説明

光学素子及びプロジェクタ

【課題】黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能な光学素子を提供する。
【解決手段】偏光層12及び偏光層12を支持する支持層14を有する偏光板10と、偏
光板10における一方の面(支持層14の表面)に接着層Cを介して接着された光学要素
としての透光性基板20と、偏光板10における他方の面(偏光層12の表面)に接着層
Cを介して接着された他の光学要素としての透光性基板30とを備える光学素子1。支持
層14は、三酢酸セルロースから酢酸が遊離されないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器に用いられる偏光板としては、通常、ポリビニルアルコール(PVA)からな
る偏光層の片面又は両面に、機械的強度等を確保するための三酢酸セルロース(TAC:
トリアセチルセルロース)からなる支持層が積層された2層構造又は3層構造の偏光板が
知られている(例えば、特許文献1参照。)。三酢酸セルロースからなる支持層は、透明
性、均一性、平面性等に優れ、分子配向による異方性が非常に小さいことから、偏光層を
支持するための支持層として好適に使用されている。
【0003】
ところで、従来の偏光板においては、偏光層を通過しない光は内部で吸収されるため、
多量の熱が発生して偏光板の温度上昇を招くこととなる。このため、偏光板が劣化して偏
光板の偏光特性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するための光学素子として、偏光板の両面(偏光板にお
ける支持層のさらに外側)に熱伝導性の透光性基板を貼り付けた構造を有する光学素子が
開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この光学素子によれば、偏光板で発生し
た熱は、熱伝導性の透光性基板を介して系外に放散されるようになるため、偏光板の温度
上昇を抑制することが可能になる。このため、偏光板が劣化して偏光板の偏光特性が低下
してしまうのを抑制することが可能になる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−20317号公報
【特許文献2】特開2000−112022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光学素子においては、三酢酸セルロースからなる支持層は、温度
や湿度などの影響により黄変が発生したり機械特性が低下したりするという問題があった

【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、黄変の発生及び
機械特性の低下を抑制することが可能な光学素子及びプロジェクタを提供することを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するため、従来の光学素子において、三酢酸セル
ロースからなる支持層において黄変が発生したり機械特性が低下したりする原因を究明す
べく鋭意努力を重ねた結果、この原因は、支持層である三酢酸セルロースから酢酸が遊離
することにあるという知見を得た。
【0009】
すなわち、従来の光学素子においては、可塑剤として、リン酸エステルなどの添加剤を
用いている。このようなリン酸エステルなどの添加剤は、高温環境下において加水分解さ
れて強酸を遊離する性質を有するため、この遊離された強酸が三酢酸セルロースから酢酸
を遊離させてしまう。その結果、黄変が発生したり機械特性が低下したりするのである。
【0010】
そこで、本発明の発明者らは、以上の知見に基づいて、支持層として、強酸を遊離する
添加物を含有しない三酢酸セルロースからなる支持層を用いれば、黄変の発生及び機械特
性の低下を抑制することが可能になることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
また、支持層として、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合を2つの
単結合に処理した支持層を用いれば、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可
能になることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の光学素子は、偏光層及び前記偏光層を支持する少なくとも1つの支持層を有す
る偏光板と、前記偏光板における一方の面に接着層を介して接着された光学要素と、前記
偏光板における他方の面に接着層を介して接着された他の光学要素とを備え、前記支持層
は、三酢酸セルロースを含み、前記支持層は、前記三酢酸セルロースから酢酸が遊離され
ないように構成されていることを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の光学素子によれば、支持層の三酢酸セルロースから酢酸が遊離され
ないように構成されているため、高温環境下で支持層である三酢酸セルロースから、酢酸
が遊離することがなくなるため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能と
なる。
【0014】
ところで、偏光層及び少なくとも1つの支持層からなる偏光板を光学要素の片面に貼り
付けた構造を有する光学素子において、三酢酸セルロースから酢酸が遊離されないように
構成されている支持層を用いた場合にも、上記した理由と同様のことが言えるため、黄変
の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能となる。
【0015】
しかしながら、本発明の光学素子のように、「偏光板を光学要素及び他の光学要素によ
って両面から挟んだ構造を有する光学素子において、三酢酸セルロースから酢酸が遊離さ
れないように構成されている支持層を用いた場合」には、「偏光板を光学要素の片面に貼
り付けた構造を有する光学素子において、三酢酸セルロースから酢酸が遊離されないよう
に構成されている支持層を用いた場合」では予測できないほどの有利な効果を得ることが
できる。その結果、本発明の光学素子は、黄変の発生及び機械特性の低下を十分に抑制す
ることが可能な光学素子となる。なお、本発明で得られる有利な効果については、発明を
実施するための最良の形態において後述する。
【0016】
本発明の光学素子によれば、偏光板における一方の面には光学要素が接着され、偏光板
における他方の面には他の光学要素が接着されているため、偏光板で発生した熱を光学要
素及び他の光学要素に伝達することが可能になる。その結果、偏光板の温度上昇を抑制す
ることが可能となる。
【0017】
また、本発明の光学素子によれば、偏光板を光学要素及び他の光学要素によって両面か
ら挟んだ構造を有しているため、所定の機械的強度を得ることができる。
【0018】
また、本発明の光学素子によれば、偏光板と光学要素及び偏光板と他の光学要素は、そ
れぞれ接着層を介して接着されているため、各部材間の界面における表面反射の発生が抑
制され、光透過率を高めることが可能となる。また、偏光板、光学要素及び他の光学要素
の線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各部材間の接着面における剥離が起こり
にくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0019】
なお、この明細書における「接着層」には、接着剤からなる接着層だけではなく粘着剤
からなる粘着層も含まれる。
【0020】
本発明の光学素子においては、前記支持層は、高温で強酸を遊離する添加物を含有しな
いことが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、高温環境下において添加物に起因する強酸の遊離を抑
制することが可能となるため、添加物から遊離された強酸によって三酢酸セルロースから
酢酸が遊離されてしまうのを抑制することができ、支持層において黄変が発生したり機械
特性が低下したりすることを抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の光学素子においては、前記支持層は、前記三酢酸セルロースの持つアセチル基
の酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されていることが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、三酢酸セルロース自体が酢酸を遊離しにくい構成を有
することとなるため、三酢酸セルロースから酢酸が遊離されてしまうのを抑制することが
でき、支持層において黄変が発生したり機械特性が低下したりすることを抑制することが
可能となる。
【0024】
本発明の光学素子においては、前記偏光板における少なくとも前記支持層の端面は、接
着層で取り囲まれていることが好ましい。
【0025】
ところで、三酢酸セルロースからなる支持層が外部に露出していると、外気からの水分
の浸入に起因して、支持層が膨張・変形して支持層における分子配向に乱れが発生したり
、加水分解により三酢酸セルロースから酢酸が遊離したりする結果、偏光特性が低下して
偏光板を通過する光束の品質が低下してしまうという問題がある。
これに対し、本発明の光学素子によれば、支持層の端面が接着層で取り囲まれているこ
とにより支持層が外気に触れることがなくなるため、外気からの水分の浸入を抑制するこ
とが可能になる。このため、外気からの水分の浸入に起因して、支持層が膨張・変形して
支持層における分子配向に乱れが発生したり加水分解により三酢酸セルロースから酢酸が
遊離したりしてしまうことを抑制することが可能になる。その結果、偏光板の偏光特性が
低下して偏光板を通過する光束の品質が低下してしまうのを抑制することが可能になる。
【0026】
本発明の光学素子においては、前記光学要素及び前記他の光学要素の材料は、サファイ
ア若しくは水晶又は光学ガラスからなることが好ましい。
【0027】
光学要素及び他の光学要素の材料がサファイア又は水晶からなる場合には、これらの材
料は熱伝導性に非常に優れているため、偏光板で発生した熱を効率よく系外に放散させる
ことができ、偏光板の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0028】
一方、光学要素及び他の光学要素の材料が光学ガラスからなる場合には、光学ガラスは
複屈折が小さいため、光学要素及び他の光学要素を通過する光束の品質低下を抑制するこ
とができ、偏光板に入射する光束又は偏光板から射出される光束の品質低下を抑制するこ
とができる。また、光学ガラスは熱膨張率が比較的小さいため、熱による伸び・変形が大
きいという性質を有する偏光板をこのような熱膨張率の小さな光学ガラスからなる光学要
素及び他の光学要素に接着することにより、偏光板自体の変形を抑えることができる。
