説明

光測定方法及び装置

【課題】光電子増倍管を用いて光子計数法で微弱光の強度を正確に測定する光測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】ホトマル1から測定光の入射光量に応じて出力されるパルス電流が回路3で電流/電圧変換及び増幅されて出力信号とされ、それがパルス2値化回路4でしきい値電圧との比較によりデジタル信号に2値化される。そのデジタル信号に含まれる出力パルスの数がカウンタ6でカウントされ、単位時間当たりの出力パルス数が測定結果として表示部7で表示される。高圧電源回路2からホトマル1へ印加される印加電圧をボリュームVR1で調整すると共に、しきい値調整回路5のボリュームVR2で上記しきい値電圧を調整することでホトマル1への入射光量と出力パルス数を線形な関係にして微弱光を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子増倍管を用いて光子計数法により微弱光の強度(光量)を測定する光測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微弱光の強度を検出する必要のある測定装置、例えば下記の特許文献1に示されている微粒子測定装置や、特許文献2に示されている眼科測定装置などでは、特許文献3に示されているように、微弱光の強度を検出する手段として光電子増倍管を使用し、微弱光を入射した光電子増倍管の出力信号に含まれる出力パルス(信号パルス)の単位時間当たりの数を入射光の光子数と見なしてカウントする光子計数法により微弱光の強度を測定している。カウントした出力パルス数をフォトンカウント値ともいう。出力パルスは光電子増倍管の出力電流を電流/電圧変換及び増幅して得られる出力信号をしきい値電圧で2値化することによりノイズ成分をカットして識別している。しかし、光電子増倍管は、入射光量に対する単位時間当たりの出力パルス数の特性に個体差がかなりあるため、使用する光電子増倍管ごとに、陰極と陽極間の印加電圧を変えたり、測定値の補正係数を変えるなどの調整作業が必要になる。
【0003】
また、APD(アバランシェホトダイオード)を用いて光子計数法により微弱光の強度を測定する装置において、APDに対するバイアス電圧を調整することにより、APDへの入射光量とAPDの出力信号を線形関係にし得るようした技術が特許文献4に記載されている。
【特許文献1】特開平2−93344号公報
【特許文献2】特開平4−89027号公報
【特許文献3】特開2000−46734号公報
【特許文献4】特開平9−162437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように光電子増倍管を用いて光子計数法により微弱光の強度を測定する装置を、例えば前眼部測定装置などに用いる場合、光電子増倍管への入射光量と単位時間当たりの出力パルス数(フォトンカウント値)が図3のグラフで示すように線形な関係(正比例関係)になることが求められている。しかし、光電子増倍管の本来の特性では、図4のグラフに示すように入射光量とフォトンカウント値の関係が、特に光量が少ない部分で非線形な関係となっており、測定精度が保証されないとともに、環境変化、経年変化による誤差を補償するための校正作業に多大な手間がかかる、という問題があった。
【0005】
また、光電子増倍管の陰極と陽極間に印加する印加電圧を調整することにより出力パルス数を増減させることができるが、それだけでは入射光量と出力パルス数を線形な関係にすることが困難である、という問題がある。
【0006】
そこで本発明の課題は、光電子増倍管を用いて光子計数法により微弱光の強度を正確に測定できるとともに校正作業が簡単に行える光測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
微弱光を光電子増倍管に入射し、光電子増倍管の出力信号をしきい値と比較して得られる出力パルスの数をカウントして微弱光の強度を測定する光測定方法及び装置であって、
前記光電子増倍管への印加電圧としきい値を、光電子増倍管への入射光量と出力パルス数が線形な関係になるように、調整して微弱光を測定することを特徴とする。
【0008】
