説明

光学装置

【課題】ユーザの使い勝手を向上させ、軽量化、低コスト化を図ることができ、また外力がかかった場合に防水構造の破壊を抑制することが可能となる光学装置を提供する。
【解決手段】光学系を保持した光学系保持部材1と、前記光学系を覆うカバーケース13とを備え、これらの光学系保持部材とカバーケースとは当接部で防水シール30を介して嵌め合わされて固定され、これにより前記光学系を覆う閉鎖された空間領域が形成された光学装置であって、前記光学系保持部材が、前記カバーケースよりも高い剛性の材質で構成され、三脚座などの固定手段31が前記光学系保持部材側に設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双眼鏡などの観察用光学機器に用いられる構成に関するものであり、特に光学機器の振れ量を測定し、この検出出力によって光学機器の光学像を常に一定の位置に保持するように光軸を偏向させる像振れ補正装置つきの双眼鏡で、防水の機能を有した双眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、双眼鏡を三脚座に取り付けるようにする構造として、例えば特許文献1のように三脚座アダプターを双眼鏡に取り付け、この三脚座アダプターに三脚を取り付けるようにしたものや、特許文献2のように双眼鏡の中央の回動軸にアダプタを取り付け、このアダプタを介して三脚を取り付けるようにしたものが知られている。
また、特許文献3のように本体の中央部に合焦環を配置した望遠鏡において、本体の下部に三脚座を設け、その三脚座の位置が望遠鏡の重心位置より対物側に構成されているものが知られている。
【特許文献1】特開平8−201704号公報
【特許文献2】特開2000−111803号公報
【特許文献3】特開2000−19421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例の特許文献1、2等のもにおいては三脚座アダプターなどの取り付け部材が別途必要となりコストがかかり不便であり、また、これらのアダプターを携帯しなければならず不便である。さらに特許文献2のものでは、双眼鏡の2光軸の間に回転軸を持たないタイプの双眼鏡等においては、三脚の取り付け構造を構成することが困難である。また、特許文献3の構成においては、操作性の考慮はなされているが、軽量化、防水性等について配慮されていない。特に、上記従来例のいずれのものにも、本体に不意の外力がかかったときに、防水構造が破壊されないようにすることについての配慮がなされていない。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、ユーザの使い勝手を向上させ、軽量化、低コスト化を図ることができ、また外力がかかった場合に防水構造の破壊を抑制することが可能となる光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のように構成した光学装置を提供するものである。
すなわち、本発明の光学装置は、光学系を保持した光学系保持部材と、前記光学系を覆うカバーケースとを備え、これらの光学系保持部材とカバーケースとは当接部で嵌め合わされて固定され、これにより前記光学系を覆う閉鎖された空間領域が形成された光学装置であって、前記光学系保持部材が、前記カバーケースよりも高い剛性の材質で構成され、三脚座などの固定手段が前記光学系保持部材側に設けられることを特徴としている。また、本発明においては前記光学系保持部材と前記カバーケースとは、前記当接部において防水シールを介して嵌め合わされ、該当接部が水密に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザの使い勝手を向上させ、軽量化、低コスト化を図ることができ、また外力がかかった場合に防水構造の破壊を抑制することが可能となる光学装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、上記構成により本発明の課題を達成することが可能となるが、本発明の実施の形態においては、この光学装置をより具体的には、1対の対物レンズ、1対の接眼レンズ、複数のプリズムで構成された1対のプリズムユニット、振れ補正光学機構が保持された光学系保持部材と、これらの光学系を覆うカバーケースとを有し、これらの光学系保持部材とカバーケースとを当接部で防水シールを介して嵌め合わせて固定し、これにより前記光学系を覆う閉鎖された空間領域が形成された防水型双眼鏡を構成し、前記カバーケースをプラスチック材で形成すると共に、前記光学系保持部材をカバーケースよりも高い剛性のアルミダイキャスト・マグネシウムダイキャストなどの材質で形成し、三脚座などの固定手段を前記光学系保持部材と前記カバーケースとの当接部よりも、前記1対の対物レンズ側の前記光学系保持部材に設けるようにする。
