説明

光書き込み型表示媒体およびその製造方法

【課題】光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体を提供すること。
【解決手段】対向配置され、且つ、互いに対向する面に各々電極を設けた一対の基板と、該一対の基板の間に配置された液晶層および光スイッチング層を含む2つ以上の層とを有し、前記液晶層に水溶性樹脂が含まれ、前記液晶層の含水率が、0.5%以下であることを特徴とする光書き込み型表示媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書き込み型表示媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光書き込み型表示媒体は、所定の電圧を素子に印加しつつ、受光した光量により光スイッチング素子のインピーダンスを変化させ、表示素子に印加される電圧あるいは電流を制御することにより、表示素子を駆動し、画像を表示するものである。特に、メモリ性のある表示素子と光導電性スイッチング素子を積層し、これに、電圧を印加すると共に、光画像を入射し、書き込みを行う光書き込み型表示媒体は、書き込み装置から媒体を切り離して持ち歩くことが可能な電子ペーパー媒体として注目されている。
【0003】
光書き込み型表示媒体の表示素子としては、電気泳動素子や電界回転素子、トナー電界移動型素子や、これらをカプセル化した素子の他に、バインダー樹脂に分散しメモリ性を付与したネマチック液晶、コレステリック液晶、強誘電液晶を有する液晶層を備えた液晶表示素子が検討されている。
【0004】
この液晶層に用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許公開2007−279369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、液晶層に用いられるバインダー樹脂がポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂である光書き込み型表示媒体では、光書き込み時の感度が低い傾向にあった。本発明者らは、このような低感度について鋭意検討したところ、その原因が液晶層に水分が取り込まれたまま光書き込み型表示媒体が作製されていることを突き止めた。
本発明は上述した知見に基づいてなされたものであり、光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
請求項1に係わる発明は、
対向配置され、且つ、互いに対向する面に各々電極を設けた一対の基板と、該一対の基板の間に配置された液晶層および光スイッチング層を含む2つ以上の層とを有し、
前記液晶層に水溶性樹脂が含まれ、
前記液晶層の含水率が、0.5%以下であることを特徴とする光書き込み型表示媒体である。
【0007】
請求項2に係わる発明は、
前記水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の光書き込み型表示媒体である。
【0008】
請求項3に係わる発明は、
基板と、該基板の片面に設けられた電極と、該電極表面に設けられ且つ水溶性樹脂を含む液晶層とを有する表示素子に、
加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、および、低温低湿環境下での脱湿乾燥処理から選択される少なくとも1種類の乾燥処理を施す乾燥処理工程と、
前記乾燥処理工程を経た前記表示素子と、基板、該基板の片面に設けられた電極、および該電極表面に設けられた光スイッチング層を有する光スイッチング素子と、を貼り合せる貼り合わせ工程を経て光書き込み型表示媒体を作製することを特徴とする光書き込み型表示媒体製造方法である。
【0009】
請求項4に係わる発明は、
前記水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項3に記載の光書き込み型表示媒体製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明したように請求項1に記載の発明によれば、光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体を提供することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体の製造方法を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、光書き込み時の感度が高い光書き込み型表示媒体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(光書き込み型表示媒体)
本発明の光書き込み型表示媒体(以下、「表示媒体」と略す場合がある)は、対向配置され、且つ、互いに対向する面に各々電極を設けた一対の基板と、該一対の基板の間に配置された液晶層および光スイッチング層を含む2つ以上の層とを有し、前記液晶層に水溶性樹脂が含まれ、前記液晶層の含水率が、9.5%以下であることを特徴とする。このため、本発明の表示媒体は、光書き込み時の感度が高い。
【0013】
液晶層の含水率が0.5%を超えると光書き込み時の感度が低下する。なお、含水率は
0%に近い方がよいが、0.2%以下であれば十分に水分がない状態となる。
