説明

光拡散フィルム用基材およびそれを用いた光拡散フィルム

【課題】大型画面の液晶表示装置のバックライトユニットに用いる、低位相差な光拡散フィルム用基材およびそれを用いた光拡散フィルムを提供する。
【解決手段】耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの両面に耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層してなる光拡散フィルム用基材。この基材において、前記耐熱性フィルムの厚さが5〜148μmであり、その両面に積層する耐溶剤性フィルムの厚さがそれぞれ1〜100μmであり、かつトータル厚さが10〜150μmである。また耐熱性を有する熱可塑性樹脂が、100℃以上のガラス転移温度を有するポリカーボネートであり、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である。さらに光拡散フィルム用基材は、光拡散フィルム用基材の位相差が20nm以下である。光拡散フィルムは、光拡散フィルム用基材の片面に光拡散層を設け他の片面にスティッキング防止層を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用のバックライトユニットに用いる光拡散フィルム用基材およびそれを用いた光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーテレビやパーソナルコンピュータなどに用いられる液晶表示装置においては、液晶層に光を背面から照射して発光させる、直下型方式やサイドライト方式によるバックライトユニットが用いられている。図1に一般的なバックライトユニットの構成の一例を示す。バックライトユニット7はランプなどの光源6と下面に反射ドットや反射フィルムなどからなる反射層4を有する導光板3と導光板3の上面に配設された光拡散フィルム1と光拡散フィルム1の上面に配設されたプリズムシート2とから構成される。
【0003】
バックライトユニット7は以下に示すように機能する。すなわち、光源6から出射した光線は導光板3に入射し、反射層4や導光板3および光拡散フィルム1の側面で反射し、導光板3の表面から出射する。導光板3から出射した光線は光拡散フィルム1に入射して拡散し、光拡散フィルム1から出射する。次いで、光拡散フィルム1から出射した光線はプリズムシート2に入射し、プリズムシート2の表面に形成されたプリズム部で略真上方向にピークを示すように屈折して出射し、このプリズム部から出射した光線が液晶層5の全面を照射する。
【0004】
上記のようにして構成されるバックライトユニット7において、光拡散フィルム1は導光板3から出射した正面輝度が低い光線を均一化して液晶画面の正面から見た場合の輝度を向上させるとともに、光線を拡散させることにより反射層4に形成されたドットパターンが視認されないようにする機能を担っている。そのため、光拡散フィルム1は光拡散性に優れていること、および導光板裏面のドット加工パターンが見えないことに加えて、高い光線透過率を有していること、すなわち優れた透明性を有していることが求められる。また、光源が光拡散フィルム1の直近に配設されるために温度が80〜90℃にも上昇するため、耐熱性に優れている必要がある。
【0005】
光拡散フィルムの構成としては特許文献1に示すような構成の光拡散フィルムが提案されている。このような光拡散フィルムは図2に示すように構成される。光拡散フィルム1は、基材1aと、入射光を拡散させるために基材1aの上面に設ける光拡散剤8を含有する光拡散層1bと、導光板と密着して干渉模様が発生することを防止するために基材1aの下面に設けるスティッキング防止剤9を含有するスティッキング防止層1cとを積層して構成される。基材1aとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、アセチルセルロース、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。光拡散層1bとしては、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂バインダーに、アクリル樹脂などの有機樹脂からなるビーズを分散させて構成する。スティッキング防止層1cとしては、光拡散層1bと同様の構成が適用される。
【0006】
また、光拡散フィルムの他の構成として、基材フィルムにエンボス加工を施して表面に凹凸を形成したものもある。
【0007】
近年液晶表示装置の画面は大型化し、それに伴って従来以上の高輝度性が求められるようになっている。そのためには光拡散フィルムの位相差を20nm以下として光線透過性を高める必要がある。しかし、基材として透明性の高いポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムなどを用いた場合は位相差が高くなり好ましくない。また無延伸のポリカーボネートなどを基材として用いた場合は耐溶剤性に乏しく、光拡散層をコーティングで設ける際、収縮して変形するおそれがある。さらに基材にエンボス加工を施して表面に凹凸を形成させる場合は、加工時の応力によりひずみが生じ位相差が高くなる欠点を有している。
【0008】
本発明に関する先行技術文献として、以下のものがある。
【特許文献1】特開2001−059903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
