説明

光情報記録媒体の製造に適した光硬化性転写円盤シート、及びその製造方法

【課題】
長尺状シートのシート巻き物の状態でも、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化、層厚の変動、及び層成分のしみだしを生じない光硬化性転写円盤シートを提供すること。
【解決手段】
長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層とその上に設けられた円盤状剥離シートとの積層体が、長手方向に設けられてなる光硬化性転写円盤シートであって、該長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層が設けられていることを特徴とする光硬化性転写円盤シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の大容量の文字、音声、動画像等の情報をディジタル信号として記録された及び/又は記録可能な光情報記録媒体の製造に有利に使用される光硬化性転写円盤シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル信号として表面にピット形成された記録済み光情報記録媒体として、オーディオ用CD、CD−ROMが広く使用されているが、最近、動画像と記録も可能な両面にピット記録がなされたDVDが、CDの次世代記録媒体として注目され、すでに使用されている。またピット及びグルーブが形成されたユーザが記録可能なCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等もすでに使用されるようになっている。
【0003】
両面に記録層を持つDVDには、例えば、図7に示すようにそれぞれ片面に信号ビットを形成した2枚の透明樹脂基板71,72の該信号ビット形成面にそれぞれ反射層71a,72aを形成し、これら反射層71a,72aを互いに対面させた状態で基板71,72を接着剤層73を介して貼り合わせ、接合した両面読み出し方式のもの、及び、図8に示すように、それぞれ片面に信号ビットを形成した基板81,82において、一方の基板81の信号ビット面に半透明層81bを形成すると共に、他方の基板82の信号ビット面に反射層82aを形成し、これら半透明反射層81bと反射層82aとを対向させた状態で基板81,82を接着剤層83を介して貼り合わせ、接合した片面読み出し方式のものとが知られている。
【0004】
両面読み出しDVDの製造は、従来、一般に前記信号ピットの凹凸が雄雌反対の凹凸を有するスタンパを用いて、ポリカーボネート樹脂を溶融し、射出成形することにより表面に凹凸を有する透明樹脂基板を作製し、この凹凸表面にアルミニウム等の金属をスパッタリング等により蒸着することによって反射層を形成し、この反射層が形成された透明樹脂基板2枚を反射層を対向させて接着剤で貼り合わせることにより行われていた。
【0005】
2002年2月10日に次世代光ディスクの統一規格「ブル−レイ・ディスク(Blu-ray Disc)」が提案された。主な仕様は、記録容量:23.3/25/27GB、レーザ波長:405nm(青紫色レーザ)、レンズ開口数(N/A):0.85、ディスク直径:120mm、ディスク厚:1.2mm、トラックピッチ:0.32μm等である。
【0006】
上記のようにブル−レイ・ディスクでは、溝の幅が狭く、且つピットも小さくなっている。このため読み取りレーザのスポットを小さく絞る必要があるが、スポットを小さくするとディスクの傾きによる影響を大きく受けるようになり、再生しようとするDVDがわずかに曲がっていても再生できなくなる。このような不利を補うため、基板の厚さを薄くし、またレーザ照射側のピット上のカバー層の厚さを0.1mm程度にすることが考えられている。
【0007】
非特許文献1の68頁に上記要求に合うDVDの製造方法が記載されている。図9を参照しながら説明する。凹凸表面に反射層(又は記録層)96aを有するディスク基板(1.1mm)94aのその反射層上に紫外線硬化樹脂95Aを塗布により設け、凹凸表面に反射層(又は記録層)を有するポリカーボネート製スタンパ94bの上に紫外線硬化樹脂95Bを塗布により設ける。次いで、基板を表裏反転させて、基板とスタンパを貼り付け、スタンパ側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂95A及び95Bを硬化させる。紫外線硬化樹脂95Bの層からスタンパ94bを除去し、その凹凸面に反射層(又は記録層)96bを形成し、その上にカバー層(厚さ0.1mm程度)97を形成する。
【0008】
上記の方法において、ディスク基板及びスタンパの表面には、塗布により紫外線硬化樹脂が設けられ、さらにその後基板を表裏反転させて、スタンパと貼り付けている。このように塗布及び反転の複雑な工程を行う必要があり、また反転して基板とスタンパを貼り付けする際、粘チョウな紫外線硬化樹脂同士の接触の際に気泡の発生等の不利があり、良好な貼り付けを行うことができないとの問題がある。さらに、上記紫外線硬化樹脂は硬化時に収縮が大きく、得られる媒体の反り等の変形が目立つとの問題もある。
【0009】
上記問題点が改良可能なDVD等の光情報記録媒体の製造方法が、WO03/032305A1に開示されている。ここには、光重合性官能基を有する反応性ポリマーを含み且つ加圧により変形可能な光硬化性組成物からなる光硬化性転写シートを用いた製造方法が記載されている。即ち、上記紫外線硬化性樹脂の代わりに、固体状の上記光硬化性転写シートを用いて、スタンパに押圧することにより凹凸面を転写して上記問題点が回避できる。
【0010】
【特許文献1】WO03/032305A1
【非特許文献1】日経エレクトロニクス(NIKKEI ELECTRONICS)、2001.11.5号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者等は、光硬化性転写材料を光情報記録媒体の製造へ使用することを鋭意研究し、特に長尺剥離シートの面上に、円盤状光硬化性転写層、円盤状剥離シートが順に積層されている光硬化性転写円盤シートの態様に到達してこれについて開発を進めてきた。このような光硬化性転写円盤シートの基本構造の典型的な一例を図6に示す。図6において、長尺剥離シート61の表面上に、円盤状光硬化性転写層62dと円盤状剥離シート63dとの積層体65が積層されて、光硬化性転写円盤シート60が形成されている。積層体65と長尺剥離シート61を貫通して、内孔66が設けられている。円盤状光硬化性転写層62dは、ドーナツ形状の孔のある円盤となっているために、上下の剥離シートを剥離して、DVD等の光情報記録媒体の製造に有利に使用可能なものとなっている。このような光硬化性転写円盤シートは、長尺剥離シートの表面上に、光硬化性転写層及び剥離シートを順に積層した光硬化性転写材シートから、円盤状の打ち抜き加工を行うことによって製造することができる。
【0012】
しかし、この光硬化性転写円盤シートでは、円盤状光硬化性転写層が、常温でも押圧により基板やスタンパの凹凸面を転写することができる材料となっているために、光硬化性転写円盤シートを巻き取ってロール状のシート巻き物に製造する場合、及びその巻き物の状態で保存する場合に、巻き取ったシートの形状がその荷重により変化したり、巻き物が巻き締まることによって、円盤状光硬化性転写層について、円盤形状の変化、層厚の変動、層成分のしみだし等の問題を生じることがわかった。円盤状光硬化性転写層の形状と層厚の変動は、これを使用して製造される光情報記録媒体の精度と歩留まりの低下という問題を生じる。また層成分のしみだしは、製造装置、作業員等を汚染する場合があり、これにより作業性が低下するという問題が生じる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、DVD等の厚さが薄く、高容量の薄い光情報記録媒体の製造に有利な光硬化性転写円盤シートであって、長尺状シートのシート巻き物の状態でも、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化がなく、層厚の変動が起こらず、層成分のしみだしを生じない光硬化性転写円盤シートを提供することにある。
