説明

光学部材の搬送制御システムおよび搬送制御方法

【課題】複数種類の光学部材が混在して搬送されている加工ラインにおいて、通常加工ルートから抜取り処理ルートへ送り出される光学部材の数を適正に設定可能な搬送制御システムおよび方法を提供する。
【解決手段】抜取り処理ルート内に受け入れ可能な光学部材の個数(必要数)を各種類ごとにあらかじめ設定しておき、計数手段により抜取り処理ルート内に存在する光学部材の個数(滞在数)を計数して両者を比較し、滞在数が必要数より小さいときのみ分岐装置により抜取り処理ルートに光学部材を送り出すことを特徴とする搬送制御システムおよび方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに処理状態の異なる複数種類の光学部材(カラーフィルターなど)が、同一設備上を混在しながら生産される光学部材加工ラインにおける光学部材の搬送制御システムおよび搬送制御方法に関する。特に、加工ラインのうち、通常加工ルートから分岐したルートに設置された処理設備へ、処理対象部材を搬送する際の搬送制御システムおよび搬送制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばカラーフィルターの製造では、当初は何のパターンも有さないガラス基板に対して種々の加工を行い、ブラックマトリクス(BM)、赤(R)、緑(G)、青(B)の所定パターンを形成し、必要があればさらに別の層を形成するなど、各種工程を経て製品が製造される。所定の仕様を満たすためには、全ての基板は所定の製造工程を全て通過しなければならない。加工ラインのうち、全ての基板が通過しなければならないルートを、以下では通常加工ルートと呼ぶことにする。
【0003】
一方、例えば抜き取り検査工程など、一部の基板が通過すればよい工程もある。加工ラインのうち、このような一部の基板が通過すればよいルートを、以下では抜き取り処理ルートと呼ぶことにする。近年の大規模な加工ラインにおいては、抜き取り処理ルートは、通常加工ルートの所定箇所から分岐して設けられ、その分岐点に設置された分岐装置が、通常加工ルートを通過している基板のうちの一部を取り出して抜き取り処理ルートに送り出すようにしている。
【0004】
ここで、抜き取り処理ルートに送り出される基板の数が少なすぎると、抜き取り処理装置の稼働率が下がって、例えば抜き取り検査装置などの場合は、発生している欠陥を見逃すおそれがある。一方、抜き取り処理ルートに送り出される基板の数が多すぎると、抜き取り処理装置の処理速度が間に合わないなどの不具合が発生するおそれがある。従って、分岐装置により抜き取り処理ルートに送り出される基板の数は、通常加工ルートの処理速度や、抜き取り処理ルートの処理速度などを考慮した上で、適正な値に設定しなければならない。
【0005】
さらにカラーフィルターの製造を行なう加工ラインでは、それぞれ処理状態の異なるカラーフィルター基板(例えばR工程中の基板とB工程中の基板)が、同じ加工ライン上に混在しており、それぞれの処理状態の基板について、抜き取り処理ルートへ送り出される数を適正に設定しなければならない。
【0006】
例えば特許文献1では、複数種類のワークが混在して流れる加工工程において複数種類の抜き取り検査を行なう際に、あらかじめ複数種類のワークの各々について検査項目を設定するとともに、複数種類の検査項目の各々につき抜き取り周期を設定しておき、検査項目ごとに設けた抜き取り周期カウンタを、そこを通過したワークの種類に応じて歩進させて、その抜き取り周期カウンタがそれに対応する検査項目の前記設定抜き取り周期になったら、当該通過したワークについてその検査項目の検査を行うようにする、という技術が提案されている。
【0007】
カラーフィルターの加工ラインでも、同様の方法で抜取り処理ルートに送り出される基板の数を設定する搬送制御方法が従来から用いられており、図1を用いて説明する。
【0008】
図1において、通常加工ルート1上を、R工程中の光学部材2およびB工程中の光学部材3が搬送されている。分岐装置4は通常加工ルート1上にあり、通常加工ルート1を搬送されてきた光学部材を受け取る。分岐装置4は、受取った光学部材がどの工程中のものかを検知し、抜取り表5の該当欄を参照する。
【0009】