【0029】
なお、光学ガラスとしては、石英ガラス、BK7やパイレックス(登録商標)などの硼
珪酸ガラス、白板ガラス、結晶化ガラスなどを好適に用いることができる。
【0030】
本発明の光学素子においては、前記光学要素及び前記他の光学要素は、同一材料からな
ることが好ましい。
【0031】
このように構成することにより、製造コストの低減を図ることが可能となる。また、線
膨張係数が一致するため、内部応力による歪みを低減することが可能となる。
【0032】
本発明のプロジェクタは、照明光束を射出する照明装置と、前記照明装置からの前記照
明光束を画像情報に応じて変調する液晶装置と、前記液晶装置で変調された光を投写する
投写光学系と、前記液晶装置の光入射側及び光射出側の少なくとも一方に配置された光学
素子とを備え、前記光学素子は上述した光学素子のいずれかであることを特徴とする。
【0033】
このため、本発明のプロジェクタによれば、上述したように光学素子の黄変の発生及び
機械特性の低下を抑制することが可能となる。その結果、投写画像の画像品質を向上する
ことが可能となる。
【0034】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶装置の光入射側に配置される集光レンズを
さらに備え、前記光学素子は、前記液晶装置の光入射側に配置されており、前記光学素子
の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板における前記液晶装置側の面とは反対側の
面に接着される反対側光学要素は集光レンズであることが好ましい。
また、本発明のプロジェクタにおいては、前記照明装置からの照明光束を複数の色光に
分離して被照明領域に導光する色分離導光光学系と、前記液晶装置として、前記色分離導
光光学系で分離された複数の色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する複数の液晶装置
と、前記複数の液晶装置によって変調された各色光をそれぞれ入射する複数の光入射端面
及び合成された色光を射出する光射出端面を有するクロスダイクロイックプリズムとをさ
らに備え、前記光学素子は、前記複数の液晶装置のうち少なくとも1つの液晶装置の光射
出側に配置されており、前記光学素子の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板にお
ける前記液晶装置側の面とは反対側の面に接着される反対側光学要素は、前記クロスダイ
クロイックプリズムであることが好ましい。
【0035】
このように構成することにより、偏光板における偏光層で発生した熱を反対側光学要素
として熱容量の比較的大きな集光レンズ又はクロスダイクロイックプリズムに伝達するこ
とができるため、偏光板の温度上昇をさらに抑制しプロジェクタの放熱性を高めることが
可能となる。また、集光レンズ又はクロスダイクロイックプリズムを反対側光学要素とし
て兼ねることができるので、部品点数が削減されたプロジェクタとすることが可能となる

【0036】
本発明のプロジェクタにおいては、前記光学素子は、前記液晶装置の光射出側に配置さ
れており、前記光学素子の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板における前記液晶
装置側の面に接着される液晶装置側光学要素は、入射する光のうち所定の方向に軸を有す
る直線偏光を透過しその他の光を反射する機能を有する偏光分離光学素子であることが好
ましい。
【0037】
このように構成することにより、当該光学要素に入射する光のうち所定の方向に軸を有
する直線偏光は、偏光分離光学素子を透過して偏光板に入射することとなる一方、その他
の光、すなわち偏光板への進行を禁止されるべき光(偏光板を透過しない偏光成分)偏光
分離光学素子で反射されて系外に逃がされる。このため、偏光板を透過しない偏光成分の
光は前段としての偏光分離光学素子によってほとんど除去されているため、偏光板におけ
る発熱そのものが効果的に抑制され、偏光板の温度上昇をさらに抑制することが可能にな
る。
【0038】
本発明のプロジェクタにおいては、前記偏光分離光学素子としては、誘電体多層膜から
なる偏光分離光学素子、多数の微細金属細線が配列されたワイヤグリッド型の偏光分離光
学素子、二軸方向性の有るフィルムを複数枚積層してXY型の偏光特性を持たせたXY型
偏光フィルムを用いた偏光分離光学素子などを好ましく用いることができる。
【0039】
本発明のプロジェクタにおいては、前記液晶装置の光入射側に配置される集光レンズを
さらに備え、前記液晶装置の光入射側に配置された前記偏光板に接着された前記反対側光
学要素は、前記集光レンズの光入射面に接着層を介して接着されていることが好ましい。
【0040】
本発明のプロジェクタにおいては、各光学系を内部に収納する筐体と、前記光学素子の
前記光学要素と前記筐体との間及び前記光学素子の前記他の光学要素と前記筐体との間の
うち少なくとも一方で熱を伝達する熱伝導部材とをさらに備えることが好ましい。
【0041】
このように構成することにより、偏光板で発生した熱は、光学要素及び他の光学要素並
びに熱伝導部材を介し筐体に放散されるようになるため、プロジェクタの放熱性能を高め
ることができる。
【0042】
前記熱伝導部材は、金属からなることが好ましい。
【0043】
本発明のプロジェクタにおいては、前記光学要素及び前記他の光学要素のうち少なくと
も一方を冷却する冷却風流路が設けられていることが好ましい。
【0044】
このように構成することにより、冷却風流路からの冷却風によって光学要素及び他の光
学要素のうち少なくとも一方を冷却することができるため、光学要素及び他の光学要素の
うち少なくとも一方の温度上昇を抑制し、偏光板で発生した熱を効率的に除去することが
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の光学素子及びプロジェクタについて、図に示す実施の形態に基づいて説
明する。
【0046】
[実施形態1]
実施形態1では、本発明の光学素子について説明する。
まず、実施形態1に係る光学素子の構成及び比較例1〜3に係る光学素子1a〜1cの
構成について、図1を用いて説明する。
【0047】
図1は、実施形態1に係る光学素子1を説明するために示す図である。図1(a)は実
施形態1に係る光学素子1を模式的に示す図であり、図1(b)は比較例1に係る光学素
子1aを模式的に示す図であり、図1(c)は比較例2に係る光学素子1bを模式的に示
す図であり、図1(d)は比較例3に係る光学素子1cを模式的に示す図である。
【0048】
実施形態1に係る光学素子1は、図1(a)に示すように、偏光板10と、偏光板10
における一方の面(支持層14の表面)に接着層Cを介して接着された光学要素としての
透光性基板20と、偏光板10における他方の面(偏光層12の表面)に接着層Cを介し
て接着された他の光学要素としての透光性基板30とを備える光学素子である。
【0049】
偏光板10は、偏光層12と、偏光層12を支持する支持層14とを有している。偏光
層12としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)をヨウ素又は二色性染料で染色
し一軸延伸して、該染料の分子を一方向に配列させるように形成された偏光層を好ましく
用いることができる。このように形成された偏光層12は、前記一軸延伸方向に平行な方
向の偏光を吸収し、一方、前記一軸延伸方向に垂直な方向の偏光を透過させる。偏光層1
2は延伸状態から元の状態に戻ろうとする力が大きいので、その力を規制するために、偏
光層12を支持する支持層14が設けられている。支持層14としては、三酢酸セルロー
ス(TAC:トリアセチルセルロース)からなる支持層を用いている。支持層14は、三
酢酸セルロースから酢酸が遊離されないように構成されている。具体的には、支持層14
は、高温で強酸を遊離する添加物を含有しておらず、三酢酸セルロースの持つアセチル基
の酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されている。
【0050】
透光性基板20,30の材料は、例えばサファイアからなる。サファイアからなる透光
性基板20,30は、熱伝導率が約40W/(m・K)と高い上、硬度も非常に高く、熱
膨張率は小さく、傷がつきにくく透明度が高い。なお、中程度の輝度として安価性を重視
する場合には、約10W/(m・K)の熱伝導率を有する水晶からなる透光性基板を用い
てもよい。透光性基板20,30の厚さは、熱伝導性の観点からいえば0.2mm以上で
あることが好ましく、光学素子の薄型化の観点からいえば2.0mm以下であることが好
ましい。
【0051】
透光性基板20における偏光板10とは反対側の面及び透光性基板30における偏光板
10とは反対側の面には、図示しない反射防止層が形成されている。
【0052】
偏光板10にける偏光層12及び支持層14の端面は、接着層Cで取り囲まれている。
接着層Cに用いる接着剤としては、例えばUV硬化性の接着剤や可視光短波長硬化性の接
着剤などを好適に用いることができる。なお、粘着剤を用いてもよい。
【0053】
比較例1に係る光学素子1aは、図1(b)に示すように、偏光板10aと、偏光板1
0aにおける一方の面(支持層14aの表面)に接着層Cを介して接着された光学要素と
しての透光性基板20とを備える光学素子である。比較例1に係る光学素子1aは、他の
光学要素としての透光性基板30を備えていない点及び支持層の材料が異なる点で、実施
形態1に係る光学素子1とは異なる。
【0054】
偏光板10aは、偏光層12と、偏光層12を支持する支持層14aとを有している。
偏光層12としては、実施形態1に係る光学素子1の場合と同様に、ポリビニルアルコー
ル(PVA)をヨウ素又は二色性染料で染色し一軸延伸して、該染料の分子を一方向に配
列させるように形成された偏光層を用いている。支持層14aとしては、高温で強酸を遊
離する添加物を含有する三酢酸セルロースからなる支持層を用いており、三酢酸セルロー
スの持つアセチル基は酸素原子2重結合を有している。当該添加物としては、例えば、可
塑剤として用いられるリン酸エステルなどが挙げられる。
【0055】
透光性基板20における偏光板10aとは反対側の面及び偏光層12における支持層1
4aとは反対側の表面には、図示しない反射防止層が形成されている。
【0056】
なお、比較例1に係る光学素子1aにおける透光性基板20は、実施形態1に係る光学
素子1で説明したものと同じであるため、説明は省略する。
【0057】
比較例2に係る光学素子1bは、図1(c)に示すように、偏光板10aと、偏光板1
0aにおける一方の面(支持層14aの表面)に接着層Cを介して接着された光学要素と
しての透光性基板20と、偏光板10aにおける他方の面(偏光層12の表面)に接着層
Cを介して接着された他の光学要素としての透光性基板30とを備える光学素子である。
