説明

光学部品製造装置及び光学部品の製造方法

【課題】基板と成形型の間で樹脂を均一に押し広げることで、光学部品の生産性の向上を図ることができる光学部品製造装置及び光学部品の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板3上に樹脂4A,5Aを滴下して、その樹脂4A,5Aをサブマスター20,20Bに向けて押圧する際に、ティルト機構であるギヤードモータ50と昇降アクチュエータ120とを作動させて、サブマスター20,20Bが固定されたプレートホルダ80に対して、ガラス基板3が固定された静電チャック装置70の角度を調整しつつ、サブマスター20,20Bとガラス基板3とを段階的に近付けることによって、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間でプレスされる樹脂4A,5Aを、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間のほぼ全域に亘ってほぼ均一に押し広げること可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品製造装置及び光学部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズの製造分野においては、ガラス基板に対し硬化性樹脂からなるレンズ部を設けることで、耐熱性の高い光学レンズを得る技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。この技術を適用した光学レンズの製造方法の一例として、ガラス基板の表面に硬化性樹脂からなる光学素子部を複数設けたいわゆる「ウエハレンズ」を形成し、その後にレンズ部ごとにガラス基板をカットする方法も提案されている。
【0003】
エネルギーを与えることで樹脂が硬化するエネルギー硬化性樹脂として、例えば光硬化性樹脂を用いた場合のウエハレンズの製造方法を簡単に説明すると、真空チャック装置によりガラス基板を吸引・固定しておき、このガラス基板上に樹脂を滴下または吐出する(ディスペンス工程)。その後、ガラス基板を、上方に配置された成形型に向けて上昇させ、樹脂を成形型に押圧する(インプリント工程)。成形型はレンズ成形面を有した光透過性の型であり、プレートホルダにより保持・固定されている。
【0004】
その後、ガラス基板の高さ位置をそのまま保持しながら、キャビティに充填された樹脂に対し成形型の上方から光照射し、樹脂を光硬化させる(露光工程)。その後、ガラス基板を降下させながら樹脂を成形型から離型する(離型工程)。その結果、ガラス基板上に複数の光学素子部が形成されたウエハレンズを製造することができる。
なお、このような成形プロセスは、光学素子を成形する成形型を成形する際にも同様に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3926380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂はガラス基板と成形型の間でプレスされて、その全面に押し広げられることが好ましいが、ガラス基板および成形型に対する樹脂の濡れ性にばらつきがあると、その濡れ性がよい部分に樹脂が広がりやすくなる。そして、樹脂の広がりやすい流れに応じてガラス基板および成形型の端まで樹脂が到達して、その端から一旦樹脂が漏れ出してしまうと、それ以外の部分に樹脂が広がりにくくなるので、ガラス基板上に光学素子部が形成されない部分が生じることとなって、レンズなど光学部品の生産性が低下する問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基板と成形型の間で樹脂を均一に押し広げることで、光学部品の生産性の向上を図ることができる光学部品製造装置及び光学部品の製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様によれば、基板の少なくとも一方の面にエネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設けた光学部品を製造する光学部品製造装置であって、
前記基板と、前記光学部材の形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型との何れか一方が固定される基台と、
前記基台に対向して配されて、前記成形型と前記基板の他方を保持するホルダと、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方の配置を調整して、前記ホルダに対する前記基台の角度を調整するティルト機構と、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方を移動させて、前記成形型と前記基板の間に供給された前記エネルギー硬化性樹脂を、前記成形型と前記基板の間で押し広げる押圧機構と、
前記基台又は前記ホルダの何れか少なくとも一方を透明に構成し、透明に構成した基台又はホルダ越しに前記成形型または前記基板を撮像可能に配置される撮像部と、
前記ティルト機構、前記押圧機構及び前記撮像部を制御する制御装置と、を備え、
前記撮像部側に配置される前記ホルダ又は前記基台に保持される前記成形型または前記基板は透明に構成し、
前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂を撮像し、
前記制御装置は、前記成形型または前記基板の外周形状に対応する設定パターン形状に対して、前記撮像部が撮像した前記エネルギー硬化性樹脂の広がりが少ない修正方向を検出し、その修正方向側の前記成形型と前記基板の間隔を広げるように前記ティルト機構を動作制御するとともに、前記成形型と前記基板を近接させるように前記押圧機構を動作制御することで、前記エネルギー硬化性樹脂を前記成形型と前記基板の間に押し広げるプレス処理を実行することを特徴とする光学部品製造装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記制御装置が、前記撮像部が撮像した前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達したと判断した場合に、前記制御装置は、前記成形型と前記基板とが平行となるように前記ティルト機構を動作制御する。
また、好ましくは、前記成形型および前記基板の外周形状は円形状であり、前記制御装置は、前記撮像部が撮像した画像に基づき、前記成形型または前記基板の外周形状とその中心を検出するとともに前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状を検出し、更に前記制御装置は、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最短距離を半径とする内接円と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最長距離を半径とする外接円と、前記成形型における前記成形面が形成された範囲を囲って前記中心を円の中心とする円形状の前記設定パターン形状を設定して、前記制御装置は、前記修正方向の前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部が前記外接円に達するまでのプレス処理を繰り返し行い、前記外接円と前記内接円の少なくとも一方が前記設定パターン形状に一致するまで前記ティルト機構と前記押圧機構を動作制御する。