【0014】
さらに、本発明は、長尺状シートのシート巻き物の状態でも、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化がなく、層厚の変動が起こらず、層成分のしみだしを生じない上記光硬化性転写円盤シートの製造方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、上記光硬化性転写円盤シートの製造、保管、運搬に適したシート巻き物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、上記目的が、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層とその上に設けられた円盤状剥離シートとの積層体が、長手方向に設けられてなる光硬化性転写円盤シートであって、
該長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層が設けられていることを特徴とする光硬化性転写円盤シートによって達成されることを見いだした。
【0017】
前記スペーサー層は、前記積層体が設けられた側の表面上に設けられていてもよい。あるいは、前記スペーサー層は、前記積層体が設けられていない側の表面上に設けられていてもよい。
【0018】
本発明では、このようなスペーサー層を設けることにより積層体が保護され、本発明の光硬化性転写円盤シートは、巻き取ってロール状のシート巻き物に製造した場合、及びそのシート巻き物の状態で保存した場合にも、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化、層厚の変動、層成分のしみだしが、極めて低減されたものとなっている。
【0019】
前記スペーサー層は、長尺剥離シートの長手方向に沿って帯状に設けられていることが好ましい。このように設けることによって、円盤状光硬化性転写層の保護をより均一に行うことができる。
【0020】
前記スペーサー層の幅は、2〜100mmの範囲にあることが好ましい。また、前記スペーサー層の厚みは、前記積層体の厚みから0〜100μmの範囲にある厚みだけ大きいことが好ましい。前記スペーサー層の厚みは、30〜250μmの範囲にあることが好ましい。このようなスペーサー層を設けることで、円盤状光硬化性転写層を好適に保護することができる。
【0021】
前記スペーサー層は、樹脂により設けられていることが好ましく、特に長尺剥離シートの表面に粘着テープを粘着することにより設けられていることが好ましい。これにより好適なスペーサー層を容易に設けることができる。
【0022】
スペーサー層に粘着テープを使用した場合には、粘着テープの粘着力が、0.1〜10N/cmの範囲にあることが好ましい。このような粘着力の範囲とすることにより、スペーサー層を容易に設けることができ、シート巻き物の状態でも歪みなく形状が保持され、且つ、その後の作業の所望により困難なく剥離することができる。
【0023】
前記粘着テープは、基材と該基材上に設けられた粘着層を含み、前記基材が可とう性樹脂フィルムからなることが好ましい。また、前記粘着テープは、基材と該基材上に設けられた粘着層を含み、該粘着層がゴム系粘着剤を含むことが好ましい。このような粘着テープが好適に使用可能である。
【0024】
また、本発明は、円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロール(フランジ付きロール)の円筒部に、前記光硬化性転写円盤シートが巻かれてなるシート巻き物であって、前記フランジにより支持されているシート巻き物にもある。さらに、本発明は、前記フランジが遮光性を有するシート巻き物にもある。このようなシート巻き物は、上述の光硬化性転写円盤シートが優れた特性を保ち、巻き取りのずれ、及び巻き取った後の時間経過によるズレを最小限にしつつ、さらに遮光性によって光硬化性材料を保護し、製造し保管し運搬することに好適な形態である。また、フランジの使用により、保護スペーサーの幅をより小さくすることが可能である。
【0025】
また、本発明は以下の製造方法にもある。すなわち、上述の光硬化性転写円盤シートは、以下の工程:
A)搬送下の長尺剥離シートの表面上に、光硬化性転写層及び長尺剥離シートを順に積層して、光硬化性転写材シートを形成する工程、
B)該光硬化性転写材シートを、一方の長尺剥離シートの側から円盤状打ち抜き加工をして、他方の長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
C)該長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、長手方向に沿って帯状にスペーサー層を設ける工程、
を含むことを特徴とする光硬化性転写円盤シートの製造方法によって、好適に製造可能である。この方法によって、打ち抜き加工をした後に、スペーサー層を設けることができる。
【0026】
前記工程C)は、前記積層体が設けられた側の表面上にスペーサー層を設けることにより行ってもよい。あるいは、前記工程C)は、前記積層体が設けられていない側の表面上にスペーサー層を設けることにより行ってもよい。
【0027】
前記工程B)は、次の工程:
B1)円盤状打ち抜き加工として、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、一方の長尺剥離シート及び光硬化性転写層の2層を打ち抜く外円の打ち抜きと、該一方の長尺剥離シート、光硬化性転写層及び他方の長尺剥離シートの3層を打ち抜く内円の打ち抜きを、外円と内円を同心円状に配置して行う工程、
B2)打ち抜かれた外円の周囲の2層を剥離し、前記他方の長尺剥離シートの上に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含むことが好ましい。このような外円と内円の打ち抜きによって、ドーナツ状の穴のある円盤(ディスク)形状の積層体を、効率よく製造することができる。
【0028】
また、本発明は以下の製造方法にもある。すなわち、上述の光硬化性転写円盤シートは、以下の工程:
A)搬送下の長尺剥離シートの表面上に、光硬化性転写層及び長尺剥離シートを順に積層して、光硬化性転写材シートを形成する工程、
D)一方の長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層を設ける工程、
E)前記光硬化性転写材シートを、スペーサー層が設けられていない長尺剥離シートの側から円盤状打ち抜き加工をして、スペーサー層が設けられた長尺剥離シートのスペーサー層が設けられていない側の表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含むことを特徴とする光硬化性転写円盤シートの製造方法によって、好適に製造可能である。この方法によって、打ち抜き加工をする前に、スペーサー層を設けることができる。
【0029】
前記工程E)は、次の工程:
E1)円盤状打ち抜き加工として、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、
スペーサー層が設けられていない長尺剥離シート及び光硬化性転写層の2層を打ち抜く外円の打ち抜きと、
スペーサー層が設けられていない長尺剥離シート、光硬化性転写層及びスペーサー層が設けられた長尺剥離シートの3層を打ち抜く内円の打ち抜きを、
外円と内円を同心円状に配置して行う工程、
E2)打ち抜かれた外円の周囲の2層を剥離し、長尺剥離シートの表面の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含むことが好ましい。このような外円と内円の打ち抜きによって、ドーナツ状の穴のある円盤(ディスク)形状の積層体を、効率よく製造することができる。
【0030】
