説明

光学部品清掃具および光学部品清掃方法

【課題】異物の再付着が少なく、光学部品の表面に付着してある異物を短時間で除去可能な光学部品清掃具を提供すること。
【解決手段】この光学部品清掃具30は、光学部品24の表面に付着している異物の一種である有機物60の付着力を低下させる有機物除去容易化部材47と、前記付着力を低下させた有機物を前記光学部品の表面から除去可能な除去部材46と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の表面に付着してある異物を除去可能な光学部品清掃具および光学部品清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばデジタルカメラにおいては、撮像素子の受光面、撮像素子保護用カバーガラスの表面、光学ローパスフィルタの表面など、撮像面から近距離にある光学部品の表面に付着した異物は、その付着部分が黒い点となって撮像画像に写り込み、画像品質を低下させ問題となる。
【0003】
特に、いわゆる一眼レフデジタルカメラにおいては、レンズ交換時に外部からの異物がカメラ内部の光学部品に付着したり、レリーズ動作時のクイックリターンミラーの駆動により発生した異物が付着する場合があり、撮影上の大きな問題となることがある。
【0004】
このような異物の問題を解消するために、特定のフィルタを振動子で加振することにより、異物を除去する構造が提案されている。また、カメラの内部に組み込んだワイパー部材などでフィルタなどの光学部品の表面を清掃する構造も提案されている。
【0005】
しかしながら、フィルタなどの光学部品を単に振動させるのみでは、その光学部品の表面に強く付着している異物などの汚れを取り除くことは困難である。また、カメラの内部に組み込んだワイパー部材自体が異物などで汚れてしまった場合には、ワイパー部材の汚れを取るための清掃メンテナンスが必要になる。
【0006】
そこで、たとえば下記の特許文献1に示すように、カメラとは別に用意されたクリーニングキットを用いてカメラ内部の光学部品の表面の清掃を行っている。一般的なクリーニングキットとして、支持棒の先端に、粘着性を有する弾性部材を取り付けた清掃具が知られている。
【0007】
その清掃具を用いて光学部品の表面の異物を除去するには、支持棒の先端に取り付けられた弾性部材を、カメラの内部に差し込み、カメラ内部の光学部品の表面に押し付けて、光学部品の表面に付着している異物を弾性部材側に付着させる。その後、支持棒の先端に取り付けられた弾性部材を、カメラの内部から取り出し、弾性部材の表面に付着している異物を、別の清掃用具を用いて弾性部材の表面から除去し、弾性部材の表面の清掃を行う。その後に、再度、支持棒の先端に取り付けられた弾性部材を、カメラの内部に差し込み、同様な作業を繰り返すことで、カメラ内光学部品の表面の清掃を行う。
【0008】
しかしながら、このような従来の清掃具を用いて行う光学部品表面の清掃方法では、光学部品の表面全域を清掃するために、カメラ内部への清掃具の出し入れを複数回行っており、カメラの内部における光学部品表面を外部に露出している時間が長くなり、異物が再付着する可能性が高い。また、光学部品表面の清掃時には、異物が付着した弾性部材の表面を清掃するための専用クリーニングキットが別に必要となり、作業性が悪くなる。さらにまた、光学部品の表面に付着した異物が有機物である場合、清掃具をカメラ内部の光学部品の表面に押し付けるだけでは、十分に異物を除去することができないという課題を有する。
【特許文献1】特開2006−171243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、光学部品の表面に付着してある異物、特に有機物を短時間で除去可能な光学部品清掃具および光学部品清掃方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学部品清掃具は、
光学部品(24)の表面に付着している異物の一種である有機物(60)の付着力を低下させる有機物除去容易化部材(47)と、
前記付着力を低下させた有機物を前記光学部品の表面から除去可能な除去部材(46)と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記除去部材(46)の少なくとも一部が露出するように、前記除去部材(46)を収容するケース(32)をさらに有し、
