説明

光投影装置

【課題】 簡単な構成により、発生した影を消すことができる光投影装置を提供する。
【解決手段】 物体が含まれる任意の空間に光を投影するために、光投影システムは、空間に発生している影の領域を特定する影領域設定部(12)と、投影光を特定する投影光データを生成する投影光データ生成部(11)と、影領域設定部(12)により設定された影領域に光を投影するように投影光データを補正する投影光データ補正部(13)と、投影光データ補正部(13)により生成された投影光補正データの描画処理を行う投影光描画部(14)と、投影光描画部(14)により描画された投影光描画データを用いて光を投影する光投影部(2)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を見せるために光を投影する光投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来においては、立体形状モデルに物体の表面テクスチャを効果的に表現することができる立体表示装置として、下記の特許文献1等に記載された技術が知られている。また、従来においては、特許文献2,3のように、投影光の形状を制御することによってユーザが希望する形状で光を投影することができる光投影装置、照明装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−338181号公報
【特許文献2】特開2009−225432号公報
【特許文献3】特開2009−117351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、図1に示すように、空間又は物体に光を投影する光投影装置100Aと壁面102の間に物体101が存在すると、物体101が光を遮ってしまい、壁面102に影102aが発生する。また、図2に示すように、複数の物体101,101’が配置された場合においても、前方に配置された物体101が光を遮ることによって、後方に配置された物体101’には、影101a’が発生する。
【0005】
このような照明を使用する場面のみならず、映像を投影する場面においても、プロジェクタとスクリーンの間に物体が存在すると、物体が映像をさえぎってしまい、スクリーンに影が発生する。
【0006】
また、従来の照明技術では、図3及び図4に示すように、複数台の光投影装置100A,100Bを用いたマルチ投影によって、壁面102や物体101,101’上に発生した影102a,101a’を消している。しかし、この技術は、影101a,101a’を埋めるように投影光を単純に重ねるだけの構成や、遮光板を用いて投影光を物理的に影の形状にトリミングし影の位置に重ねる構成である。
【0007】
投影光を単純に重ねる手法では、光の重なり度合いによって輝度ムラが発生し、壁面102や物体101に投影される光を一様な明るさにできない。また、遮光板を用いる手法では、影の形のトリミングする作業や、遮光板の位置合わせが困難である。
【0008】
さらに、発生した影の全体を消そうとすると、複数の光投影装置を用いて様々な角度から影に光を投影することが必要となる。
【0009】
映像技術においては、複数台のプロジェクタでスクリーンに映像を投影し、映像が重なった領域の輝度を均一に制御する技術が存在する。しかし、映像を重ねることによる輝度の向上や、映像をつなぎ合わせることによる広範囲への投影を目的としており、影を消す効果はない。
【0010】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、簡単な構成により、発生した影を消すことができる光投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する第1の発明に係る光投影装置は、物体が含まれる任意の空間に光を投影する光投影装置であって、前記空間に発生している影の領域を特定する影領域設定手段と、投影光を特定する投影光データを生成する投影光データ生成手段と、前記影領域設定手段により設定された影領域に光を投影するように前記投影光データを補正する投影光データ補正手段と、前記投影光データ補正手段により生成された投影光補正データの描画処理を行う投影光描画手段と、前記投影光描画手段により描画された投影光描画データを用いて光を投影する光投影手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第1の発明に係る光投影装置であって、第2の発明は、前記投影光データ生成手段は、投影光の照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性を含む要素を設定する投影光設定手段を有することを特徴とする。
【0013】
第1又は第2の発明に係る光投影装置であって、第3の発明は、前記投影光データ生成手段は、前記影領域設定手段が設定した影領域をさらに分割し、当該分割した影領域ごとに投影する光の特性を指定した投影光データを生成することを特徴とする。
【0014】
第1乃至第3の何れかの発明に係る光投影装置であって、第4の発明は、ユーザの操作に従って任意の形状を描画し、形状データを生成する形状描画手段を備え、前記影領域設定手段は、前記形状描画手段で入力された形状を影領域とすることを特徴とする。
【0015】
第4の発明に係る光投影装置であって、第5の発明は、前記形状描画手段は、ユーザの操作に従って描画された連続的な位置データからなる描画軌跡データを生成し、当該描画軌跡データを前記影領域設定手段にリアルタイムに出力し、前記投影光描画手段は、前記出力された描画軌跡データに基づいて当該軌跡を描画することを特徴とする。
【0016】
第1乃至第5の何れかの発明に係る光投影装置であって、第6の発明は、前記影領域設定手段により設定された影領域の位置、形状を調整する影対象領域調整手段を備えることを特徴とする。
【0017】
第6の発明に係る光投影装置であって、第7の発明は、前記光投影手段から投影された投影光と前記影を発生させている周囲の光とが任意幅で重複するように前記影領域設定手段により設定された影領域を拡大し、当該拡大された投影光の重複領域の境界付近にて輝度が一様になるように前記投影光データにより投影される投影光の輝度を調整する輝度調整手段を備えることを特徴とする。
【0018】
第1乃至第7の何れかの発明に係る光投影装置であって、第8の発明は、前記光投影手段を振動させる駆動手段を更に備えたことを特徴とする。
【0019】
第1乃至第8の何れかの発明に係る光投影装置であって、第9の発明は、前記光投影手段を複数備え、各光投影手段により前記影領域に投影光を投影することを特徴とする。
【0020】
第1乃至第9の何れかの発明に係る光投影装置であって、第10の発明は、前記影領域を含む空間を撮像範囲とする撮影手段と、前記撮像手段により撮像された撮像画像データを生成する撮像画像生成手段と、前記撮像画像データを格納する撮像画像格納手段と、前記光投影手段から投影された投影光の位置と、前記撮像画像データの画素位置とを対応させた変換テーブルを生成する変換テーブル生成手段と、前記影領域を抽出する条件を設定する影領域抽出設定手段と、前記撮像画像格納手段により格納された撮像画像データを解析して、前記影領域抽出設定手段で設定された条件に従って影領域を抽出する影領域抽出手段と、前記影領域抽出手段によって影領域として抽出された撮像画像データの画素位置を、前記変換テーブル生成手段で生成された変換テーブルを用いて、前記光投影手段から投影される投影光の位置に変換する画素位置変換手段とを備え、前記影領域設定手段は、前記画素位置変換手段により変換された投影光の位置を、影領域として設定することを特徴とする。
【0021】
