説明

光情報記録再生方法及び光情報記録再生装置

【課題】
低温時でも大きな電源電圧の必要をなくし、低消費電力で安定に記録再生できるようにする。
【解決手段】
レーザダイオード(LD)光源からパルス状のLD光を照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生において、動作状態でのLD光源の抵抗値を測定し、測定したLD光源の抵抗値と目標抵抗値とを比較し、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗が一定以下になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調波形を駆動・制御して光情報記録媒体に情報の記録再生を行う光情報記録再生方法及び光情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では大容量化が進み、従来までの赤外LD(波長780nm)を用いたCDや、赤色LD(波長650nm)を用いたDVD、さらに青色LD(405nm)を用いたBlu-Ray Disc(BD)が製品化されている。
例えば、BD−RE(Rewritable)に利用されるライトストラテジ技術は、図2に示すように、3種類のパワーレベルを持つ複数のLDパルスを利用する。3種類のパワーレベルは、高いレベルから順に、ライトパワー(Pw)、イレイズパワー(Pe)、ボトムパワー(Pb)である。上記のライトパワーPwのLD光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜が溶融される。その後、急冷すると、光ディスクはアモルファス状態(非晶質状態)となり、光の反射率が低くなる。これが記録マークとして利用される。また、イレイズパワーPeのLD光で光ディスクを照射すると、光ディスクの記録膜は結晶状態にされる。LD光照射前に非晶質状態であった光ディスク部分は結晶状態になり、元々結晶状態であった光ディスク部分は、そのまま結晶状態に留まる。これにより記録マークを消去できる。
【0003】
ライトストラテジには、CD−R、DVD−R等で採用されている矩形状のモノパルス、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等で採用されているくし型のマルチパルス(図2参照)、DVD系光ディスクの高倍速記録で採用されているキャッスル型(ノンマルチ型)(図3参照)等がある。
【0004】
図2や図3に示した、記録波形のエッジタイミングを決める値や、ライトパワーPw、ギャップパワーPg、イレイズパワーPeのように記録パワーを決める値は、記録パラメータと呼ばれる。これらの記録パラメータは、最適な値が記録媒体ごとに予め決められて記録されている。例えばBD−REでは、内周のLead in zone に設けられたPermanent Information and Control data 内部のDI情報に記録されている。記録パラメータ群の最適値が、記録媒体の組成、材料等により異なるためである。
即ち、記録マークを記録する場合には、記録波形のエッジタイミングを決める値とPw、Pgのように記録パワーを決める値、及びシフトテーブルの各値等の記録パラメータを記録媒体から読み出し、この読み出された記録パラメータを用いてLDパルスを制御することで、最適な記録マークを形成するようにしている。
【0005】
この際、記録マークが良好に形成されないと、記録したデータを正しく再生することができなくなる可能性があるため、記録マークは良好に形成する必要がある。良好な記録マークを形成するために、LDをパルス状に発光することで、光ディスク記録膜に照射した時の熱蓄積を制御することが行われている。一般的には、LD光を発光する半導体レーザダイオード(以下、LDと称す)に、パルス状の電流を供給することでLDがパルス状に発光する。
【0006】
LDにパルス状に電流を供給する装置は、LDドライバ(LDD)である。LDドライバが、LDにパルス状に電流を供給することで、LDは供給された電流のパルスタイミングに基づいた発光パターンで発光するため、パルス状にLDを発光することができ、その結果、良好な記録マークを形成している。
【0007】
近年、光ディスクへの記録速度は年々高速化する傾向にある。また次世代BDとして多層化が有力とされている。このどちらにおいても、LDパワーはより大きくなる。
LDパワーの増加は、LDドライバからLDへの供給電流を増加させることで達成される。LDドライバがLDに供給する電流が増加すると、LDドライバ(特にLD駆動部)での消費電力が増加する。特にBDで用いられる青色のLDは温度により抵抗値が大きく変わることが知られている。図4にLDの等価回路を示す。図4のようにLDは直流の抵抗成分Rを持つ(以下、これをLD抵抗とよぶ)。図5にあるように、低温時にLD抵抗が大きくなり、高温になるほど小さくなる傾向を持っている。するとLD駆動電流とLD両端に発生するLD駆動電圧の関係(以下、「LD−IV特性」と呼ぶ)は図6のようになる。つまり、LD−IV特性は温度上昇に伴って低下する。すなわち、同じLD駆動電流を確保するには、高温になるとLD駆動電圧を低くする必要がある。そのため特許文献1では、所定の温度のときにレーザードライバに供給する電圧値を記憶しておき、温度検出回路が検出した温度が所定の温度になったときには、記憶している電圧値に基づいた電圧が供給されるよう電源を制御することで低消費電力化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−334972号公報
