光源判定装置、並びに、色処理装置およびその方法
【課題】 可視域外における光源の分光放射輝度特性を判定する。
【解決手段】 光源判定チャートは、可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される。パッチ32Bは、可視域外において第一の分光放射輝度特性を有する光源LAの光、および、可視域外において第二の分光放射輝度特性を有する光源LBの光に対して蛍光を放射する。パッチ32Aは、光源LAの光に対して蛍光を放射し、光源LBの光に対して蛍光を放射しない。参照部31は、光源LA、LBの光に対して蛍光を放射せず、パッチ32A、32Bにおける蛍光の放射の判定に利用される。
【解決手段】 光源判定チャートは、可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される。パッチ32Bは、可視域外において第一の分光放射輝度特性を有する光源LAの光、および、可視域外において第二の分光放射輝度特性を有する光源LBの光に対して蛍光を放射する。パッチ32Aは、光源LAの光に対して蛍光を放射し、光源LBの光に対して蛍光を放射しない。参照部31は、光源LA、LBの光に対して蛍光を放射せず、パッチ32A、32Bにおける蛍光の放射の判定に利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光物質の影響を考慮した色処理に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC)が普及し、ディジタルカメラ、スキャナなどの画像入力機器によって画像を入力し、モニタ(画像表示機器)によって画像を表示、プリンタ(画像出力機器)によって画像を印刷する機会が増えた。これに伴い、画像入力機器、画像表示機器、画像出力機器の間で色の再現を一致させるカラーマッチング処理が重要になった。カラーマッチング処理は、各機器の色再現特性(例えば色票のRGB値とXYZ値の関係)が記述されたプロファイルに基づき各機器の再現色の対応を図る。
【0003】
図1、図2により画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する。画像出力機器により所定のメディア11に色票12を印刷したプリント出力22を形成する。そして、測色器の光源(測色光源)13から色票12に光を照射し、色票12が反射した光を分光器14を通して受光器15に受光することで、反射光の分光放射輝度を測定する。反射光の分光放射輝度を測色光源13の分光放射輝度で除算すれば色票12の分光反射率R(λ)が算出される(S23)。次に、出力画像を観察する環境の光源(観察光源)24の分光放射輝度S(λ)を測定する(S25)。これら、分光反射率R(λ)、観察光源24の分光放射輝度S(λ)および等色関数x(λ)y(λ)z(λ)から下式により三刺激値XYZ27を算出する(S26)。
X = k∫R(λ)S(λ)x(λ)dλ
Y = k∫R(λ)S(λ)y(λ)dλ …(1)
Z = k∫R(λ)S(λ)z(λ)dλ
ここで、k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ、
積分範囲は380〜780nm。
【0004】
つまり、画像出力機器によりメディア11に多数の色の色票12を印刷し、各色票の測色値(例えば三刺激値XYZ27)を取得すれば、色票12を印刷する際に画像出力機器に入力した信号値(例えばRGB値)21と測色値の関係が得られる。この対応関係は、画像出力機器の色再現特性を表す。
【0005】
しかし、画像形成に使用するメディア(例えば記録紙)などの材量に蛍光を発する材料(例えば蛍光増白剤のような蛍光物質)が使用されている場合、上記の方法で測定した分光反射率R(λ)は、観察光源の下における分光反射率R(λ)と異なる場合がある。なお、蛍光物質は、照射光に含まれる励起波長域とは異なる波長域(蛍光波長域)の光を発する。一般に、蛍光波長は励起波長より長波長になる。
【0006】
図3の模式図により蛍光物質を含む色票に単色光を照射した場合の色票からの放射光の測定値を示す。図3(a)は、当該色票に350nmの単色光を照射した場合の放射光の強度を示す。放射光1101は、照射した単色光に対する反射光であり、放射光1102は照射した単色光により励起された蛍光である。一方、図11(b)は、当該色票に440nmの単色光を照射した場合の放射光の強度を示す。放射光1103は、照射した単色光に対する反射光である。
【0007】
図3(a)に示すように、色票が蛍光物質を含む場合、励起波長の光が照射されると、照射した光の波長の反射光1101とは別に、照射した光の波長とは異なる波長の蛍光1102が観測される。一方、図3(b)に示すように、励起波長ではない光を照射すると、照射した光の波長の反射光1103が観測される。そのため、例えば350nm成分と440nm成分を含む光源下において、当該色票の放射光として観測される440nmの光は、蛍光1102と反射光1103の和である。勿論、一般的な光源は多くの波長成分を有するため、440nmの反射光と各波長に対する440nmの蛍光の総和が、その光源下において色票から観測される440nmの放射光になる。
【0008】
図4により励起波長が紫外域にある蛍光物質を含む試料の分光反射率R(λ)を説明する。図1に示すような測定系を用いて、蛍光物質を含む試料の放射光を測定すると、蛍光物質が照射光に含まれる紫外域(図4(a)の41)の光に反応し、蛍光波長域(図4(b)の42)の光が発光される。つまり、測色器は、測色光源13の紫外域(励起波長域)41の光エネルギに依存した蛍光が加わった放射光を試料から受光する。その結果、分光反射率R(λ)も測色光源13の紫外域41の光エネルギに依存することになる(図4(c))。測色光源13と観察光源24が同じ場合は、測定において、観察光源24の励起波長域の光エネルギに対応する蛍光が得られるため、正しい測色値が算出される。他方、測色光源13と観察光源24が異なれば、測定において、観察光源24の励起波長域の光エネルギに対応しない蛍光が得られるため、正しい三刺激値を算出することができない。
【0009】
蛍光物質を含むメディアに印刷された試料の三刺激値を取得する方法として、二分光放射輝度率を用いる方法がある。二分光放射輝度率は、波長μの入射光に対する試料の分光放射輝度率を表す二変数関数F(μ,λ)であり、照射光の波長域と異なる波長域で放射する蛍光量を表すことができる。二分光放射輝度率を用いれば、下式を用いて、蛍光を考慮したCIEXYZ値を算出することができる。
X = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・x(λ)}dλ
Y = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・y(λ)}dλ …(2)
Z = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・z(λ)}dλ
ここで、k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ、
∫λの積分範囲は380〜780nm、
∫μの積分範囲は300〜780nm。
【0010】
図5により二分光放射輝度率データのデータ構造例を説明する。二分光放射輝度率データは、図5に示すように、ある単一波長の光(以下、単色光)をあるメディアに入射した場合に、例えば、300nmから780nmまで、10nm間隔の波長における、メディアからの放射輝度率が記述された二次元のデータである。
【0011】
二分光放射輝度率を用いれば、蛍光物質を含む試料の任意の観察光源の下における色を高精度に算出することができる。しかし、色の算出には、励起波長域を含む波長域(例えば300nmから780nm)における観察光源の分光放射輝度が必要になる。色票の二光分光放射輝度率が予め測定することができるとしても、光源の分光放射輝度は、実際の観察光源の下で測定する必要があり、可搬性の高い測定器が望まれる。
【0012】
紫外線の光強度(以下、紫外線量)の測定装置は、例えば特許文献1などに記載されている。特許文献1の測定装置は、紫外線の照射に応じて蛍光物質から放射された蛍光を光ファイバを使用して、例えばGaAsPフォトダイオードなどの受光器をもつ光パワーメータに導き、蛍光の強度を測定する。蛍光物質の励起特性が既知であれば、紫外線量を知ることができる。
【0013】