前記除去部材(46)は前記ケース内で移動可能であり、前記ケース(32)から露出する一部が交換可能である。
【0012】
好ましくは、前記除去部材(46)と前記有機物除去容易化部材(47)とを収容するケース(32)をさらに有し、
前記ケース(32)の長手方向の一端部からは前記除去部材(46)が露出され、
前記ケース(32)の長手方向の他端部には前記有機物除去容易化部材(47)が配置される。
【0013】
好ましくは、前記有機物除去容易化部材(47)は、前記有機物(60)の結合を切断することができるエネルギー照射装置である。
【0014】
好ましくは、前記エネルギー照射装置は、紫外線照射装置である。
【0015】
好ましくは、前記除去部材(46)は、前記光学部品(24)の表面に付着している異物を除去可能であり、
前記光学部品(24)から除去した異物が付着している前記除去部材(46)から前記異物を取り除く清掃部材(48)をさらに有する。
【0016】
好ましくは、前記除去部材(46)は、前記光学部品(24)の表面に付着している異物を除去可能であり、
前記光学部品(24)から除去した異物が付着している前記除去部材(46)から前記異物を取り除く清掃部材(48)を有し、
前記除去部材(46)が粘着性樹脂テープで構成してあり、
前記清掃部材(48)がクリーニング用テープで構成してある。
【0017】
好ましくは、前記除去部材(46)の少なくとも一部が露出するように前記除去部材(46)を収容するケース(32)と、
操作者の手で操作可能な操作具(42)とをさらに有し、
前記操作具(42)を操作することにより、前記ケース(32)から露出する前記除去部材(46)の一部が交換可能である。
【0018】
好ましくは、前記除去部材(46)の一部は、スプリング保持により所定の圧力荷重で前記光学部品(24)の表面に押し付けられるようになっている。
【0019】
好ましくは、前記有機物除去容易化部材(47)が前記光学部品(24)の表面に接触することを防止する保護部材(35)をさらに有する。
【0020】
本願発明の光学部品清掃具は、好ましくは、滑り防止処理が成されている。
【0021】
本願発明の光学部品清掃具は、好ましくは、帯電防止処理が成されている。
【0022】
本願発明の光学部品清掃具は、好ましくは、蓄光材を含有している。
【0023】
また、本発明に係る光学部品清掃方法は、
光学部品(24)の表面に付着している異物の一種である有機物(60)に特定の波長のエネルギー光線を照射することにより前記有機物(60)の付着力を低下させ、
前記付着力を低下させた有機物(60)を前記光学部品(24)の表面から除去することを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記特定の波長のエネルギー光線は、紫外線である。
【0025】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応をつけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図、
図2は図1に示す光学部品清掃具の有機物除去容易化部材を用いて有機物の付着力を低下させている状態を示すカメラボディの概略断面図、
図3は図1に示す光学部品清掃具の除去部材を用いて清掃している状態を示すカメラボディの概略断面図、
図4は図1に示すIV−IV線に沿うローパスフィルタの正面図、
図5は本発明の他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図、
図6は本発明のさらにその他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図、
図7は本発明のさらにその他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図である。
第1実施形態
【0027】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る光学部品清掃具30は、カメラボディ4のレンズマウント28に装着される交換レンズが取り外された状態で使用される。レンズマウント28は、交換レンズ(図示省略)のボディマウントが着脱自在に取り付けられる部分であり、レンズマウント28の内側には、開口部7が形成してある。
【0028】