比較例2に係る光学素子1bは、支持層の材料が異なる点で、実施形態1に係る光学素子
1とは異なる。
【0058】
なお、比較例2に係る光学素子1bにおける支持層14aは、比較例1に係る光学素子
1aで説明したものと同じであり、比較例2に係る光学素子1bにおける透光性基板20
,30は、実施形態1に係る光学素子1で説明したものと同じであるため、これらの説明
は省略する。
【0059】
比較例3に係る光学素子1cは、図1(d)に示すように、偏光板10と、偏光板10
における一方の面(支持層14の表面)に接着層Cを介して接着された光学要素としての
透光性基板20とを備える光学素子である。比較例3に係る光学素子1cは、他の光学要
素としての透光性基板30を備えていない点で、実施形態1に係る光学素子1とは異なる

【0060】
なお、比較例3に係る光学素子1cにおける偏光板10及び透光性基板20は、実施形
態1に係る光学素子1で説明したものと同じであるため、説明は省略する。
【0061】
次に、実施形態1に係る光学素子1と比較例1〜3に係る光学素子1a〜1cを比較し
た場合における、実施形態1に係る光学素子1が有する効果について、図1又は図2を用
いて説明する。
図2は、実施形態1に係る光学素子1が有する効果について説明するために示す図であ
る。
【0062】
本発明の発明者らは、本発明の光学素子(実施形態1に係る光学素子1)が有する効果
を確認するため、実施形態1に係る光学素子1、比較例1に係る光学素子1a、比較例2
に係る光学素子1b及び比較例3に係る光学素子1cについて、110℃の恒温槽に20
00時間投入したときの各光学素子の劣化量を比較するための劣化量比較試験を行った。
なお、当該試験を行うにあたり、支持層以外の要素(例えば偏光層)による初期的な変質
に起因した初期劣化を除外するため、恒温槽投入後から24時間経過後における初期劣化
量については除外して算出している。
【0063】
上記の劣化量比較試験を行った結果、実施形態1に係る光学素子1については、試験前
の光学素子1に対する試験後の光学素子1の劣化量は約0.15%であった。また、比較
例1に係る光学素子1aについては、その劣化量は約8%であり、比較例2に係る光学素
子1bについては、その劣化量は約40%であり、比較例3に係る光学素子1cについて
は、その劣化量は約5%であった。
【0064】
以上の試験結果より、比較例2に係る光学素子1bは、比較例1に係る光学素子1aと
比べて約0.2倍に耐久性が低下していると判断できる。同様に、比較例3に係る光学素
子1cは、比較例1に係る光学素子1aと比べて約1.5倍に耐久性が向上していると判
断でき、実施形態1に係る光学素子1は、比較例1に係る光学素子1aと比べて約50倍
に耐久性が向上していると判断できる。
【0065】
このように、比較例1及び2に係る光学素子1a,1bによれば、可塑剤として、リン
酸エステルなどの添加剤を用いており、このようなリン酸エステルなどの添加剤が高温環
境下において加水分解されて強酸を遊離する性質を有するため、この遊離された強酸が三
酢酸セルロースを攻撃して三酢酸セルロースを変性させてしまう。また、三酢酸セルロー
スの持つアセチル基は酸素原子2重結合を有しているため、三酢酸セルロース自体が酢酸
を遊離しやすい。その結果、黄変が発生したり機械特性が低下したりするため、光学素子
1a,1bの耐久性が低くなると考えられる。
【0066】
これに対し、実施形態1に係る光学素子1によれば、支持層14が高温で強酸を遊離す
る添加物を含有しておらず、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2
つの単結合に処理されているため、高温環境下において添加物に起因する強酸の遊離を抑
制することができ、三酢酸セルロース自体の酢酸の遊離を抑制することが可能となる。そ
の結果、遊離された強酸によって三酢酸セルロースが攻撃されて変性してしまうことがな
くなるため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能となる。
【0067】
また、実施形態1に係る光学素子1による上記の耐久性向上効果は、図2からもわかる
ように、比較例1〜3に係る光学素子1a〜1cからは予測できないほどの有利な効果で
ある。この理由はについてはまだ詳細は不明であるが、(ア)偏光板10を透光性基板2
0,30によって両面から挟んだ構造を有すること、及び(イ)高温で強酸を遊離する添
加物を含有しない三酢酸セルロースからなる支持層14を用いたこと、(ウ)三酢酸セル
ロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されている支持層14
を用いたことの相乗効果によるものと考えられる。
以上より、実施形態1に係る光学素子1は、黄変の発生及び機械特性の低下を十分に抑
制することが可能な光学素子となる。
【0068】
実施形態1に係る光学素子1によれば、偏光板10における一方の面には透光性基板2
0が接着され、偏光板10における他方の面には透光性基板30が接着されているため、
偏光板10で発生した熱を透光性基板20,30に伝達することが可能になる。その結果
、偏光板10の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係る光学素子1によれば、偏光板10を透光性基板20,30によ
って両面から挟んだ構造を有しているため、所定の機械的強度を得ることができる。
【0070】
また、実施形態1に係る光学素子1によれば、偏光板10と透光性基板20及び偏光板
10と透光性基板30は、それぞれ接着層Cを介して接着されているため、各部材間の界
面における表面反射の発生が抑制され、光透過率を高めることが可能となる。また、偏光
板10及び透光性基板20,30の線膨張係数がそれぞれ異なる場合であっても、各部材
間の接着面における剥離が起こりにくくなり、長期信頼性の低下を抑制することが可能と
なる。
【0071】
実施形態1に係る光学素子1においては、偏光板10における偏光層12及び支持層1
4の端面は、接着層Cで取り囲まれている。これにより、支持層14が外気に触れること
がなくなるため、外気からの水分の浸入を抑制することが可能になる。このため、外気か
らの水分の浸入に起因して、支持層14が膨張・変形して支持層14における分子配向の
乱れが発生したり加水分解により三酢酸セルロースから酢酸がを遊離したりしてしまうこ
とを抑制することが可能になる。その結果、偏光板10の偏光特性が低下して偏光板10
を通過する光束の品質が低下してしまうのを抑制することが可能になる。
【0072】
実施形態1に係る光学素子1においては、透光性基板20,30の材料は、サファイア
からなる。サファイアは熱伝導性に非常に優れているため、偏光板10で発生した熱を効
率よく系外に放散させることができ、偏光板10の温度上昇を効果的に抑制することが可
能となる。
【0073】
実施形態1に係る光学素子1においては、透光性基板20,30は、同一材料からなる
ため、製造コストの低減を図ることが可能となる。また、線膨張係数が一致するため、内
部応力による歪みを低減することが可能となる。
【0074】
なお、実施形態1に係る光学素子1においては、偏光板として、偏光層12及び偏光層
12を片面から支持する支持層14を有する偏光板10を用いていたが、本発明はこれに
限定されるものではなく、例えば次のような変形も可能である。
【0075】
[変形例]
図3は、実施形態1の変形例に係る光学素子2を模式的に示す図である。なお、図3に
おいて、図1(a)と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0076】
実施形態1の変形例に係る光学素子2は、基本的には実施形態1に係る光学素子1とよ
く似た構成を有しているが、偏光板の構成が実施形態1に係る光学素子1とは異なってい
る。
【0077】
すなわち、変形例に係る光学素子2においては、図3に示すように、偏光板として、偏
光層12と、偏光層12を両面から支持する支持層14,16とを有する偏光板11を用
いている。偏光層12及び支持層14,16の材料は、実施形態1で説明したものと同じ
である。
【0078】
このように、実施形態1の変形例に係る光学素子2は、実施形態1に係る光学素子1の
場合とは、偏光板の構成が異なるが、実施形態1に係る光学素子1の場合と同様に、支持
層14,16は、高温で強酸を遊離する添加物を含有しない三酢酸セルロースからなるた
め、高温環境下において添加物に起因する強酸の遊離を抑制することが可能となる。また
、支持層14,16は、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2つの
単結合に処理されているため、三酢酸セルロース自体が酢酸を遊離しにくくなっている。
その結果、遊離された強酸によって三酢酸セルロースが攻撃されて変性してしまうことが
なくなるため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能となる。その結果、
投写画像の画像品質を向上することが可能となる。
【0079】
[実施形態2]
実施形態2では、本発明のプロジェクタについて説明する。
まず、実施形態2に係るプロジェクタ1000の構成について、図4〜図6を用いて説
明する。
【0080】
図4は、実施形態2に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図である。図5及び図
6は、実施形態2に係るプロジェクタ1000の要部を説明するために示す図である。図
5(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図であり、図
5(b)は図5(a)のA−A断面図である。図6(a)は入射側偏光板420Rの周辺
部分を側面から見た図であり、図6(b)は射出側偏光板450Rの周辺部分を側面から
見た図である。
【0081】
実施形態2に係るプロジェクタ1000は、図4に示すように、照明装置100と、照
明装置100からの照明光束を赤色光、緑色光及び青色光の3つの色光に分離して被照明
領域に導光する色分離導光光学系200と、色分離導光光学系200で分離された3つの
色光のそれぞれを画像情報に応じて変調する電気光学変調装置としての3つの液晶装置4
10R,410G,410B及び3つの液晶装置410R,410G,410Bによって
変調された色光を合成するクロスダイクロイックプリズム500と、クロスダイクロイッ
クプリズム500によって合成された光をスクリーンSCR等の投写面に投写する投写光
学系600とを備えたプロジェクタである。これら各光学系は、筐体700に収納されて
いる。
【0082】
照明装置100は、被照明領域側に略平行な照明光束を射出する光源としての光源装置
110と、光源装置110から射出される照明光束を複数の部分光束に分割するための複
数の第1小レンズ122を有する第1レンズアレイ120と、第1レンズアレイ120の
