説明

光導波路装置および校正システム

【課題】レーザレーダ装置から出射されたレーザ光の反射光が装置内へ入射するまでの時間を長くし得る光導波路装置を提供する。
【解決手段】光導波路装置30は、校正システム10の校正対象であるレーザレーダ装置20から窓部22を透過したレーザ光L0が導入口31aから入射する光導波路31が設けられており、この光導波路31は、その全長が導入口31aと窓部22との間の距離に対して長くなるように複数回巻回されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置からのレーザ光を導光する光導波路装置およびこれを用いたレーザレーダ装置の校正システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザレーダ装置に関する技術として、下記特許文献1に示すレーザ距離測定装置が知られている。このレーザ距離測定装置は、装置内に設けられる基準物体に対して光を照射しこの基準物体からの反射光の到達時間に基づいて算出される距離と、予め設定される基準物体までの距離とを比較して、距離測定誤差を検出し、この距離測定誤差に基づいて測定距離を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−0200356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置の筐体内から窓部を透過させてレーザ光を出射するとき、この窓部を透過することなく当該窓部等にて筐体内に反射した光が内部反射として比較的短時間で検出される場合がある。この内部反射は、レーザ光の出射方向が変化する場合、この出射方向によって検出結果(検出時間や大きさ)が変化するだけでなく、装置が変わると同じ出射方向でも検出結果が変化する。そのため、比較的短時間で反射光が検出された場合に、この反射光が、近接した検出物体からの反射光か内部反射によるものかを判別することが困難であった。
【0005】
そこで、出射方向ごとに予め内部反射を測定し、この測定結果に基づいて反射光の検出に関する閾値を校正することで、内部反射の影響を除去する方法が考えられる。しかしながら、内部反射のみを測定するためには、窓部を透過するレーザ光が周囲の物体等により反射されてすぐに筐体内に入射することを防止する必要がある。このため、内部反射の測定時には、レーザ光を反射する物体が存在しない広い空間が、装置の周囲に必要であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、レーザレーダ装置から出射されたレーザ光の反射光が装置内へ入射するまでの時間を長くし得る光導波路装置を提供することにある。また、本発明の別の目的は、レーザレーダ装置における反射光の検出に関する閾値を好適に校正し得る校正システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光導波路装置では、窓部を透過したレーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出することで当該検出物体までの距離を測定するレーザレーダ装置に対して、前記窓部を透過したレーザ光を導光するための光導波路装置であって、前記レーザ光が導入口から入射する光導波路を備え、前記光導波路は、その全長が前記導入口と前記窓部との間の距離に対して長くなるように複数回巻回されて構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光導波路装置において、前記光導波路の両端部のうち前記導入口とは反対側の端部には低反射率体が設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光導波路装置において、前記レーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化する前記レーザレーダ装置を、当該所定の角速度に応じて回転させることで前記レーザ光の出射方向を一定にする回転機構を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の光導波路装置において、前記レーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化する前記レーザレーダ装置に対して周囲に配置されて、前記レーザ光を反射して集光する集光手段と、前記集光手段により集光された前記レーザ光を平行光にして前記導入口に導光する平行光偏向手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の光導波路装置において、前記集光手段の反射面は、前記回転軸までの距離が当該回転軸に直交する面と交わる部位ごとに等しくなるように、放射曲面状に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