第1乃至第10の何れかの発明に係る光投影装置であって、第11の発明は、前記投影光データは、映像を表す映像データであり、前記影領域設定手段は、映像を投影したときに形成される影領域を設定し、前記投影光データ補正手段は、前記影領域に投影される映像と、当該影領域の周囲に投影される映像とが繋がるように、前記影領域に投影される映像を補正し、前記投影光描画手段は、前記投影光データ補正手段により補正された映像データの補正処理を行い、前記光投影手段は、前記影領域に映像を投影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、影の領域を特定して当該影領域に光を投影するように投影光データを補正するので、簡単な構成により、発生した影を消すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】背景技術において壁に影が発生する様子を示す上面図である。
【図2】背景技術において物体に影が発生する様子を示す上面図である。
【図3】背景技術において壁上の影を消す技術を示す上面図である。
【図4】背景技術において物体上の影を消す技術を示す上面図である。
【図5】本発明の第1実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図6】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、影映像が発生した様子を示す上面図である。
【図7】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部によって影領域に投影光を投影する様子を示す上面図である。
【図8】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部の投影光によって発生した影領域を、第2光投影部の投影光によって消している様子を示す上面図である。
【図9】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部及び第1光投影部を配置した様子を示す斜視図である。
【図10】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部から投影光を投影した様子を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、影領域に対して第2光投影部から投影光を投影している様子を示す斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、影領域を消すことができた様子を示す上面図である。
【図13】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、視点から死角となる影領域を示す上面図である。
【図14】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、視点から死角となる影領域には第2光投影部の照明投影範囲とはしないことを示す上面図である。
【図15】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、物体の影領域を第2光投影部の照明投影範囲としたことを示す上面図である。
【図16】本発明の第1実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部の投影光によって物体上に発生した影領域のみを、第2光投影部の投影光によって消している様子を示す上面図である。
【図17】本発明の第2実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図18】本発明の第3実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図19】本発明の第4実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図20】本発明の第5実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図21】本発明の第5実施形態として示す光投影システムにおける表示例を示す図であり、(a)は描画軌跡データを示し、(b)は描画軌跡データにより形成された形状描画データを示す。
【図22】本発明の第6実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図23】本発明の第7実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図24】本発明の第8実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図25】本発明の第9実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図26】本発明の第9実施形態として示す光投影システムの他の構成を示すブロック図である。
【図27】本発明の第10実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図28】本発明の第11実施形態として示す光投影システムのブロック図である。
【図29】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部によって物体の前面に照明光を投影し、物体の周囲には映像を投影している様子を示す斜視図である。
【図30】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部が影領域のみに映像を投影した様子を示す斜視図である。
【図31】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部及び第1光投影部によって映像を投影したときの様子を示す斜視図である。
【図32】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部から投影光を投影した様子を示す斜視図である。
【図33】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、影領域を消すように第2光投影部から投影光を投影した様子を示す斜視図である。
【図34】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部から投影光を投影したことにより影領域が消えている様子を示す斜視図である。
【図35】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第1光投影部によって模擬した影領域を投影した様子を示す斜視図である。
【図36】本発明の第11実施形態として示す光投影システムにおいて、第2光投影部によって模擬した影領域を投影した様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[第1実施形態]
第1実施形態として示す光投影システムは、例えば図5に示すように構成される。この光投影システムは、物体が含まれる任意の空間に光を投影するものである。物体には、照明光投影部である第1光投影部3によって照明光が投影される。光投影システムは、第1光投影部3の動作によって発生した影を消すために、光投影制御装置1、光投影手段である第2光投影部2を含む。この光投影システムは、簡単な構成により、発生した影を消すことができるものである。
【0026】
第2光投影部2は、光投影制御装置1の投影光描画部14により描画された投影光描画データを用いて光を投影する光投影手段として機能する。第2光投影部2は、光投影制御装置1によって、投影光のうち照明に類似した光が投影される投影範囲(以下、照明投影範囲と呼ぶ。)が制御される。第2光投影部2としては、プロジェクタを用いることができる。