また、好ましくは、前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間に充填された前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させるためのエネルギーを出力するエネルギー出力部と前記ホルダとの間に配置されており、前記撮像部は、前記エネルギー出力部が前記エネルギー硬化性樹脂に対してエネルギーの出力を行う際には、その妨げにならない待避位置に移動可能に備えられている。
【0010】
また、本発明によれば、基板の少なくとも一方の面にエネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設けた光学部品を製造する光学部品製造装置であって、
前記基板と、前記光学部材の形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型との何れか一方が固定される基台と、
前記基台に対向して配されて、前記成形型と前記基板の他方を保持するホルダと、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方の配置を調整して、前記ホルダに対する前記基台の角度を調整するティルト機構と、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方を移動させて、前記成形型と前記基板の間に供給された前記エネルギー硬化性樹脂を、前記成形型と前記基板の間で押し広げる押圧機構と、
前記基台又は前記ホルダの何れか少なくとも一方は光透過性を有し、当該光透過性を有する基台又はホルダ越しに前記成形型または前記基板を撮像可能に配置される撮像部と、
前記撮像部によって撮像された撮像データを表示手段に出力可能な出力部と、有し、
前記撮像部側に配置される前記ホルダ又は前記基台に保持される前記成形型または前記基板は光透過性を有し、前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂を撮像し、前記ティルト機構は、前記表示手段に表示される撮像データに基づいて外部から調整可能に構成されていることを特徴とする光学部品製造装置が提供される。
【0011】
また、本発明の他の態様によれば、基板の一方の面に、エネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設ける光学部品の製造方法であって、
前記光学部材の光学面形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型と、前記基板の一方の面との間に前記エネルギー硬化性樹脂を滴下又は吐出するディスペンス工程と、
前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状を検出し、前記成形型または前記基板の外周形状に対応する設定パターン形状に対して前記エネルギー硬化性樹脂の広がりが少ない修正方向を検出する修正方向検出工程と、
前記修正方向側の前記成形型と前記基板の間隔を広げるように、前記成形型に対する前記基板の角度を調整するティルト工程と、
角度調整された前記成形型と前記基板を近接させて前記修正方向側へ前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げるインプリント工程と、
を備えることを特徴とする光学部品の製造方法が提供される。
【0012】
好ましくは、前記修正方向検出工程と、前記ティルト工程と、前記インプリント工程を順次繰り返して、前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達するまで、段階的に前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げる。
また、好ましくは、前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達した後、前記成形型と前記基板とが平行となるように、前記成形型に対する前記基板の角度調整がなされる。
また、好ましくは、前記成形型および前記基板の外周形状は円形状であり、前記修正方向検出工程は、前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状とともに前記成形型または前記基板の外周形状とその中心を検出する工程と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最短距離を半径とする内接円と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最長距離を半径とする外接円と、前記成形型における前記成形面が形成された範囲を囲って前記中心を円の中心とする円形状の前記設定パターン形状を設定する工程とを含み、前記ティルト工程および前記インプリント工程において、前記修正方向の前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部が前記外接円に達するまで押し広げるプレス処理を繰り返し行い、前記外接円と前記内接円の少なくとも一方が前記設定パターン形状に一致するまで段階的に前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板と成形型の間に供給された樹脂を、基板と成形型の間でプレスして押し広げる際に、その広がりが少ない修正方向に向けて樹脂が流れやすいように、修正方向側の基板と成形型の間隔を広げるように基板と成形型との角度を調整しつつ、その基板と成形型とを段階的に近付けることができるので、基板と成形型の間でプレスされる樹脂が基板と成形型の間から漏れ出すことなく押し広げることができる。よって、基板と成形型の間のほぼ全域に亘ってほぼ均一に樹脂を押し広げることができ、その結果、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ウエハレンズの概略構成を示す斜視図である。
【図2】ウエハレンズ製造装置の概略構成を示す図面である。
【図3】サブマスターの概略構成を示す斜視図である。
【図4】サブマスターのマスターの概略構成を示す斜視図である。
【図5】ウエハレンズ製造装置の制御構成を概略的に説明するためのブロック図である。
【図6】ウエハレンズの製造工程の一部であって、ガラス基板の一方の面に樹脂を滴下する工程を示す図面である。
【図7】ウエハレンズ製造装置のティルト機構近傍を示す拡大説明図である。
【図8】サブマスターとガラス基板の間で押し広げられる樹脂に関する説明図である。
【図9】ウエハレンズの製造工程の一部であって、ガラス基板をサブマスターに押圧し光照射する工程を示す図面である。
【図10】ウエハレンズの製造工程の一部であって、スタンプホルダからサブマスターを取り外す工程を示す図面である。
【図11】ウエハレンズの製造工程の一部であって、ガラス基板の他方の面に樹脂を滴下する工程を示す図面である。
【図12】ウエハレンズの製造工程の一部であって、ガラス基板をサブマスターに押圧し光照射する工程を示す図面である。
