説明

光導波路素子、及び光導波路素子の温度クロストーク抑止方法

【課題】制御装置などを必要とせずに、素子自体が動作点シフト抑制機能を有するネスト型光導波路構造の光導波路素子を提供する。
【解決方法】電気光学効果を有する基板と、前記基板上に形成された光導波路と、前記光導波路内を導波する光波を変調するための複数の変調用電極とを具え、前記光導波路は、前記光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波を構成し、各メイン光導波路は前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路を構成し、前記2本のメイン光導波路は、メインマッハツエンダー型光導波路を構成するとともに、前記2本のサブ光導波路は、前記メインマッハツエンダー型光導波路内に組み込まれるようにしてサブマッハツエンダー型光導波路を構成し、前記基板の、相対向して位置する2つの前記サブマッハツエンダー型光導波路間において、熱伝導抑止領域を有するようにして光導波路素子を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に関し、特に、メインのマッハツエンダー型光導波路中に、2つのサブマッハツエンダー型光導波路が組み込まれた構成の、いわゆるネスト型導波路構造の光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信分野や光測定分野において、SSB(Single-Side band)変調方式やデュオバイナリ(duobinary)変調方式など、複数の変調用電極に所定の位相差(=時間遅延)を有する同一の変調信号を印加する光変調方式が利用されている。
【0003】
SSB型光変調器では、2つのサブマッハツェンダ型光導波路をメインマッハツェンダ型光導波路の分岐導波路に組み込んだ構成、いわゆる2つ入れ子マッハツエンダー型光導波路を有した、ネスト型導波路構造の光導波路素子が用いられている。このような光導波路素子において、SSB変調信号を得るためには、90°ハイブリットを用いて2つの分岐された変調信号間の位相差が90°になるよう設定し、各サブ・マッハツェンダ型光導波路の変調用電極に印加する(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3867148号
【0004】
また、デュオバイナリ変調方式においては、2重電極型マッハツェンダ光変調器を利用し、2つの分岐導波路の各変調用電極に印加される変調信号が、ビット遅延回路を用い2つの変調信号間に所定のビット差を生じるよう設定されている。一般的にビット遅延量は0〜2T(T=1bit)の範囲で選択される。
【0005】
しかしながら、特に、上記SSB変調方式で使用するネスト型導波路構造の光導波路素子においては、その使用中において各サブマッハツエンダー型光導波路のバイアス点、す
なわち動作点が随時シフトしてしまい、安定な動作を確保することができないという問題があった。
【0006】
このような動作点シフトを抑制するためには、例えば、上記光導波路素子からの出力信号を光検出部で適宜モニタリングし、動作点シフトが生じた場合は適宜制御装置などを用いることによって、そのシフト分を補完するという操作がなされていた。しかしながら、かかる動作点の調整操作は極めて煩雑であるので、上述したネスト型光導波路構造の光導波路素子の実用上の障害となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、制御装置などを必要とせずに、素子自体が動作点シフト抑制機能を有するネスト型光導波路構造の光導波路素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明は、
電気光学効果を有する基板と、
前記基板上に形成された光導波路と、
前記光導波路内を導波する光波を変調するための複数の変調用電極とを具え、
前記光導波路は、前記光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波を構成し、各メイン光導波路は前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路を構成し、
前記2本のメイン光導波路は、メインマッハツエンダー型光導波路を構成するとともに、前記2本のサブ光導波路は、前記メインマッハツエンダー型光導波路内に組み込まれるようにしてサブマッハツエンダー型光導波路を構成し、
前記基板の、相対向して位置する2つの前記サブマッハツエンダー型光導波路間において、熱伝導抑止領域を有することを特徴とする、光導波路素子(ネスト型導波路構造の光導波路素子)に関する。
【0009】
また、本発明は、
電気光学効果を有する基板と、前記基板上に形成された光導波路と、前記光導波路内を導波する光波を変調するための複数の変調用電極とを具え、
前記光導波路は、前記光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波路を構成し、各メイン光導波路は、前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路を構成し、前記2本のメイン光導波路はメインマッハツエンダー型光導波路を構成するとともに、前記2本のサブ光導波路は、前記メインマッハツエンダー型光導波路内に組み込まれるようにしてサブマッハツエンダー型光導波路を構成してなる光導波路素子において、
前記基板の、相対向して位置する2つの前記サブマッハツエンダー型光導波路間において、溝部からなる熱伝導抑止領域を形成し、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間の温度クロストークを抑制することを特徴とする、光導波路素子(ネスト型導波路構造の光導波路素子)の温度クロストーク抑止方法に関する。
