説明

光導波路素子

【課題】隣接するチャネル型光導波路の間隙からの光の漏れを少なくする。
【解決手段】基板20と、平面型光導波路16、平面型光導波路の一端面16aに放射状に接続されている複数のチャネル型光導波路14、及び、平面型光導波路の一端面に対向する他端面16bに接続されている入力用光導波路12を含む光導波路構造体18と、基板の一方の主面20a上に設けられていて、光導波路構造体を囲む被覆膜22と、を備え、被覆膜の屈折率が光導波路構造体の屈折率の6割以下であり、複数のチャネル型光導波路の、光伝搬方向に直交する方向であって、主面に平行な方向の幅が、平面型光導波路から離間するに従って徐々に拡幅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平面型光導波路に複数のチャネル型光導波路を接続した光導波路素子において、隣接するチャネル型光導波路の間隙からの光の漏れを少なくした、波長分離素子等の光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光回路の小型化と量産化を目的として、Siを導波路材料として用いる技術が注目を集めている。Si細線光導波路では、Siのコアの全周囲を、SiOのクラッドで被覆した構造が用いられる。Si細線光導波路は、コアとクラッドの屈折率差が非常に大きいために、光を強くコアに閉じ込めることが可能である。また、Si細線光導波路では、この大きな屈折率差を利用して、光を1μm程度の小さい曲率半径で曲げる曲線導波路を実現することができる。さらに、Si細線光導波路では、Si電子デバイスでの加工技術が利用できるために、きわめて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、Si細線光導波路によれば、他の構造では不可能な、Si電子デバイスと同サイズの光回路が実現可能であるので、光と電子とをチップ上で融合する有力な技術として注目されている。
【0003】
Si細線光導波路の一応用例として、波長分離素子が挙げられる(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。これらの文献に開示された波長分離素子は、いわゆるAWG(Arrayed Waveguide Grating)と呼ばれる素子である。AWGは、平面型光導波路と、この平面型光導波路に接続された多数のチャネル型光導波路とで構成されている。従来、Si細線光導波路を利用したAWGでは、隣接するチャネル型光導波路間の間隙から大量の光が漏れ出すことが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−159718号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Selected Areas in Quantum Electronics, vol.16,p.33,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特許文献1及び非特許文献1では、光の漏れ出しを抑えるために、チャネル型光導波路に、厚み方向のテーパ構造を作成していた。しかしながら、特許文献1及び非特許文献1のAWGは、基板の厚み方向に加工をする必要があるため、構造及び製造工程が複雑であった。
【0007】
この発明は、上述した課題に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、平面型光導波路に接続された隣接するチャネル型光導波路の間隙からの光の漏れを少なくした光導波路素子であって、構造及び製造工程が簡単なものを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は鋭意検討の結果、平面型光導波路に接続されたチャネル型光導波路を平面型光導波路から離間するにつれて拡幅することにより、上述の課題を解決できることに想到した。
【0009】
この発明の光導波路素子は、基板と、光導波路構造体と、被覆膜とを備えている。
【0010】
光導波路構造体は、平面型光導波路、この平面型光導波路の一端面に放射状に接続されている複数のチャネル型光導波路、及び、平面型光導波路の一端面に対向する他端面に接続されている入力用光導波路を含む。被覆膜は、基板の一方の主面上に設けられていて、光導波路構造体を囲む。
【0011】
そして、被覆膜の屈折率が光導波路構造体の屈折率の6割以下であり、複数のチャネル型光導波路の、光伝搬方向に直交する方向であって、主面に平行な方向の幅が、平面型光導波路から離間するに従って徐々に拡幅する。
【発明の効果】
【0012】
この発明の光導波路素子は、平面型光導波路から離間するにつれて幅が徐々に拡幅するチャネル型光導波路を用いている。このため、平面型光導波路近傍において隣接するチャネル型光導波路間の間隙に広がっていた光は、平面型光導波路から離間するように伝搬するにつれて、いわば拡幅するチャネル型光導波路内部に吸い寄せられる。その結果、間隙からの光の漏れを少なくすることができる。