【0014】
なお、液晶層の含水率とは、下式(1)で定義される値を意味する。
・式(1) MC=100×(Wd−Wa)/Ws
ここで、式(1)中、MCは液晶層の含水率(%)、Wdは表示媒体中における液晶層を構成する材料の質量(mg)、Waは質量Wdの表示媒体中における液晶層を構成する材料を完全に乾燥処理した時の絶乾質量(mg)、Wsは質量Wdの表示媒体中における液晶層を構成する材料を常温常湿環境(23℃、47〜50RH%)下において吸湿が飽和状態となった時の質量(mg)を意味する。
【0015】
なお、Wd、Wa、Wsは具体的には以下の手順で測定した値を意味する。まず、表示媒体を液晶層が露出するように分解した直後、又は、表示媒体を組み立てる際に、液晶層を含む表示素子側の部材と光スイッチング層を含む光スイッチング素子とを貼り合せる直前に、液晶層のみを一定量採取して得られたサンプルの質量を測定する。そして、この時の質量をWdとする。
【0016】
続いて、質量Wdを測り終えたサンプルを、熱変性しない程度の温度で加熱処理する。この加熱処理は、サンプルの質量の減少が停止して、加熱時間に対して変化しなくなるまで続ける。そしてこの時の質量をWaとする。
なお、加熱温度や加熱時間は、サンプルを構成する材料に応じて適宜選択できるが、一般的な目安としては加熱温度が60〜120℃、加熱時間が5分以上程度である。例えば、液晶層に含まれる水溶性樹脂がポリビニルアルコールである場合には、サンプルを90℃で10分以上加熱処理すればよい。
【0017】
続いて、質量Waを測り終えたサンプルを、吸湿が飽和状態となるまで常温常湿環境(23℃、47〜50RH%)下に放置する。この吸湿処理は、サンプルの質量の増加が停止して、放置時間に対して変化しなくなるまで続ける。そしてこの時の質量をWaとする。
なお、放置時間は、サンプルを構成する材料に応じて適宜選択できるが、一般的な目安としては5分以上程度である。例えば、液晶層に含まれる水溶性樹脂がポリビニルアルコールである場合には、サンプルを常温常湿環境(23℃、47〜50RH%)下に10分以上放置すればよい。
【0018】
次に、本発明の表示媒体の層構成や、各層の構成材料等についてより詳細に説明する。本発明の表示媒体は、対向配置され、且つ、互いに対向する面に各々電極を設けた一対の基板と、該一対の基板の間に配置された液晶層および光スイッチング層を含む2つ以上の層とを有するものであれば、その層構成は特に限定されない。
本発明の表示媒体は、基本的には、(1)基板、(2)電極、(3)液晶層、(4)光スイッチング層、(5)電極、(6)基板がこの順に積層された構成を有するが、必要に応じて中間層を設けてもよく、例えば、液晶層と光スイッチング層との間に、必要に応じて光吸収層などの中間層を設けることができる。
なお、以下の説明において、(1)〜(3)に示す部材を含む構成を「表示素子」、(4)〜(6)に示す部材を含む構成を「光スイッチング素子」と称す場合がある。
【0019】
基板は、絶縁性を有する公知の有機材料または無機材料から選択することができ、たとえば、無機材料からなる基板としてはガラス基板、有機材料からなる基板としてはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどの樹脂基板を用いることができる。なお、フレキシブルな表示媒体(いわゆる電子ペーパー)を得るためには、樹脂基板を用いることが好適である。
なお、一対の基板間には、基板間隔を一定に維持するために、例えば、ガラスやプラスチックなどからなるボール型又はシリンダー型のスペーサーを配置してもよい。
【0020】
電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Au、Al、Cu等の公知の導電性材料が利用できる。これらの材料は基板上に蒸着法やスパッタ法などにより形成することができる。また、必要に応じて、電極表面に、液晶配向膜などの公知の機能性膜を形成してもよい。
なお、基板や電極は基本的に光透過性の材料が用いられるが、光スイッチング素子を構成する基板や電極については、光透過性を有していなくてもよい。これは、特開2001100664号公報に示すように表示媒体を構成する表示素子がメモリ性を有し且つ表示に必要な波長を選択的に反射する選択反射性または後方散乱性の表示素子である場合には、表示媒体の表示素子が設けられた側の面から書き込むことが可能であるため、少なくとも表示素子側の基板や電極が光透過性の材料から構成されていればよいためである。
【0021】
液晶層は、液晶材料と水溶性樹脂とを含む。ここで、液晶材料としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶、ディスコチック液晶、コレステリック液晶を用いることができる。
水溶性樹脂としては、公知の水溶性樹脂から選択できるが、具体的には温度20℃における水に対する溶解度が80g/100g以上のものが利用できる。このような水溶性樹脂としてはポリビニルアルコールが好ましく、その他にも、例えば、ゼラチン、寒天、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド等を用いることもできる。また、水溶性樹脂は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。液晶層中に含まれる水溶性樹脂の含有量としては40質量%以上80質量%以下であることが好ましく、70質量%以上78質量%以下であることがより好ましい。