前記工程C)又は前記工程D)において、スペーサー層を、長尺剥離シートの表面に粘着テープを粘着することにより設けることが好ましい。これによりスペーサー層を容易に設けることができる。
【0031】
前記工程C)又は前記工程E)の後に、次の工程:
F)前記光硬化性転写円盤シートを、円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロールの円筒部に連続的に巻き取る工程、
が設けられることが好ましい。円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロールを使用した巻き取りを行うことによって、シート巻き物の巻き取りのずれ、及び巻き取ったシート巻き物の時間経過によるズレを最小限にすることができる。
【0032】
前記フランジが、遮光性を有することが好ましい。
【0033】
さらに、本発明は、上述の製造方法により製造された光硬化性転写円盤シートにもある。
【発明の効果】
【0034】
本発明の光硬化性転写円盤シートは、DVD等の厚さが薄く、高容量の光情報記録媒体の製造に有利な光硬化性転写シートであって、光硬化性転写円盤シートを巻き取ってロール状のシート巻き物に製造する場合、及びそのシート巻き物の状態で保存する場合にも、巻き取ったシートの形状がその荷重により変化したり、シート巻き物が巻き締まることがない。すなわち、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化がなく、層厚の変動が起こらず、層成分のしみだしを生じないものである。そのために、層成分のしみだしによる製造装置、作業員等の汚染が生じることなく、高い作業性を有する。また、円盤状光硬化性転写層を含む積層体が保護されて、形状及び層厚の変動の恐れがないために、作業時の取り扱いも容易である。さらに円盤状光硬化性転写層の形状や層厚を自重で損なうことがないために、シート巻き物の径を大きくすることができる。すなわち、大きな径のシート巻き物を使うことにより、さらに生産性を高めることが可能である。本発明の光硬化性転写円盤シートを使用して製造される光情報記録媒体は、高い生産性と作業性で製造されて、高い精度と歩留まりを有するものとすることができる。
【0035】
また、本発明の製造方法を使用すれば、上述の光硬化性転写円盤シートを好適に製造することができる。本発明の製造方法は、高い精度と生産性を有するものである。
【0036】
さらに、本発明の光硬化性転写円盤シートのシート巻き物は、上述の好ましい特性を備えつつ、製造、保管、運搬に適したものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の光硬化性転写円盤シートの構造の一例を説明した説明図である。図1−1には、斜視図が示されており、図1−2には、図1−1のシートをA−A’を含む断面で切断した横断面図が示されている。長尺剥離シート11の表面上に、円盤状光硬化性転写層12dと円盤状剥離シート13dとの積層体15が積層されて、光硬化性転写円盤シート10が形成されている。積層体15と長尺剥離シート11を貫通して、内孔16が設けられている。長尺剥離シート11の表面上には、幅方向の中央部、すなわち長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に積層体が設けられ、この積層体は長手方向に設けられている。積層体の両脇、すなわち長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域であって、積層体が設けられることなく長尺剥離シートの表面が露出した領域上には、スペーサー層17が設けられている。図1では、スペーサー層17は、長尺剥離シート11上で、積層体15と同じ側の表面に設けられている。このスペーサー層の設置により、本発明の光硬化性転写円盤シートは、巻き取ってロール状のシート巻き物に製造する場合、及びそのシート巻き物の状態で保存する場合にも、巻き取ったシートの形状がその荷重により変化したり、シート巻き物が巻き締まることがないものとなっている。
【0039】
図2は、本発明の光硬化性転写円盤シートの構造の別な一例を説明した説明図である。図2−1には、斜視図が示されており、図2−2には、図2−1のシートをB−B’を含む断面で切断した横断面図が示されている。図1と同様に、長尺剥離シート21の表面上に、円盤状光硬化性転写層22dと円盤状剥離シート23dとの積層体25が積層されて、光硬化性転写円盤シート20が形成されている。積層体25と長尺剥離シート21を貫通して、内孔26が設けられている。長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域であって、積層体が設けられることなく長尺剥離シートの表面が露出した領域上には、スペーサー層27が設けられているが、図1の構成とは異なり、図2の構成においては、スペーサー層27は、長尺剥離シート21上で、積層体25と異なる側(反対側)の表面に設けられている。このような形態で設けたスペーサー層もまた、本発明の光硬化性転写円盤シートを、巻き取ってロール状のシート巻き物に製造する場合、及びそのシート巻き物の状態で保存する場合にも、巻き取ったシートの形状がその荷重により変化したり、シート巻き物が巻き締まることがないものとすることを可能にしている。
【0040】
上述した本発明の光硬化性転写円盤シートの製造の流れを次に説明する。
【0041】
図3は、図1及び図2に示された構造を有する本発明の光硬化性転写円盤シートの製造の流れの一例を説明した説明図である。最初に、図示しない工程により、長尺剥離シート31、光硬化性転写層32、及び長尺剥離シート33とを積層して、光硬化性転写材シート(図3−1)を形成する。次に、打ち抜き加工により、内円38と外円39とが同心円状に打ち抜かれたシート(図3−2)を作製する(工程B1)。この同心円の中心は、長尺剥離シートの表面の幅方向の中心におかれている。外円39は、光硬化性転写層32及び長尺剥離シート33の2層を貫通し、内円38は、長尺剥離シート31、光硬化性転写層32、及び長尺剥離シート33の3層を貫通している。この内円の内部にあたる3層からなる円柱をカス部分として除去し、また外円の周囲部分もカス部分として剥離して除去する(工程B2)。これによって内孔36を有して、円盤状光硬化層32dと円盤状剥離シート33dとからなる積層体35が、長尺剥離シート31上に形成される(図3−3)。このような光硬化性転写円盤シート(図3−3)に対して、長尺剥離シート31の表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層37をシートの長手方向に沿って帯状に設ける(工程C)。スペーサー層37は、積層体35と同じ側の表面に設けて図1に示された構造とすること(図3−4a)、あるいは積層体35が設けられていない側の表面に設けて図2に示された構造とすること(図3−4b)が可能である。
【0042】
図4は、図2に示された構造を有する本発明の光硬化性転写円盤シートの製造の流れの別な一例を説明した説明図である。最初に、図示しない工程により、長尺剥離シート41、光硬化性転写層42、及び長尺剥離シート43とを積層して、光硬化性転写材シート(図4−1)を形成する。次に、長尺剥離シート41の表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層47をシートの長手方向に沿って帯状に設けて(工程D)、スペーサー層47を備えた光硬化性転写材シートを形成する(図4−2)。次に、打ち抜き加工により、内円48と外円49とが同心円状に打ち抜かれたシート(図4−3)を作製する(工程E1)。この同心円の中心は、長尺剥離シートの表面の幅方向の中心におかれている。外円49は、光硬化性転写層42及び長尺剥離シート43の2層を貫通し、内円48は、長尺剥離シート41、光硬化性転写層42、及び長尺剥離シート43の3層を貫通している。この内円の内部にあたる3層からなる円柱をカス部分として除去し、また外円の周囲部分もカス部分として剥離して除去する(工程E2)。これによって内孔46を有して、円盤状光硬化層42dと円盤状剥離シート43dとからなる積層体45が、長尺剥離シート41上に形成される(図4−4)。すなわち、図2に示された構造を有する本発明の光硬化性転写円盤シートが得られる。