光導波路装置において、前記反射面は、出射方向が変化するレーザ光を全て前記平行光偏向手段に向けて反射して集光するように形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光導波路装置において、前記平行光偏向手段は、前記集光手段からの前記レーザ光を集光して前記平行光とする集光レンズであることを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光導波路装置において、前記光導波路は、導光されるレーザ光が直進する直進部とこのレーザ光を偏向させる偏向ミラーとからなる導光部を複数連結させて構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の光導波路装置において、前記光導波路は、前記直進部が前記導入口から離れるほど拡径するように形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光導波路装置において、前記光導波路は、光ファイバにより形成されることを特徴とする。
【0017】
特許請求の範囲に記載の請求項11の校正システムでは、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光導波路装置の前記光導波路に前記レーザレーダ装置の前記窓部を透過したレーザ光を導光することで、当該レーザ光の出射に起因する当該レーザレーダ装置の筐体内での内部反射の影響を測定し、この測定結果に基づいて前記反射光の検出に関する閾値を校正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明では、レーザレーダ装置から窓部を透過したレーザ光が導入口から入射する光導波路が設けられており、この光導波路は、その全長が導入口と窓部との間の距離に対して長くなるように複数回巻回されて構成されている。
【0019】
このため、レーザレーダ装置からのレーザ光は、複数回巻回された光導波路に導光されることで、このレーザ光が光導波路の端部で反射した後に導入口を介して反射光として窓部を透過する場合でも、導入口を介するレーザ光の入射からその反射光が当該導入口を介して外方へ出射するまでの時間(以下、導光時間ともいう)を長くすることができる。このような光導波路装置をレーザレーダ装置の内部反射測定用として用いることにより、レーザ光が反射光として装置内へ入射して検出されるまでの時間を、このレーザ光の出射に起因する内部反射を検出するまでの時間に対して十分長くすることができるので、内部反射の影響を精度良く測定することができる。
【0020】
請求項2の発明では、光導波路の両端部のうち導入口とは反対側の端部には、例えば黒色物体等の反射率が低く設定された低反射率体が設けられている。このため、この低反射率体ではレーザ光の反射が抑制されるので、導入口を介して窓部を外方から透過する反射光の光量が抑制されて、内部反射の影響をより精度良く測定することができる。
【0021】
請求項3の発明では、そのレーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化するレーザレーダ装置が対象であり、このレーザレーダ装置を当該所定の角速度に応じて逆方向に回転させることでレーザ光の出射方向を一定にする回転機構が設けられている。これにより、上述のようなレーザレーダ装置であってもレーザ光の出射方向が一定になるので、レーザレーダ装置からのレーザ光を確実に導入口に導光することができる。
【0022】
請求項4の発明では、そのレーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化するレーザレーダ装置が対象であり、出射方向が変化するレーザ光がレーザレーダ装置の周囲に配置される集光手段にて所定の位置に集光されて平行光偏向手段により平行光として導入口に導光される。これにより、上述のようなレーザレーダ装置であっても出射方向が変化するレーザ光が所定の位置に集光されて平行光となるので、レーザレーダ装置からのレーザ光を容易かつ確実に導入口に導光することができる。
【0023】
請求項5の発明では、集光手段の反射面は、回転軸までの距離が当該回転軸に直交する面と交わる部位ごとに等しくなるように、放射曲面状に形成されるため、出射方向が変化するレーザ光を上記所定の位置に向けて確実に反射させることができる。
【0024】
請求項6の発明では、集光手段の反射面は、出射方向が変化するレーザ光を全て平行光偏向手段に向けて反射して集光するように形成されるため、レーザレーダ装置からのレーザ光を全ての出射方向において導入口に導光することができる。
【0025】
請求項7の発明では、平行光偏向手段は、集光手段からのレーザ光を集光して平行光とする集光レンズであるため、簡易な構成で集光手段からのレーザ光を平行光とすることができる。
【0026】
