説明

光学距離が選択可能な無侵襲にて人体の成分を測定する方法

【課題】浮動基準法に基づいて、レーザー光を用いて無侵襲にて人体成分を測定する方法を提供する。
【解決手段】浮動基準法に基づいて求められる各人の最適測定値Mと浮動基準値Cを求めるにあたり、レーザー干渉技術を用い、各人の最適測定値の光学距離と浮動基準値の光学距離を見合う各ビート周波数を選択し、それに基づき散乱光の中から特定の光束を選択的に測定し、測定される測定値と基準値とにより生物組織の特定部位に対する人体成分の検出を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学用測定器類に属し、無侵襲にて人体の成分を測定する方法に関し、検査用の血液の採集を必要とせず、その他の侵襲性検査の方法とは異なり、光学距離が選択可能な無侵襲にて人体の成分を測定するにあたり、浮動基準法に基づき、感度が最大となる光学距離での伝播光(測定値)と感度が零又は零に近い光学距離での伝播光(基準値)を選択的に測定し、レーザー光の人体組織における伝播による吸収を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の各種の成分は、人体の健康状況を評価する重要な情報であり、多種の疾病の診断と治療効果を判定する重要な指標である。これらの成分の人体内の含有量はとても微量であり、従来の測定方法は、指先、耳たぶあるいは静脈から採血し、使い捨ての試薬を用い各種の化学的方法を介して測定していた。このような侵襲性の測定方法は、手順が煩雑であるだけでなく、採血自体が苦痛を与え、しかも感染の危険もあり、更に試薬を消耗することになり、各種の人体成分に対する迅速又は頻繁な検査・測定を行うことが制限され、理想的な治療あるいは迅速な健康管理を実現し難い。そのため、無侵襲の血液成分測定方法に対する研究は、関連する疾病のメカニズムに対する研究と診療に重要な意義を有する。
【0003】
血液の各種成分の内、現在研究が最も多く行われているのは血糖濃度の測定である。血糖濃度は、糖尿病の診断や治療における主要指標であり、糖尿病は、人体成分の異常によって体内代謝の紊乱を招来し、糖尿病ケトン症、心血管の病理的変化、腎臓衰弱、失明、手足の壊疽と感染などの重大な合併症を引き起こす。糖尿病患者、糖尿病及び糖尿病の合併症は、既に人類の健康をひどく脅かしている世界的な公共衛生問題となっている。血糖濃度の無侵襲測定が成功すれば、その方法はその他の血液成分、あるいは人体内の他の成分に対する測定に利用することもできる。
【0004】
特許文献1では、初めて光学的方法を使って人体内の成分に対する測定を行った;特許文献2では、近赤外線分光の原理を応用して人体成分の濃度に対する測定を行うことを提案している。現在、人体成分の無侵襲測定研究における主な手段には、旋光法、ラマン・スペクトル法、光散乱係数法、光音声スペクトル法、中赤外線スペクトル法、近赤外線スペクトル法、OCT方法などがある。旋光法による測定の部位は、通常、眼球であり、その難点は、患者に受け入れられ難く、眼球の回転による光パス変更が旋光度の測定に影響をもたらして測定誤差が増大し、眼球腔水の中にある多種の物質が旋光効果を有しており、それは測定を妨害し、角膜の複屈折が妨害を引き起こして透光の強度を弱め、光ブドウ糖溶液の屈折角が小さくなるということにある。ラマンスペクトル法の困難さは、生物組織の中の吸収と散乱効果により信号が非常に微弱なものにされ、蛋白質類の分子が発生する背景蛍光による妨害が大きいことにある。そして、光音声スペクトル測定方法は組織内部の構造変化に過敏であり、中赤外線は生物組織に対する透過深度がとても小さい。
【0005】
赤外線のスペクトルは分子吸収スペクトルに属し、近赤外線(波長は780-2500nmの範囲内)領域での吸収は、主に分子の倍音振動(振動状態が1つあるいはいくつかのエネルギー準位間の遷移)あるいは結合音振動(分子の2種類の振動状態はエネルギー準位間で同時に遷移する)によって行われる。近赤外線のスペクトルは、主にC−H、O−H、N−H等の結合基を含む化合物の中赤外線領域における基本振動の倍音振動及び結合音振動による吸収である。H結合基を含む有機物及びそれに結合する無機物サンプルは、成分含有量の変化に従いその近赤外線スペクトルの特徴も変化する。スペクトルの変化特徴に基づいて、被測定成分の含有量を求めることができる。これは、近赤外線スペクトルが人体の血糖濃度を測定する基本的原理である。近赤外線スペクトル技術と化学的計量方法との結合は、定量分析の感度、精度、正確性と信頼度をすごく高め、薬学、農業、石油などの分野で広く応用されている;中赤外線スペクトル域に比較して、測定器がより高い感度と応答速度を有し、光源の輻射効率がより高い;その光学部品がより安定で、動作環境からの影響が小さく、価格が安い;サンプルの準備を必要とせず、現場での迅速な測定とリアルタイムなオンライン分析に適する;迅速、非破壊、高効率などの利点を有する。なお、近赤外線は、体液や柔組織に対する透過力が強く、理想的な測定用スペクトル域である。一成功例として、近赤外線スペクトル法による血中酸素飽和度に対する無侵襲測定がある。
