説明

光無線通信装置

【課題】組み立て精度が向上し、製造が容易で、小型化された光無線通信装置を提供する。
【解決手段】光を透過する透明基板1の一方の面上に送信用発光素子2を設置し、他方の面上に位置検出用受光素子4を設置する。送信用発光素子2と位置検出用受光素子4とは、同一光軸上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を通じて光信号の送受信を行う光無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光無線通信装置について、図3を参照して説明する。図3に示すように、従来の光無線通信装置は、可動反射ミラー101、ビームスプリッタ102、集光レンズ103、光拡散板104、位置検出用受光素子105、集光レンズ106、受信用受光素子107、送信用発光素子108、コリメートレンズ109を備え、これらはL字型のベースブロック110上に構成されている。また、可動反射ミラー101は、図示しない電磁アクチュエータにより可動になっている。
【0003】
この光無線通信装置においては、通信の相手側装置から入射された入射信号光は、可動反射ミラー101により反射され、ビームスプリッタ102に入射される。ビームスプリッタ102においては、入射信号光は、傾斜した第1の反射面102aにおいてその光軸を90°折り曲げられ、第1の反射面102aに平行な第2の反射面102bにおいて、この第2の反射面102bに対する透過光と反射光とに分割される。
【0004】
第2の反射面102bにおける反射光は、集光レンズ103、光拡散板104を経て、位置検出用受光素子105によって受光される。また、第2の反射面102bにおける透過光は、集光レンズ106を経て、受信用受光素子107により受光される。
【0005】
この光無線通信装置においては、まず、通信の相手側装置を見つけるため、可動反射ミラー101によるスキャン動作をし、相手側装置からの光をサーチする。相手側装置からの入射信号光は、前述のように、ビームスプリッタ102により位置検出光経路と受信信号光経路とに分けられ、位置検出用受光素子105および受信用受光素子107により受光される。サーチ時は、位置検出用受光素子105からの出力に基づいて相手側装置の方向を特定行い、サーチが終了すると、受信用受光素子107により通信を開始する。
【0006】
送信用発光素子108の出射信号光は、コリメートレンズ109によって平行光に近いビームに成形され、位置検出光経路および受信信号光経路に交わらないようにしてビームスプリッタ102を通過し、可動反射ミラー101によって反射され、通信の相手側装置に向かって放射される。
【0007】
このような光無線通信装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2005−274305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光無線通信装置では、上述のように、位置検出光経路、受信信号光経路、出射信号光経路の3つの経路が必要となる。このため、位置検出用受光素子105、受信用受光素子107、送信用発光素子108の3つの素子の位置決めが難しくなっていた。特に、位置検出用受光素子105と送信用発光素子108との位置決めは、1μm以下の精度が必要とされ、また、位置検出用受光素子105と送信用発光素子108の光軸を合わせなければならないため、製造が困難であった。
【0009】
さらに、3つの経路を構成するため、装置の小型化が困難であるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、組み立て精度が向上し、製造が容易で、小型化された光無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光無線通信装置は、光無線により相手側通信装置と通信する光無線通信装置であって、平行平面を有し、両面間における光透過性を有する基板と、この基板の一方の面上に設けられ、この面に直行する方向で且つ前記基板側とは逆の方向に信号光を射出する発光部と、前記基板の一方の面上における前記発光部の周囲に設けられた光拡散部と、前記基板の他方の面上において、受光面が前記基板側に向けられて且つ前記発光部と同一光軸上の位置に設けられ、前記光拡散部を介して入射される入射光を前記受光面で受光する位置検出用受光部と、前記基板の一方の面上において前記光拡散部の外側に設けられ、前記一方側から入射される入射信号光を受光する信号光受光部と、前記基板の一方側に設けられ、前記発光部から射出される信号光と前記入射光と前記入射信号光との各光軸方向を同一方向に変更する光軸変更部と、前記位置検出用受光部の前記受光面での受光によって出力される検出信号に基づき、前記光軸変更部の光軸方向の変更を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光無線通信装置は、光を透過する基板の一方の面上に送信用の発光素子を設け、他方の面上に位置検出用受光素子を設けるので、送信用の発光素子と位置検出用受光素子とを互いに位置確認しながら組み立てることができ、これにより、組み立て精度が向上し、製造を容易化することができる。
