光導波路及びアレイ導波路回折格子
【課題】本発明は、回路規模を大きくせず回路設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路を提供する。
【解決手段】本発明は、回折格子GP又はGAが形成されたスラブ導波路1と、回折格子GP又はGAの自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路2と、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、アレイ導波路2の中心軸において高くなる屈折率変化領域DVと、を備えることを特徴とする光導波路である。
【解決手段】本発明は、回折格子GP又はGAが形成されたスラブ導波路1と、回折格子GP又はGAの自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路2と、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、アレイ導波路2の中心軸において高くなる屈折率変化領域DVと、を備えることを特徴とする光導波路である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子に関する。
【背景技術】
【0002】
DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)合分波器、M×Nスターカプラ及び1×Nスプリッタなどでは、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するときに、隣接するアレイ導波路の間のクラッド層で放射モードにならないような、スラブ導波路とアレイ導波路の間の接続構造が、特許文献1−6に開示されている。
【0003】
特許文献1−4では、導波路の屈折率がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて徐々に変化する遷移領域が配置されている。特許文献5では、スラブ導波路とアレイ導波路の間に傾斜部が配置されている。特許文献6では、スラブ導波路にコア層と複数の島状領域が配置されている。島状領域の屈折率はコア層の屈折率より小さい。島状領域は隣接するアレイ導波路の間のクラッド層に対向する。光伝搬の方向に略垂直な方向の島状領域の幅は、スラブ導波路からアレイ導波路に向けて狭くなる。隣接する島状領域の間のコア層を通過する光は、伝搬方向を変えずアレイ導波路に向けて伝搬する。島状領域を通過する光は、島状領域のテーパ形状により伝搬方向を変えてアレイ導波路に向けて伝搬する。島状領域のテーパ形状と位置が最適化されることにより、光はアレイ導波路に集中し導波モードになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5745618号明細書
【特許文献2】米国特許第7006729号明細書
【特許文献3】米国特許第6892004号明細書
【特許文献4】特開2008−293020号公報
【特許文献5】特開2001−159718号公報
【特許文献6】特開2003−14962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1−4では、遷移領域が配置されているため、回路規模が大きくなる。特許文献5では、傾斜部が配置されているため、回路製造が難しくなる。特許文献6では、島状領域のテーパ形状と位置が最適化される必要があるため、回路設計が難しくなる。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、回路規模を大きくせず回路設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、スラブ導波路に回折格子を形成し、回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置にアレイ導波路を接続した。ここで、回折格子の構造及び位置は、特定の設計波長に対して最適化されるところ、その他の波長に対して最適化されるわけではない。そこで、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成し、屈折率変化領域がその他の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることとした。
【0008】
具体的には、本発明は、回折格子が形成されたスラブ導波路と、前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路と、前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記アレイ導波路の中心軸において高くなる屈折率変化領域と、を備えることを特徴とする光導波路である。
【0009】
この構成によれば、タルボ(Talbot)効果により、光の波長とスラブ導波路の内部に形成された回折格子の周期に応じて、回折格子の自己像が形成される。回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に、アレイ導波路の端部が配置されることにより、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するときに、アレイ導波路に集中し導波モードになる。光導波路の規模を大きくせず設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。そして、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成すれば、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間の一部に前記屈折率変化領域が形成されたことを特徴とする光導波路である。
【0011】
この構成によれば、回折光が干渉する領域の一部に屈折率変化領域を形成すればよい。
【0012】
また、本発明は、前記屈折率変化領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて広くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記アレイ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる高屈折率領域と、前記高屈折率領域より低い屈折率を有し、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて狭くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接する前記アレイ導波路の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる低屈折率領域と、を備えることを特徴とする光導波路である。
【0013】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0014】
また、本発明は、前記低屈折率領域は、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断される、又は、前記高屈折率領域は、前記低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断されることを特徴とする光導波路である。
【0015】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0016】
また、本発明は、前記屈折率変化領域は、高屈折率領域及び前記高屈折率領域より低い屈折率を有する低屈折率領域を光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置した交互配置領域と、光伝搬の方向と略垂直な方向に延び前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する垂直延伸領域と、をそれぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置し、複数個の前記交互配置領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭い、又は、複数個の前記垂直延伸領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広いことを特徴とする光導波路である。
【0017】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0018】
また、本発明は、前記低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成し、前記2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置され、前記2個の平行分割領域の間には、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置されることを特徴とする光導波路である。
【0019】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0020】
また、本発明は、前記回折格子が位相格子であることを特徴とする光導波路である。
【0021】
この構成によれば、入射光に位相差が与えられることにより入射光が回折されるため、入射光の損失を低減することができる。
【0022】
また、本発明は、前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略90度であることを特徴とする光導波路である。
【0023】
この構成によれば、位相格子の自己像が明瞭に形成される。
【0024】
また、本発明は、前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略180度であることを特徴とする光導波路である。
【0025】
この構成によれば、位相格子の自己像が明瞭に形成される。
【0026】
また、本発明は、1本以上の第1の入出力導波路と、前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された光導波路と、前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子である。
【0027】
この構成によれば、アレイ導波路回折格子の規模を大きくせず設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。そして、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成すれば、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、回路規模を大きくせず回路設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子を提供することができる。そして、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】タルボ効果の現象を示す図である。
【図2】タルボ効果の現象を示す図である。
【図3】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図4】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図5】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図6】スラブ導波路の位相格子及びアレイ導波路の入射端の関係を示す図である。
【図7】スラブ導波路の位相格子及びアレイ導波路の入射端の関係を示す図である。
【図8】屈折率変化領域の作用効果を示す図である。
【図9】屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。
【図10】屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。
【図11】挿入損失の計算結果及び実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0031】
(実施形態1)
実施形態1では、まず、タルボ(Talbot)効果の現象と計算結果を説明する。次に、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路について、タルボ効果の現象と計算結果に基づいて説明する。
【0032】
タルボ効果は、光が回折格子に入射されたときに回折光どうしが干渉することにより、光の波長と回折格子の周期に応じて規定される距離だけ回折格子から離れた位置に、回折格子のパターンと同様な光の強度分布が回折格子の自己像として実現されることをいい、タルボ干渉計に応用されている。
【0033】