【0027】
第1光投影部3は、物体に対して照明光を出射する。なお、本例において、第1光投影部3としては、スポットライトを用いることができる。しかし、スポットライトに限られず、あらゆる光源を用いることが可能であり、プロジェクタ等であっても良い。
【0028】
具体的には、光投影システムは、図6に示すように、物体101及び壁102に対向する位置に第2光投影部2及び第1光投影部3を設置する。第1光投影部3から照明光3aを出射したとき、物体101の背後の壁102には、照明光3aが照射されることにより形成された光照射領域102aと、照明光3aが物体101により遮られることにより形成される影領域102bとが発生する。
【0029】
このとき、第2光投影部2は、図7に示すように、影領域102bに対して照明光3aに類似した光特性の照明投影範囲2bを含む投影光2aを投影する。このために、第2光投影部2は、投影角θで投影光2aを投影する最大投影範囲2’よりも狭い補正後投影角αで照明光3aに類似した光を投影する。これにより、図8に示すように、影領域102bには照明光3aに類似した光を含む投影光2aが投影され、影が消されるような視覚的効果が与えられる。このような第2光投影部2の制御動作は、光投影制御装置1によって行われる。
【0030】
光投影制御装置1は、図5に示すように、投影光データ生成部11、影領域設定部12、投影光データ補正部13、及び、投影光描画部14を有する。
【0031】
投影光データ生成部11は、投影光2aを特定する投影光データを生成する。投影光データ生成部11は、DVDを再生する再生装置、各種の投影光データ11aを記憶したハードディスク装置等からなる。投影光データ生成部11は、ユーザによる操作などに従って、投影光データ11aを投影光データ補正部13に供給する。
【0032】
また、投影光データ生成部11は、投影光2aに含まれる光照射領域102aに投影する投影光、光照射領域102aに投影する非投影光を特定する特性情報を設定する。具体的には、この特性情報としては、投影光の照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性を含む要素があり、当該各要素を特定することができる。影領域102bに投影される投影光2aのうち影領域102bに投影される光は、照明光3aに類似した光特性を有することが望ましい。また、光照射領域102aに投影される光は、壁102に当たっている照明光3aに影響を与えない光特性を有することが望ましい。そして、投影光データ生成部11は、特性情報によって特定された投影光データ11aを生成して、投影光データ補正部13に出力する。
【0033】
影領域設定部12は、空間に発生している影領域102bを特定する。影領域設定部12は、影領域102bを特定する影領域データ12aを記憶したメモリ等などで構成される。この影領域データ12aは、第2光投影部2の最大投影範囲2’における座標によって照明光3aに類似した光が投影される照明投影範囲2bを表したデータである。影領域設定部12は、必要に応じて、予め作成した影領域データ12aを投影光データ補正部13に供給する。
【0034】
投影光データ補正部13は、影領域設定部12により設定された影領域102bに光を投影するように投影光データ11aを補正する。すなわち、投影光データ補正部13は、設定された影の領域(形状)に投影光2aにおける照明投影範囲2bをトリミングする投影光トリミング機能を担う。投影光データ補正部13は、投影光データ生成部11から供給された投影光データ11aを、影領域設定部12から供給された影領域データ12aを用いて、照明投影範囲2bに照明光に類似した光を投影するように補正する。
【0035】
投影光データ補正部13は、照明投影範囲2bを設定するために、投影光データ11aに対してトリミング処理を行う。具体的には、投影光データ補正部13は、投影光2aのうち、影領域102bを明るくする照明投影範囲2bを決定する。そして、投影光2aのうち照明投影範囲2bに相当する部分だけを投影光データ生成部11によって決定された投影光の色や輝度とする。一方、投影光データ補正部13は、投影光2aのうち照明投影範囲2b以外の範囲に相当する部分を投影光データ生成部11によって決定された非照明光の色や輝度とする。このように作成された投影光データ11aの補正データは、投影光補正データ13aとして投影光描画部14に供給される。
【0036】
投影光描画部14は、投影光データ補正部13により生成された投影光補正データ13aの描画処理を行う。投影光描画部14は、投影光データ補正部13から供給された投影光補正データ13aを用いて描画処理を行って、投影光描画データ14aを第2光投影部2に出力する。これによって、光投影制御装置1は、第2光投影部2を投影光描画データ14aによって駆動する。
【0037】
光投影システムの具体例を図9乃至図12に示す。この光投影システムは、図9に示すように、第1光投影部3に加え、当該第1光投影部3から照明光3aが物体101に照射されたときに発生する影を照明投影範囲2bにした投影光2aを投影できるように、第2光投影部2を設置する。図10に示すように、第1光投影部3から照明光3aを物体101に対して照射すると、その背後の壁102に光照射領域102a及び影領域102bが発生する。これに対し、図11に示すように、影領域102bを消すように、当該影領域102bの形状にトリミングした投影光2aを第2光投影部2から投影する。これにより、光投影システムは、図12に示すように、影領域102bを投影光2aの照明投影範囲2bにより消すことができる。
【0038】
このような光投影システムによれば、予め明るく投影する照明投影範囲2bを決定しておくだけで、最大投影範囲2’のうち所望の投影範囲だけを明るくする投影光2aを投影することができる。
【0039】
また、この光投影システムによれば、第1光投影部3から照明光3aを投影したときに発生する影領域102bに対して、照明光3aの特性と類似した光を第2光投影部2から投影する。これにより、光投影システムによれば、影を消しつつ、当該影となっていた領域と照明光3aが照射されている領域との輝度差をなくすことができ、違和感を低減できる。
【0040】
この光投影システムにおいて、図13に示すように、任意の視点位置Eから空間の壁102および物体101を観察した場合に、物体101の存在により壁面102には、図中の影領域102bの左端部を含む領域に、死角領域102dが発生する。このような状況において、光投影システムは、図14に示すように、影領域102bから死角領域102dを除いた領域102cに対してのみ、投影光2aの照明投影範囲2bとする。これにより、光投影システムは、不必要な光を投影することなく、最小限の構成で任意の領域の影を消すことができる。例えば、第2光投影部2としてプロジェクタではなく、複数のLEDにより構成される光源を用いた場合、当該死角となる部分のLEDを点灯させる必要が無くなり、省電力化を図れる。
【0041】
また、光投影システムにおいて、図15に示すように、物体101Aと物体101Bとが存在する場合に、第1光投影部3から照射された照明光3aの一部が物体101Aによって遮られて、物体101Bに照明光3aが照射されない場面が想定される。これに対し、第2光投影部2は、図16に示すように、物体101Bの前面のうち、照明光3aが照射されない影領域101aに対して、照明光3aと類似する光とする照明投影範囲2bを含む投影光2aを投影する。このように、光投影システムによれば、複数の物体101が存在している状況において、物体101の位置関係によって発生する影領域102bを消すように投影光2aを投影できる。
【0042】