請求項8の発明では、光導波路は、導光されるレーザ光が直進する直進部とこのレーザ光を偏向させる偏向ミラーとからなる導光部を複数連結させて構成されている。これにより、導光部の偏向角度に応じた直進部同士の連結を繰り返すことで、狭い空間であっても多くの直進部が連結されて各直進部により構成される光導波路の全長を長くすることができる。
【0027】
請求項9の発明では、光導波路は、直進部が導入口から離れるほど拡径するように形成されるため、導入口から導光されたレーザ光が拡散する場合でも直進部の内壁にて反射されにくくなる。これにより、レーザ光が光導波路の長手方向中間部位にて反射されることで上記導光時間が短くなることを抑制することができる。
【0028】
請求項10の発明では、光導波路は、光ファイバにより形成されるため、この光ファイバを例えば螺旋状に複数回巻回することで、狭い空間であっても光導波路の全長を長くすることができる。
【0029】
請求項11の発明では、上述のような光導波路装置の光導波路にレーザレーダ装置の窓部を透過したレーザ光を導光することで、レーザ光が反射光として装置内に入射して検出されるまでの時間を、このレーザ光の出射に起因する内部反射を検出するまでの時間に対して十分長くすることができる。このため、レーザ光の出射に起因するレーザレーダ装置の筐体内での内部反射のみを正確に測定することができ、この測定結果に基づいて反射光の検出に関する閾値を好適に校正することができる。したがって、このように校正されたレーザレーダ装置では、比較的短時間で反射光が検出された場合であっても、この反射光が、近接した検出物体からの反射光か内部反射によるものかを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る光導波路装置と校正システムとを概略的に例示する概念図である。
【図2】図1のレーザレーダ装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1の光導波路装置の概略構成を示す説明図である。
【図4】図4(A)は内部反射に応じて検出される波形と光導波路装置からの反射光に応じて検出される波形との関係を示す波形図であり、図4(B)は内部反射に応じて検出される波形と近接した検出物体からの反射光に応じて検出される波形との関係を示す波形図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係る光導波路装置の要部を示す説明図である。
【図6】第2実施形態に係る光導波路装置と校正システムとを概略的に例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る光導波路装置とこの光導波路装置を用いてレーザレーダ装置を校正する校正システムについて図を参照して説明する。
図1に示すように、校正システム10は、出射したレーザ光により検出物体にて反射された反射光を検出することで当該検出物体までの距離や方位を測定するレーザレーダ装置20が校正対象であり、光導波路装置30および回転機構40を備えている。
【0032】
まず、校正対象であるレーザレーダ装置20について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、レーザレーダ装置20は、レーザダイオード23と、検出物体からの反射光L3を受光するフォトダイオード24と、レーザダイオード23およびフォトダイオード24を制御する制御回路29とを備えている。レーザダイオード23は、制御回路29の制御により図略のレーザ駆動回路からパルス電流を供給されてパルスレーザ光(レーザ光L0)を投光するものである。
【0033】
フォトダイオード24は、レーザダイオード23からレーザ光L0が発生したときに、このレーザ光L0が検出物体によって反射した反射光L3等を検出し受光信号に変換して制御回路29に出力する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光については所定領域のものが取り込まれる構成となっており、図2の例では、符号L3で示す2つのライン間の領域の反射光が取り込まれるようになっている。
【0034】
また、レーザ光L0の光軸上にはレンズ25及びミラー26が設けられている。レンズ25は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード23からのレーザ光L0を平行光に変換する。
【0035】
ミラー26は、レーザダイオード23からのレーザ光L0の透過と、検出物体側からの反射光L3の反射を実現するものである。具体的には、レーザ光L0の光軸に対し所定角度で傾斜してなる反射面26aを有するとともに、反射面26aと交差する方向の貫通路26bを備えている。本構成では、レーザ光L0の光軸と反射光L3の光軸とを一致させる構成としており、ミラー26は、共通の光軸上に配されて貫通路26bを介してレーザ光L0を通過させる一方、反射面26aにより反射光L3をフォトダイオード24に向けて反射する構成をなしている。