この場合、光電子増倍管への印加電圧としきい値は、光電子増倍管に対してそれぞれ光量が異なる微弱光を入射し、それぞれの入射光量ごとに、測定される出力パルス数が線形な関係になる値とほぼ一致するように、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となるように、調整される。
【0009】
また、光電子増倍管への印加電圧としきい値の異なる組み合わせが複数用意され、各組み合わせごとに入射光量を変化させたときの入射光量と出力パルス数の関係が求められ、そのなかで最も線形な関係が得られ、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となるような印加電圧としきい値の組み合わせで微弱光が測定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光電子増倍管への印加電圧と、光電子増倍管の出力信号を2値化するためのしきい値電圧とを調整して、光電子増倍管への入射光量と出力パルス数を線形な関係にして測定を行うようにしているので、微弱光の強度をダイナミックレンジを広くして正確に測定でき、また、校正作業が簡単になる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付した図を参照して本発明の実施例を説明する。実施例の装置は、光電子増倍管を用いて光子計数法により微弱光の強度(光量)を測定する光測定装置であって、光電子増倍管の陰極と陽極間への印加電圧と、光電子増倍管の出力信号を2値化するためのしきい値電圧とを調整することにより、光電子増倍管への入射光量と単位時間当たりの出力パルス数を線形な関係(比例関係)にし得るようにした装置である。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1による光測定装置の概略構成を示している。同図において、不図示の集光光学系を介して微弱な測定光が光電子増倍管1(以下、ホトマルという)の光電面(陰極)に入射される。ホトマル1には高圧電源回路2から高電圧が陰極と陽極間に印加され、その印加電圧は、高圧電源回路2に付設された印加電圧調整ボリューム(印加電圧調整手段)VR1の操作により、例えば500V〜950Vの範囲内で可変に調整できるようになっている。
【0013】
ホトマル1からは測定光の強度に応じたパルス電流が出力され、それが電流/電圧変換及び増幅回路3によってパルス形状のホトマル出力信号に変換され、パルス2値化回路4に入力される。
【0014】
ホトマル出力信号は、図2の左側に示す様に、測定光の強度に応じた波高が高い信号成分と、波高が低いノイズ成分を含んでいる。パルス2値化回路4は、比較回路から構成され、ホトマル出力信号の電圧をしきい値電圧Vsと比較し、しきい値電圧Vsより低ければノイズ成分とみなして「0」としてカットし、高ければ信号成分とみなして「1」として残す。こうして図2の右側に示すように信号成分のみが出力パルスとなったデジタル信号が生成される。
【0015】
なお、パルス2値化回路4には、しきい値電圧Vsを調整するためのしきい値調整回路5が接続されており、これに付設されたしきい値調整ボリューム(しきい値調整手段)VR2の操作により、しきい値電圧Vsを例えば30〜200mVの範囲内で可変に調整できるようになっている。
【0016】
上記パルス2値化回路4からのデジタル信号はパルス数カウンタ6に入力される。このカウンタ6は、装置全体を制御する不図示のCPUが実行するソフトウェアにより、あるいは専用のハードウェアにより構成され、デジタル信号に含まれる出力パルスの単位時間当たりの数をカウントする。そのカウント値は、測定光の強度を示しており、それが、測定結果として液晶表示装置などからなる表示部(モニタ)7に表示される。
【0017】
ここで、従来では、ホトマルへの入射光量と単位時間当たりの出力パルス数(フォトンカウント値)の関係を線形な関係にすることは困難であったが、本実施例1では、印加電圧調整ボリュームVR1の操作によりホトマル1への印加電圧を調整するとともに、しきい値調整ボリュームVR2の操作により上記しきい値電圧Vsを調整することにより、入射光量と出力パルス数を、図3に示すように、線形関係にすることができるようになっている。すなわち、印加電圧を高くすることはホトマルのゲインを上げるのと同じであるため、印加電圧を高くすると出力パルス数が増加し、低くすると減少する。また、しきい値電圧Vsを高くすると、ホトマル出力信号の2値化で消える信号成分が増えるので出力パルス数が減少し、低くすると増加する。印加電圧としきい値電圧の一方だけの調整では、入射光量と出力パルス数を線形な関係にすることは困難であるが、両方の調整を適当に組み合わせて行うことにより線形な関係にすることができる。