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の第1実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0043】
第2実施形態として示す光投影システムは、図17に示すように、投影光データ生成部11に、投影光2aの光特性を設定する投影光設定部15を接続した点で、第1実施形態として示した光投影システムとは異なる。
【0044】
投影光設定部15は、投影光2aのうち影領域102bに投影される光の照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性を含む要素を設定する。投影光設定部15は、例えば、ユーザの操作に従って、投影光2aのうち、影領域102bに投影される照明投影範囲2bの光特性及び影領域102b以外に投影される光の光特性が設定される。又は、照明光3aを撮影して、照明投影範囲2bを、当該照明光3aと近似した光特性としても良い。投影光設定部15によって設定された投影光2aにおける照明投影範囲2bの光特性を表すデータは、投影光設定データ15aとして投影光データ生成部11に供給される。
【0045】
投影光データ生成部11は、投影光設定部15から供給された投影光設定データ15aに従って、投影光データ11aを生成する。投影光データ生成部11は、投影光設定データ15aに従って新たな投影光データ11aを生成しても良く、予め用意された投影光データ11aを、投影光設定データ15aに従って補正しても良い。これにより、投影光データ生成部11は、投影光2aのうち影領域102bに投影される照明投影範囲2bの特性及び/又は影領域102b以外に投影される光の特性を変更できる。
【0046】
このような光投影システムによれば、影領域102bを発生させている照明光3aに合わせて投影光2aにおける照明投影範囲2bの光特性を設定できる。これにより、光投影システムは、照明光3aと馴染む一様な投影光2aによって、影領域102bを消すことができる。また、この光投影システムによれば、照明光3aと投影光2aとの双方を投影している状況において、当該投影された様子を目視しながら投影光2aにおける照明投影範囲2bの要素をリアルタイムに変更できる。これにより、光投影システムは、照明光3aに対してより近い照明投影範囲2bを含む投影光2aを生成することができる。
【0047】
[第3実施形態]
つぎに、第3実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0048】
第3実施形態として示す光投影システムは、投影光データ生成部11が、影領域設定部12が設定した影領域102bをさらに分割し、当該分割した影領域ごとに投影する光の特性を指定した投影光データ11aを生成するものである。
【0049】
この光投影システムは、図18に示すように、投影光データ生成部11が、影領域102b内において照明投影範囲2bを分割した範囲ごとの投影光データ11aを出力する。投影光データ生成部11は、それぞれ光の特性としての投影光2aの照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性を含む要素が異なる複数の投影光データ11aを出力する。特性が異なる複数の投影光データ11aは、予め記憶されたものであっても良く、投影光データ生成部11の画像処理によって特性を変化させて生成されたものであっても良い。
【0050】
影領域設定部12は、影領域102bを分割した各範囲を示す影領域データ12aを投影光データ補正部13に供給する。
【0051】
投影光データ補正部13は、影領域データ12aによって分割された複数の範囲のそれぞれに対して異なる光によって投影を行うことができるように投影光データ生成部11を補正して、投影光補正データ13aを作成する。
【0052】
例えば、投影光2a及び照明光3aが投影される壁102が、当該壁102の部分によって素材が異なっている場面が想定される。そうすると、壁102に投影される照明光3a及び投影光2aの見え方が、壁102の部分によって異なる。したがって、この場合には、影領域設定部12が壁102の部分ごとに、投影光データ生成部11が複数の投影光データ11aを生成して、投影光データ補正部13が、壁102の部分に対応した照明投影範囲2bとなるよう投影光2aのトリミングを行う。これにより、光投影システムは、壁102の素材等に拘わらず、一様な照明光3a及び投影光2aを照射できる。
【0053】
このような光投影システムによれば、影領域102bを分割した囲ごとに投影光データ11aを用意しておくだけで、影領域102bのうち複数の範囲に対して所望の投影光2aにより投影することができる。これにより、光投影システムは、より高度に影を消すことができる。
【0054】
[第4実施形態]
つぎに、第4実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0055】
第4実施形態として示す光投影システムは、図19に示すように、ユーザの操作に従って任意の形状を描画し、形状描画データ16aを生成する形状描画部16を備える点で、上述した実施形態とは異なる。形状描画部16により生成された形状描画データ16aは、影領域設定部12に供給される。影領域設定部12は、形状描画部16で入力された形状を影領域102bとして、影領域データ12aを投影光データ補正部13に供給する。
【0056】
形状描画部16は、マウス等のポインティングデバイス、モニタ装置の表示部として構成された液晶パネルとユーザが操作するペンとからなるペンタブレットシステムで構成されている。ここで、液晶パネルの全画面が、第2光投影部2の最大投影範囲2’の全範囲に対応していることが望ましい。
【0057】
形状描画部16は、ペンタブレットシステムの場合、ペンによって液晶パネルに与えられた筆圧の軌跡情報を生成する。この筆圧の軌跡情報は、形状描画データ16aとして影領域設定部12に供給され、影領域102b(トリミング領域)に投影される照明投影範囲2bの輪郭を表す影領域データ12aに変換される。この影領域データ12aは、影領域設定部12から投影光データ補正部13に供給されて、投影光データ補正部13によって、影領域データ12aに基づいて投影光データ11aを補正して、照明投影範囲2bを変更することができる。また、形状描画部16がマウスである場合には、実際に壁102に照明光3a及び投影光2aが投影されて光照射領域102a及び影領域102bが形成されている場合に、マウスを動かしながら投影光2aの照明投影範囲2bを変更できる。
【0058】
このような光投影システムによれば、ユーザが形状描画部16を操作して、所望の影領域102bの輪郭を指定する操作だけで、第2光投影部2の最大投影範囲2’のうち所望の照明投影範囲2bだけを照明光3aに類似した光とした投影光2aを投影することができる。
【0059】
すなわち、既存のトリミング照明では、予め作成されたマスク(遮光版)を第2光投影部2の投影レンズの前に設置したり、予め指定されたマスク形状による画像補正(マスキング)で投影光のトリミング(影領域102bの補正)を実現していた。しかし、本発明を適用した光投影システムによれば、実際に影領域102bを見ながら、その場で絵を描くように照明投影範囲2bを設定することができ、リアルタイムに影領域102bの設定作業、投影動作、修正作業を実現することができる。
【0060】
なお、この光投影システムにおいて、影領域設定部12は、ペンタブレットシステムを用いた場合、液晶パネルに直接的に影領域102bの輪郭を書き込む形態とすることが考えられるが、これには限らない。例えば、予め作成されたベース形状(円、楕円、四角、多角形、星形状など)を任意の場所に配置して、影領域102bを設定しても良く、当該ベース形状を拡大、縮小、形状変化させて影領域102bを設定しても良い。形状変化の例としては、円と楕円の間での変形、正方形と長方形の間での変形が挙げられる。