【0036】
なお、上述したように、レーザダイオード23から貫通路26bまでのレーザ光L0の光路上に、レーザ光L0を平行光に変換するレンズ25が設けられているが、このレンズ25は、貫通路26bにおいてほぼすべての光を通過させる平行光を発生させる形態とすると良い。逆に、貫通路26bに着目した場合、当該貫通路26bは、レンズ25によって平行光とされたレーザ光L0のほぼすべての光を通過させるサイズとすると良い。
【0037】
また、ミラー26を通過するレーザ光L0の光軸上には、回動偏向機構27が設けられている。この回動偏向機構27は、レーザ光L0の光軸方向に延びる中心軸を中心として回動可能に配設されるとともに、この中心軸上に焦点位置が設定される凹面鏡27aによってレーザ光L0を空間に向けて反射させ且つ反射光L3をミラー26に向けて偏向させている。
【0038】
さらに、回動偏向機構27を回転駆動するモータ28が設けられている。このモータ28は、軸28aを回転させることで、軸28aと連結された回動可能な凹面鏡27aを回転駆動する構成となっている。モータ28は、ここではステップモータによって構成されている。ステップモータは、種々のものを利用でき、1ステップ毎の角度が小さいものを使用すれば、緻密な回動が可能となる。また、モータ28としてステップモータ以外の駆動手段を用いてもよい。例えばサーボモータ等を用いても良いし、定常回転するモータを用い、凹面鏡27aが測距したい方向を向くタイミングに同期させてパルスレーザ光を出力することで、所望の方向の検出を可能としてもよい。なお、本第1実施形態では、図2に示すように、モータ28の軸28aの回転角度、即ち凹面鏡27aの回転角度を検出する回転角度センサ28bが設けられており、この回転角度センサ28bは、凹面鏡27aの回転角度に対応する角度信号を制御回路29に出力する。当該回転角度センサ28bは、ロータリーエンコーダなど、軸28aの回転角度を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用でき、また、検出対象となるモータ28の種類も特に限定されず、様々な種類のものに適用できる。
【0039】
また、本第1実施形態では、レーザダイオード23、フォトダイオード24、レンズ25、ミラー26、回動偏向機構27、モータ28や制御回路29等が筐体21内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。筐体21における凹面鏡27aの周囲には、当該凹面鏡27aを取り囲むようにレーザ光L0及び反射光L3の通過を可能とする導光部21aが形成されている。導光部21aは、凹面鏡27aに入光するレーザ光L0の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部21aを閉塞する形態でガラス板等からなる窓部22が配され、防塵が図られている。
【0040】
窓部22は、凹面鏡27aに入光するレーザ光L0の光軸と直交する仮想平面に対し全周にわたり傾斜した構成となっている。即ち、凹面鏡27aから空間に向かうレーザ光L0に対して板面が傾斜した構成をなしている。従って、凹面鏡27aから空間に向かうレーザ光L0が窓部22にて反射してもノイズ光となりにくくなっている。
【0041】
制御回路29は、例えば、マイコンやメモリ(ROM、RAM、EEPROM等)等から構成されており、上述したレーザダイオード23およびフォトダイオード24等を制御することで、検出物体までの距離や方向を測定する処理を所定のコンピュータプログラムにより実行する機能を有するものである。
【0042】
ここで上述のように構成されるレーザレーダ装置20の作用について説明する。図2に示すレーザレーダ装置20では、レーザダイオード23にパルス電流が供給されると、このレーザダイオード23からはパルス電流のパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L0)が出力される。このレーザ光L0は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ25を通過することで平行光に変換される。レンズ25を通過したレーザ光L0は、ミラー26に形成された貫通路26bを通過して凹面鏡27aに入射し、この凹面鏡27aにて平行光として反射され窓部22を介して外方に向けて出射される。
【0043】
このように凹面鏡27aによって反射されたレーザ光L0は検出物体によって反射されると、この反射光の一部(反射光L3参照)は窓部22を介して再び凹面鏡27aに入射する。凹面鏡27aは、この反射光L3を集光しつつミラー26へ向けて反射する。ミラー26では、この反射光L3がフォトダイオード24へ向けて反射され、フォトダイオード24は、受光した反射光L3に応じた電気信号(例えば受光した反射光L3に応じた電圧値)を出力する。この構成では、レーザダイオード23によってレーザ光L0を出力してからフォトダイオード24によってその反射光L3を検出するまでの時間を測定することにより検出物体までの距離を求めることができる。
