説明

光強度変調器

【課題】光の位相変調を効率よく行うことができ、簡便な構成からなる電気光学素子を提供する。
【解決手段】光強度変調器は、電気光学効果を有する電気光学結晶と、該電気光学結晶の入射側の光軸上に配置された偏光子と、前記電気光学結晶の出射側の光軸上に配置された検光子と、前記電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアに対してショットキー接触となる材料からなり、前記電気光学結晶の内部に電界を発生させる、正極と負極とからなる電極対とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学素子に関し、より詳細には、電気光学結晶の電界を制御することにより結晶の屈折率を変化させ、光の進行方向を変えたり、光の位相を変えることができる電気光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プロジェクターをはじめとする映像機器、レーザプリンタ、高分解能な共焦点顕微鏡、バーコードリーダ等において、レーザ光を偏向するための光制御素子に対する要求が高まっている。光を偏向する技術として、ポリゴンミラーを回転させる技術、ガルバノミラーにより光の偏向方向を制御する技術、音響光学効果を利用した光回折技術、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれるマイクロマシーン技術が提案されている。
【0003】
ポリゴンミラーは、多面体の形状を有するミラーを機械的に回転させ、レーザ光の反射方向を連続的に変化させて光を偏向させる。ポリゴンミラーを用いた方法は、機械的な回転を利用しているため、回転速度に制限がある。すなわち、ポリゴンミラーは、10000rpm以上の回転数を得ることは困難とされており、高速動作が必要な応用には適さないという欠点があった。ポリゴンミラーを用いた方法が、レーザプリンタのレーザ光の偏向に利用されている。しかし、ポリゴンミラーの回転速度の制限は、プリンタの印刷速度の高速化においてボトルネックとなっている。プリンタの印刷速度をさらに向上させるためには、より高速な光偏向技術が求められる。
【0004】
ガルバノミラーは、レーザ光を偏向走査するレーザスキャナ等に利用されている。従来の実用的なガルバノミラーは、例えば、磁界中に配置する可動コイルの代わりになる可動鉄片と、その周囲に2つの永久磁石と4つの磁極を設けた磁性体とにより構成された磁路を有する。この磁性体に巻回した駆動コイルに流す電流の大小及び方向によって、磁極間の磁束を変化させることにより、可動鉄片を介して反射鏡を揺動させ、レーザ光を偏向走査する。ガルバノミラーを用いた方法は、ポリゴンミラーよりも高速な動作が可能である。しかし、従来のガルバノミラーは、駆動コイルが機械巻き等であることから、小型化することが難しい。従って、ガルバノミラーを用いたレーザスキャニングシステム、およびこのシステムを用いるレーザ応用機器のより一層の小型化が難しい。また、消費電力が大きいという欠点がある。さらに、MHz単位の周期で高速動作させることができないという欠点もある。
【0005】
音響光学効果を利用した光回折型の光偏向器が実用化されている。しかし、この光回折型の光偏向器を用いた方法は、消費電力が大きく、小型化が困難である。また、大きい偏向角を得たり、高速動作を行うことが難しいという欠点がある。また、MEMSを用いた方法は、光偏向素子として微細なミラーを静電的に駆動するため、数十μsecの応答が限界である。
【0006】
従来、電気光学結晶を用いた様々な光機能部品が実用化されている。これら光機能部品は、電気光学結晶に電圧を印加すると、電気光学効果により結晶の屈折率が変化することを利用している。そこで、上記の課題を解決する手段として、電気光学結晶の電極に電圧を印加して、電気光学効果によりビームを偏向させる技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、プリズム形状に加工した電気光学結晶、またはプリズム形状の電極が形成された電気光学結晶を用いてビームを偏向させる技術が開発されている(例えば、特許文献2参照)。電気光学結晶の電極に電圧を印加すると、電気光学効果により屈折率を変化させることができる。プリズム形状に作製した電極を用いる方法は、電気光学結晶内に屈折率が変化している領域と、電圧が印加されておらず屈折率が変化していない領域とを作り出す。これら2つの領域の境界にできる屈折率差によりビームが偏向され、偏向角を得る。
【0007】
電気光学結晶を用いた方法は、電気光学効果の速度限界まで応答可能であり、GHzを超える応答が可能となる。これまでに、電気光学結晶を用いた光偏向素子として、LiNbO3(以下、LN結晶という)、PLZTを用いた報告がある。しかしながら、LN結晶を用いた素子では、電気光学効果が小さいため、5kV/mm程度の電圧を印加しても3mrad程度の偏向角しか得られないという欠点がある。更に、PLZTを用いた素子においても、20kV/mmの印加電界に対して45mrad程度の偏向角が限界である(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、従来の方法では、個々のプリズム領域の電気光学効果による屈折率変化は小さく、その屈折率変化による偏向角も小さい。従って、従来の方法において大きい偏向角を得るためには、複数のプリズムを配置する必要があった。しかしながら、複数のプリズムを配置した場合、光が大きな入射角でプリズムに入射すると、所望の解像度が得られないという問題があった。
【0009】
一方、電気光学結晶を用いた光位相変調器は、結晶の屈折率の変化により、結晶を通過する光の速度を変化させて、光の位相を変化させる。また、電気光学結晶を、マッハツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計の一方の光導波路に設置すると、結晶に印加する電圧に応じて、干渉計の出力の光強度が変化する。これら干渉計は、光スイッチ、光変調器として用いることができる。
【0010】
図1に、従来の電気光学結晶を用いた光位相変調器の構成を示す。光位相変調器は、方形の電気光学結晶1の対向する面に、正極2と負極3とが形成されている。電気光学結晶1の結晶軸x,y,zを図1に示したように規定する。電気光学効果による屈折率の変化は、1次のポッケルス効果、および2次のカー効果により与えられる。2次のカー効果の場合、垂直偏光、すなわち光の偏光方向が図1のx軸方向に対する電気光学定数は、s11であり、正極2と負極3との間に電圧Vを印加したときの位相の変化は、次式で与えられる。
【0011】
【数1】

【0012】
ここで、nは電気光学結晶1の屈折率、Lは光の伝搬方向、すなわち図1のz軸方向の電気光学結晶1の長さ、λは光の波長、dは正極2と負極3の間隔である。水平偏光、すなわち光の偏光方向が図1のy軸方向に対する電気光学定数は、s12であり、正極2と負極3との間に電圧Vを印加したときの位相の変化は、次式で与えられる。
【0013】
【数2】

【0014】
光位相変調器の効率を表す指数として、半波長電圧が用いられている。半波長電圧は、光の位相をπラジアンだけ変化させるのに要する電圧であり、次式で与えられる。
【0015】
【数3】

