説明

光測定方法および装置

【課題】光検出器の零点校正時と測定時の間における温度変化の影響を容易に低減できる光測定方法および装置を提供する。
【解決手段】試料Sを収納した測定容器2を保持部3に保持し、かつシャッタ6が閉で光検出器5を遮光した状態で、試料Sの測定直前に光検出器5の零点を自動校正し、この零点の自動校正後に、シャッタ6開で露光した状態にした光検出器5で直ちに試料Sを測定させるので、零点校正時から測定時までの時間が短いから、零点校正後に零点の変動が少なく、光検出器5の零点校正時と測定時の間における温度変化の影響を容易に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料から生じる光を光検出器で測定する光測定方法および装置に関し、特にその零点自動校正に関する。
【背景技術】
【0002】
動物、植物、微生物(細菌)などには、必ずアデノシン3リン酸(ATP)が含まれているので、従来から、食品の残された汚れや微生物などの試料を測定するものとして、ルシフェラーゼとルシフェリン等を含む試薬を用い、試料の発光反応により受光量を測定してATP濃度を推定する光測定方法および装置が知られている。
【0003】
このような装置の一例として、遮光状態における光検出器の出力の温度による変動の影響を抑制する光測定装置が挙げられる(例えば、特許文献1)。この装置は、図3(A)(B)に示すように、試料Sを収納した測定容器52を保持するための保持部53と、保持部53の入口に設けられて閉止により保持部53を遮光する蓋部54と、保持部53の下部の側方に配置されて試料Sからの光を検出するフォトダイオード(PD)のような光検出器55と、試料Sと光検出器55の間に設けられて開閉動作を行う、保持部53内で上下移動自在のバネ57付きのシャッタ56とが設けられている。図3(B)に示すように、保持部53に測定容器52が保持されると、バネ57が縮んでシャッタ56が下がることにより開となり光検出器55を露光して測定可能とする。図3(A)のように、保持されていないとき、シャッタ56はバネ57の伸びで押し上げられて閉となり、光検出器55を遮光する。
【0004】
この装置では、図3(A)のように、試料Sの測定前に、測定容器52が保持されていないで、かつ蓋部54を閉止した遮光状態で、零点を自動校正し、その後、図3(B)のように、測定容器52が保持されて測定が開始され、光検出器55からの出力に基づいて、CPUによりATP濃度の指標となるRLU(Relative Light Unit:相対発光量)が演算されて、表示される。
【0005】
また、他の光測定装置として、シャッタをステッピングモータで開閉する電子シャッタを用いたものも知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−202254号公報
【特許文献2】特開2000−46734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この光測定装置では試料からの微量光を測定するため、光検出器の零点が問題となり、測定に際しての零点校正が重要となる。この零点は時間経過に伴う外部環境による温度変化などを受けやすい。
【0007】
しかし、特許文献1では、試料Sの測定前に測定容器52を保持部53に保持しない状態で零点校正を行い、その後に測定容器52を保持部53に保持して測定するので零点校正時から測定時までの時間t1(例えば10〜15sec)が長くなるため、図4に示すように、例えば外部環境により温度(℃)が上昇した場合(温度が下降した場合も同じ)、光検出器55の零点校正後に時間t1の経過による光検出器55の温度変化などの影響を受けて、光検出器55の零点が変動してしまい、測定時におけるRLUに誤差αを生じ得るという問題があった。また、特許文献2の電子シャッタの場合でも、同様に時間経過の問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、光検出器の零点校正時と測定時の間における温度変化の影響を容易に低減できる光測定方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一構成に係る光測定方法は、試料を収納した測定容器を保持する保持部と、この保持部の近傍に設けられた光検出器と、測定容器に収納された試料と光検出器の間に設けられて開閉の切換により開で光検出器を露光し閉で光検出器を遮光するシャッタとを有して、シャッタ開で露光した状態の光検出器により試料から生じる光を測定させるものであって、試料を収納した測定容器を保持部に保持し、かつシャッタ閉で光検出器を遮光した状態で、試料の測定直前に光検出器の零点を自動校正し、前記零点の自動校正後に、シャッタ開への切換で露光状態の光検出器により、直ちに試料を測定させる。ここで、光検出器の零点自動校正とは、光検出器のゼロ表示(またはゼロ入力)近傍に光検出器を自動的に校正することをいう。