【0043】
上述の製造の流れは、長尺状のシートを使用して搬送下で連続的に行うことができる。そして光硬化性転写円盤シートは、図3又は図4に示された製造の流れに続けて、ロール状のシート巻き物に巻き取る工程を設けることができる。図5は、前記光硬化性転写円盤シートを、円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロールの円筒部に連続的に巻き取る工程を説明した説明図である。図5−1には、前記ロールの円筒部に巻き取られているシート巻き物の斜視図が示されており、図5−2には、巻き取られたシート巻き物の軸を含む平面による断面の一部が示されている。円盤状光硬化層52dと円盤状剥離シート53dとの積層体55を備えた長尺剥離シート51が、シート巻き物の中で順に積み重なっている。そして、長尺剥離シート51の幅方向の両端部に位置するスペーサー層57が、積み重なった長尺剥離シート同士を支持している。これによって、円盤状光硬化層52dと円盤状剥離シート53dとの積層体55は、上下の長尺剥離シートによる直接の荷重から保護される。また、巻き取られる光硬化性転写円盤シートは、フランジによりガイドされて軸方向への巻きズレを生じることなく、ロールの円筒部に巻き取られてゆく。またその後も軸方向へのズレがフランジにより抑制されるために、積層体も横方向へのズレから保護される。すなわち、巻き取りのずれ、及び巻き取った後の時間経過によるズレを最小限にすることができる。また、フランジによる支持を利用することにより、保護スペーサーの幅をより小さくしても同様の効果を得ることが可能となる。これにより、直接には製品とならない保護スペーサー部分の面積を縮小して、費用対効果を上昇させることができる。さらにフランジは、運搬時の衝撃緩衝効果をもたらす。
【0044】
上述のフランジは、遮光性を有することが好ましい。これによって、光硬化性材料を外部の光から確実に保護しつつ、製造し保管し運搬することができる。このような材料としては、フランジとして必要な機械的強度を保ちつつ、光の遮蔽ができる材料であれば使用することができる。さらに光硬化性転写円盤シート及び保護スペーサーに対して難粘着性の材料であることが好ましい。光遮蔽性は、例えば材料の着色によって付与することができる。好ましい材料としては、例えば黒色に着色された、ポリエチレン、ABS、塩化ビニール等の樹脂を挙げることができる。これらの材料で被覆された材料もまた好適に使用することができる。
【0045】
スペーサー層は、上述のように長尺剥離シートの長手方向に沿って、連続的な帯状に設けられることが一般に好ましい。しかし、積層体の設置の周期に同期させて、断続的に設けることも可能である。
【0046】
スペーサー層の幅は、一般に2〜100mmの範囲、好ましくは10〜70mmの範囲であり、特に20〜50mmの範囲であることが好ましい。使用される長尺シートの幅の許す範囲でスペーサー層の幅は広くとるほど、巻き取ったシート巻き物での積層体の保護の効果は高まるが、スペーサー層の幅を広げるためにあえて幅広の長尺シートを使用することは生産費用の上昇につながり好ましくない。
【0047】
スペーサー層と積層体の間に存在する間隔は、一般に2〜40mmの範囲、好ましくは4〜30mmの範囲であり、特に6〜20mmの範囲であることが好ましい。間隔が小さいほど、巻き取ったシート巻き物での積層体の保護の効果は高まるが、想定外に強い応力を受けた積層体から成分がしみ出てしまったような場合にシート巻き物からその成分が漏出することを防ぐためには、上記範囲で間隔は大きいほうが好ましい。
【0048】
スペーサー層の厚みは、一般には30〜250μmの範囲、好ましくは40〜200μmの範囲である。スペーサー層の厚みは正確には、保護すべき積層体の厚みによって好ましい範囲が決定され、積層体の厚みから0〜100μmの範囲、特に30〜60μmの範囲にある厚みだけ大きいことが好ましい。スペーサー層の厚みが積層体の厚みよりも小さくとも保護に効果があり、同程度かやや大きいことは保護に特に有効であるが、過度に大きい場合には巻き取ったシート巻き物の全体形状が径の大きなものになるほど崩れてしまい、かえって好ましくない。
【0049】
スペーサー層は、上述したような構成を満足し、製造可能な材料であれば使用することができるが、樹脂により設けられていることが好ましい。さらに、スペーサー層は、シート状の材料を接着して設けることができ、あるいは樹脂組成物を塗布して設けることもできる。積層体を汚染することなく容易に設置できることから、いわゆる接着テープ又は粘着テープを長尺剥離シートの表面上に接着又は粘着して、スペーサー層を設けることができる。巻き取ったシート巻き物のその後の作業性の点から、粘着テープの使用が特に好ましい。
【0050】
スペーサー層の設置に使用される粘着テープは、その粘着力が180°ピールにて、0.1〜10N/cmの範囲、好ましくは0.2〜8N/cmの範囲であり、特に0.5〜5N/cmの範囲であることが好ましい。粘着力が大きいほど、シート巻き物の安定化には効果的であり巻きズレが起こりにくい。一方、粘着力が小さいほど、粘着テープの巻きだし強度が弱くなり、安定した長尺巻きを得やすく、次の工程での所望に応じたスペーサー層の剥離が容易となる。
【0051】
スペーサー層の設置に使用される粘着テープは、粘着させて上述のスペーサー層として使用することができるものであればよいが、基材と該基材上に設けられた粘着層を含み、前記基材が可とう性樹脂フィルムからなる粘着テープが好ましい。
【0052】
このような基材に使用可能な可とう性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリイミド、PTFE、塩化ビニール、PVA、ポリプロピレン等を挙げることができる。特に、塩化ビニール、及びポリエステルが、可とう性の点から好ましい。
【0053】
粘着テープに含まれる粘着層の材料としては、上述のスペーサー層に使用することができて、好ましくは上述の粘着力の範囲にあるものであれば使用することができる。粘着層の材料の例としては、ゴム系粘着材、アクリル系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤等を挙げることができる。好ましくは、ゴム系粘着剤又はアクリル系粘着剤であり、特にゴム系粘着剤がコスト面から好ましい。
【0054】
このような粘着テープは、市販のものを使用することもでき、例えば、tesaテープ製の4627、ECシリーズ(株式会社スミロン製)のEC−6220、E−MASK(日東電工株式会社製)のSPV−214、表面保護テープ(住友スリーエム株式会社製)のNo.330等を挙げることができる。表面保護テープのNo.330及びSPV−214は特に好ましい。
【0055】
円盤状光硬化性転写層の材料、すなわち光硬化性転写層の材料は、光情報記録媒体の作製にあたって、スタンパの凹凸表面を押圧することにより精確に転写できるものであって、光照射(可視光照射、紫外線照射を含む放射線照射)によって硬化可能な層とすることができる材料であれば使用することができる。さらに、加圧により変形し易い層であるとともに、反応性ポリマーを僅かに架橋させることにより転写層のしみ出し、層厚変動が抑えられた層を形成可能な材料であれば好適に使用できる。
【0056】
また、硬化後の円盤状光硬化性転写層の材料は、情報の高密度化のため、再生レーザにより読み取りが容易なように380〜420nmの波長領域の光透過率が70%以上であることが好ましい。特に、380〜420nmの波長領域の光透過率が80%以上であることが好ましい。従って、この転写シート用いて作製される本発明の光情報記録媒体は380〜420nmの波長のレーザを用いてピット信号を再生する方法に有利に使用することができる。
【0057】