【0061】
また、この光投影システムにおいて、ユーザが形状描画部16によって影領域102bを指定する時に、形状描画部16の操作に対して、手探り点を液晶パネルに表示することや、第2光投影部2によって手探り点に対応した光を発しても良い。例えば、影領域102bの左上端部を正確に指定したい場合、任意に形状描画部16に触れた時に、当該任意の点に対応した最大投影範囲2’内の位置を照らすように第2光投影部2を動作させることとなる。これによって、光投影システムは、より簡単に影領域102bを指定させる操作をさせることができる。
【0062】
以上のように、この光投影システムによれば、形状描画部16によって任意に指定された形状で影領域102bが構成されるため、まるで絵を描くように直感的に照明投影範囲2bを設定できる。
【0063】
[第5実施形態]
つぎに、第5実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0064】
第5実施形態として示す光投影システムにおいて、図20に示すように、形状描画部16は、ユーザの操作に従って描画された連続的な位置データからなる描画軌跡データ16bを生成し、当該描画軌跡データ16bを投影光描画部14にリアルタイムに出力する。影領域設定部12は、出力された形状描画データ16aに基づいて影領域102bを更新する。同時に、投影光データ補正部13は、描画軌跡データ16bに従って描画処理を行って、ユーザが指定した軌跡を第2光投影部2によって表示させる。これにより、光投影システムは、時間的にトリミング領域(影領域102b)に対応した照明投影範囲2bを更新する追従機能を追加する。
【0065】
影領域設定部12は、出力された形状描画データ16aに基づいて影領域102bに対応する範囲を設定して、第2光投影部2からリアルタイムに投影光2aを投影させる。リアルタイムに投影光2aを投影させるとは、ユーザにより指定された影領域102bが更新される度又は所定時間ごとに、形状描画部16は、形状描画データ16aを影領域設定部12に出力して、影領域設定部12により影領域102bを更新する。これにより、ユーザが入力した影領域102bの描画軌跡を、直ぐに投影光2aに反映させる。ユーザは、壁102に投影される投影光2aを確認しながら、影領域102bの軌跡を描画して、照明投影範囲2bを指定できる。
【0066】
同時に、投影光描画部14は、形状描画部16から供給された描画軌跡データ16bに基づいて、ユーザが指定した影領域102bの軌跡を示す投影光2aを投影する。これにより、ユーザは、軌跡を確認しながら、影領域102bを指定できる。
【0067】
以上説明したように、第5実施形態として示した光投影システムによれば、ユーザの操作に応じてリアルタイムに描画軌跡データ16bを生成して表示し、影領域102bに対応した照明投影範囲2bを更新することができる。また、光投影システムは、ユーザ操作による描画軌跡を影領域設定部12が設定する影領域102bに対する照明投影範囲2bに変換することにより、ユーザは実際の影領域102bに対する照射の様子を確認しながら照明投影範囲の設定ができる。
【0068】
なお、図21に示すように、形状描画部16は、ユーザが影領域102bの軌跡を描いている最中には、図21(a)のように描画軌跡データ16bを出力し、図21(b)のように当該描画軌跡により閉じた領域が設定されたときに形状描画データ16aを出力しても良い。これにより、描画軌跡により閉じた領域が設定されていない場合には、線図により描画軌跡を投影し、描画軌跡により閉じた領域が設定された時には、当該閉じた領域全体を影領域102bに設定することができる。
【0069】
[第6実施形態]
つぎに、第6実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0070】
第6実施形態として示す光投影システムは、図22に示すように、影領域設定部12により設定された影領域の位置、形状を調整する影対象領域調整部17を備える点で、上述した実施形態とは異なる。
【0071】
影対象領域調整部17は、影領域設定部12から影領域データ12aを入力する。影対象領域調整部17は、入力した影領域データ12aによって設定された影領域102bの位置及び形状を調整した影領域調整データ17aを投影光データ補正部13に供給する。投影光データ補正部13は、影領域調整データ17aが供給されると、調整された結果に応じて投影光2aにおける照明投影範囲2bを変更する。これにより、光投影システムは、影領域データ12aにて設定された影領域102bの位置及び形状の少なくとも一方を調整できる。影対象領域調整部17は、影領域設定部12により設定された影領域102bに対応した照明投影範囲2bを、ユーザの操作に応じて変更しても良く、自動的に変更しても良い。
【0072】
以上のように、光投影システムによれば、影領域102bが影領域設定部12により設定されても、当該影領域102bの位置及び形状を、容易に修正することができる。例えば、影領域設定部12により設定された影領域102bが実際のものとずれていた場合に、容易に影領域102bの微調整を行うことができる。また、物体101、第2光投影部2、第1光投影部3の位置の微調整を行った結果、影領域102bがずれてしまった場合にも、容易に影領域102bの位置、形状の微調整を行うことができる。
【0073】
[第7実施形態]
つぎに、第7実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0074】
第7実施形態として示す光投影システムは、図23に示すように、投影光データ補正部13に接続された輝度調整部18を備える点で、上述した光投影システムとは異なる。
【0075】
この光投影システムは、第2光投影部2から投影された投影光2aにおける照明投影範囲2bと影領域102bを発生させている周囲の照明光3aとが任意幅で重複するように、投影光データ補正部13が、影領域設定部12により設定された影領域を拡大する。また、光投影システムは、当該拡大された投影光2aの重複領域の境界付近にて輝度が一様になるように、輝度調整部18によって、投影光データ11aにより投影される投影光2aの輝度を調整する(ブレンディング機能)。
【0076】
投影光データ補正部13は、影領域設定部12により設定された影領域データ12aに対し、投影光2aを拡大した部分を特定する領域を保存しておく。この領域が、照明光3aと重複する投影光2aとなる。そして、投影光データ補正部13は、第2光投影部2から影領域102bに対して投影光2aを投影する場合には、照明投影範囲2bのうち拡大された領域に相当する部分の輝度調整を行う。
【0077】
このとき、輝度調整部18は、例えば、第2光投影部2と、投影光2aの照明投影範囲2b及び照明光3aの重複領域が形成される壁102との距離を算出する。この第2光投影部2と重複領域との距離が近いほど、当該重複領域における輝度が高いとする。そして、第2光投影部2から投影光2aが投影された時の照明投影範囲2bの輝度の上昇率が高いほど、この輝度の上昇率に反比例して、重複領域の輝度を低減するように輝度を調整する。このとき、投影光2aにおける照明投影範囲2bの輝度を演算式によって求めても良い。又は、重複領域内の輝度分布を表す輝度マップにおいて影領域102bの中央部よりも終端部の輝度を次第に下げるように、照明投影範囲2bの輝度を変更しても良い。
【0078】