【特許文献2】特開2001−111165号公報
【特許文献3】特開2002−329320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、温度の影響でLDドライバに必要十分な電圧が変化し、それに合わせて電圧を制御することが記載されている。
この手法では、LDが低温の場合、大きな駆動電圧が必要となる。また、LDが発光するパワーによってもLDの微分抵抗が変化することが本発明者の調査により確認された(図5参照)。さらには、上述したようなLDとLDドライバとを備えた半導体LD光発生装置においては、量産したLDの抵抗がある程度の範囲でばらつくことも予想される。
【0010】
本発明は以上の点を考慮し、LDやLDドライバの温度特性、記録パワーなどの影響の大きい要因に対して、それらに変動があっても低消費電力で安定に記録再生できる光情報記録再生方法及び光情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、図5に示すLDの温度特性に着目し、LDの特性を最適化することで、低消費電力化を図る。そのためには、LDの温度を制御し、搭載するLDの抵抗Rを一定以下になるまで温度を変化させて調整する。
【0012】
図7に本発明を説明するためのLD及びLDD周辺図を示す。LD1は電圧源3に接続されており、LDD2により駆動される。LD抵抗をR、駆動電流をIop、LD1とLDD2との接続部における、電圧測定部4による測定電圧をVdとすると、電源電圧 Vs=Iop×R+Vd に対して、IopとVdが一定値のとき、LD温度を上げることにより、LD抵抗Rを小さくできる。その結果、電源電圧Vsが小さくなり、消費電力の計算に当てはめると消費電力W=Iop×Vsを小さく抑えることができる。また、レーザ自身の消費電力で考えると消費電力W=Iop×Rとなり、Rが小さいほど消費電力は小さくなる。
LDの抵抗Rは、一般的にLDに印加される電圧Vと流れる電流IからR=V/Iで求められる。しかし、図5のようなパワー依存性もあるため、一点におけるVとIの関係からではなく、I−V特性から使用するパワーでのRを求めることで精度を高くすることができる。
【0013】
本発明を実現する制御方法として、概略次の二つが考えられる。
一つは、温度を変化させてLDを発光させ、I−V特性を測定し、そのI−V特性の傾きからLDの抵抗値を求めて、LD抵抗値が一定値以下になるまでLDを加熱してから記録を始める方法である。
他の一つは、予め温度とI−V特性をテーブル(図16)にしておき、LDに温度センサを設けて(図15参照)、LD温度を測定し、温度がある一定値になるまでLDを加熱してから記録を始める方法である。
【0014】
本発明の光情報記録再生方法は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得する工程と、前記取得したLD光源の抵抗値と目標抵抗値とを比較する工程と、当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする工程とを有するものである。前記LD光源の抵抗値を取得する工程は、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものでよい。
また、本発明の光情報記録再生方法は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、LDの出力パワーを設定した状態でLD光源の温度を測定する工程と、LDの出力に対応する目標温度を示すテーブルに基づいて目標温度を取得する工程と、前記測定したLD光源の温度と前記目標温度とを比較する工程と、当該比較により、LD光源の温度が目標温度より低い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする工程とを有するものである。前記LD光源の温度を測定する工程は、温度センサを用いてLD光源の温度を測定するものでよい。
【0015】
また、本発明の光情報記録再生方法は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得する工程と、LDの出力に対応する目標抵抗値範囲を示すテーブルに基づいて目標抵抗値範囲を取得する工程と、前記取得したLD光源の抵抗値と前記目標抵抗値範囲とを比較する工程と、当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より高い場合に、LD光源を加熱し、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より低い場合に、LD光源を冷却することにより、LD光源の抵抗を一定以下にするとともにLD光源の高周波特性を最適化する工程とを有するものである。前記LD光源の抵抗値を取得する工程は、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものでよい。
【0016】
また、本発明の光情報記録再生装置は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得するLD抵抗値取得部と、LDの目標抵抗値を記憶したテーブルと、前記LD抵抗値取得部で取得したLD光源の抵抗値と前記テーブルの目標抵抗値とを比較する抵抗値比較部と、当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源の抵抗を一定以下にするために、LD光源を加熱する温度調整機構とを有するものである。前記LD抵抗値取得部は、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものでよい。
