磨によって精密に面出しが施されているため、張り合わせ後に、隣接する側面同士が正確に直交する直方体プリズム型ビームスプリッタが作製される。また、直角プリズムの斜面には金属蒸着面が形成されている。この金属蒸着面が光学機能面として機能する。
【0015】
図1〜3に戻って、直角プリズム7は、ビームスプリッタ5で反射された光の一部を反射する反射面6と、XZ平面に平行な出射面15とを有する。直角プリズム7は、反射面
6である斜面を斜め上に向け、かつ、出射面15をY軸負方向に向けた状態で、ビームスプリッタ5の上方に支持される。そして、光学機能面11によって反射された光の一部は、反射面6によってY軸負方向に折り曲げられ、出射面15から出射される。
【0016】
次に、再び図1〜3を用いて、保持部材8、ベース部材9及びネジ10について説明する。
【0017】
一対の保持部材8は、互いに対向するように配置され、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のX軸方向における両端部(図1のハッチングで示す部分)を保持するものである。一対の保持部材8の各々は、互いに鏡像対称となるように形成されており、例えば、樹脂板の切削加工によって作製される。図3に示すように、一対の保持部材8の各々には、凹部が形成されており、ビームスプリッタ5の両端部と、直角プリズム7の両端部とが嵌め込まれている。より詳細には、保持部材8の各々には、ビームスプリッタ5の側面及び直角プリズム7の側面を覆う平面部16及び17と、平面部16及び17の周縁から立ち上がる周壁部18及び19とを有する。尚、ビームスプリッタ5と周壁部18との重なり幅については後述する。
【0018】
ベース部材9は、ビームスプリッタ5の底面を支持する板材である。X軸方向におけるベース部材9の端面には、保持部材8をネジ止めするためのネジ穴20が設けられている。
【0019】
ネジ10は、保持部材8を貫通してネジ穴20にねじ込まれ、一対の保持部材8を互いに近づく方向に押圧する。本実施形態においては、ベース部材9とネジ10とで押圧部材を構成している。ネジ10を用いて保持部材7とベース部材9とをネジ止めすると、保持部材8がビームスプリッタ5及び直角プリズム7を図1の白抜き矢印方向に挟み込んだ状態で、保持部材8がベース部9に固定される。従って、ビームスプリッタ5には、側面と平行な方向(図1〜3におけるYZ平面と平行な方向)の力が加わらない。この結果、ビームスプリッタ5の光学機能面11が、剥離したり、破壊されたりすることを防止できる。
【0020】
第1のカメラ3は、光学像を結像する光学系21と、光学系21で結像された光学像を電気信号に変換する撮像素子22とを有する。第1のカメラ3は、光学系21の光軸がY軸方向と一致し、かつ、光学系21を第1の出射面13に向けた状態で配置されている。尚、第1のカメラ3は、図示しない支持機構によって、X軸方向に移動自在に支持されている。これによって、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのX軸方向のステレオベースを変え、左眼及び右眼の視差量を調整することができる。
【0021】
第2のカメラ4は、第1のカメラ3と同様に、光学系23と撮像素子24とを備える。第2のカメラ4には、光学機能面11及び反射面6の各々で折り曲げられた光学像が取り込まれる。ここで、第2のカメラ4は、光学系23の光軸がY軸方向に一致し、かつ、光学系23を出射面15に向けた状態で配置されている。尚、第1のカメラ3を駆動する代わりに、第1のカメラ3を固定して、第2のカメラ4のみをX軸方向に移動しても良い。或いは、第1のカメラ3及び第2のカメラ4の両方をX軸方向に移動自在としても良い。また、第1のカメラ3の光軸上の光路長(1点鎖線で示す)と、第2のカメラの光軸上の光路長(破線で示す)とが等しくなるように、第1のカメラ3は、第2のカメラ4よりY軸負方向にシフトした位置に支持されている。
【0022】
次に、図5及び6を用いて、ビームスプリッタ5と保持部材7の周壁部18との重なり幅について説明する。
【0023】
図5は、図1に示すステレオ画像撮像装置のV−Vラインに沿った断面図であり、図6は、図1に示すステレオ画像撮像装置のVI−VIラインに沿った断面図である。
【0024】
ビームスプリッタ5の第1の出射面13と周壁部18とのX軸方向の重なり幅W1と、同方向における、ビームスプリッタ5の入射面12と周壁部18とのX軸方向の重なり幅W2とは、第1のカメラ3が有する光学系21の画角に応じて設計されている。具体的には、図5に示すように、第1のカメラ3をビームスプリッタ5の端部に最も近い位置に配置した時に、第1のカメラ3の光学系21の画角内を通過する光束(右下がりハッチングで示す)が、周壁18で遮蔽されない範囲で、周壁18のX軸方向の幅が最大となるように、重なり幅W1及びW2の各々が設計されている。そのため、本実施形態では、重なり幅W1は、重なり幅W2より大きく形成されている。尚、図5では、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのステレオベースを最大にした状態が示されているが、図5における左側の重なり幅W1及びW2も同様に設定されている。すなわち、第1のカメラ3と第2のカメラ4とのステレオベースを最小にした状態で、第1のカメラ3の光学系21の画角内を通過する光束が周壁18で遮蔽されない範囲で最大となるように、図5の左側部分の重なり幅W1及びW2が設定されている。
