説明

光情報記録媒体およびその製造方法、光情報記録媒体用記録層

【課題】優れた透過特性を有する光情報記録媒体用記録層およびそれを備える光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】光情報記録媒体は、基板と、基板上に設けられた2以上の記録層と、記録層上に設けられた保護層とを備える。基板および保護層の側のいずれか一方の表面が、2以上の記録層に情報信号を記録するための光が照射される光照射面である。光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たすである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光情報記録媒体およびその製造方法、光情報記録媒体用記録層に関する。詳しくは、2層以上の記録層を有する光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などが光情報記録媒体の市場を牽引してきた。しかし、近年では、テレビのハイビジョン化やPC(Personal Computer)で取り扱うデータの急激な増大に伴い、光情報記録媒体の更なる大容量化が求められている。この要求に応えるべく、BD(Blu-ray Disc(登録商標))などの青色レーザに対応した大容量の光情報記録媒体が登場し、新たな大容量の光情報記録媒体の市場が立ち上がりつつある。
【0003】
記録可能な光情報記録媒体としては、CD−RW(Compact Disc-ReWritable)、DVD±RW(Digital Versatile Disc±ReWritable)に代表される書換型の光情報記録媒体と、CD−R(Compact Disc-Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc-Recordable)に代表される追記型の光情報記録媒体とがあるが、特に、後者は低価格メディアとして市場の拡大に大きく貢献してきた。したがって、青色レーザに対応した大容量の光情報記録媒体においても、市場を拡大させるためには、追記型の光情報記録媒体の低価格化が必要になると考えられる。さらに光情報記録媒体は、ハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリなどと比べて、その記録再生原理から保存信頼性が高いと一般的に言われており、重要情報の保管に使われ始めるなどアーカイバルメディアとしての需要が近年高くなっている。
【0004】
追記型の光情報記録媒体に用いられる記録材料としては、無機材料と有機色素材料とがある。従来の追記型の光情報記録媒体では記録材料として有機色素材料が主に検討されてきたが、近年の大容量の光情報記録媒体では記録材料として無機材料も広く検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、酸化Inおよび酸化Pdを含み、この酸化Pdが一酸化Pdと二酸化Pdを含み、かつ、In原子とPd原子の合計に対するPd原子の比率を6〜60原子%とする無機記録層が提案されている。また、特許文献2では、Inおよび/またはSnとPdとOとを含む無機記録層が提案されている。
【0006】
ところで、近年では、記録可能なDVDやBDなどの高密度の光情報記録媒体においては、記録容量をさらに増大させるために、記録層を多層化する技術が広く採用されている。多層の光情報記録媒体では、情報読み取り面側から最も奥に位置する記録層に対する情報信号の記録および再生は、その手前側にある記録層を透過したレーザ光を用いて行われることとなる。このため、記録層の層数が増加するほど、最も奥に位置する記録層にレーザ光が到達するまでに透過しなければならない記録層の層数が多くなり、情報読み取り面側から最も奥に位置する記録層以外の記録層では、高い透過率を有することが望まれる。
【0007】
追記型の光情報記録媒体においても、記録層を多層化し、記録容量をさらに増大する要求が高まっており、この要求に応えるためには、無機記録層の透過率の向上が重要な技術の1つとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−137545号公報
【特許文献2】特開2010−218636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本技術の目的は、優れた透過特性を有する光情報記録媒体およびその製造方法、光情報記録媒体用記録層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の技術は、
基板と、
基板上に設けられた2以上の記録層と、
記録層上に設けられた保護層と
を備え、
基板および保護層の側のいずれか一方の表面が、2以上の記録層に情報信号を記録するための光が照射される光照射面であり、
光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、
W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体である。
【0011】
第2の技術は、
W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、
W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体用記録層である。
【0012】
第3の技術は、
光情報記録媒体用ターゲットを用いて、少なくとも酸素との反応性スパッタリングにより金属酸化物記録層を形成する工程を備え、
光情報記録媒体用ターゲットは、
W、Pd、およびCuを主成分として含み、
W、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体の製造方法である。
【0013】
第1の技術において、保護層の厚さは特に限定されるものではなく、保護層には、基板、シート、コーティング層などが含まれる。高密度の光情報記録媒体としては、保護層としてシート、コーティング層などの薄い光透過層を採用し、この光透過層の側から光を照射することにより情報信号の記録および再生が行われる構成を有するものが好ましい。この場合、基板としては、不透明性を有するものを採用することも可能である。情報信号を記録または再生するための光の入射面は、光情報記録媒体のフォーマットに応じて保護層側および基板側の表面の少なくとも一方に適宜設定される。
【0014】
第1および第2の技術において、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、W、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1の関係を満たすことが好ましい。
【0015】
第1および第2の技術において、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1≦1.26の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、W、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1≦1.26の関係を満たすことが好ましい。
【0016】
第1の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の全ての記録層が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1の関係を満たすことが好ましい。この場合、x1の値が、光照射面に近い記録層ほど大きくなることが好ましい。
【0017】
第1の技術において、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合x1が、光照射面に近い記録層のほうが大きい関係を満たすことが好ましい。