【0017】
また、本発明の光情報記録再生装置は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、LDの出力パワーを設定した状態でLD光源の温度を測定するLD温度測定部と、LDの出力に対応する目標温度を示すテーブルと、前記LD温度測定部で測定したLD光源の温度と前記テーブルから取得した目標温度とを比較する温度比較部と、当該比較により、LD光源の温度が目標温度より低い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする温度調整機構とを有するものである。前記LD温度測定部は、LD光源の温度センサを有するものでよい。また、前記温度調整機構は、LD光源内に発熱体を有するもの、あるいは、
LD光源の外に発熱体を有し、LD光源を加熱するものでよい。
【0018】
さらに、本発明の光情報記録再生装置は、LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得するLD抵抗値取得部と、LDの目標抵抗値を記憶したテーブルと、前記LD抵抗値取得部で取得したLD光源の抵抗値と前記テーブルの目標抵抗値とを比較する抵抗値比較部と、当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より高い場合に、LD光源を加熱し、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より低い場合に、LD光源を冷却することにより、LD光源の抵抗を一定以下にするとともにLD光源の高周波特性を最適化する温度調整機構とを有するものである。前記LD抵抗値取得部は、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものでよい。
【0019】
ちなみに、LDを加熱することに対し、特許文献2(特開2001−111165号公報)には、半導体発光素子の低温I−L特性のキンク(図8参照)とよばれる非線形応答を抑制するため、半導体LDを加熱するための加熱部を備えることが記載されている。また、特許文献3(特開2002−329320号公報)には、温度によってI−L特性の傾きが変わることや、LDの波長が変わることを避けるため、LD自身のプリヒートによって温度がある一定値になってから記録を始めることが記載されている。しかし、これらは、温度によるLD抵抗の変化を考慮して、消費電力を低下させる本発明とは異なるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温時でも大きな電源電圧が必要でなく、高速化や多層化によってLD駆動電流が大きいときに低消費電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1によるLD調整フローを示す図。
【図2】マルチパルスのライトステラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図3】ノンマルチパルスのライトステラテジの一例と、このストラテジによって形成される記録マークの説明図。
【図4】LDの等価回路を示す図。
【図5】LDの微分抵抗の温度依存性、LDパワー依存性を示す図。
【図6】LDのI−V特性の温度変化を示す図。
【図7】実施例1を説明するためのLD−LDD周辺図。
【図8】LDのI−L特性の温度変化を示す図。
【図9】記録信号が光ディスクへ書き込まれるまでの流れを示す概略図。
【図10】光ピックアップの一例を示す図。
【図11】記録するための従来フローを示す図。
【図12】実施例1の抵抗による制御テーブルを示す図。
【図13】実施例1のLD調整フローを実現するためのブロック図。
【図14】実施例2の温度測定によるLD調整フローを示す図。
【図15】実施例2を説明するためのLD−LDD周辺図。
【図16】実施例2の温度による制御テーブルを示す図。
【図17】実施例2のLD調整フローを実現するためのブロック図。
【図18】実施例3の抵抗範囲設定によるLD調整フローを示す図。
【図19】発光パルスの立上り時間、立下り時間、オーバーシュートの説明図。
【図20】温度に対する発光パルスの立上り/立下り時間、オーバーシュートの変化を示す図。
【図21】実施例3の抵抗範囲設定による制御テーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図9は、記録信号15が光ディスク10へ書き込まれるまでの流れを示す概略図である。本発明において、LDドライバは、単にレジスタ指令を受け、電流を出力する機能を有するものであっても、図9に示すように、その機能に加え、ストラテジ生成回路を含むものであってもよい。入力データ15は、符号化回路14で符号化され、その符号化した信号をディスク上に書き込むためのストラテジを形成する信号にストラテジ生成回路13で変換される。ゆえに、図9においてパワーレジスタはストラテジ生成回路にあるものとする。この信号がLDドライバ12に入力される。図2は、LDドライバが発生する駆動電流パルスと、LDから出力される発光パルスの関係を示す模式図である。図2に示すように、LDドライバからの電流波形がLDダイオード11に伝送され、LD発光波形となる。