【0008】
本実施の形態によれば、三脚座に双眼鏡を取り付けたときなどに不意の力が加わり本体の変形が起きても、光学保持部材とユニットケースの間の水密な構造を保持することができると共に、カバーケースをプラスチック材で構成することで、軽量化、低コスト化を図ることができ、ユーザの使い勝手の良い双眼鏡を得ることができる。
【実施例】
【0009】
以下に、本発明の実施例について説明する。
本発明の実施例では、上記した本発明を適用して防水型双眼鏡を構成した。
図1は本実施例の三脚座ネジ部を通過する断面での側面からみた防水型双眼鏡の断面図である。
また、図2は本実施例の光軸を通過する上面から見た防水型双眼鏡の断面図であり、図3は本実施例の防水型双眼鏡の全体斜視図である。
図1〜図3において、1は光学保持部材、L1は対物レンズ群、L2は振れ補正光学系、L3はプリズムユニット、L4は接眼レンズ群である。光学保持部材1には、対物レンズ群L1、振れ補正光学系L2、プリズムユニットL3と接眼レンズ群L4を構成した接眼ユニットが各部材を介して取り付けられている。
ここで、光学保持部材1は、高剛性を必要とする部材であることから、アルミダイキャスト・マグネシウムダイキャストなどの材質で作られている。
【0010】
光学保持部材1の中央上部には、対物レンズ群L1を保持する対物台2に取り付けられたネジ3と螺合したフォーカス軸4が嵌合しており、対物台2は、不図示の部分において光軸方向のみに移動可能なように規制され、フォーカス軸4にはフォーカスつまみ5が、ネジにより固定されている。
フォーカスつまみ5を回すことにより、対物台2が光軸方向で前後し、観察対象の像に対してピントをあわせることが可能となっている。
6は対物鏡筒であり、対物鏡筒6は対物台2にネジにより固定されており、対物鏡筒6には対物レンズ群L1が所定のレンズ間隔を持ち且つ光軸を共にして固定されている。
接眼レンズ群L4は、接眼鏡筒7に溶着による加締めにて所定のレンズ間隔を持ち且つ光軸を共にして固定されている。
【0011】
7は接眼鏡筒であり、接眼鏡筒7はヘリコイドネジ部7aによって接眼ホルダー8のヘリコイド部8aで螺合している。接眼鏡筒7には、カムフォロア9がネジによって固定されており、カムフォロア9は、接眼ホルダー8の外周に嵌合した視度調リング10に嵌め合わされており、視度調リング10を接眼レンズ群L4の光軸を中心に回転させるとカムフォロア9によって連結された接眼鏡筒7がヘリコイドのネジリードに沿って進退することになる。
これにより、観察者の左右の目の視度が異なっている場合に、調整を行うことが可能となる。
この構造は、左右のどちらかに構成されていれば良く、どちらか1方は固定された構造を持っていれば成立する。本実施例の場合は、左右とも同じ構成を持っておりどちらか1方は製造誤差上の光学調整を行った後に接着やネジによる固定を行う方法をとっている。
【0012】
本実施例の双眼鏡は、対物レンズ群L1の光軸と接眼レンズ群L4の光軸とが高さ方向でズレている構成を持っている。対物レンズ群L1と接眼レンズ群L4の間に設けられたプリズムユニットL3は、対物レンズ群L1の光軸を上方向へ移動させ、また倒立した対物の像を反転させるために、直角プリズムが3つ用いられている。
プリズムに入射した対物レンズ群L1の光軸の光線は、プリズムユニット内で折れ曲がり接眼レンズ群L4の光軸へ出射される。
【0013】
400は接眼ユニットであり、接眼ユニット400はプリズムユニットL3を保持したプリズムホルダー11、接眼鏡筒7、接眼ホルダー8などで構成されており、対物レンズ群L1の光軸を中心にした光学保持部材1の嵌合穴1aとプリズムホルダー11の嵌合軸11aとで嵌め合わされている。