【0018】
第1〜第3の技術において、原子比率a、原子比率b、および原子比率cがそれぞれ、10≦a≦70、2≦b≦50、10≦c≦70の関係を満たすことが好ましい。
【0019】
第1および第2の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含み、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.17≦x2(但し、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)、a:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するCuの原子比率[原子%]、d:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するZnの原子比率[原子%])の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、光情報記録媒体用ターゲットが、W、Pd、Cu、およびZnを主成分として含み、W、Pd、CuおよびZnの割合が、0.17≦x2(但し、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)、a:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するCuの原子比率[原子%]、d:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するZnの原子比率[原子%])の関係を満たすことが好ましい。
【0020】
第1および第2の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含む場合、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、光情報記録媒体用ターゲットが、W、Pd、Cu、およびZnを主成分として含む場合、W、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2の関係を満たすことが好ましい。
【0021】
第1および第2の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含む場合、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2≦1.26の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、光情報記録媒体用ターゲットが、W、Pd、Cu、およびZnを主成分として含む場合、W、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2≦1.26の関係を満たすことが好ましい。
【0022】
第1の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含む場合、光照射面から最も奥側となる記録層以外の全ての記録層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含み、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.17≦x2の関係を満たすことが好ましい。この場合、x2の値が、光照射面に近い記録層ほど大きくなることが好ましい。
【0023】
第1の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含む場合、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、Cu及びZnの割合x2が、光照射面に近い記録層のほうが大きい関係を満たすことが好ましい。
【0024】
第1または第2の技術において、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含む場合、原子比率a、原子比率b、原子比率cおよび原子比率dがそれぞれ、10≦a≦70、2≦b≦50、10≦c≦70、5≦d≦60の関係を満たすことが好ましい。
第3の技術において、光情報記録媒体用ターゲットが、W、Pd、Cu、およびZnを主成分として含む場合、原子比率a、原子比率b、原子比率cおよび原子比率dがそれぞれ、10≦a≦70、2≦b≦50、10≦c≦70、5≦d≦60の関係を満たすことが好ましい。
【0025】
第1の技術において、記録層の両側に隣接して設けられた第1保護層および第2保護層をさらに備え、第1保護層および第2保護層が、誘電体層または透明導電層であることが好ましい。
【0026】
本技術では、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が0.17≦x1の関係を満たすことで、光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層として好適な透過率を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本技術によれば、優れた透過特性を有する光情報記録媒体用記録層、およびそれを備えた光情報記録媒体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1Aは、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。図1Bは、図1Aに示した各情報信号層の一構成例を示す模式図である。
【図2】図2Aは、試験例1〜13の光情報記録媒体における変数xと透過率との関係を示すグラフである。図2Bは、試験例1〜13の光情報記録媒体を含む透過率と最適記録パワーPwoとの関係を示すグラフである。
【図3】図3は、試験例1〜13の光情報記録媒体における無機記録層の組成比を示すグラフである。
【図4】図4Aは、試験例16〜27の光情報記録媒体におけるL0層のi−MLSEとL0層の反射率との関係を示すグラフである。図4Bは、試験例28〜39の光情報記録媒体におけるL1層の透過率とL0層の反射率との関係を示すグラフである。図4Cは、試験例40〜48の光情報記録媒体におけるL1層の透過率とL0層のi−MLSEとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本技術の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
[光情報記録媒体の構成]
図1Aは、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す概略断面図である。この光情報記録媒体10は、いわゆる追記型の光情報記録媒体であり、図1Aに示すように、情報信号層L0、中間層S1、情報信号層L1、中間層S2、情報信号層L2、中間層S3、情報信号層L3、保護層(カバー層)である光透過層2がこの順序で基板1の一主面に積層された構成を有する。必要に応じて、光透過層2側の表面にハードコート層3をさらに備えるようにしてもよい。必要に応じて、基板1側の表面にバリア層4をさらに備えるようにしてもよい。なお、以下の説明において、情報信号層L0〜L3を特に区別しない場合には、情報信号層Lという。
【0030】
この一実施形態に係る光情報記録媒体10では、光透過層2側の表面Cからレーザ光を各情報信号層L0〜L3に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。例えば、400nm以上410nm以下の範囲の波長を有するレーザ光を、0.84以上0.86以下の範囲の開口数を有する対物レンズにより集光し、光透過層2の側から各情報信号層L0〜L3に照射することにより、情報信号の記録または再生が行われる。このような光情報記録媒体10としては、例えばBD−Rが挙げられる。以下では、情報信号層L0〜L3に情報信号を記録するためのレーザ光が照射される表面Cを光照射面Cと称する。