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、以下に示すような事実を見出すに至った。上記のようなネスト型導波路構造の光導波路素子においては、サブマッハツエンダー型光導波路部が変調動作等により発熱してしまい、相互に熱的な干渉を引き起こす場合がある。すなわち、第1のサブマッハツエンダー型光導波路及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路は、使用中において、それぞれ加熱されることになるが、その配置位置や周囲の環境などの諸条件に応じて、実際の温度は互いに異なるようになる。
【0011】
したがって、一方のサブマッハツエンダー型光導波路からは、周囲の温度の低い領域に向けて熱輸送が行われることになるが、この熱輸送は近接する他方のサブマッハツエンダー型光導波路へも影響を及ぼす。例えば、第1のサブマッハツエンダー型光導波路の温度が、第2のサブマッハツエンダー型光導波路の温度よりも高いとすると、前記第1のサブマッハツエンダー型光導波路から前記第2のサブマッハツエンダー型光導波路に向けて熱輸送が行われるようになる。さらに、この熱輸送の度合いは、その使用環境や使用状態などに起因して随時変化するようになる。
【0012】
すなわち、前記第1のサブマッハツエンダー型光導波路と、前記第2のサブマッハツエンダー型光導波路との間には、温度クロストークが発生するようになるので、この温度クロストークによって、前記第2のサブマッハツエンダー型光導波路は、動作点シフトなどの特性上の影響を受けることになる。この結果、光導波路素子全体でも動作点シフトが頻繁に発生してしまうこととなっていた。
【0013】
このような状況に鑑み、本発明では、光導波路素子を構成する基板の、相対向して位置する2つのサブマッハツエンダー型光導波路間において、熱伝導抑止領域を形成し、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間の温度クロストークを抑制するようにしている。したがって、各サブマッハツエンダー型光導波路の動作点シフトなどの温度に起因した諸特性を効果的に抑制することができ、上記光導波路素子の動作点シフトなどの温度に起因した諸特性を効果的に抑制することができる。
【0014】
なお、“熱クロストーク”とは、具体的にはRF信号を電極に印加したための発熱に起因するドリフト量(以下熱ドリフトという)を意味するものである。ドリフト量は、その駆動電圧で一般的に表示され、熱ドリフトの良否は、一般にDC電圧で0.5V以下の場合を良と判断し、0.5Vより大きい場合を否と判断する。
と一般的に判断される。
【0015】
なお、本発明の一態様では、前記熱伝導抑止領域は、前記基板内に形成した溝部とすることができる。この場合、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間には、空気の断熱層が存在するようになるため、それら光導波路間の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。なお、前記溝部とは前記基板を貫通するように形成することもでき、また、前記基板を貫通することなく、いわゆる凹型に形成することもできる。
【0016】
また、本発明の他の態様では、前記熱伝導抑止領域は、前記基板内に形成した溝部内に充填した断熱部材とすることができる。この場合、前記断熱部材によって前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。なお、前記断熱部材としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を好ましく用いることができるが、その他の樹脂、例えば熱可塑性樹脂などの使用を妨げるものではない。
【0017】
さらに、本発明のその他の態様では、前記熱伝導抑止領域は、金属プレートとすることができる。この場合、前記金属プレートはヒートシンクとしても作用するので、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間で発生した熱を吸収し、効果的に発散させるようにすることができる。これによって、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。
【0018】
また、前記金属プレートは、前記複数の変調用電極の内の、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間に設けられた少なくとも1つの変調用電極で構成することができる。この場合、別途金属プレートを作製する工程が省けるので、上記光導波路素子の製造プロセスを簡略化することができる。
【0019】
なお、この場合、特に、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間の距離を0.1mm〜0.8mmとすることが好ましい。これによって、上記作用効果をより効果的に発現させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上、説明したように、本発明によれば、光導波路素子を構成する2つのサブマッハツエンダー型光導波路間の温度クロストークを効果的に抑制することができるので、制御装置などを必要とせずに、素子自体が動作点シフト抑制機能を有するネスト型光導波路構造の光導波路素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の詳細について、図面を参照しながら発明の実施形態に基づいて説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における光導波路素子の構成を示す平面図であり、図2は、図1に示す光導波路素子のA−A線に沿って切った場合の断面図である。尚、図2〜図5においては、変調用電極153,154,163,164は、図示していない。