【0044】
また、レーザレーダ装置20は、モータ28の回転駆動により、凹面鏡27aによるレーザ光L0の反射方向(レーザ光L0の出射方向)が軸28aに直交する面に沿い当該軸28aを中心に所定の角速度で変化することとなる。そのため、凹面鏡27aの位置によって検出物体の方位を求めることができる。
【0045】
次に、光導波路装置30について、図3を参照して説明する。
光導波路装置30は、導入口31aを介するレーザ光L0の入射からその反射光L3が当該導入口31aを介して外方へ出射するまでの時間(以下、導光時間ともいう)を長くするための装置である。この光導波路装置30は、図3に示すように、光導波路31を備えており、この光導波路31は、後述するようにレーザレーダ装置20に対して配置されるとき、導入口31aと窓部22との間の距離に対してその全長が長くなるように複数回巻回されて形成されている。この光導波路31は、導入口31aから導光されるレーザ光が直進する直進部32aとこのレーザ光を偏向させる偏向ミラー32bとからなる導光部32を複数連結させて構成されている。各直進部32aは、内壁での反射を抑制するため、導入口31aから離れるほど拡径するように形成されている。なお、図3では、光導波路31は、2回巻回するように図示されているが、全長をより長くするためにより多く巻回されて形成されるものとする。
【0046】
光導波路31の両端部のうち導入口31aとは反対側の端部31bには、例えば黒色物体等の反射率が低く設定された低反射率体33が設けられている。この低反射率体33は、入射するレーザ光L0を反射光L3として反射する場合でもその光量を抑制するように作用するものである。なお、低反射率体33として、ツヤ消しの黒色物体を採用することで、反射率をより低くすることができる。また、低反射率体33として、黒色物体に限ることなく、植毛紙やアルマイト処理を施した樹脂品を採用してもよい。また、低反射率体33として、スポンジ形状のものを採用してもよい。この場合、スポンジの穴の数が多いほど、レーザ光が減衰しながら反射を繰り返してスポンジ内部に向かうため、当該低反射率体33を大きく構成することで、反射率をより低くすることができる。
【0047】
また、回転機構40は、レーザレーダ装置20から出射されるレーザ光L0の出射方向を一定にするための機構であって、レーザレーダ装置20を載置するための上壁41が所定の角速度で回転可能に構成されている。具体的には、回転機構40は、回転角度センサ28bにより検出される凹面鏡27aの回転角度が制御回路29を介して入力されると、この回転角度の変化分すなわち角速度と同じ角速度で逆方向に上壁41を回転させる。これにより、レーザレーダ装置20から出射されるレーザ光L0の出射方向を一定にすることができる。
【0048】
次に、校正システム10によるレーザレーダ装置20の校正の目的およびその校正方法について説明する。
レーザ光L0の出射時に、窓部22を透過することなく当該窓部22等にて筐体21内に反射した光が内部反射として比較的短時間で検出される場合がある。この内部反射は、反射光L3よりも光量が低いことから、比較的短時間で反射光が検出された場合に、この反射光が近接した検出物体からの反射光L3か内部反射によるものかを判別するために、レーザ光L0の出射方向ごとに反射光の検出に関する閾値が設定されている。この閾値はレーザレーダ装置20ごとに異なるため、本第1実施形態では、校正システム10により、レーザレーダ装置20ごとに、出射方向ごとの反射光の検出に関する閾値を校正している。
【0049】
具体的には、図1に示すように、校正対象となるレーザレーダ装置20を回転機構40の上壁41上に載置するとともに、現時点におけるレーザ光L0の出射方向に導入口31aを向けるように光導波路装置30を配置する。そして、凹面鏡27aの回転によりレーザ光L0の出射方向を窓部22に対して所定の角速度で変化させるとともに、この角速度に応じて上壁41を逆方向に回転させる。このため、レーザ光L0は、その出射方向が光導波路装置30に対して一定になり、導入口31aを介して光導波路31内に導光されることとなる。
【0050】
これにより、光導波路31内に導光されたレーザ光L0が光導波路31の端部31bで反射された後に導入口31aを介して反射光L3として窓部22を透過する場合でも、上記導光時間が長くなる。
【0051】
このため、フォトダイオード24により、内部反射に応じて検出される波形をS1、光導波路装置30からの反射光L3に応じて検出される波形をS2とすると、図4(A)に示すように、波形S2の検出時間が波形S1の検出時間に対して十分に長くなる。これにより、レーザレーダ装置20の周囲に広い空間を用意することなく、内部反射に応じた波形S1のみを確実に検出することができる。
