説明

光無線通信装置

【課題】 より簡易な構成で信号光を無線光通信により送受信する。
【解決手段】 光無線通信装置10は、サーキュレータ11と、光ファイバ121と、レンズ122とを備える。サーキュレータ11は、第1の端子11a、第2の端子11b及び第3の端子11cを含み、第1の端子11aから入力された信号光を第2の端子11bに出力し、第2の端子11bから入力された信号光を第3の端子11cに出力する。光ファイバ121は、第2の端子11bに接続された第1の端面121aと第2の端面121bとを有し、第1の端面121aに入力される信号光を第2の端面121bから出射すると共に、第2の端面121bから入射される信号光を第1の端面121aから出力する。レンズ122は、第2の端面121から出射される信号光を無線通信信号として投光すると共に、信号光を受光して第2の端面121bに入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空間光通信を行う技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3‐6937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1では、光ファイバネットワークの信号光を電気信号に変換せず直接空間光通信により送受信する技術が提案されている。しかしながら、上記特許文献1に記載された装置では、送信用光ファイバに対する光学系と受信用光ファイバに対する光学系とが必要となっており、装置構成が複雑となり装置の大型化、重量化を招く。
【0004】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、より簡易な構成で信号光を無線光通信により送受信することを可能とする光無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明による光無線通信装置は、第1、第2及び第3の端子を含み、当該第1の端子から入力された信号光を当該第2の端子に出力し、当該第2の端子から入力された信号光を当該第3の端子に出力するサーキュレータと、サーキュレータの第2の端子に接続された第1の端面と第2の端面とを有し、当該第2の端子から出力され当該第1の端面に入力される信号光を当該第2の端面から出射すると共に、当該第2の端面から入射される信号光を当該第1の端面から出力する光ファイバと、光ファイバの第2の端面から出射される信号光を無線通信信号として投光すると共に、無線通信信号として到達した信号光を受光して光ファイバの第2の端面に入射するレンズと、を備えることを特徴とする。
【0006】
上記した光無線通信装置では、投光する信号光はサーキュレータの第1の端子に入力されて第2の端子から出力される。サーキュレータの第2の端子から出力された信号光は、光ファイバを伝搬しレンズから投光される。一方、受光する信号光は、レンズにより受光され光ファイバを伝搬してサーキュレータの第2の端子に入力される。サーキュレータの第2の端子に入力された信号光は、第3の端子から出力される。このように、本光無線通信装置では、投光する信号光及び受光する信号光を共通の光ファイバにより伝送し、投光と受光とを共通の機構を用いて行うことができ、上記のような簡易な構成で信号光を無線光通信により送受信することを可能とする。
【0007】
また、レンズは非球面レンズであることが好ましい。この構成によれば、信号光の投光及び受光を行うためのレンズを1枚にすることができ、より簡易な構成とすることができる。
【0008】
また、光ファイバは、第1の端面から入力された信号光が第1の端面に戻ることを防止する戻り光防止処理がなされていることが好ましい。この構成によれば、第1の端面から光ファイバに入力され投光されるべき信号光が光ファイバ内で戻り、受光された信号光と混信することを防止することができる。また、戻り光防止処理は、光ファイバの第2の端面になされたAR(Anti Reflection)コート処理であることが好ましい。
【0009】
また、戻り光防止処理は、光ファイバの第2の端面が光軸方向に対して斜めになっていることであることが好ましい。特にこの場合、第2の端面を含む光ファイバの端部のレンズの光軸に対する角度は、当該光ファイバのコアの屈折率、及び当該光ファイバと当該レンズとの間の信号光の光路における屈折率に基づいて、当該第2の端面から出射される信号光の光路が当該レンズの光軸と一致するように定められることが好ましい。この構成によれば、光無線通信装置における光学系の光軸に対する信号光の光路のずれを発生させずに適切に信号光の送受信を行うことができる。