抜取り表5には、各工程ごとの投入周期およびカウント数を記録する欄があり、所定値が設定または記録されている。投入周期は、その工程中の基板を何枚おきに抜取り処理ルートに送り出すかという設定値であり、加工ラインの稼動開始前などにあらかじめ設定されておくべき値である。カウント数は、前にその工程中の基板を抜取り処理ルートへ送り出してから、同じ工程中の基板が何枚通過したかを図示せぬカウンタによってカウントした値である。
【0010】
まずセンサー(不図示)が、通常加工ルート1上の分岐装置4よりも前かまたは分岐装置4上に配置され、各基板がどの工程中のものか見分ける。カウンタ(不図示)は、次に分岐装置4上に来る基板の情報を、センサーから受け取ることができるようになっている。カウンタは、このセンサーからの情報を受け取ると、抜取り表5の該当する工程のカウント数を1増やす。
【0011】
例えば図1の場合、分岐装置4上にはB工程の光学部材があるので、抜取り表5のB工程の行を参照する。この場合、投入周期とカウント数の値が等しいので、分岐装置4は現在保持している光学部材を抜取り処理ルート6へ送り出す。この時カウント数を更新するが、カウント数は投入周期を超えると1に戻すので、この場合カウント数3は1に書き換えられる。抜取り処理ルート6へと送り出された光学部材は、抜取り処理設備7によって抜き取り処理が行われる。次にR工程やB工程の光学部材が分岐装置4に来た場合、抜取り表5のR工程もB工程も投入周期とカウント数は等しくないので、通常加工ルートを通る。これによってR工程のカウント数は2、B工程のカウント数も2となる。もし、更にR工程の光学部材が分岐装置に来た場合、抜取り表5のR工程の投入周期とカウント数は等しいので、分岐装置4は現在保持している光学部材を抜取り処理ルート6へ送り出す。
【0012】
抜取り表5は、投入周期やカウント数の情報の保持が可能で、これらの情報の公開および書き換えが可能な媒体上に作成されている。抜取り表5中の投入周期はあらかじめ設定しておく。図1の抜取り表5の場合、R工程の光学部材は2個に1個の周期で抜き取られ、B工程の光学部材は3個に1個の周期で抜取りが行われる、という設定になっている。
【0013】
以上のように従来の搬送制御方法では、何個おきに抜取り処理を行うかということをあらかじめ設定値として決めておき、加工ライン上を通過する光学部材をカウンタにより数え、設定値により厳密に決められた周期で抜取り処理を行っている。
【0014】
【特許文献1】特開平7−21433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記の従来方法には次のような2つの問題が存在する。まず、1つ目の問題は、抜取り処理ルートへの投入を一定枚数おきとする設定方法では、抜取り処理設備の処理能力に見合った設定をする事が困難であることである。
【0016】
抜取り処理ルートへ送り出される光学部材の数が、抜取り処理設備の処理能力を下回っている場合、抜取り処理設備にはアイドル時間が発生し稼働率が低下する。逆に抜取り処理設備の処理能力を上回っている場合、抜取り処理ルートに入りきれない光学部材が発生して通常加工ルートの分岐装置の上流側に光学部材が滞留し、通常加工ルート上の光学部材搬送自体が止まってしまう。従って、抜取り処理ルートへ送り出される光学部材の数を適正な値に設定しておくことが必要である。
【0017】
しかしながら、通常加工ルートおよび抜取り処理ルートの処理速度は各品種によって異なり、かつ、複数品種が混在しながら製造される状況においては、抜取り処理ルートに投入される製品も、同様に複数品種が混在することになり、複数品種の組み合わせで設定する必要がある。このため各品種ごとおよび各品種の組み合わせごとに適切な設定値に調整するのにまず手間がかかる。さらに、同じ品種でも製品ロットの出来具合などによって、通常加工ルートおよび抜取り処理ルートの処理速度が少しずつ異なるので再調整が必要になることもあり、これにも手間がかかる。
【0018】
2つ目の問題は、抜取り処理ルートへの投入を一定枚数おきとする設定方法では、抜取り処理設備の状態の変化にフレキシブルに対応できないということである。
【0019】
すなわち、抜取り処理設備に故障や処理速度の低下が発生した場合、抜取り処理ルートに入りきれない光学部材が発生して通常加工ルートの分岐装置の上流側に光学部材が滞留し、通常加工ルート上の光学部材搬送自体が止まってしまう。逆に、抜取り処理設備が故障から復帰した場合や処理速度の増加が発生した場合も、これに伴い設定値を修正する必要がある。