【0031】
以下、光情報記録媒体10を構成する基板1、情報信号層L0〜L3、中間層S1〜S3、光透過層2、ハードコート層3、およびバリア層4について順次説明する。
【0032】
(基板)
基板1は、例えば、中央に開口(以下センターホールと称する)が形成された円環形状を有する。この基板1の一主面は、例えば、凹凸面となっており、この凹凸面上に情報信号層L0が成膜される。以下では、凹凸面のうち凹部をイングルーブGin、凸部をオングルーブGonと称する。
【0033】
このイングルーブGinおよびオングルーブGonの形状としては、例えば、スパイラル状、同心円状などの各種形状が挙げられる。また、イングルーブGinおよび/またはオングルーブGonが、例えば、線速の安定化やアドレス情報を付加するためにウォブル(蛇行)されている。
【0034】
基板1の径(直径)はリジッドなものであれば特に限定されることはないが、例えば120mmに選ばれる。基板1の厚さは、剛性を考慮して選ばれ、好ましくは0.3mm以上1.3mm以下、より好ましくは0.6mm以上1.3mm以下、例えば1.1mmに選ばれる。また、センタホールの径(直径)は、例えば15mmに選ばれる。
【0035】
基板1の材料としては、例えば、プラスチック材料またはガラスを用いることができ、成形性の観点から、プラスチック材料を用いることが好ましい。プラスチック材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。またコストの観点からポリカーボネート系樹脂が用いられることが多い。
【0036】
(情報信号層)
図1Bは、図1Aに示した各情報信号層の一構成例を示す模式図である。図1Bに示すように、情報信号層L0〜L3は、例えば、無機記録層11と、無機記録層11の一主面に隣接して設けられた第1保護層12と、無機記録層11の他主面に隣接して設けられた第2保護層13とを備える。このような構成とすることで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。
【0037】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3のうちの少なくとも1層の無機記録層11が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物の3元系酸化物を主成分として含んでいる。この3元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x1、より好ましくは0.37≦x1、さらに好ましくは0.37≦x1≦1.26、最も好ましくは0.56≦x1≦1.26の関係を満たしている。これにより、光情報記録媒体の情報信号層として求められる特性を満たしつつ、優れた透過特性を実現できる。ここで、光情報記録媒体の情報信号層として求められる特性としては、良好な信号特性や高記録パワーマージン、高再生耐久性、記録後透過率変化の抑制などが挙げられる。
但し、x1は、x1=a/(b+0.8c)により定義される変数である。
a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]
b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]
c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%]
【0038】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0に到達する光量を増やす観点からすると、情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3が有する無機記録層11が全て、上述の3元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この場合、上述の3元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x1、より好ましくは0.37≦x1、さらに好ましくは0.37≦x1≦1.26、最も好ましくは0.56≦x1≦1.26の関係を満たしている。また、一般的に最奥層に近い情報記録層Lほど高い記録感度が必要なために透過率が低くなりやすいことから、光照射面Cに近い情報信号層Lほど高透過率となるよう設計することが多い。よって、情報信号層L1〜L3の無機記録層11の変数x1の値は、光照射面Cに近い情報信号層Lのものほど大きな値となることが好ましい。
【0039】
また、良好な信号特性や高記録パワーマージン、高再生耐久性、記録後透過率変化の抑制の観点からすると、情報信号層L0〜L3が有する無機記録層11全てが、上述の3元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この場合、上述の3元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x1、より好ましくは0.37≦x1、さらに好ましくは0.37≦x1≦1.26、最も好ましくは0.56≦x1≦1.26の関係を満たしている。また、情報信号層L0〜L4の無機記録層11の変数x1の値は、光照射面Cに近い情報信号層Lのものほど大きな値となることが好ましい。光照射面Cに近い情報信号層Lほど透過率を高くすることができるからである。
【0040】
W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率aは、好ましくは10原子%以上70原子%以下、より好ましくは14.2原子%以上31.8原子%以下の範囲内である。原子比率aが10原子%未満であると、低透過率となる傾向がある。一方、原子比率aが70原子%を超えると、記録感度低下となる傾向がある。
【0041】
W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率bは、好ましくは2原子%以上50原子%以下、より好ましくは4.4原子%以上32.2原子%以下の範囲内である。原子比率bが2原子%未満であると、記録パワーマージンが狭くなる傾向がある。一方、原子比率bが50原子%を超えると、低透過率となる傾向がある。
【0042】
W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率cは、好ましくは10原子%以上70原子%以下、より好ましくは28.5原子%以上68.1原子%以下の範囲内である。原子比率cが10原子%未満であると、再生耐久性が弱くなる傾向がある。一方、原子比率cが70原子%を超えると、低透過率となる傾向がある。
【0043】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3のうちの少なくとも1層の無機記録層11が、上述の3元系酸化物にさらにZn酸化物を加えた4元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この4元系酸化物に含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、好ましくは0.17≦x2、より好ましくは0.37≦x2、さらに好ましくは0.37≦x2≦1.26、最も好ましくは0.56≦x2≦1.26の関係を満たしている。Zn酸化物を加えることにより、光情報記録媒体の情報信号層として求められる特性を満たしつつ、優れた透過特性を維持しながら、Zn酸化物以外の総量を低くすることが出来る。つまり、Zn酸化物を加えることで高価なPd酸化物の割合を小さくでき、コスト低減を実現できる。
但し、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)により定義される変数である。