図1及び図2は、タルボ効果の現象を示す図である。回折格子GP1、GP2は、入射光に対して位相差を与える位相格子であり、回折格子GAは、入射光に対して強度差を与える振幅格子である。位相格子GP1が関わるタルボ効果の現象は、図1の上半分に示されており、振幅格子GAが関わるタルボ効果の現象は、図1の下半分に示されており、位相格子GP2が関わるタルボ効果の現象は、図2に示されている。位相格子GP1、GP2と振幅格子GAの周期はdであり、位相格子GP1が入射光に対して与える位相差は90°であり、位相格子GP2が入射光に対して与える位相差は180°である。位相格子GP1、GP2と振幅格子GAは、xy平面内で(y軸は図1及び図2に不図示)、z=0の位置に配置される(図1及び図2では、便宜上、位相格子GP1、GP2と振幅格子GAは、z=0の位置より図面上の左側に示されている)。入射光の波長はλである。入射光は、図1及び図2の左端の矢印で示したように、平行光としてz軸方向に入射される。
【0034】
まず、位相格子GP1が関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(2λ)とおいたときに、位相格子GP1の直後に形成された光の強度分布は、m=0の位置に砂地で示したように均一であり、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・(nは0以上の整数)の位置に示されている。一方、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、位相格子GP1の自己像SP1が、斜線と白地で示したように明瞭に形成される。位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。位相格子GP1の自己像SP1の強度周期はdである。
【0035】
ここで、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1は、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしている。
【0036】
次に、振幅格子GAが関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(2λ)とおいたときに、振幅格子GAの直後に形成された光の強度分布が、m=0の位置に示されており、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、振幅格子GAの自己像SAとして、m=2、4の位置に示されている。振幅格子GAの自己像SAは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・(nは0以上の整数)の位置では、斜線と白地で示したように明瞭に形成されるが、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、砂地で示したように形成されず、均一な強度分布が存在する。振幅格子GAの自己像SAは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。振幅格子GAの自己像SAの強度周期はdである。
【0037】
ここで、m=2、6、・・・、4n+2、・・・の位置で形成される振幅格子GAの自己像SAは、m=4、8、・・・、4n+4、・・・の位置で形成される振幅格子GAの自己像SAと比較して、x軸方向にd/2だけシフトしている。
【0038】
次に、位相格子GP2が関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(8λ)とおいたときに、位相格子GP2の直後に形成された光の強度分布は、m=0の位置に砂地で示したように均一であり、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、m=2、4、6、・・・、2n、・・・(nは0以上の整数)の位置に示されている。一方、m=1、3、5、7、・・・、2n+1、・・・の位置では、位相格子GP2の自己像SP2が、斜線と白地で示したように明瞭に形成される。位相格子GP2の自己像SP2は、m=1、3、5、7、・・・、2n+1、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。位相格子GP2の自己像SP2の強度周期はd/2である。また、自己像SP2の次数毎のシフトはない。
【0039】
位相格子GP1、GP2は、そのx座標の位置に応じて光の速度を変化させ、入射光に対して位相差を与える。振幅格子GAは、そのx座標の位置に応じて光の吸収を変化させ、入射光に対して強度差を与える。よって、本発明に係る光導波路を実施形態5に記載のアレイ導波路回折格子などに適用するときに、光の損失を低減するために位相格子GP1、GP2を利用することが望ましい。そこで、以下の説明では、位相格子GP1、GP2を利用する場合については詳細に説明し、振幅格子GAを利用する場合については両場合が異なる部分を簡潔に説明する。
【0040】
図3は、位相格子GP1のタルボ効果の計算結果を示す図である。図1では、入射光を平行光としているが、図3では、スラブ導波路を伝搬する光が平行光ではなく拡散光であることを考慮して、入射光を拡散光としている。入射光は、図3の左端の矢印で示したように、拡散光として右側方向に入射される。図4は、位相格子GP2のタルボ効果の計算結果を示す図である。図4では、入射光を平行光としている。入射光は、図4の左端の矢印で示したように、平行光として右側方向に入射される。図3及び図4では、位相格子GP1、GP2は、m=0の位置に配置される。
【0041】
位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、明瞭な白黒のグラデーションで示したように明瞭に形成されるが、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置では、不明瞭な白黒のグラデーションで示したように明瞭には形成されない。位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・以外の位置でも、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置に近づくにつれて明瞭に形成されるようになり、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置に近づくにつれて明瞭には形成されなくなる。m=0、1、2、3、・・・の位置が等間隔に整列していないのは、入射光が平行光ではなく拡散光であるためである。
【0042】
図3を全体で見れば、白黒のグラデーションは、右側方向に進行するにつれて、図3の上下方向に拡散する。図3を詳細に見れば、白黒のグラデーションは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置の近傍で急激に変化している。このことは、図1において、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1が、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしていることに対応する。m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1は、mが小さいほど明瞭に形成される。図4の計算結果と図2の模式図面は、同様な傾向を示しているが、図4ではm=2、4、・・・の位置において、位相格子GP2の周期と同周期のピークが認められる。これは図4のシミュレーションが一般的な光回路をもとにした計算であるところ、位相格子GP2をコア材及びクラッド材のような屈折率差の小さい材料で形成すると、位相格子GP2は光の伝搬方向に長くなり、屈折率の低い部分を伝搬する光は伝搬距離が長くなるほど屈折率の高い部分へ結合し、位相格子GP2終端で強度分布が発生するためである。
【0043】
図5は、入射光に対して与える位相差が様々な位相差である位相格子GPのタルボ効果の計算結果を示す図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)では、位相格子GPが入射光に対して与えるそれぞれの位相差は、π/8、π/4、π/2、3π/4、7π/8、π、π/12、π/6、π/3である。 図5では、入射光を平行光としており、位相格子GPは各図の左端に配置される。タルボ効果により位相格子GPの自己像SPを明瞭に形成することができれば、位相格子GPが入射光に対して与える位相差は図5に上述の位相差以外の位相差であってもよい。
【0044】
次に、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路について、タルボ効果の現象と計算結果に基づいて説明する。図6は、スラブ導波路1の位相格子GP1又はGP2及びアレイ導波路2の端部の関係を示す図である。図6(a)から図6(c)のそれぞれの左側は、光導波路の全体構成を示し、図6(a)と図6(b)のそれぞれの右側は、位相格子GP1の自己像SP1を示し、図6(c)の右側は、位相格子GP2の自己像SP2を示し、図6(a)から図6(c)のそれぞれにおいて、左側及び右側の図面は、一点鎖線により図6の上下方向に位置合わせされている。図6(a)と図6(b)では、スラブ導波路1の位相格子GP1及びアレイ導波路2の端部の位置関係が異なっている。
【0045】
光導波路は、スラブ導波路1、アレイ導波路2及び干渉領域IFから構成される。スラブ導波路1は、入射領域IN及び位相格子GP1又はGP2から構成される。入射領域INは、スラブ導波路1の入射側に配置されており、入射光は、入射領域INを伝搬する。位相格子GP1又はGP2は、入射領域INと干渉領域IFの間に配置されており、異なる屈折率を有する斜線で示した領域と白地で示した領域で形成されている。斜線で示した領域の屈折率は、白地で示した領域の屈折率より、大きくても小さくてもよい。入射光は、屈折率が大きい領域を遅い速度で伝搬し、屈折率が小さい領域を速い速度で伝搬する。位相格子GP1又はGP2は、図6の上下方向の位置に応じて光の速度を変化させ、入射光に対して位相差を与える。干渉領域IFは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に配置されており、回折光を伝搬させる。
【0046】
アレイ導波路2は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分において、干渉領域IFに接続される。つまり、回折光は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分に集中的に分布するため、アレイ導波路2で導波モードになる。そして、回折光は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の斜線で示した暗干渉部分にほとんど分布しないため、クラッド層で放射モードにならない。図6では、アレイ導波路2が複数接続されているが、1本のみ接続されてもよい。
【0047】
図6(a)では、位相格子GP1のうち斜線で示した領域に対応する位置に、位相格子GP1の自己像SP1の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。図6(b)では、位相格子GP1のうち白地で示した領域に対応する位置に、位相格子GP1の自己像SP1の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。このように、スラブ導波路1の位相格子GP1及びアレイ導波路2の端部の位置関係として異なる位置関係が存在することは、図1に示したように、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1が、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしていることに対応する。図6(c)では、位相格子GP2のうち斜線及び白地で示した領域から、光伝搬の方向と略平行な方向に進んだ位置に、位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。このように、図6(a)及び図6(b)では、位相格子GP1の周期は、アレイ導波路2の周期と同一であるが、図6(c)では、位相格子GP2の周期は、アレイ導波路2の周期の2倍である。
【0048】
以上の説明のように、タルボ効果により、入射光の波長λと回折格子GP1、GP2又はGAの周期に応じて、回折格子GP1、GP2又はGAの自己像SP1、SP2又はSAが形成される。そして、回折格子GP1、GP2又はGAの自己像SP1、SP2又はSAの明干渉部分が形成される位置に、アレイ導波路2の端部が配置されることにより、光がスラブ導波路1からアレイ導波路2に向けて入射するときに、光がアレイ導波路2に集中し導波モードになる。よって、光がスラブ導波路1からアレイ導波路2に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。光がアレイ導波路2からスラブ導波路1に向けて入射するときも、光の相反性により同様である。なお、アレイ導波路2が干渉領域IFとの境界近傍で分岐されている場合は、明干渉部分が形成される位置に、分岐されたアレイ導波路2の各々の端部が配置される。
【0049】
(実施形態2)
実施形態2では、光導波路の設計方法を説明する。最初に、位相格子GP1、GP2の光伝搬方向幅L1の設定方法を説明し、次に、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2の設定方法を説明し、最後に、アレイ導波路2の端部の位置設定方法を説明する。