【0013】
また、平面型光導波路の一端面におけるチャネル型光導波路内での光強度の積分値と、隣接するチャネル型光導波路の間の間隙内での光強度の積分値とを等しくすることにより、平面型光導波路からチャネル型光導波路への光の結合時に、間隙からの光の漏れ出しを小さくすることができる。また、この発明の光導波路素子は、基板の厚み方向に加工を行う必要が無いため構造、及び、製造工程が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、光導波路素子の構成を模式的に示す平面図であり、(B)は、(A)のA−A線に沿って取った端面図である。
【図2】チャネル型光導波路が接続された平面型光導波路の一端面における2次元光強度分布を示す特性図である。
【図3】光導波路素子のシミュレーション結果を示す特性図である。
【図4】波長選択素子の概略的な構成を示す平面図である。
【図5】波長選択素子のシミュレーション結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0016】
(構造)
図1(A)は、実施形態の光導波路素子の構成を模式的に示す平面図である。図1(B)は、図1(A)のA−A線で取った端面図である。なお、図1(A)において、光導波路構造体及び直線状光導波路は、被覆膜に覆われているために、直接目視することはできないが、強調するために実線で描いてある。
【0017】
光導波路素子10は、入力用光導波路12、複数のチャネル型光導波路14及び平面型光導波路16を含む光導波路構造体18を備えている。この光導波路構造体18は、基板20の一方の主面20a側に設けられた被覆膜22により囲まれている。さらに、光導波路素子10は、被覆膜22に囲まれて直線状光導波路24を備えている。
【0018】
基板20は、主面20aが平面状である平行平板である。基板20は、単結晶Siを材料とし、厚さを約600μmとする。
【0019】
被覆膜22は、基板20の主面20aに設けられた膜体である。被覆膜22は、場所によらず厚さが均一であり、その厚さを約4μmとする。被覆膜22は、光導波路構造体18の全周囲を覆っている。
【0020】
この例では、被覆膜22は、屈折率が約1.45のSiOを材料とする。また、光導波路構造体18、すなわち入力用光導波路12、複数のチャネル型光導波路14及び平面型光導波路16は、何れも、屈折率が約3.47の単結晶Siを材料としている。この場合、光導波路構造体18は、光導波路構造体18の全周囲を囲む被覆膜22よりも屈折率が約1.67倍以上大きな材料で形成されている。つまり、被覆膜22の屈折率は、光導波路構造体18の屈折率の6割以下となっている。
【0021】
また、光導波路構造体18は、場所によらず厚さが均一であり、その厚さは約0.3μmとする。また、光導波路構造体18と基板20の主面20aとの間には、約2μmの被覆膜22を介在させる。つまり、光導波路構造体18は、被覆膜22の上面22aから約2μmの深さに埋め込まれている。光導波路構造体18をこのように配置することにより、光導波路構造体18を伝搬する光の、基板20への漏れ出しを防ぐことができる。
【0022】
平面型光導波路16は、一端面16aと、この一端面16aに対向する他端面16bとを備えている。一端面16aと主面20aに平行な面とが交差する稜線が円弧状である。そして、一端面16aには、複数のチャネル型光導波路14が放射状に接続されている。一方、他端面16bと主面20aに平行な面とが交差する稜線は、一端面16a側の稜線よりも小径の円弧状である。そして、他端面16bには、入力用光導波路12が接続されている。
【0023】
複数のチャネル型光導波路14は、入力用光導波路12から平面型光導波路16に入力されて、等分配された光を光伝搬方向Tに沿って伝搬させる。複数のチャネル型光導波路14は、平面型光導波路16の一端面16aに等間隔で放射状に接続されている。
【0024】
より詳細には、互いに隣接するチャネル型光導波路14の間には一定幅の間隙Wが存在している。この間隙Wからは、隣接するチャネル型光導波路14の間の一端面16aが露出している。一端面16aにおける間隙Wの大きさは、間隙Wからの光の漏れ出しを防ぐ観点からは、0(ゼロ)μmであることが最も好ましい。しかし、実際には、一端面16aにおける間隙Wの大きさは、光導波路構造体18を構成する単結晶Siの加工精度限界により不可避的に決定され、この例では約0.2μmである。
【0025】
複数のチャネル型光導波路14は、幅Dが平面型光導波路16から離間していくに従って、徐々に拡幅していく。ここで、「幅」とは、チャネル型光導波路14の光伝搬方向Tに直交する方向であって、主面20aに平行な方向のチャネル型光導波路14の長さである。また、「徐々に拡幅していく」とは、チャネル型光導波路14の一端面16a側を頂点側とした場合に、光伝搬方向Tに沿って二等辺三角形状に幅Dが大きくなることを示す。
【0026】