上記の測定装置は可搬性の点に難がある。そのような測定装置を用いずに、紫外線量を推定する技術としてチャートを用いる技術が知られている(例えば、特許文献2)。このチャートは、紫外線の照射量に応じた蛍光を放射する蛍光体部、および、複数のリファレンス部を備える。ユーザは、蛍光体部が放射する蛍光の色に一致または最も近い色をもつリファレンス部を選択することで、蛍光体部に照射された紫外線量を知ることができる。
【0014】
しかし、上述した技術は、紫外線量を測定することはできるとしても、光源の分光放射輝度、とくに紫外域の分光放射輝度を測定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8-292091号公報
【特許文献2】特開2003-042844公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、可視域外における光源の分光放射輝度特性を判定することを目的とする。
【0017】
また、光源の、可視域における分光放射輝度および可視域外における分光放射輝度特性の判定結果からから、可視域外における光源の分光放射輝度を推定することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0019】
本発明にかかる光源判定装置は、可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される光源判定装置であって、前記可視域外において互いに異なる分光放射輝度特性を有する、第一の光源の光および第二の光源の光に対して蛍光を放射する第一の発光手段と、前記第一の光源の光に対して蛍光を放射し、前記第二の光源の光に対して蛍光を放射しない第二の発光手段と、前記第一および第二の光源の光に対して蛍光を放射せず、前記第一および第二の発光手段における蛍光の放射を判定するための参照手段とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明にかかる色処理は、可視域における光源の分光放射輝度を取得し、可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力し、前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、可視域外における光源の分光放射輝度特性を判定することができる。
【0022】
また、光源の、可視域における分光放射輝度および可視域外における分光放射輝度特性の判定結果からから、可視域外における光源の分光放射輝度を推定することできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する図。
【図2】画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する図。
【図3】蛍光物質を含む色票に単色光を照射した場合の色票からの放射光の測定値を示す模式図。
【図4】励起波長が紫外域にある蛍光物質を含む試料の分光反射率を説明する図。
【図5】二分光放射輝度率データのデータ構造例を説明する図。
【図6】一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンの一例を説明する図。
【図7】光源判定チャートの一例を説明する図。
【図8】光源判定チャートのパッチの発光と光源の種類の対応を説明する図。
【図9】実施例の色処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図10】色処理プログラムによって実現される色処理部の機能構成例を説明するブロック図。
【図11】光源情報入力部がモニタに表示するユーザインタフェイスを説明する図。
【図12】色処理部の処理例を説明するフローチャート。
【図13】光源特性推定部の処理を説明するフローチャート。
【図14】光源の分光放射輝度の一例を説明する図。
【図15】可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる実施例の色処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
発明者は、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布が、幾つかのパターンに分類されることを見出した。以下では、この特徴を利用して、光源の、可視域外の分光放射輝度特性を推定する方法を説明する。なお、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンが四種類に分類されるとして説明する。
【0026】
[可視域外の分光放射輝度特性の判定]
図6により一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンの一例を説明する。光源LAは、300nm未満の波長域から可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LBは、350nm付近から可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LCは、可視域と可視域外の境界付近である390nm辺りから可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LDは、可視域外および可視域と可視域外の境界付近において分光放射輝度を有さず、図6において、光源LDの分布パターンは水平軸に重なる。
【0027】
図6に示す分布パターンを有する四種類の光源について、330nm付近に着目すると、光源LAの放射輝度だけが0ではなく(有意)で、他の光源の放射輝度は0(無意)である。さらに、370nm付近に着目すると光源LA、LBの放射輝度が有意であり、410nm付近に着目すれば光源LA、LB、LCの放射輝度が有意である。また、光源LDの放射輝度は着目する何れの波長においても無意である。つまり、330nm、370nm、410nm付近に励起波長域をもつ蛍光物質を利用すれば、これら四種類の光源を特定することができる。
【0028】
ここで注目するのは可視域外の分光放射輝度である。従って、光源そのものを特定するわけではなく、厳密には、可視域外の、四種類の分光放射輝度特性を特定(判定)するが正しい。しかし、以下では「光源を判定する」旨の表現を使用する場合がある。
【0029】
●光源判定チャート
図7により光源判定チャートの一例を説明する。図7(a)に示す光源判定チャートは、例えば蛍光物質を含まない紙などの基材上に、励起波長域がそれぞれ異なる蛍光物質を含む三つのパッチ32A、32B、32Cを備える。パッチ32Aが含む蛍光物質は例えば330nm付近の励起波長域を、パッチ32Bが含む蛍光物質は例えば370nm付近の励起波長域を、パッチ32Cが含む蛍光物質は例えば410nm付近の励起波長域をそれぞれ有する。言い換えれば、パッチ32Aは330nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、パッチ32Bは370nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、パッチ32Cは410nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、それぞれ蛍光を発する。
【0030】
これらパッチを形成する材量(以下、パッチ材量)は蛍光物質を除いて同一であり、例えば420nm以下のパッチの分光反射率は同一である。つまり、例えば420nm未満の光を含まない光源の下において、それらパッチを観察すると同じ色に見える。パッチ32A、32B、32Cの周囲は、パッチ材量から蛍光物質を除いた材量で形成された参照部31である。従って、例えば420nm未満の光を含まない光源の下において、パッチ32A、32B、32Cおよび参照部31を観察すると同じ色に見え、蛍光を発するパッチの色は参照部31と異なって見える。つまり、参照部31は、パッチ32A、32B、32Cにおける蛍光の放射を、人間が視覚的に判定するための参照領域である。
【0031】
なお、パッチ材量が含む蛍光物質は、励起波長域の光によって蛍光を発すればよく、無機蛍光体や有機蛍光体などの何れも使用することができる。また、パッチ32A、32B、32Cおよび参照部31は無光沢が好ましい。また、ユーザがパッチを識別するための文字や記号(図7の例ではA、B、Cの各文字)も蛍光物質を含まない材量を用いて、黒またはグレイの無光沢で形成する。