【図13】ウエハレンズの製造工程の一部であって、スタンプホルダからサブマスターを取り外す工程を示す図面である。
【図14】ウエハレンズの製造工程の一部であって、ガラス基板から両面のサブマスターを離型する工程を示す図面である。
【図15】ウエハレンズ製造装置のティルト機構近傍を示す拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に示す通り、ウエハレンズ1(光学部品)は円形状のガラス基板3と、複数の凸レンズ部4,5とを、有している。ガラス基板3の表裏面には複数の凸レンズ部4,5がアレイ状に配置されている(図14参照)。ガラス基板3は基板の一例であり、凸レンズ部4,5は光学部材の一例である。凸レンズ部4,5には、光学面の表面に回折溝や段差等の微細構造が形成されていてもよい。
【0016】
凸レンズ部4,5は樹脂4A,5Aで形成されている。樹脂4A,5Aは光硬化性樹脂である。当該光硬化性樹脂としては、例えばアクリル樹脂やアリルエステル樹脂などを用いることができ、これら樹脂はラジカル重合により反応硬化させることができる。その他の光硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系の樹脂などを用いることができ、当該樹脂はカチオン重合により反応硬化させることができる。
本実施の形態において樹脂4A,5Aは光硬化性樹脂、好ましくはUV硬化性樹脂となっているが、これに限定されない。すなわちエネルギー(熱、光等)を与えることにより硬化するエネルギー硬化性樹脂であればよい。例えば、熱硬化性樹脂であれば、上記ラジカル重合やカチオン重合の他、シリコン等のように付加重合により硬化させることもできる。
【0017】
次に、ウエハレンズ1を製造する際に使用するウエハレンズ製造装置30について説明する。
【0018】
図2に示す通り、ウエハレンズ製造装置30はベース32を有している。ベース32の上部には開口部32aが形成されており、この開口部32aに当該開口部32aを塞ぐように板状の蓋部321が設けられている。蓋部321は、光透過性を有し、例えば石英ガラス等により形成されていることが好ましい。
なおここでいう「光透過性」とは可視光波長について透過性を有する意味であり、後述する撮像部95でディスペンス状態が撮影可能な透明な構成を含むものである。
蓋部321によって塞がれたベース32内は減圧機構322等によって減圧されている。ここで具体的に10−2MPa以下に減圧することが好ましい。
また、ベース32の上部には内側に突出する突出部34が形成されている。ベース32の底部と突出部34との間には、例えば3本のガイド36が所定間隔に立設されている(なお、図2では2本のガイドのみ図示)。ガイド36はベース32、突出部34とそれぞれフランジ部で取り付けられている。これによりベース32、突出部34に対して直交性を出して取り付けが可能となる。また各ガイド36間に掛け渡されるようにステージ40が設けられている。ステージ40にはスライドガイド42が形成されており、ガイド36がスライドガイド42を貫通している。
【0019】
また、ベース32上であってステージ40の下方には、ステージ40の昇降動作を行う昇降アクチュエータ120が設けられている。昇降アクチュエータ120にはシャフト122が連結されており、ステージ40を昇降作動させることで押圧機構として機能する。
ベース32の上部でステージ40の下方にも内側に突出する支持部48が形成されている。支持部48上には、支持部48の上面とステージ40の下面との間の距離を計測するハイトゲージ124が設けられている。
【0020】
ステージ40上には、ギヤードモータ50が所定間隔に例えば3つ設けられている(なお、図2では2つのギヤードモータのみ図示)。ギヤードモータ50にはシャフト52が連結されている。
ギヤードモータ50の上方にはXYステージ62、θステージ64、静電チャック装置(基台)70が順に設けられている。ギヤードモータ50とXYステージ62の下面との間にはロードセル44がそれぞれ設けられており、XYステージ62等の自重でシャフト52の先端がロードセル44と当接している。このギヤードモータ50の作動によってシャフト52が上下方向に伸縮するようになっており、それに伴いXYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70が一体的に上下方向に移動可能となっている。
ウエハレンズ製造装置30では、3つのギヤードモータ50がそれぞれ独立して作動することでティルト機構として機能するようになっており、各ギヤードモータ50におけるそれぞれのシャフト52の伸縮量を調整することで、ウエハレンズ製造装置30のプレートホルダ80(後述)に対する、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70の角度調整や配置調整を行うことが可能になっている。具体的にギヤードモータ50の作動によってシャフト52が上昇した側の静電チャック装置70がプレートホルダ80に近接し、ギヤードモータ50の作動によってシャフト52が下降した側の静電チャック装置70がプレートホルダ80から離間するように、プレートホルダ80に対し静電チャック装置70を傾ける角度調整や配置調整が行われる。
また、ステージ40上には、ステージ40の上面とXYステージ62の下面との間の距離を計測するハイトゲージ126が所定間隔に例えば3つ設けられている。
【0021】
XYステージ62はロードセル44、ハイトゲージ126の上のXY平面(2次元平面)において移動可能となっている。θステージ64はその中心部を回転軸として回動可能となっている。
【0022】
XYステージ62、θステージ64上には静電チャック装置70が設置されている。
静電チャック装置70は、内部に設けられた金属電極に電圧を印加して、静電チャック装置70の上面と静電チャック装置70上のガラス基板3とにそれぞれ正・負の電荷を発生させて、静電チャック装置70の上面にガラス基板3を固定するようになっている。なお、ガラス基板3の着脱機構は、静電チャックによるものに限らず、例えば真空チャックや、機械的に着脱するものなどであってもよい。
また、静電チャック装置70には、図示しないヒーターが埋め込まれており、静電チャック装置70に固定されたガラス基板3を加熱することが可能になっている。
【0023】
ベース32の上部には光透過性を有するプレートホルダ80が固定されている。プレートホルダ80も、例えば光透過性を有する透明の石英ガラス等により形成されていることが好ましい。このプレートホルダ80には光透過性のサブマスター20(第1成形型)が固定されている。プレートホルダ80の中央側にはサブマスター20の外周縁が嵌め込まれて、その外周縁を着脱自在に保持するツメ82やリング等が取り付けられている。そして、サブマスター20の外周縁をツメ82やリング等で機械的に保持することによってサブマスター20がプレートホルダ80に固定される。なお、プレートホルダ80とサブマスター20との着脱機構は、サブマスター20をプレートホルダ80に対して着脱自在に保持できる機構であれば上述の構成に限定されるものではない。
【0024】