水溶性樹脂の含有量が40質量%未満では液晶のしみだしが起こる可能性があり、塗工程においてしみだしによる塗膜はじきが発生する場合がある。一方、水溶性樹脂の含有量が80質量%を超えると液晶の配向時の透過率が低くなり、コントラストが悪くなるの場合がある。
【0022】
光スイッチング層(光導電層)は、単層構成であっても多層構成であってもよい。光スイッチング層が単層構成の場合には、例えば、特許文献1等に示されるように光スイッチング素子の電極上に、電荷発生材料、正孔輸送性材料および電子輸送性材料を含む両極性感光体層を設けた構成が挙げられる。
また、光スイッチング層が多層構成の場合には 光スイッチング層が電荷発生材料を含む電荷発生層と電荷輸送性材料を含む電荷輸送層とから構成される2層構成や、特開2002−196291号公報等に示されるように光スイッチング素子の電極上に、電荷発生材料を含む下部電荷発生層、電荷輸送性材料を含む電荷輸送層、電荷発生材料を含む上部電荷発生層をこの順に設けた3層構成などが挙げられる。
【0023】
光スイッチング層に用いられる電荷発生材料としては、例えば、金属又は無金属フタロシアニン顔料、スクアリウム顔料、アズレニウム顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスアゾ顔料やトリスアゾ顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ジブロモアントアントロンなどの多環キノン顔料、等が適用可能であるが、フタロシアニン顔料である、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、あるいはチタニルフタロシアニンの一種類かあるいは混合物を主成分とする電荷発生材料が好ましい。
【0024】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)がi)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°、ii)7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°、iii)7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°、iv)7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°、v) 6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°又はvi)7.4°、9.9°、25.0°、26.2°及び28.2°に強い回折ピークを有するような結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0025】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°、又は6.8°、17.3°、23.6°及び26.9°、又は8.7°〜9.2°、17.6°、24.0°、27.4°及び28.8°に強い回折ピークを有する結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
また、チタニルフタロシアニンとしては、X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、9.5°,9.7°,11.7°,15.0°,23.5°,24.1°,27.3°に回折ピークをもつ結晶構造のものが、電荷発生効率が高く、特に好ましい。
【0026】
電荷輸送性材料としては、公知のものならいかなるものでも使用可能であるが、下記に示すものを例示することができる。
正孔輸送性材料としては、例えば2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、などのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(p−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖または側鎖に有する重合体などを挙げることができる。
【0027】
また、電子輸送性材料としては、例えばクロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3',5,5'テトラ−t−ブチルジフェノキノン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物など、あるいは、以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。
【0028】
なお、光スイッチング層に用いられるバインダー樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル 共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
