説明

光断層像撮影装置

【課題】 モニタ上に動画表示される断層画像の視認性を向上させる。
【解決手段】 測定光束と参照光束による干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系と、前記測定光束の進行方向を変える光スキャナと、測定光束と参照光束の光路差を調整するために駆動部により移動される光路長可変部材と、前記受光素子からの出力信号に基づいて被検物の断層画像を得る画像形成手段と、表示手段と、前記光路長可変部材を移動させると共に、前記画像形成手段によって取得された断層画像を所定の表示領域内に表示する制御手段と、を備える光断層像撮影装置において、前記受光素子からの出力信号に基づいて、取得された断層画像の深さ方向における位置ずれ情報を検出し、随時取得された断層画像が前記表示領域内の所定位置に表示されるように、前記断層画像の表示位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物の断層像を撮影する光断層像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から出射された光束を測定光束と参照光束に分割し、測定光束を被検物に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検物で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系を持ち、被検物の断層像を撮影する光断層像撮影装置(Optical Coherence Tomography:OCT)が知られている。このような装置は、例えば、眼球や皮膚などの生体の断層像を得るために使用される。
【0003】
このような装置において、撮影中に被検物が動いても、表示モニタ上の所定位置に断層画像が表示されるように、測定光と参照光との光路差を随時変更する装置が開示されている(特許文献1参照)。なお、光路差の変更には、モータの駆動によって光路長可変部材(例えば、参照ミラー)を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−185590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような構成の場合、呼吸や体の微妙な振動によって被検物が動いた場合、参照ミラーの位置が絶えず調整されることになり、逆に断層画像が見づらくなる。また、参照ミラーを移動させる際のモータの振動によって、モニタ上の断層画像にブレが生じる可能性もありうる。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、モニタ上に動画表示される断層画像の視認性を向上できる眼科撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 光源から出射された光束を測定光束と参照光束に分割し、測定光束を被検物に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検物で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系と、
前記測定光束の光路中に配置され,被検物上で横断方向に前記測定光束を走査させるために前記測定光束の進行方向を変える光スキャナと、
前記測定光束又は前記参照光束の光路中に配置され、測定光束と参照光束の光路差を調整するために駆動部により移動される光路長可変部材と、
前記受光素子からの出力信号に基づいて被検物の断層画像を得る画像形成手段と、
表示手段と、
前記駆動部の駆動を制御し,前記光路長可変部材を移動させると共に、前記表示手段を制御し,前記画像形成手段によって取得された断層画像を所定の表示領域内に表示する制御手段と、
を備える光断層像撮影装置において、
前記受光素子からの出力信号に基づいて、前記画像形成手段によって取得された断層画像の深さ方向における位置ずれ情報を検出する位置ずれ情報検出手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段の表示を制御し、前記画像形成手段によって随時取得された断層画像が前記表示領域内の所定位置に表示されるように、検出された位置ずれ情報に基づいて前記断層画像の表示位置を補正することを特徴とする。
(2) (1)の光断層像撮影装置において、
前記制御手段は、前記位置ずれ情報検出手段によって検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、前記駆動部の駆動を制御し、検出される前記位置ずれ情報が所定の許容範囲内に収まるように前記光路長可変部材の位置を調整することを特徴とする。
(3) (2)の光断層像撮影装置において、
前記制御手段は、前記位置ずれ情報検出手段によって検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、前記表示手段の表示制御による前記断層画像の表示位置の補正と,前記駆動部の駆動制御による前記光路長可変部材の位置調整と,を同期させることを特徴とする。