サブマスター20を保持するプレートホルダ80の上方には撮像部95が備えられている。撮像部95は上方から透明なプレートホルダ80越しにサブマスター20やガラス基板3を撮像可能となっている。特に撮像部95は、ガラス基板3とサブマスター20の間でプレスされた樹脂(4A、5A)の広がり形状を撮像し、その撮像データとして画像データを取り込む。
また、プレートホルダ80の上方には光源90(エネルギー出力部)が設けられている。光源90の点灯によりサブマスター20に向けて光を出力してその光を照射可能となっている。なお、光源90が点灯して光照射を行う際には、撮像部95は光源90の前方から移動して、光照射の妨げにならない待避位置に移動可能に備えられている。
【0025】
図3に示す通り、サブマスター20は、主には成形部22と基材26とで構成されている。成形部22には複数のキャビティ24(凹部、成形面)がアレイ状に形成されている。キャビティ24の表面(成形面)形状はウエハレンズ1における凸レンズ部5に対応するネガ形状となっており、この図では略半球形状に凹んでいる。
【0026】
成形部22は、樹脂22Aによって形成されている。樹脂22Aとしては、離型性の良好な樹脂、特に透明樹脂が好ましい。離型性が良好であれば離型剤を塗布しなくても離型できる点で優れる。樹脂22Aとしては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも構わない。
【0027】
基材26は、サブマスター20の成形部22のみでは強度に劣る場合でも、成形部22に基材26を貼り付けることでサブマスター20の強度を上げることができ、何回も成形に用いることを可能にする裏打ち材のことである。
基材26は、成形部22と異なる材料で構成されてもよいし、成形部22と同一の材料で一体的に構成されてもよい。基材26を成形部22と異なる材料で構成する場合には、例えば石英、ガラス、樹脂など、光透過性および平滑性を有するものなら何れでもよい。基材26を成形部22と同一材料で一体的に構成するとは、実質的には成形部22だけでサブマスター20を構成することである。
【0028】
ここで、「サブマスター20」は、「凸レンズ部5」を成形するための第1成形型であり、図12に示す「サブマスター20B」は、「凸レンズ部4」を成形するための第2成形型であり、これらを区別している。「サブマスター20B」は基本的に「サブマスター20」と同様の構成及び材料であり、キャビティ24の表面形状が凸レンズ部4に対応するネガ形状となっているだけであるので、サブマスター20Bの説明は省略する。
なお、サブマスター20Bは、必ずしも必要ではなくこれを使った工程を省略することができる。この場合は、マスター10はポジ型となり、サブマスター20はネガ型でインプリント転写され、さらに所望の光学面形状がインプリントされる。
本発明のインプリント樹脂の広がり制御方法は、サブマスター20Bを用いない場合は、サブマスター20からサブマスター20Bをインプリントする時と、サブマスター20Bから所望の光学面形状をインプリントする場合に適用できる。
サブマスター20Bを使わないプロセスでは、サブマスター20から直接、所望の光学面形状をインプリントする時に使う。
【0029】
なお、ウエハレンズ1の製造(凸レンズ部5の成形)にあたっては、図3のサブマスター20が主に使用されるが、これに加えて図4のマスター10も使用される。すなわち、マスター10はサブマスター20を製造する際に用いる母型であり、サブマスター20はウエハレンズ1(凸レンズ部5)を成形する際に用いる成形型である。サブマスター20はウエハレンズ1を量産するのに複数回にわたり使用され、その使用目的、使用頻度などにおいてマスター10とは異なるものである。
【0030】
図4に示す通り、マスター10は直方体状のベース部12に対し複数の凸部14がアレイ状に形成されている。凸部14はウエハレンズ1の凸レンズ部5に対応する部位であり、略半球形状に突出している。なお、マスター10の外形状は、このように四角形であってもよいし円形であってもよい。
凸部14の表面(成形面)形状は、ガラス基板3上に成形転写する凸レンズ部5の光学面形状に対応するポジ形状となっている。
【0031】
マスター10の材料としては、切削や研削などの機械加工によって光学面形状を創製する場合には、金属または金属ガラスを用いることができる。分類としては鉄系の材料とその他合金が挙げられる。鉄系としては、熱間金型、冷間金型、プラスチック金型、高速度工具鋼、一般構造用圧延鋼材、機械構造用炭素鋼、クロム・モリブデン鋼、ステンレス鋼が挙げられる。その内、プラスチック金型としては、プリハードン鋼、焼入れ焼戻し鋼、時効処理鋼がある。プリハードン鋼としては、SC系、SCM系、SUS系が挙げられる。さらに具体的には、SC系はPXZがある。SCM系はHPM2、HPM7、PX5、IMPAXが挙げられる。SUS系は、HPM38、HPM77、S-STAR、G-STAR、STAVAX、RAMAX-S、PSLが挙げられる。また、鉄系の合金としては特開2005-113161や特開2005-206913に示されているものが挙げられる。非鉄系の合金は主に、銅合金、アルミ合金、亜鉛合金がよく知られている。例としては、特開平10-219373、特開2000-176970に示されている合金が挙げられる。金属ガラスの材料としては、PdCuSiやPdCuSiNiなどがダイヤモンド切削における被削性が高く、工具の磨耗が少ないので適している。また、無電解や電解のニッケル燐メッキなどのアモルファス合金もダイヤモンド切削における被削性がよいので適している。これらの高被削性材料は、マスター10全体を構成してもよいし、メッキやスパッタなどの方法によって特に光学転写面の表面だけを覆ってもよい。
【0032】
また、図5に示す通り、昇降アクチュエータ120(押圧機構)、ハイトゲージ124、ハイトゲージ126、ロードセル44、ギヤードモータ50(ティルト機構)、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70、プレートホルダ80、光源90、撮像部95は制御装置100に接続されている。制御装置100はこれら構成の動作を制御するようになっている。特に本実施形態では、制御装置100はハイトゲージ124の出力値に基づき昇降アクチュエータ120の動作(昇降量)を制御したり、ハイトゲージ126、ロードセル44の出力値に基づきギヤードモータ50の動作を制御したりするようになっている。また、撮像部95が撮像したガラス基板3とサブマスター20の間でプレスされた樹脂の広がり形状に応じて、昇降アクチュエータ120の動作(昇降量)とギヤードモータ50の動作を制御したりするようになっている。
【0033】
続いて、ウエハレンズ製造装置30を用いたウエハレンズ1の製造方法について説明する。
【0034】
図6、図7に示す通り、はじめに、プレートホルダ80に対し上記着脱機構によってサブマスター20を固定するとともに、静電チャック装置70に対しガラス基板3を設置し、静電吸引してガラス基板3を吸引・固定する。その後、図示しないディスペンサ等によりガラス基板3上に所定量の樹脂5Aを滴下する(第1ディスペンス工程)。
【0035】
ガラス基板3上に樹脂5Aを滴下した状態において、昇降アクチュエータ120を作動させてシャフト122を上方に伸ばし、ステージ40を上方に移動させる。このステージ40の上昇とともにステージ40上のギヤードモータ50及びXYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70も上昇し、ガラス基板3をサブマスター20に近接させてガラス基板3上の樹脂5Aをサブマスター20に向けて押圧する。