接眼ユニット400内のプリズムホルダー11には、ギアプレート12がネジにより取り付けられており、接眼ユニット400の左右が、このギアベースで結合しており、接眼ユニット400を対物レンズ群L1の光軸を中心に回転させると左右の接眼ユニット400が連動して回転する構成となっている。
この構成により、観察者が双眼鏡を覗くときに観察者の目幅に合った位置へ接眼ユニット400を調整することが可能である。
【0014】
対物レンズ群L1とプリズムユニットL3の間には、可変頂角プリズム(VAP)ユニット20が本体21に構成され、配設されている。
本体21にはVAP素子(不図示)が収容されている。VAP素子は、2枚の透明板の間がベローズにより液密的に接続され、その中に所定の屈折率を有する透明液体が収容されている。
VAP素子は保持枠に保持され、この保持枠に形成されたコイル部と本体21に形成されたマグネット部とで電磁アクチュエータを構成し、その駆動により左右の各VAP素子の対物側の透明板がピッチ(垂直)方向に傾けられ接眼側の透明板がヨー(水平)方向に傾けられる。これによりVAP素子を通過する光線が偏向させられる。
また、本体21には双眼鏡本体の垂直方向の振れを検出する振れ検出センサ22と双眼鏡本体の水平方向の振れを検出する振れ検出センサ23が取り付けられたメイン基板24が固定されている。
メイン基板24には、CPUが実装されており、振れ検出センサ22・23にて検出された双眼鏡の振れ量を演算して、VAP素子を電磁アクチュエーターにて所定量駆動させ、振れ補正を行う。
【0015】
13はユニットのカバーケース、100は対物台2に固定された対物鏡筒6で構成された対物鏡筒ユニット、200はVAPを保持した振れ補正ユニットである。ユニットのカバーケース13によってこれらの対物鏡筒ユニット100と振れ補正ユニット200は覆われている。ユニットのカバーケース13の対物レンズ群L1より物体側には、保護ガラス14が嵌め合わされており、ユニットのカバーケース13と光学保持部材1によって閉鎖された領域が形成されている。
ユニットのカバーケース13は、ポリカーボネイト・ABSなどのプラスチック材料でつくられており、軽量化が計られている。
【0016】
ユニットのカバーケース13には、電池BOX15がネジにより固定され、電池BOX15とユニットのカバーケース13との間にはシールゴム16が設けられ、電池BOX15とユニットのカバーケース13との間から水などの侵入が無いように構成されている。
電池BOX15には、電池蓋17が蓋ロック18と共に設けられ、電池蓋17と電池BOX15との間には、シールゴム19が設けられており、電池蓋17を閉め、蓋ロック18でロックしたときに電池BOX15内に水が入らないようにシーリングされている。
電池BOX15には端子が設けられ、端子からはリード線によってメイン基板24に電源を供給し、防振機構を駆動する。
【0017】
ユニットのカバーケース13と光学保持部材1は、ユニットのカバーケースの光学保持部材1と嵌合するように構成されている。その際、この当接部にはシールゴム30がユニットのカバーケース13の突起部13aによって光学保持部材の溝部1b内で圧縮され挟み込まれている。
シールゴム16・19・30の材質は、ブチルゴムが用いられており、ブチルゴムのポアソン比は0.4以上、望ましくは0.49程度の材質で、気体透過係数は10g/m2・24H 以下、望ましくは4.8g/m2・24Hのものが用いられる。
以上の構成により、不意に外力等が双眼鏡本体に加わった場合にも、ユニットのカバーケース13と光学保持部材1との間から、水などの侵入を確実に防止することが可能となる。
【0018】
光学保持部材1には、三脚座ネジ本体31を取り付けるための顎部1cが構成されている。光学保持部材1の顎部1cは、光学保持部材1に設けられた溝部1bよりも外径側に構成され、且つ三脚座ネジ本体31および顎部1cの三脚ネジ本体31の取り付け部分は、光学保持部材1に設けられた溝部1bよりも対物側に構成されている。
三脚座ネジ本体31には、フランジ部が形成されており、このフランジ部の部分が顎部1cにネジ(図示省略)で固定されている。
三脚座ネジ本体31は、下カバー32によって覆われ、三脚座のネジ穴だけが露出する構成となっている。この構成により、三脚ネジ本体31のネジ穴の位置は、双眼鏡全体のほぼ重心位置に設定されている。