【0052】
特に、光導波路31の端部31bには低反射率体33が設けられているため、光導波路装置30からの反射光L3の光量が抑制されるので、波形S2の振幅が小さくなる。このため、波形S2と波形S1とがより判別し易くなり、波形S1のみを確実に検出することができる。
【0053】
このようにして、出射方向ごとに内部反射に応じた波形S1がそれぞれ検出されると、各出射方向における反射光L3の検出に関する閾値が、その出射方向における波形S1の振幅に対してそれぞれ所定量大きな値に校正されて、制御回路29のメモリ等にそれぞれ記憶される。これにより、図4(B)に示すように、検出物体が近接していることから内部反射に応じた波形S1と当該検出物体にて反射された反射光L3に応じた波形S2とが重なる場合であっても、その出射方向に応じて上述のように校正された閾値(図4(B)では符号Xにて示す)を用いることで、内部反射の影響を確実に除去することができる。
【0054】
以上説明したように、本第1実施形態に係る光導波路装置30では、レーザレーダ装置20から窓部22を透過したレーザ光L0が導入口31aから入射する光導波路31が設けられており、この光導波路31は、その全長が導入口31aと窓部22との間の距離に対して長くなるように複数回巻回されて構成されている。
【0055】
このため、レーザレーダ装置20からのレーザ光L0は、複数回巻回された光導波路31に導光されることで、このレーザ光L0が光導波路31の端部31bで反射した後に導入口31aを介して反射光L3として窓部22を透過する場合でも、上記導光時間を長くすることができる。このような光導波路装置30をレーザレーダ装置20の内部反射測定用として用いることにより、レーザ光L0が反射光L3として装置内へ入射して検出されるまでの時間を、このレーザ光L0の出射に起因する内部反射を検出するまでの時間に対して十分長くすることができるので、内部反射の影響を精度良く測定することができる。
【0056】
また、本第1実施形態に係る光導波路装置30では、光導波路31の端部31bには、低反射率体33が設けられているため、この低反射率体33ではレーザ光の反射が抑制されるので、導入口31aを介して窓部22を外方から透過する反射光L3の光量が抑制されて、内部反射の影響をより精度良く測定することができる。
【0057】
さらに、本第1実施形態に係る光導波路装置30は、そのレーザ光L0の出射方向が軸28aに直交する面に沿い当該軸28aを中心に所定の角速度で変化するレーザレーダ装置20が対象であり、このレーザレーダ装置20を当該所定の角速度に応じて逆方向に回転させることでレーザ光L0の出射方向を一定にする回転機構40が設けられている。これにより、上述のようなレーザレーダ装置20であってもレーザ光L0の出射方向が一定になるので、レーザレーダ装置20からのレーザ光L0を確実に導入口31aに導光することができる。
【0058】
さらにまた、本第1実施形態に係る光導波路装置30では、光導波路31は、導光されるレーザ光L0が直進する直進部32aとこのレーザ光L0を偏向させる偏向ミラー32bとからなる導光部32を複数連結させて構成されている。これにより、導光部32の偏向角度に応じた直進部同士の連結を繰り返すことで、狭い空間であっても多くの直進部32aが連結されて各直進部32aにより構成される光導波路31の全長を長くすることができる。
【0059】
また、本第1実施形態に係る光導波路装置30では、光導波路31は、直進部32aが導入口31aから離れるほど拡径するように形成されるため、導入口31aから導光されたレーザ光L0が拡散する場合でも直進部32aの内壁にて反射されにくくなる。これにより、レーザ光L0が光導波路31の長手方向中間部位にて反射されることで上記導光時間が短くなることを抑制することができる。
【0060】
また、本第1実施形態に係る校正システム10では、上述のような光導波路装置30の光導波路31にレーザレーダ装置20の窓部22を透過したレーザ光L0を導光することで、レーザ光L0が反射光L3として装置内に入射して検出されるまでの時間を、このレーザ光L0の出射に起因する内部反射を検出するまでの時間に対して十分長くすることができる。このため、レーザ光L0の出射に起因するレーザレーダ装置20の筐体21内での内部反射のみを正確に測定することができ、この測定結果に基づいて反射光L3の検出に関する閾値を好適に校正することができる。したがって、このように校正されたレーザレーダ装置20では、比較的短時間で反射光が検出された場合であっても、この反射光が、近接した検出物体からの反射光L3か内部反射によるものかを容易に判別することができる。
【0061】