【0013】
また、送信用の発光素子と位置検出用受光素子とを、透明基板を介して同一光軸上に配置したので、光の経路を1つ減らすことができ、装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の光無線通信装置を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る光無線通信装置を示す構成図、図2は図1に示す光無線通信装置の透明基板上の電極パターンおよび素子の配置を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は底面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る光無線通信装置は、透明基板1、送信用発光素子2、2焦点レンズ3、位置検出用受光素子4、光拡散板5、受信用受光素子6、集光レンズ7、可動反射ミラー8、ビームスプリッタ9、ミラー10を備える。
【0017】
透明基板1は、光を透過する素材からなる基板であり、例えばガラス基板とする。図2(a)〜(c)に示すように、透明基板1の上面には、送信用発光素子2、光拡散板5、受信用受光素子6が設けられる。また、上面に平行な底面には、位置検出用受光素子4が設置される。位置検出用受光素子4は、その受光面を透明基板1側に向け、送信用発光素子2と同一光軸上に配置される。
【0018】
図2(a)に示すように、透明基板1の上面には、送信用発光素子2に給電するための電極パターン11と、受信用受光素子6に給電するための電極パターン12とが、半導体プロセスを用いた加工により設置される。また、図2(c)に示すように、透明基板1の底面には、位置検出用受光素子4に給電するための電極パターン13が設けられる。ここで、電極パターン11は、透明基板1への影となるため、できるだけ細く(例えば、50μm以下)するか、透明電極で作製する。
【0019】
送信用発光素子2は、例えば面発光レーザからなり、通信の相手側装置に送信する光信号を出射する。送信用発光素子2の大きさは、電極パターン11と同様の理由で、できるだけ小さくする(例えば、□300μm以下)。なお、送信用発光素子2としては、端面発光型レーザと45°反射ミラーとを組み合わせて垂直に出射できるようにした発光素子、あるいは、端面発光型レーザを垂直に立てる構成をした発光素子を用いることもできる。
【0020】
2焦点レンズ3は、送信用発光素子2が出射する光を集光、コリメートする。また、2焦点レンズ3は、入射信号光を位置検出用受光素子4に集光させる。2焦点レンズ3は、レンズ開口の内周部と外周部で曲面が異なり、それぞれの曲面が異なる焦点を有するレンズや、光を集光するレンズと±1次光の異なる焦点を有する回折素子の組み合わせなどで実現される。または、複数のレンズを組み合わせることで、2つの焦点が実現される。
【0021】
位置検出用受光素子4は、中心から放射状に分割された4つ以上の受光面を有するフォトダイオードからなり、例えば4分割フォトダイオードからなる。位置検出用受光素子4は、各受光面に照射された光を電流に変換し、各受光面からそれぞれ独立した光検出出力が得られるようになっている。
【0022】
光拡散板5は、位置検出用受光素子4に入射する入射信号光を拡散させる。光拡散板5は、シート状の回折格子や回折ホログラム、または、マイクロオーダーの球体を、球体とは異なる屈折率の媒質に添加して固体化することで実現される。なお、光拡散板を用いず、透明基板1に光を散乱させる加工を施してもよい。この方法としては、透明基板1に砂を直接あてて散乱面を形成するサンドブラスタなどがある。
【0023】
受信用受光素子6は、高速応答フォトダイオード等からなり、入射信号光の受信(データ受信)を行う。集光レンズ7は、受信用受光素子6に入射信号光を集光する。なお、送信のみを行う片方向通信の場合は、受信用受光素子6および集光レンズ7はなくてもよい。
【0024】
可動反射ミラー8は、図示しない電磁アクチュエータにより可動に構成され、出射信号光、入射信号光の光軸方向を制御する。
【0025】
ビームスプリッタ9は、可動反射ミラー8で反射された入射信号光を、傾斜した反射面9aに対する透過光と反射光とに分割する。ミラー10は、ビームスプリッタ9の反射面9aで反射された入射信号光の光軸を90°折り曲げ、集光レンズ7に入射させる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る光無線通信装置の作用を説明する。
【0027】
可動反射ミラー8は、通信の相手側装置からの入射信号光を反射し、ビームスプリッタ9に入射させる。ビームスプリッタ9は、可動反射ミラー8で反射された入射信号光を、傾斜した反射面9aに対する透過光と反射光とに分ける。
【0028】