【0006】
人体成分に対する近赤外線スペクトル無侵襲測定において、無侵襲血糖濃度測定の精度に影響を与える主な難点であって、臨床意義上の無侵襲血糖濃度測定を実現するボトルネックとなる課題は、下記の通りである。
【0007】
(1) 信号微弱問題:生物組織中には大量の水分が含まれており、水の光に対する吸収が強い。一方で、血液中の糖濃度が占める割合は0.1%に至らず、吸収も弱く、測定器に到着し得る光が極めて微弱であり、その上血糖変化にて引き起こされる有用な信号変化が極めて微弱であり、SN比が極大のデバイスにてピックアップしなければならない。
【0008】
(2) 測量条件変化問題:部位によって生物組織の構造差異が極めて大であり、個体によって更なる極めて大きな差異が存在するため、測量時の位置、接触圧力、光の入射面積などの測定条件の変化が光の伝播パスの変化に直接影響を与え、招来するスペクトル変化が糖の濃度変化によるスペクトル変化より極めて大きい。有効かつ安定的な測定条件、あるいはこれらの変化をキャンセルする方法がなければ、有効な血糖変化情報の抽出は殆ど不可能である。
【0009】
(3) 人体の生理背景変化問題:生理や人体の他の予測できない原因による背景変化は、血糖信号の変化より極めて大きく、血糖信号が埋没され抽出できないこととなる。つまり、背景が大きく変化しているプロセスにおいて、この背景上に浮かんでいる微小かつ有効な糖分変化情報を検出しなければならない。
【0010】
スペクトル信号は、血液中の多種の成分及び皮膚表層の光学的特性が共同して影響を与えた結果であり、人体組織の中の多種の物質が近赤外線域に吸収スペクトルを産生し、多種物質の吸収スペクトラムが互いに重なっている;光の人体組織中の伝播は複雑であり、検出ヘッダからのレーザーの発射と人体を伝播後の散乱光の受け取りの間に無限数個の光学距離が存在し、図2に示したようになる。しかも、直接スペクトル測定方法において、各種の光学距離の光は、すべて光電気測定器に入り、多種の組織や物質の吸収と散乱を介することで、吸収スペクトルの重なりを招来し信号の複雑度が高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許4,169,676号明細書
【特許文献2】米国特許4,655,225号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術の欠陥を克服し、人体組織中の多種の物質の吸収スペクトルの重なり、高複雑度、信号の特異性差という困難を解決するために、本発明の目的は、人体組織の特定の部位、すなわち特定の光学距離での吸収スペクトルを検出することによって、浮動基準法における、感度が最大となる光学距離での測定値及び感度が零又は零に近い光学距離での基準値を選択的に測定し、無侵襲、リアルタイム且つ迅速な人体成分検出を実現する、光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、レーザー光の人体組織における伝播による吸収を測定することで人体成分検出を行う光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法であって、
上記レーザー光を変調し、測定光と参照光との干渉に基づき、そのビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分(いわゆる光路差)に正比例するレーザー干渉技術を用い、浮動基準法における感度が最大となる光学距離での測定値と感度が零又は零に近い光学距離での基準値を測定できる光学距離を選択し、フェース感知検出回路を介してビート信号を処理することで、散乱光における特定の光学距離の光をピックアップして、生物組織の特定部位の特定の光学距離での光吸収に対する検出を実現する方法である。
すなわち、レーザー光の人体組織における伝播での吸収を測定するにあたり、浮動基準法の測定原理に基づき、感度が最大となる光学距離での測定値Mと感度が零又は零に近づいた光学距離での基準値Cとを選択的に測定する無侵襲にて人体成分を測定する方法において、