【0016】
次に、光位相変調器と偏光子および検光子とを組み合わせた光強度変調器について説明する。図2Aおよび2Bに、従来の光強度変調器の構成を示す。図2Aに示したように、電気光学結晶1は、対向する面に正極2と負極3とが形成されている。電気光学結晶1の入射側に偏光子4を配置し、出射側に検光子5を配置する。偏光子4を通過した光の電界成分のうち、x軸に平行な成分をEx、y軸に平行な成分をEyとする。偏光子4の偏光角が、電気光学結晶1のx軸に対して45度の場合には、Ex=Eyである。
【0017】
正極2と負極3との間に電圧Vを印加したときのExおよびEyの位相の変化は、それぞれ式(1),(2)で与えられる。検光子5の偏光角が、電気光学結晶1のx軸に対して45度の場合、検光子5を通過した出射光の強度は、次式で与えられる。
【0018】
【数4】

【0019】
ExとEyとが等しい場合には、
【0020】
【数5】

【0021】
として、次式で与えられる。
【0022】
【数6】

【0023】
このようにして、図2Bに示したように、電圧Vに応じて、検光子5を通過した出射光の強度を0%〜100%の間で変調することができる。光強度変調器の効率を表す指数として、出射光の強度を0%から100%に変化させる半波長電圧として、次式のように表す。
【0024】
【数7】

【0025】
しかしながら、従来の電気光学結晶では、電気光学定数が小さく、実用的な光位相変調器、光強度変調器を構成するためには、半波長電圧がkVオーダーになってしまう。kVオーダーの電圧を高速に変調することは、駆動回路に大きな負荷がかかり、装置の大型化が避けられないという問題があった。また、kVオーダーの電圧を高速に変調すると、高周波ノイズが発生し、周辺機器へのノイズの混入という問題も生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平10−239717号公報
【特許文献2】特開平09−159950号公報
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】菅間明夫、外5名、「EO導波路偏向型光スイッチの開発」、電子情報通信学会信学技報、社団法人電子情報通信学会、2004年10月、PN2004−59、p.61−64
【非特許文献2】Toshihiro Itoh, Masahiro Sasaura, Seiji Toyoda, Katsue Manabe, Koichiro Nakamura and Kazuo Fujiura, ”High-frequency response of electro-optic single crystal KTaxNb1-xO3 in paraelectric phase,”in Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science and Photonic Applications, Systems and Technologies 2005 (Optical Society of America, Washington, DC, 2005), JTuC36
【非特許文献3】P. S. Chen, et al., ”Light Modulation and Beam Deflection with Potassium Tantalate-Niobate Crystals,” Journal of Applied Physics, 1966, Vol.37, no.1, pp.388-398
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、光の位相変調を効率よく行うことができ、簡便な構成からなる電気光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の電気光学素子においては、電気光学結晶に電圧を印加することにより、電気光学結晶の内部に空間電荷を生じさせ、入射するビームの光軸に対して垂直な断面に電界の傾斜を生じさせる。この電界の傾斜を制御することにより、光偏向器のビームの偏向を大きくすることができる。また、ビームの偏向を小さく、垂直偏光と水平偏光との間でずれ角を小さくすることにより、光位相変調器の光の位相変調を効率よく行うことができる。
【0030】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施態様は、電気光学効果を有する電気光学結晶と、該電気光学結晶の入射側の光軸上に配置された偏光子と、前記電気光学結晶の出射側の光軸上に配置された検光子と、前記電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアに対してショットキー接触となる材料からなり、前記電気光学結晶の内部に電界を発生させる、正極と負極とからなる電極対とを備えた光強度変調器である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、従来の電気光学結晶を用いた光位相変調器の構成を示す図である。
【図2A】図2Aは、従来の光強度変調器の構成を示す図である。
【図2B】図2Bは、従来の光強度変調器の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、電極材料Ptの光強度変調器の動作特性を示す図である。
【図4】図4は、電極材料Tiの光強度変調器の動作特性を示す図である。
【図5】図5は、光強度変調器において屈折率の変化に傾斜が生じた場合を示す図である。
【図6A】図6Aは、結晶内部の電荷による電界傾斜の発生原理を示す図である。
【図6B】図6Bは、結晶内部の電荷による電界傾斜の発生原理を示す図である。
【図7】図7は、電界傾斜による光の偏向の原理を示す図である。
【図8】図8は、x0と電界Eの空間分布との関係を示す図である。
【図9】図9は、カー効果による屈折率変化Δnの分布を示す図である。
【図10】図10は、電極材料の仕事関数と偏向角との関係を示す図である。
【図11】図11は、電極材料の仕事関数とずれ角との関係を示す図である。
【図12】図12は、電気光学結晶の比誘電率と偏向角との関係を示す図である。
【図13】図13は、印加電界を変化させたときの偏向角の比誘電率依存性を示す図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態にかかる電気光学素子の偏向角と、従来のプリズムの偏向角とを示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施例1にかかる平行平板電極型電気光学素子を示す図である。
【図16】図16は、偏向されたビームの偏向角と印加電圧の関係を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施例1にかかる電気光学結晶中を流れる電流と印加電圧との関係を示す図である。
【図18】図18は、本発明の実施例2にかかる水平電極型電気光学素子を示す図である。
【図19】図19は、本発明の実施例2にかかるKLTN結晶中を流れる電流と印加電圧の関係を示す図である。
【図20】図20は、本発明の実施例3にかかる光ビーム偏向器を示す図である。
【図21】図21は、本発明の実施例3にかかる光ビーム偏向器の屈折率変化量の分布を示す図である。
【図22】図22は、本発明の実施例4にかかる光強度変調器の構成を示す図である。
【図23A】図23Aは、本発明の実施例5にかかるビーム偏向器の構成を示す図である。