このガラス基板3とサブマスター20の間でプレスされた樹脂5Aの広がり形状を撮像部95が撮像し、その画像データを制御装置100に送出する。
【0036】
撮像部95が撮像した樹脂5Aの広がり形状に関する画像データの一例を図8に示す。
まず、制御装置100は、撮像部95が撮像した画像データに基づき、ガラス基板3又はサブマスター20の外周形状とその中心Oを検出するとともに樹脂5Aの広がり形状を検出する。また制御装置100は、中心Oから樹脂5Aの端部までの最短距離を半径とし中心Oを円の中心とする内接円C1と、中心Oから樹脂5Aの端部までの最長距離を半径とし中心Oを円の中心とする外接円C2と、サブマスター20におけるキャビティ24が形成された範囲を囲うプレス打ち切り円C3(設定パターン形状)を設定する。また制御装置100は、樹脂5Aの端部から外接円C2までの距離が最も長い部分の向きを修正方向と判定して検出する(修正方向検出工程)。なお、ここでいう距離(最短距離、最長距離)とは、中心Oから放射状に引いた直線に沿う距離をいう。
次いで、制御装置100は、昇降アクチュエータ120を作動させてシャフト122を所定量縮めてステージ40を僅かに下げてプレス位置を戻す。
次いで、制御装置100は、ティルト機構であるギヤードモータ50を作動させて、樹脂5Aの端部から外接円C2までの距離が最も長い領域の樹脂5Aが、ガラス基板3又はサブマスター20の外周に向かう方向に流れやすくなるように、その方向(修正方向)側のガラス基板3とサブマスター20の間隔を広げるように、ガラス基板3が設置されている静電チャック装置70を傾ける角度調整を行う(ティルト工程)。ここでガラス基板3とサブマスター20の間隔を広げる角度は一定であってもよく、また好ましくは、距離が大きい場合に樹脂5Aがより方向性をもって流れやすくなるように、例えば外接円C2までの距離に応じた数式に従った角度調整を行うようにしてもよい。
次いで、制御装置100は、昇降アクチュエータ120を作動させてシャフト122を上方に伸ばし、ガラス基板3とサブマスター20の間の樹脂5Aをプレスして、修正方向の樹脂5Aが外接円C2に達するまでプレスする(第1インプリント工程)。樹脂5Aが外接円C2に達したか否かは撮像部95が撮像する画像データに基づいて制御装置100が判断する。修正方向の樹脂5Aが外接円C2に達した場合には、ティルト機構であるギヤードモータ50を作動させて、サブマスター20に対してガラス基板3が平行となるように角度調整を行う。そして再度、ガラス基板3とサブマスター20の間でプレスされた樹脂5Aの広がり形状を撮像部95が撮像し、その画像データを制御装置100に送出する。
この樹脂5Aの広がり形状の撮像した画像データに基づいて、樹脂5Aを流し広げる修正方向を判断し、その修正方向の樹脂5Aが外接円C2に達するまでプレスすることを繰り返して、樹脂5Aの内接円C1と外接円C2の少なくとも一方がプレス打ち切り円C3に到達するまでプレスを進める。なお、このプレス処理を繰り返す過程で、樹脂5Aの広がり形状は略円形となって内接円C1と外接円C2は近似していき、プレス打ち切り円C3に到達する際には内接円C1と外接円C2はほぼ同じサイズの円となっている。
また、樹脂5Aを流し広げる修正方向は、樹脂5Aの端部から外接円C2までの距離が最も長い部分に基づいて設定されることに限らず、樹脂5Aの端部と外接円C2の間の領域の面積が広い部分に基づいて設定するようにしてもよい。
【0037】
このウエハレンズ製造装置30では、移動させようとするステージ40の高さ位置が制御装置100に予め設定されており、制御装置100は静電チャック装置70が基準位置S(図6参照)に到達する位置まで昇降アクチュエータ120を作動させ、図9に示すように静電チャック装置70が基準位置Sに到達したら昇降アクチュエータ120の作動を停止させる(位置制御工程)。この際、制御装置100がハイトゲージ124の出力値に基づき昇降アクチュエータ120の作動を制御して、ステージ40を所定の高さ位置まで移動させている。
そして上述したティルト工程によって、ガラス基板3が固定された静電チャック装置70を角度調整しつつ、その静電チャック装置70を基準位置Sまで段階的に上昇させた結果、樹脂5Aがガラス基板3の押圧を受けて徐々に広がり、図9に示す通り、サブマスター20のキャビティ24に充填される。
【0038】
その後、図9に示す通り、撮像部95を待避位置に移動させた後に、光源90を点灯させ、光透過性のサブマスター20を介して樹脂5Aに対し所定時間、光照射し、樹脂5Aの硬化をある程度進ませる。(第1硬化工程:露光工程)。例えば、樹脂5AがUV硬化性樹脂である場合には、光源90からUV光を照射する。また、樹脂5Aが熱硬化性樹脂である場合には、光源90から赤外線を照射する。
【0039】
ここで、樹脂5Aが硬化する際に(樹脂5Aの硬化時又はその後に)、ステージ40が所定の高さ位置で保持されたままであると、樹脂5Aにおいて硬化収縮が生じてもガラス基板3がその収縮に追従せず、樹脂5Aの内部に歪が生じたり、樹脂5Aに対するキャビティ24の面形状の転写が不十分になったりする可能性がある。
そこで、本実施形態では、光源90を一定時間点灯させ、樹脂5Aに対し一定量の光を照射したら、ガラス基板3を圧力制御して、サブマスター20に対するガラス基板3の押圧力を所定圧力に保持する。
詳しくは、ギヤードモータ50を作動させてシャフト52を上方に伸ばし、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70を上方に移動させる。この場合、制御装置100がロードセル44の出力値に基づきギヤードモータ50の作動を制御し、サブマスター20に対するステージ40の押圧力を所定圧力に保持しながらステージ40を上方に移動させる。
ウエハレンズ製造装置30では、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70のサブマスター20に対する押圧力が制御装置100に予め設定されており、制御装置100はロードセル44から受ける出力値に基づきギヤードモータ50の作動を制御し、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70のサブマスター20に対する押圧力を所定圧力に保持する(圧力制御工程)。
また、制御装置100はロードセル44、ハイトゲージ126の出力値に基づき、XYステージ62、θステージ64も制御して、ガラス基板3とサブマスター20との平行度や樹脂5Aへの均等荷重、ステージ40の上面とXYステージ62との間の距離なども一定に保持する。
【0040】
その後、光源90を消灯させて樹脂5Aに対する光照射を停止する。樹脂5Aに対する光照射は上記圧力制御工程の前に停止してもよい。
【0041】
図10に示す通り、サブマスター20をガラス基板3から離型しない状態で、上記着脱機構による固定を解除することによって、サブマスター20をプレートホルダ80から取り外す。そして、昇降アクチュエータ120のシャフト122を下方に縮め、ステージ40を下方に移動させる。
【0042】