(4) (3)の光断層像撮影装置において、
前記干渉光学系は、測定光束を被検眼の所定部位に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検眼の所定部位で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系であって、
前記画像形成手段は、前記受光素子からの出力信号に基づいて被検眼の所定部位の断層像を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モニタ上に動画表示される断層画像の視認性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る光断層像撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。なお、以下の説明においては、眼科撮影装置の一つである眼底撮影装置を例にとって説明する。なお、本実施形態においては、被検眼の奥行き方向をZ方向(光軸L1方向)、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。
【0011】
図1において、その光学系は、被検眼眼底の断層画像を光干渉の技術を用いて非侵襲で得るための干渉光学系(以下、OCT光学系とする)200と、赤外光を用いて被検眼の眼底を照明し観察するためのSLO眼底像を取得するスキャニングレーザオフサルモスコープ(SLO)光学系300と、に大別される。なお、上記各光学系は、光源から出射した少なくとも一部の光を被検者眼の所定部位に向けて投光する投光光学系と、被検者眼の所定部位からの反射光を受光素子で受光する受光光学系と、を有し、被検者眼の撮影画像を得るための撮影光学系として用いられる。なお、OCT光学系200には、スペクトラル・ドメイン型のOCT光学系が使用されている(もちろん、タイムドメイン型(TD−OCT)、スウィプト・ソース・ドメイン型(SS−OCT)でもよい)。なお、干渉光学系200及びSLO光学系300は、図に無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント用移動機構(手動又は電動)により、被検者眼Eに対して三次元的に移動される。
【0012】
なお、40は光分割部材としてのダイクロイックミラーであり、OCT光学系200に用いられる測定光源27から発せられる測定光(例えば、λ=840nm付近)を反射し、SLO光学系300に用いられる光出射部61から発せられるレーザ光(光源27とは異なる波長の光 例えば、λ=780nm付近)を透過する特性を有する。この場合、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光軸L2とSLO光学系300の測定光軸L1とを同軸にする。
【0013】
まず、ダイクロイックミラー40の反射側に設けられたOCT光学系200の構成について説明する。OCT光学系200は、光源から出射された光束を測定光束と参照光束に分割し、測定光束を被検眼の所定部位(前眼部又は眼底)に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検眼の所定部位で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる。
【0014】
27はOCT光学系200の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントな光を発するOCT光源であり、例えばSLD光源等が用いられる。OCT光源27には、例えば、中心波長840nmで50nmの帯域を持つ光源が用いられる。26は光分割部材と光結合部材としての役割を兼用するファイバーカップラーである。OCT光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを介して、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38cを介して参照ミラー31へと向かう。
【0015】
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、コリメートレンズ22、被検眼眼底に対するフォーカス調整のため被検眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ24、走査駆動機構51の駆動により眼底上でXY方向に測定光を走査させることが可能な2つのガルバノミラーの組み合せからなる走査部23と、が配置されている。ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からのOCT測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。なお、本実施形態の走査部23では、2つのガルバノミラーによって測定光の反射角度を任意に調整することにより、眼底上に走査させる測定光の走査方向を任意に設定できるような構成となっている。よって、被検眼眼底の任意の領域の断層画像を得ることが可能となる。なお、光ファイバ38bの端部39bは、被検眼眼底と共役となるように配置される。また、走査部23の2つのガルバノミラーは、被検眼瞳孔と略共役な位置に配置される。