中間層としては、界面の接着性の向上を目的とした接着層や、反射や遮光を目的とした反射層や遮光層などを、機能や目的により必要に応じて各層の間に設けることができる。
例えば、表示素子側から入射し液晶層を透過した光を吸収するために液晶層と光スイッチング層との間に光吸収層を設けることができる。この光吸収層を構成する材料としては、例えば、CdTeなどの無機物や、ブラック色素が含有された高分子などの絶縁性を有する材料を用いることができる。
【0030】
また、一対の基板間に設けられた各層を封止するために、表示媒体の端面部には公知のシール材を用いることができる。このようなシール材としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物などが挙げられ、表示媒体内部への水分の侵入を長期に渡って確実に防止するために、水蒸気透過量のできるだけ小さいものを用いることが好ましい。
【0031】
次に、本発明の光書き込み型表示媒体の具体例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の光書き込み型表示媒体の一例を示す概略模式図である。この光書き込み型表示媒体20は、光スイッチング素子30、表示素子40および光スイッチング素子30と表示素子40との間に挟まれた機能層50より構成され、光スイッチング素子30は基板31、電極32及び光スイッチング層34より構成され、表示素子40は、基板41、電極42および液晶層43から構成される。
なお、機能層50としては、たとえば光スイッチング素子30と表示素子40とを隔離するための隔離層や、直流成分除去用機能膜等が挙げられる。該直流成分除去用機能膜を備えた表示媒体の場合には、交流電界により駆動する際の応答対称性がさらに改善されることになる。
【0032】
光書き込み型表示媒体20において、光書き込みが光スイッチング素子側あるいは表示素子側のいずれの側から行なわれるかにより、光が入射する側の素子の基板および電極を光透過性にすることが必要である。また、電極32と電極42との間には交流電界が印加される。
【0033】
図2は、図1に示す光スイッチング素子の一例を示す概略模式図である。
図2に示す光スイッチング素子30は、電極32が形成された基板31上に、光スイッチング層(光導電層)として、単層の光スイッチング層(両極性感光体層)34Aを設けたものである。
【0034】
図3は、本発明の光書き込み型表示媒体に書き込みを行うシステムの一例を示す概略模式図であり、具体的には図1に示す光書き込み型表示媒体を用いたシステムについて示したものである。
【0035】
このシステムでは、光書き込み型表示媒体20の基板31側に光書き込み手段12が配置されている。また、光書き込み型表示媒体20の上下の透明電極32および42は、コネクタ14に接続され、電圧印加手段16により電圧が印加できるようになっている。また、電圧印加手段16および光書き込み手段12は、制御手段18に接続されている。この光書き込み装置は、一つにまとめられていてもよいし、分離していてもよい。
なお、コネクタ14は、透明電極32と、透明電極42に接続するためのコネクタで、それぞれの側に接点を有する。勿論、これは自在に取り外しが可能である。
【0036】
電圧印加手段16は、光書き込み手段による光書き込みと同期して、表示のための電圧パルスを印加するものであり、印加パルスの生成手段、出力するためのトリガー入力を検知する手段を有する。パルス生成手段には例えば、ROMのような波形記憶手段とDA変換手段と制御手段とを有し、電圧印加時にROMから読み出した波形をDA変換して光書き込み型表示媒体に印加する手段が適用可能であるし、また、ROMではなくパルス発生回路のような電気回路的な方式でパルスを発生させる手段が適用可能であるが、このほかにも駆動パルスを印加する手段であれば特に制限なく使用することができる。
【0037】
光書き込み手段12としては、光書き込み型表示媒体20の光入射側に照射する光のパターンを生成する手段と、そのパターンを光書き込み型表示媒体に照射する光照射手段とを有する。パターンの生成には、例えば、TFT(Thin Film Transistor)を用いた液晶ディスプレイ、単純マトリックス型液晶ディスプレイ等の透過型のディスプレイが適用可能である。光照射手段としては、蛍光ライト、ハロゲンランプ、エレクトロルミネッセンス(EL)ライト等が適用可能である。また、パターン生成手段と光照射手段を兼ね備えたELディスプレイやCRT、フィールドエミッションディスプレイ(FED)など発光型ディスプレイも適用可能である。前記のほかにも、照射する光量、波長、照射パターンを制御できる手段であれば、問題なく適用することができる。
制御手段18は、送られてくる画像データを表示データに変換するほか、上記手段の動作を制御するための手段により構成されている。
【0038】
本発明の光書き込み型表示媒体は、図3に例示した構成の光書き込み装置により、画像を書き込むことができ、一度光書き込み型表示媒体20に書き込んだ画像は、コネクタ14から外しても保持され、閲覧、回覧、配布等に供することができる。また、再度コネクタ14に接続し、電圧を印加することで、書き込んだ画像を消去することもでき、再び別の画像を書き込むことも可能である。
【0039】
(光書き込み型表示媒体製造方法)