【0018】
ここで、本実施例の光測定装置が前述した被検眼の前房内の蛋白濃度などを測定する前眼部測定装置に用いられる場合に、上記印加電圧としきい値電圧の調整により、入射光量と出力パルス数を線形な関係にした光測定装置の例を以下に説明する。
【0019】
前述したように、前眼部測定装置に用いられる光測定装置のホトマルに求められる特性は、方眼グラフで図3に示すように、入射光量に対してフォトンカウント値、すなわち前述した単位時間当たりの出力パルス数のカウント値が線形な関係になる特性である。
【0020】
しかし、実際の特性は例えば図4に示すようになり、入射光量が多い領域(図4中で約15μW以上の領域)では入射光量に対してフォトンカウント値が線形な関係になるものの、入射光量が少ない領域では線形な関係にならない。
【0021】
このことを考慮し、まず所定光量の測定光を散乱させる標準散乱体(基準光源)を用いて測定光をホトマル1に入射して測定し、オペレータが表示部7を見て測定結果のフォトンカウント値を確認し、その値が求められている特性に対応する所定値になるように、ボリュームVR1とVR2の一方または両方を操作してホトマルの印加電圧と2値化のためのしきい値電圧の一方または両方を調整して、これを校正点とする。この校正点での入射光量は上述した入射光量が多い領域内の所定光量とする。この校正点を図5の左側に示した入射光量とフォトンカウント値の関係のグラフにおいて黒丸で示してある。ホトマルの本来の特性により、この校正点より下の領域では、入射光量とフォトンカウント値が線形な関係になる保証はない。
【0022】
このため、それぞれ入射光量が校正点より低い所定光量になる別の複数種類の散乱体(光源)を用意しておき、順次それぞれを用いて測定光を測定し、調整を行う。ここで図5の左側のグラフにおいて、種々の入射光量のそれぞれに対するフォトンカウント値が、実線の曲線で描かれており、求めるべき線形な関係が点線で示されている。例えば、入射光量がQ1、Q2となる散乱体を用いた場合、線形な関係となるフォトカウント値C1、C2が、白丸で示されており、実際のフォーマットカウント値C1’、C2’は、これより低い値となっており、「NG」となる。そこで、入射光量がQ1となる散乱体を用い、ホトマルへの印加電圧を上げ、またしきい値電圧を下げて、図5の右側に示すように、測定されるフォトンカウント値が許容範囲内で線形な関係になる値C1とほぼ一致するように、ホトマルへの印加電圧と2値化のためのしきい値電圧を調整する。
【0023】
同様に、入射光量がQ2となる散乱体を用い、測定されるフォトンカウント値が許容範囲内で線形な関係になる値C2とほぼ一致するように、印加電圧としきい値電圧を調整する。そして、予め定めた数の散乱体による測定と調整が終了したら、測定光を入射しないで測定を行い、その入射光量ゼロでの測定結果のフォトンカウント値、いわゆるダークカウント値がゼロに近い所定値以下であるか確認し、前記所定値より大きかったら、所定値以下になるように調整する。
【0024】
その後、再度それぞれの散乱体を使用して測定を行い、すべての測定でフォトンカウント値が線形な関係となるフォトンカウント値にほぼ一致し、かつホトマルへの入射光量がゼロのときにホトマルからの出力パルス数が所定値以下の値となっていたら、OKとする。
【0025】
実際には、1つの散乱体を用いたときの調整により、他の散乱体を用いて行われた線形な関係が崩れたり、あるいはゼロ点がずれる場合が多いので、複数回の調整が必要になる。そこで、ホトマルへの印加電圧としきい値電圧の異なる組み合わせを多数用意し、各組み合わせごとにホトマルへの入射光量を変化させて、入射光量とフォトンカウント値(出力パルス数)の関係を求め、そのなかで最も線形な関係が得られ、かつホトマルへの入射光量がゼロのときにホトマルからの出力パルス数が所定値以下の値となる印加電圧としきい値電圧の組み合わせで、測定を行うと、好ましい結果が得られる。この場合、印加電圧としきい値電圧の値をそれぞれ種々に変化させ、そのいずれかの印加電圧といずれかのしきい値電圧の組み合わせを多数作れば作るほど、理想とする線形な関係が得られる。