【0016】
上記ガルバノミラー及び走査駆動機構51は、測定光束の光路中に配置され,被検眼の所定部位上で横断方向(XY方向)に測定光束を走査させるために測定光束の進行方向を変える光スキャナ(光走査部)として用いられる。光スキャナには、ミラーの他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0017】
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、コリメートレンズ22によってコリメートされた後、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部23で反射された測定光は、ダイクロイックミラー40で反射された後、ダイクロイックミラー91及び対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
【0018】
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10及びダイクロイックミラー91を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24、及びコリメートレンズ22を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、光ファイバ38dの端部84aに達する。
【0019】
一方、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。参照ミラー31は、参照光の光路長を変化させるべく、参照ミラー駆動機構50により光軸方向に移動可能な構成となっている。この場合、参照ミラー31は、光路長可変部材として用いられる。
【0020】
光ファイバー38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38cを介して、ファイバーカップラー26に達する。
【0021】
そして、光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底に照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて端部84aから出射される。800は周波数毎の干渉信号を得るために干渉光を周波数成分に分光する分光光学系800(スペクトロメータ部)であり、コリメータレンズ80、グレーティング(回折格子)81、集光レンズ82、受光素子83にて構成されている。受光素子83は、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインセンサ)を用いている。
【0022】
ここで、端部84aから出射された干渉光は、コリメータレンズ80にて平行光とされた後、グレーティング81にて周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ82を介して、受光素子83の受光面に集光する。これにより、受光素子83上で干渉縞のスペクトル情報が記録される。そして、そのスペクトル情報が制御部70へと入力され、フーリエ変換を用いて解析することで、被験者眼の深さ方向における情報(Aスキャン信号)が計測可能となる。ここで、制御部70は、走査部23により測定光を眼底上で所定の横断方向に走査することにより断層画像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底のXZ面もしくはYZ面における断層画像を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を眼底に対して1次元走査し、断層画像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された断層画像は、制御部70に接続されたメモリ72に記憶される。さらに、測定光をXY方向に2次元的に走査することにより、被検眼眼底の3次元画像を取得することも可能である。なお、本実施形態におけるOCT画像の取得は、走査部23に設けられた2つのガルバノミラーによって行われる。
【0023】
次に、ダイクロイックミラー40の透過方向に配置されたSLO光学系(共焦点光学系)300について説明する。SLO光学系300は、被検眼眼底を照明する照明光学系と、該照明光学系によって照明された眼底反射光を受光素子により受光する受光光学系とに大別され、受光素子から出力される受光信号に基づいて被検眼眼底の正面画像を得る。
【0024】