【0010】
また、光無線通信装置は、レンズにより受光された信号光の方向を検出する方向検出手段と、方向検出手段により検出された信号光の方向に基づきレンズと光ファイバの第2の端面との間の信号光の光軸を調整する調整手段と、を更に備えることが好ましい。この構成によれば、信号光を確実に投受光することができる。また、光無線通信装置は、信号光の経路における光ファイバの第2の端面とレンズとの間に設けられ、レンズにより受光された信号光の一部を反射させるビームスプリッタを更に備え、方向検出手段は、ビームスプリッタにより反射された信号光を検出し、当該検出状態からレンズにより受光された信号光の方向を検出する、ことが好ましい。
【0011】
また、光無線通信装置は、入力される信号光を光増幅して出力して光サーキュレータの第1の端子に入力する光増幅器を更に備えることが好ましい。この構成によれば、投光する信号光のパワーを増幅するので、投光した信号光が他の光無線通信装置によって受光される場合に、より充分なパワーで受光させることができる。
【0012】
また、光無線通信装置は、サーキュレータの第3の端子から出力される信号光のパワーの値を検出する信号光パワー検出手段と、信号光パワー検出手段により検出される値を参照して、サーキュレータの第3の端子から出力される信号光のパワーを制御する信号光パワー制御手段と、を更に備えることが好ましい。この構成によれば、受光した信号光のパワーの値が小さい場合にも、信号光を安定的なパワーで出力することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、投光する信号光及び受光する信号光を共通の光ファイバにより伝送し、投光と受光とを共通の光学系を用いて行うことができ、上記のような簡易な構成で信号光を無線光通信により送受信することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明による光無線通信装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1は、本発明による光無線通信装置10の実施形態を概略的に示す構成図である。光無線通信装置10は、光ファイバネットワーク20から信号光を入力し、その信号光を通信相手の光無線通信装置(本発明による光無線通信装置10と同様の構成であっても、同様の構成でなくてもよい)に対して無線通信信号として投光する。また、通信相手の光無線通信装置により無線通信信号として投光された信号光を受光し、光ファイバネットワーク20に出力する。なお、通信相手の光無線通信装置及び光無線通信装置10は、通信可能なように互いに投受光可能な位置に設置されている。光ファイバネットワーク20は、光ファイバを含んで構成された通信網であり、信号が光によって伝達される。
【0016】
光無線通信装置10により投受光される光としては、1.55μm帯の波長のレーザ光を用いることが好ましい。このレーザ光の波長は、これまで開発されている光無線通信装置で用いられる光の波長750nm〜850nmとは異なるが、光ファイバネットワークで標準的に使用されているものである。従って、通常の光ファイバネットワークでの信号光をそのまま光無線に利用することができ、光ファイバネットワークとの親和性が高い。また、この1.55μm帯の波長は目に安全な波長帯であるので、投受光する信号光の高出力化を可能とする。
【0017】
以下、光無線通信装置10の構成を説明する。図1に示すように、光無線通信装置10は、サーキュレータ11と、信号光投受光部12と、光ファイバアンプ13と、光カプラ14と、信号光パワー検出部15と、制御部16と、光ファイバアンプ17とを備える。
【0018】
サーキュレータ11は、第1の端子11aと、第2の端子11bと、第3の端子11cとを含んで構成されている。第1の端子11aは、光ファイバアンプ13に接続されており、光ファイバアンプ13から出力される信号光を入力する。第2の端子11bは、信号光投受光部12に接続されている。第3の端子11cは、光カプラ14に接続されており、出力する信号光を光カプラ14に入力する。サーキュレータ11は、第1の端子11aから入力された信号光を第2の端子11bに出力する。また、サーキュレータ11は、第2の端子11bから入力された信号光を第3の端子11cに出力する。
【0019】