【0026】
以上のような本実施例によれば、ボリュームVR1及びVR2の操作によりホトマル1への印加電圧と共にホトマル出力信号の2値化のためのしきい値電圧を調整することにより、広いダイナミックレンジでホトマル1への入射光量と出力パルス数の関係を線形な関係にし、微弱光の強度の測定を正確に行えるようにすることができる。また、環境変化、経年変化により、オフセット誤差が発生しても、線形な特性となっているので、校正(キャリブレーション)が容易になる。
【実施例2】
【0027】
実施例1では光測定装置が例えば前眼部測定装置に用いられるものとして、微弱光の測定の際に複数種類の散乱体を用いて異なる光量の測定光を入射するものとしたが、光測定装置が他の用途に用いられる場合、図6に示す実施例2の構成により測定光を入射して測定を行うようにしてもよい。なお、図6において実施例1の図1中と共通の部分には共通の符号を付してあり、その共通部分の説明は省略する。
【0028】
図6において、光測定装置8の装置本体(筐体)9内には、実施例1と同じホトマル1、印加電圧調整ボリュームVR1を備えた高圧電源回路2、電流/電圧変換及び増幅回路3、パルス2値化回路4、しきい値調整ボリュームVR2を備えたしきい値調整回路5、およびパルス数カウンタ6が設けられており、また共通の表示部(モニタ)7が装置本体9外に臨むように設けられている。
【0029】
また、測定光をホトマル1の光電面に入射するための対物レンズ10、ミラー11、及び絞り12などからなる集光光学系が装置本体9に設けられている。
【0030】
この光測定装置8の装置本体9の正面側(対物レンズ10側)に対して投光装置20の装置本体(筐体)21が不図示のネジなどによる結合構造により、着脱自在に且つ外光を完全に遮光した状態で連結できるようになっている。
【0031】
投光装置20の装置本体21の前端部には、光測定装置8の対物レンズ10に対応した開口21aが形成されている。装置本体21内の後端部には、測定光を一定の光量で安定して発光するLEDなどからなる光源22が設けられている。その前側近傍にはターレット式の光量可変板23が回転軸24により回転可能に支持されており、回転軸24の装置本体21から突出する後端部に形成されたツマミ25をオペレータが回して光量可変板23を回転できるようになっている。
【0032】
図6の下側に示すように、円形の光量可変板23は、それ自体は完全に遮光する不透明な材質からなり、ここでは5つの円形の穴が周方向にほぼ半周強の部分に渡って並んで形成され、その内の4つには、それぞれ濃度が異なるNDフィルタ(減光フィルタ)F1〜F4が嵌め込まれている。残りの1つの穴23aは何も嵌め込まれていないスルーの穴となっている。また、穴が形成されていない部分の周方向の中央部において円形の破線で示す部分は、光源22からの光を完全に遮光するために対向させる遮光部23bとなっている。
【0033】
光測定装置8のホトマル1の特性を線形なものに調整するときには、図示のように光測定装置8と投光装置20の装置本体9,21どうしを連結し、光源22を点灯させ、ツマミ25の操作により、まず光量可変板23をそのスルーの穴23aが光源22に対向する位置に回転させて光源22からの所定光量の測定光をそのまま光測定装置8の対物レンズ10へ投光する。測定光は対物レンズ10で集光され、ミラー11で反射され、絞り12の穴を通ってホトマル1の光電面に入射され、その入射光量が測定される。これは、実施例1における校正点における調整に相当し、オペレータが表示部7を見て測定結果のフォトンカウント値を確認し、その値がホトマル1に求められている特性に対応する所定値になるように、ボリュームVR1とVR2の一方または両方を操作してホトマルの印加電圧と2値化のためのしきい値電圧の一方または両方を調整する。
【0034】