【0024】
図10は光ピックアップの一例を示しており、光ディスクを記録再生している様子を示すものである。LD21から出射したS偏光の光束は偏光ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)22で入射方向に対して光ディスク10が存在する垂直方向に反射され、コリメートレンズ23でコリメート平行光に変換される。入射光はその後1/4波長板24で直線偏光から円偏光へ変換され、対物レンズ25で集光されて光ディスク10を照射する。光ディスク10からの反射光は再び対物レンズ25で平行光に変換され、1/4波長板24で円偏光から直線P偏光に変換され、コリメートレンズ23によって収束光へ変換される。P偏光の反射光はPBS22を透過し、光検出器26へ入射する。この光学系の入り口となるLD21に対して温度調整機構27を設けて、以下の手法で本発明を実現する。本実施例では、温度調整機構27として加熱機構を用い、加熱機構として、LD光源内に発熱体を有するものでも、LD光源の外に発熱体を有するものでも良い。LD光源内に発熱体を設けるものとしては、LDの中に抵抗を設け、加熱電流を流す構成が用いられる。
【0025】
通常の記録フローを、図11に示す。記録する準備として、LDパワー調整によってLDドライバの出力電流とLD発光の関係を取得する(S101)。その後ディスクに対する記録パワー調整(OPC)を行い(S102)、ストラテジ調整などのその他記録調整(S103)を行った後、記録を開始する(S104)。
【0026】
本実施例は、このLDパワー調整の前に新たなフローを追加するものである。本実施例では、予め図12に示されるような、レーザパワーに対応するLD抵抗の目標抵抗値をテーブルとして作製しておく。図1に示したLD調整フローを用いて、実施例1を説明する。
【0027】
ステップS111で、LDの駆動電流を数点変えながらLDに印加される電圧を測定し、LD I−V特性を取得する。
ステップS112で、I−V特性からそのLDの出力パワーでのLDの抵抗を算出する。
ステップS113で、算出したLD抵抗と、図12のテーブルから取得したLD出力での目標値抵抗値とを比較する。
LD抵抗値が目標値以下の場合、ステップS115のLD I−L特性の取得に進む。
LD抵抗値が目標値以上の場合、ステップS114で、図10に記すような温度調整機構27を制御してLDの加熱を行う。
LD抵抗値が目標値以下になるまでステップS111〜S114を繰り返し、目標値以下になったらステップS115のI−L特性の取得、およびステップS116のフィッティングを行い、LDの調整を終了する(ステップS117)。
これによって図11の通常フローのLDパワー調整が終了することになり、その後は通常通りOPCやその他の記録調整をおこなってから記録を開始する。
【0028】
図13にこのフローを実現するための装置構成を示す。LD抵抗値取得部31は、動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得するものである。抵抗テーブル32は、図12に示されるように、動作状態のLDパワーに対応するLDの目標抵抗値を記憶するものである。抵抗値比較部33は、前記LD抵抗値取得部31で取得したLD光源の抵抗値と前記テーブル32の目標抵抗値とを比較するものである。そして、抵抗値比較部33による当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源を加熱する温度調整機構27を動作させ、LD光源の抵抗が一定以下にされる。
【0029】
なお、本実施例では記録時について説明を行ったが、レーザパワー出力の小さい再生時についても同様に行うことができることは自明である。
【実施例2】
【0030】
実施例1はLDの抵抗を測定し、LD抵抗値を一定以下にするものであるが、実施例2はLDの抵抗が測定できない場合、LD自身の温度を測定して加熱することにより、LD抵抗値を一定以下にするものである。
【0031】
構成を示す図9の概略図および図10のピックアップの構成は実施例1とほぼ同様である。図15に、LD及びLDDの周辺図を示す。図7のものに加えて、LD温度測定部5が設けられている。また、予め図16に示すような、レーザパワーに対応するLDの目標温度をテーブルとして作製しておく。図14に示したLD調整フローを用いて、実施例2を説明する。
【0032】
ステップS121で、LDの出力パワーを設定した状態で、LD温度測定部5によりLDの温度を測定し、LDの温度を取得する。
ステップS122で、図16のテーブルを参照し、レーザの出力に対応する目標温度を設定する。
ステップS123で、取得したLDの温度と、図16のテーブルから設定したLDの出力パワーにおける目標値温度とを比較する。
LD温度が目標値以上の場合、実施例1のフローと同様に、ステップS115のLD I−L特性の取得に進む。
LD温度が目標値以下の場合、ステップS124で、図10に記すような温度調整機構27を制御してLDの加熱を行う。
LD温度が目標値以上になるまでステップS121〜S124を繰り返し、目標値以上になったらステップS115のI−L特性の取得、およびステップS116のフィッティングを行い、LDの調整を終了する(ステップS117)。
【0033】