上記レーザー光を変調して、測定光と参照光との干渉に基づき、そのビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分に比例するレーザー干渉技術を用い、干渉のビート周波数:fd = βnL/λ(但し、λはレーザ光の中心波長、βはレーザーの変調速度、nLは測定光が組織中を通る光学距離の長さ)の関係式に基づき、少なくとも基準値Cの光学距離に見合うビート周波数と、測定値Mの光学距離に見合うビート周波数とを選択し、その周波数での信号を選択的に測定し、測定値Mと基準値Cとを測定することを特徴とする方法にある。
【0014】
本発明の方法において、前記の散乱光における測定値及び基準値を取れる単一の光学距離での光をピックアップするステップが、複数の検出器や複数の光源を採用し、大面積に対する光の照射又は大面積の散乱光を受光する場合、複数の同じ光学距離での信号を合わせて測定が行われるのが好ましい
【0015】
本発明の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法は、人体組織を介する複数の光学距離の散乱光を同時に受信し、少なくともその中の一つの浮動基準法原理に則した、感度が零又は零に近づいた基準値の光学距離を選択して計算の基準値とし、その中の他の浮動基準法原理に則した、感度が最大の測定値の光学距離を選択して計算の測定値して、人体の成分を計算とする方法である。
【0016】
本発明の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法は、ビート信号周波数に対する選択的受信を行うことで、組織中の光学距離に対する光束を選択的に受信することができ、他の光学距離光束による妨害を除去する方法である。
【0017】
前記の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法は、周波数選択方法によってピックアップする散乱光の光学距離を変更して、異なる個体組織特性による浮動点である、測定点と基準点との差異に適するように異なる測定光学距離の選択を実現する方法である。
【0018】
光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する装置であって、光駆動コントローラと、光源と、干渉光光路と、信号処理回路と、プローブと、変調信号発生器と、マイコンとによって構成され、前記の光源は複数の半導体レーザーを採用し、光ファイバーと、光ファイバー結合器と、平衡式光電受信器によって構成される干渉レーザー光スペクトル光路は、レーザー光光源から分岐された参照光とプローブにて生成された測量光とを干渉させ、信号処理回路は、プリアンプと、位相ロック増幅器と、A/D転換回路とにより構成され、A/D転換回路の出力はワンチップマイコンに出力される装置である。
【0019】
前記の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法や光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する装置は、使用するレーザー光波長バンドは、ブドウ糖分子の倍音振動と結合音振動近赤外線領域であり、波長は800nm〜2500nmであるのが好ましい
【発明の効果】
【0020】
本発明は、次の効果をもたらすことができる:
本発明は、測定光と参照光との干渉に基づき、そのビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分に比例するレーザー干渉技術を用い、基準値Cの光学距離に見合うビート周波数と、測定値Mの光学距離に見合うビート周波数とを選択し、その周波数で、散乱光中の基準値と測定値の光をピックアップして、生物組織の特定部位に対する浮動基準法に基づく検出を行うことができる。同一の光学距離のピックアップについて、検出器の面積を増大又は複数の検出器を採用することで、受光した測定光の強度が高まり、信号のSN比が向上する。
【0021】