このような材料としては、光硬化性組成物を挙げることができ、このような光硬化性組成物は、一般に、光重合性官能基を有する重合性化合物(モノマー及び/又はオリゴマー)、光重合開始剤、添加剤等を含んで使用される。光重合性の官能基として、エチレン性二重結合(好ましくはアクリロイル基又はメタクリロイル基)を有する重合性化合物が好ましい。
【0058】
上記光重合性官能基を有する重合性モノマーとしては、例えばアルキルアクリレート(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート)及び/又はアルキルメタクリレート(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)を挙げることができる。
【0059】
上記重合性モノマーは、光重合性官能基を一般に1〜50モル%、特に5〜30モル%含むことが好ましい。この光重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0060】
上述の光硬化性組成物は、更に光重合性官能基を有する反応性希釈剤を含むことが好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類、ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4'−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2',4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら光重合可能な官能基を有する化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。
【0061】
光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。光硬化性組成物中に、光重合開始剤を一般に0.1〜20質量%、特に1〜10質量%含むことが好ましい。
【0062】
光重合開始剤のうち、アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1など、ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンッゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどが使用できる。
【0063】
アセトフェノン系重合開始剤としては、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1が好ましい。ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルが好ましい。また、第3級アミン系の光重合促進剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが使用できる。特に好ましくは、光重合促進剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0064】
上記光重合性化合物:光重合開始剤の質量比は、一般に、40〜100:0.1〜10、特に60〜100:1〜10の範囲が好ましい。
【0065】
光硬化性転写層はガラス転移温度が20℃以下で、透過率70%以上を満たすように光硬化性組成物を設計することが好ましい。ガラス転移温度を20℃以下とすることにより、得られる光硬化性転写層がスタンパの凹凸面に圧着されたとき、常温においてもその凹凸面に緊密に追随できる可撓性を有することができる。特に、ガラス転移温度が15℃〜−50℃、特に15℃〜−10℃の範囲にすることにより追随性が優れている。ガラス転移温度が高すぎると、貼り付け時に高圧力及び高圧力が必要となり作業性の低下につながり、また低すぎると、硬化後の十分な硬度が得られなくなる。このために、上記光重合可能な官能基を有する化合物及び光重合開始剤に加えて、所望により後述の熱可塑性樹脂及び他の添加剤を添加することが好ましい。
【0066】
他の添加剤として、シランカップリング剤(接着促進剤)を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記反応性ポリマー100質量部に対し通常0.01〜5質量部で十分である。
【0067】
また同様に接着性を向上させる目的でエポキシ基含有化合物を添加することができる。エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;アクリルグリシジルエーテル;2−エチルヘキシルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;フェノールグリシジルエーテル;p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル;アジピン酸ジグリシジルエステル;o−フタル酸ジグリシジルエステル;グリシジルメタクリレート;ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを添加することによっても同様の効果が得られる。これらエポキシ基含有化合物の添加量は上記反応性ポリマー100質量部に対し0.1〜20質量部で十分で、上記エポキシ基含有化合物の少なくとも1種を単独で又は混合して添加することができる。
【0068】
さらに他の添加剤として、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0069】
アクリル樹脂も添加することができる。例えば、アルキルアクリレート(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート)及び/又はアルキルメタクリレート(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)から得られる単独重合体又は共重合体を挙げることができる。またこれらのモノマーと、他の共重合可能なモノマーとの共重合体も挙げることができる。特に、光硬化時の反応性や硬化後の耐久性、透明性の点からポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。
【0070】
上記炭化水素樹脂等のポリマーの添加量は適宜選択されるが、上記反応性ポリマー100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。
【0071】
以上の添加剤の他、光硬化性の組成物には紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいてもよい。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム、シリコン共重合体の微粒子等の添加剤を少量含んでもよい。
【0072】
好適な実施の一態様として、光硬化性組成物中に含まれる光重合性化合物が、活性水素を有する官能基を有し、同時に光硬化性組成物中に、活性水素を有する官能基と反応性を有する基を少なくとも2個有する化合物が含まれることが好ましい。このような光硬化性組成物を材料として使用した場合には、転写層を有するシートの処理中或いは保存中に、これらが相互に反応して僅かに架橋し、転写層の粘度を上昇させる。これにより、転写層のしみ出し、層厚変動が大きく抑えることができる。
【0073】
上記活性水素を有する官能基及び光重合性官能基を有する化合物としては、例えばアルキルアクリレート(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート)及び/又はアルキルメタクリレート(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)から得られる単独重合体又は共重合体(即ちアクリル樹脂)であって、且つ、主鎖又は側鎖に光重合性官能基及び活性水素を有する官能基を有するものを挙げることができる。従って、このような反応性の化合物(反応性ポリマー)は、例えば、上記1種以上の(メタ)アクリレートと、ヒドロキシル基等の官能基を有する(メタ)アクリレート(例、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とを共重合させ、得られた重合体とイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートなどの、重合体の官能基と反応し且つ光重合性基を有する化合物と反応させることにより得ることができる。その際、ヒドロキシル基が残るようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの量を調節して使用することにより、活性水素を有する官能基としてヒドロキシル基及び光重合性官能基を有する反応性ポリマーが得られる。