図11に示す通り、プレートホルダ80に対して、上記着脱機構によって新たなサブマスター20Bを固定するとともに、サブマスター20と一体のガラス基板3を上下反転させて静電チャック装置70上にサブマスター20を設置する。そして、サブマスター20を静電吸引しサブマスター20を介してガラス基板3を固定する。
【0043】
その後、図11に示す通り、図示しないディスペンサ等によりガラス基板3上に所定量の樹脂4Aを滴下する(第2ディスペンス工程)。
【0044】
この状態において、図12に示す通り、静電チャック装置70を位置制御して、サブマスター20Bに対してサブマスター20およびガラス基板3を所定位置まで移動させ、ガラス基板3をその所定位置で保持する。この際にも上述の図8に関する画像データの取得および修正方向の検出等を行うとともに(修正方向検出工程)、ティルト機構(ギヤードモータ50)による角度調整を行って(ティルト工程)、サブマスター20とガラス基板3の間で樹脂4Aを均一に押し広げるようにプレスする(第2インプリント工程)。
また上述の図9の位置制御工程と同様に、昇降アクチュエータ120を作動させてシャフト122を上方に伸ばし、ステージ40を上方に移動させる際に、制御装置100がハイトゲージ124の出力値に基づき昇降アクチュエータ120の作動を制御し、ステージ40を所定の高さ位置まで移動させる(位置制御工程)。
その結果、樹脂4Aがガラス基板3の押圧を受けて徐々に広がり、サブマスター20Bのキャビティ24Bに充填される。その後、ステージ40を基準位置に対応する位置で保持したまま、光源90を点灯させ、図12に示す通り、光透過性のサブマスター20Bを介して樹脂4Aに対し所定時間、光照射し、樹脂4Aの硬化をある程度進ませる。(第2硬化工程:露光工程)。
【0045】
ここで、樹脂4Aが硬化する際に(樹脂4Aの硬化時又はその後に)、上述の樹脂5Aの場合と同様に、樹脂4Aにおいても硬化収縮が生じる。そのため、光源90を一定時間点灯させ、樹脂4Aに対し一定量の光を照射したら、ガラス基板3を圧力制御して、サブマスター20Bに対するガラス基板3の押圧力を所定圧力に保持する。
詳しくは、上述の図9の圧力制御工程と同様に、ギヤードモータ50を作動させてシャフト52を上方に伸ばし、XYステージ62、θステージ64、静電チャック装置70を上方に移動させる。この場合、制御装置100がロードセル44の出力値に基づきギヤードモータ50の作動を制御し、サブマスター20に対するステージ40の押圧力を所定圧力に保持しながらステージ40を上方に移動させる(圧力制御工程)。
また、制御装置100はロードセル44、ハイトゲージ126の出力値に基づき、XYステージ62,θステージ64も制御して、ガラス基板3とサブマスター20Bとの平行度や樹脂4Aへの均等荷重、ステージ40の上面とXYステージ62との間の距離なども一定に保持する。
【0046】
その後、光源90を消灯させて樹脂5Aに対する光照射を停止する。樹脂4Aに対する光照射は圧力制御工程の前に停止してもよい。
【0047】
図13に示す通り、サブマスター20Bをガラス基板3から離型しない状態で、上記着脱機構による固定を解除することによって、サブマスター20Bをプレートホルダ80から取り外す。そして、昇降アクチュエータ120のシャフト122を下方に縮め、ステージ40を下方に移動させる。
【0048】
その後、図14に示す通り、サブマスター20,20Bが取り付けられた状態でウエハレンズ1をウエハレンズ製造装置30から取り出す。そして、オーブン等でポストキュアして加熱硬化することによって樹脂4A,5Aの硬化を完全に硬化させる(第3硬化工程:加熱工程)。
最後にサブマスター20,20Bを離型する(離型工程)。
このようにしてガラス基板3の表裏面に凸レンズ部4,5が形成されたウエハレンズ1が形成される。
なお、本実施形態では第3硬化工程をもって樹脂を完全に硬化させているが、必ずしもこれに限定されない。つまりサブマスター20,20Bから離型された後に更に硬化を進ませる硬化工程を行ってもよい。これにより硬化工程を複数工程に分離できるため、樹脂の急激な光学特性の変化を軽減することが可能となる。
【0049】
以上の実施形態によれば、ガラス基板3上に樹脂4A,5Aを滴下して、その樹脂4A,5Aをサブマスター20,20Bに向けて押圧する際に、ティルト機構であるギヤードモータ50と押圧機構である昇降アクチュエータ120とを作動させて、サブマスター20,20Bが固定されたプレートホルダ80に対して、ガラス基板3が固定された静電チャック装置70の角度を調整しつつ、サブマスター20,20Bとガラス基板3とを段階的に近付けることができるので、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間でプレスされる樹脂4A,5Aを、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間のほぼ全域に亘ってほぼ均一に押し広げることができる。そして、サブマスター20,20Bにおける全てのキャビティ24,24Bに樹脂4A,5Aを充填することができ、生産性よくウエハレンズ1を製造することができる。
【0050】
特に、ガラス基板3とサブマスター20,20Bとの間でプレスされた樹脂4A,5Aの広がり形状を撮像部95で撮像した画像データに基づいて、樹脂4A,5Aの広がりが悪い部分を検出して、その方向(修正方向)に樹脂4A,5Aが流れやすくなるように、修正方向に向かってガラス基板3とサブマスター20,20Bの間隔を広げた状態でサブマスター20,20Bとガラス基板3とを段階的に近付けることを、制御装置100の動作制御によって自動的に行うことができるので、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間でプレスされる樹脂4A,5Aを容易に且つ好適に押し広げることができる。
また、修正方向に向かってガラス基板3とサブマスター20,20Bの間隔を広げた状態でサブマスター20,20Bとガラス基板3とを段階的に近付ける際、撮像部95が撮像して検出した樹脂4A,5Aの広がり形状が外接円C2に達するまでプレスを行うことを繰り返し行って、その外接円C2がプレス打ち切り円C3に到達まで繰り返すことにより、樹脂4A,5Aがガラス基板3とサブマスター20,20Bの間から漏れ出すことなく、樹脂4A,5Aを、サブマスター20,20Bとガラス基板3の間のほぼ全域に亘ってほぼ均一に好適に押し広げることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
ティルト機構は3つのギヤードモータ50によるものであることに限らず、例えば、図15に示すように、XYステージ62の下面に設けられた略半球形状を呈する球体部55と、球体部55の球面に摺接する軸受56と、球体部55の頂点に一端が固定されて他端が下方に延在する支柱57と、支柱57の他端側を直交するX軸方向とY軸方向に沿う向きにそれぞれ揺動させて支柱57を任意の向きに傾ける角度調節部58等を備える構成のティルト機構をウエハレンズ製造装置に設けてもよい。このようなティルト機構によってもサブマスター20に対するガラス基板3の角度調整を行うこともできる。
また、例えば、プレートホルダ80にガラス基板3を固定し、静電チャック装置70にサブマスター20を固定して、ガラス基板3に対するサブマスター20の角度調整を行いことで、サブマスター20とガラス基板3の間で樹脂を均一に押し広げるようにプレスするようにしてもよい。