信号光投受光部12は、光ファイバ121とレンズ122とを含んで構成される。信号光投受光部12は、サーキュレータ11の第2の端子11bから出力された信号光を、光ファイバ121を伝搬させて、レンズ122により、通信相手の光無線通信装置に対して投光する。また、信号光投受光部12は、通信相手の光無線通信装置により投光され到達した信号光を、レンズ122により受光し、光ファイバ121を伝搬させてサーキュレータ11の第2の端子11bに入力する。光ファイバ121は、第1の端面121aと第2の端面121bとを含んでいる。第1の端面121aはサーキュレータ11の第2の端子11bに接続されており、サーキュレータ11の第2の端子11bから出力された信号光を第1の端面121aに入力し第2の端面121bから出射する。また、レンズ122により受光された信号光を第2の端面121bに入射し第1の端面121aから出力する。信号光投受光部12のより詳細な構成については後述する。
【0020】
光ファイバアンプ13は、光ファイバネットワーク20に接続されており、通信相手の光無線通信装置に送信するために光ファイバネットワーク20から入力される信号光を増幅して出力する。この増幅は信号光が大気中を伝搬する際の減衰を考慮して、信号光を無線光通信に耐えうるパワーにするためのものである。なお、光ファイバアンプ13は、光ファイバを用いない光増幅器等により代替されてもよい。また、光ファイバネットワーク20から入力される信号光のパワーの値が充分大きく、無線光通信に耐えうるものである場合、光ファイバアンプ13は必ずしも光無線通信装置10に備えられている必要はない。
【0021】
光カプラ14は、サーキュレータ11の第3の端子11cから出力された信号光を入力し、その信号光の一部を分岐して信号光パワー検出部15に出力し、残部を光ファイバアンプ17に出力する。
【0022】
信号光パワー検出部15は、サーキュレータ11の第3の端子11cから出力され光カプラ14により分岐された信号光のパワーの値を検出する。光カプラ14と信号光パワー検出部15とは、サーキュレータ11の第3の端子11cから出力される信号光のパワーの値を検出する信号光パワー検出手段の役割を果たす。検出された信号光のパワーの情報は、制御部16に送信される。
【0023】
制御部16は、信号光パワー検出部15により検出される値を参照して、光ファイバアンプ17から出力される信号光のパワーを制御する。この制御は、光ファイバネットワーク20に入力される信号光の安定化を図るために行われ、例えば信号光のパワーの値を一定にする制御が相当する。
【0024】
光ファイバアンプ17は、制御部16の制御を受けて、光カプラ14から入力される信号光を増幅して、光ファイバネットワーク20に出力する。なお、光ファイバアンプ17は、光ファイバアンプ13と同様、光ファイバを用いない光増幅器等により代替されてもよい。制御部16と光ファイバアンプ17とは、サーキュレータ11の第3の端子11cから出力され光ファイバアンプ17から光ファイバネットワーク20に出力される信号光のパワーを制御する信号光パワー制御手段の役割を果たす。
【0025】
引き続いて信号光投受光部12の構成を説明する。図2に信号光投受光部12の側面からの断面を示す。また、図3に信号光投受光部12の上面からの断面を示す。信号光投受光部12は、信号光を投光及び受光する面が開けられた箱型の筐体123を有している。信号光投受光部12は、筐体123内に、光ファイバ121と、レンズ122と、保持基体124と、保持基体支持部125と、ビームスプリッタ126と、信号光方向検出器127と、縦方向アクチュエータ128と、横方向アクチュエータ129とを備える。なお、サーキュレータ11、光ファイバアンプ13,17、光カプラ14、信号光パワー検出部15及び制御部16は、その何れか又は全てが筐体123に含まれていてもよい。
【0026】
光ファイバ121は、第2の端面121bから出射される信号光がレンズ122により平行光にされ投光されると共に、レンズ122により受光される信号光が第2の端面121bに入射されるように、保持基体124に固定される。光信号の伝搬効率を考慮し、光ファイバ121として、シングルモード光ファイバが用いられることが好ましい。
【0027】
光ファイバ121の第2の端面121bは、図4(a)に示すように、戻り光防止処理をされていることが好ましい。戻り光防止処理とは、第1の端面121aから入力された信号光が、第2の端面121bから光無線通信装置10内の大気中に出射されずに、図4(b)に示すように第2の端面121bで反射し第1の端面121aに戻ることを防止する端面処理のことである。
【0028】