【図23B】図23Bは、実施例5にかかるビーム偏向器のビームの伝搬経路を示す図である。
【図24】図24は、実施例5にかかるビーム偏向器の印加電圧と偏向角との関係を示す図である。
【図25A】図25Aは、本発明の実施例6にかかるビーム偏向器の構成を示す図である。
【図25B】図25Bは、実施例6にかかるビーム偏向器のビームの伝搬経路を示す図である。
【図26】図26は、本発明の実施例7にかかるビーム偏向器の構成を示す図である。
【図27】図27は、本発明の実施例8にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す図である。
【図28】図28は、本発明の実施例9にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す図である。
【図29A】図29Aは、本発明の実施例10にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す斜視図である。
【図29B】図29Bは、本発明の実施例10にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す上面図である。
【図29C】図29Cは、本発明の実施例10にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す側面図である。
【図30】図30は、本発明の実施例11にかかる光ピックアップ装置の構成を示す図である。
【図31A】図31Aは、本発明の実施例12にかかるレーザプリンタの構成を示す図である。
【図31B】図31Bは、比較のために従来のレーザプリンタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(電気光学結晶の材料)
ビームの偏向を効率的に大きく、および位相変調を効率よく行うためには、1次の電気光学定数であるポッケルス定数rij、または2次の電気光学定数であるカー定数sijが大きい電気光学結晶を用いることが望ましい。そのような電気光学定数の大きい電気光学結晶としては、例えば、大きなポッケルス定数rijを有する強誘電相のKLTN結晶、大きなカー定数sijを有する常誘電相のKLTN結晶が挙げられる。KLTN結晶とは、K1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1)なる結晶である。
【0033】
その他に電気光学定数の大きい電気光学結晶としては、LiNbO3(以下、LNという)、LiTaO3、LiIO3、KNbO3、KTiOPO4、BaTiO3、SrTiO3、Ba1-xSrxTiO3(0<x<1)、Ba1-xSrxNb26(0<x<1)、Sr0.75Ba0.25Nb26、Pb1-yLayTi1-xZrx3(0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3、KH2PO4、KD2PO4、(NH4)H2PO4、BaB24、LiB35、CsLiB610、GaAs、CdTe、GaP、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、およびZnOの電気光学結晶が挙げられる。
【0034】
図2Bに示した光強度変調器の電気光学結晶1として、KLTN結晶を用いた場合について説明する。KLTN結晶からなる電気光学結晶1を、縦6mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)に切り出し、縦5mm×横4mmの電極を対向する面に取り付ける。KLTN結晶において電気伝導に寄与するキャリアは電子である。電極材料は、Pt、Tiの2種類を用意する。KLTN結晶は、立方晶から正方晶への相転移付近において、大きな電気光学定数を有する。KLTN結晶の相転移温度は、55℃であり、電気光学結晶1の温度を60℃に設定する。正負電極間に58Vの電圧を印加したとき、出射光の偏光方向が入射光の偏光方向に対して、90度回転する。
【0035】
図3に、電極材料Ptの光強度変調器の動作特性を示す。正極2と負極3との間の印加電圧が増大するのに伴って、出射光がオンオフを繰り返し、光スイッチとして機能していることがわかる。図4に、電極材料Tiの光強度変調器の動作特性を示す。印加電圧が増大するのに伴って、出射光の強度は変化するが、オンオフ時の光強度の比(以下、消光比という)が劣化しているのがわかる。
【0036】
光スイッチにおいて、消光比が劣化した原因について考察したところ、電気光学結晶に電圧を印加することにより、電気光学結晶の内部に空間電荷が生じ、電圧の印加方向に電界の傾斜が生じるために、屈折率の変化にも傾斜が生じるためとわかった。図5に、光強度変調器において屈折率の変化に傾斜が生じた場合を示す。電気光学効果は、偏光依存性があるために、垂直偏光と水平偏光に対する屈折率変化の傾斜も異なる。KLTN結晶では、垂直偏光と水平偏光に対するカー定数が、s11:s12=10:−1程度であるため、垂直偏光の出射角のみが大きく変化する。従って、結晶に印加する電圧Vの増加に伴って、垂直偏光と水平偏光のずれ角が大きくなり、図4に示したように、消光比が劣化する。
【0037】
(電界の傾斜が発生する原理)
以下に、電圧の印加によって電界の傾斜が発生する原理について説明する。電気光学結晶に電圧を印加すると、結晶の高電界電気伝導に伴う空間電荷が発生する。ここでいう高電界電気伝導とは、電圧と電流の関係がオームの法則からはずれ、電流が電圧に対して非線形に増大する空間電荷制限状態にある領域における電気伝導をいう。この空間電荷制限状態にある領域では、電極から注入される電流に対して結晶内のバルク電流が小さい場合、結晶内に空間電荷が形成される。
【0038】
図6Aおよび6Bに、結晶内部の電荷による電界傾斜の発生原理を示す。図6Aおよび6Bに示すいずれの素子も、正極2と負極3とで平行に挟まれた、電気光学結晶1を備えている。また、縦軸を負極3から正極2への距離とし、横軸を電気光学結晶1内の電界の強さとするグラフを示す。図6Aは、電気光学結晶1内に空間電荷が存在せず、電界が一定の場合を示す。この場合、正極2と負極3との間の全空間にわたって電界は一定である。一方、図6Bは、電気光学結晶1内の空間電荷によって空間電荷制限状態が発生した場合を示す。空間電荷制限状態では、電気光学結晶1内に発生した空間電荷によって電界が終端され、電気光学結晶1内の電界分布に傾斜が生じる。この空間電荷は、電気光学結晶1の組成によって正電荷および負電荷のどちらか一方、または正電荷および負電荷の両方であり得る。
【0039】
図7に、電界傾斜による光の偏向の原理を示す。図7において、x軸方向は、電気光学結晶1の厚さ方向(図6Aおよび6Bにおける正極2から負極3に、または負極3から正極2に向かう方向)である。電気光学結晶1の厚さ方向(x軸方向)に線形に変化する屈折率n(x)を、x=0における屈折率をnとし、xにおける屈折率nからの屈折率の変化量をΔn(x)として、n(x)=n+Δn(x)とする。光軸に対して垂直な断面における直径がDであるビームが、電気光学結晶1の中を通過する場合、ビームの上端と下端とでの屈折率差は、Δn(D)−Δn(0)で与えられる。ビームが通過する屈折率に傾斜がある部分の長さ、すなわち相互作用長Lとすると、長さLを伝搬後のビームの上端と下端とでの等位相面4にはずれ5が生じる。その上端と下端との等位相面4のずれ5の距離は、次式で与えられる。
【0040】
【数8】