その後、順次NDフィルタF1〜F4のそれぞれが光源22に対向する位置のそれぞれに光量可変板23を回転させて、それぞれ異なる濃度で減光された異なる所定光量の測定光を投光させてホトマル1に入射させ、測定を行う。そして実施例1の場合と同様に、それぞれの入射光量においてフォトンカウント値が入射光量と線形関係になる値とほぼ一致するようにホトマルの印加電圧としきい値電圧を調整する。各フィルタF1〜F4による測定と調整が終了したら、遮光部23bが光源22に対向する位置に光量可変板23を回転させてホトマルへの入射光量をゼロとし、先述したダークカウント値がゼロに近い所定値以下になるように印加電圧としきい値電圧を調整する。その後、上記のそれぞれの測定と調整を再度行い、OKとなれば調整を終了する。
【0035】
また、ホトマルへの印加電圧としきい値の調整は、実施例1において述べたように、ホトマルへの印加電圧としきい値電圧の異なる組み合わせを多数用意し、各組み合わせごとにホトマルへの入射光量を変化させて、入射光量とフォトンカウント値の関係を求め、そのなかで最も線形な関係が得られ、かつホトマルへの入射光量がゼロのときにホトマルからの出力パルス数が所定値以下の値となる印加電圧としきい値電圧の組み合わせで行うようにしてもよい。
【0036】
以上のような本実施例2によれば、実施例1と同様に、ホトマルの印加電圧と2値化のためのしきい値電圧の調整により、ホトマルへの入射光量と出力パルス数が線形な関係になるので、微弱光の強度の測定を正確に行うことができる。
【実施例3】
【0037】
上述した実施例1及び2の光測定装置において、高圧電源回路2としきい値調整回路5は、それぞれホトマル1の特性が線形な特性となるように、印加電圧としきい値電圧がボリュームVR1,VR2で設定されているので、ホトマル1とセットになっている。このため、例えば、出荷されユーザーに使用された光測定装置において経年変化でホトマルが劣化した場合、ホトマルのみ交換すると、前述した入射光量と出力パルス数の関係で線形性が得られる保証は全くないので、またホトマルの調整を行う必要があり、手間と費用がかかり問題である。この問題を解決する実施例3による光測定装置の構成を図7により説明する。
【0038】
図7において、ホトマルユニット13は、ホトマルとその周辺回路をユニット化して、カートリッジのように光測定装置の本体に着脱可能に装着され、接続されるようにしたものであり、ホトマルソケット14を介してホトマル1を接続したユニット基板15をホトマルユニット本体の筐体16に収容した構成となっている。筐体16には、ホトマル1の光電面を外部に露出させる開口16aが形成されている。
【0039】
ユニット基板15上には、詳しく図示していないが、実施例1,2の構成における高圧電源回路2とその印加電圧調整ボリュームVR1、電流/電圧変換及び増幅回路3、パルス2値化回路4、並びにしきい値調整回路5及びそのしきい値調整ボリュームVR2が設けられており、高圧電源回路2と電流/電圧変換及び増幅回路3がホトマルソケット14を介してホトマル1に接続される。また、ユニット基板15には、電源接続用のコネクタ17と信号線接続用のコネクタ18が接続されている。
【0040】
コネクタ17,18は光測定装置の本体側に設けられたコネクタ31,32に着脱可能に接続される。コネクタ31には光測定装置の本体側に設けられた基板駆動用電源30が接続されており、これからコネクタ31及び17を介してホトマルユニット13のユニット基板15上の各回路に電力が供給される。また、コネクタ32には光測定装置の本体側に設けられた実施例1,2の構成におけるパルス数カウンタ6が接続され、その後段に表示部7が接続されており、コネクタ32と18を介してパルス数カウンタ6がホトマルユニット13のユニット基板15上のパルス2値化回路4に接続される。
【0041】
このような構成のホトマルユニット13をメーカーの工場で製造した後、光測定装置の本体に装着しコネクタ17,18を介して本体の回路に接続し、実施例1あるいは2と同様にホトマル1の調整を行ない、その後、これを装着した光測定装置ごと出荷するか、あるいは調整を行った光測定装置の本体から取り外して交換用として単体で用意しておく。出荷された光測定装置においてホトマル1の劣化などに応じてホトマルユニット13を交換するときには、新しいホトマルユニット13のホトマル1の調整は、既になされているので、行なう必要がなく、その手間と費用がかからず、交換は差し替えだけで非常に簡単に行なえるという利点がある。
【実施例4】
【0042】