a:W、Pd、CuおよびZnの合計に対するWの原子比率[原子%]
b:W、Pd、CuおよびZnの合計に対するPdの原子比率[原子%]
c:W、Pd、CuおよびZnの合計に対するCuの原子比率[原子%]
d:W、Pd、CuおよびZnの合計に対するZnの原子比率[原子%]
【0044】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0に到達する光量を増やす観点からすると、情報信号層L0以外の情報信号層L1〜L3が有する無機記録層11が全て、上述の4元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この場合、上述の4元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x2、より好ましくは0.37≦x2、さらに好ましくは0.37≦x2≦1.26、最も好ましくは0.56≦x2≦1.26の関係を満たしている。また、情報信号層L1〜L3の無機記録層11の変数x2の値は、光照射面Cに近い情報信号層Lのものほど大きな値となることが好ましい。光照射面Cに近い情報信号層Lほど透過率を高くすることができるからである。
【0045】
また、良好な信号特性や高記録パワーマージン、高再生耐久性、記録後透過率変化の抑制、低コストの観点からすると、情報信号層L0〜L3が有する無機記録層11全てが、上述の4元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この場合、上述の4元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x2、より好ましくは0.37≦x2、さらに好ましくは0.37≦x2≦1.26、最も好ましくは0.56≦x2≦1.26の関係を満たしている。また、一般的に最奥層に近い情報記録層Lほど高い記録感度が必要なために透過率が低くなりやすいことから、光照射面Cに近い情報信号層Lほど高透過率となるよう設計することが多い。よって、情報信号層L1〜L3の無機記録層11の変数x2の値は、光照射面Cに近い情報信号層Lのものほど大きな値となることが好ましい。
【0046】
W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するWの原子比率aは、好ましくは10原子%以上70原子%以下、より好ましくは14.2原子%以上31.8原子%以下の範囲内である。原子比率aが10原子%未満であると、低透過率となる傾向がある。一方、原子比率aが70原子%を超えると、記録感度低下となる傾向がある。
【0047】
W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するPdの原子比率bは、好ましくは2原子%以上50原子%以下、より好ましくは4.4原子%以上32.2原子%以下の範囲内である。原子比率bが2原子%未満であると、記録パワーマージンが狭くなる傾向がある。一方、原子比率bが50原子%を超えると、低透過率となる傾向がある。
【0048】
W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するCuの原子比率cは、好ましくは10原子%以上70原子%以下、より好ましくは28.5原子%以上43.4原子%以下の範囲内である。原子比率cが10原子%未満であると、再生耐久性が弱くなる傾向がある。一方、原子比率cが70原子%を超えると、低透過率となる傾向がある。
【0049】
W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するZnの原子比率dは、好ましくは5原子%以上60原子%以下、より好ましくは17原子%以上41原子%以下の範囲内である。原子比率dが5原子%未満であると、コスト低減効果が弱くなる傾向がある。一方、原子比率dが60原子%を超えると、高温高湿環境下での耐久性が弱くなる傾向がある。
【0050】
上述の3元系酸化物および4元系酸化物以外の情報信号層L1〜L3の材料としては、例えば、In酸化物とPd酸化物の混合物を用いることも可能である。但し、光情報記録媒体の情報信号層Lとして優れた透過特性を実現できるが、記録のマーク形成時の泡の発生量が多い影響により記録前後の特性変化が大きくなりやすく、求められる特性の1つである記録後透過率変化が小さくならなので、上述の3元系酸化物または4元系酸化物を用いることが好ましい。
【0051】
光照射面Cから最も奥側となる情報信号層L0の材料としては、In酸化物とPd酸化物の混合物を用いることも可能である。但し、記録パワーマージン特性の観点からすると、上述の3元系酸化物または4元系酸化物を用いることが好ましい。
【0052】
無機記録層11の厚さは、好ましくは25nm以上60nm以下、より好ましくは30nm以上50nm以下の範囲内である。25nm未満であると、信号特性悪化となる傾向がある。一方、60nmを超えると、記録パワーマージンが狭くなる傾向がある。
【0053】
第1保護層12および第2保護層13としては、誘電体層または透明導電層を用いることが好ましく、第1保護層および第2誘電体層13のうちの一方として誘電体層を用い、他方として透明導電層を用いることも可能である。誘電体層または透明導電層が酸素バリア層として機能することで、無機記録層11の耐久性を向上することができる。また、無機記録層11の酸素の逃避を抑制することで、記録膜の膜質の変化(主に反射率の低下として検出)を抑制することができ、無機記録層11として必要な膜質を確保することができる。さらに、誘電体層または透明導電層を設けることで、記録特性を向上させることができる。これは、誘電体層または透明導電層に入射したレーザ光の熱拡散が最適に制御されて、記録部分における泡が大きくなりすぎたり、Pd酸化物の分解が進みすぎて泡がつぶれるといったことが抑制され、記録時の泡の形状を最適化することができるためと考えられる。
【0054】
第1保護層12および第2保護層13の材料としては、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物またはその混合物が挙げられる。第1保護層12および第2保護層13の材料としては、互いに同一または異なる材料を用いることができる。酸化物としては、例えば、In、Zn、Sn、Al、Si、Ge、Ti、Ga、Ta、Nb、Hf、Zr、Cr、BiおよびMgからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物が挙げられる。窒化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Nb、Mo、Ti、Nb、Mo、Ti、W、TaおよびZnからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物、好ましくはSi、GeおよびTiからなる群から選ばれる1種以上の元素の窒化物が挙げられる。硫化物としては、例えば、Zn硫化物が挙げられる。炭化物としては、例えば、In、Sn、Ge、Cr、Si、Al、Ti、Zr、TaおよびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物、好ましくはSi、Ti、およびWからなる群より選ばれる1種以上の元素の炭化物が挙げられる。フッ化物としては、例えば、Si、Al、Mg、CaおよびLaからなる群より選ばれる1種以上の元素のフッ化物が挙げられる。これらの混合物としては、例えば、ZnS−SiO2、SiO2−In23−ZrO2(SIZ)、SiO2−Cr23−ZrO2(SCZ)、In23−SnO2(ITO)、In23−CeO2(ICO)、In23−Ga23(IGO)、In23−Ga23−ZnO(IGZO)、Sn23−Ta25(TTO)、TiO2−SiO2などが挙げられる。
【0055】