【0041】
このときビームの伝搬方向6の傾きθは、ずれ5の量がビームの光軸に対して垂直な断面における直径より十分小さいとすると次式となる。
【0042】
【数9】

【0043】
これが電気光学結晶1の端面から屈折率が1と近似できる外部に出射すると、電気光学結晶1と外部との境界面で屈折し、入射光の光軸からのトータルの偏向角は次式となる。
【0044】
【数10】

【0045】
ここで電気光学効果による屈折率の変化を考える。電気光学効果による屈折率の変化は1次のポッケルス効果、2次のカー効果においてそれぞれ次式で与えられる。
【0046】
【数11】

【0047】
結晶中に電荷を生じさせ、その電荷により電極から発した電界を接地電極に到達する前に終端することによって電界が結晶の厚さ方向で変化している場合で、その電界がE(x)で表されるとすると、偏向角θは次式となる。
【0048】
【数12】

【0049】
これらの式は電界E(x)がxに依存して変化している場合には、ゼロでない偏向角が生じることを示している。
【0050】
図6Bのように、空間電荷制限状態にある厚さdの電気光学結晶1に正極2と接地された負極3との間に電圧Vを印加すると、以下の式で表される電界Eの空間分布が現れる。
【0051】
【数13】

【0052】
ここでxは、負極から対向する正極に向かう方向における負極と接する電気光学結晶1の側面からの位置であり、x0は電気光学結晶と電極の物質により決まる定数である。
【0053】
ここで、電界Eを以下の式で近似すると、
【0054】
【数14】

【0055】
電気光学効果を通じて誘起される屈折率変化Δnは、1次のポッケルス効果、2次のカー効果の場合において、式(10)、(11)に式(14)を代入することによって、以下の式で与えられる。
【0056】
【数15】