【0020】
これは抜取り処理設備の状態には全く関係なく、所定枚数おきに光学部材が抜取り処理ルートに送り出されるという動作のためである。
【0021】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたもので、抜取り処理ルートへ送り出される光学部材の数を手間をかけずに設定することを可能とし、また、抜取り処理設備の状態の変化にもフレキシブルに対応することを可能とした搬送制御方法を提供することを目的とする。これにより、通常加工ルート上に光学部材が滞留することや、抜取り処理設備の稼働率が低下することをなくすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために本発明の請求項1においては、それぞれに処理状態の異なる複数種類の光学部材が混在して搬送されている加工ラインにおいて、
前記加工ラインは、全ての光学部材が通過しなければならない通常加工ルートと、一部の光学部材のみが通過し抜取り処理装置による処理が行われる抜取り処理ルートと、前記通常加工ルート上を搬送されている光学部材のうちの一部を前記抜取り処理ルートに送り出すことができる分岐手段と、を少なくとも備えており、
前記分岐手段上または分岐手段の上流側に配置され、搬送されている光学部材の種類を判別可能な判別手段と、
前記抜取り処理ルート内に存在する光学部材の個数(以下、滞在数とよぶ)を各種類ごとに計数可能な計数手段と、
前記抜取り処理ルート内に受け入れ可能な光学部材の個数(以下、必要数と呼ぶ)を各種類ごとに、および抜取り処理装置ごとにあらかじめ設定可能で、かつ前記計数手段により計数された各種類ごとの光学部材の滞在数を記録する記録手段と、
前記判別手段から現在分岐手段上にある光学部材の種類の情報を受信し、前記記録手段に記録されている当該種類の光学部材の必要数と滞在数を比較して必要数よりも滞在数が少ない場合には当該光学部材を抜取り処理ルートへ送り出すよう分岐手段に指示し、それ以外の場合は通常加工ルートに送り出すよう分岐手段に指示する抜取り指示手段と、
を備えることを特徴とする光学部材の搬送制御システム、としたものである。
【0023】
また本発明の請求項2においては、それぞれに処理状態の異なる複数種類の光学部材が混在して搬送されている加工ラインにおいて、
前記加工ラインは、全ての光学部材が通過しなければならない通常加工ルートと、一部の光学部材のみが通過し抜取り処理装置による処理が行われる抜取り処理ルートと、前記通常加工ルート上を搬送されている光学部材のうちの一部を前記抜取り処理ルートに送り出すことができる分岐手段と、を少なくとも備えており、
前記分岐手段上または分岐手段の上流側で、搬送されている光学部材の種類を判別する判別段階と、
前記抜取り処理ルート内に存在する光学部材の個数(以下、滞在数とよぶ)を各種類ごとに計数する計数段階と、
あらかじめ設定された前記抜取り処理ルート内に受け入れ可能な各種類ごと、および抜取り処理装置ごとの光学部材の個数(以下、必要数と呼ぶ)と、前記計数段階にて計数された各種類ごとの光学部材の滞在数を記録する記録段階と、
前記判別段階で得られた現在分岐手段上にある光学部材の種類の情報と、前記記録段階で記録されている当該種類の光学部材の必要数と滞在数を比較して必要数よりも滞在数が少ない場合には当該光学部材を抜取り処理ルートへ送り出すよう分岐手段に指示し、それ以外の場合は通常加工ルートに送り出すよう分岐手段に指示する抜取り指示段階と、
を備えることを特徴とする光学部材の搬送制御方法、としたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光学部材の搬送制御システムおよび搬送制御方法により、抜取り処理ルートに送り出すべき光学部材の数を適正に設定する作業を簡単に行なうことができるようになる。また抜取り処理設備の処理速度の変動があった場合にも、フレキシブルに対応することが可能となる。これにより、抜取り処理設備のアイドル時間を無くし、かつ通常加工ルート上に光学部材が滞留してしまうことがないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を使って本発明の具体的な実施形態を説明する。図2は本発明の第1の実施形態を示したもので、光学部材の加工ラインの一部のうち、通常加工ルート1と抜取り処理ルート10がある部分を示したものである。