第1保護層12の厚さは、好ましくは2nm以上20nm以下の範囲内である。2nm未満であると、バリア効果が薄くなる傾向がある。一方、20nmを超えると、記録パワーマージン減少(悪化)となる傾向がある。
【0056】
第2保護層13の厚さは、好ましくは2nm以上50nm以下の範囲内である。2nm未満であると、バリア効果が小さくなる傾向がある。一方、50nmを超えると、記録パワーマージン減少(悪化)となる傾向がある。
【0057】
例えば、情報信号層L0〜L3としては、以下の構成を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。高感度が求められるx1やx2が小さい組成比となる最奥層に近いL1層は、Pd、Cuが多くなりやすいために記録後透過率変動が大きくなりやすいく、そのため消衰係数が0.05以上の第1保護層12と第2保護層13を用い、透過率変動を抑制することが好ましい。また高透過率が求められるx1やx2が大きい組成比となるL3層は、記録後透過率変化は小さいがパワーマージンが狭くなりやすいので、第1保護層12や第2保護層13にSIZやIGZOを用い、パワーマージンの確保をすることが好ましい。またL2層は、L1層とL3の層の組み合わせを用い、これらにより、記録層の材料や求められる感度や透過率が異なっても、パワーマージンや透過率変動抑制の各層の特性の均等化ができる。
【0058】
以下では、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物の3成分からなる混合物を「WCPO」と適宜称する。また、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物の4成分からなる混合物を「WZCPO」と適宜称する。
【0059】
(情報信号層L0)
第1保護層12:ITO
無機記録層11:WCPO(0.4≦x1≦0.6)、好ましくはWZCPO(0.4≦x2≦0.6)
第2保護層13:ITO
【0060】
(情報信号層L1)
第1保護層12:消衰係数kが0.05以上0.6以下の範囲内の材料、好ましくはITO
無機記録層11:WCPO(0.5≦x1≦0.9)、好ましくはWZCPO(0.5≦x2≦0.9)
第2保護層13:消衰係数kが0.05以上0.6以下の範囲内の材料、好ましくはITO
【0061】
(情報信号層L2)
第1保護層12:消衰係数kが0.05以上0.6以下の範囲内の材料、好ましくはITO
無機記録層11:WCPO(0.8≦x1≦1.2)、好ましくはWZCPO(0.8≦x2≦1.2)
第2保護層13:SIZまたはIGZO
【0062】
(情報信号層L3)
第1保護層12:SIZまたはIGZO
無機記録層11:WCPO(0.8≦x1≦1.2)、好ましくはWZCPO(0.8≦x2≦1.2)
第2保護層13:SIZまたはIGZO
【0063】
(中間層)
中間層S1〜S3はL0とL1、L2、L3とを物理的及び光学的に十分な距離をもって離間させる役割を果たし、その表面には凹凸面が設けられており、同心円若しくは螺旋状のグルーブ(イングルーブGinおよびオングルーブGon)を形成している。中間層S1〜S3の厚みとしては9μm〜50μmに設定することが好ましく、例えば、S1は15μm、S2は20μm、S3は10μmとされる。中間層S1〜S3の材料としては特に限定されるものではないが、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることが好ましいく、また中間層S1〜S3は奥層へのデータの記録・再生のためのレーザ光の光路となることから、十分に高い光透過性を有していることが好ましい。
【0064】
(光透過層)
光透過層2は、例えば、紫外線硬化樹脂などの感光性樹脂を硬化してなる樹脂層である。この樹脂層の材料としては、例えば、紫外線硬化型のアクリル系樹脂が挙げられる。また、円環形状を有する光透過性シートと、この光透過性シートを基板1に対して貼り合わせるための接着層とから光透過層2を構成するようにしてもよい。光透過性シートは、記録および再生に用いられるレーザ光に対して、吸収能が低い材料からなることが好ましく、具体的には透過率90パーセント以上の材料からなることが好ましい。光透過性シートの材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂材料、ポリオレフィン系樹脂(例えばゼオネックス(登録商標))などを用いることができる。接着層の材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂、感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)などを用いることができる。
【0065】
光透過層2の厚さは、好ましくは10μm以上177μm以下の範囲内から選ばれ、例えば53.5μmに選ばれる。このような薄い光透過層2と、例えば0.85程度の高NA(numerical aperture)化された対物レンズとを組み合わせることによって、高密度記録を実現することができる。
【0066】
(ハードコート層)
ハードコート層3は、光照射面Cに耐擦傷性などを付与するためのものである。ハードコート層3の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、有機無機ハイブリッド系樹脂などを用いることができる。
【0067】
(バリア層)
バリア層4は、成膜工程において基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制するものである。また、バリア層4は、基板1の裏面における水分の吸収を抑制する防湿層としても機能する。バリア層4を構成する材料としては、基板1の裏面からの脱ガス(水分放出)を抑制することができるものであればよく特に限定されるものではないが、例示するならば、ガス透過性が低い誘電体を用いることができる。このような誘電体としては、例えば、SiN、SiO2、TiN、AlN、ZnS−SiO2などを用いることができる。バリア層4の厚さは、5nm以上40nm以下に設定することが好ましい。5nm未満であると、基板裏面からの脱ガスを抑制するバリア機能が低下する傾向がる。一方、40nmを超えると、脱ガスを抑制するバリア機能がそれ以下の膜厚の場合と殆ど変わらず、また、生産性の低下を招く傾向があるからである。バリア層4の水分透過率は、5×10-5g/cm2・day以下であることが好ましい。
【0068】
上述の構成を有する光情報記録媒体10では、無機記録層11にレーザ光が照射されると、Pd酸化物がレーザ光により加熱され、分解して酸素を放出し、レーザ光が照射された部分に気泡が生成される。これにより、情報信号の不可逆的な記録を行うことができる。
【0069】
[光情報記録媒体の製造方法]
次に、本技術の一実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。
【0070】
(基板の成形工程)
まず、一主面に凹凸面が形成された基板1を成形する。基板1の成形の方法としては、例えば、射出成形(インジェクション)法、フォトポリマー法(2P法:Photo Polymerization)などを用いることができる。
【0071】
(情報信号層の形成工)
次に、例えばスパッタリング法により、基板1上に、第1保護層12、無機記録層11、第2保護層13を順次積層することにより、情報信号層L0を形成する。
以下に、第1保護層12、無機記録層11、および第2保護層13の形成工程について具体的に説明する。
【0072】
(第1保護層の成膜工程)
まず、基板1を、誘電体材料または透明導電材料を主成分として含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、基板1上に第1保護層12を成膜する。スパッタリング法としては、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