図17にこのフローを実現するための装置構成を示す。LD温度測定部5は、LDの出力パワーを設定した状態でLD光源の温度を測定するものである。温度テーブル41は、図16に示されるように、設定したLDの出力パワーにおけるLDの目標温度を記憶するものである。温度比較部42は、前記LD温度測定部5で測定したLD光源の温度と前記温度テーブル41の目標温度とを比較するものである。そして、温度比較部42による当該比較により、LD光源の温度が目標温度より低い場合に、LD光源を加熱する温度調整機構27を動作させ、LD光源の抵抗が一定以下にされる。
【実施例3】
【0034】
実施例1、2はLDの抵抗値を一定以下にして消費電力を小さくするものであるが、実施例3は高周波特性の観点も加えてLD抵抗値を決めるものである。
【0035】
通常、半導体によって作製されるLDドライバやLDは、温度によって特性が変化する。この温度特性により、パルスを加えた場合の立上り時間/立下り時間やオーバーシュート量が変化する。図19は方形パルスを加えた場合の応答を示すもので、Trが立上り時間、Tfが立下り時間、OSがオーバーシュート量を表す。図20(a)は、立上り時間/立下り時間と温度の関係を示すもので、立上り時間及び立下り時間は温度の上昇とともに低下していく。また、図20(b)は、オーバーシュート量と温度の関係を示すもので、オーバーシュート量は温度の上昇とともに増加していく。立上り時間/立下り時間、およびオーバーシュート量は一般的に小さい方がよいとされる。このため、本実施例においては、温度変化による抵抗変化を予め測定しておき、消費電力の低下に加えて、高周波特性を考慮して、温度範囲を図20中に示す最適温度範囲に調整する。
【0036】
図18に示したLD調整フローを用いて、実施例3を説明する。本実施例では、予め図21に示されるような、レーザパワーに対応するLD抵抗の目標抵抗値範囲をテーブルとして作製しておく。
【0037】
ステップS131で、LDの駆動電流を数点変えながらLDに印加される電圧を測定し、LD I−V特性を取得する。
ステップS132で、I−V特性からそのLDの出力パワーでのLDの抵抗を算出する。
ステップS133で、算出したLD抵抗と、図21のテーブルから取得したLD出力での目標値抵抗値範囲とを比較する。
LD抵抗値が目標値範囲内の場合、ステップS115のLD I−L特性の取得に進む。
LD抵抗値が目標値範囲以上の場合、ステップS134で、図10に記すような温度調整機構27を制御してLDの加熱を行う。
LD抵抗値が目標値範囲以下の場合、ステップS135で、図10に記すような温度調整機構27を制御してLDの冷却を行う。
LD抵抗値が目標値範囲内以下になるまでステップS131〜S135を繰り返し、目標範囲内になったらステップS115のI−L特性の取得、およびステップS116のフィッティングを行い、LDの調整を終了する(ステップS117)。
このフローを実現するための装置構成は、図13のものとほぼ同様である。
【0038】
本実施例においては、消費電力の低下に加えて高周波特性を考慮して、LDの温度を最適温度範囲に調整するため、消費電力の低下を図ることができるとともに、パルスの高周波特性を最適化することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…レーザダイオード(LD)
2…LDドライバ(LDD)
3…電圧源
4…電圧測定部
5…LD温度測定部
10…光ディスク
11…レーザダイオード
12…LDドライバ
13…ストラテジ生成回路
14…符号化回路
15…記録データ
21…LD
22…偏光ビームスプリッタ、
23…コリメートレンズ、
24…1/4波長板、
25…対物レンズ、
26…光検出器、
27…温度調整機構
31…LD抵抗値取得部
32…抵抗テーブル
33…抵抗値比較部
41…温度テーブル
42…温度比較部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオード(以下、LD)光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、
動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得する工程と、
前記取得したLD光源の抵抗値と目標抵抗値とを比較する工程と、
当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする工程とを有することを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項2】
請求項1記載の光情報記録再生方法において、
前記LD光源の抵抗値を取得する工程が、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものであることを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項3】
LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、
LDの出力パワーを設定した状態でLD光源の温度を測定する工程と、
LDの出力に対応する目標温度を示すテーブルに基づいて目標温度を取得する工程と、
前記測定したLD光源の温度と前記目標温度とを比較する工程と、
当該比較により、LD光源の温度が目標温度より低い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする工程とを有することを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項4】