戻り光防止処理がなされていないと、図4(b)に示すように、出力される信号光の一部が光ファイバ121のコアと大気との屈折率の差により第2の端面121bで反射してしまうことがある。この反射光はレンズ122により受光された信号光と同様の経路を伝ってサーキュレータ11の第2の端子11bに入力され、第3の端子11cに出力される。反射光のパワーが受光された信号光よりも十分小さい場合は問題ないが、多くの場合、この反射光はエラー耐性に対しての影響を無視できないものとなる。戻り光防止処理は、この反射光をできるだけ少なくし、反射光と受光された信号光とが混信することを防止するためのものである。戻り光防止処理は、具体的には、図4(a)に示すように信号光の反射を防止する薄膜121cをコーティングするARコート処理であることが好ましい。また、図4(a)に示すように、光軸方向に対して斜め研磨することであることが好ましい。反射光の発生を適切に防止するために、第2の端面121bの光ファイバ121の端部の光軸に対する角度は、例えば、8°程度とするのが好ましい。
【0029】
上記のように、光ファイバ121の第2の端面121bを斜め研磨した場合、当該第2の端面121bを含む光ファイバ121の端部の光軸とレンズ122の光軸とが一致していると、上記光軸に対して、送受信される信号光の光路のずれが発生する。これは、図5に示すように、斜め研磨により第2の端面121bが光ファイバ121の端部121dの光軸に対して角度θをなしているとすると、光ファイバ121のコアの屈折率nと大気の屈折率(光ファイバ121とレンズ122との間の信号光の光路における屈折率)nとの違いから、信号光の第2の端面121bへの入射角θと出射角θとが互いに異なった値となるためである。光路のずれが発生すると、信号光の送信においては、信号光が十分にレンズに入射せず送信効率が低下する。また、信号光の受信においても、適切に信号光が光ファイバ121に入射せず、また収差が発生する等して受信効率が低下する。
【0030】
これに対処するため、図6に示すように、光ファイバ121の端部121dをレンズ122の光軸に対して所定の角度θで傾けて、保持基体124により位置決めされて固定されることにより光路のずれを防止することができる。この角度θ及び位置は、第2の端面121bから出射される信号光の光路がレンズ122の光軸と一致するように定められる。上記のように角度θ及び位置が定められると、レンズ122から出射され第2の端面121bに入射する信号光の光路が光ファイバ121の端部121dの光軸と一致する。
【0031】
上記の所定の角度θは、第2の端面121bの角度θ、光ファイバ121のコアの屈折率n及び大気の屈折率nに基づいて定めることができる。これらの値の間には、スネルの法則により、
sinθ=nsinθ
の関係が成り立ち、θ、θが十分に小さいとき、
θ=nθ
と近似できる。従って、信号光の第2の端面121bからの出射角θは、
θ=(n/n)θ
となる。上記の式において、第2の端面121bが光ファイバ121の端部121dの光軸に対して角度θが上述のように8°であり、光ファイバ121のコアの屈折率nを1.5、大気の屈折率nを1.0とすると、信号光の第2の端面121bからの出射角θは12°となる。従って、この条件の場合は、光ファイバ121の端部121dのレンズ122の光軸に対する角度θは、θ−θ=12−8=4°とすればよい。また、このとき、光ファイバ121からの信号光の入出射が適切に行われるように、図6に示すようにレンズ122の光軸と光ファイバ121の光軸とが第2の端面121bで交差するように、レンズ122及び光ファイバ121が位置決めして固定される。
【0032】
レンズ122は、光ファイバ121の第2の端面121bから出射される信号光を平行光にして投光すると共に、受光した信号光を集光して第2の端面121bに入射するように、保持基体124の筒状部材124aの一方の先端部で固定される。レンズ122は、光ファイバ121のNA(Numerical Aperture)を考慮して、受光される信号光を第2の端面121bに入射できるものを用いる。また従来、レンズ122は例えば三枚玉が用いられるが、受光される信号光が第2の端面121bに入射できるように投受光面を非球面とした1枚の非球面レンズを用いるのが好ましい。この投受光面を適切に設計すれば、光ファイバ121とレンズ122との間での光路を1枚のレンズでも好適に制御することができる。
【0033】
また本実施形態においては、レンズ122の他方の面は、図2に示すように平面とされており、この面が筒状部材124aに対する位置決めに用いられている。上記のように1枚の非球面レンズを用いることとすれば、信号光投受光部12を簡易な構成とすることができまた軽量化を図ることができる。また、このとき、後述のアクチュエータ128,129による調整が容易になる。また、レンズ122の径は、投光する信号光のパワーが500mW程度の高いパワーの信号光でも、クラス1Mのレーザ安全基準を確保できるようにするのが好ましい。クラス1Mのレーザ安全基準を達成させるようにすると、レンズ122の焦点距離が長くなるが、レンズ122と光ファイバ121の第2の端面121bとの間にビームスプリッタ126を配置することで余計なレンズ等を排除し、小型化を実現することができる。