【0073】
(無機記録層の成膜工程)
次に、基板1を、無機記録層成膜用のターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、第1保護層11上に無機記録層12を成膜する。
【0074】
ここで、無機記録層成膜用のターゲットは、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物の3元系酸化物を少なくとも主成分として含んでいる。この3元系酸化物に含まれるW、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x1、より好ましくは0.37≦x1、さらに好ましくは0.37≦x1≦1.26、最も好ましくは0.56≦x1≦1.26の関係を満たしている。なお、x1は、上述したように、x1=a/(b+0.8c)により定義される変数である。
【0075】
無機記録層成膜用のターゲットは、上述の3元系酸化物にさらにZn酸化物を加えた4元系酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。この4元系酸化物に含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、好ましくは0.17≦x2、より好ましくは0.37≦x2、さらに好ましくは0.37≦x2≦1.26、最も好ましくは0.56≦x2≦1.26の関係を満たしている。なお、変数x2は、上述したように、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)により定義される変数である。
【0076】
無機記録層成膜用のターゲットの3元系酸化物および4元系酸化物としては、無機記録層11と同様の組成を有するものが好ましい。
【0077】
また、少なくとも酸素との反応性スパッタリングにより無機記録層11を形成するようにしてもよい。この場合、光情報記録媒体用ターゲットとしては、W、Pd、およびCuを主成分とするWCP金属ターゲットを用いることが好ましい。W、Pd、およびCuの割合が、好ましくは0.17≦x1、より好ましくは0.37≦x1、さらに好ましくは0.37≦x1≦1.26、最も好ましくは0.56≦x1≦1.26の関係を満たしていることが好ましい。なお、x1は、上述したように、x1=a/(b+0.8c)により定義される変数である。
【0078】
また、光情報記録媒体用ターゲットとしては、W、Pd、Cu、およびZnを主成分とするWZCP金属ターゲットを用いることが好ましい。W、Pd、Cu、およびZnの割合が、好ましくは0.17≦x2、より好ましくは0.37≦x2、さらに好ましくは0.37≦x2≦1.26、最も好ましくは0.56≦x2≦1.26の関係を満たしている。なお、変数x2は、上述したように、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)により定義される変数である。
【0079】
(第2保護層の成膜工程)
次に、基板1を、誘電体材料または透明導電材料を主成分として含むターゲットが備えられた真空チャンバー内に搬送し、真空チャンバー内を所定の圧力になるまで真空引きする。その後、真空チャンバー内にArガスやO2ガスなどのプロセスガスを導入しながら、ターゲットをスパッタリングして、無機記録層12上に第2保護層13を成膜する。スパッタリング法としては、例えば高周波(RF)スパッタリング法、直流(DC)スパッタリング法を用いることができるが、特に直流スパッタリング法が好ましい。直流スパッタ法は高周波スパッタ法に比して成膜レートが高いため、生産性を向上することができるからである。
以上により、基板1上に情報信号層L0が形成される。
【0080】
(中間層の形成工程)
次に、例えばスピンコート法により紫外線硬化樹脂を情報信号層L0上に均一に塗布する。その後、情報信号層L0上に均一に塗布された紫外線硬化樹脂に対してスタンパの凹凸パターンを押し当て、紫外線を紫外線硬化樹脂に対して照射して硬化させた後、スタンパを剥離する。これらにより、スタンパの凹凸パターンが紫外線硬化樹脂に転写され、例えばイングルーブGinおよびオングルーブGonが設けられた中間層S1が情報信号層L0上に形成される。
【0081】
(情報信号層および中間層の形成工程)
次に、上述の情報信号層L0および中間層S1の形成工程と同様にして、中間層S1上に、情報信号層L1、中間層S2、情報信号層L2、中間層S3、情報信号層L3をこの順序で中間層S1上に積層する。この際、成膜条件やターゲット組成などを適宜調整することにより、情報信号層L1〜L3を構成する第1保護層12、無機記録層11、および第2保護層13の膜厚や組成などを適宜調整するようにしてもよい。また、スピンコート法の条件を適宜調整することにより、中間層S1〜S3の厚さを適宜調整するようにしてもよい。
【0082】
(光透過層の形成工程)
次に、例えばスピンコート法により、紫外線硬化樹脂(UVレジン)などの感光性樹脂を情報信号層L3上にスピンコートした後、紫外線などの光を感光性樹脂に照射し、硬化する。これにより、情報信号層L3上に光透過層2が形成される。
以上の工程により、目的とする光情報記録媒体が得られる。
【実施例】
【0083】
以下、試験例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこの試験例のみに限定されるものではない。
【0084】
また、多層の光情報記録媒体の情報信号層を、基板側からレーザ光照射面側に向かって順にL0層、L1層、L2層、・・・・と称する
【0085】
試験例について以下の順序で説明する。
1.無機記録層の組成
2.2層の光情報記録媒体の透過率範囲
3.4層の光情報記録媒体の透過率範囲
【0086】
<1.無機記録層の組成>
(試験例1〜15)
まず、射出成形により、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。なお、このポリカーボネート基板上には、グルーブを有する凹凸面を形成した。次に、スパッタリング法により、ポリカーボネート基板上に第1保護層、無機記録層、第2保護層を順次積層した。具体的な各層の構成は以下のようにした。
【0087】
第1保護層
材料:SiO2−In23−ZrO2(SIZ)、厚さ:10nm
無機記録層
材料:WZCPO、厚さ:40nm
第2保護層
材料: SiO2−In23−ZrO2(SIZ)、厚さ:25nm
但し、無機記録層のWZCPO中のCu、Zn、Pd、Wそれぞれの原子比率c、d、b、aが表1に示す値となるように、試験例1〜15ごとにターゲット組成を調製した。
【0088】
次に、スピンコート法により、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製、商品名:SK8300)を第2保護層上に均一塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ100μmを有する光透過層を形成した。
以上により、目的とする光情報記録媒体を得た。
【0089】
(透過率評価)
上述のようにして得られた試験例1〜15の光情報記媒体の透過率を、分光高度計(日本分光(株)製、商品名:V530)を用いて、記録波長405nmに対する透過率を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
次に、測定した透過率と原子比率c、d、b、aとを用いて、近似直線を求めた。その結果を図2Aに示す。図2Aにおいて、横軸は変数x(=(0.1d+a)/(b+0.8c))を示し、縦軸は透過率を示す。図2Aに示すように、近似直線は、y=25.642x+45.441により表される。ここで、yは透過率[%]を示し、xは、(0.1d+a)/(b+0.8c)を示す。前記近似直線の求め方としては、比較的消衰係数の小さいW酸化物とZn酸化物の各割合の和を分子に、比較的消衰係数の大きいPd酸化物とCu酸化物の各割合の和を分母と置き、決定係数R2乗が最も大きくなるように各割合に係数を掛けて各係数を決定した。