【0025】
ビームスプリッタ5の前後の位置ズレを抑制するためには、保持部材8が、入射面12と第1の出射面13とに重なった状態でビームスプリッタ5を保持する必要がある。入射面12及び第1の出射面13の長辺近傍を保持する構造を採用した場合、垂直画角方向における入射面12の開口範囲が狭くなってしまう。これに対して、本実施形態では、ビームスプリッタ5の水平画角方向のサイズが垂直画角方向のサイズより余裕があることを利用して、入射面12及び第1の出射面13の短辺近傍を保持している。この結果、ビームスプリッタ5の側面サイズをコンパクトに維持しつつ、ビームスプリッタ5の前後の位置ズレを抑制できる。また、第1の出射面13と周壁部の重なり幅W1(図5)を可能な範囲で大きくすることによって、ビームスプリッタ5をより安定して保持することができる。
【0026】
また、図6に示すように、第2の出射面25と周壁部18とは、重なり幅W3でX軸方向に重なっている。尚、重なり幅W3は、光学機能面11で折り曲げられた光が周壁部18で遮蔽されない大きさに設計されている。具体的には、重なり幅W3は、図5に示した重なり幅W1と同寸法に設計されている。更に、直角プリズム7と周壁部19とは、直角プリズム7の全周に渡り、重なり幅W4でX軸方向に重なっている。尚、本実施形態では、重なり幅W4は重なり幅W3と同寸法に設計されている。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置1では、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7が、保持部材8によって支持されている。また、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のX軸方向の両端部が周壁部18及び19の内部に嵌め込まれているため、X軸、Y軸及びZ軸方向のいずれに対しても、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7のガタつきが防止される。そして、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7は剛性が高いため、自重によって撓むこともない。この結果、光学素子保持体2で分岐された光には、光学像の歪みや光路方向のズレが発生しない。従って、精度の高いステレオ画像を撮影することができる。更に、ステレオ画像撮像装置1では、屈折率が空気より大きな材質よりなるビームスプリッタ5及び直角プリズム7を設けることで、入射面12からカメラの入射面までの光路長を短くすることができる。この結果、ステレオ画像撮像装置1の光軸方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0028】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図8は、図7に示すステレオ画像撮像装置の側面図である。以下、本実施形態と第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0029】
まず、本実施形態のプリズム7の配置が第1の実施形態と異なる。より詳細には、プリズム7は、ビームスプリッタ5の上方において、反射面6がビームスプリッタ5の光学機能面11と平行となるように配置されている。したがって、ビームスプリッタ5の光学機能面11によってX軸方向に折り曲げられた光は、直角プリズム7の内部を通過することなく、反射面6の表面で反射されて第2のカメラ4へと導かれる。第1の実施形態では、小型化のために、ビームスプリッタ5と第1のカメラ3との距離、直角プリズム7と第2のカメラ4との距離を詰めていくと、直角プリズム7の出射面15に第2のカメラ4が接触する位置関係が限界点の一つとなる。これに対して、第2の実施形態では、直角プリズム7の反射面6を第2のカメラ4側に向けることによって、上述の限界点が緩和されるので、第1の実施形態より全体として小型化が可能な場合がある。
【0030】
次に、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置31は、第2のカメラ4を載置するための平板32を更に備える。平板32は、光学素子保持体2を構成する保持部材8によって支持される。保持部材8には、ビームスプリッタ5を嵌め込むための凹部と、直角プリズムを嵌め込むための凹部との間に、Y軸方向に延びる溝33が更に設けられる。平板32は、図7に示すように、対向する側面の一部を溝33に嵌合させることによって保持部材8に取り付けられている。溝33は、平板32の上面とビームスプリッタ5の第2の出射面25とを平行に保持できるように形成されている。このような嵌合構造を採用することにより、平板32を保持部材8に確実に固定することができると共に、平板32の上面位置を精度良く決めることが可能となる。尚、平板32には、ビームスプリッタ5から直角プリズム7に至る光を遮らずに通過させる窓部34が設けられている。