上カバー33は、ユニットのカバーケース13にネジにて固定されており、下カバー32は、ネジによって電池BOX15に固定され、保護ガラス14の物体側で上カバー33と噛み合わせ固定されている。
ユニットのカバーケース13には左右の外装ゴム34・35、上カバー33を固定するネジを隠し、且つ双眼鏡を保持したときに指先がかかる位置に設けられた左右の指かけゴム36・37が両面テープと接着剤によって固定されている。
上カバー33、下カバー32、外装ゴム34・35、指かけゴム36・37で双眼鏡の外観を構成している。
【0019】
上記のように、本実施例の光学機器である双眼鏡では、三脚ネジ本体31を固定する光学保持部材1の顎部1cが、カバーケース13と光学保持部材1の当接部(カバーケース13の突起部13a、シールゴム30および溝部1bの部分)とは別部分で、外周側に設けたことにより、三脚ネジ本体31のネジ穴に三脚の三脚ネジを螺合して三脚を取り付ける際の外力は光学保持部材1の剛性により受けられ、光学保持部材1に保持された光学ユニットに外力を伝えない構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例における三脚座ネジ部を通過する断面での側面からみた防水型双眼鏡の断面図。
【図2】本発明の実施例における光軸を通過する上面から見た防水型双眼鏡の断面図。
【図3】本発明の実施例における防水型双眼鏡の全体斜視図。
【符号の説明】
【0021】
L1:対物レンズ群
L2:振れ補正光学系
L3:プリズムユニット
L4:接眼レンズ群
1:光学保持部材
2:対物台
3:ネジ
4:フォーカス軸
5:フォーカスつまみ
6:対物鏡筒
7:接眼鏡筒
8:接眼ホルダー
9:カムフォロア
10:視度調リング
11:プリズムホルダー
12:ギアプレート
13:ユニットのカバーケース
14:保護ガラス
15:電池BOX
16:シールゴム
17:電池蓋
18:蓋ロック
19:シールゴム
20:可変頂角プリズム(VAP)ユニット
21:本体
22:振れ検出センサ
23:振れ検出センサ
24:メイン基板
30:シールゴム
31:三脚座ネジ
32:下カバー
33:上カバー
34・35:外装ゴム
36・37:指かけゴム
100:対物鏡筒ユニット
200:振れ補正ユニット
400:接眼ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を保持した光学系保持部材と、前記光学系を覆うカバーケースとを備え、これらの光学系保持部材とカバーケースとは当接部で嵌め合わされて固定され、これにより前記光学系を覆う閉鎖された空間領域が形成された光学装置であって、
前記光学系保持部材が、前記カバーケースよりも高い剛性の材質で構成され、三脚座などの固定手段が前記光学系保持部材側に設けられることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記光学系保持部材には、1対の対物レンズ、1対の接眼レンズ、複数のプリズムで構成された1対のプリズムユニット、振れ補正光学機構が保持されていることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光学系保持部材と前記カバーケースとは、前記当接部において防水シールを介して嵌め合わされ、該当接部が水密に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記防水シールは、ポアソン比が0.4以上の材質で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記防水シールは、気体透過係数が10g/m・24H以下であるゴム部材で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記三脚座などの固定手段が、前記光学系保持部材と前記カバーケースとの当接部よりも、前記1対の対物レンズ側に構成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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