【0026】
図2において、通常加工ルート1上を、R工程中の光学部材2およびB工程中の光学部材3が搬送されているものとする。分岐装置41は通常加工ルート1上にあり、通常加工ルート1を搬送されてきた光学部材を受け取る。分岐装置41は、受取った光学部材がどの工程中のものかを図示せぬ判別手段により判別し、抜取り表8の該当欄を参照する。
【0027】
判別手段としては、光学部材に形成されているパターンを直接観察して、R工程またはB工程で形成されるべきパターンがあるかどうかにより判別するものが使用可能である。例えば光学部材上の所定の位置を画像処理センサーまたは色判別センサーにより観察して、R工程またはB工程で形成されるべきパターンや色があるかどうかを判別すればよい。
あるいは、各光学部材上に形成されている固有ID番号を読み取り、その番号の基板が現在どの工程中にあるものなのかを加工ライン全体を管理する上位システムに問合せるようなものも判別手段として使用可能である。例えば各光学部材上に固有ID番号を表すパターンを所定の形式(OCR数字、バーコード、2次元コード等)で形成しておき、それに対応する読み取り機材(OCRリーダー、バーコードリーダー、2次元コードリーダー等)で固有ID番号を読み取ってその情報を上位システムに送り、上位システムから分岐装置41に当該光学部材の属する工程の情報が与えられる、という方式でもよい。
【0028】
抜取り表8には、各工程ごとに抜取り処理領域9(後述)に受け入れ可能な数以内で設定された抜取り処理領域9に必要な光学部材の数(以下必要数と呼ぶ)と、現在の抜取り処理領域9に存在する光学部材の数(以下滞在数と呼ぶ)を記録する欄があり、所定値が設定または記録されている。
【0029】
ここで、通常加工ルート1を流れる光学部材を抜き取るときの動作について図4および図5を使って説明する。光学部材が分岐装置41に達した時、図4のように抜取り表8中の滞在数が必要数よりも少ない状態の場合、分岐装置41は抜取り処理領域9へと光学部材を送り出す。このとき滞在数は更新される。逆に図5のように抜取り表8中の滞在数が必要数に足りている場合、分岐装置41は通常加工ルート1へと光学部材を送り出す。
【0030】
図2の場合、分岐装置41上にはB工程の光学部材があるので、抜取り表8のB工程の欄の必要数と滞在数を参照し比較する。現在の滞在数=2が必要数=3より小さいので、分岐装置41は、この光学部材を抜取り処理ルート10側へ送り出す。
【0031】
抜取り処理ルート10に送り出された光学部材は、順次、抜取り処理設備7にて抜取り処理を受け、その後、合流装置42により通常加工ルート1上にもどされる。
【0032】
ここで、抜取り処理ルート10上の、分岐装置41下流側から抜取り処理設備7の出口までの領域を抜取り処理領域9と呼ぶことにする。図示せぬ計数手段は、この抜取り処理領域9に存在する光学部材を各工程のものごとに計数し、抜取り表8の滞在数の欄に記入している。すなわち、光学部材が分岐装置41から抜取り処理ルート10に送り出された時点で滞在数は+1され、光学部材が抜取り処理設備7出口を出た、すなわち、抜取り処理領域9から出た時点で滞在数は−1される。
【0033】
計数手段としては、抜取り処理領域9全体を監視して滞在数を計数可能なものでも良いし、分岐装置41から受け入れた数と合流装置42から送り出した数の差により滞在数を求めるようなものでも良い。
【0034】
抜取り表8は、必要数や滞在数の情報の保持が可能で、これらの情報の公開および書き換えが可能な媒体上に作成されている。抜取り表8中の必要数はあらかじめ設定しておくべきもので、全ての必要数の合計が、抜取り処理領域9に受け入れ可能な最大個数以下になるように設定する。そうすることによって、抜取り処理領域9に入りきらない光学部材が通常加工ラインに溢れるような事がなくなる。また、各工程ごとの必要数を必ずしも同じ値にする必要はなく、他の工程よりも抜取り処理の頻度を多くしたい工程の設定値を大きく、それほどでもない工程の設定値を小さく設定することは可能である。
【0035】
抜取り処理設備7の稼働率を最大にするためには、抜き取り処理ルート10の搬送手段として、抜取り処理設備への光学部材の受入れが可能になったらすぐに光学部材が供給できるような手段が必要である。本実施形態では図2に示したように、抜き取り処理ルート10の搬送手段として前詰め型コンベアを使用している。
【0036】