【0032】
図7(a)に示す光源判定チャートは、参照部31とパッチ32A、32B、32Cの色を比較し易くするために、参照部31が三つのパッチ32A、32B、32Cを囲む構成とした。しかし、図7(b)に示す光源判定チャートのように、パッチ32A、32B、32Cを隣接配置し、パッチ状の参照部31をパッチ32A、32B、32Cから分離配置してもよい。図7(b)に示す光源判定チャートの場合、基材は、蛍光物質を含まないことは勿論、基材の表面33は黒またはグレイの無光沢にする。
【0033】
観察光源の下において光源判定チャートを観察すると、次の四状態があり得る。
(I)参照部31の色とパッチA、B、Cの色が異なって見える、
(II)参照部31の色とパッチB、Cの色が異なって見える、
(III)参照部31の色とパッチCの色だけが異なって見える、
(IV)参照部31の色とパッチA、B、Cの色がすべて同じに見える。
【0034】
図8により光源判定チャートのパッチの発光と光源の種類の対応を説明する。「状態I」はパッチA、B、Cが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近、410nm付近の光を含む光源LAに相当する。「状態II」はパッチB、Cが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近の光を含まず、370nm付近、410nm付近の光を含む光源LBに相当する。「状態III」はパッチCだけが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近の光を含まず、410nm付近の光を含む光源LCに相当する。「状態IV」は何れのパッチも蛍光を発しない状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近、410nm付近の光を含まない光源LDに相当する。
【0035】
[装置の構成]
図9のブロック図により実施例の色処理装置100の構成例を説明する。マイクロプロセッサ(CPU)101は、メインメモリ102のRAMなどをワークメモリとして、メインメモリ102のROMやハードディスクドライブ(HDD)103に格納されたオペレーティングシステム(OS)や各種プログラムを実行する。そして、システムバス105を介して後述する構成を制御する。汎用インタフェイス(I/F)104は、例えばUSBやIEEE1394などのシリアルバスインタフェイスである。汎用I/F104には、キーボードやマウスなどのユーザ指示を入力する操作部107、記憶装置108、分光放射輝度などを測定する測定装置109などが接続される。また、ビデオI/F110にはモニタ106が接続される。
【0036】
CPU101は、モニタ106に表示したユーザインタフェイスを介したユーザ指示に従い、実施例の色処理を実現する色処理プログラムおよびデータをHDD103や記憶装置108からRAMにロードし、色処理プログラムを実行する。そして、色処理の結果をHDD103や記憶装置108に格納する。
【0037】
●色処理部
図10のブロック図により色処理プログラムによって実現される色処理部201の機能構成例を説明する。なお、色処理部201は、CPU101が色処理プログラムによって実現する機能の主要部に相当する。
【0038】
色票情報入力部202は、操作部107から入力されるユーザ指示に従い、HDD103や記憶装置108に対応する記憶部210から色票の色票情報を入力する。色票情報は、各種プリンタなどの画像出力装置によって所定のメディア上に印刷された色票の二分光放射輝度率F(μ,λ)を予め測定したデータを含む。色票情報は、例えば、RGB値の範囲をそれぞれ9ステップに分割した、93=729色の色票の例えば300nmから780nmの二分光放射輝度率F(μ,λ)を含む。なお、色票の数は、画像出力装置の色再現特性を、ユーザが所望する精度で取得するのに充分な数であればよい。
【0039】
光源情報取得部203は、操作部107から入力されるユーザ指示に従い、測定装置109を制御して観察光源の可視域における分光放射輝度を取得する。例えば、測定装置109には分光放射輝度計を用いるが、光源の可視域における分光放射輝度を取得できる測定器であればよい。
【0040】
光源情報入力部204は、操作部107から光源の判定結果(可視域外における分光放射輝度特性の判定結果)を示す情報(以下、光源情報)を入力する。図11により光源情報入力部204がモニタ106に表示するユーザインタフェイス(UI)を説明する。ユーザは、観察光源の下に図7に示す光源判定チャートを配置した場合に、光源判定チャートが上記状態Iから状態IVのどれを示すかを判断して、その判断に従い図11に示すUIのラジオボタンを選択する。なお、図11は状態IIに対応するラジオボタンが選択された状態を示す。
【0041】
光源特性推定部205は、観察光源の可視域における分光放射輝度(測定値)と光源情報から、観察光源の可視域外の波長(例えば300nmから380nm)における分光放射輝度(推定値)を推定する。
【0042】
演算部206は、色票の二分光放射輝度率F(μ,λ)、観察光源の測定値と推測値を合わせた観察光源の分光放射輝度S(λ)から、観察光源の下で色票が放射する光の、可視域における分光放射輝度T(λ)を演算する。
T(λ) = ∫F(μ,λ)S(λ)dμ …(3)
ここで、積分範囲はμ=300〜780nm、
λ=380nm〜780nm。
【0043】
算出部207は、演算部206が演算した分光放射輝度T(λ)から色票の測色値を算出する。下式は、分光放射輝度T(λ)から測色値としてCIEXYZ値を算出する式である。
X = k∫T(λ)x(λ)dλ
Y = k∫T(λ)y(λ)dλ …(4)
Z = k∫T(λ)z(λ)dλ
ここで、x(λ)y(λ)z(λ)は等色関数、
積分範囲は380〜780nm。
【0044】
なお、観察光源の分光放射輝度S(λ)に基づいてCIEXYZ値を正規化する場合、式(3)の係数kは次式で表される。
k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ …(5)
ここで、積分範囲はλ=380〜780nm。
【0045】
また、複数の光源の分光放射輝度を予め測定し、そのデータを記憶部210に格納しておくこともできる。その場合、光源情報取得部203は、モニタ106にUIを表示して、ユーザ指示に従い、記憶部210から観察光源の分光放射輝度を入力する。例えば、観察光源として一般的な波形タイプが三種類(高演色形、三波長型、普通型)、色温度が三種類(3000K、5000K、6500K)の蛍光灯の分光放射輝度を記憶部210に格納する。分光放射輝度の測定時の光源の照度は、例えば一般的なオフィス環境の600 luxにする。勿論、測定対象の光源は上記に限られず、ユーザの観察環境に応じた光源を測定対象にすればよい。ユーザは、光源情報取得部203が提供するUIによって、例えば「蛍光灯」「三波長形」「5000K」の組み合わせを入力または選択する。光源情報取得部203は、ユーザが指示する組み合わせに対応する光源の測定データ(分光放射輝度)を記憶部210から取得する。
【0046】
[色処理]
図12のフローチャートにより色処理部201の処理例を説明する。色処理部201は、図示しないUIをモニタ106に表示し(S11)、色票に関するユーザ指示を入力する(S12)。そして、分光放射輝度の取得が指示されるのを待つ(S13)。
【0047】
分光放射輝度の取得が指示されると、色処理部201は、光源情報取得部203により測定装置109を制御して、または、記憶部210から光源の可視域における分光放射輝度を取得する(S14)。そして、図11に示したUIをモニタ106に表示し(S15)、UIのラジオボタンの選択状態を光源情報として入力し(S16)、UIの[演算開始]ボタンまたは[キャンセル]ボタンが押されるのを待つ(S17)。[キャンセル]ボタンが押された場合、色処理部201は処理をステップS11に戻す。
【0048】
[演算開始]ボタンが押されると、色処理部201は、光源特性推定部205により、光源の可視域における分光放射輝度と光源情報から、可視域外の波長を含む光源の分光放射輝度を推定する(S18)。そして、演算部206により、推定した分光放射輝度と、色票情報が示す色票の分光反射率から、観察光源の下における色票の可視域の分光放射輝度を演算し(S19)、色票の可視域における分光放射輝度から測色値を計算する(S20)。色処理部201は、色票の数分、ステップS19とS20の処理を繰り返し実行し、計算結果の測色値を記憶部210に格納する(S21)。