また、本発明は同時に複数の光学距離の散乱光を受光するが、その中には浮動基準法原理に則した感度が最大となる光学距離での測定値Mと感度が零又は零に近づいた光学距離での基準値Cの光に相当するものがある。これを選択受光することにより浮動基準法原理による測定の実現方法の一つを構成する。さらに、変調、フィルタリング、スペクトルプリ処理などの手段を採用することで、無侵襲、リアルタイムかつ迅速な人体成分検出を実現するので、本発明は、簡単に測定でき、測定結果が信頼できるという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、レーザーの干渉性、方向性、高強度に基づいて、波長が異なる複数の半導体レーザー(周波数分割や時間分割動作モード)を使用し、波長同調を行う;干渉レーザ光のスペクトル技術に基づいて、人体組織の特定部位や特定の光学距離の散乱光を測定する;信号処理回路にて吸収スペクトルの複数成分に対して同時に増幅し、位相ロック増幅器を介して複数の光学距離信号を分離し、その中に浮動基準法の測定原理に則した測定値と基準値の信号を含み、それをスペクトル測定の参照として信号をAD転換処理し、コンピュータで複数のデータを処理した後、人体の測定待ち成分の濃度を算出する。
【0023】
本発明の目的は、無侵襲、リアルタイム且つ迅速な人体成分を測定する方法及び装置を提供することにある。人体組織中の多種の物質の吸収スペクトルの重なり、高複雑度、信号の特異性差という困難を解決するために、人体組織の特定部位に対して、浮動基準法に従い生物組織の構造差異と生理背景などによる影響問題を解決することで、無侵襲、リアルタイム且つ迅速な人体成分に対する測定を実現する。
【0024】
浮動基準法の測定原理
光が組織中を伝播する時、組織の中には、乱反射光強さのブドウ糖に対する感度が最大の位置M(測定点)と、感度が0の位置C(基準点)とが存在し、図1に示すようになる。基準点位置Cのスペクトル信号には、すべての生理変化情報が含まれているが、血糖濃度の変化とは無関係である。測定点Mの光信号は、血糖濃度の変化情報を最も多く含み、血糖信号測定の最適な選択位置である。この2つの点に対して同時にスペクトル測定を行い、差分処理を行うと、各種の生理条件変化による血糖信号に対する妨害を効果的に減少させ、血糖の測定精度と感度を高めることができる。
【0025】
干渉レーザースペクトル技術(正しくはレーザー干渉技術といい、レーザー光を変調して、測定光と参照光とを干渉させると、その干渉のビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分に比例する技術をいう
詳しくは、光子輸送理論に基づき単一光学距離の光束の検出方法を構築する:レーザーから出力される波長が経時的に変化するレーザ光(図3.aに示すようになる)を2つに分けて、その1つは参照光とし、他の1つは測定光とする。測定光は、光ファイバーを介して伝導され、動脈血流が豊富な測定部位にコリメートして照射され、それからの散乱光を受信して光ファイバー中で結合し、散乱光を参照光と光ファイバー結合装置中で干渉させる。参照光と測定光とは光学距離差を有するため、ビート信号の周波数(差周波数と同意義)は下記の式(1)にて表わされる。本件発明者らは、かかるレーザー干渉技術により、特定のビート信号周波数を選択することにより浮動基準法に基づき、感度が最大となる光学距離での測定値と感度が零又は零に近づく光学距離での基準値の光を測定光中から選択的ピックアップして測定して、利用できることを見出し、本発明の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体の成分を測定する方法を実現した。
【0026】
【数1】

ここで、λは、レーザ光の中心波長であり、
βはレーザーの変調速度であり、
nLは、測定光が組織中を通る光学距離の長さ(測定用光ファイバーと参照用光ファイバーとの長さは等しくする)である。
【0027】
ある光学距離の光束と参照光束とのビートは、そのビートの周波数が図3.bに示すようになる。一定の光学距離の分布を有する組織散乱光に対して、光電気測定器にて得られたビート信号の周波数は、同じ法則の分布特性を有し得る。その中の低周波成分は、主に1/fノイズであり、その基本波成分の周波数fは変調周波数に等しく、2f、3f……のそれぞれは、変調周波数の高調波である。このようにして、組織中の光学距離の長さが異なる散乱光は、周波数の異なるビート信号に転換される。
【0028】
尚、スペクトル測定において、ある光学距離の長さについて、波長変調されたレーザ光が吸収媒体を介する時、光電気測定器の出力信号は、レーザ光の周波数変調信号を幅変調信号に転換する。波長変調スペクトルを応用する作用は、スペクトル測定における直流信号を高周波信号に転換して測定することができ、光源の各種の雑音、回路の雑音を効果的に抑制し、その測定の感度は3〜5オーダー高められる。
【0029】
多光学距離分離と単一の光学距離の測定方法