【0091】
(最適記録パワー評価)
ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、i−MLSE値が最小となる記録パワーを求め、この記録パワーを最適記録パワーPwoとした。その結果を図2Bに示す。ここでi−MLSEとは、高密度記録再生用の従来のジッタに相当する信号評価指標であり、値が小さいほど良好な信号特性である。
【0092】
表1は、試験例1〜15の無機記録層の組成比と変数xと透過率とを示す。図3は、試験例1〜13の無機記録層の組成比を示すグラフである。
【表1】

【0093】
図2Aに示した近似直線yから以下のことがわかる。
透過率を50%以上とするためには、変数xを0.17以上とすることが好ましい。
透過率を55%以上とするためには、変数xを0.37以上とすることが好ましい。
透過率を60%以上とするためには、変数xを0.56以上とすることが好ましい。
透過率を78%以下とするためには、変数xを1.26以下とすることが好ましい。
なお、多層の光情報記録媒体では、L1層以上の情報信号層(L1層、L2層、L3層、・・・・)の透過率を55%以上とすることが好ましい。透過率55%以上が好ましい理由については、後述する。なお、WZCPO以外の記録膜組成(ZnS−SiO2−Sb−SnやTePdOなど)を用いた2層ディスクではL0層の反射率を高くできることを考慮すると、L1層の透過率を50%以上とすることが好ましい。
【0094】
図2Bに示した近似直線から以下のことがわかる。
最適記録パワーPwoを20mW以下とするためには、透過率を78%以下とすることが好ましいことがわかる。ここで、最適記録パワーPwo:20mWは、民生用のドライブ装置の最適記録パワーPwoの上限値である。この上限値を超えると、必要なレーザ量が供給されないことにより、記録時のマークの泡の形成が不十分となり、結果、信号特性が悪化することとなる。
【0095】
<2.2層の光情報記録媒体の透過率範囲>
(試験例16〜27)
まず、射出成形により、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を成形した。なお、このポリカーボネート基板上には、グルーブを有する凹凸面を形成した。
【0096】
次に、スパッタリング法により、ポリカーボネート基板上に第1保護層、無機記録層、第2保護層を順次積層することにより、L0層を作製した。ここで、L0層は、2層の光情報記録媒体用のL0層とした。
具体的な各層の構成は以下のようにした。
【0097】
第1保護層
材料:ITO、厚さ:10nm
無機記録層
材料:WZCPO、厚さ:26nm〜30nm
組成比:a=10、b=30、c=30、d=30とした。
第2保護層
材料:TaN、厚さ:6nm〜16nm
但し、無機記録層および第2保護層の厚さが表2に示す値となるように、試験例16〜17ごとに成膜条件を調製した。
【0098】
次に、スピンコート法により、紫外線硬化樹脂(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製、商品名:SK8300)を第2保護層上に均一塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより、厚さ100μmを有する光透過層を形成した。
以上により、L0層のみを有する光情報記録媒体を得た。
【0099】
(i−MLSE評価)
上述のようにして得られた試験例16〜27の光情報記録媒体のi−MLSEを以下のようにして求めた。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、NA=0.85、記録波長405nm、記録線速7.69m/sで1層あたり32GB密度の1−7変調データを記録再生して、i−MLSE値を測定した。
【0100】
(反射率評価)
上述のようにして得られた試験例16〜27の光情報記録媒体の反射率を以下のようにして測定した。なお、2層の光情報記録媒体のL0層のみを用いて作製された単層の光情報記録媒体の反射率を、L0層単独の反射率と称する。ディスクテスタ(パルステック社製、商品名:ODU−1000)を用いて、NA=0.85、記録波長405nmで反射率を測定した。
【0101】
表2は、試験例16〜27の光情報記録媒体のi−MLSEおよび反射率の測定結果を示す。
【表2】

【0102】
図4Aは、上述のようにして求めたi−MLSEと反射率との関係を示すグラフである。図4Aから、L0層のi−MLSE値を11%以下にするためには、L0層の反射率を14%以下にする必要があることがわかる。ここで、i−MLSE値11%は、民生用のドライブ装置によりエラー訂正可能と言われている上限値である。反射率を向上させるには、上記膜厚よりも第1保護層、無機記録層、第2保護層いずれか若しくは組み合わせで各々を薄くする方向であったが、いずれも薄くさせるとi−MLSE値が悪化した。これは、無機記録層の蓄熱や放熱が変わり結果、記録時の泡の形成が不適切になるために悪化したと推測される。
【0103】
(試験例28〜39)
上述のようにして求めたL0層単独の反射率14%を前提として、2層の光情報記録媒体のL1層の透過率に対するL0層の反射率を光学シミュレーションにより求めた。その結果を表3および図4Bに示す。ここで、L0層の反射率をR、L1の透過率をTとすると、Rは下記(1)式により計算することができる。
R=14%(L0層単独の反射率)×T2 (1)
【0104】
表3は、試験例28〜39の光情報記録媒体のL0層単独の反射率、L1層の透過率およびL0層の反射率を示す。
【表3】

【0105】
図4Bから、2層の光情報記録媒体のL1層の反射率を4%以上にするためには、L1層の透過率は55%以上とする必要があることがわかる。ここで、L1層の反射率4%は、民生用の2層対応ドライブ装置を用いて情報信号を再生するために必要な反射率の下限値である。
【0106】
<3.4層の光情報記録媒体の透過率範囲>
(試験例40〜48)
4層の光情報記録媒体のL1層のみの透過率を変化させたときのL0層のi−MLSEを測定した。その結果を表4および図4Cに示す。ここで、L1の記録特性は今回の目的ではないので、L1層の透過率の調整は下記の条件の通り無機記録層の厚さの調整とした。
【0107】
L1層の具体的な膜構成は下記のとおりである。
第1保護層
材料:ITO、厚さ:7nm
無機記録層
材料:WZCPO、厚さ:2nm〜130nm
組成比:a=25、b=10、c=40、d=25
第2保護層
材料:ITO、厚さ:10nm
【0108】
L0層の具体的な膜構成は下記のとおりである。
第1保護層
材料:ITO、厚さ:8nm
無機記録層
材料:WZCPO、厚さ:30nm
組成比:a=10、b=30、c=30、d=30
第2保護層
材料:TaN、厚さ:10nm
【0109】
表4は、試験例40〜48の光情報記録媒体のL0層単独の反射率、L1層の透過率およびL0層のi−MLSE値を示す。
【表4】

【0110】
図4Cから、L0層のi−MLSE値を11%以下とするためには、L1層の透過率を55%以上とする必要があることがわかる。ここで、i−MLSE値11%は、民生用のドライブ装置によりエラー訂正可能な上限値である。L1層の透過率が低い場合には、L0層の信号量が低下するため、再生するに十分なS/Nが得られないからであると考えられる。よって、L1の透過率は高い方がL0層の信号特性は良くなる。
【0111】
以上により、2層や4層などの多層の光情報記録媒体では、L1層以上の情報信号層(L1層、L2層、L3層、・・・・)の透過率は、55%以上とすることが好ましいことがわかる。
【0112】