光出射部61は、赤外域の波長の光(例えば、λ=780nm)を発する第1の光源(SLO光源)61aと可視域の波長の光(例えば、λ=630nm)を発する第2の光源(固視光源)61b、ミラー69、ダイクロイックミラー101とを有する。なお、第1の光源61aと第2の光源61bには、輝度が高く、指向性の高い光を発する光源(レーザダイオード光源、SLD光源、等)が用いられる。第1の光源61aを出射した赤外光は、ダイクロイックミラー101を透過し、コリメートレンズ65を介してビームスプリッタ62に進む。第2の光源61bを出射した可視光は、ミラー69にて折り曲げられた後、ダイクロイックミラー101にて反射して第1の光源61aから出射した光と同軸とされる。第1の光源61aは観察用の正面眼底画像を得るために用いられ、第2の光源61bは被検眼の視線方向を誘導させるために用いられる。
【0025】
光出射部61から発せられるレーザ光を被検眼Eに向けて出射する光路には、コリメートレンズ65、被検眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ63、走査駆動機構52の駆動により眼底上でXY方向に測定光を高速で走査させることが可能なガルバノミラーとポリゴンミラーとの組み合せからなる走査部64、対物レンズ10が配置されている。また、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラーの反射面は、被検眼瞳孔と略共役な位置に配置される。
【0026】
また、光出射部61とフォーカシングレンズ63との間には、ビームスプリッタ62が配置されている。そして、ビームスプリッタ62の反射方向には、共焦点光学系を構成するための集光レンズ66と、眼底に共役な位置に置かれる共焦点開口67と、SLO用受光素子68とが設けられている。
【0027】
ここで、光出射部61から発せられたレーザ光(測定光、又は固視光束)は、コリメートレンズ62を介してビームスプリッタ62を透過した後、フォーカシングレンズ63を介して、走査部64に達し、ガルバノミラー及びポリゴンミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部64で反射されたレーザ光は、ダイクロイックミラー40を透過した後、ダイクロイックミラー91及び対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
【0028】
そして、眼底で反射したレーザ光(測定光)は、対物レンズ10、ダイクロイックミラー91、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラー、フォーカシングレンズ63を経て、ビームスプリッタ62にて反射される。その後、集光レンズ66にて集光された後、共焦点開口67を介して、受光素子68によって検出される。そして、受光素子68にて検出された受光信号は制御部70へと入力される。制御部70は受光素子68にて得られた受光信号に基づいて被検眼眼底の正面画像を取得する。取得された正面画像はメモリ72に記憶される。なお、SLO画像の取得は、走査部64に設けられたガルバノミラーによるレーザ光の縦方向の走査(副走査)とポリゴンミラーによるレーザ光の横方向の走査(主走査)によって行われる。
【0029】
<アライメント指標投影光学系>
赤外光源151を持ち、被検者眼にアライメント指標を投影するための投影光学系150は、装置筐体に設けられた検査窓(覗き窓)の外側に配置され、眼Eの斜め前方(対物レンズ10)から指標を投影する。
【0030】
<前眼部観察光学系>
眼Eを撮像し前眼部像を得るために配置された観察光学系90は、対物レンズ10、ダイクロイックミラー91、結像レンズ95、二次元撮像素子(二次元受光素子)97を備える。ダイクロイックミラー91は、赤外光源151から発せられた波長の光を反射し、他の光を透過する特性を有している。
【0031】
赤外光源151による前眼部反射光及びアライメント光束は、対物レンズ10を介してダイクロイックミラー91によって反射された後、結像レンズ95を介して二次元撮像素子97により受光される。二次元撮像素子97の出力は制御部70に送信され、モニタ75には二次元撮像素子97によって撮像された前眼部像が表示される。
【0032】
なお、制御部70は、表示モニタ75に接続され、その表示画像を制御する。また、制御部70には、メモリ(記憶部)72、各種操作を行うための操作部74、走査駆動機構51、走査駆動機構52、参照ミラー駆動機構50、フォーカシングレンズ63を光軸方向に移動させるための第1駆動機構63a、フォーカシングレンズ24を光軸方向に移動させるための第2駆動機構24a、等が接続されている。なお、モニタ75は、アライメント観察用と撮影画像観察用で別でもよいし、もちろん一つの共用モニタであってもよい。
【0033】
次に、本装置の動作の概要について説明する。制御部70は、受光素子83からの出力信号に基づいて眼底の断層画像を形成させると共に、受光素子68からの出力信号に基づいて眼底の正面画像を形成する(図2参照)。また、制御部70は、駆動機構50の駆動を制御し,参照ミラー31を移動させると共に、モニタ75を制御し、取得された断層画像を所定の表示領域内に表示する(図2参照)。
【0034】
制御部70は、受光素子68からの出力信号に基づいて、断層画像の深さ方向における位置ずれ情報を検出する(図3、図4参照)。なお、例えば、得られた断層画像に基づいて位置ずれが検出されても良いし、画像形成前のある走査位置におけるAスキャン信号に基づいて位置ずれが検出されても良い。