前詰め型コンベアとは、コンベア終端からの部材の送り出しがブロックされている場合、後続の部材が先詰まりに溜まるコンベアである。図2の場合、コンベア終端である抜取り処理設備の入り口前に、抜取り処理待ちの光学部材が適正な数だけ常に待機し、抜取り処理設備が受け入れ可能になったらすぐに投入が可能である。
【0037】
各工程のそれぞれの光学部材は、抜取られてから抜取り処理領域9から出るまで同じ時間を経るので、周期的に抜取り処理領域から出ていくことになる。本発明では、抜取り処理領域の滞在数が必要数より少なくなったら、通常加工ルートから抜取り処理ルートへの送り出しが行われるという動作なので、周期的に抜取りを行う事ができる。
【0038】
図3は本発明の第2の実施形態を示したもので、抜取り処理領域9部分の構成のみ第1の実施形態と異なっているので、その異なっている部分を中心に説明する。
【0039】
本実施形態は抜取り処理設備が2つ以上ある場合に適した構成である。まず、分岐装置41から送り出されてくる光学部材を、ロボット11で受け取る。ロボット11は、分岐装置41から受け取った光学部材をまずバッファ12にいったん載置する。バッファ12には、少なくとも必要数の合計以上の数の光学部材を載置可能な場所が設けられているものとする。
【0040】
複数の抜取り処理設備のいずれかが、次の光学部材の受け入れが可能となったら、ロボット11はバッファ12で待機している光学部材をその抜取り処理設備に速やかに投入することができる。この際、ロボット11は、バッファ12で待機している光学部材のうち最も前に抜取り処理領域9に入ったものから先に、抜取り処理設備に投入していく。図3では、抜取り処理設備が2つある場合を示しているが、抜取り処理設備が2個以上あってもかまわない。
【0041】
また、図3では、抜取り処理設備Aで処理された光学部材は合流装置42を介して通常加工ルート1に戻るが、抜取り処理設備Bで処理された光学部材は排出ルート15へ送り出されて通常加工ルート1へは戻らない場合を示している。抜取り処理領域9がこのような構成の場合、図示せぬ計数手段は、抜取り処理領域9全体を監視して滞在数を計数可能なものとするか、分岐装置41から受け入れた数と合流装置42から送り出した数と排出ルート15から送り出した数から計算して滞在数を求めるようにすれば良い。
【0042】
また本実施形態の抜取り表は1実施形態と同じような構成とすることも可能であるが、複数の抜取り処理設備ごとに処理数を調整したい場合は、図3中の抜取り表8’のような構成とすれば良い。すなわち、各工程と各抜取り処理設備ごとに必要数を設定可能で、計測した滞在数を記録可能とするような抜き取り表とすればよい。
【実施例】
【0043】
カラーフィルター製造ライン(以下CF製造ラインと記す)で、R工程、G工程、B工程の基板が同時に搬送されている場合に、抜取り検査を行った時の実施例を示す。
通常加工ルートに対して分岐装置および合流装置を介して、抜取り処理領域が配置されている。抜取り処理領域には、抜取り処理ルートである検査前コンベア(前詰め型)と抜取り処理設備である検査機(1台)が配置されている。抜取り処理領域に受け入れ可能な必要数の合計は10個であった。検査機の処理時間は光学部材の工程の種類によって異なっている。
【0044】
抜取り表のデータは、コンピュータに備えられた記憶媒体に保存した。コンピュータは、抜取り処理領域内の検査前コンベアと検査機から、現在これらの装置が保持している基板の工程ごとの枚数の情報を受取り、抜取り表の滞在数の欄に記録する。
【0045】
分岐装置は、現在保持している基板がどの工程に属するものかという情報を判別手段から得て、抜取り表の該当欄を参照し、この工程の必要数と滞在数の比較結果を受け取る。
【0046】
本実施例では、R工程は、G工程およびB工程の2倍の数の抜取り検査を行いたいので、抜取り表の必要数の比をR工程:G工程:B工程=2:1:1とすることにした。抜取り処理領域に受け入れ可能な基板の数が10なので、必要数の合計が10以下になるように、R工程の必要数を4、G工程とB工程の必要数をそれぞれ2と設定した。このように、特に検査機の処理時間や処理能力を気にすることなく設定できた。
【0047】
上記の装置構成と抜取り表を用いることによってCF製造ラインの抜取り検査を実現した。結果、検査機のアイドル時間が無くなり、稼働率が100%とすることができた。
【0048】