なお、上記第1実施形態の変形例として、光導波路31は、光ファイバ34により形成されてもよい。これにより、この光ファイバ34を、図5に示すように、螺旋状に複数回巻回することで、狭い空間であっても光導波路31の全長を長くすることができる。なお、光導波路31として光ファイバ34を採用する場合には、光導波路31の内径が一定になるので、低反射率体33に代えて減衰器を採用してもよい。
【0062】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光導波路装置とこの光導波路装置を用いてレーザレーダ装置を校正する校正システムについて図6を参照して説明する。
本第2実施形態に係る校正システム10aでは、回転機構40に代えて、凹型ミラー50および集光レンズ60を採用している点が、上記第1実施形態に係る校正システムと異なる。したがって、第1実施形態の校正システムと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図6に示すように、凹型ミラー50は、レーザレーダ装置20の周囲であって窓部22の略半面を覆うように配置されている。この凹型ミラー50は、レーザレーダ装置20から出射方向が変化するように出射されるレーザ光L0のうち、所定の出射方向範囲のレーザ光L0を集光して所定の位置に向けて反射するように形成されている。具体的には、凹型ミラー50は、その反射面51がレーザレーダ装置20の軸28aまでの距離が当該軸28aに直交する面と交わる部位ごとに等しくなるように、放射曲面状に形成されている。
【0064】
また、集光レンズ60は、凹型ミラー50により反射されたレーザ光L0を集光して平行光として光導波路装置30の導入口31aに導光するように配置されている。なお、凹型ミラー50および集光レンズ60は、特許請求の範囲に記載の「集光手段」および「平行光偏向手段」の一例に相当し得る。
【0065】
このように構成される校正システム10aでは、以下に示すように、レーザレーダ装置20ごとに、出射方向ごとの反射光の検出に関する閾値を校正している。
レーザレーダ装置20からレーザ光L0が出射されると、凹型ミラー50の反射面51にて反射されたレーザ光L0は、集光レンズ60により集光して平行光として光導波路装置30の導入口31aに導光される。これにより、光導波路31内に導光されたレーザ光L0が光導波路31の端部31bで反射された後に導入口31aを介して反射光L3として集光レンズ60および凹型ミラー50を介して窓部22を透過する場合でも、上記導光時間が長くなる。これにより、上記第1実施形態と同様に、レーザレーダ装置20の周囲に広い空間を用意することなく、内部反射に応じて検出される波形S1のみを確実に検出することができる。
【0066】
このようにして、上記所定の出射方向範囲において出射方向ごとに内部反射に応じた波形S1がそれぞれ検出されると、これら各出射方向における反射光L3の検出に関する閾値が、その出射方向における波形S1の振幅に対してそれぞれ所定量大きな値に校正されて、制御回路29のメモリ等に記憶される。
【0067】
なお、上記所定の出射方向範囲と異なる出射方向では、レーザ光L0が光導波路装置30の導入口31aに導光されないため、波形S1を検出しない。上記異なる出射方向における閾値を校正する場合には、上記異なる出射方向のレーザ光L0が凹型ミラー50および集光レンズ60にて光導波路装置30の導入口31aに導光されるように、例えば、校正作業者によりレーザレーダ装置20を回転させて配置した後に、上記校正が実施される。
【0068】
以上説明したように、本第2実施形態に係る光導波路装置30および校正システム10aでは、出射方向が変化するレーザ光L0がレーザレーダ装置20の周囲に配置される凹型ミラー50にて所定の位置に集光されて集光レンズ60により平行光として光導波路装置30の導入口31aに導光される。これにより、上述のようなレーザレーダ装置20であっても出射方向が変化するレーザ光L0が所定の位置に集光されて平行光となるので、レーザレーダ装置20からのレーザ光L0を容易かつ確実に導入口31aに導光することができる。
【0069】
また、本第2実施形態に係る光導波路装置30および校正システム10aでは、凹型ミラー50の反射面51は、レーザレーダ装置20の軸28aまでの距離が当該軸28aに直交する面と交わる部位ごとに等しくなるように、放射曲面状に形成されるため、出射方向が変化するレーザ光L0を上記所定の位置に向けて確実に反射させることができる。
【0070】
さらに、本第2実施形態に係る光導波路装置30および校正システム10aでは、集光レンズ60は、凹型ミラー50からのレーザ光L0を集光して平行光とする集光レンズであるため、簡易な構成で凹型ミラー50からのレーザ光L0を平行光とすることができる。
【0071】
なお、上記第2実施形態の変形例として、凹型ミラー50の反射面51は、出射方向が変化するレーザ光L0を全て集光レンズ60に向けて反射して集光するように環状に形成されてもよい。これにより、レーザレーダ装置20からのレーザ光L0を全ての出射方向において光導波路装置30の導入口31aに導光することができる。