大型画面の液晶表示装置のバックライトユニットに用いる、低位相差な光拡散フィルム用基材およびそれを用いた光拡散フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の光拡散フィルム用基材は、耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの両面に耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層してなることを特徴とする。
(2)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)において、前記耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの厚さが5〜148μmであり、その両面に積層する前記耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの厚さがそれぞれ1〜100μmであり、かつトータル厚さが10〜150μmであることを特徴とする。
(3)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)又は(2)において、前記耐熱性を有する熱可塑性樹脂が、100℃以上のガラス転移温度を有するポリカーボネートであることを特徴とする。
(4)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする。
(5)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記ポリエステル樹脂が、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかであることを特徴とする。
(6)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記光拡散フィルム用基材が、無配向フィルムであることを特徴とする。
(7)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記光拡散フィルム用基材の位相差が、20nm以下であることを特徴とする。
(8)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記光拡散フィルム用基材の位相差が、10nm以下であることを特徴とする。
(9)本発明の光拡散フィルム用基材は、前記(1)〜(6)のいずれかにおいて、前記光拡散フィルム用基材の位相差が、5nm以下であることを特徴とする。
(10)本発明の光拡散フィルムは、前記(1)〜(9)のいずれかの光拡散フィルム用基材の片面に光拡散層を設け、他の片面にスティッキング防止層を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光拡散フィルム用基材は、透明性および耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなるフィルムの両面に透明性および耐溶剤性を有するポリエステル樹脂からなるフィルムを積層してなる無延伸、無配向の3層フィルムで構成され、位相差が20nm以下であり高い光線透過性を有している。
また、この光拡散フィルム用基材の上下面に、有機樹脂にビーズを分散させて光拡散層およびスティッキング防止層をそれぞれ形成させて光拡散フィルムを構成するので、有機溶剤で溶解した有機樹脂にビーズを分散させて光拡散フィルム用基材の上下面に塗布する際に、基材の上下面は耐溶剤性を有するポリエステル樹脂で構成されているので収縮して変形するおそれがない。
また、光拡散フィルム用基材の主要部を構成するポリカーボネートが耐熱性に優れているので、光拡散層、スティッキング防止層をコーティングで設ける際の乾燥工程での、熱や張力の影響を受けても、延伸されたり位相差が高くなったりすることがない。
さらに、光拡散フィルムが発熱体であるランプなどの光源近傍に配設されても熱変形することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の光拡散フィルム用基材1aは、図3に示すように、耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム(ポリカーボネートフィルム)10の両面に、耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム(ポリエステルフィルム)11が積層されている。このような3層のフィルムは、例えば押出法を用いて、3層の無延伸、無配向フィルムとして製膜することができる。
また、本発明の光拡散フィルム1は、図4に示すように、光拡散フィルム用基材1aの上下面に、有機溶剤に溶解した有機樹脂に光拡散剤やスティッキング防止剤を含有させてロールコート法などの塗布手段を用いて塗布し、乾燥固化させて、光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cを形成することにより構成される。光拡散剤は光拡散層では光を拡散する要素としての機能を有し、スティッキング防止剤はスティッキング層では導光板と密着防止をするための要素としての機能を有する。光拡散剤やスティッキング防止剤は、例えばビーズなどの異物、空洞などが挙げられる。
【0013】
本発明の光拡散フィルム用基材は、位相差が低く、高い光線透過性を有している必要があるので、無配向であり肉眼で無色透明であることが必要とされる。また、コーティング時乾燥工程を通ること、発熱体であるランプなどの光源近傍に設置されることなどから、耐熱性を有していることも必要とされる。
【0014】