【0010】
本発明の他の構成に係る光測定装置は、試料を収納する測定容器を保持するための保持部と、保持部の近傍に設けられて試料から生じる光を検出する光検出器と、測定容器に収納された試料と光検出器の間に設けられて、開閉の切換により開で光検出器を露光し閉で光検出器を遮光するシャッタと、シャッタ開で露光した状態の光検出器により試料から生じる光を測定させる試料測定制御手段とを備えており、前記試料測定制御手段は、試料を収納する測定容器が保持部に保持され、かつシャッタ閉で光検出器が遮光された状態で、試料の測定直前に光検出器の零点を自動校正する零点校正手段を含む。
【0011】
この構成によれば、試料を収納した測定容器を保持部に保持し、かつシャッタが閉で光検出器を遮光した状態で、試料の測定直前に光検出器の零点を自動校正し、この零点の自動校正後に、シャッタ開で露光した状態にした光検出器で直ちに試料を測定させるので、零点校正時から測定時までの時間が短いから、零点校正後に零点の変動が少なく、光検出器の零点校正時と測定時の間における温度変化の影響を容易に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光測定装置を示す斜視図、図2はその概略構成図である。図2のように、本装置1は機構部Aと回路部Bを備え、機構部Aは、試料Sを収納した例えば樹脂製の測定容器2を保持するための保持部3と、保持部3の入口に設けられて開閉し、閉止により保持部3を遮光する蓋部4と、保持部3の近傍に設けられて試料Sから生じる光を検出するフォトダイオード(PD)のような光検出器5と、測定容器2に収納された試料Sと光検出器5の間に設けられて、開閉の切換により開で光検出器5を露光し閉で光検出器5を遮光するシャッタ6とを備えている。機構部Bは、保持部3内の試料Sからの光以外の外部光を全体的に遮光する遮光構造を有している。
【0013】
光検出器5は、受光量を発生する電流により検出する前記フォトダイオード(PD)のほかに受光量を発生した電流を増幅することにより検出するフォトトランジスタ(PTr)などを使用してもよい。シャッタ6は、例えば、図示しないアクチュエータにより遮光板21を移動させて開口部22を開状態(破線部)と閉状態(実線部)に切り換え、開口部22に臨む光検出器5を露光または遮光するものが使用される。このシャッタ6の開閉制御は後述する試料測定制御手段15が行う。
【0014】
この例では、本装置1は、光検出器5の上方にシャッタ6が配置され、このシャッタ6の上方に保持部3が配置されているが、保持部3の下部の側方にシャッタ6および光検出器5を配置するようにしてもよい。
【0015】
また、回路部Bは、フォトダイオード5からの検出信号を増幅するアンプ11と、検出信号をA/D変換するA/D変換器12と、装置全体を制御する制御部(CPU)7と、測定値などのデータを記憶する記憶部8と、操作内容や測定値などを表示する表示部9と、スイッチなどからなる操作部10とを備えている。図1のように、本装置の一側面に表示部9および操作部10が配置され、その背面側に上記機構部Aと回路部Bが配置されている。
【0016】
制御部7は、光検出器5からの出力に基づき、試料SのATP濃度の指標となるRLU(相対発光量)を演算する演算手段14と、シャッタ6開で露光した状態の光検出器5により試料Sから生じる光を測定させる試料測定制御手段15を備えている。この試料測定制御手段15は、試料Sを収納した測定容器2が保持部3に保持されて蓋部4が閉じられて保持部3が遮光され、かつシャッタ6閉で光検出器5が遮光された状態で、試料Sの測定直前に光検出器5の零点を自動校正する零点校正手段16を含み、前記零点が自動校正され、シャッタ6開の切換で露光状態にされた光検出器5により、直ちに試料Sを測定させる制御を行う。
【0017】
なお、図示しない蓋開閉センサを設けて蓋部4の開閉検知に基づいて制御を行ってもよい。また、図示しない測定容器検知センサを設けて試料Sを収納した測定容器2が保持部3に保持されたことの検知に基づいて制御を行ってもよく、蓋開閉センサおよび測定容器検知センサの両センサの検知に基づいて制御を行ってもよい。
【0018】
上記構成の光測定装置における光測定方法について説明する。