この光投影システムによれば、影領域設定部12により設定された影領域102bを拡大するので、影領域102bに対して投影光2aが投影されていない隙間が発生することを回避できる。また、この光投影システムによれば、影領域102bを拡大することによって投影光2aが照明光3aと重複しても、当該重複部分における輝度を調整できる。これにより、この光投影システムによれば、重複領域が他の照明光3aが投影された光照射領域102aよりも高い輝度になることを回避するように輝度補正を行うことができる。これにより、光投影システムは、壁102上における輝度ムラを抑制して、一様な輝度とすることができる。
【0079】
[第8実施形態]
つぎに、第8実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0080】
第8実施形態として示す光投影システムは、図24に示すように、第2光投影部2を振動させる駆動部19を備える点で、上述した実施形態における光投影システムとは異なる。
【0081】
駆動部19を備えない光投影システムは、投影光2aにおける照明投影範囲2bの輪郭が明瞭である。したがって、投影光2aの照明投影範囲2bが、影領域102bの全てを覆っていない場合には、投影光2aと影領域102bとの間に隙間が視認されてしまう。また、投影光2aの照明投影範囲2bの一部が、照明光3aと重複している場合には、当該重複された一部に輝度ムラが発生する場合がある。これに対し、第8実施形態として示す光投影システムは、駆動部19を備えることにより、当該隙間及び重複を目立たなくする。
【0082】
この光投影システムは、第2光投影部2に対して微小振動を与える。駆動部19による第2光投影部2の振動幅は、第2光投影部2と壁102との距離、影領域設定部12による影領域102bの精度等によって調整されることが望ましい。このように第2光投影部2を振動することにより、投影光2aの照明投影範囲2bも振動させることができ、投影光2aによる照明投影範囲2bの輪郭もぼかすことができる。
【0083】
[第9実施形態]
つぎに、第9実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0084】
第9実施形態として示す光投影システムは、図25に示すように、光投影部としてのプロジェクタを複数備え、各第2光投影部2,2’により影領域102bに投影光2aを投影する点で、上述した実施形態とは異なる。
【0085】
複数の第2光投影部2は、各第2光投影部2の最大投影範囲2’よりも大きい影領域102bに対して、それぞれ投影光2aを投影する。このとき、第2光投影部2から投影された投影光2aは、影領域102bの一部に投影される。同様に、第2光投影部2’から投影された投影光2aは、影領域102bの残りの一部に投影される。また、複数の第2光投影部2は、それぞれ異なる影領域102bに対して投影光2aを投影することもできる。
【0086】
このような光投影システムは、所謂マルチプロジェクション方式と称される技術である。複数の第2光投影部2,2’を備えることにより、複数の投影光2aを影領域102bに投影できる。これにより、光投影システムは、一つの第2光投影部2により投影光2aを投影する場合と比較して、より広い照明投影範囲2bの投影光2aを影領域102bに投影できる。
【0087】
この光投影システムにおいて、光投影制御装置1には、第2光投影部2,2’に対応した投影光データ11a,11a’を生成する投影光データ生成部11、第2光投影部2,2’に対応した投影光補正データ13a,13a’を生成する投影光データ補正部13、第2光投影部2,2’に対応した投影光描画データ14a,14a’を生成する投影光描画部14が備えられる。また、影領域設定部12は、各第2光投影部2,2’について投影光2aを投影する影領域102bを設定する。影領域設定部12は、各第2光投影部2,2’の設置位置、影領域102bの位置、各第2光投影部2,2’の投影角等に基づいて、各第2光投影部2,2’によって投影光2aを投影する影領域102bを設定する。なお、影領域設定部12は、上述した実施形態で述べたようにユーザの操作等に応じて、各第2光投影部2,2’の影領域102bを設定しても良い。
【0088】
投影光データ補正部13は、それぞれ影領域データ12a,12a’が供給され、当該影領域データ12a,12a’に基づいて投影光データ11a,11a’を補正する。投影光描画部14は、投影光データ補正部13により補正された投影光補正データ13a,13a’を用いて描画処理を行って、投影光描画データ14a,14a’を第2光投影部2,2’に供給する。
【0089】
以上のように、光投影システムによれば、複数の第2光投影部2によって、影領域102bに対して多方面から投影光2aを投影して、当該影領域102bを消すことができる。また、この光投影システムは、第1光投影部3が複数存在するときに、多数の影領域102bが存在する場合や、広い範囲に影領域102bが存在する場合であっても、複数の第2光投影部2によって当該多数又は広い範囲の影領域102bを消すことができる。
【0090】
また、第9実施形態として示す光投影システムは、図26に示すように、第2光投影部2,2’に対応した複数台の光投影制御装置1,1’を備えて構成されていても良い。光投影制御装置1,1’には、同期装置4が接続されている。同期装置4は、各光投影制御装置1,1’から出力される投影光描画データ14a,14a’の出力タイミングの同期をとる。これにより、光投影システムは、第2光投影部2,2’から、同期が取れた投影光2aを出力させることができる。
【0091】
[第10実施形態]
つぎに、第10実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0092】
第10実施形態として示す光投影システムは、自動的に影領域102bを抽出して、当該影領域102bに対して投影光2aを投影するものである。この光投影システムは、図27に示すように、撮影部20、撮像画像生成部21、撮像画像格納部22、変換テーブル生成部23、影領域抽出設定部24、影領域抽出部25、画素位置変換部26を備える点で、上述した実施形態とは異なる。
【0093】
この光投影システムは、撮影部20として、ビデオカメラを備えている。撮影部20は、その撮像範囲が第2光投影部2の最大投影範囲2’を含むように設置されている。撮影部20は、光学系やCCD等の撮像素子を含む。撮影部20は、撮像素子により撮像した撮像画像信号を撮像画像生成部21に供給する。
【0094】
撮像画像生成部21は、撮影部20に対するI/Oインターフェースからなる。撮像画像生成部21は、撮影部20から出力された撮像画像信号を処理可能なデータ形式に変換して、撮像画像データ21aを生成して、撮像画像格納部22に供給する。
【0095】
撮像画像格納部22は、例えばハードディスク装置からなる。撮像画像格納部22は、撮像画像生成部21により生成された撮像画像データ21aを格納する。この撮像画像格納部22に格納された撮像画像データ21aは、図示しないディスプレイに対して出力して撮影部20の撮像状態を視認可能としても良い。撮像画像格納部22に格納された撮像画像データ21aは、影領域抽出部25及び変換テーブル生成部23に読み取られる。
【0096】
変換テーブル生成部23は、撮像画像生成部21により生成されて撮像画像格納部22に格納された撮像画像データ21aが供給される。変換テーブル生成部23は、撮像画像データ21aにおける画像位置と、第2光投影部2により投影される投影光2aの位置との対応関係を記述した変換テーブル23aを生成する。投影光2aの位置は、第2光投影部2の光出射位置に相当する。変換テーブル23aを参照すれば、光投影システムは、撮影部20により撮像して撮像画像生成部21により生成した撮像画像データ21aの画像位置が、第2光投影部2におけるどの光出射位置から投影できるかを認識できる。
【0097】