【0057】
したがって式(12)、(13)、(16)、(17)から偏向角θ(x)は次式となる。
【0058】
【数16】

【0059】
以上より、電気光学結晶に電圧を印加することにより、電気光学結晶の内部に空間電荷を生じさせ、入射するビームの光軸に対して垂直な断面に電界の傾斜を生じさせる。この電界の傾斜により、屈折率の変化量に傾斜を生じさせ、ビームの光軸に対して垂直な断面上の光の進行速度分布に傾斜を生じさせる。結果として、光が結晶中を伝搬する間、光の進行方向は、屈折率の傾斜に応じて連続的に変化させられ、偏向角を累積することになる。一方、電圧の印加方向に電界の傾斜が生じるために、ビームの偏向は、垂直偏光と水平偏光との間でずれ角が生じることがわかる。従って、電界の傾斜を大きくすれば、光偏向器のビームの偏向を効率的に大きくすることができ、電界の傾斜を小さくすれば、光位相変調器の光の位相変調を効率よく行うことができる。
【0060】
次に、式(14)に注目すると、x0は電極から電気光学結晶へのキャリアの注入効率に依存する量であり、x0が小さいほど注入効率が高くなる。x0が小さくできれば、正極と負極との間の電界の差が大きくなり、それに伴い屈折率の傾斜も大きくなることから、ビームの偏向を効率的に大きくすることができる。一方、x0を大きくできれば、正極と負極との間の電界の差が小さくなり、それに伴い屈折率の傾斜も小さくなることから、ビームの偏向を小さく、垂直偏光と水平偏光との間でずれ角を小さくすることができる。
【0061】
(電極材料の仕事関数)
図8に、x0と電界Eの空間分布との関係を示す図である。また、図9に、カー効果による屈折率変化Δnの分布を示す。KLTN結晶からなる屈折率2.2の電気光学結晶を用いて、正負電極間の距離0.5mm、電極長さ5.0mmとした。印加電圧は、100Vであり、2次の電気光学定数sijは、2.85×10152/V2である。x0=0のとき、屈折率の傾斜が最も大きくなることがわかる。x0=0とは、図8のx=0のとき、負極において電界が0であることからも分かるように、電極と電気光学結晶とが理想的なオーミック接触であればよい。
【0062】
KLTN結晶からなる電気光学結晶を、縦6mm×横5mm×厚さ0.5mmに切り出し、縦5mm×横4mmの電極を対向する面に取り付ける。KLTN結晶において電気伝導に寄与するキャリアは電子である。電極材料は、Ti、Cr、Au、Ptの4種類を用意する。正負電極間に100Vの電圧を印加したとき、縦方向に進行する光の偏向角度を測定する。
【0063】
図10に、電極材料の仕事関数と偏向角との関係を示す。図中の点線Aは、電子の注入効率が最大のときの偏向角、すなわち図8に示したx=0のときの偏向角である。従って、電極材料が、Ti、Crの場合には、理想的なオーミック接触が実現され、注入効率が最大となる。電極材料の仕事関数が大きくなるにつれて、ショットキー接触に近づき、キャリアの注入効率は減少する。このことから、光偏向器の場合には、電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが電子の場合には、電極材料の仕事関数は、5.0eV未満であることが好ましい。従って、電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが正孔の場合には、電極材料の仕事関数は、5.0eV以上であることが好ましい。
【0064】
次に、上述したKLTN結晶からなる電気光学結晶の正負電極間に100Vの電圧を印加し、垂直偏光と水平偏光との間のずれ角を測定する。図11に、電極材料の仕事関数とずれ角との関係を示す。図中の点線Aは、電子の注入効率が最大のときの垂直偏光と水平偏光との間のずれ角である。光位相変調器の場合には、上述した光偏向器の場合とは逆に、電極材料が、Au、Ptの場合には、伝導電子の注入が抑えられ、ずれ角が小さくなっている。このことから、電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが電子の場合には、電極材料の仕事関数は、5.0eV以上であることが好ましい。一方、電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが正孔の場合には、電極材料の仕事関数は、5.0eV未満であることが好ましい。
【0065】
仕事関数が5.0eV未満の電極材料として、Cs(2.14)、Rb(2.16)、K(2.3)、Sr(2.59)、Ba(2.7)、Na(2.75)、Ca(2.87)、Li(2.9)、Y(3.1)、Sc(3.5)、La(3.5)、Mg(3.66)、As(3.75)、Ti(3.84)、Hf(3.9)、Zr(4.05)、Mn(4.1)、In(4.12)、Ga(4.2)、Cd(4.22)、Bi(4.22)、Ta(4.25)、Pb(4.25)、Ag(4.26)、Al(4.28)、V(4.3)、Nb(4.3)、Ti(4.33)、Zn(4.33)、Sn(4.42)、B(4.45)、Hg(4.49)、Cr(4.5)、Si(4.52)、Sb(4.55)、W(4.55)、Mo(4.6)、Cu(4.65)、Fe(4.7)、Ru(4.71)、Os(4.83)、Te(4.95)、Re(4.96)、Be(4.98)、Rh(4.98)のいずれかを用いることができる。()内は仕事関数を示す。また、上記材料を複数用いた合金であってもよい。例えば、Tiの単層電極は酸化して高抵抗になるので、一般的には、Ti/Pt/Auを積層した電極を用いて、Tiの層と電気光学結晶とを接合させる。さらに、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnOなどの透明電極を用いることもできる。
【0066】
仕事関数が5.0eV以上の電極材料として、Co(5.0)、Ge(5.0)、Au(5.1)、Pd(5.12)、Ni(5.15)、Ir(5.27)、Pt(5.65)、Se(5.9)を用いることができる。また、上記材料を複数用いた合金であってもよい。
【0067】
(電気光学結晶の誘電率)
KLTN結晶からなる電気光学結晶を、縦6mm×横5mm×厚さ0.5mmに切り出し、縦5mm×横4mmの電極を対向する面に取り付ける。電極材料は、Crとする。図12に、電気光学結晶の比誘電率と偏向角との関係を示す。正負電極間に200V/mmの電界を印加したとき、縦方向に進行する光の偏向角度を測定する。このとき、電気光学結晶の温度を変化させて、誘電率を変化させながら測定した結果を示す。
【0068】
偏向角は、正極と負極の屈折率変化量の差、すなわち図9に示した直線の傾きに比例する。屈折率変化量は、2次の電気光学効果の場合、誘電率の2乗に比例する。従って、偏向角は、比誘電率の2乗に比例するので、図12に示した実測値を、2次関数でフィッティングした結果を合わせて示す。また、2次の電気光学効果の場合、屈折率変化量は、印加電界の2乗に比例するので、図12に示した結果をもとに、印加電界を変化させたときの偏向角の比誘電率依存性を図13に示す。
【0069】
図14を参照して、本発明の一実施形態にかかる電気光学素子の偏向角と、従来のプリズムの偏向角とを比較する。実線Aは、上述したKLTN結晶からなる電気光学結晶の正負電極間に500V/mmの電界を印加し、電気光学結晶の温度を変化させたときの比誘電率を示す。点線Bは、従来のLNプリズムに、500V/mmの電界を印加したときの偏向角=0.3mradである。従って、比誘電率が500以上のKLTN結晶からなる電気光学結晶を空間電荷制限状態で用いれば、同じ印加電界で、同等の偏向角を得ることができる。また、図14に示したように、比誘電率が10000を超えると、偏向角の比誘電率依存性は小さくなるので、電気光学結晶の比誘電率は、40000以下でよい。
【0070】
本実施形態においては、電気光学結晶の電気光学効果である、ポッケルス効果およびカー効果のいずれか一方、またはポッケルス効果およびカー効果の両方を発現する状態にすることが重要である。ポッケルス効果によってビームを偏向させる場合は、ビームの位置に依存して偏向角が変化する素子を実現する。一方、カー効果を利用してビームを偏向させる場合には、ビームの位置に関わらず偏向角が一定の素子を実現することができる。さらに、屈折率変化量を大きくするためには、電極から電気光学結晶へのキャリアの注入効率を高める必要があり、電極の材料を適切に選択する。以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【実施例1】
【0071】
図15に、本発明の実施例1にかかる平行平板電極型電気光学素子を示す。KLTN結晶(K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=約0.40、y=約0.001)を矩形に切り出し、4面を研磨した電気光学結晶11を用意する。電気光学結晶11の上面と下面とにTi/Pt/Auの正極12および負極13を形成する。電気光学結晶11のサイズは、縦6mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)であり、電極のサイズは、縦5mm×横4mmである。本明細書においてTi/Pt/Auは、最下層のTi上にPt、Auがこの順で積層されていることを表す。