複数の第1小レンズ122に対応する複数の第2小レンズ132を有する第2レンズアレ
イ130と、光源装置110から射出される偏光方向の揃っていない照明光束を略1種類
の直線偏光に揃える偏光変換素子140と、偏光変換素子140から射出される各部分光
束を被照明領域で重畳させるための重畳レンズ150とを有している。
【0083】
光源装置110は、リフレクタとしての楕円面リフレクタ114と、楕円面リフレクタ
114の第1焦点近傍に発光中心を有する発光管112と、楕円面リフレクタ114の反
射凹面と対向する反射面を有する副鏡116と、楕円面リフレクタ114で反射される集
束光を略平行な光に変換する凹レンズ118とを有している。光源装置110は、照明光
軸100axを中心軸とする光束を射出する。
【0084】
発光管112は、管球部と、管球部の両側に延びる一対の封止部とを有している。
楕円面リフレクタ114は、発光管112の一方の封止部に挿通・固着される筒状の首
状部と、発光管112から放射された光を第2焦点位置に向けて反射する反射凹面とを有
している。
副鏡116は、発光管112の管球部を挟んで楕円面リフレクタ114と対向して設け
られ、発光管112から放射された光のうち楕円面リフレクタ114に向かわない光を発
光管112に戻し楕円面リフレクタ114に入射させる。
【0085】
凹レンズ118は、楕円面リフレクタ114の被照明領域側に配置されている。そして
、楕円面リフレクタ114からの光を略平行化するように構成されている。
【0086】
第1レンズアレイ120は、凹レンズ118からの光を複数の部分光束に分割する光束
分割光学素子としての機能を有し、照明光軸100axと直交する面内にマトリクス状に
配列される複数の第1小レンズ122を備えた構成を有している。図示による説明は省略
するが、第1小レンズ122の外形形状は、液晶装置410R,410G,410Bの画
像形成領域の外形形状に関して相似形である。
【0087】
第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120により分割された複数の部分光束
を集光する光学素子であり、第1レンズアレイ120と同様に照明光軸100axに直交
する面内にマトリクス状に配列される複数の第2小レンズ132を備えた構成を有してい
る。
【0088】
偏光変換素子140は、第1レンズアレイ120により分割された各部分光束の偏光方
向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する偏光変換素子である。
偏光変換素子140は、光源装置110からの照明光束に含まれる偏光成分のうち一方
の直線偏光成分を透過し他方の直線偏光成分を照明光軸100axに垂直な方向に反射す
る偏光分離層と、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸100axに平
行な方向に反射する反射層と、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光
成分に変換する位相差板とを有している。
【0089】
重畳レンズ150は、第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130及び偏光変換
素子140を経た複数の部分光束を集光して、液晶装置410R,410G,410Bに
おける画像形成領域近傍に重畳させる光学素子である。なお、図4に示す重畳レンズ15
0は1枚のレンズで構成されているが、複数のレンズを組み合わせた複合レンズで構成さ
れていてもよい。
【0090】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210,220と、反射ミラー23
0,240,250と、入射側レンズ260と、リレーレンズ270とを有している。色
分離導光光学系200は、照明装置100から射出される照明光束を赤色光、緑色光及び
青色光の3つの色光に分離して、それぞれの色光を照明対象となる液晶装置410R,4
10G,410Bに導く機能を有している。
【0091】
ダイクロイックミラー210,220は、基板上に所定の波長領域の光束を反射し、他
の波長領域の光束を透過する波長選択膜が形成された光学素子である。光路前段に配置さ
れるダイクロイックミラー210は、赤色光成分を反射し、その他の色光成分を透過する
ミラーである。光路後段に配置されるダイクロイックミラー220は、青色光成分を透過
し、緑色光成分を反射するミラーである。
【0092】
ダイクロイックミラー210で反射された赤色光成分は、反射ミラー230により曲折
され、集光レンズ300Rを介して赤色光用の液晶装置410Rの画像形成領域に入射す
る。
【0093】
集光レンズ300Rは、重畳レンズ150からの各部分光束を各主光線に対して略平行
な光束に変換するために設けられている。集光レンズ300Rは、図示しない熱伝導性の
保持部材によって保持されており、この熱伝導性の保持部材を介して筐体700に配設さ
れている。他の集光レンズ300G,300Bも、集光レンズ300Rと同様に構成され
ている。
【0094】
ダイクロイックミラー210を通過した緑色光成分及び青色光成分のうち緑色光成分は
、ダイクロイックミラー220によって反射され、集光レンズ300Gを通過して緑色光
用の液晶装置410Gの画像形成領域に入射する。一方、青色光成分は、ダイクロイック
ミラー220を透過し、入射側レンズ260、入射側の反射ミラー240、リレーレンズ
270、射出側の反射ミラー250及び集光レンズ300Bを通過して青色光用の液晶装
置410Bの画像形成領域に入射する。入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反
射ミラー240,250は、ダイクロイックミラー220を透過した青色光成分を液晶装
置410Bまで導く機能を有している。
【0095】
なお、青色光の光路にこのような入射側レンズ260、リレーレンズ270及び反射ミ
ラー240,250が設けられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さ
よりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するためである。実施形態
2に係るプロジェクタ1000においては、青色光の光路の長さが長いのでこのような構
成とされているが、赤色光の光路の長さを長くして、入射側レンズ260、リレーレンズ
270及び反射ミラー240,250を赤色光の光路に用いる構成も考えられる。
【0096】
液晶装置410R,410G,410Bは、照明光束を画像情報に応じて変調するもの
であり、照明装置100の照明対象となる。
各液晶装置410R,410G,410Bは、一対の透明なガラス基板に電気光学物質
である液晶を封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子とし
て、与えられた画像信号に従って、入射側偏光板420R,420G,420Bから射出
された1種類の直線偏光の偏光方向を変調する。液晶装置410R,410G,410B
は、図示を省略したが、例えばアルミニウム製のダイキャストフレームからなる液晶装置
保持枠に保持されている。
【0097】
入射側偏光板420R,420G,420Bは、図5に示すように、集光レンズ300
R,300G,300Bと液晶装置410R,410G,410Bとの間に配置され、集
光レンズ300R,300G,300Bから射出された光のうち、所定の方向に軸を有す
る直線偏光のみを透過し、その他の光を吸収する機能を有している。
【0098】
入射側偏光板420Rは、図6(a)に示すように、偏光層40と、偏光層40を支持
する支持層42とを有している。そして、支持層42が偏光層40における液晶装置41
0Rとは反対側(集光レンズ300R側)になるように、入射側偏光板420Rが集光レ
ンズ300Rの光射出面に接着層Cを介して接着されている。偏光層40としては、例え
ばポリビニルアルコール(PVA)をヨウ素又は二色性染料で染色し一軸延伸して、該染
料の分子を一方向に配列させるように形成された偏光層を好ましく用いることができる。
このように形成された偏光層40は、前記一軸延伸方向に平行な方向の偏光を吸収し、一
方、前記一軸延伸方向に垂直な方向の偏光を透過させる。偏光層40は延伸状態から元の
状態に戻ろうとする力が大きいので、その力を規制するために、偏光層40を支持する支
持層42が設けられている。支持層42としては、三酢酸セルロース(TAC:トリアセ
チルセルロース)からなる支持層を用いている。他の入射側偏光板420G,420Bも
、入射側偏光板420Rと同様に構成されている。
【0099】
入射側偏光板420R,420G,420Bにおける液晶装置側(光射出側)の面には
、液晶装置側光学要素としての透光性基板430R,430G,430Bがそれぞれ接着
層Cを介して接着されている。透光性基板430R,430G,430Bの光射出面には
、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板430R,430G,430Bは
、例えばサファイアからなる透光性基板である。サファイアからなる透光性基板は、熱伝
導率が約40W/(m・K)と高い上、硬度も非常に高く、熱膨張率は小さく、傷がつき
にくく透明度が高い。なお、中程度の輝度として安価性を重視する場合には、約10W/
(m・K)の熱伝導率を有する水晶からなる透光性基板を用いてもよい。透光性基板43
0R,430G,430Bの厚さは、熱伝導性の観点からいえば0.2mm以上であるこ
とが好ましく、装置の小型化の観点からいえば2.0mm以下であることが好ましい。
【0100】
入射側偏光板420R,420G,420Bにおける液晶装置側の面とは反対側(光入
射側)の面には、反対側光学要素としての透光性基板440R,440G,440Bがそ
れぞれ接着層Cを介して接着されている。透光性基板440R,440G,440Bの光
入射面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性基板440R,440G,
440Bは、透光性基板430R,430G,430Bと同様に、例えばサファイアから
なる透光性基板である。
【0101】
射出側偏光板450R,450G,450Bは、図5に示すように、液晶装置410R
,410G,410Bとクロスダイクロイックプリズム500との間に配置され、液晶装
置410R,410G,410Bから射出された光のうち、所定の方向に軸を有する直線
偏光のみを透過し、その他の光を吸収する機能を有している。
【0102】
射出側偏光板450Rは、図6(b)に示すように、偏光層50と、偏光層50を支持
する支持層52とを有している。そして、支持層52が偏光層50における液晶装置41
0Rとは反対側(クロスダイクロイックプリズム500側)になるように、射出側偏光板