【0031】
平板32は、図7に示すように、ネジ35によって保持部材8にネジ止めされている。保持部材8にネジ止めされた平板32は、ベース部材9及びネジ10の組み合わせと同じ機能を発揮し、ビームスプリッタ5の光学機能面11に損傷を与えることなく、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の確実な保持に寄与する。
【0032】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係るステレオ画像撮像装置の斜視図であり、図10は、図9に示すステレオ画像撮像装置の側面図である。以下、本実施形態と第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
まず、本実施形態では、第1の実施形態と比べて、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の位置が逆になっている。すなわち、ビームスプリッタ5が第2のカメラ4の前方に配置され、直角プリズム7が第1のカメラ3の前方に配置される。ビームスプリッタ5の入射面12から入射した光の一部は、光学機能面11を透過して出射面13から出射され、第2のカメラ4に入射する。ビームスプリッタ5の入射面12から入射した光の残りは、光学機能面11によってZ軸負方向に反射された後、平板32の窓部34を通過し、直角プリズム7の反射面6によってY軸負方向に反射され、第1のカメラ3に入射する。
【0034】
次に、本実施形態に係るステレオ画像撮像装置37では、右眼用画像を撮影するための第2のカメラ4がプリズム5の長手方向(X軸方向)に平行移動可能であり、第2のカメラ4を平行移動させる機構が更に設けられている。具体的には、ステレオ画像撮像装置37は、平板32の上面に取り付けられるステージ38と、ステージ38上に取り付けられるスライダー39と、スライダー39に取り付けられ、第2のカメラ4が取り付けられる取り付けプレート40とを更に備える。スライダー39は、ステージ38上に敷設されるレール41と、レール41に係合し、レール41に沿ってX軸方向に摺動自在なスライド部材42とを含む。
【0035】
第2の実施形態で説明したように、平板32は、保持部材8の溝33への嵌め込みによって、上面がビームスプリッタ5の第2の出射面25と平行となるように保持部材8に固定されている。平板32の上面は、ステージ38及びスライダー39を載置するための基準面となる。平板32の上面の配置は、保持部材8によってビームスプリッタ5の面を基準として正確に決められているので、スライダー39を介した第2のカメラ4の平行移動の精度を確保することができる。
【0036】
尚、上記の第1〜第3の実施形態に係る光学素子保持体2は直角プリズム7を有するが、直角プリズム7を用いるか否かは任意である。例えば、直角プリズム7を用いずに、第2の出射面25に対向し、かつ、光学系23の光軸を垂直方向(Z軸方向)に一致させた状態で、第2のカメラ4を配置しても良い。
【0037】
また、上記の第1〜第3の実施形態に係る保持部材は、ビームスプリッタ5と直角プリズム7とを一体的に保持しているが、ビームスプリッタ5のみを保持して、直角プリズム7は別の保持機構を用いて保持しても良い。
【0038】
更に、上記の第1〜第3の実施形態では、第1のカメラ3が左眼用画像を撮影し、第2のカメラ4が右眼用画像を撮影しているが、第1のカメラ3及び第2のカメラ4の左右を逆にしても良い。
【0039】
更に、上記の第1〜第3の実施形態では、ビームスプリッタ5で折り曲げられた光を第2のカメラ4に導くために直角プリズム7を用いているが、直角プリズム7の代わりに、ミラーを用いることも可能である。直角プリズム7に代えてミラーを用いる場合も同様に、ミラーの対向する側辺部分を嵌め込んで保持できるように、一対の保持部材8に凹部を設ければ良い。
【0040】
また、ミラーを用いる場合は、直角プリズム7の反射面6をミラー(反射膜)としたものを作製し、直角プリズム7の各辺を剛性のある支持部材で構成するようにしても構わない。この場合、ミラーを構成する側面の形状は直角二等辺三角形となることが好ましい。
【0041】
更に、上記の第1〜第3の実施形態で説明したように、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の上下の配置は任意であり、各実施形態で具体例として示した、ビームスプリッタ5及び直角プリズム7の配置を逆にしても良い。また、直角プリズム7の反射面6の配置も任意である。したがって、第2及び第3の実施形態において、直角プリズム7を第1の実施形態のように配置しても良い。逆に、第1の実施形態において、直角プリズム7を第2及び第3の実施形態のように配置しても良い。