また、検査機が故障して長時間停止が発生し、抜取り処理領域に必要数の合計である8枚の基板が滞留したが、抜取りがそれ以上は行なわれなかったので、抜取り処理領域から基板が溢れて通常加工ルートに影響を及ぼすという事はなかった。また、故障の発生時および故障からの回復時に、特別な操作や設定変更を行わずに運用することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】従来の搬送制御システムの概略構成を示す模式図。
【図2】本発明の第1の実施形態である搬送制御システムの概略構成を示す模式図。
【図3】本発明の第2の実施形態である搬送制御システムの概略構成を示す模式図。
【図4】滞在数が必要数より少ない場合の分岐装置の動作
【図5】滞在数が必要数に足りている場合の分岐装置の動作
【符号の説明】
【0050】
1 通常加工ルート
2 R工程の光学部材
3 B工程の光学部材
4、41 分岐装置
42 合流装置
5 抜取り表
6 抜取り処理ルート
7 抜取り処理設備
8 抜取り表
9 抜取り処理領域
10 前詰め型コンベア
11 ロボット
12 バッファ
15 排出ルート
A、B 複数の抜取り処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに処理状態の異なる複数種類の光学部材が混在して搬送されている加工ラインにおいて、
前記加工ラインは、全ての光学部材が通過しなければならない通常加工ルートと、一部の光学部材のみが通過し抜取り処理装置による処理が行われる抜取り処理ルートと、前記通常加工ルート上を搬送されている光学部材のうちの一部を前記抜取り処理ルートに送り出すことができる分岐手段と、を少なくとも備えており、
前記分岐手段上または分岐手段の上流側に配置され、搬送されている光学部材の種類を判別可能な判別手段と、
前記抜取り処理ルート内に存在する光学部材の個数(以下、滞在数とよぶ)を各種類ごとに計数可能な計数手段と、
前記抜取り処理ルート内に受け入れ可能な光学部材の個数(以下、必要数と呼ぶ)を各種類ごとに、および抜取り処理装置ごとにあらかじめ設定可能で、かつ前記計数手段により計数された各種類ごとの光学部材の滞在数を記録する記録手段と、
前記判別手段から現在分岐手段上にある光学部材の種類の情報を受信し、前記記録手段に記録されている当該種類の光学部材の必要数と滞在数を比較して必要数よりも滞在数が少ない場合には当該光学部材を抜取り処理ルートへ送り出すよう分岐手段に指示し、それ以外の場合は通常加工ルートに送り出すよう分岐手段に指示する抜取り指示手段と、
を備えることを特徴とする光学部材の搬送制御システム。
【請求項2】
それぞれに処理状態の異なる複数種類の光学部材が混在して搬送されている加工ラインにおいて、
前記加工ラインは、全ての光学部材が通過しなければならない通常加工ルートと、一部の光学部材のみが通過し抜取り処理装置による処理が行われる抜取り処理ルートと、前記通常加工ルート上を搬送されている光学部材のうちの一部を前記抜取り処理ルートに送り出すことができる分岐手段と、を少なくとも備えており、
前記分岐手段上または分岐手段の上流側で、搬送されている光学部材の種類を判別する判別段階と、
前記抜取り処理ルート内に存在する光学部材の個数(以下、滞在数とよぶ)を各種類ごとに計数する計数段階と、
あらかじめ設定された前記抜取り処理ルート内に受け入れ可能な各種類ごと、および抜取り処理装置ごとの光学部材の個数(以下、必要数と呼ぶ)と、前記計数段階にて計数された各種類ごとの光学部材の滞在数を記録する記録段階と、
前記判別段階で得られた現在分岐手段上にある光学部材の種類の情報と、前記記録段階で記録されている当該種類の光学部材の必要数と滞在数を比較して必要数よりも滞在数が少ない場合には当該光学部材を抜取り処理ルートへ送り出すよう分岐手段に指示し、それ以外の場合は通常加工ルートに送り出すよう分岐手段に指示する抜取り指示段階と、
を備えることを特徴とする光学部材の搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−79632(P2010−79632A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247782(P2008−247782)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】