色処理部201は、必要に応じて、または、ユーザ指示に応じて、ステップS19、S20で使用した色票情報と光源の分光放射輝度(推定値)、光源の分光放射輝度(測定値)、光源情報などのデータを、測色値に関連付けて記憶部210に格納する。
【0049】
●可視域外の分光放射輝度の推定
図13のフローチャートにより光源特性推定部205の処理(S18)を説明する。
【0050】
光源特性推定部205は、可視域における光源の分光放射輝度(測定値)を取得する(S601)。図14により光源の分光放射輝度の一例を説明する。点線は標準光源D65の分光放射輝度を、破線は標準光源Aの分光放射輝度を、実線FLは三波長型、5000Kの蛍光灯の分光放射輝度(測定値)をそれぞれ示す。
【0051】
次に、光源特性推定部205は、光源情報を入力し(S602)、光源情報に対応する光源LA、LB、LCまたはLDの可視域外の分光放射輝度の近似曲線を記憶部210から取得する(S603)。例えば図6に示す光源LAの可視域外の分光放射輝度は、指数関数f(λ)=0.00007e0.0245λを用いて近似することができる。そこで関数f(λ)を光源LAの近似曲線として記憶部210に格納してもよい。また、近似曲線は、可視域外の分光放射輝度を近似することができれば対数近似、多項式近似など、どのような近似方法でも構わない。
【0052】
次に、光源特性推定部205は、分光放射輝度の測定値に応じて、可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正する(S604)。光源の分光放射輝度の測定値は、光源の状態や周囲環境を含む観察環境によって変化するため、当然、分光放射輝度の測定値と近似曲線を結合しても連続した曲線は得られない。そこで、可視域の分光放射輝度と可視域外の分光放射輝度は連続性を有する、と言う仮定に基づき、分光放射輝度の測定値を用いて近似曲線を補正し、分光放射輝度の測定値と近似曲線を結合した場合に連続した曲線が得られるようにする。
【0053】
図15により可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正方法を説明する。図15(a)は分光放射輝度の測定値801と、補正前の分光放射輝度の近似曲線802を示す。光源特性推定部205は、測定値801と近似曲線802を結合する波長(以下、結合波長λj、例えば380nm)における分光放射輝度の測定値と、近似曲線の強度を一致させるため、下式により近似曲線を補正する。
f'(λ) = f(λ)×S(λj)/f(λj) …(6)
ここで、f(λ)は近似曲線、
S(λj)は結合波長λjにおける測定値、
f(λj)は結合波長λjにおける近似曲線の強度。
【0054】
図15(b)は分光放射輝度の測定値801と、補正後の分光放射輝度の近似曲線803を示す。図15(b)の例では、結合波長λj=380nmにおいて、測定値と近似曲線が結合され、連続した曲線が得られる。なお、両曲線の結合方法は、連続した曲線を得ることができればどのような方法でも構わない。
【0055】
次に、光源特性推定部205は、下式により、可視域外の波長を含む、光源の分光放射輝度の推定結果を出力する(S605)。なお、下式に示す波長範囲300≦λ<380は一例である。
if (300≦λ<380)
S(λ) = f'(λ);
else
S(λ) = S(λ); …(7)
【0056】
なお、光源情報が光源LDに対応する場合、近似曲線の取得(S603)および補正(S604)は不要であり、光源特性推定部205は、分光放射輝度の測定値を推定結果として出力する(S605)。
【0057】
このように、光源判定チャートから得られる光源情報と、観察光源の可視域の分光放射輝度から、可視域外および可視域における観察光源の分光放射輝度を推定する。従って、例えば可視域外に励起波長域を有する蛍光物質を含むメディアに印刷された色票の、観察光源の下における測色値を正確に算出することが可能になる。
【0058】
[測色値の利用方法]
色処理部201が算出した測色値は、カラーマネジメントシステム(CMS)において利用可能である。CMSは、デバイスごとに異なる色再現範囲の差を吸収して、異なるデバイス間で可能な限り同等な色再現を実現するシステムである。一般的なCMSは、デバイス依存の色空間(RGB、CMYKなど)と、デバイス非依存の色空間(CIEXYZ、CIELABなど)を相互変換しながら異なるデバイス間のカラーマッチングを実現する。デバイス依存の色空間とデバイス非依存の色空間の相互変換には、デバイスの色再現特性を格納したプロファイル(ICCプロファイルなど)を用いる。プロファイルは、デバイスの色再現特性を変換式や変換テーブル(ルックアップテーブル(LUT))として格納し、プロファイルを参照すれば色空間の相互変換が可能になる。
【0059】
そこで、色票の例えばRGB値と、色処理部201が算出した各色票の測色値の対応関係をLUTとして記述したプロファイルを作成する。こうすれば、所定のプリンタによって可視域外に励起波長域を有する蛍光物質を含むメディアに印刷した画像を、所定の観察光源の下において観察する場合のプロファイルとして、一般的なCMSで利用することが可能になる。
【0060】
[変形例]
上記では、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンが四種類に分類されるとして、三つのパッチA、B、Cを形成した光源判定チャートを説明した。しかし、分類する必要がある光源の種類が、第一の光源、第二の光源、第三の光源(例えば光源LA、LB、LD)の三つの場合は、光源判定チャートも第一の発光部であるパッチAと第二の発光部であるパッチBの二つでよい。つまり、分類すべき光源の種類(可視域外における分光放射輝度特性)の数をNとすると、光源判定チャートのパッチの数はN-1である。
【0061】
また、上記では、光源情報入力部204が図11に示すUIを利用して、光源判定チャートの状態に対するユーザの判定結果を入力する例を説明した。光源情報入力部204は、観察光源の下に配置された光源判定チャートの撮影画像を入力することもできる。この場合、光源情報入力部204は、撮影画像におけるパッチと参照部31の輝度値からパッチの発光状態を判定するか、パッチと参照部31の色差を測定して、判定結果または測定結果から光源判定チャートの状態を判定することで光源情報を得ることができる。
【0062】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光物質の影響を考慮した色処理に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC)が普及し、ディジタルカメラ、スキャナなどの画像入力機器によって画像を入力し、モニタ(画像表示機器)によって画像を表示、プリンタ(画像出力機器)によって画像を印刷する機会が増えた。これに伴い、画像入力機器、画像表示機器、画像出力機器の間で色の再現を一致させるカラーマッチング処理が重要になった。カラーマッチング処理は、各機器の色再現特性(例えば色票のRGB値とXYZ値の関係)が記述されたプロファイルに基づき各機器の再現色の対応を図る。
【0003】
図1、図2により画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する。画像出力機器により所定のメディア11に色票12を印刷したプリント出力22を形成する。そして、測色器の光源(測色光源)13から色票12に光を照射し、色票12が反射した光を分光器14を通して受光器15に受光することで、反射光の分光放射輝度を測定する。反射光の分光放射輝度を測色光源13の分光放射輝度で除算すれば色票12の分光反射率R(λ)が算出される(S23)。次に、出力画像を観察する環境の光源(観察光源)24の分光放射輝度S(λ)を測定する(S25)。これら、分光反射率R(λ)、観察光源24の分光放射輝度S(λ)および等色関数x(λ)y(λ)z(λ)から下式により三刺激値XYZ27を算出する(S26)。
X = k∫R(λ)S(λ)x(λ)dλ
Y = k∫R(λ)S(λ)y(λ)dλ …(1)
Z = k∫R(λ)S(λ)z(λ)dλ
ここで、k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ、