【0050】
アレイ導波路2の端部において位相格子GP1の自己像SP1が明瞭に形成されるために、位相格子GP1が光に対して与える位相差が望ましくは80°〜100°さらに望ましくは90°となるように、位相格子GP1の光伝搬方向幅L1が設定される。アレイ導波路2の端部において位相格子GP2の自己像SP2が明瞭に形成されるために、位相格子GP2が光に対して与える位相差が望ましくは170°〜190°さらに望ましくは180°となるように、位相格子GP2の光伝搬方向幅L1が設定される。
【0051】
光の真空中の波長をλ、屈折率が大きい領域の屈折率をn、屈折率が小さい領域の屈折率をn−δn、屈折率が大きい領域と屈折率が小さい領域の比屈折率差をΔ=δn/nとおく。光が屈折率が大きい領域を始端から終端まで通過するときの位相の進み角度は、L1÷(λ/n)×2π=2πnL1/λである。光が屈折率が小さい領域を始端から終端まで通過するときの位相の進み角度は、L1÷(λ/(n−δn))×2π=2π(n−δn)L1/λである。位相格子GPが光に対して与える位相差は、2πnL1/λ−2π(n−δn)L1/λ=2πδnL1/λ=2πnΔL1/λである。位相格子GP1が光に対して与える位相差が90°となるために、L1=λ/(4nΔ)と設定されるとよい。例えば、λ=1.55μm、n=1.45、Δ=0.75%であるときに、位相格子GP1が光に対して与える位相差が90°となるために、L1〜35μmと設定されるとよい。位相格子GP2が光に対して与える位相差が180°となるために、L1=λ/(2nΔ)と設定されるとよい。例えば、λ=1.55μm、n=1.45、Δ=0.75%であるときに、位相格子GP2が光に対して与える位相差が180°となるために、L1〜70μmと設定されるとよい。
【0052】
アレイ導波路2の端部において位相格子GPの自己像SPが明瞭に形成されるために、図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2が設定される。
【0053】
光の真空中の波長をλ、干渉領域IFの屈折率を上述の屈折率が大きい領域の屈折率と等しいnとおくと、光の干渉領域IF中の波長はλ/nとなる。図1の説明に基づけば、位相格子GP1に対しては、最適な設計としてL2=md2/(2(λ/n))と設定される。例えば、d=10.0μm、λ=1.55μm、n=1.45であるときに、m=1とおいたうえで最適な設計としてL2〜47μmと設定される。図2の説明に基づけば、位相格子GP2に対しては、最適な設計としてL2=md2/(8(λ/n))と設定される。例えば、d=20.0μm、λ=1.55μm、n=1.45であるときに、m=1とおいたうえで最適な設計としてL2〜47μmと設定される。図3の説明に基づけば、光の拡散具合がさらに考慮されたうえで、タルボ効果の計算結果が出力され、最適な設計としてL2が設定される。
【0054】
図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2を設定した後に、図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの終端における位相格子GPの自己像SPの明干渉部分を、アレイ導波路2の端部の位置として設定する。ここで、複数のアレイ導波路2の端部のうち、中央のアレイ導波路2の端部のみならず、両端のアレイ導波路2の端部であっても、位相格子GPの自己像SPが明瞭に形成されることが望ましい。そこで、スラブ導波路1の位相格子GP及びアレイ導波路2の端部の位置関係として、図7に示した位置関係とすることが望ましい。つまり、位相格子GPの屈折率が大きい領域の個数は、アレイ導波路2の本数より多いことが望ましい。
【0055】
光導波路の規模を小さくするためにも、回折格子GP又はGAの自己像SP又はSAを明瞭に形成させるためにも、mを小さくして干渉領域IFの光伝搬方向幅L2を小さくすることが望ましい。回折格子GP又はGAは、光を回折させる機能を備えていれば、任意の形状を備えてもよい。以上の説明のように、本発明は、光導波路の規模を大きくせず設計を難しくしない。本発明を採用しない場合、スラブ導波路1とアレイ導波路2の間の損失は0.45dB程度であるが、本発明を上記のような設計方法で採用した場合、0.1dB以下に低減できる。
【0056】
(実施形態3)
実施形態3では、屈折率変化領域の効果及び構造を説明する。図6及び図7に示した光導波路では、回折格子GP又はGAの構造及び位置は、特定の設計波長に対しては最適化されるが、その他の波長に対しては最適化されるわけではない。したがって、損失は波長に依存する。そこで、損失の波長依存性を低減するため、図8から図10までに示した光導波路では、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に屈折率変化領域DVを形成した。
【0057】
図8は、屈折率変化領域の作用効果を示す図である。光導波路は、スラブ導波路1、アレイ導波路2、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVから構成される。スラブ導波路1は、入射領域IN及び回折格子GP又はGAから構成される。入射領域IN及び回折格子GP又はGAは、図8に示した光導波路と図6及び図7に示した光導波路でほぼ同様である。干渉領域IF及び屈折率変化領域DVは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に形成される。図8においては、干渉領域IFをスラブ導波路1側に配置し、屈折率変化領域DVをアレイ導波路2側に配置している。しかし、干渉領域IFをアレイ導波路2側に配置し、屈折率変化領域DVをスラブ導波路1側に配置してもよい。さらに、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVをそれぞれ分割し、光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置してもよい。屈折率変化領域DVにおいては、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなる。そして、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、アレイ導波路2の中心軸において高くなる。
【0058】
図8に示した屈折率変化領域DVでは、斜線で示したテーパ形状の領域の屈折率は、白地で示したテーパ形状の領域の屈折率より高い。斜線及び白地で示したテーパ形状の領域は、略同一形状であり光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置される。
【0059】
斜線で示したテーパ形状の領域についての光伝搬の方向と略垂直な方向の幅は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて広くなる。白地で示したテーパ形状の領域についての光伝搬の方向と略垂直な方向の幅は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて狭くなる。つまり、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて高くなる。
【0060】
斜線で示したテーパ形状の領域は、幅の広い側をアレイ導波路2に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、幅の狭い側を干渉領域IFに光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる。白地で示したテーパ形状の領域は、幅の広い側を干渉領域IFに光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、幅の狭い側を光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接するアレイ導波路2の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる。つまり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接するアレイ導波路2の間からアレイ導波路2の中心軸に近づくにつれて高くなる。
【0061】
図8(a)では、回折格子GP又はGA及び干渉領域IFの構造及び位置が最適化された特定の設計波長の回折光の強度分布を模式的に示す。干渉領域IFからの出射光はアレイ導波路2の延長線上に局在しているが、回折光が屈折率変化領域DVを伝搬する間に、光伝搬の方向と略垂直な方向の光伝搬モード幅はアレイ導波路2の全幅へと広がり、アレイ導波路1の伝搬モードになる。
【0062】
図8(b)では、回折格子GP又はGA及び干渉領域IFの構造及び位置が最適化された特定の設計波長からずれた波長の回折光の強度分布を模式的に示す。干渉領域IFからの出射光はアレイ導波路2の延長線上にほぼ局在しているが、隣接するアレイ導波路2の間の延長線上にも弱いピークが存在する。図8(a)と同様に、アレイ導波路2の延長線上のピークは、屈折率変化領域DVを伝搬する間にアレイ導波路2の全幅へ広がり、アレイ導波路2の伝搬モードになるが、これに伴い、隣接するアレイ導波路2の間の延長線上の弱いピークもアレイ導波路2の延長線上のピークに結合し、アレイ導波路2の伝搬モードになり、損失の波長依存性が低減される。
【0063】
図8に示した屈折率変化領域DVは、高い屈折率を有する領域及び低い屈折率を有する領域から構成され不連続な屈折率分布を有する。ここで、より一般的な屈折率変化領域DVは、連続的な屈折率分布を有してもよい。つまり、より一般的な屈折率変化領域DVでは、光伝搬の方向に略平行な方向にスラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて屈折率が連続的に高くなり、光伝搬の方向に略垂直な方向にアレイ導波路2の中心軸に向かうにつれて屈折率が連続的に高くなってもよい。
【0064】
干渉領域IFの一部もしくは全てを屈折率変化領域DVに含めて設計することも可能である。図9及び図10は、屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。ここで、図9及び図10において、屈折率変化領域DVにおける光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる高屈折率領域(斜線)及び低屈折率領域(白地)は、干渉領域IFの一部に相当する。そして、図8において、屈折率変化領域DVにおいても干渉が生じるので、屈折率が一定の干渉領域IFを省略して設計することも可能である。図9(a)〜(d)及び図10(b)は、光伝搬の方向に略平行な方向にアレイ導波路2に向かうときに、局所的には屈折率の高い領域から屈折率の低い領域へと入る箇所があるが、平均的には屈折率が高くなる構成となっている。
【0065】
図9(a)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した白地で示したテーパ形状の低屈折率領域は、高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる分断領域により分断されているが、分断領域は干渉領域IFの一部に相当する。
【0066】
図9(b)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域は、低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる分断領域により分断されているが、分断領域は干渉領域IFの一部に相当する。
【0067】
図9(c)に示した屈折率変化領域DVの構成は、図9(a)及び図9(b)に示した屈折率変化領域DVの構成を併せ持った構成である。つまり、白地で示したテーパ形状の低屈折率領域が高屈折率領域により分断されており、斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域が低屈折率領域により分断されている。そして、白地で示したテーパ形状の低屈折率領域を分断する高屈折率領域、及び斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域を分断する低屈折率領域は、干渉領域IFの一部に相当する。
【0068】
図9(d)に示した屈折率変化領域DVでは、交互配置領域AP及び垂直延伸領域VSが、それぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置される。交互配置領域APは、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域及び白地で示した略矩形形状の低屈折率領域を、光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置する。垂直延伸領域VSは、光伝搬の方向と略垂直な方向に延び、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する。複数個の交互配置領域APのうちアレイ導波路2側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭く、複数個の垂直延伸領域VSのうちアレイ導波路2側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広い。