本発明の光書き込み型表示媒体は、基板と、該基板の片面に設けられた電極と、該電極表面に設けられ且つ水溶性樹脂を含む液晶層とを有する表示素子に、加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、および、低温低湿環境下での脱湿乾燥処理から選択される少なくとも1種類の乾燥処理を施す乾燥処理工程と、前記乾燥処理工程を経た前記表示素子と、基板、該基板の片面に設けられた電極、および該電極表面に設けられた光スイッチング層を有する光スイッチング素子と、を貼り合せる貼り合わせ工程を少なくとも経て作製される。
【0040】
このように、2つの素子を貼り合せる前に表示素子を乾燥処理することによって、液晶層の含水率を0.5%以下となるまで減少させることができる。
【0041】
なお、乾燥処理条件としては、液晶層の含水率が0.5%以下に制御できるように、液晶層を構成する材料組成(特に水溶性樹脂の種類や含有量)や、乾燥処理方法に応じて適宜選択することができる。しかしながら、乾燥処理方法としては、加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、および、低温低湿環境下での脱湿乾燥処理の中でも、簡便且つ短時間に液晶層の含水率を制御できることから、加熱乾燥処理を採用することが最も好ましい。
【0042】
加熱乾燥処理条件としては、液晶層を構成する材料が熱変性して劣化しない範囲であれば特に限定されないが、一般的には、加熱温度が60℃以上120℃以下の範囲で選択することが好ましく、90℃以上100℃以下の範囲で選択することがより好ましい。加熱温度が60℃未満では、液晶層中に取り込まれた水分を十分に揮発させることができないため、液晶層の含水率を0.5%以下に制御することが困難となったり、加熱乾燥処理に長時間を要する場合がある。一方、加熱温度が120℃を超えると液晶層を構成する材料の熱変性を招きやすくなる場合がある。
【0043】
また、加熱時間としては、加熱温度等にも依存するが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。加熱時間が5分未満では液晶層の含水率を0.5%以下に制御することが困難となる場合がある。なお、加熱時間の上限は特に限定されないが、表示媒体の生産性が低下するため、実用上は10分以下であることが好ましい。
【0044】
なお、水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを用いる場合に特に好適な加熱乾燥条件は、加熱温度については60℃以上120℃以下の範囲内が好ましく、90℃以上100℃以下の範囲内がより好ましく、加熱時間については5分以上90分以下の範囲内が好ましく、10分以上30分以下の範囲内が好ましい。
【0045】
また、減圧乾燥処理条件としては、圧力が−0.1MPa以下であることが好ましい。
【0046】
一方、低温低湿環境下での脱湿乾燥処理条件としては、温度40℃以上60℃以下で湿度1RH%以上10RH%以下程度の範囲で実施することが好ましい。なお、この処理のみでは、液晶層の含水率を0.5%以下に制御することができない場合には、他の処理方法と組み合わせて利用してもよい。
【0047】
表示素子に乾燥処理を施す乾燥処理工程を終えた後は、表示素子と光スイッチング素子とを貼り合せる貼り合わせ工程を実施する。ここで、乾燥処理工程終了から貼り合わせ工程実施までの時間(待機時間)は5分以内であることが好ましく、2分以内であることがより好ましい。待機時間が5分を超えると、貼り合わせ工程を実施するまでの間に、雰囲気中の水分が再び液晶層中に取り込まれやすくなるため、表示媒体を構成する液晶層の含水率が0.5%を超えてしまう場合がある。
【0048】
なお、表示媒体を構成する電極は、基板上にスパッタリング法や真空蒸着法等の公知の成膜法を利用して形成できる。また、液晶層や光スイッチング層、また必要に応じて設けられるその他の中間層については、これらの層を構成する材料を溶媒に溶解させた溶液を用いてスピンコート法や浸漬塗布法等の公知の液相成膜法が利用できるが、層を構成する材料によっては、真空蒸着法やスパッタリング法も採用できる。
液相成膜法に用いることのできる溶媒としては、層を構成する材料を溶解させるものが適宜選択されるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン、シクロペンタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0049】
そして、以上に説明した成膜法を利用して、表示素子および光スイッチング素子をそれぞれ準備して、表示素子を乾燥処理した後にこれら2つの素子を貼り合わせる。この後、2つの素子を貼り合わせたセルの端面をエポキシ系樹脂等の封止材により封止する等の工程を経て、本発明の表示媒体を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0051】
<実施例1>
(光書き込み型表示媒体の作製)
−光スイッチング素子の作製−