積分範囲は380〜780nm。
【0004】
つまり、画像出力機器によりメディア11に多数の色の色票12を印刷し、各色票の測色値(例えば三刺激値XYZ27)を取得すれば、色票12を印刷する際に画像出力機器に入力した信号値(例えばRGB値)21と測色値の関係が得られる。この対応関係は、画像出力機器の色再現特性を表す。
【0005】
しかし、画像形成に使用するメディア(例えば記録紙)などの材量に蛍光を発する材料(例えば蛍光増白剤のような蛍光物質)が使用されている場合、上記の方法で測定した分光反射率R(λ)は、観察光源の下における分光反射率R(λ)と異なる場合がある。なお、蛍光物質は、照射光に含まれる励起波長域とは異なる波長域(蛍光波長域)の光を発する。一般に、蛍光波長は励起波長より長波長になる。
【0006】
図3の模式図により蛍光物質を含む色票に単色光を照射した場合の色票からの放射光の測定値を示す。図3(a)は、当該色票に350nmの単色光を照射した場合の放射光の強度を示す。放射光1101は、照射した単色光に対する反射光であり、放射光1102は照射した単色光により励起された蛍光である。一方、図11(b)は、当該色票に440nmの単色光を照射した場合の放射光の強度を示す。放射光1103は、照射した単色光に対する反射光である。
【0007】
図3(a)に示すように、色票が蛍光物質を含む場合、励起波長の光が照射されると、照射した光の波長の反射光1101とは別に、照射した光の波長とは異なる波長の蛍光1102が観測される。一方、図3(b)に示すように、励起波長ではない光を照射すると、照射した光の波長の反射光1103が観測される。そのため、例えば350nm成分と440nm成分を含む光源下において、当該色票の放射光として観測される440nmの光は、蛍光1102と反射光1103の和である。勿論、一般的な光源は多くの波長成分を有するため、440nmの反射光と各波長に対する440nmの蛍光の総和が、その光源下において色票から観測される440nmの放射光になる。
【0008】
図4により励起波長が紫外域にある蛍光物質を含む試料の分光反射率R(λ)を説明する。図1に示すような測定系を用いて、蛍光物質を含む試料の放射光を測定すると、蛍光物質が照射光に含まれる紫外域(図4(a)の41)の光に反応し、蛍光波長域(図4(b)の42)の光が発光される。つまり、測色器は、測色光源13の紫外域(励起波長域)41の光エネルギに依存した蛍光が加わった放射光を試料から受光する。その結果、分光反射率R(λ)も測色光源13の紫外域41の光エネルギに依存することになる(図4(c))。測色光源13と観察光源24が同じ場合は、測定において、観察光源24の励起波長域の光エネルギに対応する蛍光が得られるため、正しい測色値が算出される。他方、測色光源13と観察光源24が異なれば、測定において、観察光源24の励起波長域の光エネルギに対応しない蛍光が得られるため、正しい三刺激値を算出することができない。
【0009】
蛍光物質を含むメディアに印刷された試料の三刺激値を取得する方法として、二分光放射輝度率を用いる方法がある。二分光放射輝度率は、波長μの入射光に対する試料の分光放射輝度率を表す二変数関数F(μ,λ)であり、照射光の波長域と異なる波長域で放射する蛍光量を表すことができる。二分光放射輝度率を用いれば、下式を用いて、蛍光を考慮したCIEXYZ値を算出することができる。
X = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・x(λ)}dλ
Y = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・y(λ)}dλ …(2)
Z = k∫λ{∫μF(μ,λ)S(μ)dμ・z(λ)}dλ
ここで、k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ、
∫λの積分範囲は380〜780nm、
∫μの積分範囲は300〜780nm。
【0010】
図5により二分光放射輝度率データのデータ構造例を説明する。二分光放射輝度率データは、図5に示すように、ある単一波長の光(以下、単色光)をあるメディアに入射した場合に、例えば、300nmから780nmまで、10nm間隔の波長における、メディアからの放射輝度率が記述された二次元のデータである。
【0011】
二分光放射輝度率を用いれば、蛍光物質を含む試料の任意の観察光源の下における色を高精度に算出することができる。しかし、色の算出には、励起波長域を含む波長域(例えば300nmから780nm)における観察光源の分光放射輝度が必要になる。色票の二光分光放射輝度率が予め測定することができるとしても、光源の分光放射輝度は、実際の観察光源の下で測定する必要があり、可搬性の高い測定器が望まれる。
【0012】
紫外線の光強度(以下、紫外線量)の測定装置は、例えば特許文献1などに記載されている。特許文献1の測定装置は、紫外線の照射に応じて蛍光物質から放射された蛍光を光ファイバを使用して、例えばGaAsPフォトダイオードなどの受光器をもつ光パワーメータに導き、蛍光の強度を測定する。蛍光物質の励起特性が既知であれば、紫外線量を知ることができる。
【0013】
上記の測定装置は可搬性の点に難がある。そのような測定装置を用いずに、紫外線量を推定する技術としてチャートを用いる技術が知られている(例えば、特許文献2)。このチャートは、紫外線の照射量に応じた蛍光を放射する蛍光体部、および、複数のリファレンス部を備える。ユーザは、蛍光体部が放射する蛍光の色に一致または最も近い色をもつリファレンス部を選択することで、蛍光体部に照射された紫外線量を知ることができる。
【0014】
しかし、上述した技術は、紫外線量を測定することはできるとしても、光源の分光放射輝度、とくに紫外域の分光放射輝度を測定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8-292091号公報
【特許文献2】特開2003-042844公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、可視域外における光源の分光放射輝度特性を判定することを目的とする。
【0017】
また、光源の、可視域における分光放射輝度および可視域外における分光放射輝度特性の判定結果からから、可視域外における光源の分光放射輝度を推定することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0019】
本発明にかかる光源判定装置は、可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される光源判定装置であって、前記可視域外において互いに異なる分光放射輝度特性を有する、第一の光源の光および第二の光源の光に対して蛍光を放射する第一の発光手段と、前記第一の光源の光に対して蛍光を放射し、前記第二の光源の光に対して蛍光を放射しない第二の発光手段と、前記第一および第二の光源の光に対して蛍光を放射せず、前記第一および第二の発光手段における蛍光の放射を判定するための参照手段とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明にかかる色処理は、可視域における光源の分光放射輝度を取得し、可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力し、前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、可視域外における光源の分光放射輝度特性を判定することができる。
【0022】
また、光源の、可視域における分光放射輝度および可視域外における分光放射輝度特性の判定結果からから、可視域外における光源の分光放射輝度を推定することできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する図。
【図2】画像出力機器の色再現特性を取得する手順例を説明する図。
【図3】蛍光物質を含む色票に単色光を照射した場合の色票からの放射光の測定値を示す模式図。
【図4】励起波長が紫外域にある蛍光物質を含む試料の分光反射率を説明する図。
【図5】二分光放射輝度率データのデータ構造例を説明する図。
【図6】一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンの一例を説明する図。