光拡散フィルム用基材としては、主要部分となる耐熱層10として耐熱性を有する熱可塑性樹脂を用いるが、中でもポリカーボネートを用いることが好ましい。ポリカーボネートは耐熱性に優れ、吸湿性が小さく、また機械的強度も大きいが、さらにガラス転移温度が100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が100℃未満であると、コーティング時の乾燥工程の熱および張力の影響で延伸され位相差が高くなる。また、ランプなどの光源により加熱された際に変形しやすくなる。ポリカーボネートは二環二価フェノール類とホスゲンから誘導される炭酸エステル樹脂であり、高いガラス転移温度と耐熱性を有していることを特徴とする。ポリカーボネートとしては、ビス(4−オキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−オキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)プロパン、2,2一ビス(4−オキシフェニル)ブタンなどのいずれかのビスフェノールから誘導される、ガラス転移温度が123〜171℃のポリ炭酸エステルの1種または2種以上をブレンドしてなるものを用いることが好ましい。
【0015】
図4に示すように、光拡散フィルム1は、光拡散フィルム用基材1aの上下面に光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cを形成して構成される。光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cは、有機溶剤に溶解した有機樹脂に、それぞれ光拡散剤、スティッキング防止剤を含有させてロールコート法などの塗布手段を用いて塗布し、乾燥固化させて形成するが、無配向のポリカーボネートフィルムは耐溶剤性に乏しく、有機溶剤が付着すると、収縮したり、白濁して不透明になったりするので、耐熱性を有する熱可塑性樹脂であるポリカーボネートフィルムからなる耐熱層10の両面に耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなる耐溶剤層11を積層する。
耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂としてはポリエステルが挙げられる。ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテルフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデシルカルボン酸などのカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2.2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのジオールを、それぞれ1種重縮合してなるホモポリマー、またはジカルボン酸1種以上とジオール2種以上を重縮合してなる共重合体、あるいはジカルボン酸2種以上とジオール1種以上を重縮合してなる共重合体、およびこれらのホモポリマーや共重合体を2種以上ブレンドしてなるブレンド樹脂のいずれかのポリエステルを用いることができる。
【0016】
上記のポリエステルからなるポリエステルフィルムは、光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cを構成する有機樹脂を希釈する有機溶剤が付着しても収縮することがないように、結晶化速度が大きいことが好ましいが、その一方で、光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cを塗布した後に乾燥固化するために、フィルムの搬送に必要な軽度の張力を負荷して加熱オーブンを通過させる際に、負荷した張力によって搬送方向に延伸されて1軸配向し、加熱オーブンを通過する際に熱固定されて配向結晶が生じ、フィルムの位相差が高くなることがないように結晶化速度が小さいことが好ましい、という相反する特性が求められる。
この相反する特性を満足させるポリエステルフィルムとして、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかのフィルムを挙げることができる。
【0017】
耐熱層10を構成するポリカーボネートフィルムの両面に耐溶剤層11を構成するポリエステルフィルムが積層してなる上記の3層フィルムの厚さは、ポリエステルフィルム(1〜100μm)/ポリカーボネートフィルム(5〜148μm)/ポリエステルフィルム(1〜100μm)でかつ、3層フィルムのトータル厚さが10〜150μmであることが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが1μm未満であると、光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cを形成させるために、有機溶剤で希釈した有機樹脂に含有させて塗布する際に耐溶媒性に乏しくなる。一方、100μmを超えると、有機樹脂を塗布した後の乾燥固化の加熱に際して形状を保持する耐熱性に乏しくなる。
ポリカーボネートフィルムの厚さが5μm未満であると上記の加熱に際しての耐熱性に乏しく、148μmを超えると耐熱性向上効果が飽和して経済的でなくなる。
【0018】
上記のようにして構成される3層の光拡散フィルム用基材は、位相差が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、さらに5nm以下であることがより好ましい。位相差が20nmを超えると、大型画面の液晶表示装置の画面に適用した際に十分な高輝度が得られない。