そして、2焦点レンズ3は、ビームスプリッタ9を通過した入射信号光を位置検出用受光素子4上に集光させる。ここで、2焦点レンズ3から出射された入射信号光は、光拡散板5で拡散された後、透明基板1を通過して位置検出用受光素子4に入射する。
【0029】
光拡散板5において入射信号光を拡散することで、透明基板1上の送信用発光素子2と電極パターン11の影をぼかすことができる。また、入射した平行光の強度分布に偏りがある場合や、基板面に平行にずれた場合(光ビームのぶれ)において、光軸のずれと誤認しない効果がある。
【0030】
入射信号光が照射されると、位置検出用受光素子4は、各受光面に照射された光を電流に変換し、各受光面からの光検出出力を図示しない制御部に出力する。位置検出用受光素子4の受光面は、中心から放射状に分割されているので、入射信号光が中心上に集光された場合には、各受光面における受光量は等しくなり、各受光面からの光検出出力が等しくなる。制御部は、各受光面からの出力信号レベルが等しい状態に保たれるように、電磁アクチュエータを制御して可動反射ミラー8の方向を制御する。
【0031】
一方、ビームスプリッタ9において反射された入射信号光は、ミラー10で反射された後、集光レンズ7で集光され、受信用受光素子6により受光される。受信用受光素子6では、受光した入射信号光を電流に変換し、図示しないデータ受信部に供給する。
【0032】
また、送信用発光素子2は、データ送信のための信号光を出射する。送信用発光素子2からの信号光は、2焦点レンズ3でコリメートされた後、ビームスプリッタ9を通過して可動反射ミラー8で反射され、外部に出射される。
【0033】
送信用発光素子2と位置検出用受光素子4とが、光学的に同軸構成になっているため、位置検出用受光素子4の各受光面からの出力信号レベルが等しい状態においては、本装置からの出射光軸と、通信の相手側装置からの入射光軸とは合致していることとなり、通信経路が保たれる。
【0034】
このように本実施の形態によれば、組み立て時において、透明基板1を通して位置検出用受光素子4を見ることができるので、位置検出用受光素子4に合わせて送信用発光素子2を位置精度よく、容易に組み立てることが可能となる。さらに、送信用発光素子2を基準にして受信用受光素子6を精度よく組み立てれば、各素子を位置精度よく組み立てることができる。
【0035】
また、送信用発光素子2と位置検出用受光素子4とを、透明基板1を介して同一光軸上に配置したので、光の経路を1つ減らすことができ、このため部品点数を減らし、装置の小型化、低価格化を図ることができる。
【0036】
さらに、送信用発光素子2と位置検出用受光素子4とが、光学的に同軸構成になっているため、出射信号光を効率よく通信の相手側装置に向けることができるので、送受信時の通信経路の確保が行い易く、通信の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光無線通信装置を示す構成図である。
【図2】図1に示す光無線通信装置の透明基板上の電極パターンおよび素子の配置を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は底面図である。
【図3】従来の光無線通信装置の構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 透明基板
2 送信用発光素子
3 2焦点レンズ
4 位置検出用受光素子
5 光拡散板
6 受信用受光素子
7 集光レンズ
8 可動反射ミラー
9 ビームスプリッタ
10 ミラー
11,12,13 電極パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光無線により相手側通信装置と通信する光無線通信装置であって、
平行平面を有し、両面間における光透過性を有する基板と、
この基板の一方の面上に設けられ、この面に直行する方向で且つ前記基板側とは逆の方向に信号光を射出する発光部と、
前記基板の一方の面上における前記発光部の周囲に設けられた光拡散部と、
前記基板の他方の面上において、受光面が前記基板側に向けられて且つ前記発光部と同一光軸上の位置に設けられ、前記光拡散部を介して入射される入射光を前記受光面で受光する位置検出用受光部と、
前記基板の一方の面上において前記光拡散部の外側に設けられ、前記一方側から入射される入射信号光を受光する信号光受光部と、
前記基板の一方側に設けられ、前記発光部から射出される信号光と前記入射光と前記入射信号光との各光軸方向を同一方向に変更する光軸変更部と、
前記位置検出用受光部の前記受光面での受光によって出力される検出信号に基づき、前記光軸変更部の光軸方向の変更を制御する制御部と
を備えることを特徴とする光無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−235439(P2007−235439A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53552(P2006−53552)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】