ここで、一端面16aにおけるチャネル型光導波路14の幅DをD1と称し、及び平面型光導波路16に接続されていない側の端部14bにおける幅DをD2と称する。チャネル型光導波路14は、平面型光導波路16から離間するに従って徐々に拡幅していくことから、幅D1及びD2の関係はD1<D2である。この例ではD1を約0.33μmとし、D2を約0.8μmとする。
【0027】
詳しくは後述するが、複数のチャネル型光導波路14の幅Dを平面型光導波路16から離間するにつれて徐々に拡幅させることで、平面型光導波路16の間隙Wからの光の漏れ出しを小さくすることができる。
【0028】
また、チャネル型光導波路14の一端面16aにおける幅D1は、伝搬させるべき光の波長未満であることが好ましい。このように構成すれば、平面型光導波路16の間隙Wからの光の漏れ出しを一層小さくすることができる。
【0029】
また、詳しくは後述するが、平面型光導波路16の一端面16aにおいて、チャネル型光導波路14内での光強度の積分値と、隣接するチャネル型光導波路14間の間隙W内での光強度の積分値とが等しくなるように、チャネル型光導波路14の幅D1を最適化することが好ましい。このように構成すれば、平面型光導波路16の間隙Wからの光の漏れ出しを一層小さくすることができる。
【0030】
さらに、チャネル型光導波路14における光強度の積分値を、隣接するチャネル型光導波路14の間の間隙Wにおける光強度の積分値の1.5倍以上とするような幅D2まで、チャネル型光導波路14を拡幅することが好ましい。このように構成すれば、間隙Wからの光の漏れ出しを一層小さくすることができる。
【0031】
入力用光導波路12は、平面型光導波路16に光を入力するチャネル型光導波路である。入力用光導波路12は、平面型光導波路16の他端面16bに設けられている。この例では、複数のチャネル型光導波路14の中心線が、他端面16bの入力用光導波路12が接続される部分における一点Cで交差している。
【0032】
直線状光導波路24は、チャネル型光導波路14を伝搬する光を光導波路素子10の系外へと導く直線状の光導波路である。直線状光導波路24は、チャネル型光導波路14の平面型光導波路16に接続されていない側の端部14bに接続されている。直線状光導波路24の、光伝搬方向Tに直交する方向であって、主面20aに平行な方向の幅は一定である。つまり、直線状光導波路24の幅はチャネル型光導波路14の端部14bの幅D2と等しい。直線状光導波路24は、光導波路構造体18と同様に単結晶Siを材料として形成されている。また、直線状光導波路24の厚みは、光導波路構造体18と同様に約0.3μmとする。
【0033】
(動作)
以下、図1及び図2参照して、光導波路素子10の動作について説明する。なお、光導波路素子10を伝搬する光は、チャネル型光導波路14の幅D1(約0.33μm)や、間隙W(約0.2μm)に比べて、充分に波長が長い光とする。例えば、光の波長は約1.55μmとする。
【0034】
入力用光導波路12を介して平面型光導波路16に入力された光は、回折により広がりながら、平面型光導波路16の一端面16aに向かって伝搬していく。そして、一端面16aに到達した光は、複数のチャネル型光導波路14に等分配される。
【0035】
各チャネル型光導波路14の幅Dは、平面型光導波路16から離間するにつれて大きくなっていく。この幅Dの増加に伴って、チャネル型光導波路14の固有モードが変化する。すなわち、間隙Wに幅広く存在していた光の界分布が、導波路幅Dが大きくなるにつれてチャネル型光導波路14内部へ集中していく。いわば、導波路幅Dが広くなるにつれて、間隙Wに広がっていた光がチャネル型光導波路14内部へと吸い寄せられる。その結果、チャネル型光導波路14に結合された光は、間隙Wから漏れ出すことなくチャネル型光導波路14を伝搬していく。
【0036】
このようにして、複数のチャネル型光導波路14を伝搬する光は、直線状光導波路24を介して系外へと取り出される。
【0037】
さらに、図2を参照して、一端面16aにおいて、複数のチャネル型光導波路14の幅Dを最適化することにより、平面型光導波路16の間隙Wからの光の漏れ出しを一層小さくできることについて説明する。図2は、チャネル型光導波路14が接続された平面型光導波路16の一端面16aにおける2次元光強度分布である。
【0038】
すなわち、上述のように、チャネル型光導波路14の、幅D1が光の波長に比べて充分に狭いときの一端面16aにおける固有モードは、チャネル型光導波路14の外側、つまり間隙Wに多くの光を励起する。
【0039】
図2において、楕円形の光強度分布を示すのが、チャネル型光導波路14に対応し、略四角形の光強度分布を示すのが間隙Wに対応する。なお、チャネル型光導波路14の幅D1及び間隙Wの大きさは上述したものを用いている。また、伝搬させる光の波長は1.55μmとする。
【0040】
図2より明らかなように、チャネル型光導波路14の固有モードでは、チャネル型光導波路14内での光強度のピーク値と、間隙Wの光強度のピーク値とが略等しい値となる。図2の結果を基にして積分すると、チャネル型光導波路14内での光強度の積分値と、隣接するチャネル型光導波路14の間の間隙W内での光強度の積分値とが等しくなる。