電極としてITO膜(厚さ80nm)を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基板(厚さ125μm)の前記ITO膜上に、両極性感光体層を形成した。具体的には、まず、電荷発生材料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニン(X線回折スペクトルのブラック角(2θ±0.2°)が、7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するもの)を、モノクロロベンゼンを用いてダイノーミルにより分散させ、濃度が5質量%の電荷発生材料分散液(CG液)を調製した。
【0052】
一方、低分子の電子輸送性材料である3,3’−ジメチル−5,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン10質量部と下記構造式(1)に示す正孔輸送性高分子10質量部とを、モノクロロベンゼン80質量部に溶解させ電荷輸送性材料溶液(CT液)1を調製した。
前記CG液と上記CT液1とを、固形分としての電荷発生材料CGと電荷輸送性材料CTとの質量比(CG/CT)が2/98となるように混合し塗布液とした。これをスピンコート法により塗布、乾燥することによって、前記ITO膜上に5μm厚の両極性感光体層を形成した。
【0053】
【化1】

【0054】
なお、実施例1で用いた構造式(1)に示す正孔輸送性高分子は、構造式(1)中、m=1、Yがメチレン基であり、Aは、下記構造式(2)で示されるものである。
【0055】
【化2】

【0056】
ここで、構造式(2)は、実施例1においては、Arが一価のビフェニル基、Xが二価値のビフェニル基、Tがメチレン基、k=1、n=1である。
【0057】
続いて両極性感光体層の上に、隔離層として、スピンコート法によりポリビニルアルコールの3質量%水溶液を塗布し、ポリビニルアルコール膜(膜厚:0.2μm)を形成した。これにより、基板上に電極、光スイッチング層、隔離層がこの順に形成された光スイッチング素子を得た。
【0058】
−表示素子の作製−
正の誘電率異方性を有するネマチック液晶E8(メルク社製)74.8質量部に、カイラル剤CB15(BDH社製)21質量部とカイラル剤R1011(メルク社製)4.2質量部とを加熱溶解し、その後、室温に戻して、ブルーグリーンの色光を選択反射するカイラルネマチック液晶を得た。このブルーグリーンカイラルネマチック液晶10質量部に、キシレンジイソシアネート3分子とトリメチロールプロパン1分子との付加物(武田薬品工業製、D−110)3質量部と酢酸エチル100質量部とを加えて均一溶液とし、油相となる液を調製した。一方、ポリビニルアルコール(クラレ社製ポバール217EE)10質量部を、熱したイオン交換水1000質量部に加えて攪拌後、放置冷却することによって、水相となる液を調製した。
【0059】
次に、スライダックで30Vの交流を与えた家庭用ミキサーによって、前記油相10質量部を前記水相100質量部中に1分間乳化分散処理して、水相中に油相液滴が分散した水中油エマルジョンを調製した。この水中油エマルジョンを60℃のウォーターバスで加熱しながら2時間攪拌し、界面重合を行わせ、液晶マイクロカプセルを形成した。得られた液晶マイクロカプセルの平均粒径をレーザー粒度分布計によって測定したところ、約12μmと見積もられた。得られた液晶マイクロカプセル分散液を、網目38μmのステンレスメッシュを通して濾過後、一昼夜放置し,乳白色の上澄みを取り除くことにより、液晶マイクロカプセルからなる固形成分約40質量%のスラリーを得た。得られたスラリーに、その固形成分の質量に対して2/3となる量のポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール10質量%の水溶液を加えることにより塗布液Bを調製した。
【0060】
光スイッチング素子の作製に用いたものと同様のITO膜付き基板のITO膜面の上に、上記塗布液Bをダイコート法にて塗布することにより、膜厚40μmの液晶層を形成し、表示素子を作製した。
【0061】
−表示素子の乾燥処理−
次に、得られた表示素子を、オーブンに入れて90℃で30分間加熱乾燥処理した。
【0062】
−表示素子と光スイッチング素子との貼り合わせ−
光スイッチング素子の隔離層面上に、ブラックポリイミドBKR−105(日本化薬製)を塗布し、遮光膜(厚さ:1μm)を形成した後、更に、ドライラミネート接着剤であるディックドライWS−321A/LD−55(大日本インキ化学工業製)を塗布し、乾燥させて厚さ5μmの接着層を形成した。この接着層の上に、乾燥処理を経た表示素子を、液晶層側の面が接着層に対面するように密着させて貼り合わせ、続いて、90℃でラミネートを行い、モノクロ表示の光書き込み型表示媒体を得た。
なお、表示素子の乾燥処理の終了から、2つの素子の貼り合わせ終了までの時間は2分であり、その時の雰囲気は温度23℃、湿度47〜50RH%である。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、表示素子の加熱乾燥処理条件を90℃で30分間加熱乾燥処理した以外は実施例1と同様にして光書き込み型表示媒体を得た。
【0064】
(実施例3)
実施例1において、表示素子の加熱乾燥処理条件を90℃で120分間加熱乾燥処理した以外は実施例1と同様にして光書き込み型表示媒体を得た。
【0065】
(実施例4)
実施例1において、表示素子の乾燥処理条件として真空引きプレスラミネート処理を加えた以外は実施例1と同様にして光書き込み型表示媒体を得た。
【0066】
(比較例1)