カメラボディ4のケーシング5内部には、接眼レンズ12、ペンタプリズム10、ファインダスクリーン8などのファインダ用光学部品と、撮像ユニット20を構成する撮像素子22の前面に配置してある光学ローパスフィルタ24などで構成される撮像用光学部品とが具備してある。撮像ユニット20の背面には、回路基板26が配置してある。回路基板26には、撮像ユニット20の撮像素子22にて受光した画像信号を処理する回路などが組み込まれている。
【0029】
光学ローパスフィルタ24の前面には、シャッタ部材16が装着してある。図2では、シャッタ部材16が開いている。シャッタ部材16の前面には、クイックリターンミラー14が配置してある。クイックリターンミラー14は、カメラボディ4のファインダスクリーン8とペンタプリズム10とを介して接眼レンズ12へ光束を導く覗きモードと、撮像素子22へ撮影光を導く撮影モードとを切り替えるための光学部品である。
【0030】
図2に示すように、カメラボディ4から交換レンズが取り外された状態では、通常、シャッタ部材16は閉じ、クイックリターンミラー14は、図2中の点線位置にある。しかし、カメラボディ4の清掃モードを選択することで、クイックリターンミラー14は、図2の実線位置に跳ね上がると共に、シャッタ部材16は開き、光学部品清掃具30のカメラボディ4の内部への挿入を許可する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る光学部品清掃具30は、長手方向Xに沿って細長い中空ケース32を有する。ケース32は、横断面が矩形状であり、図1の下側であるケース32の長手方向の一端部に形成されたケース先端開口32aには、その先端開口32a内に収まる大きさのガイド34が、ケース32に対して先端開口32aから所定突出量δで飛び出すように装着してある。
【0032】
ガイド34は、ケース32に対して、図示省略してあるスプリングにより弾性保持され、何ら外力が作用しない状態では、ケース32に対して先端開口32aから所定突出量δで飛び出す位置で停止するようになっている。しかも、ガイド34に対して、ガイド34をケース32の先端開口部32aの内部に押し込む方向の外力が作用した場合には、図示省略してあるスプリングの弾性力に抗してガイド34は、所定突出量δが0となる位置までケース32の長手方向Xに移動自在になっている。なお、所定突出量δは、ガイド34に対して外力が作用しない状態では、0よりも大きな数値であることが好ましい。
【0033】
ガイド34には、平面側から見て矩形状の中央開口部34aが形成してある。ガイド34の内側(ケース32の内部)には、押圧ローラ36が配置してある。押圧ローラ36は、回転軸36aの回りに回転可能に保持してある。押圧ローラ36の回転軸36aは、ケース32に対して回転自在に装着してあると共に、図示省略してあるスプリングにより、ガイド34と同様に、ケース32の長手方向Xに沿って、ケース32の内部に押し込み可能になっている。
【0034】
この実施形態では、押圧ローラ36に対して何ら外力が作用しない状態では、押圧ローラ36の外周面の一部が、ガイド34の開口部34aからケース32の長手方向Xに沿って外側に少し飛び出す位置でストップするようになっている。押圧ローラ36に対してケース32の長手方向Xに沿ってケース内部に押し込む方向の力が作用した場合には、押圧ローラ36は、ガイド34に対してケース内部に押し込まれる方向に移動するようになっている。
【0035】
ケース32の内部であって、押圧ローラ36よりも基端側(図1上側)には、清掃ロール38がケース32に対して回転自在に装着してある。清掃ロール38の回転軸38aの周囲には、クリーニング用テープ48が巻回してある。クリーニング用テープ48は、たとえば片面に粘着材層が形成してある粘着紙テープなどで構成してある。このクリーニング用テープ48は、粘着面が外側を向くように、回転軸38aの外周に巻回してある。
【0036】
ケース32の内部であって、清掃ロール38よりも基端側には、ローラ40がケース32に対して回転自在に装着してある。このローラ40は、押圧ローラ36と対になり、これらの間で、異物除去テープ46が、ガイド34に案内されて、ループ状に循環するように掛け渡してある。
【0037】
異物除去テープ46は、たとえば樹脂テープの表面自体が粘着性を有する粘着性樹脂テープを平帯状にして構成してあり、少なくともループの外側が粘着面となるように、ローラ36および40の間に掛け渡してある。粘着性樹脂テープとしては、特に限定されないが、たとえばシリコンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムなどが例示され、テープ状に成形され、適度な柔軟性も有し、JIS硬度が20〜50程度である。なお、クリーニング用テープ48の粘着力は、異物除去テープ46の粘着力より強く、異物除去テープ46は、クリーニング用テープ48と接触することにより表面が清掃され、粘着性が回復し、くり返し異物除去に使用可能なテープである。