【0072】
KLTN結晶は、立方晶から正方晶への相転移付近で大きな電気光学定数を有する電気光学結晶である。実施例1において用いたKLTN結晶の相転移温度は55℃であるので、ペルチェ素子と測温抵抗とを用いて、この素子の温度を相転移温度から約5℃高い60℃に設定する。これにより、KLTN結晶の電気光学効果をカー効果とすることができる。このように、電気光学結晶における電気光学効果の発現は、電気光学結晶内部の温度に依存する。従って、電気光学素子内部の環境温度が電気光学結晶の電気光学効果を発現する温度でない場合、電気光学結晶を所望の温度に保つ温度調節手段を設ける必要がある。
【0073】
He−Neレーザからの出力光を、電気光学結晶11の一方の端面から入射する。電気光学結晶11の透過領域にある光であれば、どのような波長に対しても適用することができる。入射光の偏光成分は、偏光板と半波長板を用いて電界に平行な偏光軸方向の成分のみとする。入射光は、正極12および負極13に印加する直流電圧に応じて、偏向角が変化する。図16に、偏向されたビームの偏向角と印加電圧の関係を示す。+250Vの印加電圧に対して最大108mrad、−190Vの印加電圧に対して最大−85mradの偏向角が得られる。すなわち、トータルで200mradに近い偏向角を実現することができる。
【0074】
図17に、電気光学結晶11中を流れる電流と印加電圧との関係を示す。正極12および負極13に印加する直流電圧に対して、電気光学結晶11を流れる電流が、非線形に変化していることから、電気光学結晶11内において電界の生じている領域は、空間電荷制限状態にあるといえる。
【0075】
このようにして、矩形の電気光学結晶11と、並行平板な正極12および負極13という単純で対称な構造を用いて、従来の電気光学結晶プリズムで実現できない大きな偏向角を得ることができる。また、直流電圧に替えて交流電圧を電極間に印加することにより偏向されるビームの偏向角を時間的に変化させることもできる。実施例1にかかる電気光学素子は、電気光学定数によって定まる応答周波数の範囲内(非特許文献2参照)において応答することができ、1kHz以上の高い周波数の交流電圧に対して応答することができる。
【0076】
従来、電気光学効果が大きい結晶として、KTN(KTa1-xNbx3、0<x<1)結晶が知られている。KTN結晶をプリズム形状に加工し、このKTNプリズムに497V/mmの電界を印加したとき、約10mradの偏向角を得ることができる(非特許文献3参照)。実施例1の電気光学素子は、250Vの電圧印加時(500V/mmの電界印加時)に約100mradの偏向角が得られるので、非特許文献3に記載のKTNプリズムと比べて10倍の偏向効率を実現することができる。
【実施例2】
【0077】
図18に、本発明の実施例2にかかる水平電極型電気光学素子を示す。KLTN結晶(K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=約0.40、y=約0.001)を矩形に切り出し、4面を研磨した電気光学結晶21を用意する。電気光学結晶21の上面に、Ti/Pt/Auの正極22および負極23を対向して形成する。電気光学結晶21のサイズは、縦6mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)であり、電極のサイズは、縦5mmである。
【0078】
KLTN結晶は、立方晶から正方晶への相転移付近で大きな電気光学定数を有する電気光学結晶である。実施例2において用いたKLTN結晶の相転移温度は55℃であるので、ペルチェ素子と測温抵抗とを用いて、この素子の温度を相転移温度から約5℃高い60℃に設定する。これにより、KLTN結晶の電気光学効果をカー効果とすることができる。
【0079】
He−Neレーザからの出力光を、電気光学結晶21の一方の端面から入射する。電気光学結晶21の透過領域にある光であれば、どのような波長に対しても適用することができる。入射光の偏光成分は、偏光板と半波長板を用いて、電極対がある結晶表面に平行な偏光軸方向の成分のみとする。入射光は、正極22および負極23に印加する直流電圧に応じて、偏向角が変化する。±200Vの印加電圧に対して最大±16mradの偏向角が得られる。すなわち、トータルで32mradに近い偏向角を実現することができる。
【0080】
図19に、電気光学結晶21中を流れる電流と印加電圧との関係を示す。正極22および負極23に印加する直流電圧に対して、電気光学結晶21を流れる電流が、非線形に変化していることから、電気光学結晶21内において電界の生じている領域は、空間電荷制限状態にあるといえる。
【0081】
このようにして、矩形の電気光学結晶21と、結晶表面に配置した1対の正極22および負極23という単純で対称な構造を用いて、従来の電気光学結晶プリズムで実現できない大きな偏向角を得ることができる。
【0082】
実施例1、2では、正極と負極とからなる1組の電極対を用いたが、電気光学結晶内部に空間電荷制限状態を生じさせる電圧を印加することができれば、複数の電極対を用いてもよい。これらの電極対は、Ti、Pt、Au、Cu、Ag、CrおよびPdのいずれか1つ、または2つ以上の合金を選択し、電気光学結晶の表面から、それぞれ単独または合金の積層構造により形成される。
【実施例3】
【0083】
図20に、本発明の実施例3にかかる光ビーム偏向器を示す。光ビーム偏向器は、方形の電気光学結晶31の対向する面に、正極32と負極33とが形成されている。KLTN結晶からなる電気光学結晶31を、縦6mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)に切り出し、縦5mm×横4mmの電極を対向する面に取り付ける。本実施例のKLTN結晶の比誘電率は、測定温度20℃において6300である。電極材料は、Ti/Pt/Auとする。図21に、本発明の実施例3にかかる光ビーム偏向器の屈折率変化量の分布を示す。正負電極間に印加する電圧を変化させたとき、縦方向に進行する光が感じる屈折率の分布を示す。縦軸は、電圧を印加しないときの屈折率に対する変化分であり、横軸は、正極からの距離を示す。
【0084】
印加電圧の増大に伴って、正極付近の屈折率が大きく変化しているのに対して、負極付近ではほとんど変化していないことがわかる。すなわち、図8、9に示した理想的なオーミック接触(x0=0)が実現されていることがわかる。印加電圧140Vのとき、屈折率の傾きは、1mm当たり1.5×10-3である。光の進行方向の電極長さは、5mmなので、光波面は厚さ1mm当たり7.5×10-3mmの割合で傾いている。従って、印加電圧140Vのとき、入射光の光軸からの偏向角は、7.5mradを得ることができる。
【実施例4】
【0085】
図22に、本発明の実施例4にかかる光強度変調器の構成を示す。電気光学結晶41は、対向する面に正極42と負極43とが形成され、電気光学結晶41の入射側に偏光子44を配置し、出射側に検光子45を配置する。電気光学結晶41は、KLTN結晶(K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=0.40、y=0.001)からなる。電気光学結晶41の上面と下面とにPtの正極42および負極43を形成する。電気光学結晶41のサイズは、縦6mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)であり、正極42および負極43は、縦5mm×横4mmである。
【0086】
KLTN結晶の相転移温度は、55℃であり、電気光学結晶41の温度を60℃に設定する。入射光は、He−Neレーザを用いる。正負電極間に58Vの電圧を印加したとき、出射光の偏光方向が入射光の偏光方向に対して、90度回転する。正極42と負極43との間の印加電圧が増大するのに伴って、出射光がオンオフを繰り返し、図3に示した動作特性を有する光強度変調器を構成することができる。
【実施例5】
【0087】
上述した式(19)に注目すると、本発明の実施形態にかかる電気光学素子をビーム偏向素子として使用する場合、偏向角は、電気光学素子の素子長さLに比例する。従って、大きな偏向角を得るためには、電気光学素子内を通過する光の光路を長くすればよい。
【0088】
図23Aに、本発明の実施例5にかかるビーム偏向器の構成を示す。K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=約0.40、y=約0.001なるKLTN結晶51を育成し、矩形に切り出し、4面を研磨した。そのKLTN結晶51の上面と下面とにTi/Pt/Auの正極52、負極53を形成する。KLTN結晶51のサイズは、光の伝搬方向(z軸)の長さ6mm、幅(y軸)5mm、厚さ(x軸)0.5mmである。KLTN結晶51の上面と下面とに蒸着した電極の光の伝搬方向の長さは5mmである。
【0089】
また、光の入射面と出射面にAuなどの金属または誘電体多層膜からなるミラー54,55を形成する。入射光として、He−Neレーザからの出力光を、KLTN結晶51に入射する。図23Bに、正極52が形成された面から見たビームの伝搬経路を示す。このとき、KLTN結晶51の入射面に対する水平方向の角度を調整して、結晶内を1.5往復、すなわち入射面と出射面との間の通過回数が3回となるようにして、出射光を得る。