【0023】
本実施形態における光導波路素子10は、電気光学効果を有する基板11、この基板11の表面部分に形成された光導波路12を具えている。光導波路12は、光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波141及び142を構成し、各メイン光導波路141及び142は、それぞれ前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路151及び152、並びに161及び162を構成する。
【0024】
2本のメイン光導波路141及び142は、メインマッハツエンダー型光導波路14を構成する。また、2本のサブ光導波路151及び152は、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15を構成し、2本のサブ光導波路161及び162は、第2のサブマッハツエンダー型光導波路16を構成する。この結果、2つのサブマッハツエンダー型光導波路15及び16は、メインマッハツエンダー型光導波路14内に組み込まれたような構成を呈する。
【0025】
なお、サブ光導波路151及び152には変調用電極153及び154が設けられ、サブ光導波路161及び162には変調用電極163及び164が設けられている。本実施形態では、変調用電極153及び163が所定の変調信号を印加する信号電極として機能し、変調用電極154及び164が接地電極として機能している。変調用電極153は、信号電極及びDC電極からなり、変調用電極154は接地電極である。また、変調用電極163は、信号電極及びDC電極からなり、変調用電極164は接地電極である。
【0026】
また、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間には、熱伝導抑止領域18が設けられている。本実施形態では、熱伝導抑止領域18は、基板11内に形成された溝部から構成されている。この場合、2つのサブマッハツエンダー型光導波路15及び16間には、空気の断熱層が存在するようになるため、それら光導波路間の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。その結果、光導波路素子10全体の、前記温度クロストークに起因した動作点シフト及びその他の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0027】
なお、溝部18の深さは、特に限定されるものではないが、基板11内に形成した光導波路151及び152、並びに161及び162の形成深さと同等か、それよりも大きくすることが好ましく、また基板を貫通することが最も好ましい。また、溝部18の幅は特に限定されるものではないが、現状の光導波路素子の大きさがミリメートルのオーダであるので、ミクロンのオーダであれば十分に熱伝導抑止の効果を発揮する。
【0028】
なお、基板11は、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、及び石英系の材料及びこれらの組み合わせが利用可能である。特に、電気光学効果の高いニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)結晶が好適に利用される。
【0029】
光導波路12(141,142,151,152,161及び162)の形成方法としては、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に拡散させることにより形成することができる。また、特許文献2のように基板11の表面に光導波路の形状に合わせてリッジを形成し、光導波路を構成することも可能である。
【特許文献2】特開平6−289341号公報
【0030】
変調用電極153及び154、並びに163及び164は、Ti・Auの電極パターンの形成及び金メッキ方法などにより形成することが可能である。
【0031】
なお、特に図示してないが、基板11と変調用電極153及び154、並びに163及び164との間にはバッファ層を形成することもできる。これによって、光導波路を伝搬する光波が、変調用電極により吸収又は散乱されることを効果的に防止することができる。また、前記変調用電極から印加される変調信号と、前記光導波路内を導波する光波との速度整合をも向上させることができる。
【0032】
次に、本実施形態の光導波路素子の変調方法の一例について説明する。光導波路素子10に対して入力光信号である周波数ω0のレーザ光が入力されると、この光信号は光導波路12中を伝搬した後、メインマッハツエンダー型光導波路14のメイン光導波路141及び142に分岐される。その後、メイン光導波路141中を伝搬した光波は、サブマッハツエンダー型光導波路15のサブ光導波路151及び152に分岐され、そこで周波数ωc /2の変調信号が印加される。また、メイン光導波路142中を伝搬した光波は、サブ光導波路161及び162に分岐され、そこで周波数ω/2の変調信号が印加される。
【0033】
その結果、上記周波数ωc/2の変調信号で変調された後の光波が合流して光導波路12内を伝搬し、光導波路素子10から出力されると、互いに周波数間隔がωcだけ離隔した2つの光信号ω1及びω2が得られる。
【0034】