上記のレーザー干渉法において、ビート信号周波数に対する選択的受信を行うことで(位相ロック増幅器により実現可能)、組織中の特定の光学距離に対する光束(例えば測定値となる光学距離の光束)を選択的に受信することができ、併せて他の光学距離光束(例えば基準値となる光学距離の光束の選択受信によって妨害ノイズを除去することができる。図2における、周波数f近傍の陰影を付した領域がそれに対応している。
【0030】
信号処理回路の周波数を変更すると異なる光学距離の散乱光を取得でき、処理回路のバンド幅を調整すると受信した散乱光の光学距離範囲を変更できる。複数のビート周波数に対する個別受信(複数の異なる中心周波数の位相ロック増幅器を設ける)は複数の信号通路が構成され、各通路は異なる散乱光の光学距離に対応している。
【0031】
レーザー光を光源とするスペクトル技術において、レーザー光の干渉性、方向性、高強度に鑑み、本発明者は、レーザー光を動脈血流が豊富な小さな被測定部位に焦点を合わせて高い空間解像度の測定を実現する、干渉式のレーザー光スペクトル方法(前記レーザー干渉技術の適用)を実現した。本発明は干渉式レーザー光スペクトル技術(前記レーザー干渉技術)によって特定の単一光学距離の光束の選択的検出を実現し、組織中に含まれる蛋白質、脂肪、筋肉などの多種成分及びその不規則分布による光伝播法則への影響(ノイズ)をできるだけ低減し、光学距離のランダム性と異なる部位の間の組織差異とによる測定光スペクトル及び強度情報の複雑度を低減して、人体の特定部位の組織の光学特性に対する定量的測定を実現し、人体の成分と濃度を予測することができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】浮動基準法測定原理の説明図である。
【図2】発射と受信の間における光伝播の光学距離の長さの分布図である。
【図3】レーザー光の同調とビート信号の特徴の説明図である。
【図4】方案1のシステム構造図である。
【図5】プローブ構造の説明図である。
【図6】方案2のシステム構造図である。
【符号の説明】
【0033】
1、2、3 レーザー光駆動コントローラ
4、5、6 半導体レーザー
7、8、9、11、13、13−1、13−2、13−3、14、15、15−1、15−2、15−3、19、19−1、19−2、19−3、20、37 光ファイバー
10、12、18、18−1、18−2、18−3、36 光ファイバー結合器
16、16−1、16−2 プローブ
17 測定部位の組織
21、21−1、21−2、21−3 平衡式光電受信器
22、22−1、22−2、22−3 プリアンプ
23、24、25、26 位相ロック増幅器
27 A/Dコンバーター
28 ワンチップコンピュータ
29 変調信号発生器
30 ディスプレイ
31 キーボード
32 入射レーザー光光路
33 参照光路
34 測定光路
35 プローブ筐体
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
具体的な実施システムに対する説明
【実施例1】
【0035】
本発明の技術方案1は、図4に示すように、レーザー光駆動コントローラ1と、レーザー光コントローラ2と、レーザー光コントローラ3と、レーザー光の光源4と、レーザー光の光源5と、レーザー光の光源6と、干渉レーザー光スペクトル光路7と、干渉レーザー光スペクトル光路8と、干渉レーザー光スペクトル光路9と、干渉レーザー光スペクトル光路10と、干渉レーザー光スペクトル光路11と、干渉レーザー光スペクトル光路12と、干渉レーザー光スペクトル光路13と、干渉レーザー光スペクトル光路14と、干渉レーザー光スペクトル光路15と、干渉レーザー光スペクトル光路18と、干渉レーザー光スペクトル光路21と、信号処理回路22と、信号処理回路23と、信号処理回路24と、信号処理回路25と、信号処理回路26と、信号処理回路27と、ワンチップコンピュータ28と、プローブ16と、変調信号発生器29と、ディスプレイ30と、キーボード31とにより構成され、上記の干渉式レーザー光スペクトル測定技術(レーザー干渉技術)及び多光学距離分離技術を実現する。
【0036】
光源は、近赤外線のコヒーレント光源を採用し、半導体レーザー、気体レーザー又は染料レーザーを使用することができる。発射波長が異なるレーザーをN個使用して、人体成分の検出に必要な波長範囲をカバーする。血糖の無侵襲検出に関しては、ブドウ糖分子の2倍音振動(1100-1300nmの波長域)、その倍音振動(1500-1800nmの波長域)及び結合音振動(2100-2500nmの波長域)の範囲内の若干数の波長を選択する。本実施例では、N個(原理図では3つ)の半導体レーザーを使用している。