なお、本発明の光拡散フィルム用基材は、プリズムシートの基材として用いることも可能である。
【0019】
光拡散フィルム1は、上記のようにして構成される3層フィルムからなる光拡散フィルム用基材1aの上下面に、光拡散層1bおよびスティッキング防止層1cをそれぞれ形成させることにより得られる。光拡散層1bやスティッキング防止層1cには有機樹脂に、それぞれ光拡散剤、スティッキング防止剤を含有させて構成される。
光拡散層1b及びスティッキング防止層1cに用いる有機樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド、酸変性したポリオレフィンなどが挙げられる。
光拡散層1bやスティッキング防止層1cに含有させる光拡散剤、スティッキング防止剤としてはビーズが好ましく挙げられる。ビーズとしては、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドなどの有機樹脂からなるビーズ、およびガラスビーズ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機質材料からなる粒子を用いることができる。
光拡散層やスティッキング防止層に含有させるビーズの形状は、有機樹脂との分散性や、スティッキング防止層表面の凹凸の均一性等の観点から球形とすることが好ましいが、それに限定するものではない。
【0020】
光拡散層に含有させて光拡散剤として用いられる場合のビーズの大きさとしては、平均粒子径で1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。平均粒子径が1μm未満の場合、光拡散層表面に形成される凹凸が小さく、充分な光拡散効果が得られなくなるので好ましくなく、また、50μmを超えると光拡散フィルムの面内で均一な拡散が生じにくくなるので好ましくない。
【0021】
ビーズの形状は、光をあらゆる方向に均一に拡散させる観点から球形とすることが好ましいが、それに限定するものではない。
有機樹脂とビーズの混合割合は、有機樹脂100質量部に対しビーズ10〜500質量部とすることが好ましい。ビーズの混合割合が10質量部未満の場合、充分な光拡散効果が得られなくなるので好ましくなく、500質量部を超えると有機樹脂によるビーズの保持が不十分となるため好ましくない。
【0022】
また、ビーズをスティッキング防止層に含有させる場合は、ビーズの大きさとしては、平均粒子径で1〜50μm、好ましくは5〜30μmである。平均粒子径が1μm未満の場合、スティッキング防止層表面に形成される凹凸が小さくなり、充分なスティッキング防止効果が得られなくなるので好ましくなく、また、平均粒子径が50μmを超えた場合、ビーズを充分に保持するためスティッキング防止層の厚みを厚くする必要が生じ、その結果、スティッキング防止表面の光沢が増し光拡散フィルムの光拡散性能に悪影響を及ぼすので好ましくない。また、有機樹脂とビーズの混合割合は、有機樹脂100質量部に対しビーズ0.2〜100質量部とすることが好ましい。ビーズの混合割合が0.2質量部未満であるとスティッキング防止層表面に形成される凹凸が小さく、充分なスティッキング防止効果が得られなくなるので好ましくなく、また、100質量部を越えると、光拡散層の光学特性に悪影響を与える恐れがあるため好ましくない。
【0023】
光拡散層とスティッキング防止層とで、有機樹脂に混合するビーズの混合割合を違える理由は下記のようである。光拡散層は、所望の凹凸をフィルム表面に形成しフィルム面内で光を均一に拡散させるために、ある程度多量にビーズを配合する必要があるが、スティッキング防止層は、基本的に、導光板への密着による干渉模様発生の防止が主目的であり、光拡散層の光学特性を阻害しない範囲で少なめに配合する。なお、光拡散層には、ビーズを含有させる変わりに空気などを含んだ空洞などを含ませることでもよい。
【0024】
形成方法としては、バインダーとなる有機溶剤で溶解した有機樹脂中にビーズを含有させ、光拡散フィルム用基材1aの上下面に、ロールコート法などの塗布方法を用いて塗布した後、100℃に加熱したオーブン中を通過させて乾燥固化させる。このようにして、本発明の光拡散フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
(3層樹脂フィルムの作成)
押出法を用いて、表1に示すポリカーボネート層の両面に表1に示すポリエステル層を積層してなる3層の樹脂層の長尺帯状の無延伸樹脂フィルムからなる光拡散フィルム用基材(試料番号1〜6)を作成した。また、比較用に表1に示すポリカーボネート層のみの単層の樹脂層の長尺帯状の無延伸樹脂フィルムからなる光拡散フィルム用基材(試料番号7)を作成した。
【0026】
【表1】


注)
PET:ポリエチレンテレフタレート
PET/IA:エチレンテレフタレート(90モル%)/エチレンイソフタレート(10モル%)共重合体、
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PBT/IA:ブチレンテレフタレート(85モル%)/ブチレンイソフタレート(15モル%)共重合体、
【0027】
(位相差の測定)
表1に示した試料番号1〜7の光拡散フィルム用基材の波長590nmにおける位相差を、位相差測定装置(KOBRA−WPR、王子計測機器(株)製)を用いて測定した。
【0028】
(耐溶剤性の評価)