【図7】光源判定チャートの一例を説明する図。
【図8】光源判定チャートのパッチの発光と光源の種類の対応を説明する図。
【図9】実施例の色処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図10】色処理プログラムによって実現される色処理部の機能構成例を説明するブロック図。
【図11】光源情報入力部がモニタに表示するユーザインタフェイスを説明する図。
【図12】色処理部の処理例を説明するフローチャート。
【図13】光源特性推定部の処理を説明するフローチャート。
【図14】光源の分光放射輝度の一例を説明する図。
【図15】可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明にかかる実施例の色処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
発明者は、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布が、幾つかのパターンに分類されることを見出した。以下では、この特徴を利用して、光源の、可視域外の分光放射輝度特性を推定する方法を説明する。なお、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンが四種類に分類されるとして説明する。
【0026】
[可視域外の分光放射輝度特性の判定]
図6により一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンの一例を説明する。光源LAは、300nm未満の波長域から可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LBは、350nm付近から可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LCは、可視域と可視域外の境界付近である390nm辺りから可視域に向かって分光放射輝度が増加する特性を有する。光源LDは、可視域外および可視域と可視域外の境界付近において分光放射輝度を有さず、図6において、光源LDの分布パターンは水平軸に重なる。
【0027】
図6に示す分布パターンを有する四種類の光源について、330nm付近に着目すると、光源LAの放射輝度だけが0ではなく(有意)で、他の光源の放射輝度は0(無意)である。さらに、370nm付近に着目すると光源LA、LBの放射輝度が有意であり、410nm付近に着目すれば光源LA、LB、LCの放射輝度が有意である。また、光源LDの放射輝度は着目する何れの波長においても無意である。つまり、330nm、370nm、410nm付近に励起波長域をもつ蛍光物質を利用すれば、これら四種類の光源を特定することができる。
【0028】
ここで注目するのは可視域外の分光放射輝度である。従って、光源そのものを特定するわけではなく、厳密には、可視域外の、四種類の分光放射輝度特性を特定(判定)するが正しい。しかし、以下では「光源を判定する」旨の表現を使用する場合がある。
【0029】
●光源判定チャート
図7により光源判定チャートの一例を説明する。図7(a)に示す光源判定チャートは、例えば蛍光物質を含まない紙などの基材上に、励起波長域がそれぞれ異なる蛍光物質を含む三つのパッチ32A、32B、32Cを備える。パッチ32Aが含む蛍光物質は例えば330nm付近の励起波長域を、パッチ32Bが含む蛍光物質は例えば370nm付近の励起波長域を、パッチ32Cが含む蛍光物質は例えば410nm付近の励起波長域をそれぞれ有する。言い換えれば、パッチ32Aは330nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、パッチ32Bは370nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、パッチ32Cは410nm付近の励起波長域を含む照射光に対して、それぞれ蛍光を発する。
【0030】
これらパッチを形成する材量(以下、パッチ材量)は蛍光物質を除いて同一であり、例えば420nm以下のパッチの分光反射率は同一である。つまり、例えば420nm未満の光を含まない光源の下において、それらパッチを観察すると同じ色に見える。パッチ32A、32B、32Cの周囲は、パッチ材量から蛍光物質を除いた材量で形成された参照部31である。従って、例えば420nm未満の光を含まない光源の下において、パッチ32A、32B、32Cおよび参照部31を観察すると同じ色に見え、蛍光を発するパッチの色は参照部31と異なって見える。つまり、参照部31は、パッチ32A、32B、32Cにおける蛍光の放射を、人間が視覚的に判定するための参照領域である。
【0031】
なお、パッチ材量が含む蛍光物質は、励起波長域の光によって蛍光を発すればよく、無機蛍光体や有機蛍光体などの何れも使用することができる。また、パッチ32A、32B、32Cおよび参照部31は無光沢が好ましい。また、ユーザがパッチを識別するための文字や記号(図7の例ではA、B、Cの各文字)も蛍光物質を含まない材量を用いて、黒またはグレイの無光沢で形成する。
【0032】
図7(a)に示す光源判定チャートは、参照部31とパッチ32A、32B、32Cの色を比較し易くするために、参照部31が三つのパッチ32A、32B、32Cを囲む構成とした。しかし、図7(b)に示す光源判定チャートのように、パッチ32A、32B、32Cを隣接配置し、パッチ状の参照部31をパッチ32A、32B、32Cから分離配置してもよい。図7(b)に示す光源判定チャートの場合、基材は、蛍光物質を含まないことは勿論、基材の表面33は黒またはグレイの無光沢にする。
【0033】
観察光源の下において光源判定チャートを観察すると、次の四状態があり得る。
(I)参照部31の色とパッチA、B、Cの色が異なって見える、
(II)参照部31の色とパッチB、Cの色が異なって見える、
(III)参照部31の色とパッチCの色だけが異なって見える、
(IV)参照部31の色とパッチA、B、Cの色がすべて同じに見える。
【0034】
図8により光源判定チャートのパッチの発光と光源の種類の対応を説明する。「状態I」はパッチA、B、Cが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近、410nm付近の光を含む光源LAに相当する。「状態II」はパッチB、Cが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近の光を含まず、370nm付近、410nm付近の光を含む光源LBに相当する。「状態III」はパッチCだけが蛍光を発する状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近の光を含まず、410nm付近の光を含む光源LCに相当する。「状態IV」は何れのパッチも蛍光を発しない状態で、観察光源は330nm付近、370nm付近、410nm付近の光を含まない光源LDに相当する。
【0035】
[装置の構成]
図9のブロック図により実施例の色処理装置100の構成例を説明する。マイクロプロセッサ(CPU)101は、メインメモリ102のRAMなどをワークメモリとして、メインメモリ102のROMやハードディスクドライブ(HDD)103に格納されたオペレーティングシステム(OS)や各種プログラムを実行する。そして、システムバス105を介して後述する構成を制御する。汎用インタフェイス(I/F)104は、例えばUSBやIEEE1394などのシリアルバスインタフェイスである。汎用I/F104には、キーボードやマウスなどのユーザ指示を入力する操作部107、記憶装置108、分光放射輝度などを測定する測定装置109などが接続される。また、ビデオI/F110にはモニタ106が接続される。
【0036】
CPU101は、モニタ106に表示したユーザインタフェイスを介したユーザ指示に従い、実施例の色処理を実現する色処理プログラムおよびデータをHDD103や記憶装置108からRAMにロードし、色処理プログラムを実行する。そして、色処理の結果をHDD103や記憶装置108に格納する。
【0037】
●色処理部
図10のブロック図により色処理プログラムによって実現される色処理部201の機能構成例を説明する。なお、色処理部201は、CPU101が色処理プログラムによって実現する機能の主要部に相当する。
【0038】