【0069】
ここで、交互配置領域APの幅及び垂直延伸領域VSの幅は、図9(d)に示した態様に限らない。つまり、交互配置領域APの幅が一定またはアレイ導波路2に向かって広くなる場合であっても、垂直延伸領域VSの幅をアレイ導波路2に向かって広くすることにより、屈折率がアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなるようにすればよい。または、垂直延伸領域VSの幅が一定またはアレイ導波路2に向かって狭くなる場合であっても、交互配置領域APの幅をアレイ導波路2に向かって狭くすることにより、屈折率がアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなるようにすればよい。
【0070】
図10(a)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した白地で示したテーパ形状の低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成する。2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置される。2個の平行分割領域の間には、斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置される。
【0071】
図10(b)に示した屈折率変化領域DVでは、図9(d)に示した白地で示した略矩形形状の低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成する。2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置される。2個の平行分割領域の間には、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置される。
【0072】
図11は、挿入損失の計算結果及び実験結果を示す図である。図11における光導波路は、図6(a)及び図6(b)に示した位相格子GP1、干渉領域IF及び図9(b)に示した屈折率変化領域DVを有する。但し、ここでは、位相格子GP1が入射光に対して与える位相差をπ/4としている。屈折率変化領域DVにおいては、斜線で示したテーパ形状の屈折率の高い領域のうち、幅の広い側における光伝搬の方向に略垂直な方向の幅は7.0μmであり、幅の狭い側における光伝搬の方向に略垂直な方向の幅は5.0μmである。そして、白地で示した屈折率の低いいずれの垂直分割領域においても光伝搬の方向に略平行な方向の幅は3.0μmであり、斜線で示した屈折率の高いいずれの垂直分割間領域においても光伝搬の方向に略平行な方向の幅は4.5μmである。また、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVの光伝搬方向幅は、それぞれ47μmである。
【0073】
図11(a)に示した挿入損失の計算結果では、中央のアレイ導波路2について出力チャネル番号を0とし、両端のアレイ導波路2について出力チャネル番号を±40とし、横軸及び縦軸によりそれぞれ出力チャネル番号及び挿入損失を表す。図11(b)及び図11(c)に示した挿入損失の実験結果では、中央のアレイ導波路2について出力チャネル番号を0とし、両端のアレイ導波路2について出力チャネル番号を±20とし、横軸及び縦軸によりそれぞれ出力チャネル番号及び挿入損失を表す。
【0074】
図11(a)に示した挿入損失の計算結果では、破線は回折格子GP又はGAが形成されておらず屈折率変化領域DVも形成されていない従来技術での計算結果を示し、一点鎖線は回折格子GP又はGAは形成されているが屈折率変化領域DVは形成されていない比較例での計算結果を示し、実線は回折格子GP又はGAが形成されており屈折率変化領域DVも形成されている本発明での計算結果を示す。図11(b)及び図11(c)は、それぞれ比較例及び本発明の挿入損失の実験結果である。
【0075】
挿入損失の計算結果及び実験結果から明確であるように、本発明では従来技術及び比較例と比較して、中央のアレイ導波路2の周囲で、挿入損失を低減することができるとともに、挿入損失をアレイ導波路2の形成位置によらずほぼ均一にすることができる。
【0076】
(実施形態4)
実施形態4では、光導波路の製造方法を説明する。図6から図10までに示した光導波路の製造方法として、リソグラフィとエッチングを利用する方法及び紫外線照射を利用する方法などがあげられる。
【0077】
リソグラフィとエッチングを利用する方法では、最初に、下部クラッド層となるSiO2微粒子とコア層となるSiO2−GeO2微粒子を、Si基板上に火炎直接堆積法により堆積させ、加熱により溶融透明化させる。次に、リソグラフィとエッチングにより、コア層の不要な部分を除去し光回路パターンを形成するが、同時に低屈折率領域となる部分でもコア層の不要な部分を除去する。最後に、上部クラッド層となるSiO2微粒子を、火炎直接堆積法により堆積させ、加熱により溶融透明化させることにより、上部クラッド層が形成されると、低屈折率領域となる部分にはクラッド材が充填される。
【0078】
なお、コアをエッチングする際に完全に除去せず、エッチングレートの面積依存性を利用し、図8から図10の屈折率変化領域DVにおける低屈折率領域(白地)における残存するコアの高さをアレイ導波路2側に向かうにつれて高くすることにより、屈折率の平均値をアレイ導波路2側に向かうにつれて高くすることも可能である。
【0079】
上記においては、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の形成工程において低屈折率領域を形成するが、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の形成後に、低屈折率領域となる部分に溝加工を施してコア層と屈折率が相違する樹脂等を充填してもよいし、溝加工のみで空気層により低屈折率領域を形成してもよい。
【0080】
紫外線照射を利用する方法では、紫外線照射により屈折率が上昇することを利用する。下部クラッド層及びコア層の形成後、または、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層の形成後、低屈折率領域となる部分にマスク材を形成し、紫外線照射により低屈折率領域となる部分以外の部分の屈折率を変化させることにより、低屈折率領域を形成する。
【0081】
干渉領域IFは、光を干渉させる機能を備えていれば、任意の材料を備えてもよい。例えば、干渉領域IFは、コア材料、クラッド材料、紫外線が照射されたSiO2−GeO2、樹脂及び空気などのうち、少なくともいずれか1つの材料を備えてもよい。
【0082】
位相格子GPに代えて振幅格子GAを形成するときには、図6から図10までの白地で示した領域となる部分に、光吸収に優れる遮光材を充填する。遮光材としては、カーボンブラックや金属微粒子を混合したシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられる。
【0083】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態1−4で説明した光導波路を備えるアレイ導波路回折格子を説明する。アレイ導波路回折格子では、1本以上の第1の入出力導波路、第1のスラブ導波路、複数のアレイ導波路、第2のスラブ導波路及び1本以上の第2の入出力導波路が、この順序で接続される。第1のスラブ導波路と複数のアレイ導波路は、それぞれスラブ導波路1とアレイ導波路2として、実施形態1−4で説明した光導波路を構成する。
【0084】
第1のスラブ導波路には、複数の波長の光が伝搬されるが、図1及び図2におけるλとして、複数の波長のうち任意の波長が選択される。この任意の波長は、例えば複数の波長のうち中心の波長などである。この任意の波長のもとで、実施形態2及び実施形態3で説明した設計方法並びに実施形態4で説明した製造方法が適用される。
【0085】
回折格子は、第1のスラブ導波路に配置されるのみならず、第2のスラブ導波路にも配置されてもよい。また、回折格子は、第1のスラブ導波路にのみ配置され、特許文献1−4の遷移領域又は特許文献5の傾斜部が、第2のスラブ導波路に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る光導波路及びアレイ導波路回折格子は、波長分割多重方式を利用する光の損失が低い光ファイバ通信に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:スラブ導波路
2:アレイ導波路
GP:位相格子
GA:振幅格子
SP、SA:自己像
IN:入射領域
IF:干渉領域
DV:屈折率変化領域
AP:交互配置領域
VS:垂直延伸領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子に関する。
【背景技術】
【0002】
DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)合分波器、M×Nスターカプラ及び1×Nスプリッタなどでは、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するときに、隣接するアレイ導波路の間のクラッド層で放射モードにならないような、スラブ導波路とアレイ導波路の間の接続構造が、特許文献1−6に開示されている。
【0003】
特許文献1−4では、導波路の屈折率がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて徐々に変化する遷移領域が配置されている。特許文献5では、スラブ導波路とアレイ導波路の間に傾斜部が配置されている。特許文献6では、スラブ導波路にコア層と複数の島状領域が配置されている。島状領域の屈折率はコア層の屈折率より小さい。島状領域は隣接するアレイ導波路の間のクラッド層に対向する。光伝搬の方向に略垂直な方向の島状領域の幅は、スラブ導波路からアレイ導波路に向けて狭くなる。隣接する島状領域の間のコア層を通過する光は、伝搬方向を変えずアレイ導波路に向けて伝搬する。島状領域を通過する光は、島状領域のテーパ形状により伝搬方向を変えてアレイ導波路に向けて伝搬する。島状領域のテーパ形状と位置が最適化されることにより、光はアレイ導波路に集中し導波モードになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5745618号明細書
【特許文献2】米国特許第7006729号明細書
【特許文献3】米国特許第6892004号明細書
【特許文献4】特開2008−293020号公報
【特許文献5】特開2001−159718号公報
【特許文献6】特開2003−14962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1−4では、遷移領域が配置されているため、回路規模が大きくなる。特許文献5では、傾斜部が配置されているため、回路製造が難しくなる。特許文献6では、島状領域のテーパ形状と位置が最適化される必要があるため、回路設計が難しくなる。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、回路規模を大きくせず回路設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、スラブ導波路に回折格子を形成し、回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置にアレイ導波路を接続した。ここで、回折格子の構造及び位置は、特定の設計波長に対して最適化されるところ、その他の波長に対して最適化されるわけではない。そこで、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成し、屈折率変化領域がその他の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることとした。
【0008】
具体的には、本発明は、回折格子が形成されたスラブ導波路と、前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路と、前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記アレイ導波路の中心軸において高くなる屈折率変化領域と、を備えることを特徴とする光導波路である。
【0009】
この構成によれば、タルボ(Talbot)効果により、光の波長とスラブ導波路の内部に形成された回折格子の周期に応じて、回折格子の自己像が形成される。回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に、アレイ導波路の端部が配置されることにより、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するときに、アレイ導波路に集中し導波モードになる。光導波路の規模を大きくせず設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。そして、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成すれば、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間の一部に前記屈折率変化領域が形成されたことを特徴とする光導波路である。