有機樹脂としてメタクリル酸メチルを100重量部、光拡散剤として平均粒径が7μmのポリスチレン粒子(ビーズ)を25重量部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを20重量部、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートを8重量部を混合して樹脂組成物を作成し、ロールコート法を用いて表1に示した試料番号1〜7の光拡散フィルム用基材の両面に塗布した後、100℃に加熱したオーブン中を通過させて、加熱乾燥固化させ、その際のフィルム外観を肉眼にて観察し、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
○:白濁、変形なく耐溶剤性良好
×:白濁、変形が生じ耐溶剤性不良
【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の光拡散フィルム用基材は、透明性および耐熱性に優れた熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなるフィルムの両面に透明性および耐溶剤性を有するポリエステル樹脂からなるフィルムを積層してなる無延伸、無配向の3層フィルムで構成される位相差が20nm以下の高い光線透過性を有している。
この光拡散フィルム用基材の上下面に有機樹脂にビーズを分散させて光拡散層およびスティッキング防止層をそれぞれ形成させた光拡散フィルムは、基材の上下面が耐溶剤性を有するポリエステル樹脂で構成されているので収縮して変形するおそれがない。
また、本発明の光拡散フィルムは、光拡散フィルム用基材の主要部を構成するポリカーボネートが耐熱性に優れているので、発熱体であるランプなどの光源近傍に設置されても熱変形することがない。
よって、本発明の光拡散フィルム用基材及びそれを用いた光拡散フィルムは、産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】バックライトユニットの構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】光拡散フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の光拡散フィルム用基材の構成の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の光拡散フィルムの構成の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1: 光拡散フィルム
1a:基材
1b:光拡散層
1c:スティッキング防止層
2: プリズムシート
3: 導光板
4: 反射層
5: 液晶層
6: 光源
7: バックライトユニット
8: 光拡散剤
9: スティッキング防止剤
10: 耐熱層
11: 耐溶剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの両面に耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムを積層してなる光拡散フィルム用基材。
【請求項2】
前記耐熱性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの厚さが5〜148μmであり、その両面に積層する前記耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルムの厚さがそれぞれ1〜100μmであり、かつトータル厚さが10〜150μmであることを特徴とする、請求項1に記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項3】
前記耐熱性を有する熱可塑性樹脂が、100℃以上のガラス転移温度を有するポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1または2に記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項4】
前記耐溶剤性を有する熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂が、エチレンテレフタレート・エチレンイソフタレート共重合体、ブチレンテレフタレート・ブチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項6】
前記光拡散フィルム用基材が、無配向フィルムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項7】
前記光拡散フィルム用基材の位相差が、20nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項8】
前記光拡散フィルム用基材の位相差が、10nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項9】
前記光拡散フィルム用基材の位相差が、5nm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光拡散フィルム用基材の片面に光拡散層を設け、他の片面にスティッキング防止層を設けてなる光拡散フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−9411(P2008−9411A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142550(P2007−142550)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】