以上、本技術の実施形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0113】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0114】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0115】
また、上述の実施形態では、情報記録媒体が4層の情報信号層を備える場合を例として説明したが、情報信号層の層数はこれに限定されるものではなく、情報信号層は2層以上の任意の層数とすることが可能である。
【0116】
また、上述の実施形態では、基板上に2以上の情報信号層、光透過層がこの順序で積層された構成を有し、この光透過層側からレーザ光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体に対して本技術を適用した場合を例として説明したが、本技術はこの例に限定されるものではない。例えば、基板上に2以上の情報信号層、保護層がこの順序で積層された構成を有し、基板側からレーザ光を2以上の情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体、または2枚の基板の間に2以上の情報信号層が設けられた構成を有し、一方の基板の側からレーザ光を情報信号層に照射することにより情報信号の記録または再生が行われる光情報記録媒体に対しても本技術は適用可能である。
【0117】
また、上述の実施形態では、スパッタリング法により光情報記録媒体の各層を形成する場合を例として説明したが、成膜方法はこれに限定されるものではなく、他の成膜方法を用いてもよい。他の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)などを用いることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 基板
2 保護層
3 ハードコート層
4 バリア層
10 光情報記録媒体
11 無機記録層
12 第1保護層
13 第2保護層
L0〜L3 情報信号層
S1〜S3 中間層
Gin イングルーブ
Gon オングルーブ
C 光照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に設けられた2以上の記録層と、
上記記録層上に設けられた保護層と
を備え、
上記基板および上記保護層の側のいずれか一方の表面が、上記2以上の記録層に情報信号を記録するための光が照射される光照射面であり、
上記光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体。
【請求項2】
上記光照射面から最も奥側となる記録層以外の記録層のうちの少なくとも1層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含み、
上記W酸化物、上記Pd酸化物、上記Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.17≦x2(但し、x2=(0.1d+a)/(b+0.8c)、a:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するCuの原子比率[原子%]、d:W、Pd、Cu、およびZnの合計に対するZnの原子比率[原子%])の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.37≦x1≦1.26の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記光照射面から最も奥側となる記録層以外の全ての記録層が、W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
1の値が、上記光照射面に近い記録層ほど大きくなる請求項5記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合x1が、光照射面に近い記録層のほうが大きい関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記原子比率a、上記原子比率b、および上記原子比率cがそれぞれ、10≦a≦70、2≦b≦50、10≦c≦70の関係を満たす請求項1記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、上記Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2の関係を満たす請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、上記Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.37≦x2≦1.26の関係を満たす請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
上記光照射面から最も奥側となる記録層以外の全ての記録層が、W酸化物、Pd酸化物、Cu酸化物、およびZn酸化物を主成分として含み、
上記W酸化物、上記Pd酸化物、上記Cu酸化物、およびZn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、CuおよびZnの割合が、0.17≦x2の関係を満たす請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
2の値が、上記光照射面に近い記録層ほど大きくなる請求項11記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
上記W酸化物、上記Pd酸化物、上記Cu酸化物および上記Zn酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、Cu及びZnの割合x2が、光照射面に近い記録層のほうが大きい関係を満たす請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項14】
上記原子比率a、上記原子比率b、上記原子比率cおよび上記原子比率dがそれぞれ、10≦a≦70、2≦b≦50、10≦c≦70、5≦d≦60の関係を満たす請求項2記載の光情報記録媒体
【請求項15】
上記記録層の両側に隣接して設けられた第1保護層および第2保護層をさらに備え、
上記第1保護層および上記第2保護層が、誘電体層または透明導電層である請求項1または請求項2記載の光情報記録媒体。
【請求項16】
W酸化物、Pd酸化物、およびCu酸化物を主成分として含み、
上記W酸化物、上記Pd酸化物、および上記Cu酸化物にそれぞれ含まれるW、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体用記録層。
【請求項17】
光情報記録媒体用ターゲットを用いて、少なくとも酸素との反応性スパッタリングにより金属酸化物記録層を形成する工程を備え、
上記光情報記録媒体用ターゲットは、
W、Pd、およびCuを主成分として含み、
上記W、Pd、およびCuの割合が、0.17≦x1(但し、x1=a/(b+0.8c)、a:W、Pd、およびCuの合計に対するWの原子比率[原子%]、b:W、Pd、およびCuの合計に対するPdの原子比率[原子%]、c:W、Pd、およびCuの合計に対するCuの原子比率[原子%])の関係を満たす光情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161941(P2012−161941A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22181(P2011−22181)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】