【0038】
清掃ロール38は、ローラ36および40の間の略中間位置に配置され、その回転軸38aが、図示省略してあるスプリングなどで異物除去テープ46への弾性力を付与されて支持され、ロール38の外周の一部を、ループ状に巻回された異物除去テープ46の片側に接触して押し込むようになっている。その結果、ローラ36および40の間に掛け渡された異物除去テープ46には、所定の張力が作用し、ガイド34の先端面に位置する異物除去テープ46の異物除去面46aに弛みが発生することはない。なお、ロール38に巻回されているクリーニング用テープ48の量が減っても異物除去テープ46への押し込み量が変化しないよう、ロール38を移動可能としてもよい。
【0039】
清掃ロール38から巻き解されるクリーニング用テープ48は、ロール38とローラ40との間に位置する異物除去テープ46の外面に押圧して接触され、ローラ40の外周の一部を通り、ローラ40よりも基端側の側面に位置するダイヤル式の操作用ローラ42の外周に巻取られる。操作用ローラ42の近くには、巻取り補助ローラ44が配置してあっても良いが、必ずしも設ける必要はない。巻取り補助ローラ44は、クリーニング用テープ48が操作用ローラ42の外周に巻取られる最初の回転位置で、操作用ローラ42の外周の一部を押圧してクリーニング用テープ48に弛みが発生するのを防止するように配置してあり、ケース32に対して回転自在に配置してある。
【0040】
操作用ローラ42の外周の一部は、ケース32の側面開口部32bから露出しており、ケース32を把持する操作者の片手の指で、操作用ローラ42を、好ましくは一方向に回転操作可能になっている。たとえば図1に示す操作用ローラ42を左回りに回転させることで、クリーニング用テープ48は、操作用ローラ42の外周に巻取られる。操作用ローラ42の巻きもどりを防止するストッパー(図示省略)を設けてもよい。
【0041】
クリーニング用テープ48が操作用ローラ42の外周に巻取られると、そのクリーニング用テープ48の巻き取りの動きは、テープ46とテープ48との粘着力により、そのテープ48が所定圧力で接触する異物除去テープ46に伝達し、ループ状に巻回してある異物除去テープ46をループに沿って右回りに回転させる。その結果、ローラ40は右回りに回転すると共に、押圧ローラ36も右回りに回転する。
【0042】
本実施形態では、操作用ローラ42が、所定量回転すると一旦ストップするように構成してあり、その所定の回転角度の回転により、異物除去面46aに位置する異物除去テープ46の外面が移動して新しい面に交換されるように設定してある。
【0043】
このように構成してある光学部品清掃具30における異物除去テープ46における異物除去面46aのサイズは、特に限定されず、図4に示すように、異物の除去の対象となる光学ローパスフィルタ24の表面の大きさなどに応じて決定される。たとえば光学ローパスフィルタ24の表面の縦横寸法が、L1およびL2である場合には、異物除去面46aの縦横寸法L3およびL4は、それぞれL1およびL2よりも小さく、好ましくは、それぞれ1/2以上の大きさであることが好ましい。
【0044】
また、図1の上側であるケース基端には、基端部(ケース32の長手方向の他端部)に収まる大きさのエネルギー照射装置47が、ケース32に対して基端部から飛び出さないように装着してある。
【0045】
エネルギー照射装置47側のケース32の基端部には、ガイド35が設けられている。カメラボディ4の内部へ光学部品清掃具30のエネルギー照射装置47側から挿入する際に、光学ローパスフィルタ24の表面にガイド35を接触させることで、光学ローパスフィルタ24の表面に傷がつくことを防ぐ。ガイド35は、光学ローパスフィルタ24よりも柔らかい材質であれば特に限定されず、たとえば、ゴム、発泡ゴム、プラスチック、発泡プラスチックなどで構成してある。
【0046】
エネルギー照射装置47は、レーザー照射装置、X線照射装置、プラズマ照射装置、イオンミリング装置、紫外線照射装置などが例示され、紫外線照射装置が好ましく、オゾン発生装置とともに具備してあってもよい。光学ローパスフィルタ24の表面にダメージを与えることなく有機物を分解するエネルギーを照射するものであることが好ましい。また、エネルギー発生装置の電圧供給手段としては、特に限定されないが、たとえばケース32に内蔵可能な電池方式が好ましい。