【0034】
筐体123の内面のうち、信号光が通過する開口が設けられた面に垂直な面の1つが、保持基体124を設置するための保持面123aとなっている。この保持面123aに対し保持基体支持部125及び縦方向アクチュエータ128が固定される。また、筐体123は内側に保持面123aと垂直な側面123bを有し、当該側面123bに対し横方向アクチュエータ129が固定される。
【0035】
保持基体124は、光ファイバ121の第2の端面121bを含む端部及びレンズ122を、信号光を投受光可能なように光軸が合った状態で位置決めして、一体に保持する保持手段である。保持基体124は、レンズ122を保持する筒状部材124aと、光ファイバ121の第2の端面121bを含む端部の固定等を行う保持板124bとを含んで構成されている。保持基体124は、筒状部材124aの所定箇所で保持基体支持部125により、信号光の光軸(光ファイバ121の第2の端面からレンズ122への方向)を調整できるように作動可能な状態で支持されている。
【0036】
筒状部材124aは、その中心軸が光軸と略一致するように設置されており、投光方向にある一方の端部が開口している。また、筒状部材124aの当該端部内側に設けられたレンズ固定部124dが、筒状部材124a内でレンズ122を位置決めして固定する。筒状部材124aは、当該レンズ122が固定される端部が筐体123の開口面と同一の方向になるよう設けられる。筒状部材124aと保持板124bとは互いに位置決めされた状態で一体となっており、保持板124bは、筒状部材124aと筐体123の保持面123aとの間に位置している。
【0037】
また、保持板124bは、受光方向の筒状部材124aの端面より受光方向側にせり出した台状の後端部124eを有している。保持板124bは、当該後端部124eで光ファイバ121の第2の端面121bを含む端部を、筒状部材124aの受光方向の端部の後方に、位置決めして第2の端面121bが筒状部材の方向を向くよう固定する。また、筒状部材124aの受光方向の端部には、筒状部材124aの外側に配置された光ファイバ121の第2の端面121bから出射された光をレンズ122で受けられるよう、開口部が設けられている。以上の保持基体124の構成により、レンズ122と光ファイバ121の第2の端面121bとが、光軸が合った状態で位置決めされている。
【0038】
保持基体支持部125は、筐体123の保持面123aに対して固定されており、保持基体124を作動可能な状態で保持する。具体的には、保持基体支持部125は、筐体123の保持面123aと垂直な軸線の周方向(図2に示すR1方向、この方向を横方向と呼ぶ)に回転可能な部分125a(横方向追尾軸)を有しており、保持基体124を当該方向に作動可能とする。また、保持基体支持部125は、保持基体124の筒状部材124aを、筐体123の保持面123aと平行かつ光軸と垂直な軸線方向(縦方向追尾軸、図2及び図3に示す支持点125b)の径の2点で、回転可能なように支えており、当該2つの支持点125bによる回転軸とした周方向(図2に示すR2方向、この方向を縦方向と呼ぶ)に作動可能とする。なお、上記の作動は、後述するアクチュエータ128,129を駆動させることにより行われる。
【0039】
ビームスプリッタ126は、保持基体124の筒状部材124a内の、信号光の経路におけるレンズ122と光ファイバ121の第2の端面121bとの間に設けられる。レンズ122により受光された信号光の一部を反射させ、信号光方向検出器127に入射させる。なお、反射される光の光路と受光された信号光の光路とが垂直になるよう、ビームスプリッタ126は、反射面が信号光の光軸と45°となるように設置するのがよい。
【0040】
信号光方向検出器127は、ビームスプリッタ126により反射された信号光を受光し、受光した反射光から、光ファイバ121に入射する信号光の方向を検出する。信号光方向検出器127は、筒状部材124aの外壁に固定され設けられる検出器格納部124c内に位置決めして設置される。なお、筒状部材124aには、信号光方向検出器127で反射光を受光できるように、反射光の経路上に、開口部が設けられる。筒状部材124aと筐体123の保持面123aとの間には保持板124b等が設けられているので、信号光方向検出器127は、保持面123aとは逆側に設けられることが好ましい。即ち、ビームスプリッタ126による反射光は、保持面123aとは逆側に向かうものであることとするのがよい。検出された信号光の方向の情報は、アクチュエータ128,129に送信される。具体的には、信号光方向検出器127としては、四分割フォトダイオード等のセンサを用いることが好ましい。