【0011】
この構成によれば、回折光が干渉する領域の一部に屈折率変化領域を形成すればよい。
【0012】
また、本発明は、前記屈折率変化領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて広くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記アレイ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる高屈折率領域と、前記高屈折率領域より低い屈折率を有し、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて狭くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接する前記アレイ導波路の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる低屈折率領域と、を備えることを特徴とする光導波路である。
【0013】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0014】
また、本発明は、前記低屈折率領域は、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断される、又は、前記高屈折率領域は、前記低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断されることを特徴とする光導波路である。
【0015】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0016】
また、本発明は、前記屈折率変化領域は、高屈折率領域及び前記高屈折率領域より低い屈折率を有する低屈折率領域を光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置した交互配置領域と、光伝搬の方向と略垂直な方向に延び前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する垂直延伸領域と、をそれぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置し、複数個の前記交互配置領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭い、又は、複数個の前記垂直延伸領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広いことを特徴とする光導波路である。
【0017】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0018】
また、本発明は、前記低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成し、前記2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置され、前記2個の平行分割領域の間には、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置されることを特徴とする光導波路である。
【0019】
この構成によれば、簡単に屈折率変化領域を形成することができる。
【0020】
また、本発明は、前記回折格子が位相格子であることを特徴とする光導波路である。
【0021】
この構成によれば、入射光に位相差が与えられることにより入射光が回折されるため、入射光の損失を低減することができる。
【0022】
また、本発明は、前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略90度であることを特徴とする光導波路である。
【0023】
この構成によれば、位相格子の自己像が明瞭に形成される。
【0024】
また、本発明は、前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略180度であることを特徴とする光導波路である。
【0025】
この構成によれば、位相格子の自己像が明瞭に形成される。
【0026】
また、本発明は、1本以上の第1の入出力導波路と、前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された光導波路と、前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子である。
【0027】
この構成によれば、アレイ導波路回折格子の規模を大きくせず設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。そして、スラブ導波路及びアレイ導波路の間に屈折率変化領域を形成すれば、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、回路規模を大きくせず回路設計製造を難しくせず、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路及びアレイ導波路回折格子を提供することができる。そして、回折格子の構造及び位置が最適化された特定の設計波長以外の波長を有する光をアレイ導波路に局在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】タルボ効果の現象を示す図である。
【図2】タルボ効果の現象を示す図である。
【図3】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図4】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図5】タルボ効果の計算結果を示す図である。
【図6】スラブ導波路の位相格子及びアレイ導波路の入射端の関係を示す図である。
【図7】スラブ導波路の位相格子及びアレイ導波路の入射端の関係を示す図である。
【図8】屈折率変化領域の作用効果を示す図である。
【図9】屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。
【図10】屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。
【図11】挿入損失の計算結果及び実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0031】
(実施形態1)
実施形態1では、まず、タルボ(Talbot)効果の現象と計算結果を説明する。次に、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路について、タルボ効果の現象と計算結果に基づいて説明する。
【0032】
タルボ効果は、光が回折格子に入射されたときに回折光どうしが干渉することにより、光の波長と回折格子の周期に応じて規定される距離だけ回折格子から離れた位置に、回折格子のパターンと同様な光の強度分布が回折格子の自己像として実現されることをいい、タルボ干渉計に応用されている。
【0033】
図1及び図2は、タルボ効果の現象を示す図である。回折格子GP1、GP2は、入射光に対して位相差を与える位相格子であり、回折格子GAは、入射光に対して強度差を与える振幅格子である。位相格子GP1が関わるタルボ効果の現象は、図1の上半分に示されており、振幅格子GAが関わるタルボ効果の現象は、図1の下半分に示されており、位相格子GP2が関わるタルボ効果の現象は、図2に示されている。位相格子GP1、GP2と振幅格子GAの周期はdであり、位相格子GP1が入射光に対して与える位相差は90°であり、位相格子GP2が入射光に対して与える位相差は180°である。位相格子GP1、GP2と振幅格子GAは、xy平面内で(y軸は図1及び図2に不図示)、z=0の位置に配置される(図1及び図2では、便宜上、位相格子GP1、GP2と振幅格子GAは、z=0の位置より図面上の左側に示されている)。入射光の波長はλである。入射光は、図1及び図2の左端の矢印で示したように、平行光としてz軸方向に入射される。
【0034】
まず、位相格子GP1が関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(2λ)とおいたときに、位相格子GP1の直後に形成された光の強度分布は、m=0の位置に砂地で示したように均一であり、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・(nは0以上の整数)の位置に示されている。一方、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、位相格子GP1の自己像SP1が、斜線と白地で示したように明瞭に形成される。位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。位相格子GP1の自己像SP1の強度周期はdである。
【0035】
ここで、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1は、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしている。
【0036】
次に、振幅格子GAが関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(2λ)とおいたときに、振幅格子GAの直後に形成された光の強度分布が、m=0の位置に示されており、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、振幅格子GAの自己像SAとして、m=2、4の位置に示されている。振幅格子GAの自己像SAは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・(nは0以上の整数)の位置では、斜線と白地で示したように明瞭に形成されるが、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、砂地で示したように形成されず、均一な強度分布が存在する。振幅格子GAの自己像SAは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。振幅格子GAの自己像SAの強度周期はdである。
【0037】
ここで、m=2、6、・・・、4n+2、・・・の位置で形成される振幅格子GAの自己像SAは、m=4、8、・・・、4n+4、・・・の位置で形成される振幅格子GAの自己像SAと比較して、x軸方向にd/2だけシフトしている。
【0038】
次に、位相格子GP2が関わるタルボ効果の現象を説明する。z=md2/(8λ)とおいたときに、位相格子GP2の直後に形成された光の強度分布は、m=0の位置に砂地で示したように均一であり、この光の強度分布と同様な光の強度分布が、m=2、4、6、・・・、2n、・・・(nは0以上の整数)の位置に示されている。一方、m=1、3、5、7、・・・、2n+1、・・・の位置では、位相格子GP2の自己像SP2が、斜線と白地で示したように明瞭に形成される。位相格子GP2の自己像SP2は、m=1、3、5、7、・・・、2n+1、・・・以外の位置でも形成されるが、明瞭には形成されることなく、明干渉部分及び暗干渉部分の境界が明瞭でなくなる。位相格子GP2の自己像SP2の強度周期はd/2である。また、自己像SP2の次数毎のシフトはない。
【0039】
位相格子GP1、GP2は、そのx座標の位置に応じて光の速度を変化させ、入射光に対して位相差を与える。振幅格子GAは、そのx座標の位置に応じて光の吸収を変化させ、入射光に対して強度差を与える。よって、本発明に係る光導波路を実施形態5に記載のアレイ導波路回折格子などに適用するときに、光の損失を低減するために位相格子GP1、GP2を利用することが望ましい。そこで、以下の説明では、位相格子GP1、GP2を利用する場合については詳細に説明し、振幅格子GAを利用する場合については両場合が異なる部分を簡潔に説明する。
【0040】
図3は、位相格子GP1のタルボ効果の計算結果を示す図である。図1では、入射光を平行光としているが、図3では、スラブ導波路を伝搬する光が平行光ではなく拡散光であることを考慮して、入射光を拡散光としている。入射光は、図3の左端の矢印で示したように、拡散光として右側方向に入射される。図4は、位相格子GP2のタルボ効果の計算結果を示す図である。図4では、入射光を平行光としている。入射光は、図4の左端の矢印で示したように、平行光として右側方向に入射される。図3及び図4では、位相格子GP1、GP2は、m=0の位置に配置される。
【0041】