【0047】
このように構成してある光学部品清掃具30におけるエネルギー発生装置のエネルギー照射面のサイズは、上述した異物除去面46aのサイズと同様にして決定される。
【0048】
光学ローパスフィルタ24上の異物が有機物である場合にエネルギー照射装置47からエネルギー線を照射すると、光学ローパスフィルタ24上の異物である有機物の結合を切断し、有機物のフリーラジカルや励起状態の分子に変化させることができる。そのため、異物除去テープ46で異物を簡単に取り除くことができるようになる。
【0049】
異物である有機物としては、切削油、密ロウと松脂の混合物、ラッピング剤、真空ポンプ油、シリコン拡散ポンプ油、シリコン真空グリース、半田用フラックス、人間の皮膚脂、空気中に長時間暴露中に吸着した汚染、真空蒸着した炭素の薄膜などが例示される。
【0050】
このように構成してある光学部品清掃具30を用いて、図2に示すカメラボディの内部にある光学ローパスフィルタ24の表面の清掃を行う場合には、まず、カメラボディ4から交換レンズを取り外し、カメラボディ4の清掃モードを選択する。次に、光学部品清掃具30の先端部(異物除去面46a側)を持ちながら、基端部(エネルギー発生装置47側)をカメラボディ4の開口部7から差し込み、ガイド35を、図4において、光学ローパスフィルタ24の表面の一角部に押し当てる。
【0051】
その際に、光学ローパスフィルタ24の表面に付着している有機物を含む異物60に、特定の波長のエネルギー光線を照射し、有機物の結合を切断し、有機物のフリーラジカルや励起状態の分子に変化させることができる。
【0052】
このように、エネルギー照射を、光学ローパスフィルタ24の表面の4つの角部に対して繰り返すことで、光学ローパスフィルタ24の表面の異物である有機物の結合を切断し、有機物のフリーラジカルや励起状態の分子に変化させることができる。
【0053】
次に、光学部品清掃具30をカメラボディ4の開口部7から取り出し、光学部品清掃具30における異物除去面46aが、異物などの付着のない新しい面又は、粘着力が回復された後の面であることを確認する。その後、図3に示すように、光学部品清掃具30の基端部(エネルギー発生装置47側)を持ちながら、先端部(異物除去面46a側)をカメラボディ4の開口部7から差し込み、その先端部を、図4において、光学ローパスフィルタ24の表面の一角部に押し当てる。
【0054】
その際に、図1に示す押圧ローラ36およびガイド34は、ケース32の先端開口部32aの内部に多少押し込まれ、テープ46の異物除去面46aが光学ローパスフィルタ24の表面に所定圧力で密着する。その結果、光学ローパスフィルタ24の表面に付着していた異物60は、テープ46の異物除去面46aに粘着される。
【0055】
その後に、光学部品清掃具30の異物除去面46aを光学ローパスフィルタ24の表面から離し、光学部品清掃具30をカメラボディ4の開口部7から取り出さずに、操作用ローラ42を指で回転させれば、クリーニング用テープ48は、操作用ローラ42の外周に巻取られる。クリーニング用テープ48が操作用ローラ42の外周に巻取られると、そのクリーニング用テープ48の巻き取りの動きは、そのテープ48が所定圧力で接触する異物除去テープ46に伝達し、ループ状に巻回してある異物除去テープ46をループに沿って右回りに回転させる。その結果、ローラ40は右回りに回転すると共に、押圧ローラ36も右回りに回転する。
【0056】
本実施形態では、操作用ローラ42が、所定の回転角度で一旦ストップするように構成してあり、その所定角度の回転により、異物除去面46aに位置する異物除去テープ46の外面が交換されて、テープ48により異物60が除去されて粘着力が回復した後の面又は新しい面となる。
【0057】
そこで、次に、再度、光学部品清掃具30の異物除去面46a側の先端部を、図4において、光学ローパスフィルタ24の表面の他の角部に押し当てる。そして、上述の動作を、光学ローパスフィルタ24の表面の4つの角部に対して繰り返すことで、光学ローパスフィルタ24の表面の異物は、全て除去される。この際、光学部品清掃具30をカメラボディ4の開口部7から取り出す必要はなく、短時間で光学ローパスフィルタ24の清掃が可能である。
【0058】