【0041】
縦方向アクチュエータ128は筐体123の保持面123aに対して固定されており、その駆動部128aが、保持基体124の保持板124bの後端部124eを挟み込んで保持基体124に固定されている。縦方向アクチュエータ128を図2に示すR3方向に駆動させることにより、保持基体を縦方向(R2方向)に作動させることができる。また、横方向アクチュエータ129は筐体123の側面123bに対して固定されており、駆動部129aが、保持基体124の保持板124bの後端部124eを挟み込んで保持基体124に固定されている。横方向アクチュエータ129を図3に示すR4方向に駆動させることにより、保持基体を横方向(R1方向)に作動させることができる。
【0042】
縦方向及び横方向アクチュエータ128,129は、信号光方向検出器127から受光した信号光の方向の情報を受信し、その情報に基づいて、適切な方向(レンズ122の受光面と信号光の方向がほぼ垂直となり、レンズ122により集光された信号光が光ファイバ121の第2の端面121bに入射する方向)で信号光を受光できるように、保持基体124の方向を調整し信号光の光軸を調整する。即ち、アクチュエータ128,129は、信号光の方向に基づきレンズ122と光ファイバ121の第2の端面121bとの間の信号光の光軸を調整する調整手段である。
【0043】
光無線通信装置10は、以下のように動作する。まず、光ファイバネットワーク20に接続された端末等から、光無線通信先のネットワークの端末等に情報を送信するために光無線通信装置10から信号光が投光される場合を説明する。
【0044】
光無線通信装置10では、光ファイバネットワーク20から光無線通信装置10に入力される信号光が、光ファイバアンプ13に入力される。信号光は、空間光通信に耐えうるよう、光ファイバアンプ13により増幅される。なお信号光は、具体的には最大500mW程度まで増幅されることが好ましい。
【0045】
光ファイバアンプ13から出力された信号光は、サーキュレータ11の第1の端子11aに入力され第2の端子11bから出力される。第2の端子11bから出力された信号光は、光ファイバ121の第1の端面121aに入力され光ファイバ121内を伝搬し第2の端面121bから出射される。なお、第2の端面121bには、上述したように戻り光防止処理がなされているので、第2の端面121bで信号光が反射して、レンズ122により受光され第2の端面121bに集光され入射される信号光と混信することを防止する。第2の端面121bから出射された信号光はレンズ122により平行光にされ通信相手の光無線通信装置に投光される。
【0046】
次に、通信相手の光無線通信装置により投光された信号光が光無線通信装置10により受光される場合を説明する。光無線通信装置10では、通信相手の光無線通信装置により投光された信号光がレンズ122により受光される。受光された信号光の一部は、ビームスプリッタ126により反射され信号光方向検出器127に入射される。信号光方向検出器127は反射光を受光して検出し、当該検出状態からレンズ122により受光された信号光の方向を検出する。検出された信号光の方向の情報は縦方向及び横方向アクチュエータ128,129に送信され、縦方向及び横方向アクチュエータ128,129により、保持基体124の方向を調整することにより、適切にレンズ122により信号光が受光されるようにする。即ち、レンズ122と第2の端面121bとの間の信号光の光軸が、受光された信号光が第2の端面121bに適切に集光され入射されるように調整される。
【0047】
受光された信号光の残りは、光ファイバ121の第2の端面121bに集光され入射される。入射された光は、光ファイバ121内を伝搬し第1の端面121aから出力される。第1の端面121aから出力された信号光は、サーキュレータの第2の端面11bに入力され、第3の端面11cから出力される。
【0048】
出力された信号光は、光カプラ14に入力され、その一部が信号光パワー検出部15に、残部が光ファイバアンプ17に入力される。信号光パワー検出部15では、信号光のパワーの値が検出され、検出された値の情報が制御部16に送信される。制御部16では、パワーの値が検出された信号光を一定のパワーの値で出力されるよう光増幅するように光ファイバアンプ17に対する制御が行われる。光ファイバアンプ17に入力された信号光は、上記のような制御を受けた光ファイバアンプ17により、一定のパワーになるよう光増幅されて出力され、光ファイバネットワーク20に入力される。