請求項3記載の光情報記録再生方法において、
前記LD光源の温度を測定する工程が、温度センサを用いてLD光源の温度を測定することを特徴とする光情報記録方法。
【請求項5】
LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生方法において、
動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得する工程と、
LDの出力に対応する目標抵抗値範囲を示すテーブルに基づいて目標抵抗値範囲を取得する工程と、
前記取得したLD光源の抵抗値と前記目標抵抗値範囲とを比較する工程と、
当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より高い場合に、LD光源を加熱し、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より低い場合に、LD光源を冷却することにより、LD光源の抵抗を一定以下にするとともにLD光源の高周波特性を最適化する工程とを有することを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項6】
請求項5記載の光情報記録再生方法において、
前記LD光源の抵抗値を取得する工程が、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものであることを特徴とする光情報記録再生方法。
【請求項7】
LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、
動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得するLD抵抗値取得部と、
LDの目標抵抗値を記憶したテーブルと、
前記LD抵抗値取得部で取得したLD光源の抵抗値と前記テーブルの目標抵抗値とを比較する抵抗値比較部と、
当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値より高い場合に、LD光源の抵抗を一定以下にするために、LD光源を加熱する温度調整機構とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項8】
請求項1記載の光情報記録再生装置において、
前記LD抵抗値取得部が、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものであることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項9】
LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、
LDの出力パワーを設定した状態でLD光源の温度を測定するLD温度測定部と、
LDの出力に対応する目標温度を示すテーブルと、
前記LD温度測定部で測定したLD光源の温度と前記テーブルから取得した目標温度とを比較する温度比較部と、
当該比較により、LD光源の温度が目標温度より低い場合に、LD光源を加熱することにより、LD光源の抵抗を一定以下にする温度調整機構とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項10】
請求項9記載の光情報記録再生装置において、
前記LD温度測定部が、LD光源の温度センサを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項11】
請求項9記載の光情報記録再生装置において、
前記温度調整機構が、LD光源内に発熱体を有するものであることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項12】
請求項9記載の光情報記録再生装置において、
前記温度調整機構が、LD光源の外に発熱体を有し、LD光源を加熱するものであることを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項13】
LD光源からパルス状のLD光を光情報記録媒体に照射して情報を記録又は再生する光情報記録再生装置において、
動作状態でのLD光源の抵抗値に関する情報を取得するLD抵抗値取得部と、
LDの目標抵抗値を記憶したテーブルと、
前記LD抵抗値取得部で取得したLD光源の抵抗値と前記テーブルの目標抵抗値とを比較する抵抗値比較部と、
当該比較により、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より高い場合に、LD光源を加熱し、LD光源の抵抗値が目標抵抗値範囲より低い場合に、LD光源を冷却することにより、LD光源の抵抗を一定以下にするとともにLD光源の高周波特性を最適化する温度調整機構とを有することを特徴とする光情報記録再生装置。
【請求項14】
請求項13記載の光情報記録再生装置において、
前記LD抵抗値取得部が、LDの駆動電流を変えながらLDの電圧を測定し、電圧−電流特性の傾きから抵抗値を取得するものであることを特徴とする光情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−14208(P2011−14208A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159175(P2009−159175)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】