まず、検査対象となる汚れ等が例えば綿棒などで採取され、これにルシフェラーゼとルシフェリン等を含む試薬が添加されたものが試料Sとされる。この試料Sを収納した測定容器2は蓋部4を開けて保持部3に保持される。図2のように、測定容器2が保持部3に保持された状態で蓋部4が閉止されるとともに、シャッタ6を閉じて光検出器5が遮光される。操作部10により測定開始ボタンb(図1)が押されると、シャッタ6が閉じた状態のままで、零点校正手段16により、試料測定直前に、光検出器5の零点が自動校正される。
【0019】
つぎに、校正終了後、直ちにシャッタ6が開けられて光検出器5が露光された状態で、試料Sの測定が開始される。光検出器5からの出力に基づき、演算手段14によりATP濃度の指標となるRLU(相対発光量)が演算され、記憶部8に記憶されるとともに表示部9に表示される(図1)。
【0020】
このように、本装置1では、従来と異なり、光測定のルーチンに光検出器5の零点自動校正のルーチンが入っており、シャッタ6による短時間での開閉切換も利用して、試料Sの測定直前に零点を自動校正するようにしている。したがって、従来と異なり、零点校正時から測定時までの時間が短いため、光検出器5の零点校正時と測定時の間における外部環境による温度変化の影響を受けずに光検出器5の零点の変動が少なくなるので、その出力の誤差を低減でき、これに基づいて得られるRLUの誤差を低減することができる。
【0021】
こうして、本発明は、試料Sを収納した測定容器2を保持部3に保持し、かつシャッタ6が閉で光検出器5を遮光した状態で、試料Sの測定直前に光検出器5の零点を自動校正し、この零点の自動校正後に、シャッタ6開で露光した状態にした光検出器5で直ちに試料Sを測定させるので、零点校正時から測定時までの時間が短いから、零点校正後に零点の変動が少なく、光検出器5の零点校正時と測定時の間における温度変化の影響を容易に低減できる。
【0022】
なお、上記実施形態では、光検出器5の零点の自動校正後に、試料Sを測定させているが、試料Sの測定後に、光検出器5の零点を自動校正させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光測定装置を示す斜視図である。
【図2】図1の光測定装置を示す概略構成図である。
【図3】(A)、(B)は従来の光測定装置の一部を示す概略構成図である。
【図4】時間経過に伴う温度変化と光検出器の出力との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0024】
1:光測定装置
2:測定容器
3:保持部
4:蓋部
5:光検出器
6:シャッタ
7:制御部(CPU)
14:演算手段
15:試料測定制御手段
16:零点校正手段
S:試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収納した測定容器を保持する保持部と、この保持部の近傍に設けられた光検出器と、試料と光検出器の間に設けられて開閉の切換により開で光検出器を露光し閉で光検出器を遮光するシャッタとを有して、シャッタ開で露光した状態の光検出器により試料から生じる光を測定させる光測定方法であって、
試料を収納した測定容器を保持部に保持し、かつシャッタ閉で光検出器を遮光した状態で、試料の測定直前に光検出器の零点を自動校正し、
前記零点の自動校正後に、シャッタ開への切換で露光状態の光検出器により、直ちに試料を測定させる、光測定方法。
【請求項2】
試料を収納した測定容器を保持するための保持部と、保持部の近傍に設けられて試料から生じる光を検出する光検出器と、測定容器に収納された試料と光検出器の間に設けられて、開閉の切換により開で光検出器を露光し閉で光検出器を遮光するシャッタと、シャッタ開で露光した状態の光検出器により試料から生じる光を測定させる試料測定制御手段とを備えた光測定装置であって、
前記試料測定制御手段は、
試料を収納した測定容器が保持部に保持され、かつシャッタ閉で光検出器が遮光された状態で、試料の測定直前に光検出器の零点を自動校正する零点校正手段を含む、光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107418(P2010−107418A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280973(P2008−280973)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【Fターム(参考)】