【0037】
レーザー光駆動コントローラ(1、2、3)は、レーザー光出力に対する電力制御と、波長の安定及び同調と、温度の測定及び制御を実現する。
【0038】
干渉レーザー光スペクトル光路は、光ファイバー7と、光ファイバー8と、光ファイバー9と、光ファイバー11と、光ファイバー13と、光ファイバー14と、光ファイバー15と、光ファイバー19と、光ファイバー20と、光ファイバー結合器10と、光ファイバー結合器12と、光ファイバー結合器18と、平衡式光電受信機21とにより構成される。N個のレーザー(図面では3つ)から出力されたレーザー光は、それぞれ光ファイバー7、光ファイバー8、光ファイバー9に結合され、N×1の光ファイバー結合器10(図面では3×1)を介して、光ファイバー11に結合され、1×2光ファイバー結合器12を介して測定光ファイバー14と参照光ファイバー13とに分岐される。図5に示すように、測定光ファイバー14を介して伝送されるレーザー光はプローブに送られ、入射レーザー光光路32を介して皮膚組織に照射する。組織深層の散乱光は、測定光路34によって光ファイバー15に収集され、光ファイバー15における測定光と光ファイバー13における参照光とが光ファイバー結合器18において干渉され、干渉光は光ファイバー19を介して平衡受信器21に伝送される。皮膚表面における反射光は、参照光路33を介して光ファイバー20に収集されて平衡受信器21に送り込まれ、レーザーの雑音と他の共通モード雑音を除去するために用いられる。
【0039】
信号処理回路には複数の信号測定通路が設けられ、プリアンプ22と、位相ロック増幅器23と、位相ロック増幅器24と、位相ロック増幅器25と、位相ロック増幅器26と、A/Dコンバーター27とを含む。プリアンプ22は、平衡受信器21の出力信号を増幅し、プリアンプ22の出力信号は、人体成分による吸収情報を含み、複数の位相ロック増幅器(原理図では4つ)に送り込まれる。これらの位相ロック増幅器の中心周波数を異なる値として複数の信号通路を構成しており、異なる信号通路が異なる散乱光の光学距離に対応している。少なくともその中の一つの浮動基準法原理に則した基準値の光学距離を選択して計算の基準値とし、その中の他の浮動基準法原理に則した測定値の光学距離を選択して計算の測定値とする。複数の位相ロック増幅器の復調出力信号は、それぞれマルチパスADコンバーター27に送信され、複数の通路のアナログ信号をデジタル信号に転換する。
【0040】
コンピュータ28(埋込式やPCコンピュータやワンチップマイコン)は、その周辺回路(キーボード31と、ディスプレイ30と、レーザー光駆動コントローラ1と、レーザー光駆動コントローラ2と、レーザー光駆動コントローラ3と、変調信号発生器29と、マルチパスADコンバーター27とを含む)を介して、測定装置全体に対して管理、制御、データ処理及び表示を行う。ユーザーは、自装置に対する操作命令、データ及びユーザー情報をキーボードを介して入力する。ディスプレイは、ニキシー管、液晶やブラウン管ディスプレイ(CRT)のいずれかであっても良く、データ計測、各種の操作案内情報の表示に使用される。コンピュータ28は、レーザー光駆動コントローラ1と、レーザー光駆動コントローラ2と、レーザー光駆動コントローラ3とを介して、レーザ光光源4、レーザ光光源5、レーザ光光源6の温度と電流をそれぞれ制御し、レーザー光の変調出力を実現する。変調信号発生器29は、レーザー光変調の特徴パラメーター(変調タイプ、変調深度、変調周波数)を提供する。マルチパスADコンバーター27から出力されたデジタル信号は、コンピュータ28に送信されデジタル信号処理が行われる。デジタル信号処理には、デジタルフィルタリング、粗大誤差の除去、温度補償、背景控除等を含み、そのメモリに記憶された一つの基準曲線を参照して人体成分の予測値を計算し、算出した人体成分値をディスプレイ30に表示する。
【0041】
プローブの説明
本発明のプローブ方案は図5のように示す通りである。プローブは、入射レーザー光光路32と、参照光路33と、測定光路34と筐体35とを含み、光ファイバー14と、光ファイバー15と、光ファイバー20とを介して干渉レーザー光スペクトル光路に接続される。入射光ファイバー14から導入されたレーザー光は、入射レーザ光光路32を介して焦点が合わされ、測定目標に照射される。入射光路32と測定光路34との間には遮光板が設けられ、組織深層を経た散乱光だけが測定光路34を介して受信され、検出レーザー光光ファイバー15に結合される。一方、皮膚表面における反射光は、参照光路33によって光ファイバー20に収集される。