しかも、操作用ローラ42を操作して、クリーニング用テープ48を操作用ローラ42の外周に巻取る際に、そのクリーニング用テープ48が所定圧力で接触する異物除去テープ46に付着している異物60が、クリーニング用テープ48側に移動する。したがって、操作用ローラ42を操作することで、異物除去テープ46の外面の清掃も同時に行うことができる。また、クリーニング用テープ48は、カートリッジ式のものであり、操作用ローラ42にクリーニング用テープ48が全て巻きとられた後は、ケース32を開閉することにより交換可能となっている。
【0059】
本実施形態に係る光学部品清掃具30では、有機物を含む異物60にエネルギー照射した後に、テープ46の異物除去面46aがフィルタ24の表面に接触し、その表面に付着してある異物60を、テープ46の異物除去面46aに粘着させる。エネルギー照射により有機物の結合を切断し、有機物のフリーラジカルや励起状態の分子に変化させることができるので、振動子による振動のみで異物を除去する方式に比較して、強く付着している有機物などの汚れであっても、容易に除去される。
【0060】
しかも本実施形態では、カメラボディ4の内部には、清掃用の振動子や清掃用の除去部材を設ける必要が無い。そのため、カメラボディ4のコンパクト化および軽量化を図ることができる。
第2実施形態
【0061】
図5に示す実施形態に係る光学部品清掃具30aは、下記の構成および作用効果が相違する以外は、上述した第1実施形態に係る光学部品清掃具30と同様な構成および作用効果を有する。
【0062】
すなわち、この実施形態では、異物除去テープ46をループ状に巻回するために、3つのローラ36,40,44とガイド34とを用いている。また、クリーニング用テープ48を操作用ローラ42aの外周に巻き付けることなく、ケース32の側面部に設けた側面開口部32bから排出可能にしてある。
【0063】
この実施形態では、クリーニング用テープ48を操作用ローラ42aの外周に巻き付けることなく、ケース32の側面部に設けた側面開口部32bから排出可能にしてあるので、操作用ローラ42aの外径が変化しないと共に、ローラ42aの外周に滑り止め加工を行うことで、操作用ローラ42aを回転させ易いと言う利点がある。
【0064】
また、クリーニング用テープ48を側面開口部32bから排出するように構成することで、その側面開口部32bから飛び出しているテープ48を引っ張ることで、ループ状の異物除去テープ46をループに沿って移動させることも可能である。側面開口部32bから飛び出しているテープ48は、破って捨てることも可能である。なお、側面開口部32bを設ける場所に特に制限はなく、ケース32の反対側側面を取り出し口としてもよい。
【0065】
また、図5に示す実施形態では、異物除去テープ46をループ状に巻回するために、3つのローラ36,40,44とガイド34とを用いているため、テープ48とテープ46とが接触する長さが図1に示す実施形態と比べて長くなり、テープ48の駆動力がテープ46へ伝達しやすくなると共に、異物が、テープ46からテープ48へと移動しやすくなる。
第3実施形態
【0066】
図6に示す実施形態に係る光学部品清掃具30bは、下記の構成および作用効果が相違する以外は、上述した第1実施形態に係る光学部品清掃具30と同様な構成および作用効果を有する。
【0067】
すなわち、この実施形態では、異物除去テープ46をループ状に巻回するために、2つのローラ36,40とガイド34とを用いているが、ローラ40の配置位置と、清掃ロール38とが、ケース32の長手方向Xに沿って第1実施形態と逆になっている。また、クリーニング用テープ48を操作用ローラ42aの外周に巻き付けることなく、ケース32の側面部に設けた側面開口部32bから排出可能にしてある。
【0068】
この実施形態では、クリーニング用テープ48を操作用ローラ42aの外周に巻き付けることなく、ケース32の側面部に設けた側面開口部32bから排出可能にしてあるので、操作用ローラ42aの外径が変化しないと共に、ローラ42aの外周に滑り止め加工を行うことで、操作用ローラ42aを回転させ易いと言う利点がある。
【0069】
また、クリーニング用テープ48を側面開口部32bから排出するように構成することで、その側面開口部32bから飛び出しているテープ48を引っ張ることで、ループ状の異物除去テープ46をループに沿って移動させることも可能である。側面開口部32bから飛び出しているテープ48は、破って捨てることも可能である。