450Rがクロスダイクロイックプリズム500の光入射端面に接着層Cを介して接着さ
れている。偏光層50及び支持層52としては、入射側偏光板420Rのものと同様の材
料を用いることができる。他の射出側偏光板450G,450Bも、射出側偏光板450
Rと同様に構成されている。
【0103】
射出側偏光板450R,450G,450Bにおける液晶装置側(光入射側)の面には
、液晶装置側光学要素としての透光性基板460R,460G,460Bがそれぞれ接着
層Cを介して接着されている。透光性基板460R,460G,460Bの光入射面には
、図示しない反射防止層が形成されている。透光性部材460R,460G,460Bも
、透光性基板430R,430G,430Bなどと同様に、例えばサファイアからなる透
光性基板である。
【0104】
射出側偏光板450R,450G,450Bにおける液晶装置側の面とは反対側(光射
出側)の面には、反対側光学要素としての透光性基板470R,470G,470Bがそ
れぞれ接着層Cを介して接着されている。透光性基板470R,470G,470Bの光
射出面には、図示しない反射防止層が形成されている。透光性部材470R,470G,
470Bも、透光性基板430R,430G,430Bなどと同様に、例えばサファイア
からなる透光性基板である。
【0105】
入射側偏光板420R,420G,420Bにける偏光層40及び支持層42の端面並
びに射出側偏光板450R,450G,450Bにおける偏光層50及び支持層52の端
面は、接着層Cで取り囲まれている。接着層Cに用いる接着剤としては、例えばUV硬化
性の接着剤や可視光短波長硬化性の接着剤などを好適に用いることができる。なお、粘着
剤を用いてもよい。
【0106】
これらの入射側偏光板420R,420G,420B及び射出側偏光板450R,45
0G,450Bは、互いの偏光軸の方向が直交するように設定・配置されている。
【0107】
クロスダイクロイックプリズム500は、各射出側偏光板450R,450G,450
Bから射出された各色光ごとに変調された光学像を合成して、カラー画像を形成する光学
素子である。クロスダイクロイックプリズム500は、図5(a)に示すように、液晶装
置410R,410G,410Bで変調された色光をそれぞれ入射する3つの光入射端面
と、合成された色光を射出する光射出端面とを有している。このクロスダイクロイックプ
リズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリ
ズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状
の一方の界面に形成された誘電体多層膜は、赤色光を反射するものであり、他方の界面に
形成された誘電体多層膜は、青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によっ
て赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光
が合成される。
クロスダイクロイックプリズム500は、熱伝導性のスペーサ710(図5(b)参照
。)を介して筐体700に配設されている。
【0108】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学系600
によって拡大投写され、スクリーンSCR上で大画面画像を形成する。
【0109】
なお、ここでは図示を省略したが、プロジェクタ1000内には、各光学系などを冷却
するための少なくとも1つのファン及び複数の冷却風流路が設けられている。プロジェク
タ1000外部から取り込まれた空気は、これらファン及び複数の冷却風流路によってプ
ロジェクタ1000内を循環し、外部へと排出される。図5に示すように、筐体700に
設けられた通風孔(冷却風流路)から流れ込む空気が、クロスダイクロイックプリズム5
00などからの放熱を促進させる。
これにより、プロジェクタ1000の各光学系の熱を効率的に除去することができる。
【0110】
このように構成された実施形態2に係るプロジェクタ1000について説明するにあた
り、以下では説明を簡略化するため、3つの各色光の光路のうち赤色光の光路に配置され
た部材の構成をもとにして、実施形態2に係るプロジェクタ1000をさらに詳細に説明
する。
【0111】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、偏光層40及び支持層42を有す
る入射側偏光板420Rと、入射側偏光板420Rにおける光射出面に接着層Cを介して
接着された透光性基板430Rと、入射側偏光板420Rにおける光入射面に接着層Cを
介して接着された透光性基板440Rと、偏光層50及び支持層52を有する射出側偏光
板450Rと、射出側偏光板450Rにおける光入射面に接着層Cを介して接着された透
光性基板460Rと、射出側偏光板450Rにおける光射出面に接着層Cを介して接着さ
れた透光性基板470Rとを備えている。そして、支持層42,52は、高温で強酸を遊
離する添加物を含有しない三酢酸セルロースからなり、三酢酸セルロースの持つアセチル
基の酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されている。
【0112】
このため、実施形態2に係るプロジェクタ1000によれば、支持層42,52が高温
で強酸を遊離する添加物を含有しない三酢酸セルロースからなるため、高温環境下におい
て添加物に起因する強酸の遊離を抑制することが可能となる。その結果、遊離された強酸
によって三酢酸セルロースが攻撃されて変性してしまうことがなくなり、かつ、三酢酸セ
ルロース自体が酢酸を遊離しにくくなっているため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑
制することが可能となる。その結果、投写画像の画像品質を向上することが可能となる。
【0113】
また、実施形態2に係るプロジェクタ1000によれば、入射側偏光板420Rにおけ
る光射出面には透光性基板430Rが接着され、入射側偏光板420Rにおける光入射面
には透光性基板440Rが接着されているため、入射側偏光板420Rで発生した熱を透
光性基板430R,440Rに伝達することが可能になる。その結果、入射側偏光板42
0Rの温度上昇を抑制することが可能となる。
【0114】
また、実施形態2に係るプロジェクタ1000によれば、射出側偏光板450Rにおけ
る光入射面には透光性基板460Rが接着され、射出側偏光板450Rにおける光射出面
には透光性基板470Rが接着されているため、射出側偏光板450Rで発生した熱を透
光性基板460R,470Rに伝達することが可能になる。その結果、射出側偏光板45
0Rの温度上昇を抑制することが可能となる。
【0115】
また、実施形態2に係るプロジェクタ1000によれば、入射側偏光板420Rを透光
性基板430R,440Rによって両面から挟んだ構造を有し、射出側偏光板450Rを
透光性基板460R,470Rによって両面から挟んだ構造を有しているため、所定の機
械的強度を得ることができる。
【0116】
また、実施形態2に係るプロジェクタ1000によれば、入射側偏光板420Rと透光
性基板430R,440R及び射出側偏光板450Rと透光性基板460R,470Rは
、それぞれ接着層Cを介して接着されているため、各部材間の界面における表面反射の発
生が抑制され、光透過率を高めることが可能となる。その結果、投写画像の明るさを向上
することが可能となる。また、入射側偏光板420R及び透光性基板430R,440R
の線膨張係数並びに射出側偏光板450R及び透光性基板460R,470Rの線膨張係
数がそれぞれ異なる場合であっても、各部材間の接着面における剥離が起こりにくくなり
、長期信頼性の低下を抑制することが可能となる。
【0117】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、図5及び図6に示すように、入射
側偏光板420Rにおける偏光層40及び支持層42の端面並びに射出側偏光板450R
における偏光層50及び支持層52の端面は、接着層Cで取り囲まれている。
【0118】
これにより、支持層42,52が外気に触れることがなくなるため、外気からの水分の
浸入を抑制することが可能になる。このため、外気からの水分の浸入に起因して支持層4
2,52が膨張・変形してしまうことが抑制され、支持層42,52における分子配向の
乱れの発生を抑制することが可能になる。その結果、入射側偏光板420R又は射出側偏
光板450Rの偏光特性が低下して入射側偏光板420R又は射出側偏光板450Rを通
過する光束の品質が低下してしまうのを抑制することが可能となり、投写画像の画像品質
を向上することが可能になる。
【0119】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、入射側偏光板420Rは、図5及
び図6(a)に示すように、偏光層40の光入射側にのみ、偏光層40を支持する支持層
42を有している。
【0120】
これにより、光射出側の支持層における分子配向の乱れの発生が存在しなくなる。つま
り、支持層における熱歪による複屈折が、偏光層40と液晶装置410Rとの間に存在し
ないので、偏光層40で所定の方向に軸を有する直線偏光に揃えられた光がそのままの状
態で液晶装置410Rに到達することとなる。このため、入射側偏光板420Rの温度上
昇に起因して入射側偏光板としての偏光特性が大きく低下して投写画像の画像品質を大き
く低下させてしまうことがなくなる。なお、この場合、仮に温度上昇に起因して光入射側
の支持層42における偏光特性が若干低下したとしても、その偏光特性の低下は入射側偏
光板420Rの偏光層40で補償され、射出側偏光板450Rの偏光層50で誤って検光
されてしまうことはないため、投写画像の画像品質を大きく低下させてしまうことはない

【0121】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、射出側偏光板450Rは、図5及
び図6(b)に示すように、偏光層50の光射出側にのみ、偏光層50を支持する支持層
52を有している。
【0122】
これにより、光入射側の支持層における分子配向の乱れの発生が存在しなくなる。つま
り、支持層における熱歪による複屈折が、偏光層50と液晶装置410Rとの間に存在し
ないので、液晶装置410Rによって変調された光がそのままの状態で偏光層50に到達
することとなる。このため、射出側偏光板450Rの温度上昇に起因して射出側偏光板と
しての偏光特性が大きく低下して投写画像の画像品質を大きく低下させてしまうことがな
くなる。なお、この場合、仮に温度上昇に起因して光射出側の支持層52における偏光特
性が若干低下したとしても、その偏光特性の低下は偏光層50で検光されてしまうことは
ないため、投写画像の画像品質を大きく低下させてしまうことはない。