【0090】
KLTN結晶51は、立方晶から正方晶への相転移付近で大きな電気光学定数を有する電気光学結晶である。KLTN結晶51の相転移温度は55℃であるので、ペルチェ素子と測温抵抗とを用いて、この素子の温度を相転移温度から約5℃高い60℃に設定する。これにより、KLTN結晶51の電気光学効果を、カー効果とすることができる。
【0091】
図24に、実施例5にかかるビーム偏向器の印加電圧と偏向角との関係を示す。正極54と負極55との間に、50Vの電圧を印加(100V/mmの電界を印加)すると、入射面と出射面との間の通過回数が1回で、偏向角は約7mradとなる。従って、図23Aに示したように、出射光の垂直方向(x軸方向)の偏向角Divは、約21mradが得られる。
【実施例6】
【0092】
図25Aに、本発明の実施例6にかかるビーム偏向器の構成を示す。K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=約0.40、y=約0.001なるKLTN結晶61を育成し、矩形に切り出し、4面を研磨した。そのKLTN結晶61の側面にTi/Pt/Auの正極62、負極63(図示しない)を形成する。KLTN結晶61のサイズは、光の伝搬方向(z軸)の長さ6mm、幅(y軸)0.5mm、厚さ(x軸)5mmである。KLTN結晶61の側面に蒸着した電極の光の伝搬方向の長さは5mmである。
【0093】
また、光の入射面と出射面にAuなどの金属または誘電体多層膜からなるミラー64,65を形成する。入射光として、He−Neレーザからの出力光を、KLTN結晶61に入射する。図25Bに、正極62が形成された面から見たビームの伝搬経路を示す。このとき、KLTN結晶61の入射面に対する垂直方向の角度を調整して、結晶内を2.5往復、すなわち入射面と出射面との間の通過回数が5回となるように出射する。
【0094】
KLTN結晶61は、立方晶から正方晶への相転移付近で大きな電気光学定数を有する電気光学結晶である。KLTN結晶20の相転移温度は55℃であるので、ペルチェ素子と測温抵抗とを用いて、この素子の温度を相転移温度から約5℃高い60℃に設定する。これにより、KLTN結晶61の電気光学効果を、カー効果とすることができる。
【0095】
正極62と負極63との間に、150Vの電圧を印加(200V/mmの電界を印加)すると、入射面と出射面との間の通過回数が1回で、偏向角は約30mradなので、出射ビーム21の水平方向(y軸方向)の偏向角22は、約150mradが得られる。
【0096】
実施例5および実施例6によれば、電気光学素子内を通過する光の光路が長くなるので、同じ素子長の電気光学素子内を光が1回だけ通過する場合に較べて、駆動電圧を1/√n(n:通過回数)とすることができる。駆動電圧が同じならば、電気光学素子の素子長を1/nにすることができる。素子長が短ければ、印加する電圧に対する容量成分が小さくなるので、偏向動作の高速化を図ることができる。また、2次の電気光学定数sijは、光の偏向方向と印加電界とが平行の場合s11の方が、光の偏向方向と印加電界とが垂直の場合s11より大きい。従って、往復する回数を増やすことにより、十分な偏向角を得ることができる。
【0097】
なお、ミラーは、金属または誘電体多層膜を蒸着またはスパッタにより堆積させてもよいし、結晶端面における全反射を用いてもよい。
【実施例7】
【0098】
図26に、本発明の実施例7にかかるビーム偏向器の構成を示す。K1-yLiyTa1-xNbx3において、x=約0.40、y=約0.001なるKLTN結晶71を育成し、矩形に切り出し、4面を研磨した。そのKLTN結晶71の上面と下面とにTi/Pt/Auの正極72、負極73を形成する。正極72、負極73は、垂直偏向用の電極となる。さらに、KLTN結晶71の側面に水平偏向用の電極となる正極74、負極75を形成する。光の入射面と出射面に金属または誘電体多層膜からなるミラー76,77を形成する。
【0099】
入射光として、He−Neレーザからの出力光を、KLTN結晶71に入射する。このとき、KLTN結晶71の入射面に対する水平、垂直方向の角度を調整して、結晶内を2.5往復、すなわち入射面と出射面との間の通過回数が5回となるように出射する。このようにして、実施例5および実施例6に示したのと同様に、出射光を水平方向および垂直方向に偏向させることができる。
【実施例8】
【0100】
図27に、本発明の実施例8にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す。KLTN結晶から縦6mm×横5mm×厚さ0.5mmの電気光学結晶を切り出す。電気光学結晶81,91の各々には、縦5mm×横4mmの電極を対向する面82,83および92,93に取り付ける。KLTN結晶の相転移温度は、55℃であり、電気光学結晶81,91の温度を60℃に設定する。電極材料は、Crとする。電気光学結晶81の電界の印加方向と、電気光学結晶91の電界の印加方向とが直角となるように、それぞれを光路上に配置する。電気光学結晶81,91の間の光路上には、水晶からなる半波長板101を挿入し、電気光学結晶81から出射された光が、90度回転して電気光学結晶91に入射するようにする。
【0101】
上述したように、偏向の効率は、光の電界の方向に依存し、光の電界の方向と印加電圧による空間電界の方向が平行であるとき最大となる。従って、この偏光依存性により、垂直偏光と水平偏光に対する屈折率変化の傾斜も異なる。KLTN結晶では、垂直偏光(図27のy軸方向)と水平偏光(図27のx軸方向)に対するカー定数が、s11:s12=10:−1程度であるため、垂直偏光の出射角のみが大きく変化する。
【0102】
そこで、電気光学結晶81において、垂直偏光と平行に印加電界を加え、y軸方向に偏向させ、半波長板101において90度回転させる。そして、電気光学結晶91において、水平偏光と平行に印加電界を加え、x軸方向に偏向させる。このようにして、効率的に2次元の偏向が可能となる。
【実施例9】
【0103】
図28に、本発明の実施例9にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す。KLTN結晶からなる電気光学結晶を、縦20mm×横5mm×厚さ5mmに切り出し、長手方向の断面が八角形となる八角柱に削りだす。電気光学結晶111の対向する面に、縦5mm×横1.5mmの電極を、3組取り付ける。KLTN結晶の相転移温度は、55℃であり、電気光学結晶111の温度を60℃に設定する。電極は、光の入射側から第1偏向器用の電極122,123、半波長板用の電極132,133、第2偏向器用の電極142,143の順に取り付ける。
【0104】
ここで、電極122,123および電極142,143の電極材料は、Crとし、電極132,133の電極材料は、Ptとする。偏向器用の電極は、偏向効率を高めるために、電子の注入効率を大きくする必要があり、オーミック接触となる電極材料を選択する。一方、半波長板用の電極は、偏波を回転させるだけであり、偏向が起きないことが望ましい。従って、電子の注入効率を小さくする必要があり、ショットキー接触となる電極材料を選択する。
【0105】
このような構成により、実施例8と同様に、第1偏向器においてy軸方向に偏向させ、半波長板において90度回転させる。そして、第2偏向器においてx軸方向に偏向させる。このように、1つのKLTN結晶で、垂直偏向、水平偏向および半波長板という3つの機能を実現するため、立方晶のKLTN結晶であることが好ましい。
【実施例10】
【0106】
図29Aに、本発明の実施例10にかかる2次元ビーム偏向器の構成を示す。KLTN結晶からなる電気光学結晶201を、縦10mm(z軸)×横5mm(y軸)×厚さ0.5mm(x軸)に切り出す。電気光学結晶201の対向する面に、2組の電極を取り付ける。電極は、光の入射側から第1偏向器用の電極202,203、第2偏向器用の電極204,205の順に取り付ける。この順番は入れ替わっても差し支えない。KLTN結晶の相転移温度は、55℃であり、電気光学結晶111の温度を60℃に設定する。
【0107】
第1偏向器用の電極202,203は、光の入射側の一辺を底辺とする直角三角形であり、一方の底角が直角、他方の底角φが30度、底辺の長さ4mm、高さ3mm、斜辺の長さ5mmである。第1偏向器用の電極202,203は、ショットキー接触となるように、Ptからなる電極材料を用いる。第2偏向器用の電極204,205は、縦5mm×横4mmの方形の電極である。第2偏向器用の電極204,205は、オーミック接触となるように、Tiからなる電極材料を用いる。
【0108】
第1偏向器用の電極202,203が形成された部分は、KLTN結晶の電気光学効果によって一様に屈折率が変化するので、この部分はプリズムとして入射光に作用する。電気光学結晶201の屈折率をn、電気光学定数をSij、厚さをdとし、印加電圧をV、第1偏向器用の電極202,203の一方の底角をφとすると、偏向角ψは、
【0109】
【数17】