【0070】
また、図6に示す実施形態では、異物除去テープ46をループ状に巻回するために、ローラ40と清掃ロール38とを密着させて配置することで、ロール38とローラ40との間で、テープ46,48同士を強く密着させることができる。
その他の実施形態
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0072】
たとえば、上述した実施形態において、ケース32から露出する異物除去テープ46の異物除去面46aが交換可能であれば良い。すなわち、図7に示すように、ケース32の内部において、異物除去テープ46を移動可能に備えておき、ローパスフィルタ24の全面の清掃が終わる毎に、異物除去テープ46の交換(清掃)を行うようにしても良い。このように構成することにより、少なくともローパスフィルタ24の全面の清掃を行う間は、異物除去面46aを交換させて新しい面とすることができる。
【0073】
また、押圧ローラ36、ローラ40などのケース32の内部構成部材を透明な材質に変えることで、異物除去面46aからエネルギー照射することもできる。このような構成にすることにより、エネルギー照射後に、光学部品清掃具30をカメラボディ4の開口部7から取り出さずに清掃作業を続けることができるので、光学部品表面を外部に露出している時間をさらに短くすることができる。そのため、光学部品表面が外部に長時間露出されることで起きる異物の再付着を、さらに効果的に防ぐことができる。
【0074】
また、上述した実施形態において、異物除去テープ46は、帯電防止処理が成されていることが好ましい。帯電防止処理としては、特に限定されないが、導電性粒子を、テープ46の内部に含ませ、テープ46に導電性を持たせればよい。そのように構成すれば、テープ46の異物除去面46aをフィルタ24から剥がした直後に、フィルタ24の表面に静電気が発生しにくくなり、異物の再付着を有効に防止することができる。
【0075】
なお、上述した実施形態において、ケース32に対しても、帯電防止処理が成されていることが好ましい。すなわち、ケース32も導電性であることが好ましい。
【0076】
さらに、上述した実施形態において、ローラ36および40の外周には、エンボス加工などの滑り防止処理がなされており、テープ46との滑りが防止されていることが好ましい。また、図1に示す操作用ローラ42の外周にもエンボス加工などの滑り防止処理がなされており、テープ48との滑りが防止されていることが好ましい。
【0077】
さらにまた、異物除去テープ46および/またはケース32には、蓄光材を含有させ、暗部で光るようにしても良い。カメラボディ4の内部は暗いので、異物除去テープ46および/またはケース32が光ることで、清掃作業がし易くなる。
【0078】
また、ケース32は、持ちやすい形状であることが好ましい。さらに、ケース32は、カメラボディ4のレンズマウント28に対して着脱自在に装着される構造であっても良い。
【0079】
また、操作部としては、操作用ローラ42,42a以外に、プッシュ式の操作部やその他の形式の操作部であっても良い。
【0080】
さらにまた、本実施形態に係る光学部品清掃具により清掃される光学部品としては、カメラボディ4の内部に配置してあるローパスフィルタ24には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図である。
【図2】図2は図1に示す光学部品清掃具を用いて有機物の付着力を低下させている状態を示すカメラボディの概略断面図である。
【図3】図3は図1に示す光学部品清掃具を用いて清掃している状態を示すカメラボディの概略断面図である。
【図4】図4は図1に示すIV−IV線に沿うローパスフィルタの正面図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図である。
【図6】図6は本発明のさらにその他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図である。
【図7】図7は本発明のさらにその他の実施形態に係る光学部品清掃具の概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
4… カメラボディ
30,30a,30b… 光学部品清掃具
32… ケース
34… ガイド
36… 押圧ローラ
38… 清掃ロール
40… ローラ
42… 操作用ローラ
44… 補助ローラ
46… 異物除去テープ