実施例3では、上述した利点があるが、ホトマル1の交換と共に実施例1,2の構成における回路2〜5も交換することになり、中でも高圧電源回路2は、ホトマル1と比べてコストが1/2近くと高く、寿命も長いので不経済である。この問題点を考慮した実施例4を図8により説明する。図8において実施例3の図7中と共通ないし対応する部分には共通の符号を付してあり、共通部分の説明は省略する。
【0043】
図8に示す実施例4では、ホトマルユニット13のユニット基板15上に実施例1,2の構成における高圧電源回路2及びその印加電圧調整ボリュームVR1が設けられておらず、電流/電圧変換及び増幅回路3、パルス2値化回路4及びしきい値調整回路5及びそのしきい値調整ボリュームVR2だけ設けられている。
【0044】
そして、光測定装置の本体側に設けられた高圧電源基板33上に高圧電源回路2及びその印加電圧調整ボリュームVR1が設けられている。高圧電源基板33は基板駆動用電源30に接続され、これから電力が基板33上の高圧電源回路2に供給される。ホトマル1に電圧を印加するためのホトマルソケット14の端子はホトマルユニット13側のソケット17と光測定装置本体側のコネクタ31を介して高圧電源基板33に接続され、これらを介して高圧電源回路2からホトマル1に対してボリュームVR1で調整される印加電圧が印加される。
【0045】
また、基板駆動用電源30から装置本体側のコネクタ32とホトマルユニット13側のコネクタ18を介してユニット基板15上の各回路3〜5に電力が供給される。これ以外の構成は実施例3と共通とする。
【0046】
このような構成のホトマルユニット13をメーカーの工場で製造した後、光測定装置の本体に装着しコネクタ17,18を介して本体の回路に接続し、実施例1あるいは2と同様にしてボリュームVR1とVR2でホトマル1への印加電圧と2値化のためのしきい値電圧を調整してホトマル1の調整を行ない、その後、これを装着した光測定装置ごと出荷するか、あるいは校正を行った光測定装置の本体から取り外して交換用として単体で用意しておく。出荷された光測定装置においてホトマル1の劣化などに応じてホトマルユニット13を交換するときには、例えば、交換して装置本体に装着した新しいホトマルユニット13に対して実施例2の投光装置20と同様の投光装置を連結して、ホトマル1の調整を行う。その際に、前述した2値化のためのしきい値電圧は、既に工場でホトマル1の特性が線形な特性に調整されているので、ボリュームVR1でホトマル1への印加電圧のみを調整すればよく、調整作業を簡単に行うことができる。なお、ホトマルユニット13の工場で設定した印加電圧を記録しておき、交換時にその印加電圧に設定してから調整を行えば更に調整を簡単に行うことができる。
【0047】
以上のような本実施例4によれば、実施例3と比較して、ホトマルユニット13の交換時に、コストがかかる高圧電源回路2を無駄に交換せずに済む点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1による光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ホトマル出力信号とその2値化後のデジタル信号を示す信号波形図である。
【図3】前眼部測定装置で求められているホトマルへの入射光量に対するフォトンカウント値の特性(線形)を示す線図である。
【図4】ホトマルへの入射光量に対するフォトンカウント値の本来の特性(非線形)を示す線図である。
【図5】実施例1の調整により、ホトマルへの入射光量に対するフォトンカウント値の特性が線形にされる様子を示す説明図である。
【図6】実施例2における光測定装置と微弱光の投光装置の構成を示す概略構成図である。
【図7】実施例3における光測定装置のホトマルユニットと、それに関連した構成を示す概略構成図である。
【図8】実施例4における光測定装置のホトマルユニットと、それに関連した構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ホトマル(光電子増倍管)
2 高圧電源回路
3 電流/電圧変換及び増幅回路
4 パルス2値化回路
5 しきい値調整回路
6 パルス数カウンタ
7 表示部
8 光測定装置
10 対物レンズ
11 ミラー
12 絞り
13 ホトマルユニット
15 ユニット基板
17,18,31,32 コネクタ
20 投光装置
22 光源
23 光量可変板
30 基板駆動用電源
VR1 印加電圧調整ボリューム