【0049】
上述したように、本実施形態によれば、投光する信号光及び受光した信号光を共通の光ファイバにより伝送し投光と受光とを共通の機構を用いて行うことを可能とした簡易な構成の光無線通信装置10を実現することができる。また、本実施形態によれば、光ファイバネットワーク20内での信号光を直接投光することができ、空間を伝播した光信号を光ファイバネットワーク20に直接入力することができる。即ち光ファイバネットワークとのシームレスな接続を可能とし世の中に普及している数々の光ファイバ通信技術を使用できる。例えば10Gbps以上の光通信が可能となる。
【0050】
また、本実施形態のようにレンズ122を1枚の非球面レンズとすれば、軽量化を図ることができ、アクチュエータ128,129による調整を容易にすることができる。また、1枚の非球面レンズでなくても、アクチュエータにより光軸線の制御が可能であれば、従来の3枚の球面レンズを用いた構成等、様々な構成を用いてよい。また、10μm程度のコア径のシングルモードファイバのコアに、100m以上の距離の光無線通信装置間の空間を伝搬した信号光を効率よく集光させるのは通常困難である。しかし、非球面レンズの設計パラメータを、上述したように光ファイバ121のNAやレーザ安全性を考慮して適切に決定すれば、効率のよい集光を可能とする。
【0051】
また、本実施形態のように光ファイバ121の第2の端面121bに戻り光防止処理を施すこととすれば、第1の端面121aから光ファイバ121に入力され投光されるべき信号光が第2の端面で反射し、受光された信号光と混信することを防止することができる。但し、戻り光が受光された信号光と比べて無視できるパワーである場合等は、必ずしも戻り光防止処理を施す必要はない。
【0052】
また、本実施形態のように、第2の端面121bを含む光ファイバ121の端部121dのレンズ122の光軸に対する角度(図6におけるθ)を、上述したように適切に設定すれば、光路のずれを発生させずに適切に信号光の送受信を行うことができる。光路のずれが発生しないことにより、信号光の送信においては信号光が十分にレンズに入射し高い送信効率を実現することができる。また、信号光の受信においては適切に信号光が光ファイバ121に入射し、また収差を抑えることができ高い受信効率を実現することができる。
【0053】
また、本実施形態のように信号光の方向を検出し検出された方向に基づき光軸を調整することとすれば、信号光を確実に投受光することができる。また、信号光の方向の検出は、実施容易性、装置構成の簡素化等の観点から、本実施形態のようなビームスプリッタ126及び信号光方向検出器127を用いて行うことが好ましい。同様に光軸の調整は、本実施形態のようなアクチュエータ128,129を用いて光学系の位置及び方向を調整することにより行うことが好ましい。また、通信相手の光無線通信装置が固定となっている場合等、光軸の調整が不要な場合は上記の構成を設けなくてもよい。
【0054】
また、本実施形態のように、光ファイバアンプ13により投光する信号光を光増幅させることとすれば、投光した信号光が通信相手の光無線通信装置によって受光される場合に、より充分なパワーで受光させることができる。
【0055】
また、本実施形態のように、光カプラ14、信号光パワー検出部15、制御部16及び光ファイバアンプ17等の構成を用いて、光ファイバネットワーク20に出力される信号光のパワーを制御することとすれば、受光した信号光のパワーの値が小さい場合にも、信号光を安定的なパワーで出力することができる。なお、通信相手の光無線通信装置から送信される信号光のパワーの値が充分大きく、安定的なパワーで信号光を受光できる場合等は、上記の構成は必ずしも必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る光無線通信装置の構成を示す図である。
【図2】信号光投受光部の側面からの断面を示す図である。
【図3】信号光投受光部の上面からの断面を示す図である。
【図4】光ファイバの第2の端面を示す図であり、(a)は戻り光防止処理が施された端面を示し、(b)は戻り光防止処理が施されていない端面を示す。
【図5】光ファイバの第2の端面に対し斜め研磨を行った場合の当該端面の近傍を示す図である。