実施例1において、表示素子の加熱乾燥処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして光書き込み型表示媒体を得た。
【0067】
(評価)
<感度評価>
得られた光書き込み型表示媒体を、表示素子側の電極が−極、光スイッチング側の電極が+極となるように直流電源に接続し、下記に示す条件(1)〜(4)の順に電圧を印加した。
−電圧印加条件−
(1)−650V、400ms
(2) 0V、100ms
(3)+650V、900ms
(4)−200V、2ms
【0068】
ここで、上記(3)に示す電圧印加時の初期から50msと、終期から200msを除く区間において、光書き込み型表示媒体の光スイッチング素子側から2μJの書き込み光をその光量が10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、400、500μWとなるように所定の時間照射して、光書き込みを行った。なお、光書き込みに用いた光源はCSS株式会社製、PLU−1005−3(波長630nm)である。
【0069】
各々の条件で光書き込みを終えた表示媒体については、表示媒体の表示素子側の面の反射率を、反射率計(ミノルタ社製、CM−2022)により測定した。
この際、反射率は、光量が100μW前後で急激に増加した後、500μWに到達した時点でほぼ完全に飽和する傾向を示す。そこで、この光量に対する反射率の変化の関係から、飽和反射率(光量500μWにおける反射率)の半分の反射率を得るのに必要な光量を評価した。結果を液晶層の含水率および表示素子の乾燥方法と共に表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
<繰り返し耐久性評価>
上記評価を終えた後、実施例1および比較例1の表示媒体については、表示素子側の電極が−極、光スイッチング側の電極が+極となるように直流電源に接続し、下記条件で電圧印加および光書き込みを連続して3000回繰り返した。なお、光書き込みに用いた光源は<感度評価>に用いたものと同様である。
−電圧印加および光書き込み条件−
(1)−650V、400ms
(2) 0V、100ms
(3)+650V、1000ms
この際、光書き込み型表示媒体の光スイッチング素子側から2μJの書き込み光をその光量が400μWとなるように照射
(4)−200V、2ms
【0072】
この際、繰り返しテスト前(初期)および3000回の繰り返し評価を終えた後(300回後)に、再び、上記<感度評価>と同様の評価を行い、飽和反射率(但し、光量200μWにおける反射率とした)の半分の反射率を得るのに必要な光量を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の光書き込み型表示媒体の一例を示す概略模式図である。
【図2】本発明における光スイッチング素子の一形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の光書き込み型記録媒体に書き込みを行うシステムの概念の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0075】
12 光書き込み手段
14 コネクタ
16 電圧印加手段
18 制御手段
20 光書き込み型表示媒体
30 光スイッチング素子
31 基板
32 電極
34 光スイッチング層
34A 光スイッチング層(両極性感光体層)
40 表示素子
41 基板
42 電極
43 液晶層
50 機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、且つ、互いに対向する面に各々電極を設けた一対の基板と、該一対の基板の間に配置された液晶層および光スイッチング層を含む2つ以上の層とを有し、
前記液晶層に水溶性樹脂が含まれ、
前記液晶層の含水率が、0.5%以下であることを特徴とする光書き込み型表示媒体。
【請求項2】
前記水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の光書き込み型表示媒体。
【請求項3】
基板と、該基板の片面に設けられた電極と、該電極表面に設けられ且つ水溶性樹脂を含む液晶層とを有する表示素子に、
加熱乾燥処理、減圧乾燥処理、および、低温低湿環境下での脱湿乾燥処理から選択される少なくとも1種類の乾燥処理を施す乾燥処理工程と、
前記乾燥処理工程を経た前記表示素子と、基板、該基板の片面に設けられた電極、および該電極表面に設けられた光スイッチング層を有する光スイッチング素子と、を貼り合せる貼り合わせ工程を経て光書き込み型表示媒体を作製することを特徴とする光書き込み型表示媒体製造方法。
【請求項4】
前記水溶性樹脂がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項3に記載の光書き込み型表示媒体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−186605(P2009−186605A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24271(P2008−24271)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】