【0041】
このように、一端面16aにおいては、チャネル型光導波路14と間隙Wとに均等に光が分配されるモードがチャネル型光導波路14の固有モードである。一方、平面型光導波路16の固有モードは、チャネル型光導波路14だけでなく間隙Wにも多くの光を励起する。
【0042】
これらのことから、平面型光導波路16に幅D1が狭いチャネル型光導波路14を接続すれば、一端面16aにおいて、平面型光導波路16とチャネル型光導波路14との固有モードが良好に整合する。その結果、平面型光導波路16からチャネル型光導波路14に低損失で光を結合することができる。つまり、平面型光導波路16からチャネル型光導波路14への光の結合時に、間隙Wからの光の漏れ出しを小さくすることができる。
【0043】
(シミュレーション)
以下、図3を参照して、光導波路素子10に関するシミュレーションについて説明する。図3は、光導波路素子10のシミュレーション結果を示す特性図である。図3において、縦軸は、光強度の割合(dB)であり、入力用光導波路12から入力された光の強度に対する全チャネル型光導波路14からの出力光の強度の総和の比率を表している。横軸は、チャネル型光導波路14の一端面16a側の幅D1(nm)を表している。
【0044】
シミュレーションは3次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法により行った。以下にシミュレーションの諸元について列記する。
【0045】
まず、間隙Wの幅を200nmで固定し、チャネル型光導波路14の一端面16a側の幅D1を300〜800nmの間で変化させた。また、チャネル型光導波路14の平面型光導波路16に接続されていない側の幅D2を800nmとした。そして、チャネル型光導波路14の光伝搬方向Tに沿った長さは、幅D1に反比例させて、2000nm〜0nmの間で変化させた。つまり、チャネル型光導波路14の幅D1が300nmの場合に、チャネル型光導波路14の長さを2000nmとし、チャネル型光導波路14の幅D1が800nmの場合に、チャネル型光導波路14の長さを0nmとした。
【0046】
複数のチャネル型光導波路14の総本数は32本とした。また、複数のチャネル型光導波路14に入力される光量が一定となるように、平面型光導波路16の光伝搬方向Tに沿った長さRsを、チャネル型光導波路14の幅D1に比例して1500〜3100nmまで変化させた。つまり、チャネル型光導波路14の幅D1が300nmの場合に、平面型光導波路16の長さRsを1500nmとし、チャネル型光導波路14の幅D1が800nmの場合に、平面型光導波路16の長さRsを3100nmとした。また、光の強度は、直線状光導波路24を20μm伝播した点で観測した。
【0047】
図3を参照すると、チャネル型光導波路14の幅D1が300〜450nm付近で、光強度割合は−15〜−14dBとなり、最も光の損失が少ない。この値は、光の損失が最も大きい場合であるD1=600nm(約−15.7dB)と比較すると、0.7〜1.5dB良好である。
【0048】
このように、チャネル型光導波路14の幅D1と間隙Wの幅とを最適化することにより、間隙Wからの光の漏れによる損失を抑えることができる。
【0049】
(応用例)
続いて、図4及び図5を参照して、波長選択素子として機能する光導波路素子の応用例について説明する。図4は、波長選択素子の概略的な構成を示す平面図である。図5は、波長選択素子のシミュレーション結果を示す特性図である。なお、図4において、図1と同様の構成要素には同符号を付して、その説明を省略する。また、図4において、基板20及び被覆膜22の図示を省略している。
【0050】
波長選択素子30は、上述した実施形態の光導波路素子10において、複数の直線状光導波路24の端部に反射膜を設けて、その全長を規則的に変化させたものである。従って、以下では、光導波路素子10との相違点について主に説明する。
【0051】
波長選択素子30は、各チャネル型光導波路14の端部14bに、それぞれ規則的に長さが増加する複数の直線状光導波路32を接続している。この直線状光導波路32のチャネル型光導波路14と接続されていない側の端部32aには、Au又はAlからなる全反射膜32bが設けられている。
【0052】
また、波長選択素子30において、平面型光導波路16の他端面16bには、1本の入力用光導波路12と、2本の出力用光導波路34a及び34bとが設けられている。入力用光導波路12からは、波長選択されるべき光が平面型光導波路16に入力される。出力用光導波路34a及び34bからは、異なる2波長に波長選択された光が、波長ごとに出力される。
【0053】
シミュレーションは、2次元FDTD法で行った。シミュレーションにおいて、被覆膜22を構成するSiOの屈折率を1.44とした。また、光導波路構造体18、出力用光導波路34a及び34b、及び複数の直線状光導波路32の等価屈折率を3.04とした。
【0054】