【0035】
そして、制御部70は、モニタ75の表示を制御し、随時取得された断層画像がモニタ75の表示領域内の所定位置(例えば、深さ方向における中心位置C)に表示されるように、検出された位置ずれ情報に基づいて断層画像の表示位置を補正する(図3、図5参照)。なお、前述の所定位置は、中心位置に限るものではなく、任意に設定可能である(例えば、表示領域102の上方)。ただし、断層画像が十分に表示される位置である必要がある。さらに、前述の所定位置は、検者によって操作される操作部74からの操作信号に基づいて変更されるようにしてもよい。
【0036】
表示位置を補正する場合、制御部70は、検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、駆動機構50の駆動を制御し、検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲内に収まるように参照ミラー31の位置を調整してもよい(図3参照)。
【0037】
また、制御部70は、検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、モニタ75の表示制御による断層画像の表示位置の補正と,駆動機構50の駆動制御による参照ミラー31の位置調整と,を同期させてもよい。
【0038】
次に、本装置の動作の詳細な具体例について説明する。検者は、図示なき固視灯を注視するように被験者に指示した後、眼底に対するアライメントを行う。そして、図2に示すように、SLO眼底像がモニタ75上のSLO画像表示領域101に表示されるようになると、予め設定される走査パターンに基づきOCT光学系200によってOCT画像が取得され、モニタ75上のOCT画像表示領域102に表示される。
【0039】
この場合、制御部70は、受光素子83から出力される受光信号に基づいて駆動機構50の駆動を制御し、眼底断層画像が取得されるように測定光と参照光との光路差を調整する。そして、参照ミラー31は、被検眼の眼軸長の違いに対応した所定の移動範囲内で移動される。
【0040】
制御部70は、深さ方向の撮影範囲(例えば、2mm)に対応する所定のステップで、参照ミラー31を移動させる。そして、制御部70は、各位置にて取得される画像に対し深さ方向の走査線を設定し、その走査線上における輝度分布を得る。そして、眼底断層像に対応する輝度分布(例えば、急激な輝度の立ち上がりが持った輝度分布)が得られると、モニタ75上の表示領域102に眼底断層像が映し出された状態となる。
【0041】
次に、制御部70は、所定のフレームレートにて取得される眼底断層像が表示領域102の中心位置Cに常に表示されるように、画像処理及び参照ミラーの移動による表示位置調整を連続的に行う。
【0042】
<画像処理>
ここで、制御部70は、取得される断層画像に基づいて深さ方向における断層画像の位置ずれを検出し、その検出結果に基づいてモニタ75上の眼底断層像の所定部位(例えば、網膜色素上皮)が所定位置(例えば、中心位置C)に表示されるようにモニタ75の表示を制御する。
【0043】
<参照ミラーの移動>
また、制御部70は、検出される位置ずれが大きい場合、検出される位置ずれ検出結果に基づいて駆動機構50の駆動を制御し、位置ずれが所定の許容範囲内となるように、参照ミラー50を移動させる。
【0044】
図3は、眼底断層像の表示位置調整の具体例について説明するためのフローチャートである。まず、制御部70は、図4に示すように、眼底断層像上において深さ方向(Aスキャン方向)に走査する走査線を設定し、走査線上における輝度分布Lを得る。そして、輝度分布Lから深さ方向における輝度値が最大値(以下、最大輝度値と省略する)となる位置を検出し、その位置をピーク位置Pと設定する。なお、基準位置Bは、断層画像の深さ方向における中心位置であり、モニタ75上の表示領域102の中央位置Cに対応する。
【0045】
ここで、制御部70は、取得される輝度分布Lに基づいて撮影画像のピーク位置Pと基準位置Bとのずれ量ΔDを検出する。このとき、ずれ量ΔDの検出と調整は、ピクセル単位(画素単位)で行われる。
【0046】
<参照ミラーの移動>
次に、制御部70は、検出されたずれ量ΔDが所定の許容範囲D1を満たすか否かを判定し、その判定結果に基づいて光路長を調整する。制御部70は、検出されたずれ量ΔDが許容範囲D1より大きい場合、ずれ量が少なくなる方向へ参照ミラー31を移動させる。これにより、表示領域102上における眼底断層像の表示位置が調整される。なお、検出されたずれ量ΔDが許容範囲D1より小さい場合、制御部70は、参照ミラー31を移動させない。
【0047】
<画像処理>
また、光路長調整と同期して、制御部70は、検出されたずれ量ΔDが1ピクセル以上である場合(ずれが検出された場合)に、撮影画像を画像処理により移動させた状態でモニタ75に眼底断層像を表示する。
【0048】
図4は、取得された断層画像データと表示領域102と位置関係が仮想的に示されている。図4(a)は、画像処理前の状態を示す図であり、図4(b)は、画像処理後の状態を示す図である。