【0042】
更に、上記の第1の実施形態においても、第2及び第3の実施形態と同様に、保持部材8に溝33と、溝33に嵌合する平板32とを更に設けても良い。逆に、第2及び第3の実施形態に係る構成から、溝33及び平板32をなくしても良い。
【0043】
更に、上記の第3の実施形態では、第2のカメラ4をビームスプリッタ5の長手方向に平行移動させるためのスライド機構を特定したが、これに限定されず、他の構成のスライド機構を採用しても良い。また、スライド機構には、ボールネジまたは送りネジと、モータとを組み合わせた送り機構が設けられていても良い。
【0044】
更に、上記の第1および第2の実施形態に、第3の実施形態で説明したスライド機構を更に追加しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、立体画像を撮影するステレオ画像撮像装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ステレオ撮像装置
2 光学分岐素子
3 第1のカメラ
4 第2のカメラ
5 ビームスプリッタ
6 反射面
7 直角プリズム
8 保持部材
9 ベース部材
10 ネジ
11 光学機能面
12 入射面
13 第1の出射面
14 反射光路用透明部
15 出射面
16、17 平面部
18、19 周壁部
20 ネジ穴
21、23 光学系
22、24 撮像素子
25 第2の出射面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体であって、
長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、
互いに対向するように配置され、前記ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態で前記ビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、
前記保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備え、
前記保持部材の各々は、前記ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、前記平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、
前記ビームスプリッタの長手方向における前記対向面と前記周壁部との重なり幅が、同方向における前記入射面と前記周壁部との重なり幅より大きい、光学素子保持体。
【請求項2】
前記ビームスプリッタによって折り曲げられた光の少なくとも一部を反射する直角プリズムを更に備え、
前記直角プリズムは、前記一対の保持部材の各々に嵌合した状態で保持される、請求項1に記載の光学素子保持体。
【請求項3】
前記保持部材の各々には、前記ビームスプリッタの入射面と直交する面に対して平行となるように平板を嵌め込むための溝が更に設けられる、請求項2に記載の光学素子保持体。
【請求項4】
2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体であって、
長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、
互いに対向するように配置され、前記ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態で前記ビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、
前記保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備え、
前記保持部材の各々は、前記ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、前記平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、
前記ビームスプリッタの長手方向における前記対向面と前記周壁部との重なり幅と、同方向における前記入射面と前記周壁部との重なり幅とは、前記対向面を透過した光学像を撮影するカメラが有する光学系の画角に応じて設定される、光学素子保持体。
【請求項5】
前記ビームスプリッタによって折り曲げられた光の少なくとも一部を反射する直角プリズムを更に備え、
前記直角プリズムは、前記一対の保持部材の各々に嵌合した状態で保持される、請求項4に記載の光学素子保持体。
【請求項6】
ステレオ画像撮像装置であって、
請求項2に記載の光学素子保持体と、
光学系の光軸が前記入射面と直交するように配置され、前記光学機能面を透過した光学像を撮影する第1のカメラと、