【0074】
或いは上記において、ヒドロキシル基の代わりにアミノ基を有する(メタ)アクリレート(例、2−アミノエチル(メタ)アクリレート)を用いることにより活性水素を有する官能基としてアミノ基を有する、光重合性官能基含有反応性ポリマーを得ることができる。同様に、活性水素を有する官能基としてカルボキシル基等を有する、光重合性官能基含有反応性ポリマーも得ることができる。
【0075】
また、上記のようにイソシアナトアルキル(メタ)アクリレート等を用いてウレタン結合を介して光重合性基を形成しているが、他の方法、例えばカルボン酸を含むアクリル樹脂を形成し、このカルボン酸にエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(例、グリシジル(メタ)アクリレート)を反応させて光重合性基を形成することもできる。
【0076】
前記光重合性官能基をウレタン結合を介して有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0077】
上記活性水素を有する官能基と反応性を有する基を少なくとも2個有する化合物としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を挙げることができるが、常温でも高い反応性を有するイソシアネート化合物が使い易く好ましい。
【0078】
少なくとも2官能性のイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。またトリメチロールプロパンのTDI付加体等の3官能以上のイソシアネート化合物も使用することができる。これらの中でトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体が好ましい。
【0079】
上述の活性水素を有する官能基と反応性を有する基を少なくとも2個有する化合物は、光硬化性組成物中に0.2〜4質量%、特に0.2〜2質量%の範囲で含まれていることが好ましい。転写層のしみ出しを防止するために適当な架橋がもたらされると共に、基板やスタンパの凹凸の良好な転写性も維持される。上記化合物と反応性ポリマーとの反応は、転写層形成後、徐々に進行し、常温(一般に25℃)、24時間でかなり反応している。転写層形成用の塗布液を調製した後、塗布するまでの間にも反応は進行するものと考えられる。転写層を形成後、シート巻き物に巻き取る前にある程度硬化させることが好ましいので、必要に応じて、転写層を形成時、或いはその後、シート巻き物の状態で巻き取る前の間に加熱して反応を促進させても良い。
【0080】
光硬化性転写層は、上述のような光硬化性の材料組成物を、所望により添加剤と共に均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜し、長尺剥離シート上に積層して用いることができる。所望により支持体を用いることができ、この場合には支持体上に製膜する。好適な態様には、支持体として長尺剥離シートを使用して、この長尺剥離シート上に直接に成膜することにより積層する。特に好ましい本発明の光硬化性接着剤の製膜方法は、各構成成分を良溶媒に均一に混合溶解し、この溶液をシリコーンやフッ素樹脂を精密にコートしたセパレーターにフローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、マイヤバー法、リップダイコート法等により支持体(長尺剥離シート)上に塗工し、溶媒を乾燥することにより製膜する方法である。
【0081】
光硬化性転写層の厚さは一般に1〜1200μmの範囲、好ましくは5〜500μmの範囲である。特に5〜300μmの範囲(好ましくは150μm以下)が好ましい。1μmより薄いと封止性が劣り、透明樹脂基板の凸凹を埋め切れない場合が生じる。一方、1000μmより厚いと記録媒体の厚みが増し、記録媒体の収納、アッセンブリー等に問題が生じるおそれがあり、更に光線透過に影響を与えるおそれもある。光情報記録媒体の多層化のためには、上述の範囲で小さな厚みとすることが有利である。
【0082】
このような円盤状光硬化性転写層は、膜厚精度を精密に制御したフィルム状で提供することができるため、基板及びスタンパとの貼り合わせを容易にかつ精度良くおこなうことが可能である。また、この貼り合わせは、圧着ロールや簡易プレスなどの簡便な方法で20〜100℃で仮圧着した後、光により常温、1〜数十秒で硬化できる上、本接着剤特有の自着力によりその積層体にズレや剥離が起き難いため、光硬化まで自由にハンドリングができるという特徴を有している。
【0083】
円盤状光硬化性転写層を硬化する場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザ光等が挙げられる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め円盤状光硬化性転写層を30〜80℃に加温し、これに紫外線を照射してもよい。
【0084】
長尺剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明の有機樹脂が好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等の有機樹脂を主成分とする透明樹脂基板を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に20〜100μmが好ましい。
【0085】
光硬化性転写材シートに対する上述の打ち抜き加工は、内円と外円とを所定の深さで同心円状に打ち抜いて、カス部分を除去し、所望の穴あき円盤形状を形成できる打ち抜き加工方法であれば使用することができる。長尺シートに対して、搬送下で行うことができる打ち抜き加工が好ましい。いわゆるビクトリア刃又はトムソン刃を使用して、逐次の打ち抜き加工をすることも可能であるが、ロータリーダイカットによって搬送下で連続的に打ち抜き加工をすることが好ましい。
【0086】
本発明の光硬化性転写円盤シートを使用すれば、図6に例示されるような光情報記録媒体を、高精度且つ高い生産性で製造することができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0088】
[実施例1]
<光硬化性転写シートの作製>
(ポリマー1の作製)
ポリマー配合1
メチルメタクリレート 74質量部
n−ブチルメタクリレート 13質量部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 13質量部
AIBN 1.2質量部
トルエン 70質量部
酢酸エチル 30質量部
【0089】
上記の配合の混合物を、穏やかに撹拌しながら、70℃に加熱して重合を開始させ、この温度で8時間撹拌し、側鎖にヒドロキシル基を有するヒドロキシル基を有するポリマー1(アクリル樹脂)を得た。固形分を36質量%に調製した(ポリマー溶液1)。
【0090】
得られたポリマー1は、Tgが100℃であり、重量平均分子量が110000であった。
【0091】
組成物配合1
ポリマー溶液1 100質量部
ヘキサンジオールジアクリレート(KS−HDDA) 40質量部
ジイソシアネート(BXX5627、東洋インキ製造(株)製) 0.3質量部
イルガキュア651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.3質量部
ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ) 0.01質量部
【0092】
上記配合の混合物を均一に溶解、混練して、光重合性組成物を得た。
【0093】
(光硬化性転写材シートの作製)
第1の長尺剥離シートとして用意した離型フィルム(幅200mm、長さ300m、厚さ50μm;商品名No.23、藤森工業(株)製)の面上に、全面塗布して、乾燥厚さ20±2μmの光硬化性転写層を形成した。シートの反対側に、第2の長尺剥離シートとして用意した離型フィルム(幅200mm、長さ300m、厚さ38μm;商品名No.33、藤森工業(株)製)を貼付した。これらの操作は搬送下で連続的に行った。
【0094】
<光硬化性転写円盤シートの作製>
次に、上記のように作製された光硬化性転写材シートを、ダイロールマシンSRD−W350(ソルテック工業(株)製)を使用して、ロータリーダイカットにより円盤状の打ち抜き加工を行った。打ち抜き加工は、ラインスピード5m/minで流れる光硬化性転写材シートを、第1の長尺剥離シート側から、直径22mmの内円と、直径120mmの外円を同心円状に打ち抜くことにより行った。同心円の中心が、光硬化性転写材シートの幅方向の中央部で、長手方向に125mmの間隔で位置するように打ち抜きを行った。内円の打ち抜きは、第1の長尺剥離シート、光硬化性転写層及び第2の長尺剥離シートの3層全てを全て打ち抜くこと(フルカット、全抜き)により行い、外円の打ち抜きは、第1の長尺剥離シート及び光硬化性転写層の2層を打ち抜いて最後の1層に相当する第2の長尺剥離シートは打ち抜かずに残すこと(ハーフカット、部分抜き)により行った。フルカットされた内円の内側部分はカス部分として完全に除去し、ハーフカットされた外円の周囲部分もまた、カス部分として剥離して除去した。こうして、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層とその上に設けられた円盤状剥離シートとの積層体が、長手方向に設けられてなる光硬化性転写円盤シートを準備した。
【0095】
さらに続けて、第2の長尺剥離シートの面上において幅方向両端部の近傍の領域、すなわち積層体の両脇部分の領域(積層体が設けられた側の表面)に、長手方向に沿って帯状に、スペーサー層として粘着テープ(住友スリーエム製、表面保護テープ330、幅30mm)を貼り合わせ、これをシート巻き物に巻き取った。これらの一連の操作は搬送下で連続的に行った。
【0096】
[実施例2]
<光硬化性転写材シートの作製>
実施例1と同様に光硬化性転写材シートを作製した。
【0097】
<光硬化性転写円盤シートの作製>
スペーサー層の設置前の光硬化性転写円盤シートを、実施例1と同様に用意した。そして、第1の長尺剥離シートの面上において幅方向両端部の近傍の領域、すなわち積層体の両脇部分の領域(積層体が設けられていない側の表面)に、長手方向に沿って帯状に、スペーサー層として粘着テープ(住友スリーエム製、表面保護テープ330、幅30mm)を貼り合わせ(粘着テープ間の間隔は、125mmであった)、これをシート巻き物に巻き取った。これらの一連の操作は搬送下で連続的に行った。
【0098】
[実施例3]
<光硬化性転写材シートの作製>
実施例1と同様に光硬化性転写材シートを作製した。
【0099】
<光硬化性転写円盤シートの作製>
円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロール(フランジ付きロール)(昭和丸筒製、ボビン型コア)を使用してシート巻き物に巻き取ることを除いて、実施例1と同様に行った。
【0100】
[実施例4]
<光硬化性転写材シートの作製>
実施例1と同様に光硬化性転写材シートを作製した。
【0101】
<光硬化性転写円盤シートの作製>
フランジ付きロール(昭和丸筒製、ボビン型コア)を使用してシート巻き物に巻き取ることを除いて、実施例2と同様に行った。
【0102】
[比較例1]
<光硬化性転写材シートの作製>
実施例1と同様に光硬化性転写材シートを作製した。
【0103】
<光硬化性転写円盤シートの作製>
スペーサー層を設けることなく実施例1と同様に光硬化性転写円盤シートを作製して、これを実施例1と同様にシート巻き物に巻き取った。
【0104】
[結果]
実施例1〜4のスペーサー層付き光硬化性転写円盤シートの100m巻きのシート巻き物から、巻き取りの60時間後にシート巻き物から引き出して積層体を観察したところ、積層体の円盤形状には変形が見られず、また積層体の層厚も均一なままで変化が見られなかった。またシート巻き物からの成分のしみ出しも観察されず、シート巻き物の全体形状にも崩れは見られなかった。特に、実施例3及び実施例4のスペーサー層付き光硬化性転写円盤シートのシート巻き物は、さらに1000m巻きのシート巻き物とした場合にも巻きズレが生じることなく、積層体の円盤形状及び層厚に変化は見られず、さらにシート巻き物の全体形状の崩れ及び成分のしみ出しも観察されなかった。一方、比較例1のスペーサー層無し光硬化性転写円盤シートの100m巻きのシート巻き物は、積層体の円盤形状は一部に歪みが見られ、また積層体の層厚の不均一が一部に見られた。またシート巻き物からの成分のしみ出しがごく一部に観察され、シート巻き物の全体形状にはやや崩れが見られた。
【0105】
すなわち、本発明のスペーサー層付きの光硬化性転写円盤シートは、ロール状のシート巻き物に製造して保存する場合にも巻き取ったシートの形状がその荷重により変化したり、シート巻き物が巻き締まることがなく、円盤状光硬化性転写層の円盤形状の変化がなく、層厚の変動が起こらず、層成分のしみだしを生じないものであり、また自重で損なわれることなく大きな巻き物の径を達成することができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の光硬化性転写円盤シートの構造の一例を説明した説明図である。
【図2】本発明の光硬化性転写円盤シートの構造の別な一例を説明した説明図である。
【図3】本発明の光硬化性転写円盤シートの製造の流れの一例を説明した説明図である。
【図4】本発明の光硬化性転写円盤シートの製造の流れの別な一例を説明した説明図である。
【図5】本発明におけるフランジ付きロールによる連続的な巻き取りを説明した説明図である。
【図6】光硬化性転写円盤シートの基本構造の典型的な一例の説明図である。
【図7】従来の光情報記録媒体を示す断面図である。
【図8】従来の別の光情報記録媒体を示す断面図である。
【図9】日経エレクトロニクスに記載の光情報記録媒体の製造方法の手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0107】
10 光硬化性転写円盤シート
11 長尺剥離シート
12d 円盤状光硬化性転写層
13d 円盤状剥離シート
15 積層体
16 内孔
17 スペーサー層
20 光硬化性転写円盤シート
21 長尺剥離シート
22d 円盤状光硬化性転写層
23d 円盤状剥離シート
25 積層体
26 内孔
27 スペーサー層
31 長尺剥離シート
32 光硬化性転写層
32d 円盤状光硬化層
33 長尺剥離シート
33d 円盤状剥離シート
35 積層体
36 内孔
37 スペーサー層
38 内円
39 外円
41 長尺剥離シート
42 光硬化性転写層
42d 円盤状光硬化層
43 長尺剥離シート
43d 円盤状剥離シート
45 積層体
46 内孔
47 スペーサー層
48 内円
49 外円
51 長尺剥離シート
52d 円盤状光硬化層
53d 円盤状剥離シート
55 積層体
57 スペーサー層
60 光硬化性転写円盤シート
61 長尺剥離シート
62d 円盤状光硬化性転写層
63d 円盤状剥離シート
65 積層体
66 内孔
71 透明樹脂基板
71a 反射層
72 透明樹脂基板
72a 反射層
73 接着剤層
81 基板
81b 半透明反射層
82 基板
82a 反射層
83 接着剤層
94a ディスク基板
94b スタンパ
95A 紫外線硬化樹脂
95B 紫外線硬化樹脂