【0072】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記各実施形態における校正システム10,10aは、レーザ光L0の出射方向が変化するレーザレーダ装置20を校正対象とすることに限らず、レーザ光L0の出射方向が変化しないレーザレーダ装置を校正対象としてもよい。
【0073】
(2)光導波路装置30の光導波路31は、複数連結された導光部32や光ファイバ34を複数回巻回させて構成されることに限らず、レーザ光L0を導光可能な導波路を複数回巻回させて構成されてもよい。
【0074】
(3)光導波路31を複数回巻回させる状態とは、螺旋状や同心円状に配置される状態など、限られた空間を3次元的に有効に活用可能な配置状態を含むものとする。
【符号の説明】
【0075】
10…校正システム
20…レーザレーダ装置
30…光導波路装置
31…光導波路
31a…導入口
32…導光部
32a…直進部
32b…偏向ミラー
33…低反射率体
34…光ファイバ
40…回転機構
50…凹型ミラー(集光手段)
51…反射面
60…集光レンズ(平行光偏向手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓部を透過したレーザ光が検出物体にて反射した反射光を検出することで当該検出物体までの距離を測定するレーザレーダ装置に対して、前記窓部を透過したレーザ光を導光するための光導波路装置であって、
前記レーザ光が導入口から入射する光導波路を備え、
前記光導波路は、その全長が前記導入口と前記窓部との間の距離に対して長くなるように複数回巻回されて構成されることを特徴とする光導波路装置。
【請求項2】
前記光導波路の両端部のうち前記導入口とは反対側の端部には低反射率体が設けられることを特徴とする請求項1に記載の光導波路装置。
【請求項3】
前記レーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化する前記レーザレーダ装置を、当該所定の角速度に応じて回転させることで前記レーザ光の出射方向を一定にする回転機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路装置。
【請求項4】
前記レーザ光の出射方向が回転軸に直交する面に沿い当該回転軸を中心に所定の角速度で変化する前記レーザレーダ装置に対して周囲に配置されて、前記レーザ光を反射して集光する集光手段と、
前記集光手段により集光された前記レーザ光を平行光にして前記導入口に導光する平行光偏向手段と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路装置。
【請求項5】
前記集光手段の反射面は、前記回転軸までの距離が当該回転軸に直交する面と交わる部位ごとに等しくなるように、放射曲面状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の光導波路装置。
【請求項6】
前記反射面は、出射方向が変化するレーザ光を全て前記平行光偏向手段に向けて反射して集光するように形成されることを特徴とする請求項5に記載の光導波路装置。
【請求項7】
前記平行光偏向手段は、前記集光手段からの前記レーザ光を集光して前記平行光とする集光レンズであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項8】
前記光導波路は、導光されるレーザ光が直進する直進部とこのレーザ光を偏向させる偏向ミラーとからなる導光部を複数連結させて構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項9】
前記光導波路は、前記直進部が前記導入口から離れるほど拡径するように形成されることを特徴とする請求項8に記載の光導波路装置。
【請求項10】
前記光導波路は、光ファイバにより形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光導波路装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光導波路装置の前記光導波路に前記レーザレーダ装置の前記窓部を透過したレーザ光を導光することで、当該レーザ光の出射に起因する当該レーザレーダ装置の筐体内での内部反射の影響を測定し、この測定結果に基づいて前記反射光の検出に関する閾値を校正することを特徴とする校正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−122999(P2011−122999A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282531(P2009−282531)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】