【0123】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,440R,
460R,470Rは、サファイアからなる透光性基板である。
【0124】
サファイアからなる透光性基板は熱伝導性に非常に優れているため、入射側偏光板42
0R又は射出側偏光板450Rで発生した熱を効率よく系外に放散させることができ、入
射側偏光板420R又は射出側偏光板450Rの温度上昇を効果的に抑制することが可能
となる。
【0125】
実施形態1に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,440R,
460R,470Rは、同一材料からなる透光性基板であるため、製造コストの低減を図
ることが可能となる。また、線膨張係数が一致するため、内部応力による歪みを低減する
ことが可能となる。
【0126】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、図5(b)及び図6に示すように
、透光性基板430Rと筐体700との間で熱を伝達する熱伝導部材720と、透光性基
板460Rと筐体700との間で熱を伝達する熱伝導部材722とをさらに備えている。
【0127】
これにより、入射側偏光板420R又は射出側偏光板450Rで発生した熱は、透光性
基板430R,460R及び熱伝導部材720,722を介し筐体700に放散されるよ
うになるため、プロジェクタの放熱性能を高めることができる。
【0128】
熱伝導部材720,722の材料としては、例えばアルミニウムやアルミニウム合金な
どの金属を好ましく用いることができる。
【0129】
実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、透光性基板430R,460Rを
冷却する冷却風流路が設けられている。
【0130】
これにより、冷却風流路からの冷却風によって透光性基板430R,460Rを冷却す
ることができるため、透光性基板430R,460Rの温度上昇を抑制し、入射側偏光板
420R又は射出側偏光板450Rで発生した熱を効率的に除去することができる。
【0131】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係るプロジェクタ1002の要部を説明するために示す図である
。図7(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図であり
、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。図8は、射出側偏光板450Rの周辺
部分を側面から見た図である。なお、図7において、図5と同一の部材については同一の
符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0132】
実施形態3に係るプロジェクタ1002は、基本的には実施形態2に係るプロジェクタ
1000とよく似た構成を有しているが、実施形態2に係るプロジェクタ1000とは、
射出側偏光板の光入射側に接着されている部材が異なっている。
【0133】
すなわち、実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、射出側偏光板450R
,450G,450Bの光入射面には、液晶装置側光学要素としての透光性基板460R
,460G,460Bがそれぞれ接着されているのに対し、実施形態3に係るプロジェク
タ1002においては、射出側偏光板450R,450G,450Bの光入射側面には、
図7及び図8に示すように、液晶装置側光学要素として、液晶装置410R,410G,
410Bから射出された光のうち所定の方向に軸を有する直線偏光のみを透過しその他の
光を反射する偏光分離光学素子480R,480G,480Bが接着されている。
【0134】
実施形態3に係るプロジェクタ1002における偏光分離光学素子480R,480G
,480B等について説明するにあたり、以下では説明を簡略化するため、3つの各色光
の光路のうち赤色光の光路に配置された部材の構成をもとにして詳細に説明する。
【0135】
偏光分離光学素子480Rは、図8に示すように、二軸方向性の有るフィルムを複数枚
積層してXY型の偏光特性を持たせたXY型偏光フィルム482Rを2個のガラスプリズ
ム484R,486Rで挟み込んだ構造を有している。偏光分離光学素子480Rにおけ
る光入射面とXY型偏光フィルム482Rとのなす角度は、例えば30度に設定されてい
る。偏光分離光学素子480Rの光入射面には、図示しない反射防止層が形成されている

【0136】
偏光分離光学素子480Rにおいて、液晶装置410Rで変調された偏光光のうちXY
型偏光フィルム482Rで反射された偏光光は、偏光分離光学素子480Rの側面からそ
のまま射出されるか、一旦偏光分離光学素子480Rの光入射面で反射されてから偏光分
離光学素子480Rの側面から射出されることになる。この場合、偏光分離光学素子48
0Rの光入射面においては全反射されることになるため、迷光レベルを低減することもで
きる。
【0137】
偏光分離光学素子480Rの上方には、XY型偏光フィルム482Rで反射されて偏光
分離光学素子480Rから射出される偏光光を吸収するための光吸収手段488Rが配設
されている。これにより、光吸収手段488Rが、XY型偏光フィルム482Rで反射さ
れて系外に逃がされた光を効果的に捕捉するため、プロジェクタにおける迷光の発生を抑
制することが可能になり、投写画像の画像品質をさらに向上することができるようになる
。また、光吸収手段488Rが偏光分離光学素子480Rの上方に配設されているため、
光吸収手段488Rで発生した熱は対流によって光学系の上方に逃がされることになり、
光学系に与える熱の影響を最小限のものにすることができる。
【0138】
このように、実施形態3に係るプロジェクタ1002は、実施形態2に係るプロジェク
タ1000の場合とは、射出側偏光板の光入射側に接着されている部材が異なるが、実施
形態1に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、支持層42,52が高温で強酸を遊
離する添加物を含有しない三酢酸セルロースからなるため、高温環境下において添加物に
起因する強酸の遊離を抑制することが可能となる。その結果、遊離された強酸によって三
酢酸セルロースが攻撃されて変性してしまうことがなくなる。また、支持層42,52は
、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されてい
るため、三酢酸セルロース自体が酢酸を遊離しにくくなっている。このため、黄変の発生
及び機械特性の低下を抑制することが可能となる。その結果、投写画像の画像品質を向上
することが可能となる。
【0139】
実施形態3に係るプロジェクタ1002においては、液晶装置410Rから射出された
光のうち所定の方向に軸を有する直線偏光は、偏光分離光学素子480Rを透過して投写
光学系600(図示せず。)で投写されてスクリーンSCR(図示せず。)に投写される
こととなる一方、その他の光、すなわち投写光学系600への進行を禁止されるべき光(
射出側偏光板450Rの偏光層50を透過しない偏光成分)は、偏光分離光学素子480
Rで反射されて系外に逃がされる。このため、射出側偏光板450Rに入射する光のうち
射出側偏光板450Rの偏光層50を透過しない偏光成分の光は、前段としての偏光分離
光学素子480Rによってほとんど除去されているため、射出側偏光板450Rにおける
発熱そのものが効果的に抑制され、射出側偏光板450Rの温度上昇をさらに効果的に抑
制することが可能になる。
また、偏光分離光学素子480RのXY型偏光フィルム482Rは、反射型偏光板であ
り、照明光軸100ax(図示せず。)に対して傾いて構成されているので、検光子とし
ての特性にやや劣るところがある。しかし、偏光分離光学素子480Rで画像には不要と
なる光を取り除けなかった分を、射出側偏光板450Rによって確実に遮断することがで
きるので、良好な画像を得ることが可能となる。
つまり、検光子としての作用及び熱の発生を偏光分離光学素子480Rと射出側偏光板
450Rとで分担することによって、装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0140】
実施形態3に係るプロジェクタ1002は、射出側偏光板の光入射側に接着されている
部材が異なる点以外の点では、実施形態2に係るプロジェクタ1000と同様の構成を有
するため、実施形態2に係るプロジェクタ1000の場合と同様の効果を有する。
【0141】
[実施形態4]
図9は、実施形態4に係るプロジェクタ1004の要部を説明するために示す図である
。図9(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図であり
、図9(b)は図9(a)のA−A断面図である。なお、図9において、図5と同一の部
材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0142】
実施形態4に係るプロジェクタ1004(図示せず。)は、基本的には実施形態2に係
るプロジェクタ1000とよく似た構成を有しているが、入射側偏光板に接着された透光
性基板が集光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に接着された透光性基板がクロ
スダイクロイックプリズムに接着されている点で、実施形態2に係るプロジェクタ100
0とは異なっている。
【0143】
すなわち、実施形態4に係るプロジェクタ1004においては、図9に示すように、入
射側偏光板420Rに接着された反対側光学要素としての透光性基板440Rは、集光レ
ンズ300Rの光入射面に接着層Cを介して接着されている。他の透光性基板440G,
440Bも、集光レンズ300G,300Bの光入射面にそれぞれ接着されている。
また、実施形態4に係るプロジェクタ1004においては、図9に示すように、射出側
偏光板450Rに接着された反対側光学要素としての透光性基板470Rは、クロスダイ
クロイックプリズム500の光入射端面に接着層Cを介して接着されている。他の透光性
基板470G,470Bも、クロスダイクロイックプリズム500の光入射端面にそれぞ
れ接着されている。
【0144】
このように、実施形態4に係るプロジェクタ1004は、入射側偏光板に接着された透
光性基板が集光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に接着された透光性基板がク
ロスダイクロイックプリズムに接着されている点で、実施形態2に係るプロジェクタ10
00とは異なるが、実施形態2に係るプロジェクタ1000の場合と同様に、支持層42
,52が高温で強酸を遊離する添加物を含有しない三酢酸セルロースからなるため、高温