変換テーブル生成部23は、変換テーブル23aを生成する時には、以下の動作を行う。この動作は、新たに物体101を設置した場合などに行われる。このとき、最大投影範囲2’の特定位置にカラー部分を含めて第2光投影部2から投影光2aの投影を行う。この状態で、撮影部20により最大投影範囲2’を含む領域を撮像すると、撮像画像中に、当該カラー部分を含む撮像画像を取得できる。そして、カラー部分を含む投影画像の画像内位置と、カラー部分を含む撮像画像の画像内位置の関係が求まる。この作業を複数回に亘って繰り返すと、変換テーブル生成部23は、第2光投影部2の光出射位置と撮像画素との関係を示す変換テーブルを作成できる。また、この変換テーブルにおいて、逆方向に撮像画像データの画素位置を変換させた画像は、第2光投影部2の光出射位置と一致することとなる。
【0098】
なお、投影画像と撮像画像との関係において、画素位置の対応関係は、1画素ごとに検出してもよく、ある程度の画素を統合した画素の塊や線で検出してもよく、さらには離散的な位置の画素の対応関係を検出した後に画素間を補間しても良い。
【0099】
影領域抽出設定部24は、影領域102bを抽出する条件を設定する。影領域抽出設定部24は、撮像画像格納部22に格納された撮像画像データ22aを解析して、影領域102bを抽出するための条件を設定する。影領域抽出設定部24は、例えば、色によって影領域102bを抽出する近似色抽出、形状によって影領域102bを抽出する形状抽出、明度によって影領域102bを抽出する明度抽出などの抽出方法、当該抽出方法における閾値等を設定する。
【0100】
影領域抽出設定部24は、例えば、ユーザが操作するキーボード及び当該キーボード操作を認識する入力インターフェースや、各種パラメータが格納された記録媒体を読み取る機構、外部から送信された各種パラメータを受信する機構などで構成される。影領域抽出設定部24により設定された影領域102bの抽出条件は、抽出設定データ24aとして、影領域抽出部25に供給される。
【0101】
影領域抽出部25は、影領域抽出設定部24により設定された条件に従って撮像画像データ22aを解析して、影領域102bを抽出する。影領域抽出部25は、抽出設定条件に合致した影領域102bを表す撮像画像の座標情報としての影領域抽出データ25aを画素位置変換部26に供給する。
【0102】
画素位置変換部26は、影領域抽出部25から、撮像画像のうちどの座標位置が影領域102bであるかを示す影領域抽出データ25aが供給される。また、画素位置変換部26は、変換テーブル生成部23により生成された変換テーブル23aを読み込む。画素位置変換部26は、影領域抽出データ25aにより示された撮像画像中の影領域102bが、どの第2光投影部2の光出射位置かを、変換テーブル23aを参照して認識する。すなわち、画素位置変換部26は、撮像画像のうちの影領域102bを示す画素を、光出射位置に変換する。画素位置変換部26は、変換した光出射位置を含む画素位置変換データ26aを生成して、影領域設定部12に供給する。これにより、光投影システムは、影領域設定部12が、画素位置変換部26により変換された光出射位置を、影領域102bとして設定する。
【0103】
以上説明したように、第10実施形態として示した光投影システムによれば、撮像画像を解析することによって、当該撮像画像に含まれる影領域102bに対応した第2光投影部2の光出射位置を求めることができる。これにより、光投影システムによれば、自動的に影領域抽出部25により影領域102bを抽出すれば、画素位置変換部26によって、第2光投影部2の光出射位置を照明投影範囲2bとすれば、影領域102bを消すことができるかを自動的に抽出できる。
【0104】
また、光投影システムによれば、さらに、所定時間ごとに影領域102bの自動抽出処理を更新することにより、 物体101の移動や変形など時間経過による変化に対応して照明投影範囲2bを追従させることができる。また、第1光投影部3の位置調整に応じて影領域102bが変化したことに応じ、照明投影範囲2bを変化させる。すなわち、光投影システムは、上述した構成において、影領域抽出部25が、物体101の移動又は変形を含む時間経過に伴う変化を検出し、当該影領域抽出部25により検出された物体101の変化に応答して、照明投影範囲2bを変化させる。
【0105】
[第11実施形態]
つぎに、第11実施形態に係る光投影システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0106】
第11実施形態として示す光投影システムは、映像データを用いて影領域102bを消すものである。この光投影システムは、図28に示すように、光投影制御装置1に映像データ生成部27、映像データ補正部28及び映像描画部29を備える。映像データ生成部27、映像データ補正部28及び映像描画部29は、映像データを処理する以外は、上述した投影光データ生成部11、投影光データ補正部13及び投影光描画部14と同様の機能を有する。更に、この光投影システムは、映像投影部30を備える。この映像投影部30は、映像を投影する以外は、第2光投影部2と同様の機能を有する。
【0107】
この光投影システムにおいて、投影光データ11aを、映像を表す映像データ27aに変更している。影領域設定部12は、映像投影部30から映像を投影したときに形成される影領域102bを設定する。投影光データ補正部13に対応する映像データ補正部28は、影領域102bに投影される映像と、当該影領域102bの周囲に投影される映像とが繋がるように、影領域102bに投影される映像を補正する。投影光描画部14に対応する映像描画部29は、映像データ補正部28により補正された映像データの補正処理を行い、映像投影部30は、影領域102bに映像を投影する。
【0108】
このような光投影システムは、第1光投影部3によって投影される映像に対して、第2光投影部2によって投影される映像が繋がりを持つように、第2光投影部2に供給する映像データに補正を施す必要がある。このとき、光投影システムは、第1光投影部3によって投影されている映像と、第2光投影部2によって影領域102bに投影する映像の重複部分において映像を重畳させるように映像を補正する手法を採用できる。この手法は、所謂マルチプロジェクション方式によって、複数の光源から投影された部分映像で一枚の映像を構成する技術を採用できる。
【0109】
具体的には、第2光投影部2、第1光投影部3を複数のプロジェクタとして構成する。そして、各プロジェクタの設置位置、壁102の設置位置、映像を見る所定の視点位置及びプロジェクタの打ち込み角等のパラメータを取得する。これらのパラメータにより、各プロジェクタから映像を投影したときに、所定の視点位置から映像がどのように歪むんで見えるかを演算できる。すなわち、第1光投影部3から光照射領域102aに投影された映像がどのように歪んで見えるかを演算すると共に、第2光投影部2から影領域102bに投影された映像がどのように歪んで見えるかを演算する。各プロジェクタに供給する映像には、特定の視点から見て映像が歪んで見えないように歪み補正処理を行う。これにより、第2光投影部2、第1光投影部3からそれぞれ映像を投影しても、所定の視点位置から歪み無く映像を見ることができる。なお、この歪み補正処理は、壁102のように平面でなく、非平面に映像を投影する場合にも応用できる。
【0110】
また、各プロジェクタに供給する映像が隣接する箇所においては、双方の映像を重複させる。この映像の重複箇所においては、輝度が他の映像に対して高輝度にならないように輝度調整を行うことが望ましい。
【0111】