なお、上記変調方法はあくまで一例であって、本実施形態における光導波路素子は用途に応じて任意の態様で使用することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。本実施形態における光導波路素子の平面状態は上記第1の実施形態の場合と同じであり、図3は、上記第1の実施形態における図2に相当して、前記光導波路素子のA−A線に沿って切った場合の断面図である。なお、同一及び類似の構成要素に関しては、同じ参照数字を用いて表している。
【0036】
本実施形態における光導波路素子20は、第1の実施形態における溝部において断熱部材28が充填されている点で相違し、その他の構成要素に関しては全く同じであるので、説明は省略する。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間には、断熱部材28が設けられているので、それら光導波路間の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。その結果、光導波路素子20全体の、前記温度クロストークに起因した動作点シフト及びその他の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0038】
なお、断熱部材28は、その底部が基板11内に形成した光導波路151及び152、並びに161及び162の形成深さと同等か、それよりも下方に位置するようにすることが好ましい。また、断熱部材28の幅は特に限定されるものではないが、現状の光導波路素子の大きさがミリメートルのオーダであるので、サブミクロンのオーダであれば十分に熱伝導抑止の効果を発揮する。
【0039】
断熱部材28は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を好ましく用いることができるが、その他の樹脂、例えば熱可塑性樹脂などの使用を妨げるものではない。
【0040】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。本実施形態における光導波路素子の平面状態は上記第1の実施形態の場合と同じであり、図4は、上記第1の実施形態における図2に相当して、前記光導波路素子のA−A線に沿って切った場合の断面図である。なお、同一及び類似の構成要素に関しては、同じ参照数字を用いて表している。
【0041】
本実施形態における光導波路素子30は、第1の実施形態と熱伝導抑止領域の構成が異なるのみで、その他の構成要素に関しては全く同じであるので、説明は省略する。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間には、金属プレート38が設けられているので、それら光導波路間に生じた熱に対してヒートシンクとしての機能を奏し、前記光導波路間の熱的干渉、すなわち温度クロストークを効果的に抑制することができる。その結果、光導波路素子30全体の、前記温度クロストークに起因した動作点シフト及びその他の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0043】
なお、金属プレート38は、好ましくは基板11上に載置することができる。これによって、上記ヒートシンクとしての機能を十分に発揮することができる。
【0044】
また、特に図示しないが、金属プレート38は、変調用電極153及び154、並びに163及び164で代用することもできる。例えば、接地電極154あるいは164で代用することができる。この場合、別途金属プレートを作製する工程が省けるので、上記光導波路素子30の製造プロセスを簡略化することができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。本実施形態における光導波路素子の平面状態は上記第1の実施形態の場合と同じであり、図5は、上記第1の実施形態における図2に相当して、前記光導波路素子のA−A線に沿って切った場合の断面図である。なお、同一及び類似の構成要素に関しては、同じ参照数字を用いて表している。
【0046】
本実施形態における光導波路素子40は、第1の実施形態と熱伝導抑止領域の構成が異なるのみで、その他の構成要素に関しては全く同じであるので、説明は省略する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態では、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間には、金属プレート38が設けられている。また、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間の距離を0.1mm〜0.8mmと離隔させている。
【0048】
したがって、光導波路間の距離を離隔させたことに起因して、これら光導波路間の本来的な熱的干渉、すなわち温度クロスロークを低減することができる。また、金属プレート38は、前記光導波路間に生じた熱に対してヒートシンクとしての機能を奏し、前記光導波路間の温度クロストークを効果的に抑制することができる。その結果、光導波路素子40全体の、前記温度クロストークに起因した動作点シフト及びその他の影響を効果的に抑制することができるようになる。
【0049】
なお、本例においても、金属プレート38は、好ましくは基板11上に載置することができる。これによって、上記ヒートシンクとしての機能を十分に発揮することができる。
【0050】
また、特に図示しないが、金属プレート38は、変調用電極153及び154、並びに163及び164で代用することもできる。例えば、接地電極154あるいは164で代用することができる。この場合、別途金属プレートを作製する工程が省けるので、上記光導波路素子30の製造プロセスを簡略化することができる。
【実施例】
【0051】
本実施例では、第1の実施形態から第4の実施形態に係る光導波路素子を実際に作製して、その温度クロストークを調べた。