環境下において添加物に起因する強酸の遊離を抑制することが可能となる。その結果、遊
離された強酸によって三酢酸セルロースが攻撃されて変性してしまうことがなくなる。ま
た、支持層42,52は、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2つ
の単結合に処理されているため、三酢酸セルロース自体が酢酸を遊離しにくくなっている
。このため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可能となる。その結果、投
写画像の画像品質を向上することが可能となる。
【0145】
実施形態4に係るプロジェクタ1004においては、入射側偏光板420R,420G
,420Bに接着された透光性基板440R,440G,440Bは、集光レンズ300
R,300G,300Bの光入射面に接着層Cを介して接着されている。
このため、入射側偏光板420R,420G,420Bにおける偏光層40で発生した
熱を透光性基板440R,440G,440Bを介して集光レンズ300R,300G,
300Bに伝達することができるため、入射側偏光板420R,420G,420Bの温
度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0146】
また、透光性基板440R,440G,440Bが熱容量の比較的大きな集光レンズ3
00R,300G,300Bに接着されているため、透光性基板440R,440G,4
40B及び入射側偏光板420R,420G,420Bの温度上昇を抑制し、プロジェク
タの放熱性能を高めることができる。
【0147】
実施形態4に係るプロジェクタ1004においては、射出側偏光板450R,450G
,450Bに接着された透光性基板470R,470G,470Bは、クロスダイクロイ
ックプリズム500の各光入射端面に接着層Cを介して接着されている。
このため、射出側偏光板450R,450G,450Bにおける偏光層50で発生した
熱を透光性基板470R,470G,470Bを介してクロスダイクロイックプリズム5
00に伝達することができるため、射出側偏光板450R,450G,450Bの温度上
昇をさらに抑制することが可能となる。
【0148】
また、透光性基板470R,470G,470Bが熱容量の比較的大きなクロスダイク
ロイックプリズム500に接着されているため、透光性基板470R,470G,470
B及び射出側偏光板450R,450G,450Bの温度上昇を抑制し、プロジェクタの
放熱性能を高めることができる。
【0149】
実施形態4に係るプロジェクタ1004は、入射側偏光板に接着された透光性基板が集
光レンズに接着されている点及び射出側偏光板に接着された透光性基板がクロスダイクロ
イックプリズムに接着されている点以外の点では、実施形態2に係るプロジェクタ100
0と同様の構成を有するため、実施形態2に係るプロジェクタ1000の場合と同様の効
果を有する。
【0150】
[実施形態5]
図10は、実施形態5に係るプロジェクタ1006の要部を説明するために示す図であ
る。図10(a)はクロスダイクロイックプリズム500の周辺部分を上面から見た図で
あり、図10(b)は図10(a)のA−A断面図である。なお、図10において、図9
と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0151】
実施形態5に係るプロジェクタ1006は、基本的には実施形態4に係るプロジェクタ
1004とよく似た構成を有しているが、入射側偏光板に接着される反対側光学要素とし
ての透光性基板がない点及び射出側偏光板に接着される反対側光学要素としての透光性基
板がない点で、実施形態4に係るプロジェクタ1004とは異なっている。
【0152】
すなわち、実施形態5に係るプロジェクタ1006においては、図10に示すように、
入射側偏光板420R,420G,420Bが集光レンズ300R,300G,300B
の光射出面に接着層Cを介して接着されている。また、射出側偏光板450R,450G
,450Bがクロスダイクロイックプリズム500の各光入射端面に接着層Cを介して接
着されている。
【0153】
このように、実施形態5に係るプロジェクタ1006は、入射側偏光板に接着される反
対側光学要素としての透光性基板がない点及び射出側偏光板に接着される反対側光学要素
としての透光性基板がない点で、実施形態4に係るプロジェクタ1004とは異なるが、
実施形態2に係るプロジェクタ1000及び実施形態4に係るプロジェクタ1004の場
合と同様に、支持層42,52が高温で強酸を遊離する添加物を含有しない三酢酸セルロ
ースからなるため、高温環境下において添加物に起因する強酸の遊離を抑制することが可
能となる。その結果、遊離された強酸によって三酢酸セルロースが攻撃されて変性してし
まうことがなくなる。また、支持層42,52は、三酢酸セルロースの持つアセチル基の
酸素原子2重結合が2つの単結合に処理されているため、三酢酸セルロース自体が酢酸を
遊離しにくくなっている。このため、黄変の発生及び機械特性の低下を抑制することが可
能となる。その結果、投写画像の画像品質を向上することが可能となる。
【0154】
実施形態5に係るプロジェクタ1006は、入射側偏光板に接着される反対側光学要素
としての透光性基板がない点及び射出側偏光板に接着される反対側光学要素としての透光
性基板がない点以外の点では、実施形態2に係るプロジェクタ1000及び実施形態4に
係るプロジェクタ10004と同様の構成を有するため、実施形態2に係るプロジェクタ
1000及び実施形態4に係るプロジェクタ1004の場合と同様の効果を有する。
【0155】
以上、本発明の光学素子及びプロジェクタを上記の各実施形態に基づいて説明したが、
本発明は上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において
種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0156】
(1)上記各実施形態では、支持層として、高温で強酸を遊離する添加物を含有しない三
酢酸セルロースからなり、かつ、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合
が2つの単結合に処理されているものを用いた場合を例示して説明したが、本発明はこれ
に限定されるものではない。支持層として、高温で強酸を遊離する添加物を含有しない三
酢酸セルロースからなる特徴、又は、三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重
結合が2つの単結合に処理されている特徴の少なくとも一方の特徴を有するものを用いて
もよい。
【0157】
(2)上記実施形態1に係る光学素子1においては、光学要素及び他の光学要素が透光性
基板である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、クロス
ダイクロイックプリズム、偏光分離光学素子及びレンズであってもよい。
【0158】
(3)上記実施形態1に係る光学素子1においては、光学要素としての透光性基板20及
び他の光学要素としての透光性基板30の材料として、ともにサファイアを用いたが、本
発明はこれに限定されるものではない。透光性基板20,30の材料として、サファイア
のほかに、水晶又は光学ガラスを用いてもよい。透光性基板20,30の材料として水晶
を用いた場合には、サファイアの場合と同様の効果を得ることができる。また、透光性基
板20,30の材料として光学ガラスを用いた場合には、光学ガラスは複屈折が小さいた
め、透光性基板を通過する光束の品質低下を抑制することができ、偏光板10に入射する
光束又は偏光板10から射出される光束の品質低下を抑制することができる。また、光学
ガラスは熱膨張率が比較的小さいため、熱による伸び・変形が大きいという性質を有する
偏光板10をこのような熱膨張率の小さな光学ガラスからなる透光性基板に接着すること
により、偏光板10自体の変形を抑えることができる。なお、光学ガラスとしては、石英
ガラス、BK7やパイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、白板ガラス、結晶化ガ
ラスなどを好適に用いることができる。つまり、透光性基板20,30が無機材料であれ
ばよい。
なお、上述したことは、上記実施形態2〜5に係るプロジェクタ1000〜1006に
おける透光性基板430R,430G,430B,440R,440G,440B,46
0R,460G,460B,470R,470G,470Bについても同様に言えること
であり、上記した無機材料から適宜選択することができる。
【0159】
(4)上記実施形態1に係る光学素子1においては、光学要素及び他の光学要素の材料と
して、ともにサファイアを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
光学要素の材料がサファイア又は水晶であり、他の光学要素の材料が光学ガラスであって
もよい。
なお、上述したことは、上記実施形態2〜5に係るプロジェクタ1000〜1006に
おける透光性基板430R,430G,430B,440R,440G,440B,46
0R,460G,460B,470R,470G,470Bについても同様に言えること
である。
【0160】
(5)本発明の光学素子は、液晶装置を備えるプロジェクタや偏光顕微鏡等の光学機器に
好適に用いることができる。
【0161】
(6)上記実施形態3に係るプロジェクタ1002においては、偏光分離光学素子として
、二軸方向性の有るフィルムを複数枚積層してXY型の偏光特性を持たせたXY型偏光フ
ィルムを用いた偏光分離光学素子480R,480G,480Bを例示して説明したが、
本発明はこれに限定されるものではない。偏光分離光学素子としては、例えば誘電体多層
膜からなる偏光分離光学素子、多数の微細金属細線が配列されたワイヤグリッド型の偏光
分離光学素子などを好ましく用いることができる。
【0162】
(7)上記実施形態2及び4に係るプロジェクタ1000,1004においては、入射側
偏光板420R,420G,420Bのすべてが液晶装置側光学要素としての透光性基板
430R,430G,430Bと反対側光学要素としての透光性基板440R,440G
,440Bとの間にそれぞれ挟み込まれ、射出側偏光板450R,450G,450Bの
すべてが液晶装置側光学要素としての透光性基板460R,460G,460Bと反対側
光学要素としての透光性基板470R,470G,470Bとの間にそれぞれ挟み込まれ
ている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。入射側偏光
板420R,420G,420Bのうち少なくとも1つの入射側偏光板が液晶装置側光学
要素としての透光性基板430R,430G,430Bと反対側光学要素としての透光性
基板440R,440G,440Bとの間に挟み込まれ、射出側偏光板450R,450