VR2 しきい値調整ボリューム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微弱光を光電子増倍管に入射し、光電子増倍管の出力信号をしきい値と比較して得られる出力パルスの数をカウントして微弱光の強度を測定する光測定方法であって、
前記光電子増倍管への印加電圧としきい値を、光電子増倍管への入射光量と出力パルス数が線形な関係になるように、調整して微弱光を測定することを特徴とする光測定方法。
【請求項2】
前記光電子増倍管に対してそれぞれ光量が異なる微弱光を入射し、それぞれの入射光量ごとに、測定される出力パルス数が線形な関係になる値とほぼ一致するように、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となるように、光電子増倍管への印加電圧としきい値を調整することを特徴とする請求項1に記載の光測定方法。
【請求項3】
微弱光を光電子増倍管に入射し、光電子増倍管の出力信号をしきい値と比較して得られる出力パルスの数をカウントして微弱光の強度を測定する光測定方法であって、
光電子増倍管への印加電圧としきい値の異なる組み合わせを複数用意し、
各組み合わせごとに入射光量を変化させたときの入射光量と出力パルス数の関係を求め、
そのなかで最も線形な関係が得られ、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となるような印加電圧としきい値の組み合わせで微弱光を測定することを特徴とする光測定方法。
【請求項4】
微弱光を光電子増倍管に入射し、光電子増倍管の出力信号をしきい値と比較して得られる出力パルスの数をカウントして微弱光の強度を測定する光測定装置であって、
光電子増倍管への印加電圧を調整する手段と、
前記しきい値を調整する手段を有し、
前記印加電圧としきい値を調整することにより、光電子増倍管への入射光量と出力パルス数を線形な関係にして微弱光を測定することを特徴とする光測定装置。
【請求項5】
前記光電子増倍管に対してそれぞれ異なる光量の微弱光を入射する投光装置を着脱自在に設け、該投光装置により、光電子増倍管に対してそれぞれ光量が異なる微弱光を入射し、それぞれの入射光量ごとに、測定される出力パルス数が線形な関係になる値とほぼ一致するように、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となるように、印加電圧としきい値を調整することを特徴とする請求項4に記載の光測定装置。
【請求項6】
微弱光を光電子増倍管に入射し、光電子増倍管の出力信号をしきい値と比較して得られる出力パルスの数をカウントして微弱光の強度を測定する光測定装置であって、
光電子増倍管への印加電圧を調整する手段と、
前記しきい値を調整する手段を有し、
光電子増倍管への印加電圧としきい値の異なる組み合わせを複数用意し、各組み合わせごとに微弱光量を変化させたときの入射光量と出力パルス数の関係を求め、そのなかで最も線形な関係が得られ、かつ光電子増倍管への入射光量がゼロのときに光電子増倍管からの出力パルス数が所定値以下の値となる印加電圧としきい値の組み合わせで微弱光を測定することを特徴とする光測定装置。
【請求項7】
前記光電子増倍管と、前記印加電圧を発生する高圧電源回路と、前記印加電圧を調整する手段と、前記しきい値を調整する手段とを一体化して構成される光電子増倍管ユニットを、光測定装置本体に対して着脱自在に装着することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光測定装置。
【請求項8】
前記光電子増倍管としきい値を調整する手段を一体化して構成される光電子増倍管ユニットを、光測定装置本体に対して着脱自在に装着し、前記印加電圧を発生する高圧電源回路と、該印加電圧を調整する手段を、光測定装置本体側の回路に対して着脱自在に接続することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−133147(P2006−133147A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324473(P2004−324473)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】