【0110】
となり、y軸方向に偏向する。
【0111】
第2偏向器用の電極204,205が形成された部分は、実施例3の場合と同様に、理想的なオーミック接触が実現され、電荷の注入効率が最大となる。従って、出射光は、x軸方向に偏向するので、効率的に2次元の偏向が可能となる。
【実施例11】
【0112】
現状、DVDの光記録再生装置で使用されているサーボ機構には、3軸のレンズアクチュエータが用いられている。アクチュエータは、対物レンズを保持するワイヤを可動コイル型モータによって駆動している。可動コイル型モータの駆動原理は、磁束中を移動する電荷に作用するローレンツ力を利用する。このようなアクチュエータ機構は機械式であるため、多くの固有振動モードを有している。その固有振動数と等しい周波数でアクチュエータが駆動された場合、固有モードが励振されて共振が発生する。アクチュエータの最低次の共振は、制御系の制御によって回避することができる。しかしながら、より高次の共振の影響を回避することは難しく、その結果、高次の共振が制御系によって不安定化され、正確な位置決めが困難になる。そこで、上述した光ビーム偏向器を用いて、機械式の駆動部分を持たないサーボ機構を有する光ピックアップ装置を実現する。
【0113】
図30に、本発明の実施例11にかかる光ピックアップ装置の構成を示す。図20に示した実施例3にかかる光ビーム偏向器を用いた光ピックアップ装置であり、記録媒体はDVDおよびHD−DVDである。光源であるDVD用レーザダイオード(LD)311から出射された光ビームは、ハーフミラー312とコリメータレンズ313とを介して光偏向素子314に入射される。光偏向素子314における偏向角は、図示しない制御部により、ディスク316から反射してくるトラッキング信号に基づいてフィードバック制御されている。光偏向素子314から出射された光ビームは、対物レンズ315を介してディスク316に照射される。
【0114】
ディスク316から反射された光信号は、ハーフミラー322と検出用レンズ323を介してフォトダイオード(PD)324に入射される。また、HD−DVD用レーザダイオード(LD)321が、ハーフミラー322と光学的に結合されている。
【0115】
上述したように、従来の方法は、対物レンズをアクチュエータで駆動していた。本実施形態の光偏向素子は、可動部分を持たないため本体の駆動による共振は起こらない。一方、2次の電気光学効果を有する材料であるため、電歪効果による素子材料の共振現象が発生する。この現象は、材料の寸法や形状に依存するので、形状の対象性を低下させることにより抑制することができる。本実施形態においては、サーボの帯域は1MHzとしたが、十分に安定動作が可能であり、高品質な光記録再生を行うことができる。このとき、光偏向素子において、光ビームを偏向するために駆動する電圧は、±12Vの範囲にあり、十分に実用的な電圧での駆動することができる。
【0116】
また、光偏向素子を、コリメータレンズ313と対物レンズ315との間に配置したが、光源と記録媒体との間の光路上であれば、光ピックアップ装置の他の部分に配置しても、同様の効果が得られる。さらに、光偏向素子の光透過波長は、400nm−4000nmの範囲にあり、可視光の複数波長を用いる光ピックアップ装置にも応用することができる。
【0117】
本実施形態における光偏向素子を用いた光ピックアップ装置は、1TBクラスの高密度光記録再生を行う場合でも、十分な制御が実現できる帯域を有している。従って、より高密度記録が必要な、HD−DVD、Blu−rayなどに適用すると、より大きな効果が期待でき、より高密度な光記録再生を実現することができる。
【実施例12】
【0118】
レーザプリンタは、感光体にレーザ光を照射し、感光された部分にトナーを付着させ、このトナーを記録紙に転写することにより印字を行っている。この際、レーザ光を少なくとも1軸方向に繰り返し偏向させることが必要になる。光を偏向する技術として、上述したポリゴンミラーを回転させる技術が用いられている。プリンタの印刷速度をさらに向上させるためには、より高速な光偏向技術が求められている。そこで、上述した光ビーム偏向器を用いて、高速のレーザプリンタを実現する。
【0119】
図31Aに、本発明の一実施形態にかかるレーザプリンタの構成を示す。図20に示した実施例3にかかる光ビーム偏向器を用いたレーザプリンタを示す。図31Bは、比較のために従来のレーザプリンタを示す。レーザプリンタは、感光体である円筒上の感光ドラム411の外周に、帯電器412、現像器415、転写器414および定着器413が配置されている。帯電器412により帯電された感光ドラム411を、レーザ光で照射し、現像器415において感光された部分にトナーを付着させる。次に、転写器414において、トナー像を記録紙416に転写し、定着器413により定着させる。
【0120】
図31Bに示したように、従来のレーザプリンタは、レーザダイオード431から出射されたレーザ光を、コリメータレンズ432でコリメート化し、ポリゴンミラー433で反射させる。ポリゴンミラー433の回転によってレーザ光を偏向させ、レンズ434を介して感光体411に照射する。図31Aに示したように、本実施形態にかかるレーザプリンタは、光源であるレーザダイオード421から出射されたレーザ光を、コリメータレン422でコリメート化し、光偏向素子423に入射させる。光偏向素子423で偏向されたレーザ光は、レンズ424を介して感光体411に照射される。
【0121】
レーザダイオード421と感光体411との間の光路上に配置された光偏向素子423は、感光体411の走査方向全体をスキャンするために、4個の素子を用いている。素子1個当たりの消費電力は1mW以下であるので、従来のレーザプリンタと比較して、消費電力は低減されている。また、チップサイズが小さくレーザダイオードと一体化が可能であるため、ポリゴンミラーに比べ小型化が可能である。
【0122】
光偏向素子423の光偏向速度は1MHzであり、ポリゴンミラー433の回転周波数の最大値は10kHz(60000rpm)である。ポリゴンミラー433が10面のミラー面を有しているとすると、本実施形態にかかるレーザプリンタは、10倍の速度を実現することができる。例えば、従来のレーザプリンタは、複数のレーザ光を用いた高速プリンタで140枚/分程度の印字能力を有するが、本実施形態にかかるレーザプリンタは、300枚/分程度の印字能力を実現することができる。
【0123】
また、電界方向を直交させた2つの光偏向素子を配置し、2つの光偏向素子の間に波長板を配置する。2つの光偏向素子をそれぞれ制御して、2次元的にレーザ光を走査することができる。2次元走査を行えば、感光体への感光速度が飛躍的に向上するので、500枚/分程度の印字能力を実現することができる。さらに、光偏向素子とレーザダイオードとの間に、もうひとつの光偏向素子を配置し、レーザ光による感光のための光路以外に、光を偏向させることにより、光のON/OFF機能を追加することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する電気光学結晶と、
該電気光学結晶の入射側の光軸上に配置された偏光子と、
前記電気光学結晶の出射側の光軸上に配置された検光子と、
前記電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアに対してショットキー接触となる材料からなり、前記電気光学結晶の内部に電界を発生させる、正極と負極とからなる電極対と
を備えたことを特徴とする光強度変調器。
【請求項2】
前記電気光学結晶は、K1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0≦y<1)であることを特徴とする請求項1に記載の光強度変調器。
【請求項3】
前記電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが電子のとき、前記電極対の材料は、仕事関数が5.0eV以上であることを特徴とする請求項2に記載の光強度変調器。
【請求項4】
前記電極対の材料は、Co、Ge、Au、Pd、Ni、Ir、Pt、Seのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の光強度変調器。
【請求項5】
前記電気光学結晶の電気伝導に寄与するキャリアが正孔のとき、前記電極対の材料は、仕事関数が5.0eV未満であることを特徴とする請求項2に記載の光強度変調器。
【請求項6】
前記電極対の材料は、Cs、Rb、K、Sr、Ba、Na、Ca、Li、Y、Sc、La、Mg、As、Ti、Hf、Zr、Mn、In、Ga、Cd、Bi、Ta、Pb、Ag、Al、V、Nb、Zn、Sn、B、Hg、Cr、Si、Sb、W、Mo、Cu、Fe、Ru、Os、Te、Re、Be、Rhのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の光強度変調器。
【請求項7】
前記電極対の材料は、ITO、ZnOのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の光強度変調器。
【請求項8】
前記電気光学結晶は、LiNbO3、LiTaO3、LiIO3、KNbO3、KTiOPO4、BaTiO3、SrTiO3、Ba1-xSrxTiO3(0<x<1)、Ba1-xSrxNb26(0<x<1)、Sr0.75Ba0.25Nb26、Pb1-yLayTi1-xZrx3(0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3、KH2PO4、KD2PO4、(NH4)H2PO4、BaB24、LiB35、CsLiB610、GaAs、CdTe、GaP、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSeのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の光強度変調器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【公開番号】特開2011−118438(P2011−118438A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57231(P2011−57231)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【分割の表示】特願2007−522299(P2007−522299)の分割
【原出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】