46a… 異物除去面
48… クリーニング用テープ
60… 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品の表面に付着している異物の一種である有機物の付着力を低下させる有機物除去容易化部材と、
前記付着力を低下させた有機物を前記光学部品の表面から除去可能な除去部材と、
を有する光学部品清掃具。
【請求項2】
前記除去部材の少なくとも一部が露出するように、前記除去部材を収容するケースをさらに有し、
前記除去部材は前記ケース内で移動可能であり、前記ケースから露出する一部が交換可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学部品清掃具。
【請求項3】
前記除去部材と前記有機物除去容易化部材とを収容するケースをさらに有し、
前記ケースの長手方向の一端部からは前記除去部材が露出され、
前記ケースの長手方向の他端部には前記有機物除去容易化部材が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の光学部品清掃具。
【請求項4】
前記有機物除去容易化部材は、前記有機物の結合を切断することができるエネルギー照射装置である請求項1〜3のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項5】
前記エネルギー照射装置は、紫外線照射装置である請求項4に記載の光学部品清掃具。
【請求項6】
前記除去部材は、前記光学部品の表面に付着している異物を除去可能であり、
前記光学部品から除去した異物が付着している前記除去部材から前記異物を取り除く清掃部材をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項7】
前記除去部材は、前記光学部品の表面に付着している異物を除去可能であり、
前記光学部品から除去した異物が付着している前記除去部材から前記異物を取り除く清掃部材を有し、
前記除去部材が粘着性樹脂テープで構成してあり、
前記清掃部材がクリーニング用テープで構成してある請求項1〜6のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項8】
前記除去部材の少なくとも一部が露出するように前記除去部材を収容するケースと、
操作者の手で操作可能な操作具とをさらに有し、
前記操作具を操作することにより、前記ケースから露出する前記除去部材の一部が交換可能である請求項1〜7のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項9】
前記除去部材の一部は、スプリング保持により所定の圧力荷重で前記光学部品の表面に押し付けられるようになっている請求項1〜8のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項10】
前記有機物除去容易化部材が前記光学部品の表面に接触することを防止する保護部材をさらに有する請求項1〜9のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項11】
滑り防止処理が成されている請求項1〜10のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項12】
帯電防止処理が成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項13】
蓄光材が含有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の光学部品清掃具。
【請求項14】
光学部品の表面に付着している異物の一種である有機物に特定の波長のエネルギー光線を照射することにより前記有機物の付着力を低下させ、
前記付着力を低下させた有機物を前記光学部品の表面から除去する光学部品清掃方法。
【請求項15】
前記特定の波長のエネルギー光線は、紫外線であることを特徴とする請求項14に記載の光学部品清掃方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−135759(P2009−135759A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310407(P2007−310407)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】