96a 反射層(記録層)
96b 反射層(記録層)
97 カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層とその上に設けられた円盤状剥離シートとの積層体が、長手方向に設けられてなる光硬化性転写円盤シートであって、
該長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層が設けられていることを特徴とする光硬化性転写円盤シート。
【請求項2】
前記スペーサー層が、前記積層体が設けられた側の表面上に設けられている請求項1に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項3】
前記スペーサー層が、前記積層体が設けられていない側の表面上に設けられている請求項1に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項4】
前記スペーサー層が、長尺剥離シートの長手方向に沿って帯状に設けられている請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項5】
前記スペーサー層の幅が、2〜100mmの範囲にある請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項6】
前記スペーサー層の厚みが、前記積層体の厚みから0〜100μmの範囲にある厚みだけ大きい請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項7】
前記スペーサー層の厚みが、30〜250μmの範囲にある請求項1〜6のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項8】
前記スペーサー層が、樹脂により設けられている請求項1〜7のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項9】
前記スペーサー層が、長尺剥離シートの表面に粘着テープを粘着することにより設けられている請求項1〜8のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項10】
前記粘着テープの粘着力が、0.1〜10N/cmの範囲にある請求項1〜9のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項11】
前記粘着テープが、基材と該基材上に設けられた粘着層を含み、前記基材が可とう性樹脂フィルムからなる請求項1〜10のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項12】
前記粘着テープが、基材と該基材上に設けられた粘着層を含み、該粘着層がゴム系粘着剤を含む請求項1〜11のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シート。
【請求項13】
円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロールの円筒部に、請求項1〜12のいずれかの請求項に記載の光硬化性転写円盤シートが巻かれてなる、シート巻き物であって、
前記フランジにより支持されているシート巻き物。
【請求項14】
前記フランジが、遮光性を有する請求項13に記載のシート巻き物。
【請求項15】
以下の工程:
A)搬送下の長尺剥離シートの表面上に、光硬化性転写層及び長尺剥離シートを順に積層して、光硬化性転写材シートを形成する工程、
B)該光硬化性転写材シートを、一方の長尺剥離シートの側から円盤状打ち抜き加工をして、他方の長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
C)該長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、長手方向に沿って帯状にスペーサー層を設ける工程、
を含むことを特徴とする光硬化性転写円盤シートの製造方法。
【請求項16】
前記工程C)が、前記積層体が設けられた側の表面上にスペーサー層を設ける請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記工程C)が、前記積層体が設けられていない側の表面上にスペーサー層を設ける請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記工程B)が、次の工程:
B1)円盤状打ち抜き加工として、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、一方の長尺剥離シート及び光硬化性転写層の2層を打ち抜く外円の打ち抜きと、該一方の長尺剥離シート、光硬化性転写層及び他方の長尺剥離シートの3層を打ち抜く内円の打ち抜きを、外円と内円を同心円状に配置して行う工程、
B2)打ち抜かれた外円の周囲の2層を剥離し、前記他方の長尺剥離シートの上に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含む、請求項15〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
以下の工程:
A)搬送下の長尺剥離シートの表面上に、光硬化性転写層及び長尺剥離シートを順に積層して、光硬化性転写材シートを形成する工程、
D)一方の長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍の領域に、スペーサー層を設ける工程、
E)前記光硬化性転写材シートを、スペーサー層が設けられていない長尺剥離シートの側から円盤状打ち抜き加工をして、スペーサー層が設けられた長尺剥離シートのスペーサー層が設けられていない側の表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含むことを特徴とする光硬化性転写円盤シートの製造方法。
【請求項20】
前記工程E)が、次の工程:
E1)円盤状打ち抜き加工として、長尺剥離シートの表面の幅方向両端部の近傍以外の領域に、
スペーサー層が設けられていない長尺剥離シート及び光硬化性転写層の2層を打ち抜く外円の打ち抜きと、
スペーサー層が設けられていない長尺剥離シート、光硬化性転写層及びスペーサー層が設けられた長尺剥離シートの3層を打ち抜く内円の打ち抜きを、外円と内円を同心円状に配置して行う工程、
E2)打ち抜かれた外円の周囲の2層を剥離し、長尺剥離シートの表面の領域に、円盤状光硬化性転写層と円盤状剥離シートとの積層体を長手方向に残す工程、
を含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記工程C)又は前記工程D)において、スペーサー層を、長尺剥離シートの表面に粘着テープを粘着することにより設ける、請求項15〜20のいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記工程C)又は前記工程E)の後に、次の工程:
F)前記光硬化性転写円盤シートを、円筒部及びその両側面に設けられたフランジからなるロールの円筒部に連続的に巻き取る工程、
が設けられた、請求項15〜21のいずれかの請求項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記フランジが、遮光性を有する請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項15〜23のいずれかの請求項に記載の製造方法により製造された光硬化性転写円盤シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−344286(P2006−344286A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168434(P2005−168434)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】