【0052】
また、撮像部95で撮像した撮像データを作業者に表示する表示手段と接続し、当該表示手段によって表示された画像データを確認し、樹脂4A,5Aの広がりが悪い方向を把握し、作業者が当該ティルト機構を外部から操作して樹脂が均一に押し広がるように調整するような構成であってもよい。
またここでは撮像データとして撮像画像データで説明しているが、ここでいう撮像データは特に画像データには限定されず、撮像して得られたデータに対して種々の処理を施したデータを表示するものであっても良い。
また撮像データには撮像部としてのアナログカメラからの撮影画像も同様に含まれる。
なおここでいう表示手段は製造装置に一体的に設けられたモニタの他、外部に設けられた製造装置と接続可能なモニタであっても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、樹脂4A,5Aの広がり形状のパターンを円形に近付ける修正を行う場合のアルゴリズムに従ったティルト工程の例を示したが、修正パターンはこのアルゴリズムであることに限られず、その他任意の修正パターン、アルゴリズムであってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、サブマスター20,20Bから樹脂性の凸レンズ部4,5を形成する例を示したが、上記実施形態は、マスター10からレンズ成形用の樹脂型(サブマスター20)等を形成する場合にも適用可能である。
また、上記実施形態では、ウエハレンズ製造装置30内を減圧し、減圧下で露光工程までを行うとしたが、大気中で行っても構わない。
また、ガラス基板3の表裏面に凸レンズ部4,5を設けるとしたが、一方の面のみに凸レンズ部を設けても構わない。この場合、図6〜図9のように第1ディスペンス工程、第1インプリント工程(第1ティルト工程)及び第1硬化工程までを行い、図10に示す通り、サブマスター20をプレートホルダ80から取り外した後、サブマスター20を離型しない状態で、ウエハレンズ1をウエハレンズ製造装置30内から取り出す。そして、上記第3硬化工程と同様に加熱照射して樹脂を完全に硬化させればよい。
なお、プレートホルダ80からサブマスター着脱後の硬化工程は、必ずしも着脱前の硬化工程と異なる種類の硬化工程である必要はなく、照射条件が同じもしくは異なる同種の硬化工程であってもよい。
【0055】
また、ガラス基板3の設置位置とサブマスター20の設置位置とを反転させて製造してもよい。詳しくは、図示しないが、静電チャック装置70に対してサブマスター20を吸引・固定し、一方、プレートホルダ80によってガラス基板3を保持する。そして、サブマスター20上に樹脂5Aを滴下し、ガラス基板3に対してサブマスター20側を上方に移動させて押圧することにより樹脂5Aをキャビティ24内に充填させる。次いで、光照射し、サブマスター20を離型しない状態で、ガラス基板3の他方の面(樹脂5Aと反対側の面)に樹脂4Aを滴下する。その後、プレートホルダ80に新たに取り付けたサブマスター20Bに対して、ガラス基板3側を上方に移動させて押圧することにより樹脂4Aをキャビティ24B内に充填させる。その後、光照射し、サブマスター20,20Bを離型しない状態でウエハレンズ1を装置30内から取り出し、オーブン等により樹脂4A,5Aを加熱硬化する。
【0056】
また、位置制御工程では、ガラス基板3の位置制御と圧力制御とを同時に実行してもよい。すなわち、ガラス基板3を所定位置まで移動させる際に、ガラス基板3を圧力制御して、サブマスター20に対するガラス基板3の押圧力を所定圧力以下に保持する。
詳しくは、制御装置100がハイトゲージ124の出力値に基づきステージ40の移動を制御するのに加え、ロードセル44の出力値も常に参照しておき、ギヤードモータ50の作動を制御してステージ40のサブマスター20に対する押圧力を所定圧力以下に保持する。この場合、樹脂5Aに必要以上に荷重がかかるのを防止することができ、サブマスター20の変形を確実に防止することができる。
【0057】
また、圧力制御工程では、ロードセル44の出力値に基づきリアルタイムにギヤードモータ50の作動を制御してもよい。すなわち、制御装置100に対し予め設定しておいた一定の押圧力を閾値として、制御装置100がロードセル44の出力値を受けてその出力値が当該閾値以上になったら、ギヤードモータ50の作動を停止し、ロードセル44の出力値が当該閾値未満になったら、ギヤードモータ50の作動を再開する。
【符号の説明】
【0058】
1 ウエハレンズ
3 ガラス基板
4、5 凸レンズ部
4A、5A 樹脂
20、20B サブマスター
24、24B キャビティ
30 ウエハレンズ製造装置
50 ギヤードモータ
52 シャフト
55 球体部
56 軸受
57 支柱
58 角度調節部
62 XYステージ
64 θステージ
70 静電チャック装置
80 プレートホルダ
82 ツメ
90 光源
95 撮像部
100 制御装置
120 昇降アクチュエータ
C1 内接円
C2 外接円
C3 プレス打ち切り円
O 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の面にエネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設けた光学部品を製造する光学部品製造装置であって、
前記基板と、前記光学部材の形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型との何れか一方が固定される基台と、
前記基台に対向して配されて、前記成形型と前記基板の他方を保持するホルダと、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方の配置を調整して、前記ホルダに対する前記基台の角度を調整するティルト機構と、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方を移動させて、前記成形型と前記基板の間に供給された前記エネルギー硬化性樹脂を、前記成形型と前記基板の間で押し広げる押圧機構と、
前記基台又は前記ホルダの何れか少なくとも一方を光透過性を有するように構成し、当該光透過性を有する基台又はホルダ越しに前記成形型または前記基板を撮像可能に配置される撮像部と、
前記ティルト機構、前記押圧機構及び前記撮像部を制御する制御装置と、
を備え、
前記撮像部側に配置される前記ホルダ又は前記基台に保持される前記成形型または前記基板は光透過性を有し、
前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂を撮像し、
前記制御装置は、前記成形型または前記基板の外周形状に対応する設定パターン形状に対して、前記撮像部が撮像した前記エネルギー硬化性樹脂の広がりが少ない修正方向を検出し、その修正方向側の前記成形型と前記基板の間隔を広げるように前記ティルト機構を動作制御するとともに、前記成形型と前記基板を近接させるように前記押圧機構を動作制御することで、前記エネルギー硬化性樹脂を前記成形型と前記基板の間に押し広げるプレス処理を実行することを特徴とする光学部品製造装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記撮像部が撮像した前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達したと判断した場合に、前記制御装置は、前記成形型と前記基板とが平行となるように前記ティルト機構を動作制御することを特徴とする請求項1に記載の光学部品製造装置。