このような光投影システムによって映像の照明光3a及び投影光2aを投影したときの具体例を図29乃至図31に示す。この例においては、第1光投影部3によって、物体101’の前面には照明光を投影し、物体101’の周囲には映像を投影している。すると、物体101’の背後には、図29に示すように、映像が投影されない影領域102bが発生する。これに対し、第2光投影部2は、図30に示すように、影領域102bのみに映像を投影する。このとき、影領域設定部12は、影領域データ12aを映像データ補正部28に供給する。映像データ補正部28は、映像データ生成部27によって生成された映像データをトリミングして、映像の輪郭を影領域102bの形状に補正する。また、映像データ補正部28は、照明光3aの映像と連続して繋がるように映像を補正する。そして、映像描画部29は、補正された映像補正データ28aを用いた描画処理を行って、映像投影部30から映像を投影させる。これにより、光投影システムは、図31に示すように、影領域102bに対して投影光2aを投影して、影領域102bを消すことができ、壁102の全面に映像を投影することができる。
【0112】
また、この光投影システムは、第1光投影部3によって投影された照明光3aによって発生する影領域102bを消すと共に、任意の影を映像として投影できる。例えば図32のように、第1光投影部3から照明光3aを投影することによって影領域102bが発生しても、図33に示すように、第2光投影部2から投影光2aを投影する。これによって、図34に示すように、当該影領域102bを消すことができる。
【0113】
このとき、第2光投影部2は、影を模した色及び輝度の映像を投影する。これにより、光投影システムは、図35に示すように、影領域102b’を発生させることができる。また、光投影システムは、図36に示すように、第1光投影部3によって影を模した色及び輝度の映像を投影して、影領域102b’’を発生させることができる。
【0114】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0115】
1 光投影制御装置
2 第2光投影部
2a 投影光
2b 照明投影範囲
3 第1光投影部
3a 照明光
4 同期装置
11 投影光データ生成部
12 影領域設定部
13 投影光データ補正部
14 投影光描画部
15 投影光設定部
16 形状描画部
17 影対象領域調整部
18 輝度調整部
19 駆動部
20 撮影部
21 撮像画像生成部
22 撮像画像格納部
23 変換テーブル生成部
24 影領域抽出設定部
25 影領域抽出部
26 画素位置変換部
27 映像データ生成部
28 映像データ補正部
29 映像描画部
30 映像投影部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が含まれる任意の空間に光を投影する光投影装置であって、
前記空間に発生している影の領域を特定する影領域設定手段と、
投影光を特定する投影光データを生成する投影光データ生成手段と、
前記影領域設定手段により設定された影領域に光を投影するように前記投影光データを補正する投影光データ補正手段と、
前記投影光データ補正手段により生成された投影光補正データの描画処理を行う投影光描画手段と、
前記投影光描画手段により描画された投影光描画データを用いて光を投影する光投影手段と
を備えることを特徴とする光投影装置。
【請求項2】
前記投影光データ生成手段は、投影光の照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性を含む要素を設定する投影光設定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光投影装置。
【請求項3】
前記投影光データ生成手段は、前記影領域設定手段が設定した影領域をさらに分割し、
当該分割した影領域ごとに投影する光の特性を指定した投影光データを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光投影装置。
【請求項4】
ユーザの操作に従って任意の形状を描画し、形状データを生成する形状描画手段を備え、
前記影領域設定手段は、前記形状描画手段で入力された形状を影領域とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の光投影装置。
【請求項5】
前記形状描画手段は、ユーザの操作に従って描画された連続的な位置データからなる描画軌跡データを生成し、当該描画軌跡データを前記影領域設定手段にリアルタイムに出力し、
前記投影光描画手段は、前記出力された描画軌跡データに基づいて当該軌跡を描画することを特徴とする請求項4に記載の光投影装置。
【請求項6】
前記影領域設定手段により設定された影領域の位置、形状を調整する影対象領域調整手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の光投影装置。
【請求項7】
前記光投影手段から投影された投影光と前記影を発生させている周囲の光とが任意幅で重複するように前記影領域設定手段により設定された影領域を拡大し、当該拡大された投影光の重複領域の境界付近にて輝度が一様になるように前記投影光データにより投影される投影光の輝度を調整する輝度調整手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の光投影装置。
【請求項8】
前記光投影手段を振動させる駆動手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の光投影装置。
【請求項9】
前記光投影手段を複数備え、
各光投影手段により前記影領域に投影光を投影することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の光投影装置。
【請求項10】
前記影領域を含む空間を撮像範囲とする撮影手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像画像データを生成する撮像画像生成手段と、
前記撮像画像データを格納する撮像画像格納手段と、
前記光投影手段から投影された投影光の位置と、前記撮像画像データの画素位置とを対応させた変換テーブルを生成する変換テーブル生成手段と、
前記影領域を抽出する条件を設定する影領域抽出設定手段と、
前記撮像画像格納手段により格納された撮像画像データを解析して、前記影領域抽出設定手段で設定された条件に従って影領域を抽出する影領域抽出手段と、
前記影領域抽出手段によって影領域として抽出された撮像画像データの画素位置を、前記変換テーブル生成手段で生成された変換テーブルを用いて、前記光投影手段から投影される投影光の位置に変換する画素位置変換手段とを備え、
前記影領域設定手段は、前記画素位置変換手段により変換された投影光の位置を、影領域として設定することを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の光投影装置。
【請求項11】
前記投影光データは、映像を表す映像データであり、
前記影領域設定手段は、映像を投影したときに形成される影領域を設定し、
前記投影光データ補正手段は、前記影領域に投影される映像と、当該影領域の周囲に投影される映像とが繋がるように、前記影領域に投影される映像を補正し、
前記投影光描画手段は、前記投影光データ補正手段により補正された映像データの補正処理を行い、
前記光投影手段は、前記影領域に映像を投影すること
を特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の光投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2011−238370(P2011−238370A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106478(P2010−106478)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】