色票情報入力部202は、操作部107から入力されるユーザ指示に従い、HDD103や記憶装置108に対応する記憶部210から色票の色票情報を入力する。色票情報は、各種プリンタなどの画像出力装置によって所定のメディア上に印刷された色票の二分光放射輝度率F(μ,λ)を予め測定したデータを含む。色票情報は、例えば、RGB値の範囲をそれぞれ9ステップに分割した、93=729色の色票の例えば300nmから780nmの二分光放射輝度率F(μ,λ)を含む。なお、色票の数は、画像出力装置の色再現特性を、ユーザが所望する精度で取得するのに充分な数であればよい。
【0039】
光源情報取得部203は、操作部107から入力されるユーザ指示に従い、測定装置109を制御して観察光源の可視域における分光放射輝度を取得する。例えば、測定装置109には分光放射輝度計を用いるが、光源の可視域における分光放射輝度を取得できる測定器であればよい。
【0040】
光源情報入力部204は、操作部107から光源の判定結果(可視域外における分光放射輝度特性の判定結果)を示す情報(以下、光源情報)を入力する。図11により光源情報入力部204がモニタ106に表示するユーザインタフェイス(UI)を説明する。ユーザは、観察光源の下に図7に示す光源判定チャートを配置した場合に、光源判定チャートが上記状態Iから状態IVのどれを示すかを判断して、その判断に従い図11に示すUIのラジオボタンを選択する。なお、図11は状態IIに対応するラジオボタンが選択された状態を示す。
【0041】
光源特性推定部205は、観察光源の可視域における分光放射輝度(測定値)と光源情報から、観察光源の可視域外の波長(例えば300nmから380nm)における分光放射輝度(推定値)を推定する。
【0042】
演算部206は、色票の二分光放射輝度率F(μ,λ)、観察光源の測定値と推測値を合わせた観察光源の分光放射輝度S(λ)から、観察光源の下で色票が放射する光の、可視域における分光放射輝度T(λ)を演算する。
T(λ) = ∫F(μ,λ)S(λ)dμ …(3)
ここで、積分範囲はμ=300〜780nm、
λ=380nm〜780nm。
【0043】
算出部207は、演算部206が演算した分光放射輝度T(λ)から色票の測色値を算出する。下式は、分光放射輝度T(λ)から測色値としてCIEXYZ値を算出する式である。
X = k∫T(λ)x(λ)dλ
Y = k∫T(λ)y(λ)dλ …(4)
Z = k∫T(λ)z(λ)dλ
ここで、x(λ)y(λ)z(λ)は等色関数、
積分範囲は380〜780nm。
【0044】
なお、観察光源の分光放射輝度S(λ)に基づいてCIEXYZ値を正規化する場合、式(3)の係数kは次式で表される。
k = 100/∫S(λ)y(λ)dλ …(5)
ここで、積分範囲はλ=380〜780nm。
【0045】
また、複数の光源の分光放射輝度を予め測定し、そのデータを記憶部210に格納しておくこともできる。その場合、光源情報取得部203は、モニタ106にUIを表示して、ユーザ指示に従い、記憶部210から観察光源の分光放射輝度を入力する。例えば、観察光源として一般的な波形タイプが三種類(高演色形、三波長型、普通型)、色温度が三種類(3000K、5000K、6500K)の蛍光灯の分光放射輝度を記憶部210に格納する。分光放射輝度の測定時の光源の照度は、例えば一般的なオフィス環境の600 luxにする。勿論、測定対象の光源は上記に限られず、ユーザの観察環境に応じた光源を測定対象にすればよい。ユーザは、光源情報取得部203が提供するUIによって、例えば「蛍光灯」「三波長形」「5000K」の組み合わせを入力または選択する。光源情報取得部203は、ユーザが指示する組み合わせに対応する光源の測定データ(分光放射輝度)を記憶部210から取得する。
【0046】
[色処理]
図12のフローチャートにより色処理部201の処理例を説明する。色処理部201は、図示しないUIをモニタ106に表示し(S11)、色票に関するユーザ指示を入力する(S12)。そして、分光放射輝度の取得が指示されるのを待つ(S13)。
【0047】
分光放射輝度の取得が指示されると、色処理部201は、光源情報取得部203により測定装置109を制御して、または、記憶部210から光源の可視域における分光放射輝度を取得する(S14)。そして、図11に示したUIをモニタ106に表示し(S15)、UIのラジオボタンの選択状態を光源情報として入力し(S16)、UIの[演算開始]ボタンまたは[キャンセル]ボタンが押されるのを待つ(S17)。[キャンセル]ボタンが押された場合、色処理部201は処理をステップS11に戻す。
【0048】
[演算開始]ボタンが押されると、色処理部201は、光源特性推定部205により、光源の可視域における分光放射輝度と光源情報から、可視域外の波長を含む光源の分光放射輝度を推定する(S18)。そして、演算部206により、推定した分光放射輝度と、色票情報が示す色票の分光反射率から、観察光源の下における色票の可視域の分光放射輝度を演算し(S19)、色票の可視域における分光放射輝度から測色値を計算する(S20)。色処理部201は、色票の数分、ステップS19とS20の処理を繰り返し実行し、計算結果の測色値を記憶部210に格納する(S21)。
色処理部201は、必要に応じて、または、ユーザ指示に応じて、ステップS19、S20で使用した色票情報と光源の分光放射輝度(推定値)、光源の分光放射輝度(測定値)、光源情報などのデータを、測色値に関連付けて記憶部210に格納する。
【0049】
●可視域外の分光放射輝度の推定
図13のフローチャートにより光源特性推定部205の処理(S18)を説明する。
【0050】
光源特性推定部205は、可視域における光源の分光放射輝度(測定値)を取得する(S601)。図14により光源の分光放射輝度の一例を説明する。点線は標準光源D65の分光放射輝度を、破線は標準光源Aの分光放射輝度を、実線FLは三波長型、5000Kの蛍光灯の分光放射輝度(測定値)をそれぞれ示す。
【0051】
次に、光源特性推定部205は、光源情報を入力し(S602)、光源情報に対応する光源LA、LB、LCまたはLDの可視域外の分光放射輝度の近似曲線を記憶部210から取得する(S603)。例えば図6に示す光源LAの可視域外の分光放射輝度は、指数関数f(λ)=0.00007e0.0245λを用いて近似することができる。そこで関数f(λ)を光源LAの近似曲線として記憶部210に格納してもよい。また、近似曲線は、可視域外の分光放射輝度を近似することができれば対数近似、多項式近似など、どのような近似方法でも構わない。
【0052】
次に、光源特性推定部205は、分光放射輝度の測定値に応じて、可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正する(S604)。光源の分光放射輝度の測定値は、光源の状態や周囲環境を含む観察環境によって変化するため、当然、分光放射輝度の測定値と近似曲線を結合しても連続した曲線は得られない。そこで、可視域の分光放射輝度と可視域外の分光放射輝度は連続性を有する、と言う仮定に基づき、分光放射輝度の測定値を用いて近似曲線を補正し、分光放射輝度の測定値と近似曲線を結合した場合に連続した曲線が得られるようにする。
【0053】
図15により可視域外の分光放射輝度の近似曲線を補正方法を説明する。図15(a)は分光放射輝度の測定値801と、補正前の分光放射輝度の近似曲線802を示す。光源特性推定部205は、測定値801と近似曲線802を結合する波長(以下、結合波長λj、例えば380nm)における分光放射輝度の測定値と、近似曲線の強度を一致させるため、下式により近似曲線を補正する。
f'(λ) = f(λ)×S(λj)/f(λj) …(6)
ここで、f(λ)は近似曲線、
S(λj)は結合波長λjにおける測定値、
f(λj)は結合波長λjにおける近似曲線の強度。
【0054】
図15(b)は分光放射輝度の測定値801と、補正後の分光放射輝度の近似曲線803を示す。図15(b)の例では、結合波長λj=380nmにおいて、測定値と近似曲線が結合され、連続した曲線が得られる。なお、両曲線の結合方法は、連続した曲線を得ることができればどのような方法でも構わない。
【0055】
次に、光源特性推定部205は、下式により、可視域外の波長を含む、光源の分光放射輝度の推定結果を出力する(S605)。なお、下式に示す波長範囲300≦λ<380は一例である。
if (300≦λ<380)
S(λ) = f'(λ);
else
S(λ) = S(λ); …(7)
【0056】