【実施例2】
【0042】
複数の測定器の実施に関して本発明の技術方案2は、複数の測定器による人体成分測定システムであり、図6に示す通りである。1×2光ファイバー結合器12により分岐された2つの光束は、その中の1つが光ファイバー37を介して光ファイバー結合器36に送られて3つに分岐されて参照光束とされ、それぞれ光ファイバー13-1、13-2、13-3を介して光ファイバー結合器18-1、18-2、18-3に送られる。他の1つは、光ファイバー14を介してプローブ16-1に送られ、入射レーザ光光路32を介して皮膚組織に照射される。プローブ16-1、16-2によりピックアップされた測定光は、それぞれ光ファイバー15-1、15-2、15-3を介して光ファイバー結合器18-1、18-2、18-3に送られ参照光との干渉が行われる。そのビート信号は光電受信器21-1、21-2、21-3によって検出され、プリアンプ22-1、22-2、22-3を介して増幅され、位相ロック増幅器24、位相ロック増幅器25、位相ロック増幅器26にて異なる光学距離信号のピックアップを行い、そして、ADコンバーター27によってアナログ−デジタル信号の変換が行われる。これをコンピュータ28に送りデジタル信号の処理を行う。デジタル信号処理には、デジタルフィルタリング、粗大誤差の除去、温度補償、背景控除等を含み、そのメモリに記憶された一つの基準曲線を参照して人体成分の予測値を計算し、算出した人体成分値をディスプレイ30に表示する。
【0043】
位相ロック増幅器24、位相ロック増幅器25、位相ロック増幅器26には、それぞれ異なる受信周波数が設定されており、異なる光学距離の信号を取得して複数の信号通路を構成する。少なくともその中の一つの浮動基準法原理に則した基準値の光学距離を選択して計算の基準値とし、その中の他の浮動基準法原理に則した測定値の光学距離を選択して計算の測定値とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の人体組織における伝播での吸収を測定するにあたり、浮動基準法の測定原理に基づき、感度が最大となる光学距離での測定値Mと感度が零又は零に近づいた光学距離での基準値Cとを選択的に測定する無侵襲にて人体成分を測定する方法において、
上記レーザー光を変調して、測定光と参照光との干渉に基づき、そのビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分に比例するレーザー干渉技術を用い、干渉のビート周波数:fd = βnL/λ(但し、λはレーザ光の中心波長、βはレーザーの変調速度、nLは測定光が組織中を通る光学距離の長さ)の関係式に基づき、少なくとも基準値Cの光学距離に見合うビート周波数と、測定値Mの光学距離に見合うビート周波数とを選択し、その周波数での信号を選択的に測定し、測定値Mと基準値Cとを測定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法であって、複数の光源又は複数の検出器を採用し、かつ上記レーザー光を変調して、測定光と参照光との干渉に基づき、そのビート周波数が測定光と参照光との光学距離差分に比例するレーザー干渉技術を用い、大面積に対する光の照射又は大面積の散乱光を受光する中で、上記関係式に基づき、基準値Cの光学距離に見合うビート周波数と、測定値Mの光学距離に見合うビート周波数とを選択し、それに基づき散乱光中で複数の同じ光学距離の信号を合わせて測定することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1また2に記載の光学距離が選択可能な無侵襲にて人体成分を測定する方法であって、
使用するレーザー光波長バンドは、ブドウ糖分子の倍音振動と結合音振動近赤外線領域であり、波長は800nm〜2500nmであることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9963(P2013−9963A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173949(P2012−173949)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2008−4633(P2008−4633)の分割
【原出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(511082333)天津先陽科技発展有限公司 (2)
【Fターム(参考)】