位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置では、明瞭な白黒のグラデーションで示したように明瞭に形成されるが、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置では、不明瞭な白黒のグラデーションで示したように明瞭には形成されない。位相格子GP1の自己像SP1は、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・以外の位置でも、m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置に近づくにつれて明瞭に形成されるようになり、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置に近づくにつれて明瞭には形成されなくなる。m=0、1、2、3、・・・の位置が等間隔に整列していないのは、入射光が平行光ではなく拡散光であるためである。
【0042】
図3を全体で見れば、白黒のグラデーションは、右側方向に進行するにつれて、図3の上下方向に拡散する。図3を詳細に見れば、白黒のグラデーションは、m=2、4、6、8、・・・、4n+2、4n+4、・・・の位置の近傍で急激に変化している。このことは、図1において、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1が、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしていることに対応する。m=1、3、5、7、・・・、4n+1、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1は、mが小さいほど明瞭に形成される。図4の計算結果と図2の模式図面は、同様な傾向を示しているが、図4ではm=2、4、・・・の位置において、位相格子GP2の周期と同周期のピークが認められる。これは図4のシミュレーションが一般的な光回路をもとにした計算であるところ、位相格子GP2をコア材及びクラッド材のような屈折率差の小さい材料で形成すると、位相格子GP2は光の伝搬方向に長くなり、屈折率の低い部分を伝搬する光は伝搬距離が長くなるほど屈折率の高い部分へ結合し、位相格子GP2終端で強度分布が発生するためである。
【0043】
図5は、入射光に対して与える位相差が様々な位相差である位相格子GPのタルボ効果の計算結果を示す図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)では、位相格子GPが入射光に対して与えるそれぞれの位相差は、π/8、π/4、π/2、3π/4、7π/8、π、π/12、π/6、π/3である。 図5では、入射光を平行光としており、位相格子GPは各図の左端に配置される。タルボ効果により位相格子GPの自己像SPを明瞭に形成することができれば、位相格子GPが入射光に対して与える位相差は図5に上述の位相差以外の位相差であってもよい。
【0044】
次に、光がスラブ導波路からアレイ導波路に向けて入射するとき、または、光がアレイ導波路からスラブ導波路に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる光導波路について、タルボ効果の現象と計算結果に基づいて説明する。図6は、スラブ導波路1の位相格子GP1又はGP2及びアレイ導波路2の端部の関係を示す図である。図6(a)から図6(c)のそれぞれの左側は、光導波路の全体構成を示し、図6(a)と図6(b)のそれぞれの右側は、位相格子GP1の自己像SP1を示し、図6(c)の右側は、位相格子GP2の自己像SP2を示し、図6(a)から図6(c)のそれぞれにおいて、左側及び右側の図面は、一点鎖線により図6の上下方向に位置合わせされている。図6(a)と図6(b)では、スラブ導波路1の位相格子GP1及びアレイ導波路2の端部の位置関係が異なっている。
【0045】
光導波路は、スラブ導波路1、アレイ導波路2及び干渉領域IFから構成される。スラブ導波路1は、入射領域IN及び位相格子GP1又はGP2から構成される。入射領域INは、スラブ導波路1の入射側に配置されており、入射光は、入射領域INを伝搬する。位相格子GP1又はGP2は、入射領域INと干渉領域IFの間に配置されており、異なる屈折率を有する斜線で示した領域と白地で示した領域で形成されている。斜線で示した領域の屈折率は、白地で示した領域の屈折率より、大きくても小さくてもよい。入射光は、屈折率が大きい領域を遅い速度で伝搬し、屈折率が小さい領域を速い速度で伝搬する。位相格子GP1又はGP2は、図6の上下方向の位置に応じて光の速度を変化させ、入射光に対して位相差を与える。干渉領域IFは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に配置されており、回折光を伝搬させる。
【0046】
アレイ導波路2は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分において、干渉領域IFに接続される。つまり、回折光は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分に集中的に分布するため、アレイ導波路2で導波モードになる。そして、回折光は、位相格子GP1の自己像SP1又は位相格子GP2の自己像SP2の斜線で示した暗干渉部分にほとんど分布しないため、クラッド層で放射モードにならない。図6では、アレイ導波路2が複数接続されているが、1本のみ接続されてもよい。
【0047】
図6(a)では、位相格子GP1のうち斜線で示した領域に対応する位置に、位相格子GP1の自己像SP1の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。図6(b)では、位相格子GP1のうち白地で示した領域に対応する位置に、位相格子GP1の自己像SP1の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。このように、スラブ導波路1の位相格子GP1及びアレイ導波路2の端部の位置関係として異なる位置関係が存在することは、図1に示したように、m=1、5、・・・、4n+1、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1が、m=3、7、・・・、4n+3、・・・の位置で形成される位相格子GP1の自己像SP1と比較して、x軸方向にd/2だけシフトしていることに対応する。図6(c)では、位相格子GP2のうち斜線及び白地で示した領域から、光伝搬の方向と略平行な方向に進んだ位置に、位相格子GP2の自己像SP2の白地で示した明干渉部分が形成されており、アレイ導波路2の端部が接続されている。このように、図6(a)及び図6(b)では、位相格子GP1の周期は、アレイ導波路2の周期と同一であるが、図6(c)では、位相格子GP2の周期は、アレイ導波路2の周期の2倍である。
【0048】
以上の説明のように、タルボ効果により、入射光の波長λと回折格子GP1、GP2又はGAの周期に応じて、回折格子GP1、GP2又はGAの自己像SP1、SP2又はSAが形成される。そして、回折格子GP1、GP2又はGAの自己像SP1、SP2又はSAの明干渉部分が形成される位置に、アレイ導波路2の端部が配置されることにより、光がスラブ導波路1からアレイ導波路2に向けて入射するときに、光がアレイ導波路2に集中し導波モードになる。よって、光がスラブ導波路1からアレイ導波路2に向けて入射するときに、挿入損失を低減することができる。光がアレイ導波路2からスラブ導波路1に向けて入射するときも、光の相反性により同様である。なお、アレイ導波路2が干渉領域IFとの境界近傍で分岐されている場合は、明干渉部分が形成される位置に、分岐されたアレイ導波路2の各々の端部が配置される。
【0049】
(実施形態2)
実施形態2では、光導波路の設計方法を説明する。最初に、位相格子GP1、GP2の光伝搬方向幅L1の設定方法を説明し、次に、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2の設定方法を説明し、最後に、アレイ導波路2の端部の位置設定方法を説明する。
【0050】
アレイ導波路2の端部において位相格子GP1の自己像SP1が明瞭に形成されるために、位相格子GP1が光に対して与える位相差が望ましくは80°〜100°さらに望ましくは90°となるように、位相格子GP1の光伝搬方向幅L1が設定される。アレイ導波路2の端部において位相格子GP2の自己像SP2が明瞭に形成されるために、位相格子GP2が光に対して与える位相差が望ましくは170°〜190°さらに望ましくは180°となるように、位相格子GP2の光伝搬方向幅L1が設定される。
【0051】
光の真空中の波長をλ、屈折率が大きい領域の屈折率をn、屈折率が小さい領域の屈折率をn−δn、屈折率が大きい領域と屈折率が小さい領域の比屈折率差をΔ=δn/nとおく。光が屈折率が大きい領域を始端から終端まで通過するときの位相の進み角度は、L1÷(λ/n)×2π=2πnL1/λである。光が屈折率が小さい領域を始端から終端まで通過するときの位相の進み角度は、L1÷(λ/(n−δn))×2π=2π(n−δn)L1/λである。位相格子GPが光に対して与える位相差は、2πnL1/λ−2π(n−δn)L1/λ=2πδnL1/λ=2πnΔL1/λである。位相格子GP1が光に対して与える位相差が90°となるために、L1=λ/(4nΔ)と設定されるとよい。例えば、λ=1.55μm、n=1.45、Δ=0.75%であるときに、位相格子GP1が光に対して与える位相差が90°となるために、L1〜35μmと設定されるとよい。位相格子GP2が光に対して与える位相差が180°となるために、L1=λ/(2nΔ)と設定されるとよい。例えば、λ=1.55μm、n=1.45、Δ=0.75%であるときに、位相格子GP2が光に対して与える位相差が180°となるために、L1〜70μmと設定されるとよい。
【0052】
アレイ導波路2の端部において位相格子GPの自己像SPが明瞭に形成されるために、図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2が設定される。
【0053】
光の真空中の波長をλ、干渉領域IFの屈折率を上述の屈折率が大きい領域の屈折率と等しいnとおくと、光の干渉領域IF中の波長はλ/nとなる。図1の説明に基づけば、位相格子GP1に対しては、最適な設計としてL2=md2/(2(λ/n))と設定される。例えば、d=10.0μm、λ=1.55μm、n=1.45であるときに、m=1とおいたうえで最適な設計としてL2〜47μmと設定される。図2の説明に基づけば、位相格子GP2に対しては、最適な設計としてL2=md2/(8(λ/n))と設定される。例えば、d=20.0μm、λ=1.55μm、n=1.45であるときに、m=1とおいたうえで最適な設計としてL2〜47μmと設定される。図3の説明に基づけば、光の拡散具合がさらに考慮されたうえで、タルボ効果の計算結果が出力され、最適な設計としてL2が設定される。
【0054】
図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの光伝搬方向幅L2を設定した後に、図1から図4の説明に基づいて、干渉領域IFの終端における位相格子GPの自己像SPの明干渉部分を、アレイ導波路2の端部の位置として設定する。ここで、複数のアレイ導波路2の端部のうち、中央のアレイ導波路2の端部のみならず、両端のアレイ導波路2の端部であっても、位相格子GPの自己像SPが明瞭に形成されることが望ましい。そこで、スラブ導波路1の位相格子GP及びアレイ導波路2の端部の位置関係として、図7に示した位置関係とすることが望ましい。つまり、位相格子GPの屈折率が大きい領域の個数は、アレイ導波路2の本数より多いことが望ましい。
【0055】
光導波路の規模を小さくするためにも、回折格子GP又はGAの自己像SP又はSAを明瞭に形成させるためにも、mを小さくして干渉領域IFの光伝搬方向幅L2を小さくすることが望ましい。回折格子GP又はGAは、光を回折させる機能を備えていれば、任意の形状を備えてもよい。以上の説明のように、本発明は、光導波路の規模を大きくせず設計を難しくしない。本発明を採用しない場合、スラブ導波路1とアレイ導波路2の間の損失は0.45dB程度であるが、本発明を上記のような設計方法で採用した場合、0.1dB以下に低減できる。
【0056】
(実施形態3)
実施形態3では、屈折率変化領域の効果及び構造を説明する。図6及び図7に示した光導波路では、回折格子GP又はGAの構造及び位置は、特定の設計波長に対しては最適化されるが、その他の波長に対しては最適化されるわけではない。したがって、損失は波長に依存する。そこで、損失の波長依存性を低減するため、図8から図10までに示した光導波路では、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に屈折率変化領域DVを形成した。
【0057】