【0052】
具体的には、第1の実施形態において、第1のサブマッハツエンダー型光導波路15及び第2のサブマッハツエンダー型光導波路16間の距離を0.2mmとし、その間に深さ0.2mm、幅0.1mmの溝部を形成した(実施例1)。
【0053】
また、第2の実施形態において、断熱部材としてエポキシ樹脂を用いた。なお、サブ光導波路間距離、及び溝構成は実施例1と同じにした(実施例2)。
【0054】
さらに、第3の実施形態において、金属プレートとして幅0.1mm、厚さ10μmのAl板を用いた。サブ光導波路間距離、及び溝構成は実施例1と同じにした(実施例3)。
【0055】
また、実施例3において、サブ光導波路間距離を0.1mm(実施例4)にまで縮小し、同様にサブ光導波路間距離を0.8mm(実施例5)にまで拡大した。
【0056】
以上のような場合において、温度クロストークの抑止度合いを調べ、その度合いの程度に応じて、○×評価を実施した。結果を表1に示す。なお、○は、熱ドリフトが0.5V以下の場合を意味し、×は、熱ドリフトが0.5Vより大きい場合を意味する。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、いずれの場合でも温度クロストークが良好に抑制されていることが分かる。特に、溝部を設けることによって空気断熱を図った場合に特に良好な温度クロストーク抑止効果を呈することが判明した。
【0059】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態における光導波路素子の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す光導波路素子のA−A線に沿って切った場合の断面図である。
【図3】第2の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。
【図4】第3の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。
【図5】第4の実施形態における光導波路素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10,20,30,40 光導波路素子
11 基板
12 光導波路
14 メインマッハツエンダー型光導波路
15 第1のサブマッハツエンダー型光導波路
16 第2のサブマッハツエンダー型光導波路
18 溝部(熱伝導抑止領域)
28 断熱部材(熱伝導抑止領域)
38 金属プレート(熱伝導抑止領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、
前記基板上に形成された光導波路と、
前記光導波路内を導波する光波を変調するための複数の変調用電極とを具え、
前記光導波路は、前記光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波を構成し、各メイン光導波路は前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路を構成し、
前記2本のメイン光導波路は、メインマッハツエンダー型光導波路を構成するとともに、前記2本のサブ光導波路は、前記メインマッハツエンダー型光導波路内に組み込まれるようにしてサブマッハツエンダー型光導波路を構成し、
前記基板の、相対向して位置する2つの前記サブマッハツエンダー型光導波路間において、熱伝導抑止領域を有することを特徴とする、光導波路素子。
【請求項2】
前記熱伝導抑止領域は、前記基板内に形成した溝部であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記熱伝導抑止領域は、前記基板内に形成した溝部内に充填した断熱部材であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記熱伝導抑止領域は、金属プレートであることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記金属プレートは、前記複数の変調用電極の内の、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間に設けられた少なくとも1つの変調用電極であることを特徴とする、請求項4に記載の光導波路素子。
【請求項6】
電気光学効果を有する基板と、前記基板上に形成された光導波路と、前記光導波路内を導波する光波を変調するための複数の変調用電極とを具え、
前記光導波路は、前記光波の進行方向において2つに分岐して2本のメイン光導波路を構成し、各メイン光導波路は、前記光波の前記進行方向においてさらに2つに分岐して2本のサブ光導波路を構成し、前記2本のメイン光導波路はメインマッハツエンダー型光導波路を構成するとともに、前記2本のサブ光導波路は、前記メインマッハツエンダー型光導波路内に組み込まれるようにしてサブマッハツエンダー型光導波路を構成してなる光導波路素子において、
前記基板の、相対向して位置する2つの前記サブマッハツエンダー型光導波路間において、溝部からなる熱伝導抑止領域を形成し、前記2つのサブマッハツエンダー型光導波路間の温度クロストークを抑制することを特徴とする、光導波路素子の温度クロストーク抑止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−249790(P2008−249790A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87646(P2007−87646)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】