なお、光源情報が光源LDに対応する場合、近似曲線の取得(S603)および補正(S604)は不要であり、光源特性推定部205は、分光放射輝度の測定値を推定結果として出力する(S605)。
【0057】
このように、光源判定チャートから得られる光源情報と、観察光源の可視域の分光放射輝度から、可視域外および可視域における観察光源の分光放射輝度を推定する。従って、例えば可視域外に励起波長域を有する蛍光物質を含むメディアに印刷された色票の、観察光源の下における測色値を正確に算出することが可能になる。
【0058】
[測色値の利用方法]
色処理部201が算出した測色値は、カラーマネジメントシステム(CMS)において利用可能である。CMSは、デバイスごとに異なる色再現範囲の差を吸収して、異なるデバイス間で可能な限り同等な色再現を実現するシステムである。一般的なCMSは、デバイス依存の色空間(RGB、CMYKなど)と、デバイス非依存の色空間(CIEXYZ、CIELABなど)を相互変換しながら異なるデバイス間のカラーマッチングを実現する。デバイス依存の色空間とデバイス非依存の色空間の相互変換には、デバイスの色再現特性を格納したプロファイル(ICCプロファイルなど)を用いる。プロファイルは、デバイスの色再現特性を変換式や変換テーブル(ルックアップテーブル(LUT))として格納し、プロファイルを参照すれば色空間の相互変換が可能になる。
【0059】
そこで、色票の例えばRGB値と、色処理部201が算出した各色票の測色値の対応関係をLUTとして記述したプロファイルを作成する。こうすれば、所定のプリンタによって可視域外に励起波長域を有する蛍光物質を含むメディアに印刷した画像を、所定の観察光源の下において観察する場合のプロファイルとして、一般的なCMSで利用することが可能になる。
【0060】
[変形例]
上記では、一般的な光源の可視域外における分光放射輝度の分布パターンが四種類に分類されるとして、三つのパッチA、B、Cを形成した光源判定チャートを説明した。しかし、分類する必要がある光源の種類が、第一の光源、第二の光源、第三の光源(例えば光源LA、LB、LD)の三つの場合は、光源判定チャートも第一の発光部であるパッチAと第二の発光部であるパッチBの二つでよい。つまり、分類すべき光源の種類(可視域外における分光放射輝度特性)の数をNとすると、光源判定チャートのパッチの数はN-1である。
【0061】
また、上記では、光源情報入力部204が図11に示すUIを利用して、光源判定チャートの状態に対するユーザの判定結果を入力する例を説明した。光源情報入力部204は、観察光源の下に配置された光源判定チャートの撮影画像を入力することもできる。この場合、光源情報入力部204は、撮影画像におけるパッチと参照部31の輝度値からパッチの発光状態を判定するか、パッチと参照部31の色差を測定して、判定結果または測定結果から光源判定チャートの状態を判定することで光源情報を得ることができる。
【0062】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される光源判定装置であって、
前記可視域外において互いに異なる分光放射輝度特性を有する、第一の光源の光および第二の光源の光に対して蛍光を放射する第一の発光手段と、
前記第一の光源の光に対して蛍光を放射し、前記第二の光源の光に対して蛍光を放射しない第二の発光手段と、
前記第一および第二の光源の光に対して蛍光を放射せず、前記第一および第二の発光手段における蛍光の放射を判定するための参照手段とを有することを特徴とする光源判定装置。
【請求項2】
前記可視域外において、前記第一および第二の光源とは異なる分光放射輝度特性を有する第三の光源の光に対して、前記第一および第二の発光手段および前記参照手段は蛍光を放射しないことを特徴とする請求項1に記載された光源判定装置。
【請求項3】
可視域における光源の分光放射輝度を取得する取得手段と、
可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力する入力手段と、
前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定する推定手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項4】
前記光源情報は、請求項1または請求項2に記載された光源判定装置を利用して得られることを特徴とする請求項3に記載された色処理装置。
【請求項5】
さらに、所定のメディア上に印刷された色票の二分光放射輝度率を入力する手段と、
前記二分光放射輝度率、並びに、前記可視域外および前記可視域における前記光源の分光放射輝度から、前記光源の下における前記色票の測色値を算出する手段とを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載された色処理装置。
【請求項6】
取得手段、入力手段、推定手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記取得手段が可視域における光源の分光放射輝度を取得し、
前記入力手段が可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力し、
前記推定手段が前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定することを特徴とする色処理方法。
【請求項7】
コンピュータ装置を請求項3から請求項5の何れか一項に記載された色処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
可視域外における光源の分光放射輝度特性の判定に利用される光源判定装置であって、
前記可視域外において互いに異なる分光放射輝度特性を有する、第一の光源の光および第二の光源の光に対して蛍光を放射する第一の発光手段と、
前記第一の光源の光に対して蛍光を放射し、前記第二の光源の光に対して蛍光を放射しない第二の発光手段と、
前記第一および第二の光源の光に対して蛍光を放射せず、前記第一および第二の発光手段における蛍光の放射を判定するための参照手段とを有することを特徴とする光源判定装置。
【請求項2】
前記可視域外において、前記第一および第二の光源とは異なる分光放射輝度特性を有する第三の光源の光に対して、前記第一および第二の発光手段および前記参照手段は蛍光を放射しないことを特徴とする請求項1に記載された光源判定装置。
【請求項3】
可視域における光源の分光放射輝度を取得する取得手段と、
可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力する入力手段と、
前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定する推定手段とを有することを特徴とする色処理装置。
【請求項4】
前記光源情報は、請求項1または請求項2に記載された光源判定装置を利用して得られることを特徴とする請求項3に記載された色処理装置。
【請求項5】
さらに、所定のメディア上に印刷された色票の二分光放射輝度率を入力する手段と、
前記二分光放射輝度率、並びに、前記可視域外および前記可視域における前記光源の分光放射輝度から、前記光源の下における前記色票の測色値を算出する手段とを有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載された色処理装置。
【請求項6】
取得手段、入力手段、推定手段を有する色処理装置の色処理方法であって、
前記取得手段が可視域における光源の分光放射輝度を取得し、
前記入力手段が可視域外における前記光源の分光放射輝度特性を示す光源情報を入力し、
前記推定手段が前記光源の分光放射輝度および前記光源情報から、前記可視域外における前記光源の分光放射輝度を推定することを特徴とする色処理方法。
【請求項7】
コンピュータ装置を請求項3から請求項5の何れか一項に記載された色処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−42434(P2012−42434A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186540(P2010−186540)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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