【請求項3】
前記成形型および前記基板の外周形状は円形状であり、
前記制御装置は、前記撮像部が撮像した画像に基づき、前記成形型または前記基板の外周形状とその中心を検出するとともに前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状を検出し、
更に前記制御装置は、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最短距離を半径とする内接円と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最長距離を半径とする外接円と、前記成形型における前記成形面が形成された範囲を囲って前記中心を円の中心とする円形状の前記設定パターン形状を設定して、
前記制御装置は、前記修正方向の前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部が前記外接円に達するまでのプレス処理を繰り返し行い、前記外接円と前記内接円の少なくとも一方が前記設定パターン形状に一致するまで前記ティルト機構と前記押圧機構を動作制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学部品製造装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間に充填された前記エネルギー硬化性樹脂を硬化させるためのエネルギーを出力するエネルギー出力部と前記ホルダとの間に配置されており、
前記撮像部は、前記エネルギー出力部が前記エネルギー硬化性樹脂に対してエネルギーの出力を行う際には、その妨げにならない待避位置に移動可能に備えられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光学部品製造装置。
【請求項5】
基板の一方の面に、エネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設ける光学部品の製造方法であって、
前記光学部材の光学面形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型と、前記基板の一方の面との間に前記エネルギー硬化性樹脂を滴下又は吐出するディスペンス工程と、
前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状を検出し、前記成形型または前記基板の外周形状に対応する設定パターン形状に対して前記エネルギー硬化性樹脂の広がりが少ない修正方向を検出する修正方向検出工程と、
前記修正方向側の前記成形型と前記基板の間隔を広げるように、前記成形型に対する前記基板の角度を調整するティルト工程と、
角度調整された前記成形型と前記基板を近接させて前記修正方向側へ前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げるインプリント工程と、
を備えることを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項6】
前記修正方向検出工程と、前記ティルト工程と、前記インプリント工程を順次繰り返して、前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達するまで、段階的に前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げることを特徴とする請求項5に記載の光学部品の製造方法。
【請求項7】
前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の少なくとも一部が前記設定パターン形状に達した後、前記成形型と前記基板とが平行となるように、前記成形型に対する前記基板の角度調整がなされることを特徴とする請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記成形型および前記基板の外周形状は円形状であり、
前記修正方向検出工程は、前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状とともに前記成形型または前記基板の外周形状とその中心を検出する工程と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最短距離を半径とする内接円と、前記中心から前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部までの最長距離を半径とする外接円と、前記成形型における前記成形面が形成された範囲を囲って前記中心を円の中心とする円形状の前記設定パターン形状を設定する工程とを含み、
前記ティルト工程および前記インプリント工程において、前記修正方向の前記エネルギー硬化性樹脂の広がり形状の端部が前記外接円に達するまで押し広げるプレス処理を繰り返し行い、前記外接円と前記内接円の少なくとも一方が前記設定パターン形状に一致するまで段階的に前記エネルギー硬化性樹脂を押し広げることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
基板の少なくとも一方の面にエネルギー硬化性樹脂製の光学部材を設けた光学部品を製造する光学部品製造装置であって、
前記基板と、前記光学部材の形状に対応したネガ形状の成形面を複数有する成形型との何れか一方が固定される基台と、
前記基台に対向して配されて、前記成形型と前記基板の他方を保持するホルダと、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方の配置を調整して、前記ホルダに対する前記基台の角度を調整するティルト機構と、
前記基台と前記ホルダの少なくとも一方を移動させて、前記成形型と前記基板の間に供給された前記エネルギー硬化性樹脂を、前記成形型と前記基板の間で押し広げる押圧機構と、
前記基台又は前記ホルダの何れか少なくとも一方は光透過性を有し、当該光透過性を有する基台又はホルダ越しに前記成形型または前記基板を撮像可能に配置される撮像部と、
前記撮像部によって撮像された撮像データを表示手段に出力可能な出力部と、有し、
前記撮像部側に配置される前記ホルダ又は前記基台に保持される前記成形型または前記基板は光透過性を有し、前記撮像部は、前記成形型と前記基板の間で押し広げられる前記エネルギー硬化性樹脂を撮像し、前記ティルト機構は、前記表示手段に表示される撮像データに基づいて外部から調整可能に構成されていることを特徴とする光学部品製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−51132(P2011−51132A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199795(P2009−199795)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】