【図6】光ファイバの第2の端面に対し斜め研磨を行った場合の光ファイバとレンズとの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10…光無線通信装置、11…サーキュレータ、11a…第1の端子、11b…第2の端子、11c…第3の端子、12…信号光投受光部、121…光ファイバ、121a…第1の端面、121b…第2の端面、121c…ARコート膜、122…レンズ、123…筐体、123a…保持面、123b…側面、124…保持基体、124a…筒状部材、124b…保持板、124c…検出器格納部、124d…レンズ固定部、124e…後端部、125…保持基体支持部、126…ビームスプリッタ、127…信号光方向検出器、128,129…アクチュエータ、13,17…光ファイバアンプ、14…光カプラ、15…信号光パワー検出部、16…制御部、20…光ファイバネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2及び第3の端子を含み、当該第1の端子から入力された信号光を当該第2の端子に出力し、当該第2の端子から入力された信号光を当該第3の端子に出力するサーキュレータと、
前記サーキュレータの第2の端子に接続された第1の端面と第2の端面とを有し、当該サーキュレータの第2の端子から出力され当該第1の端面に入力される信号光を当該第2の端面から出射すると共に、当該第2の端面から入射される信号光を当該第1の端面から出力する光ファイバと、
前記光ファイバの第2の端面から出射される信号光を無線通信信号として投光すると共に、無線通信信号として到達した信号光を受光して前記光ファイバの第2の端面に入射するレンズと、
を備える光無線通信装置。
【請求項2】
前記レンズは非球面レンズであることを特徴とする請求項1に記載の光無線通信装置。
【請求項3】
前記光ファイバは、前記第1の端面から入力された信号光が当該第1の端面に戻ることを防止する戻り光防止処理がなされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光無線通信装置。
【請求項4】
前記戻り光防止処理は、前記光ファイバの第2の端面になされたARコート処理であることを特徴とする請求項3に記載の光無線通信装置。
【請求項5】
前記戻り光防止処理は、前記光ファイバの第2の端面が光軸方向に対して斜めになっていることであることを特徴とする請求項3又は4に記載の光無線通信装置。
【請求項6】
前記第2の端面を含む前記光ファイバの端部の前記レンズの光軸に対する角度は、当該光ファイバのコアの屈折率、及び当該光ファイバと当該レンズとの間の信号光の光路における屈折率に基づいて、当該第2の端面から出射される信号光の光路が当該レンズの光軸と一致するように定められることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光無線通信装置。
【請求項7】
前記レンズにより受光された信号光の方向を検出する方向検出手段と、
前記方向検出手段により検出された前記信号光の方向に基づき前記レンズと前記光ファイバの第2の端面との間の信号光の光軸を調整する調整手段と、
を更に備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の光無線通信装置。
【請求項8】
信号光の経路における前記光ファイバの第2の端面と前記レンズとの間に設けられ、前記レンズにより受光された信号光の一部を反射させるビームスプリッタを更に備え、
前記方向検出手段は、前記ビームスプリッタにより反射された信号光を検出し、当該検出状態から前記レンズにより受光された信号光の方向を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の光無線通信装置。
【請求項9】
入力される信号光を光増幅して出力して前記光サーキュレータの第1の端子に入力する光増幅器を更に備える請求項1〜8のいずれか一項に記載の光無線通信装置。
【請求項10】
前記サーキュレータの第3の端子から出力される信号光のパワーの値を検出する信号光パワー検出手段と、
前記信号光パワー検出手段により検出される値を参照して、前記サーキュレータの第3の端子から出力される信号光のパワーを制御する信号光パワー制御手段と、
を更に備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の光無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94465(P2006−94465A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160211(P2005−160211)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】