図8は、屈折率変化領域の作用効果を示す図である。光導波路は、スラブ導波路1、アレイ導波路2、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVから構成される。スラブ導波路1は、入射領域IN及び回折格子GP又はGAから構成される。入射領域IN及び回折格子GP又はGAは、図8に示した光導波路と図6及び図7に示した光導波路でほぼ同様である。干渉領域IF及び屈折率変化領域DVは、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の間に形成される。図8においては、干渉領域IFをスラブ導波路1側に配置し、屈折率変化領域DVをアレイ導波路2側に配置している。しかし、干渉領域IFをアレイ導波路2側に配置し、屈折率変化領域DVをスラブ導波路1側に配置してもよい。さらに、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVをそれぞれ分割し、光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置してもよい。屈折率変化領域DVにおいては、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなる。そして、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、アレイ導波路2の中心軸において高くなる。
【0058】
図8に示した屈折率変化領域DVでは、斜線で示したテーパ形状の領域の屈折率は、白地で示したテーパ形状の領域の屈折率より高い。斜線及び白地で示したテーパ形状の領域は、略同一形状であり光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置される。
【0059】
斜線で示したテーパ形状の領域についての光伝搬の方向と略垂直な方向の幅は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて広くなる。白地で示したテーパ形状の領域についての光伝搬の方向と略垂直な方向の幅は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて狭くなる。つまり、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、スラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて高くなる。
【0060】
斜線で示したテーパ形状の領域は、幅の広い側をアレイ導波路2に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、幅の狭い側を干渉領域IFに光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる。白地で示したテーパ形状の領域は、幅の広い側を干渉領域IFに光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、幅の狭い側を光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接するアレイ導波路2の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる。つまり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値は、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接するアレイ導波路2の間からアレイ導波路2の中心軸に近づくにつれて高くなる。
【0061】
図8(a)では、回折格子GP又はGA及び干渉領域IFの構造及び位置が最適化された特定の設計波長の回折光の強度分布を模式的に示す。干渉領域IFからの出射光はアレイ導波路2の延長線上に局在しているが、回折光が屈折率変化領域DVを伝搬する間に、光伝搬の方向と略垂直な方向の光伝搬モード幅はアレイ導波路2の全幅へと広がり、アレイ導波路1の伝搬モードになる。
【0062】
図8(b)では、回折格子GP又はGA及び干渉領域IFの構造及び位置が最適化された特定の設計波長からずれた波長の回折光の強度分布を模式的に示す。干渉領域IFからの出射光はアレイ導波路2の延長線上にほぼ局在しているが、隣接するアレイ導波路2の間の延長線上にも弱いピークが存在する。図8(a)と同様に、アレイ導波路2の延長線上のピークは、屈折率変化領域DVを伝搬する間にアレイ導波路2の全幅へ広がり、アレイ導波路2の伝搬モードになるが、これに伴い、隣接するアレイ導波路2の間の延長線上の弱いピークもアレイ導波路2の延長線上のピークに結合し、アレイ導波路2の伝搬モードになり、損失の波長依存性が低減される。
【0063】
図8に示した屈折率変化領域DVは、高い屈折率を有する領域及び低い屈折率を有する領域から構成され不連続な屈折率分布を有する。ここで、より一般的な屈折率変化領域DVは、連続的な屈折率分布を有してもよい。つまり、より一般的な屈折率変化領域DVでは、光伝搬の方向に略平行な方向にスラブ導波路1側からアレイ導波路2側に向かうにつれて屈折率が連続的に高くなり、光伝搬の方向に略垂直な方向にアレイ導波路2の中心軸に向かうにつれて屈折率が連続的に高くなってもよい。
【0064】
干渉領域IFの一部もしくは全てを屈折率変化領域DVに含めて設計することも可能である。図9及び図10は、屈折率変化領域の構造の種々の態様例を示す図である。ここで、図9及び図10において、屈折率変化領域DVにおける光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる高屈折率領域(斜線)及び低屈折率領域(白地)は、干渉領域IFの一部に相当する。そして、図8において、屈折率変化領域DVにおいても干渉が生じるので、屈折率が一定の干渉領域IFを省略して設計することも可能である。図9(a)〜(d)及び図10(b)は、光伝搬の方向に略平行な方向にアレイ導波路2に向かうときに、局所的には屈折率の高い領域から屈折率の低い領域へと入る箇所があるが、平均的には屈折率が高くなる構成となっている。
【0065】
図9(a)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した白地で示したテーパ形状の低屈折率領域は、高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる分断領域により分断されているが、分断領域は干渉領域IFの一部に相当する。
【0066】
図9(b)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域は、低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる分断領域により分断されているが、分断領域は干渉領域IFの一部に相当する。
【0067】
図9(c)に示した屈折率変化領域DVの構成は、図9(a)及び図9(b)に示した屈折率変化領域DVの構成を併せ持った構成である。つまり、白地で示したテーパ形状の低屈折率領域が高屈折率領域により分断されており、斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域が低屈折率領域により分断されている。そして、白地で示したテーパ形状の低屈折率領域を分断する高屈折率領域、及び斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域を分断する低屈折率領域は、干渉領域IFの一部に相当する。
【0068】
図9(d)に示した屈折率変化領域DVでは、交互配置領域AP及び垂直延伸領域VSが、それぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置される。交互配置領域APは、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域及び白地で示した略矩形形状の低屈折率領域を、光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置する。垂直延伸領域VSは、光伝搬の方向と略垂直な方向に延び、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する。複数個の交互配置領域APのうちアレイ導波路2側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭く、複数個の垂直延伸領域VSのうちアレイ導波路2側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広い。
【0069】
ここで、交互配置領域APの幅及び垂直延伸領域VSの幅は、図9(d)に示した態様に限らない。つまり、交互配置領域APの幅が一定またはアレイ導波路2に向かって広くなる場合であっても、垂直延伸領域VSの幅をアレイ導波路2に向かって広くすることにより、屈折率がアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなるようにすればよい。または、垂直延伸領域VSの幅が一定またはアレイ導波路2に向かって狭くなる場合であっても、交互配置領域APの幅をアレイ導波路2に向かって狭くすることにより、屈折率がアレイ導波路2側に向かうにつれて平均的に高くなるようにすればよい。
【0070】
図10(a)に示した屈折率変化領域DVでは、図8に示した白地で示したテーパ形状の低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成する。2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置される。2個の平行分割領域の間には、斜線で示したテーパ形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置される。
【0071】
図10(b)に示した屈折率変化領域DVでは、図9(d)に示した白地で示した略矩形形状の低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成する。2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置される。2個の平行分割領域の間には、斜線で示した略矩形形状の高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置される。
【0072】
図11は、挿入損失の計算結果及び実験結果を示す図である。図11における光導波路は、図6(a)及び図6(b)に示した位相格子GP1、干渉領域IF及び図9(b)に示した屈折率変化領域DVを有する。但し、ここでは、位相格子GP1が入射光に対して与える位相差をπ/4としている。屈折率変化領域DVにおいては、斜線で示したテーパ形状の屈折率の高い領域のうち、幅の広い側における光伝搬の方向に略垂直な方向の幅は7.0μmであり、幅の狭い側における光伝搬の方向に略垂直な方向の幅は5.0μmである。そして、白地で示した屈折率の低いいずれの垂直分割領域においても光伝搬の方向に略平行な方向の幅は3.0μmであり、斜線で示した屈折率の高いいずれの垂直分割間領域においても光伝搬の方向に略平行な方向の幅は4.5μmである。また、干渉領域IF及び屈折率変化領域DVの光伝搬方向幅は、それぞれ47μmである。
【0073】
図11(a)に示した挿入損失の計算結果では、中央のアレイ導波路2について出力チャネル番号を0とし、両端のアレイ導波路2について出力チャネル番号を±40とし、横軸及び縦軸によりそれぞれ出力チャネル番号及び挿入損失を表す。図11(b)及び図11(c)に示した挿入損失の実験結果では、中央のアレイ導波路2について出力チャネル番号を0とし、両端のアレイ導波路2について出力チャネル番号を±20とし、横軸及び縦軸によりそれぞれ出力チャネル番号及び挿入損失を表す。
【0074】
図11(a)に示した挿入損失の計算結果では、破線は回折格子GP又はGAが形成されておらず屈折率変化領域DVも形成されていない従来技術での計算結果を示し、一点鎖線は回折格子GP又はGAは形成されているが屈折率変化領域DVは形成されていない比較例での計算結果を示し、実線は回折格子GP又はGAが形成されており屈折率変化領域DVも形成されている本発明での計算結果を示す。図11(b)及び図11(c)は、それぞれ比較例及び本発明の挿入損失の実験結果である。
【0075】
挿入損失の計算結果及び実験結果から明確であるように、本発明では従来技術及び比較例と比較して、中央のアレイ導波路2の周囲で、挿入損失を低減することができるとともに、挿入損失をアレイ導波路2の形成位置によらずほぼ均一にすることができる。
【0076】
(実施形態4)
実施形態4では、光導波路の製造方法を説明する。図6から図10までに示した光導波路の製造方法として、リソグラフィとエッチングを利用する方法及び紫外線照射を利用する方法などがあげられる。
【0077】
リソグラフィとエッチングを利用する方法では、最初に、下部クラッド層となるSiO2微粒子とコア層となるSiO2−GeO2微粒子を、Si基板上に火炎直接堆積法により堆積させ、加熱により溶融透明化させる。次に、リソグラフィとエッチングにより、コア層の不要な部分を除去し光回路パターンを形成するが、同時に低屈折率領域となる部分でもコア層の不要な部分を除去する。最後に、上部クラッド層となるSiO2微粒子を、火炎直接堆積法により堆積させ、加熱により溶融透明化させることにより、上部クラッド層が形成されると、低屈折率領域となる部分にはクラッド材が充填される。
【0078】