光学系の光軸が前記第1のカメラの光学系の光軸と平行となるように配置され、前記直角プリズムによって反射された光学像を撮影する第2のカメラとを備え、
前記第1のカメラ及び前記第2のカメラの一方が前記第1の方向に移動自在に支持される、ステレオ画像撮像装置。
【請求項7】
ステレオ画像撮像装置であって、
請求項5に記載の光学素子保持体と、
光学系の光軸が前記入射面と直交するように配置され、前記光学機能面を透過した光学像を撮影する第1のカメラと、
光学系の光軸が前記第1のカメラの光学系の光軸と平行となるように配置され、前記直角プリズムによって反射された光学像を撮影する第2のカメラとを備え、
前記第1のカメラ及び前記第2のカメラの一方が前記第1の方向に移動自在に支持される、ステレオ画像撮像装置。
【請求項1】
2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体であって、
長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、
互いに対向するように配置され、前記ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態で前記ビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、
前記保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備え、
前記保持部材の各々は、前記ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、前記平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、
前記ビームスプリッタの長手方向における前記対向面と前記周壁部との重なり幅が、同方向における前記入射面と前記周壁部との重なり幅より大きい、光学素子保持体。
【請求項2】
前記ビームスプリッタによって折り曲げられた光の少なくとも一部を反射する直角プリズムを更に備え、
前記直角プリズムは、前記一対の保持部材の各々に嵌合した状態で保持される、請求項1に記載の光学素子保持体。
【請求項3】
前記保持部材の各々には、前記ビームスプリッタの入射面と直交する面に対して平行となるように平板を嵌め込むための溝が更に設けられる、請求項2に記載の光学素子保持体。
【請求項4】
2台のカメラでステレオ画像を撮影する為に用いる光学素子保持体であって、
長方形の入射面及びこれと対向する対向面を有する直方体形状のビームスプリッタと、
互いに対向するように配置され、前記ビームスプリッタの長手方向における両端部が嵌合した状態で前記ビームスプリッタを保持する一対の保持部材と、
前記保持部材を互いに近づく方向に押圧する押圧部材とを備え、
前記保持部材の各々は、前記ビームスプリッタの側面を覆う平面部と、前記平面部の周縁から立ち上がる周壁部とを有しており、
前記ビームスプリッタの長手方向における前記対向面と前記周壁部との重なり幅と、同方向における前記入射面と前記周壁部との重なり幅とは、前記対向面を透過した光学像を撮影するカメラが有する光学系の画角に応じて設定される、光学素子保持体。
【請求項5】
前記ビームスプリッタによって折り曲げられた光の少なくとも一部を反射する直角プリズムを更に備え、
前記直角プリズムは、前記一対の保持部材の各々に嵌合した状態で保持される、請求項4に記載の光学素子保持体。
【請求項6】
ステレオ画像撮像装置であって、
請求項2に記載の光学素子保持体と、
光学系の光軸が前記入射面と直交するように配置され、前記光学機能面を透過した光学像を撮影する第1のカメラと、
光学系の光軸が前記第1のカメラの光学系の光軸と平行となるように配置され、前記直角プリズムによって反射された光学像を撮影する第2のカメラとを備え、
前記第1のカメラ及び前記第2のカメラの一方が前記第1の方向に移動自在に支持される、ステレオ画像撮像装置。
【請求項7】
ステレオ画像撮像装置であって、
請求項5に記載の光学素子保持体と、
光学系の光軸が前記入射面と直交するように配置され、前記光学機能面を透過した光学像を撮影する第1のカメラと、
光学系の光軸が前記第1のカメラの光学系の光軸と平行となるように配置され、前記直角プリズムによって反射された光学像を撮影する第2のカメラとを備え、
前記第1のカメラ及び前記第2のカメラの一方が前記第1の方向に移動自在に支持される、ステレオ画像撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−150439(P2012−150439A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257980(P2011−257980)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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