【0049】
画像処理を行う場合、撮影画像(DL)を画像処理によりずれ量ΔD分だけ基準位置B方向に移動させ(図4(b)参照)、基準位置Bとピーク位置Pを一致させた状態とする。そして、制御部70は、画像処理後の撮影画像を表示領域102に表示する(図5参照)。これにより、眼底断層像の取得位置(ピーク位置)が基準位置Bに対してずれた状態で取得されても、その表示位置が調整され、モニタ75上の眼底断層像の所定部位が表示領域102の中心位置Cに表示される。
【0050】
このとき、画像の移動により生じたスペースSは、表示画像の全体的な背景の色と同調され表示される。また、ずれ量がない場合には、画像位置の調整を行わず、メモリ72に取り込み、モニタ75に動画像を表示していく。
【0051】
上記のようにして、制御部70は、断層画像を逐次メモリ72に取り込み、表示位置調整を1フレーム毎に時系列的に行い、位置調整後の画像をモニタ75に表示していく。そして、最初の画像位置調整以降、画像の位置に変化があった場合には、上記の調整方法と同様に、フレーム毎に連続的に補正を行い、モニタ75上に動画表示する。
【0052】
なお、本実施形態においては、許容範囲D1として、例えば、50ピクセルを設定している。これは、画像データを縦横512ピクセルに設定した場合の1/10に相当する。また、参照ミラー31は、1フレームの眼底断層画像を得る間に、最大でD2(例えば、10ピクセル程度)移動させることが可能である。そこで、制御部70は、許容範囲D1の限界位置からのずれ量がD2以上ある場合には、1フレームでD2移動させながら、段階的に移動させていく。また、許容範囲D1の限界位置からのずれ量がD2より小さい場合には、そのずれ量ΔD分だけを移動させる。
【0053】
なお、眼底断層像が動画表示された状態において、検者が所望する走査位置/パターンが設定され、所定のトリガ信号が出力されると、制御部70は、設定された走査位置/パターンに基づいて断層画像を取得し、取得された画像データをメモリ72に記憶する。また、制御部70は、これに合わせて、SLO光学系300によって取得される眼底正面像をメモリ72に記憶する。
【0054】
以上のように、画像処理による表示位置調整をフレーム毎に行うことにより、呼吸や体の微妙な振動による断層画像の揺れを抑制し、所定の表示位置において断層動画像を安定して表示させることが可能となる。また、モータの振動による断層画像のブレを回避できる。よって、被検眼が動いてもモニタ75上の眼底断層像は、ぶれなく、所定位置から動かないように見える。
【0055】
さらに、位置ずれ量が所定の許容範囲より大きい場合において、位置ずれ量が所定の許容範囲内に収まるように参照ミラーを移動させることにより、被検眼眼底の大きな位置ずれに対応できる。例えば、固視位置を変更させて観察位置を変更しながら断層像を得るような場合、もしくは被検者の額が図示なき額当てに対して動いたような場合、断層画像が表示画面から外れて、光路長を再調整する手間を回避できる。また、所定の表示領域に収まる程度の被検眼の移動であっても、参照ミラーを移動させることで、ほぼ一定の感度にて断層画像を表示させることができる。
【0056】
なお、上記記載の光路長調整の際における許容範囲D1を設定したことについて、光路長の調整によりずれ量を完全に無くすには、常に参照ミラー31を移動させなければならず、困難であるため、所定の許容範囲D1を設定することで、参照ミラーが移動し続けることを防ぐこととした。
【0057】
なお、所定の許容範囲D1について、干渉光の揺らぎ、ノイズ、被検者の呼吸などによる断層像の微動に対応する位置ずれ量が許容範囲内に収まり、これを超える位置ずれ(例えば、額当てに対して額が動いたとき)については許容範囲から外れるような許容範囲が好ましい。これにより、断層像が微動しても参照ミラー31は移動されず、微動を超える位置ずれ量が検出されたとき、参照ミラー31が移動される。
【0058】
また、所定の許容範囲D1について、所定位置から外れても断層像全体が十分に観察できる程度の位置ずれ量が許容範囲内に収まり、これを超える位置ずれについては許容範囲から外れるような許容範囲であってもよい。
【0059】
また、所定の許容範囲D1について、表示領域102から眼底断層像が外れる程度の大きな位置ずれ量が検出されたときのみ、参照ミラー31が移動されるような許容範囲であってもよい。
【0060】
なお、以上の説明においては、眼底断層像が最初に取得されるまでの光路長の調整を自動的に行うものとしたが、これに限るものではなく、モニタ75を目視する検者操作に基づいて光路長が調整されるようにしてもよい。また、検出されるずれ量Dが所定の許容範囲D1から外れた場合、モニタ75を目視する検者操作に基づいて光路長が調整されるようにしてもよい。
【0061】
なお、以上の説明においては、所定の表示領域に対して画像処理により断層画像を移動させるものとしたが、これに限るものではない。例えば、断層画像の画像データにおいて、所定の表示領域に出力する画像抽出領域を変更するようにしてもよい。
【0062】