なお、コアをエッチングする際に完全に除去せず、エッチングレートの面積依存性を利用し、図8から図10の屈折率変化領域DVにおける低屈折率領域(白地)における残存するコアの高さをアレイ導波路2側に向かうにつれて高くすることにより、屈折率の平均値をアレイ導波路2側に向かうにつれて高くすることも可能である。
【0079】
上記においては、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の形成工程において低屈折率領域を形成するが、スラブ導波路1及びアレイ導波路2の形成後に、低屈折率領域となる部分に溝加工を施してコア層と屈折率が相違する樹脂等を充填してもよいし、溝加工のみで空気層により低屈折率領域を形成してもよい。
【0080】
紫外線照射を利用する方法では、紫外線照射により屈折率が上昇することを利用する。下部クラッド層及びコア層の形成後、または、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層の形成後、低屈折率領域となる部分にマスク材を形成し、紫外線照射により低屈折率領域となる部分以外の部分の屈折率を変化させることにより、低屈折率領域を形成する。
【0081】
干渉領域IFは、光を干渉させる機能を備えていれば、任意の材料を備えてもよい。例えば、干渉領域IFは、コア材料、クラッド材料、紫外線が照射されたSiO2−GeO2、樹脂及び空気などのうち、少なくともいずれか1つの材料を備えてもよい。
【0082】
位相格子GPに代えて振幅格子GAを形成するときには、図6から図10までの白地で示した領域となる部分に、光吸収に優れる遮光材を充填する。遮光材としては、カーボンブラックや金属微粒子を混合したシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が用いられる。
【0083】
(実施形態5)
実施形態5では、実施形態1−4で説明した光導波路を備えるアレイ導波路回折格子を説明する。アレイ導波路回折格子では、1本以上の第1の入出力導波路、第1のスラブ導波路、複数のアレイ導波路、第2のスラブ導波路及び1本以上の第2の入出力導波路が、この順序で接続される。第1のスラブ導波路と複数のアレイ導波路は、それぞれスラブ導波路1とアレイ導波路2として、実施形態1−4で説明した光導波路を構成する。
【0084】
第1のスラブ導波路には、複数の波長の光が伝搬されるが、図1及び図2におけるλとして、複数の波長のうち任意の波長が選択される。この任意の波長は、例えば複数の波長のうち中心の波長などである。この任意の波長のもとで、実施形態2及び実施形態3で説明した設計方法並びに実施形態4で説明した製造方法が適用される。
【0085】
回折格子は、第1のスラブ導波路に配置されるのみならず、第2のスラブ導波路にも配置されてもよい。また、回折格子は、第1のスラブ導波路にのみ配置され、特許文献1−4の遷移領域又は特許文献5の傾斜部が、第2のスラブ導波路に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る光導波路及びアレイ導波路回折格子は、波長分割多重方式を利用する光の損失が低い光ファイバ通信に利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1:スラブ導波路
2:アレイ導波路
GP:位相格子
GA:振幅格子
SP、SA:自己像
IN:入射領域
IF:干渉領域
DV:屈折率変化領域
AP:交互配置領域
VS:垂直延伸領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子が形成されたスラブ導波路と、
前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路と、
前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記アレイ導波路の中心軸において高くなる屈折率変化領域と、
を備えることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間の一部に前記屈折率変化領域が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記屈折率変化領域は、
光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて広くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記アレイ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる高屈折率領域と、
前記高屈折率領域より低い屈折率を有し、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて狭くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接する前記アレイ導波路の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる低屈折率領域と、
を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記低屈折率領域は、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断される、又は、前記高屈折率領域は、前記低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断されることを特徴とする、請求項3に記載の光導波路。
【請求項5】
前記屈折率変化領域は、
高屈折率領域及び前記高屈折率領域より低い屈折率を有する低屈折率領域を光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置した交互配置領域と、
光伝搬の方向と略垂直な方向に延び前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する垂直延伸領域と、をそれぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置し、
複数個の前記交互配置領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭い、又は、複数個の前記垂直延伸領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広いことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項6】
前記低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成し、
前記2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置され、
前記2個の平行分割領域の間には、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置されることを特徴とする、請求項3又は請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記回折格子が位相格子であることを特徴とする請求項1から請求項6に記載のいずれかの光導波路。
【請求項8】
前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略90度であることを特徴とする請求項7に記載の光導波路。
【請求項9】
前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略180度であることを特徴とする請求項7に記載の光導波路。
【請求項10】
1本以上の第1の入出力導波路と、
前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された請求項1から請求項9に記載のいずれかの光導波路と、
前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、
前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、
を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子。
【請求項1】
回折格子が形成されたスラブ導波路と、
前記回折格子の自己像の明干渉部分が形成される位置に接続されたアレイ導波路と、
前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間に形成され、光伝搬の方向と略垂直な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて平均的に高くなり、光伝搬の方向と略平行な方向の屈折率分布における屈折率の平均値が、前記アレイ導波路の中心軸において高くなる屈折率変化領域と、
を備えることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記スラブ導波路及び前記アレイ導波路の間の一部に前記屈折率変化領域が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記屈折率変化領域は、
光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて広くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記アレイ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる高屈折率領域と、
前記高屈折率領域より低い屈折率を有し、光伝搬の方向と略垂直な方向の幅が前記スラブ導波路側から前記アレイ導波路側に向かうにつれて狭くなるテーパ形状を有し、テーパ形状の幅の広い側を、前記スラブ導波路に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させ、テーパ形状の幅の狭い側を、光伝搬の方向と略垂直な方向に隣接する前記アレイ導波路の間に光伝搬の方向と略平行な方向に対面させる低屈折率領域と、
を備えることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記低屈折率領域は、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断される、又は、前記高屈折率領域は、前記低屈折率領域と同一の屈折率を有し光伝搬の方向と略垂直な方向に延びる領域により分断されることを特徴とする、請求項3に記載の光導波路。
【請求項5】
前記屈折率変化領域は、
高屈折率領域及び前記高屈折率領域より低い屈折率を有する低屈折率領域を光伝搬の方向と略垂直な方向に交互に配置した交互配置領域と、
光伝搬の方向と略垂直な方向に延び前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する垂直延伸領域と、をそれぞれ複数個光伝搬の方向と略平行な方向に交互に配置し、
複数個の前記交互配置領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が狭い、又は、複数個の前記垂直延伸領域のうち前記アレイ導波路側に近いものほど、光伝搬の方向と略平行な方向の幅が広いことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光導波路。
【請求項6】
前記低屈折率領域は、光伝搬の方向と略平行な方向に分割された2個の平行分割領域を構成し、
前記2個の平行分割領域は、光伝搬の方向と略垂直な方向に間隔を置いて配置され、
前記2個の平行分割領域の間には、前記高屈折率領域と同一の屈折率を有する平行分割間領域が配置されることを特徴とする、請求項3又は請求項5に記載の光導波路。
【請求項7】
前記回折格子が位相格子であることを特徴とする請求項1から請求項6に記載のいずれかの光導波路。
【請求項8】
前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略90度であることを特徴とする請求項7に記載の光導波路。
【請求項9】
前記位相格子が入射光に対して与える位相差が略180度であることを特徴とする請求項7に記載の光導波路。
【請求項10】
1本以上の第1の入出力導波路と、
前記第1の入出力導波路の端部に前記スラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部が接続された請求項1から請求項9に記載のいずれかの光導波路と、
前記アレイ導波路の前記スラブ導波路と反対側の端部に接続された第2のスラブ導波路と、
前記第2のスラブ導波路の前記アレイ導波路と反対側の端部に接続された1本以上の第2の入出力導波路と、
を備えることを特徴とするアレイ導波路回折格子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−133223(P2012−133223A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286630(P2010−286630)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】
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