G,450Bのうち少なくとも1つの射出側偏光板が液晶装置側光学要素としての透光性
基板460R,460G,460Bと反対側光学要素としての透光性基板470R,47
0G,470Bとの間に挟み込まれている場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0163】
(8)上記実施形態3に係るプロジェクタ1002においては、射出側偏光板450R,
450G,450Bのすべてが液晶装置側光学要素としての偏光分離光学素子480R,
480G,480Bと反対側光学要素としての透光性基板470R,470G,470B
との間にそれぞれ挟み込まれている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定され
るものではない。射出側偏光板450R,450G,450Bのうち少なくとも1つの射
出側偏光板が液晶装置側光学要素としての偏光分離光学素子480R,480G,480
Bと反対側光学要素としての透光性基板470R,470G,470Bとの間に挟み込ま
れている場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0164】
(9)上記実施形態5に係るプロジェクタ1006においては、入射側偏光板420R,
420G,420Bのすべてが透光性基板430R,430G,430Bと集光レンズ3
00R,300G,300Bとの間にそれぞれ挟み込まれ、射出側偏光板450R,45
0G,450Bのすべてが透光性基板460R,460G,460Bとクロスダイクロイ
ックプリズム500との間にそれぞれ挟み込まれている場合を例示して説明したが、本発
明はこれに限定されるものではない。入射側偏光板420R,420G,420Bのうち
少なくとも1つの入射側偏光板が透光性基板430R,430G,430Bと集光レンズ
300R,300G,300Bとの間に挟み込まれ、射出側偏光板450R,450G,
450Bのうち少なくとも1つの射出側偏光板が透光性基板460R,460G,460
Bとクロスダイクロイックプリズム500との間に挟み込まれている場合も本発明の範囲
に含まれるものである。
【0165】
(10)上記実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、光源装置として、楕円
面リフレクタ114と、楕円面リフレクタ114の第1焦点近傍に発光中心を有する発光
管112と、凹レンズ118とを有する光源装置110を用いたが、本発明はこれに限定
されるものではなく、放物面リフレクタと、放物面リフレクタの焦点近傍に発光中心を有
する発光管とを有する光源装置をも好ましく用いることができる。
【0166】
(11)上記実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、発光管112に反射手
段としての副鏡116が配設されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定
されるものではなく、発光管に副鏡が配設されていないものであっても本発明を適用する
ことができる。
【0167】
(12)上記実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、光均一化光学系として
、レンズアレイからなるレンズインテグレータ光学系を用いたが、本発明はこれに限定さ
れるものではなく、ロッド部材からなるロッドインテグレータ光学系をも好ましく用いる
ことができる。
【0168】
(13)上記実施形態2に係るプロジェクタ1000においては、3つの液晶装置410
R,410G,410Bを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限
定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶装置を用いたプロジェクタにも適
用可能である。
【0169】
(14)本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適
用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェク
タに適用する場合にも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】実施形態1に係る光学素子1を説明するために示す図。
【図2】実施形態1に係る光学素子1が有する効果について説明するために示す図。
【図3】実施形態1の変形例に係る光学素子2を模式的に示す図。
【図4】実施形態2に係るプロジェクタ1000の光学系を示す図。
【図5】実施形態2に係るプロジェクタ1000の要部を説明するために示す図。
【図6】実施形態2に係るプロジェクタ1000の要部を説明するために示す図。
【図7】実施形態3に係るプロジェクタ1002の要部を説明するために示す図。
【図8】射出側偏光板450Rの周辺部分を側面から見た図。
【図9】実施形態4に係るプロジェクタ1004の要部を説明するために示す図。
【図10】実施形態5に係るプロジェクタ1006の要部を説明するために示す図。
【符号の説明】
【0171】
1,1a,1b,1c,2…光学素子、10,10a,11…偏光板、12,40,50
…偏光層、14,14a,16,42,52…支持層、20,30,430R,430G
,430B,440R,440G,440B,460R,460G,460B,470R
,470G,470B…透光性基板、100…照明装置、100ax…照明光軸、110
…光源装置、112…発光管、114…楕円面リフレクタ、116…副鏡、118…凹レ
ンズ、120…第1レンズアレイ、122…第1小レンズ、130…第2レンズアレイ、
132…第2小レンズ、140…偏光変換素子、150…重畳レンズ、200…色分離導
光光学系、210,220…ダイクロイックミラー、230,240,250…反射ミラ
ー、260…入射側レンズ、270…リレーレンズ、300R,300G,300B…集
光レンズ、410R,410G,410B…液晶装置、420R,420G,420B…
入射側偏光板、450R,450G,450B…射出側偏光板、480R,480G,4
80B…偏光分離光学素子、482R…XY型偏光フィルム、484R,486R…ガラ
スプリズム、488R…光吸収手段、500…クロスダイクロイックプリズム、600…
投写光学系、700…筐体、710…熱伝導性のスペーサ、720,722…熱伝導部材
、1000…プロジェクタ、C…接着剤、SCR…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光層及び前記偏光層を支持する少なくとも1つの支持層を有する偏光板と、
前記偏光板における一方の面に接着層を介して接着された光学要素と、
前記偏光板における他方の面に接着層を介して接着された他の光学要素とを備え、
前記支持層は、三酢酸セルロースを含み、
前記支持層は、前記三酢酸セルロースから酢酸が遊離されないように構成されていること
を特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、
前記支持層は、高温で強酸を遊離する添加物を含有しないことを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学素子において、
前記支持層は、前記三酢酸セルロースの持つアセチル基の酸素原子2重結合が2つの単結
合に処理されていることを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子において、
前記偏光板における少なくとも前記支持層の端面は、接着層で取り囲まれていることを
特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子において、
前記光学要素及び前記他の光学要素の材料は、サファイア若しくは水晶又は光学ガラス
からなることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
照明光束を射出する照明装置と、
前記照明装置からの前記照明光束を画像情報に応じて変調する液晶装置と、
前記液晶装置で変調された光を投写する投写光学系と、
前記液晶装置の光入射側及び光射出側の少なくとも一方に配置された光学素子とを備え

前記光学素子は請求項1〜5のいずれかに記載された光学素子であることを特徴とする
プロジェクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のプロジェクタにおいて、
前記液晶装置の光入射側に配置される集光レンズをさらに備え、
前記光学素子は、前記液晶装置の光入射側に配置されており、
前記光学素子の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板における前記液晶装置側の面
とは反対側の面に接着される反対側光学要素は集光レンズであることを特徴とするプロジ
ェクタ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプロジェクタにおいて、
前記照明装置からの照明光束を複数の色光に分離して被照明領域に導光する色分離導光
光学系と、
前記液晶装置として、前記色分離導光光学系で分離された複数の色光のそれぞれを画像
情報に応じて変調する複数の液晶装置と、
前記複数の液晶装置によって変調された各色光をそれぞれ入射する複数の光入射端面及
び合成された色光を射出する光射出端面を有するクロスダイクロイックプリズムとをさら
に備え、
前記光学素子は、前記複数の液晶装置のうち少なくとも1つの液晶装置の光射出側に配
置されており、
前記光学素子の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板における前記液晶装置側の
面とは反対側の面に接着される反対側光学要素は、前記クロスダイクロイックプリズムで
あることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
請求項6又は7に記載のプロジェクタにおいて、
前記光学素子は、前記液晶装置の光射出側に配置されており、
前記光学素子の光学要素と他の光学要素とのうち前記偏光板における前記液晶装置側の
面に接着される液晶装置側光学要素は、入射する光のうち所定の方向に軸を有する直線偏
光を透過しその他の光を反射する機能を有する偏光分離光学素子であることを特徴とする
プロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−256734(P2007−256734A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82264(P2006−82264)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】