なお、本実施例においては、断層画像の位置ずれを検出する手法として、輝度分布によるピーク値と基準位置とのずれを比較することにより位置ずれを検出したが、これに限るものではなく、例えば、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法)を用いることが可能である。この場合、例えば、位置ずれがない断層画像を基準画像とされ、基準画像に対する位置ずれ量が求められる。
【0063】
なお、上記構成においては、測定光と参照光の光路差を調整するために参照光の光路中に光路長可変部材が配置されたが、これに限るものではなく、測定光の光路中に光路長可変部材が配置されてもよい。例えば、コリメータレンズ22及び光ファイバー39bの端部が光軸方向に移動される。
【0064】
なお、OCTの原理を応用した光干渉光学系を用いて被検眼の所定部位の断層像(例えば、前眼部断層像)を撮影する眼科撮影装置であれば、本発明の適用は可能である。
【0065】
また、眼科撮影装置への適用に限るものではなく、眼以外の生体(例えば、皮膚、血管)、もしくは生体以外の試料、等の断層像を撮影する光断層像撮影装置においても、本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態の眼科撮影装置の光学系及び制御系を示す図である。
【図2】眼底正面像と眼底断層像がモニタに表示された場合の図である。
【図3】眼底断層像の表示位置の調整について説明するフローチャートである。
【図4】断層画像データと表示領域との位置関係を仮想的に示す概念図である。
【図5】眼底正面像と画像処理後の眼底断層像がモニタに表示された場合の図である。
【符号の説明】
【0067】
23 走査部
24 フォーカシングレンズ
24a 駆動機構
31 参照ミラー(光路長可変部材)
50 駆動機構
51 走査駆動機構
70 制御部
75 モニタ
90 前眼部観察光学系
97 撮像素子
151 赤外光源
200 干渉光学系(OCT光学系)
300 SLO光学系
800 分光光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光束を測定光束と参照光束に分割し、測定光束を被検物に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検物で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系と、
前記測定光束の光路中に配置され,被検物上で横断方向に前記測定光束を走査させるために前記測定光束の進行方向を変える光スキャナと、
前記測定光束又は前記参照光束の光路中に配置され、測定光束と参照光束の光路差を調整するために駆動部により移動される光路長可変部材と、
前記受光素子からの出力信号に基づいて被検物の断層画像を得る画像形成手段と、
表示手段と、
前記駆動部の駆動を制御し,前記光路長可変部材を移動させると共に、前記表示手段を制御し,前記画像形成手段によって取得された断層画像を所定の表示領域内に表示する制御手段と、
を備える光断層像撮影装置において、
前記受光素子からの出力信号に基づいて、前記画像形成手段によって取得された断層画像の深さ方向における位置ずれ情報を検出する位置ずれ情報検出手段を備え、
前記制御手段は、前記表示手段の表示を制御し、前記画像形成手段によって随時取得された断層画像が前記表示領域内の所定位置に表示されるように、検出された位置ずれ情報に基づいて前記断層画像の表示位置を補正することを特徴とする光断層像撮影装置。
【請求項2】
請求項1の光断層像撮影装置において、
前記制御手段は、前記位置ずれ情報検出手段によって検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、前記駆動部の駆動を制御し、検出される前記位置ずれ情報が所定の許容範囲内に収まるように前記光路長可変部材の位置を調整することを特徴とする光断層像撮影装置。
【請求項3】
請求項2の光断層像撮影装置において、
前記制御手段は、前記位置ずれ情報検出手段によって検出される位置ずれ情報が所定の許容範囲より大きい場合、前記表示手段の表示制御による前記断層画像の表示位置の補正と,前記駆動部の駆動制御による前記光路長可変部材の位置調整と,を同期させることを特徴とする光断層像撮影装置。
【請求項4】
請求項3の光断層像撮影装置において、
前記干渉光学系は、測定光束を被検眼の所定部位に導き,参照光束を参照光学系に導いた後、被検眼の所定部位で反射した測定光束と参照光束との合成により得られる干渉光を受光素子に受光させる干渉光学系であって、
前記画像形成手段は、前記受光素子からの出力信号に基づいて被検眼の所定部位の断層像を得ることを特徴とする光断層像撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−172822(P2011−172822A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40586(P2010−40586)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】