まず、平面型光導波路16の長さRsを25μmとした。ここで、Rsは、複数のチャネル型光導波路14の中心線が交差する交差点Cから一端面16aに至る長さとする。また、チャネル型光導波路14の光伝搬方向Tに沿った長さLtを20μmとする。さらに、チャネル型光導波路14の一端面16aにおける幅D1を300nmとし、及び、間隙Wの幅を200nmとする。そして、チャネル型光導波路14の幅D2は、540nmとする。
【0055】
また、平面型光導波路16に接続されたチャネル型光導波路14は32本とする。さらに、隣接する2本の直線状光導波路32及び32の光路長差dLは0.5095μmとする。また、隣接する2本のチャネル型光導波路14の中心間の角度間隔dΘは1.146°とする。さらにまた、全反射膜32bはAl製とする。
【0056】
そして、入力用光導波路12から白色光を入力し、波長選択されて出力用光導波路34aから出力される波長約1.41μmの出力光の光強度割合を求めた。
【0057】
図5において、縦軸は、光強度の割合(dB)であり、入力用光導波路12から入力された白色光の強度に対する、出力用光導波路34aから出力された光の強度の比率を示す。横軸は、出力された光の波長(μm)を示す。
【0058】
図5には、波長約1.41μmに約−1.1dBのピークが見られる。このことから、波長選択素子30の挿入による光の損失は、約1.1dBであることがわかる。間隙Wからの光の漏れ出しに対して対策を行わないAWGの挿入損失は約4dBと見積もられることから、この波長選択素子30では、間隙Wからの光の漏れ出しが抑えられ、出力される光の強度が約3dB増加している。
【符号の説明】
【0059】
10 光導波路素子
12 入力用光導波路
14 チャネル型光導波路
14b,32a 端部
16 平面型光導波路
16a 一端面
16b 他端面
18 光導波路構造体
20 基板
20a 主面
22 被覆膜
24,32 直線状光導波路
30 波長選択素子
32b 全反射膜
34a,34b 出力用光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
平面型光導波路、該平面型光導波路の一端面に放射状に接続されている複数のチャネル型光導波路、及び、前記平面型光導波路の前記一端面に対向する他端面に接続されている入力用光導波路を含む光導波路構造体と、
前記基板の一方の主面上に設けられていて、前記光導波路構造体を囲む被覆膜と、
を備え、
前記被覆膜の屈折率が前記光導波路構造体の屈折率の6割以下であり、
複数の前記チャネル型光導波路の、光伝搬方向に直交する方向であって、前記主面に平行な方向の幅が、前記平面型光導波路から離間するに従って徐々に拡幅することを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記チャネル型光導波路の前記一端面における前記幅が、伝搬させるべき光の波長未満であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記一端面における、前記チャネル型光導波路内での光強度の積分値と、隣接するチャネル型光導波路の間の間隙内での光強度の積分値とが等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
当該チャネル型光導波路における光強度の積分値が、隣接するチャネル型光導波路の間の間隙における光強度の積分値の1.5倍以上となるような前記幅まで、前記チャネル型光導波路を拡幅することを特徴とする請求項3に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記複数のチャネル型光導波路の中心線が、前記平面型光導波路の前記他端面の前記入力用光導波路が接続される部分における一点で交差することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記チャネル型光導波路の、前記平面型光導波路に接続されていない側の端部に、光伝搬方向に直交する方向であって、前記主面に平行な方向の幅が一定の直線状光導波路が接続されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記チャネル型光導波路の、前記平面型光導波路に接続されていない側の端部に、光路長が一定長さずつ増加し、かつ幅が一定の直線状光導波路を設け、該直線状光導波路の前記チャネル型光導波路に接続されていない側の端部に光反射器を設けることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の光導波路素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208354(P2012−208354A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74497(P2011−74497)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】